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128− 公共交通について ヨーロッパ 3 ヶ月コース参加 自治体国際化協会
○公共交通について ヨーロッパ 3 ヶ月コース参加 自治体国際化協会 山川 高英(愛知県) 1 イギリス イギリスでは、バス規制緩和・民営化後に寡占化が進み、不採算路線は減便・廃止され、 国鉄も分割民営化された。今回の訪問はこれらの改革から 10∼20 年後となったが、両訪 問自治体とも PTA(Passenger Transport Authority)が存在する都市部ということもあ って、バス中心の公共交通維持に向けた取組がされており、市場原理の結果生じた歪みに 対応しようとする様子がうかがえた。また、PTA が存在しない他地域においても、第 2 層 自治体となる County が公共交通に関する責任を有しており、ともに広域的視点から施策 立案・遂行することで、域内バランスを考慮した効率的な対応が可能とのことであった。 家と車を所有することがイギリス人の人生における目標の 1 つとなっており、前サッチ ャー首相は「26 歳を過ぎてまだバスに乗っている男は、失敗者だと自覚していい」と発言 したが、今回訪問したダラムやロンドンに次いで、マンチェスターやエジンバラでも渋滞 税が検討されているように車と公共交通に対する姿勢は変化しつつあるように思われる。 一方で、例えば「ダラムにおいては公共交通への転換により自家用車を 1%減らすなら、 公共交通の輸送力を 9%増加させる必要がある」ことから、車に対する規制に合わせ、便 利かつ低廉なP&Rを整備するなど、受け皿づくりも必要である。依然としてトラブルの 多い鉄道など公共交通基盤の充実と信頼性向上を期待したい。 2 フランス フランスでは、国内交通基本法(1982 年)により保障されている「交通権」に応えるた め、市町村(ニースでは都市圏共同体)が民間事業者との契約により公共交通サービスの 内容をコントロールしながら運行させている。この際、イギリスのような撤退意思を受け た赤字補填的な補助ではなく、当初契約時に補助金額を決定し運賃収入を補完するため、 低廉な運賃にも関わらず安定した公共交通サービスを提供できる。また、補助財源には地 域の企業から徴収する交通負担金を充てるため、 自治体等の財政状況の影響を受けにくい。 このように、公共交通維持のための法・財政制度が整備されているので、公共交通利用 者にとっての利便性は高く、ニース訪問時にも安価・高頻度・快適なトラム等の恩恵にあ ずかることができ、公共交通先進国を肌で感じた。車両・景観デザインの細部に至るこだ わりなどコスト意識に疑問を感じる面もあったが、文化大国としては当然かとも思われた。 3 所感 日本の公共交通の現状はイギリスに近く、鉄道・バスの規制緩和(2000 年、2002 年) 後、不採算路線からの撤退が続いており、自治体等からの補助等で運行を継続する例が多 い。しかしながら、今後、通勤・通学者の減少と不採算路線の増加が予想される一方で、 公共交通を必要とする高齢者が増加することは避けられず、自治体の厳しい財政状況や原 油高などのコスト増を鑑みれば、現行の対処療法的な取組から変えていく必要がある。 日本の公共交通全体がフランスのように自治体主導となる可能性は小さいと思われるが、 電気・水道のような生活基盤としての公共交通の価値を再評価し、本来は黒字を出すこと を目的としない公益事業として、必要に応じて戦略的な公的資金の確保・投入が求められ るのではないか。 −128− ○子育て支援政策について ヨーロッパ 3 ヶ月コース参加 自治体国際化協会 今岡 美紀(福岡県) 日本では少子化が急速に進行し、合計特殊出生率の低下が大きな問題となっている。その 要因としては、晩婚化や未婚化、子育てに費用がかかり過ぎることなどが挙げられるが、現 在、女性の労働力率は 48.5%(H18 年)であり、子育て世代では急激に減少し、子育てと仕 事のどちらかを選択せざる得ない状況があるのが事実である。子育てと仕事を両立できる環 境を作ることが、少子化をくい止めるうえで必要不可欠なことであると考える。 ヨーロッパ先進諸国においても同様の問題を抱えている。研修先のイギリス、フランスも 例外ではない。フランスは 1994 年に出生率 1.65 まで低下したが、様々な国策を行い、回復 を遂げた国である。一方イギリスは出生率の回復について特に関与しないという姿勢をとっ ている。考え方が違う 2 つの国を訪問できたことは、とても貴重な経験であったと思う。 イギリスの自治体では、保育所などの託児施設を訪問した。出生率の回復という視点での 政策ではなく、子育てを取り巻く全体的な考えからの政策が行われていた。託児施設では、 親子が一緒に遊ぶこともでき、小学校へ通う子供を放課後に預かる学童保育も行われ、学校 でも就業時間前に朝食を提供し、放課後に子供を預かるなどの支援が行われていた。 また、このような施設では、単に子供を預かるだけでなく、親に対する子供の健康、安全 な食生活のための食育、禁煙指導、移民の親に対する英会話教室、更には就職、職業訓練な どの紹介も行われていた。こうして子供を持っていることに対する直接的な支援と、子供と その家族の生活を健康で豊かにするための間接的な支援を総合的に行っていた。 フランスは先にも述べたように、国策によって出生率が回復した国である。出産にかかる 費用は健康保険で賄われ、家族手当、乳幼児迎え入れ手当、税制上の優遇措置、雇用上の法 整備等様々な支援策がとられている。一方自治体では、県は母子の健康と保護を、市町村は 保育所等施設の管理運営を担当している。 フランスでは、女性の労働力率が 80.7%でありながら出生率が 2.00 とまさに子育てと仕 事を両立させていると言える。これは、出産育児のための休暇制度が充実していても、長い 休暇を取得することでキャリア形成に影響を及ぼしたくないと考える女性が多く、 託児施設、 認定保育ママ制度等、 働き続けたいと望む女性に応える形で支援が行われているからである。 また、鉄道、百貨店やスーパー、美術館等においても子供の数が多いほど割引が受けられ るサービスもあり、社会全体で子育てを支援する体制が整えられている。 両国では結婚に捕らわれない家族の形が一般的に存在するなど文化の違いから、日本の家 族観、子育て観とは異なる部分もあるが、将来を担う子供達を社会全体で大切に育てようと いう考えは万国共通の意識であると思う。 イギリスでのホームステイでは、父親の家事や子育てへの参加時間が多いと感じた。子育 てに関わる大多数が女性であるが、今や家庭においても社会においても男女平等の時代であ る。男性の育児参加促進や男性の視点で子育てを考えることも必要ではないだろうか。 最後に、訪問した自治体の方から、 「あなた達のように子育て支援について勉強する人が増 えれば、女性が子育てしながら働き続けることができる社会になりますね。 」と言われた。や はり子育てを理解し、 社会全体で支えていく体制を作ることが一番大切であると強く感じた。 −129− ○イギリスにおける多文化共生とポーランド人について ヨーロッパ 3 ヶ月コース参加 自治体国際化協会 宮沢 明子(東京都) 今回の研修ではイギリスとポーランドを訪問したが、特にイギリスでは、多文化共生施策 と、近年増加したというポーランド人移民について知りたいと思い、研修に臨んだ。 まず、自治体実地研修の 1 つ目に訪れたゲーツヘッドでは、エスニックマイノリティーや 外国籍の住民が比較的少なかったため、もう少し視野を広げ、多様な住民グループの共生を 目指す「コミュニティーの結束(Community Cohesion)」政策について学んだ。この政策に 関わるいくつかの部署を回り感じたことは、イギリスにはいかに多くの異質のコミュニティ ーが存在しているかということだった。マイノリティーが少ないというゲーツヘッドにさえ、 エスニック別、国籍別、宗教別コミュニティーや難民のグループなど、数多くのコミュニテ ィーが存在する。そして自治体が目指すのは、それぞれの施策がどのコミュニティーにとっ てもアクセス可能であるようにすることで、外国人というだけで特別な施策を提供すること はないという。イギリスでは既に異質なグループ同士の共存が当たり前になっており、日本 とはバックグラウンドが違うということを思い知らされた。 さらに 2つ目に訪れたリーズでは、貧困地域の外国籍児童が多く通う学校を訪問し、教育 現場における多文化共生の取り組みを見せていただいた。私が訪問した学校では、語学支援 スタッフのほか、 親への対応のためのスタッフやいじめ・家庭問題をケアするスタッフなど、 様々な専門性をもったアシスタント・スタッフが雇われ、効果的に機能していた。専門性の あるスタッフと教員との協力態勢は日本でも見習うといいのではないかと思った。 さて、このようなイギリスに、2004 年に EU に加盟したポーランドから経済移民が急速 に流入し、その数は他の東欧諸国を圧倒して 3 年間で 43 万人に上った。確かに今回のイギ リス滞在中、どこの町へ行ってもポーランド語が聞こえてきた。特に都市部には大体どこに でもポーランド人会があるそうで、そのうちの一つをバーミンガムで訪れた。会長にお話を 伺ったところ、近年、ポーランド人会の役割は大きく変わったという。第二次世界大戦の前 後に多くのポーランド人がイギリスへわたったが、その世代は高齢化し、会の存在意義も薄 れかけていたが、EU 加盟前後から様々な問題を抱えたニューカマーのポーランド人が助け を求めてこの会を訪れるようになったという。ポーランド人の最大の問題は言語で、英語が 話せないために高学歴でもなかなか職が見つからなかったり、単純労働しかできないケース がよくあるという。この会では語学講座や子供のための土曜・日曜学校なども行っていた。 滞在中はよくイギリス人にポーランド人への評価を聞いたが、多くのイギリス人が、勤勉 さや能力の高さを理由にポーランド人を高く評価していた。特にサービス業と建設業では重 宝されているようだ。ただ、ここ 1、2 年はイギリス経済の低迷とポーランド経済の成長に より、ポーランド人の数が減少し始めたという。2008 年の世界的な不況はポーランド人労働 者の帰国に拍車をかけるのではないかと思われる。 ただ、私がポーランドで偶然見たテレビ番組では、イギリスからポーランドへ帰国しても 思い通りの職に就けず、再びイギリスに帰る者が多くいると言っていた。ポーランド人の帰 国と自国での本格的な生活は、急激にではなく、今後徐々に進んでいくのだろうか。イギリ ス社会の中のポーランド人の生活はまだしばらく続くように思われる。 −130− ○地方における観光政策について ヨーロッパ 3 ヶ月コース参加 自治体国際化協会 坂本 恵美(宮崎県) 現在、観光における地域間競争が激しく、類まれない美しい自然が数多くあっても、それ だけでは実際に人々の足を向かわせることは難しい。私の派遣元である宮崎県も、観光に力 を注いでいるが、持続的な観光客の誘致にむけてはまだ可能性を秘めているように思う。で は、観光客を呼び、また仕事や他の地域に行く途中通りがかった人々に、 「もう一度来たい」 と思わせるためには、何が必要か。私はそのヒントを探すために、このテーマを選んだ。 観光政策は、日本と同じくイギリスやフランスにおいても、その経済性から非常に重要な 位置を占めている。特に世界一の観光国であるフランスにおいては、景観を保護するため、 建物の高さや道路からの距離にまで規制があるという。 今回イギリスでの自治体研修で私がお世話になった 2 つの自治体は、ともに地方都市で、 かつて賑わったビーチサイドの再活性化や、交通問題の解消など、宮崎県に非常に近い課題 を抱えているように感じた。訪問した自治体では、名所を巡る観光より、自然や景観を楽し みながら体験を行うエコツーリズムに力を入れているが、中でも興味深かったのは、季節の 影響を受けずに集客できる、文化と結びついた施策である。例えば、自転車で訪れた来館者 に入館料を割引するサービスを行う考古学博物館や、古い外観や内装をそのまま活かして改 築された建物などである。またウェールズ語やゲール語のバイリンガル標識は、住民への文 化教育とともに、観光客への魅力のひとつである。これらは来訪者を呼び込み、リピーター を増やす求心力となっている。他の地域との差別化を図るという意味でも、 「文化」は非常に 効果的である。 文化政策は収益事業とは結びつかないように思われるが、フランスにおいては国家予算の 1%が文化政策に確保されているという。フランスの自治体や共同体が、採算性をあまり考 慮せずに政策を進めている点には少々驚いたが、その先にある利益を考えると、十分価値の ある投資であると思う。住民に対し、質のよい文化を提供することにより、彼らが他の地域 に出て行くのを防ぐとともに、彼ら自身が地元の文化を外に発信するセールスマンとなる可 能性が生まれる。フランス研修で訪問したリヨンのギニョール博物館は、教育・文化・観光 が結びついた興味深い施設だった。 また、フランスの広域行政圏はとても有益である。車で 1時間以上かかる県域を越えた場 所であっても、路線バスにより片道 1 ユーロで移動できる。これは共同体内に住む人々の移 動を容易にするという住民のための施策でありながら、観光客を増やし、彼らが途中下車し て山間部の村へ訪問する機会を与えるなど、観光面でも非常に有効に働いている。 観光推進のためには、行政だけでなく、地域に住む人々や学校、企業、ボランティアを巻 き込んだ総力戦が必要である。イギリスにおけるパートナーシップやボランティア、フラン スにおけるアソシアシオンの活動は、大変参考になった。 3 ヶ月間を通して、多くの自治体の課題、その課題に対する取組みの違いを学んだ。今回 の研修の間、各自治体の方々は、言葉の不十分な私たちを温かく迎えて入れてくださり、彼 らのホスピタリティの高さに感激した。観光政策で一番大事なものは、ホスピタリティの啓 発なのかもしれない。訪問自治体への再訪、お世話になった方々への再会を強く願う。 −131− ○英国における地方自治体と他のセクターとのパートナーシップについて ヨーロッパ3ヶ月コース参加 自治体国際化協会 高橋 桐子(兵庫県) 1 概要 英国では、政府が、地方自治体と民間企業、ボランタリー・セクター、コミュニティ団体、 大学等、他のセクターとのパートナーシップを進めていることもあり、パートナーシップに よる事業計画や政策の策定及び実施、サービスの提供等が広く行われていた。 日本においては、あるイベントをNPOと協働で行うとか、指定管理者制度により施設の管 理運営をNPOに委託するというように、単発的なパートナーシップが一般的である。しかし、 英国では、 様々なセクターと大きなパートナーシップの枠組みを作り、その中で計画を作り、 実施していくというやり方がとられていた。 2 政府によるパートナーシップに基づく協定制度 政府が導入したパートナーシップの1つが「地域戦略的パートナーシップ(Local Strategic Partnership)」である。これは、地方自治体のリーダーシップや地域におけるパートナー シップを活用し、効率的な行政サービスを提供するため、地方自治体が中心となって、民間 企業、ボランタリー・セクター、コミュニティ団体等と結ばれるパートナーシップである。 そして、パートナーシップと政府とが交渉し、地域の政策目標や指標を実現するため、「地 域協定(Local Area Agreement)」を締結し、目標の達成状況に応じ、政府から財政的イン センティブが与えられる。 また、地域戦略的パートナーシップが1つの自治体で結ばれるのに対し、複数の自治体が中 心となり、地域内の民間企業、ボランタリー・セクター、コミュニティ団体等で結ばれるパ ートナーシップもある。このパートナーシップと中央政府が交渉し、地域経済の発展や再開 発等、地域の課題解決のために締結されるのが「地域連携協定(Multi Area Agreement)」 で、その目標の達成状況に応じ、政府から財政的インセンティブが与えられる。 私が訪問したミドルズバラ市では、近隣のダーリントン市、レッドカー・アンド・クリー ブランド市、ハートルプール市、ストックトン・オン・ティーズ市と、民間会社、ボランタ リー・セクター、国の関係機関、警察、大学とティーズバレー・パートナーシップを結び、 地方自治体の行政区画を超えて、地域における経済発展や再開発等のために政策を実行して いた。 3 終わりに 英国においてパートナーシップは必要不可欠のものとなっており、訪問した自治体の至る 部署で、 「パートナーシップによる○○」という説明を聞いた。 パートナーシップにおいては、 民間企業やボランタリー・セクター等は行政の下請けではなく、自治体と対等な立場となっ ており、お互いの利点を生かし、効果的、効率的に行政運営がなされていた。 自治体の財政難、職員不足が問題となっている日本でも、より効果的で効率的な行政運営 をしていかねばならないが、 その際に、英国のパートナーシップが参考になればいいと思う。 −132− ○地方自治体における文化芸術政策について考えたこと ヨーロッパ 3 ヶ月コース参加 自治体国際化協会 住田 智子(鳥取県) 今回の研修では、英国・フランス両国の様々な自治体を訪問し、研究テーマである文化芸 術政策を中心に各地域の取組について学ぶ機会をいただいた。 訪問した自治体は、事務権限や人口規模、予算規模がそれぞれ異なり、単純な比較は難し いが、自然環境や産業構造、 「地方」が持つ利点と課題は派遣元の鳥取県と共通しているとこ ろも多く、比較しながら政策について考えることができた。そして何より私の拙い英語の質 問や、小さな疑問にも根気強く対応していただいた多くの方々のおもてなしの心に触れられ たことは、何にも代え難い財産である。 1 地域のアイデンティティと文化 テーマの研究にあたりまず考えさせられたことは、 「地域のアイデンティティ」についてで ある。 英国では、 ウェールズとスコットランドの自治体に短期間ながら滞在する機会を得た。 そこでは、英国の一員でありながら「私はウェールズ人である」 「私はスコットランド人であ る」という地域意識が強くあることを、出会った多くの地元の方たちと接し、実感した。 そして自治体の政策について説明を受ける中では、 「アイデンティティ」という言葉をよく 耳にした。中でもウェールズのデンビシャーでは、 「ウェールズ語の伝承と普及」を政策の中 心に据え、言語という文化を通じて地域のアイデンティティを確立しようとする取組が印象 に残った。カウンティ内では全ての看板、公文書、観光パンフレットなどが必ず英語との 2 カ国語表記で作成される。必然的に紙の枚数は増え、重たく持運びも不便となり、コストも かかる。効率性や採算性が問われる現在では批判も否めないが、地域のアイデンティティを どう残すか、という考えの末に行われた政策は、自治体の強い意志を表していると感じた。 またフランスの自治体では地域の歴史や産業を伝承することが重要な文化政策のひとつに なっており、例えばギニョール(人形劇)博物館を運営する自治体においては、ギニョール は地域の大切なアイデンティティで、自治体はそれを紹介する使命を持っているという説明 を受けた。 このように両国では、地域のアイデンティティが文化や自治体の文化政策の柱となってい ると感じた。 2 芸術家の支援 英国の自治体で訪れた施設では、地域で活動する芸術家への支援のあり方について新しい 発想を得られたことが非常に有意義だった。公的な美術館に展示された作品の購入、アーテ ィストに対するスタジオ提供と作品販売を行う取組に加え、自治体が地元の芸術家に対し、 作品制作のための生活資金を提供している事例等、英国では地域の芸術家に対する「活動機 会の提供」から、 「活動資金獲得のための手段の提供」へと一歩踏み込んだ形での支援が行わ れていたことに非常に驚いた。自治体が芸術家個人に対して積極的な投資をすることは検討 の余地があると思うが、芸術家をひとつの職業と捉え、彼らの職業意識を高め、地域経済に 貢献できるような仕組み作りをしていることは、参考にすべき視点であると思う。 −133−