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第Ⅰ部 現地法人の設立と運営
第Ⅰ部 現地法人の設立と運営 A Q 中国でビジネスを行うにはどのような形態がありますか? 現地法人の設立は、以前は合弁企業の設立が比較的多かったようですが、最近は外資︵独資︶ 2 合弁のメリットとデメリット 間接投資には、加工貿易、親会社から中国子会社への 融資、リース、技術移転があります。 しています。 企業の設立が多くなりました。今後は、中国企業を直接買収する方法が増えるでしょう。 1 中国進出の形態 中国進出の形態は大きく分けて、直接投資と間接投資 に分けられます。直接投資は、従来は現地法人の新規設 立が一般的でしたが、最近では中国企業の買収もありま す。中国で現地法人とは、外国投資企業︵中国語では外 いままでよくあった進出パターンは、初めに中国企業 と技術移転契約を結んで中国企業の技術力が向上し、信 頼関係ができあがった段階で、中国企業と合弁会社を設 商投資企業︶と呼ばれる合弁企業、合作企業、外資企業 ︵独資企業︶のことです。 中国市場が未知の段階では、国内販売網を確立している しかしながら、合弁会社では経営の主導権をめぐって 由です。 中国企業と合弁せざるを得なかったことが最も大きな理 立するというものでした。このような合弁会社設立は、 中国企業とは中国内資企業のことであり、中国企業の 買収によって外国進出企業と中国内資企業のボーダーラ インが曖昧になってきています。 直接投資には、駐在員事務所と支店等もありますが、 これらの形態は現在では現地法人の補完的な役割に後退 − 18 − Q A 1 第Ⅰ部 現地法人の設立と運営 図表 1 − 1 中国進出の形態 加工貿易 来料加工、進料加工、補償貿易 その他 融資、リース、技術移転 間接投資 現地法人設立 合弁企業、合作企業、独資企業の設立 中国企業買収 持分買収、資産買収 直接投資 駐在員事務所、支店 直接進出 トラブルが発生することもあり、中国側と外資側の利害 も対立する要因が少なくありません。合弁会社は、基本 的にいずれか一方の経営に任されなくてはうまく行かな いのが実情です。 また2000年以降の傾向として、大手メーカーの中 国事業展開に伴って、下請企業も大手メーカーと同一地 域に進出する必要が生じましたが、下請メーカーの国内 販売ルートは大手企業にほぼ固定されますので、独資企 業の設立が一般的となりました。 さらに、中国の国内販売についても以前のような閉鎖 性がなくなりつつあります。最近では100%外資企業 ︵ 独 資 企 業 ︶ に よ る 商 業 企 業 の 設 立 が 増 加 し て い ま す。 2005年頃までは外国投資商業企業の設立は簡単に認 可[批准]されませんでしたが、2006年春頃から所 定の認可[批准]手続を行うことにより、外国投資商業 企業の設立が順当に行われるようになりました。外国投 資商業企業は各地に支店を設けることができますので、 販売ネットワークの確立を図ることができます。 − 19 − 3 現地法人の設立 4 中国企業の買収 中国ではこのような現地法人を外国投資企業といい、 中国企業の買収には、中国企業の出資持分の購入、増 外資の出資比率が %以上であることが要求されていま 資の引受による持分買収があります。また、現地法人を す。最近では、中国企業を直接買収する事例も増えてい から資産を買収して新設現地法人に現物出資する資産に 設立した後に中国企業から資産を買収、または中国企業 よる買収もあります。 ます。このような場合には、外資の出資比率が %未満 になることもありますが、登記上は %未満の外国投資 25 されています。 企業として外資出資比率 %以上の外国投資企業と区別 持分による買収では、中国企業の外資出資比率が % 以上となると、内資企業から外国投資企業に組織変更す 25 独資企業は、文字通り外資100%出資の企業で、最 も自由に経営できることから最近の現地法人は独資企業 合作企業を設立するケースは少ないようです。 自由が利きますが、日系企業ではなじまないものがあり、 供が出資とは別の方法で行われます。合作契約はかなり による合作条件の提供、たとえば土地とか労働役務の提 に決定することができます。合作企業は出資以外の方法 合弁企業は出資比率に比例して利益配当が行われます が、合作企業では利益の配当も出資比率に関係なく自由 25 の設立が主流となっています。 %以上の外国投資企業が新規設立されることになりま ることになります。資産による買収では外資出資比率が 25 工製品を外国企業に提供する取引です。 企業に提供され、中国国内企業が加工賃を受け取って加 加工貿易には、主に来料加工と進料加工があります。 来料加工とは、外国から原材料部品等が無償で中国国内 5 加工貿易 す。 25 加工貿易は古くは三来一補といわれ、来料加工、来様 加工︵サンプル加工︶、来件加工︵ノックダウン︶の三 − 20 − 25 第Ⅰ部 現地法人の設立と運営 工貿易形態がありますが、最近の主な加工貿易は来料加 来と補償貿易の一補がありました。現在でもこれらの加 補償貿易は少なくなりました。 たはその他の生産物を受け取る貿易取引です。最近では、 償で提供して、その見返りに機械設備で生産した製品ま す。 初めて中国に進出するケースでは、営業活動を行わな い駐在員事務所を設立して情報収集することもありま 6 その他の進出形態 工と進料加工、さらにこれらの加工貿易で行われている 転廠加工取引があります。 進料加工とは、外国企業が原材料部品を有償で中国国 内企業に提供して、中国国内企業は完成した加工製品を 有償で外国企業に売却する取引です。来料加工が原材料 部品を無償で提供して加工賃で決済するのに対して、進 せん。 れも一般的に事業所の設立が認められるものではありま 事業所とは、中国国内の法人と建設請負契約、経営管 理契約等を締結することにより、営業登記されます。こ はいきなり支店を設立することは認められていません。 料加工は原材料部品と加工製品を有償で輸出入します。 外国企業の支店設立は、航空会社、保険会社、会計事 務所、法律事務所等に限定されており、一般の外国企業 いずれの加工貿易であっても、中国に輸入される原材料 部品は輸入段階で関税と増値税・消費税が課税されるこ となく、中国から輸出される加工製品も輸出段階で課税 されることはなく保税されます。 転廠加工取引は、中国国内の加工貿易企業が保税で輸 入した原材料部品を用いて加工した製品を、第二次加工、 第三次加工のために他の加工貿易企業に転送して再加工 した製品が、最終的に輸出される加工貿易です。転廠加 工貿易でも中国に輸入された原材料部品は保税されて関 税と増値税・消費税が課税されることはありません。 補償貿易は、外国企業が中国国内企業に機械設備を無 − 21 − 会社設立の許認可手続について教えてください? 投資総額が1億米ドル未満の奨励または許可プロジェクトであれば、地方政府でプロジェク 発展改革委員会が許可し、商務局が認可します。 商務部の認可、5千万米ドル未満であれば、地方政府の 制限プロジェクトについては、投資総額が5千万米ド ル以上であれば中央政府の国家発展改革委員会の許可と 会、外国投資委員会︶が認可します。 トの許可と会社設立の認可を受けることができます。 1 許認可権限 外国企業が中国国内で会社を新規設立するには、政府 機関から投資プロジェクトの許可と会社設立の認可を受 けなければなりません。国家発展改革委員会と商務部が 国家発展改革委員会と商務部が審査し、国務院が許可し このうち、5億米ドル以上の奨励または許可、1億米 公布している﹁外国投資産業指導目録﹂ ︵Q 7参照︶では、 ドル以上の制限の外国投資プロジェクトは、中央政府の 外国投資プロジェクトを奨励、許可、制限、禁止の四つ に分類しています。 ます。 奨励または許可の外国投資プロジェクトについては、 1億米ドル未満の奨励または許可、5千万米ドル未満 投資総額が1億米ドル以上であれば、中央政府の国家発 の制限の外国投資プロジェクトは、会社設立地の地方政 の認可が必要です。1億米ドル未満であれば、地方政府 と会社設立の審査批准を行いますが、制限プロジェクト 府の発展改革委員会と商務局がプロジェクトの審査許可 展改革委員会のプロジェクトの許可と商務部の会社設立 の発展改革委員会が許可し、商務局︵対外経済貿易委員 − 22 − Q A 2 第Ⅰ部 現地法人の設立と運営 図表 2 − 1 外国投資プロジェクトの許可と会社設立の認可権限 次に、商務局に会社設立の認可手続を行います。合弁 は省レベルの政府機関が行い、 の協議書、合弁契約書、定款、フィージビリティ報告書 等を商務局に提出して会社設立を申請しますが、認可機 奨励または許可のプロジェク ト に つ い て は、 省 レ ベ ル 以 下 関は 日以内に認可[批准]するかしないかを決定しま の 行 政 区 す な わ ち 市、 区、 県 け出します。 い、 省 レ ベ ル の 政 府 機 関 に 届 等が審査許可と審査批准を行 書の発行日から 日以内に工商行政管理局で会社登記手 准]証書が発行されます。外国投資企業認可[批准]証 す。認可された場合は、商務局から外国投資企業認可[批 2 合弁会社設立の手続 資 企 業 ︶ に 分 け ら れ ま す。 ま 3 外資企業設立の手続 続を行い、営業許可証を受領します。 30 請書を審査許可部門に提出し に、 中 国 側 が プ ロ ジ ェ ク ト 申 い て は、 合 弁 協 議 を 行 っ た 後 ず、 合 弁 企 業・ 合 作 企 業 に つ 発行します。 が申請書提出日から 日以内に書面により審査許可書を ジェクト申請書の提出を行い、県クラス以上の地方政府 す。 企 業 所 在 地 予 定 の 県 ク ラ ス 以 上 の 地 方 政 府 に プ ロ 企業名称登記を申請します。 け た 後 に、 工 商 行 政 管 理 局 で の条件と数量、公共施設に対する要求等があります。 必要な用水・電気・石炭・ガスまたはその他のエネルギー 取 得 し ま す。 審 査 確 認 書 を 受 て審査を受けて審査確認書を 申請書類の内容は、外資企業の設立趣旨、経営範囲と 規模、生産製品、使用する技術設備、用地面積と要求内容、 30 − 23 − 45 会 社 設 立 の 手 続 は、 合 弁 企 業・ 合 作 企 業 と 外 資 企 業︵ 独 外資企業︵独資企業︶を設立する時も、発展改革委員 会のプロジェクト審査許可書を取得する必要がありま 許可と認可の機関 国務院 国家発展改革委員会と商務部 地方政府の発展改革委員会と商務局 国務院 国家発展改革委員会と商務部 地方政府の発展改革委員会と商務局 プロジェクトの分類 投資総額 奨励または許可プロジェ 5 億米ドル以上 クト 1 億米ドル以上 1 億米ドル未満 制限プロジェクト 1 億米ドル以上 5 千万米ドル以上 5 千万米ドル未満 外資企業の設立申請には、申請書と添付書類を県クラ ス 以 上 の 地 方 政 府 の 商 務 局 に 提 出 し ま す。 な お、 二 社 以上で外資企業を共同設立する場合は、共同投資者が締 結した契約書副本を認可機関に届出しなければなりませ 日以内に、認可または不認可を決定します。 ん。商務局は外資企業設立申請書類のすべてを受領した 日から 外国投資者は外国投資企業認可[批准]証書を受領し た日から 日以内に工商行政管理局で登記手続を行い、 合弁企業 独資企業 に登記手続を申請しない場合は、外資企業の認可証書は 自動的に失効します。 4 許認可申請前の重要な手続 中国では会社を設立する時には、会社設立の申請を行 う前に土地を手当てしなければなりません。企業の本社 所在地は、審査認可機関が土地払下契約書または不動産 われた費用で会社宛の領収書︵発票︶ 中国では会社の費用に計上するこ と が で き る の は、 会 社 の 名 義 で 支 払 ることができません。 は会社設立後に現地法人の費用とす を 支 払 っ た 場 合 に は、 そ の 支 払 金 額 を設立する前に直接不動産の手付金 要 と な っ て き ま す。 外 国 企 業 が 会 社 を押さえるための手付金の支払が必 な り ま す。 不 動 産 の 仮 契 約 で は 土 地 申請前に不動産の仮契約等が必要に 賃借契約書等で確認する必要がありますので、企業設立 ■合弁企業設立申請書 ■共同作成したフィージビリティスタディ報告書 ■授権代表者が署名した合弁企業の協議書、契約書、定款 ■合弁企業の董事長、副董事長、董事の名簿 ■認可機関が規定するその他の資料 30 ■外資企業設立申請書 ■外資企業定款 ■外資企業法定代表者︵または董事会人選︶名簿 ■外国出資者の法律証明書類と資本信用証明書類 ■外資企業所在地予定の県クラス以上の地方政府の書面回答書 ■輸入が必要な物資明細書 ■その他報告が必要な書類 − 24 − 90 30 営業許可証を受けます。認可証書の受領日から 日以内 図表 2 − 2 会社設立申請書類 第Ⅰ部 現地法人の設立と運営 図表 2 − 3 許認可から会社設立後までの届 届出政府機関 手続の流れ プロジェクトの許可申請 発展改革委員会 会社設立の認可申請 商務局(対外経済貿易委員会等) 会社登記申請 工商行政管理局 外貨登記と資本金払込 外貨管理局 口座開設と資本金払込 銀行 税務登記 国家税務局と地方税務局 税関登記と輸入免税申請 税関、商検局 従業員採用 労働局 が必要となります。この ような不合理を解決する 方法は、外国投資者の専 用口座の開設です。 中国の外国為替管理で は、外国投資者は会社を 設立する前に専用外貨口 座を開設することができ ます。この専用外貨口座 には土地代金の支払等に 使 え る 購 入 口 座 が あ り、 専用外貨口座は外国投資 企業が設立された後にそ の企業の資本金口座に振 替えることができ、資本 金の出資検証手続を受け ることもできます。 − 25 −