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25kB - 神戸製鋼所
新 製 品・新 技 術 低摩擦抵抗・耐熱信頼性・はんだ濡れ性を備えた端子用錫めっき材 平 浩一* * アルミ・銅カンパニー 長府製造所 銅板工場 錫めっきは,電気接点の信頼性やはんだ濡れ性を確保 3)表面の錫層の厚さにムラがあるため,均一厚さの錫 するための表面処理技術として広く用いられており,銅 層で覆われている従来材と比較して,はんだ濡れ性 合金に錫めっきを施した素材は,自動車用端子及び民生 は低下する。しかし,特殊な表面処理を施すこと 電子機器用端子の用途に多く使用されている。 で,加熱後も従来材と同等のはんだ濡れ性を可能と 近年,自動車の軽量化・多機能化の流れから,電子・ した(表 1,図 3)。 電装部品の小型化・高度化が進み,上記端子用材料にも 多くの性能が要求されるようになってきた。そのなかで も,錫めっきに対する要求特性として,①端子かん合時 の挿入力の低減,②エンジンルームへの設置を想定した 接触荷重,W ロードセル メス切片:半球状エンボス加工 (曲率半径,R=1.5mm) しゅう動方向 高温環境下での接点信頼性の向上,③従来材と同等のは オス切片:平板 んだ濡れ性の確保などがある。 本稿では,上記特性を具備した端子用錫めっき材を紹 介する。 図 1 端子のかん合を想定したしゅう動試験装置 特 長 従来の錫めっき材は柔らかい金属錫(HV30 程度)の層 100 それをせん断する力が抵抗となって,端子かん合時の挿 入力が大きくなる。 これに対して,本材は, 1)錫層の厚さにばらつきをもたせることによって,接 接触抵抗値 (mΩ) で覆われているため,接点部で錫同士の凝着が起こる。 ◆ 従来材 ● 本 材 10 1 点部での凝着を少なくし,挿入力の低減を実現でき る。端子のかん合を想定したしゅう動試験におい て,従来材と比較して 40∼50%の低減効果を有する 0.1 100 高温放置時間 (h) 10 (表 1,図 1) 。 2)上記錫層と銅母材の中間にニッケル層を設けた三層 1,000 図 2 160℃加熱後の接触抵抗値 構成であるため,高温環境下における錫層への銅の 4 拡散および酸化を抑制し,接点の信頼性を向上させ ることができる。160℃×1,000h 加熱後の接触抵抗 値は 1mΩ以下である(表 1,図 2) 。 3 表 1 本材と従来材の性能 接点の はんだ濡れ性 電気的信頼性 特長 摩擦抵抗 低挿入力 接点信頼性 ◎ 0.25 ∼ 0.30 (従来比: 約 50% 低減) ◎ ◎ 低挿入力 本材 0.30 ∼ 0.35 接点信頼性 (特殊処理品) (従来比: はんだ付け性 約 40% 低減) ◎ ○ ○ ○ 本材 従来材 − △ 0.5 ∼ 0.6 △ 濡れ時間 (s) 改善 2 1 0 本材 12 (特殊処理品) (特殊処理品) 加熱条件 155℃x16h 本材 従来材 はんだ付け条件 フラックス/α100 はんだ /Sn-3Ag-0.5Cu 温度 /265℃ 浸漬速度/25mm/s 浸漬深さ /12mm 浸漬時間/5s 図 3 各めっき材のはんだ濡れ性 問合わせ先:アルミ・銅カンパニー 長府製造所 銅板工場銅板研究室 平 浩一 TEL: (083)246−1220 FAX:(083)246−1219 神戸製鋼技報/Vol. 58 No. 3(Dec. 2008) 99