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国民ID政策と医療情報管理との 関連性や留意事項について や留意事項

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国民ID政策と医療情報管理との 関連性や留意事項について や留意事項
2nd/Feb/2013
広島県臨床検査技師会研修会
医療情報システム運用における
医療情報の取り扱いと要件について
国民ID政策と医療
国民ID
政策と医療情報管理と
情報管理との
の
関連性や留意事項について
関連性
や留意事項について
中 安
一 幸
厚生労働省政策統括官付情報政策担当参事官室 室長補佐
(併)厚生労働省大臣官房統計情報部企画課情報企画室
(併)内閣官房情報通信技術(IT)担当室
(併)内閣官房情報セキュリティセンター
(兼)北海道大学大学院保健科学研究院 客員准教授
秋田大学医学部附属病院医療情報部 非常勤講師
日本IHE協会RFP委員長
NPOデジタルフォレンジック研究会医療分科会主査
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高度情報通信ネットワーク社会形成基本法
高度情報通信ネットワーク社会形成
基本法
(平成12年法律第144号)第1条
【背景】
• 情報通信技術の活用により世界的規模で生じている急激かつ
大幅な社会経済構造の変化に適確に対応することの緊要性
【目的】
• 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ
重点的に推進する
【方法】
• 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し、基本理念及び施策の策定に
係る基本方針を定め、
• 国及び地方公共団体の責務を明らかにし、
• 並びに高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部を設置するとともに、
• 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画の作成について
定めること
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これまでの医療情報化戦略
• E-ジャパン構想
– 2000年9月21日(第150回国会)内閣総理大臣所信表明演説
– 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)
– 2001年1月6日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)
• e-Japan戦略
– e-Japan重点計画~e-Japan2002プログラム~e-Japan重点計画2002
• e-Japan戦略II
– e-Japan重点計画2003~e-Japan戦略II加速化パッケージ~e-Japan重点計
画2004~IT政策パッケージ2005
• IT新改革戦略
• u-Japan
• i-Japan2015
– 日本版EHR
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「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」
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EHR/PHR
• EHR(Electronic Health Record)
– 医療機関等において電磁的記録による医療情報の
蓄積や提供が可能な状況にあって
– それにより蓄積される医療情報を関係者間で適切
に共有し
– 医療の効率化や質の向上,医学研究や医療政策
のevidenceとして活用できるような社会基盤
• PHR(Personal Health Record)
– そういう制度・社会基盤ができたら、相当の長期に
わたり本人の健康増進等のために電子化された医
療情報を活用できるサービスを提供すること又はそ
のサービス
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コントロール権の行使
引き出し
窓口
暗証
番号
ATM
オンライン
バンキング
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振り込み
必要な政策
1. 目的

まずは「情報化」「広域化」「長期化」のメリット
2. インフラ
インフラ(情報機器、ネットワーク等)

データを生成・蓄積・伝送するため
3. ID

データ取扱機関、データ取扱者(作成者・送信者・受信者)、データ対象
者(EHRでは患者)を識別・認証する手段
4. プライヴァシーポリシ

広域化・長期化するデータ活用においても、患者(と医療者)の権利侵
害を起こさない
5. セキュリティ

医療データの通常の運用においてリスクの分析・評価と回避手段
6. 標準化

医療データの可用性・意味的相互運用性を確保する
7. And so on…
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この講義の進め方
• 個人情報保護法を医療等分野で執行するための特別法
にまつわる議論が進捗中です。
• 医療分野に国民的なIDの導入を検討するにあたっても、
プライヴァシーリスクを評価する必要があるため、いった
ん「医療とプライヴァシー」について考えてみます。
• 質問を設定したので、答えてみてください。
• 常識的でないことも「なぜか」と考えるために質問します。
• 正解というものはありません。思ったままでけっこうです。
また統一的見解を作ろうとするものでもありません。
• 特段に機微性が高い反面、二次利用の有用性が高いと
言われる医療情報の取り扱いについて考えます。
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基本的理解
• 「電子化された医療情報の取扱」に格段の保護
が要求される理由
– 財産上の損失を与えられた場合と比べて、情報漏
洩により被害を被った時の救済の困難さ
– 医療情報に特有の機微性
– ネットワーク時代の危険度
• 病病連携、病診連携と「EHR」を比べると
– 関係者
– 情報の利用範囲
– 期間
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設 問
MOOK医療科学No.3「改訂版PACSの構築と運用のすべて」, 渋谷 尚,
中島 隆,鈴木 美奈子,薄井 庸孝,藤澤 英文,新田 勝,浮洲 龍太郎,田中
絵理子, 馬場 麻衣子,野口 邦晴,平澤 英紀, 安田 亮, 木村 通男, 中
安 一幸/共著,櫛橋民夫,武中泰樹/編著,医療科学社,4月20日,2010年.
2009年02月16日更新 紀伊民報
• 3月に初めての卒業式を迎えるⅩ県の県立Y中学校(Z校長)は,
個人情報保護法などを理由に,会場での保護者らによるカメラや
ビデオ撮影を事実上禁止する方針を立てている.すでに入学式で
も実施しているが,保護者から「子どもの成長を記録に残したい.
撮影をさせてほしい」などの声が上がっている.県教委は「学校が
決めた事柄で,県教委が良い悪いは言えない.良識の範囲内の
撮影なら法律には抵触しないだろう」と話している.
•
同校では,本年度から式典で保護者に撮影をしないよう求めて
おり,入学式の際は,保護者あての案内ハガキに「個人情報保護
法により,写真・ビデオの撮影等ご遠慮ください」と記載したり,会
場で協力を呼び掛けたりした.3月14日の卒業式のハガキはまだ
送付していないが,同様の文面にするという.
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設 問
•
ある3年生の保護者はこのほど,卒業式を前に「子どもを思う親
として,成長の節目を祝って,記録に残したい」と同校に撮影許可
を申し入れした.
•
これに対し,Z校長は「保護者としての気持ちはよく分かるが,写
るのが自分の子どもだけではない場合,個人情報保護法で規制さ
れる.撮影されるのを嫌がる生徒や保護者がいるかもしれないし,
ほかに流用される可能性もある.その場合は学校として責任が持
てない」と説明.多くの保護者が一斉に撮影することになると,式を
厳粛に開くことができなくなることも理由に挙げ,理解を求めた.
•
同中学と一貫教育をしているY高校でも昨年度の卒業式から,保
護者に写真やビデオ撮影をしないよう呼び掛けている.
•
県教育委員会は「県立校での式典における保護者の撮影につい
ては学校独自の判断で,実態を把握していない」と話している.
•
Y市教育委員会も,小中学校の式典における対応は学校の判断
に任せている.しかし,撮影を禁止するという話は現場からは聞い
ていないという.
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考えてみて下さい
1. Z校長の決定は正しいでしょうか。
1. 個人情報保護法は、偶然写る他人の子の肖像権は
保護していません
2. 「一斉に親たちが撮影を始めると式が厳粛に開催で
きない」との理由はどうでしょうか
2. 親の気持ち、本人の気持ちについてどう考えま
すか
3. 「『写真』の使われ方」はどうですか
1. 「ネガ・印画紙の焼き増し」と「ブログへのUP」
2. 「写真の配布先」と「悪意の(あるかもしれない)web
閲覧者」と「許諾なき再配布」
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設 問
林 紘一郎「『個人データ』の法的保護:情報法の客体論・序説」
情報セキュリティ総合科学 第1 号(2009 )74頁,88頁.
物を盗めば「窃盗罪」に問われますし、子供が親から最初に教わる倫理は「人のものを盗ん
ではいけません」ということだといわれています。それでは、情報を盗むことは法律的にどう
位置づけられているか、倫理的にはどう考えるべきかを、以下のケースごとに、自分の経験
にも照らし合わせて考えてみてください。
① 電車で座っているときに、隣の人が読んでいる新聞を盗み見する。
② 有料の観光ツアーの一団に密かに加わり、ガイドの案内を盗み聞きする。
③ 試験において、隣の人の答案を書き写す。
④ 書店に行って、他人の著作からレポートの役に立ちそうな部分を書き写す。
⑤ 同じことを、カメラ付携帯で写し取る。
⑥ 発注先から預かった個人情報を、友人に漏らす。
⑦ アルバイト先で知り得た営業秘密を、ライバル企業に就職したときに利用する。
⑧ カリスマ美容師に弟子入りして、ノウハウを盗む。
⑨ 同じことを、許諾なくビデオに収録する。
【考え方のヒント】
法律問題として考える場合、2 つの予備知識が必要です。第1 は、窃盗罪における「物」(厳密には「財物」)とは何かと
いうこと。第2 は、秘密(という情報)を盗んだり漏らしたりすることは「窃盗」と同じように扱われているかということ。なお
「知的財産」として守られるべき「情報」は、「窃盗」の対象としてではなく、別の観点から刑事罰の対象になります。
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刑法における位置付け
(窃盗)
第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下
の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(他人の占有等に係る自己の財物)
第242条 自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所
の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪
については、他人の財物とみなす。
(電気)
第245条 この章の罪については、電気は、財物とみなす。
他人が占有する財物を占有者の意思に反し自己又は第三者の
占有に移転させる行為をいうもの。
財物とは有体物。無体物であっても電気は財物とすると明示さ
れることから、情報(という無体物)は財物でないと解せる。
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罰則の在り方
• 漏洩事故に悩まされたことのある企業からは、「行為者が罰
せられることがないのに、安全管理義務を負う企業だけが責
任を問われるのでは公平でない」という声が強いし、現に直
罰方式の提案が少なからずある
– 例えば石井夏生利「個人情報の窃取・漏えいと刑事罰」堀部政男(編)『プライバシー・個人情
報保護の新課題』(商事法務 2009)、堀部政男「現行法ではヤフーBB 事件の再発は防げない
―個人情報窃盗罪の新設を」『日本の論点2005』(文芸春秋社)。
• 現在の法制では、主務官庁の改善命令が出たにもかかわら
ず、それに違背した場合に初めて刑事罰が課されることにな
っている(間接罰)が、「個人情報漏洩罪」を新設し行為者を
直接罰することにして、抑止効果を高めたいとの主張で、そ
れ自体には合理性がある。
• 諸外国においても「データ保護法」における「データ漏洩罪」
のような形で先例があり、立法論として可能な提案である。
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善きサマリア人の法(good Samaritan law)
窮地にある他人の救護、救済のため、無償で善意の行動
をとった場合、良識的かつ誠実にした行動について、結果
として失敗しても責任を問われることはないという趣旨の法
ある人がエルサレムからエリコへ下る道でおいはぎに襲われた。
おいはぎ達は服をはぎ取り金品を奪い、その上その人に大怪我をさ
せて置き去りにしてしまった。
たまたま通りかかった祭司は、反対側を通り過ぎていった。
同じように通りがかったレビ人も見て見ぬふりをした。
しかしあるサマリア人は彼を見て憐れに思い、傷の手当をして自分の
家畜に乗せて宿屋に連れて行き介抱してやった。翌日、そのサマリア
人は銀貨2枚を宿屋の主人に渡して言った。『介抱してあげてください
。もし足りなければ帰りに私が払います。』
— ルカによる福音書第10章第29~37節
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免責の考え方
民法(緊急事務管理)
第698条 管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危
害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過
失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任
を負わない。
刑法(緊急避難)
第37条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在
の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生
じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰し
ない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減
軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
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考えてみて下さい
1. 情報漏洩や保護措置にかかる義務違反への罰
則についてどう考えますか。
1. 故意の場合と過失の場合について考えて下さい
2. 厳罰を科されたとしても、漏洩による被害は救済が
困難と言われますが、それでも厳罰化の方向で議論
すべきでしょうか
3. 抑止効果と関係者の委縮についても考えて下さい
2. 法制等による保護(関係者の責任)と本人による
保護(自己責任)のバランスについてどう考えま
すか
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設 問
樋口範雄「医療の法律相談」畔柳達雄・児玉安司・樋口範雄 編(有斐閣,2008)98-100頁.
2005 (平成17) 年4月から個人情報保護法が全面施
行され、医療現場にも大きな影響を与えています。そ
もそも基本的な視点に立ち返って、個人情報保護法
が医療分野に適用される際に、最も重要なポイントは
何なのでしょうか。
また従来、カルテは誰のものかというような議論が盛
んになされてきましたが、個人情報保護法は, 医療情
報は患者のものだと明確に記しているのでしょうか。
それとも、カルテを作成した医師や看護記録を作成し
た看護師のものだとしているのでしょうか。
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報道に見る「個人情報保護法」と「医療現場」
• JR福知山線脱線事故による多数の負傷者が最寄り
の各病院に運び込まれたが、負傷者に関する問合
せへの対応が病院ごとに分かれた
– 直ちに調べて回答したところ
– 個人情報保護法があるので、本人の同意がない限りそ
の人が病院に運ばれて手当を受けているか否かを含め
て一切答えられないとしたところ
• 病院の窓口で患者の名前を呼んでいいかどうか
• 関西の学校で具合の悪くなった生徒を病院に連れ
て行った教師に対し、病院が、「親でない教師には
病状を説明できない」
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医療情報に関する患者の希望
• 自らの医療情報が知らない誰かに知られている
ようなことがないようにしてほしい
– 持病に関係する商品のダイレクトメール
• 医療情報による差別を受けるようなことがないよ
うにしてほしい
– 採用、昇進、結婚、保険加入
• 自分を大事に扱ってほしい、同様に自分の情報
も大事に扱ってほしい
– 自分の情報をいい加減に扱う医療機関は、自分ヘの
診療もいい加減である可能性
– 少なくとも、自分を患者として大事にしていないことの
証左
– 形式的な対応は、かえって不信を招くおそれがある
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医療情報
医療
情報は誰のものか
は誰のものか
• 個人情報保護法は、個人情報が誰のものかは
問わない
– 原則として情報は利用の対象であって、所有の対象
ではない
– 情報はものではない
• 医療情報には患者の情報であるという側面と同
時に、カルテを書いた医師の情報という側面をも
つ
– ガイドラインは医療情報にこのような二面性があるこ
とを認めつつも、
– 実際には、医療情報が誰のものかを問うのは無意味
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法律でカルテ開示を定めることへの反対論
• 医療情報には、血液検査データのような客観
的な事実に関する情報の部分と、それをみて
医師等が何らかの判断をし、評価をしている
部分があり、患者ヘのカルテ開示の対象とな
るのは前者だけだとする議論
• カルテの中には患者の情報だけでなく医師等
の情報も入っており、医師の情報については
、まさに医師の個人情報であって開示しなく
てよいという議論
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これらの議論ヘのガイドラインの対処
• 個人情報は「個人に『関する』情報」(個人情報保護法2条1項)
– 「個人の属性行動、個人に対する評価、個人が創作した表現等、当該個
人と関係するすべての情報が含まれる」と解釈される
– そこには個人に対する評価が含まれており、評価情報も開示対象
• 法律条文上の違い
– 第三者提供につき同意を不要とする場面では「法令に基づく場合」(23条1
項1号)
– 開示の例外には「他の法令に違反することとなる場合」(25条1項3号)
• わざわざ「他の」という文言が挿入されている
– 前者は個人情報保護法自体を含むが後者は含まない
• 患者からの開示請求で開示される医療情報
– 医師の情報が含まれていて、一見、個人情報保護法に違反すると思われ
る場合であっても『個人情報保護法は無関係』
– その情報には作成者である医師や看護師の情報も含まれていても、開示
しなければならない
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医療に関する個人データ
• 例えば「グラビア」では
– カメラマンは「著作権」、モデルは「肖像権」を、それぞれ主張できる
– 出版社は出版するために、カメラマンフィー、モデル料という金銭で権利を
(それぞれが主張しないように)処理する
• 医療データに関しては、原資に「みんなのお金【社会保
障費、税金】」が投入されている
– みんなのために活用する、という還元があり得る
• みんなのための活用
– 新たな治療法の研究、新薬の開発、予防策の確立、医療提供体制の整備
– 自分のデータを提供することで、子や孫の代の医療がよくなるのなら
– 提供しない、ということは、医療の進歩の恩恵を享受することを否定するこ
とに
– そもそも今日の治療は過去の知見の蓄積によるもの
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考えてみて下さい
1. 結局、医療情報は誰のコントロール下に置かれるべき
でしょうか
2. 本人の自由になるとして「個人データを売る」という行為
は、道徳的に非難されるべきでしょうか
1. 売血・臓器売買(無償提供)・売春などとも比較してください。
3. 「他人の個人データ」の場合はどうでしょうか
4. どのような目的なら、いちいち患者本人の同意を得ずに
活用可能と考えられますか
5. 活用の結果として金銭的価値を生んだ場合、その利益
はどのように分配されるべきと考えますか
Copyright © 2013 By Cazzyuki Nakayasu , MHLW
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設 問
児玉安司「医療の法律相談」畔柳達雄・児玉安司・樋口範雄 編(有斐閣,2008)132-135頁.
普通自動車同士が正面衝突して大破する交通事故が発
生し、一方の自動車の運転手のAさんは意識不明の重体
に陥り救急車でB医療法人の開設するC総合病院に搬送さ
れてきました。
救急、当直のD医師は、採血して緊急の血液検査を指示し
ました。Aさんの呼気から酒の臭いがしたため意識障害の
鑑別診断に必要だと考えて、D医師は他の項目とともに血
中アルコール濃度も測定するように指示したところ、泥酔
に相当する濃度のアルコールが検出されました。
警察からC総合病院に対してAさんの血中アルコール濃度
を教えてほしいという照会がきています。病院としては、Aさ
んの個人情報保護の観点から問題にならないか、懸念し
ています。どのように対応すればよいでしようか。
Copyright © 2013 By Cazzyuki Nakayasu , MHLW
関係法令等
•
•
【刑事訴訟法(昭和23年7月10法律第131号,最終改正平成22年4月27日法律第26号)】
– 第百九十七条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができ
る。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすること
ができない。
– 2 捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求める
ことができる。
【個人情報の保護に関する法律(平成15年5月30日法律第57号,最終改正平成21年6月5
日法律第49号)】
– 第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の
同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
– 一 法令に基づく場合
– 二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意
を得ることが困難であるとき。
– 三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合で
あって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
– 四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を
遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより
当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
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捜査関係事項照会書の適正な運用について(通達)
(平成11年12月7日丁生企発170号,丁交企発203号,丁備企発49号,警視庁丁刑企発211号)
《略》 また、近年、刑事訴訟法197条2項による捜査関係事項照会は、国民の権利意識の高まりを背景
に、業務負担やプライバシー保護を理由として、回答がより慎重になされる傾向が顕著となっている。
各都道府県警察にあっては、将来にわたって本照会に対する協力を確保していくため、下記の事項を踏
まえ、所要の規定整備を行うとともに、指導教養を徹底し、捜査関係事項照会書の適切な運用に努められ
たい。 《略》
記
1 捜査関係事項照会書に関する基本的な考え方
(1) 回答義務
刑事訴訟法197条2項は、「捜査については、公務所又は公私の団体(以下「公
務所等」という。)に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」 と規定
している。
本照会は、公務所等に報告義務を負わせるものであることから、当該公務所等
は報告することが国の重大な利益を害する場合を除いては、当該照会に対する
回答を拒否できないものと解される。また、同項に基づく報告については、国家
公務員法等の守秘義務規定には抵触しないと解されている。しかし、回答を拒
否した場合でも罰則の適用はなく、照会先である公務所等に対し、強制力をもっ
て回答を求めることができないことから、回答に伴う業務負担等、相手方に配慮
した照会に努めなければならない。
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捜査関係事項照会書の適正な運用について(通達)
(平成11年12月7日丁生企発170号,丁交企発203号,丁備企発49号,警視庁丁刑企発211号)
(2) 照会事項
照会により報告を求めることができる事項は、捜査のため必要な事項一般であるが、これ
らの照会は、具体的な捜査に関して記録に基づき事実関係の報告を求めるものであって
、照会を受けた側が新たに特別の調査を行う必要のある事項であるとか、特に専門的知
識に基づく新たな判断を必要とするような事項にはなじまないので、
○ 中央官庁の所管する法令の抽象的一般的な解釈
○ いまだ診断書が発行されていない段階において、公私の団体である病院又は診療
所に対し、通院加療の必要日数などについて報告を求めることはできない。
また、本照会は、あくまで捜査のための必要事項の「報告」の要求であることから、直接帳
簿、書類等(謄本を含む)の提出を求めることは本条を根拠としてはできない。ただし、公
務所等が自発的に謄本等を提出して報告に代えることは何ら差し支えない。
(3) 費用の負担
刑事訴訟法197条2項の規定に基づく照会への回答作成に伴う費用は、公務
所等の報告義務の履行に伴う通常の範囲の経費(書類作成費用)として公務所
等が負担すべきものである。ただし、義務の履行に伴う費用の負担が報告事項
の内容や量、求めた報告の方法等を勘案し、社会通念上妥当とされる範囲を超
えるものについて費用の請求があった場合は、その経費の全部又は一部を捜
査機関が負担するのが妥当である。
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必携 診療に関する個人情報の取扱い指針第1版
(日本医師会,平成18年10月)
• それが強制力を伴わず回答すべきか否かの判断が医
療機関に委ねられている場合には、情報提供すること
の公益性と本人の個人情報保護の利益とを比較衡量し
、 回答の可否、方法、範囲等について慎重に検討し対
応しなければならない。また状況に応じて、弁護士等に
相談する、本人の同意を得たうえで回答する、捜査等に
支障がない場合には情報提供することを患者本人に通
知する等の対応も考慮する必要がある
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考えてみて下さい
1. 本事例の場合「情報提供することの公益性」
と「本人の個人情報保護の利益」との比較衡
量をどう考えますか
2. 「EHR」を「国民全員参加」と考えた場合はど
うですか
3. 警察照会への回答作成に伴う費用は、公務
所等の報告義務の履行に伴う通常の範囲
の経費(書類作成費用)として公務所等が負
担すべきものである(ただし書きあり)とされ
ていますが、「EHR」ではどうですか
Copyright © 2013 By Cazzyuki Nakayasu , MHLW
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設 問
救急搬送を受けた患者について、意識もなく来院歴がな
い(確認できない)。警察に身元照会の協力を依頼するが
事件性の有無が不明のため協力が得られそうにない。と
りあえず「倒れていた場所」にちなんで『エキマエさん』と名
付けておいて、緊急に手術に踏み切らねばならない。
救急や手術室のスタッフから、血液型や感染有無、アレル
ギー等の情報が欲しいと言われるがどうしようもない。
手術後、家族から連絡があり、身元が判明し、近所の診
療所に受診歴があることがわかったため、既往について
照会するが回答を拒否された。
全身状態を診た医師からは、違法薬物中毒の可能性が
指摘される。
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考えてみて下さい
1. 止むを得ず、財布や携帯電話等を確認せざる
を得ないことをどう考えますか
2. 身元照会の協力を警察や市役所等に求めても
拒まれる場合はどうですか
3. 先の事例と併せて、犯罪に関与しているおそれ
がある場合はどうですか
1. 「患者のプライヴァシーと公益通報」に加え、麻薬中
毒者を診察したなら通報義務があり、覚せい剤中
毒者では「通報できる」との状況
2. 公務員(大学独法職員は含まれる)には義務づけ
3. 違法薬物等を所持していた場合、返却するか
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参 考
麻薬及び向精神薬取締法
(昭和28年3月17日法律第14号;最終改正:平成18年6月14日法律第69号)
(医師の届出等)
第58条の二 医師は、診察の結果受診者が麻薬中毒者であると診断したときは、
すみやかに、その者の氏名、住所、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事
項をその者の居住地(居住地がないか、又は居住地が明らかでない者について
は、現在地とする。以下この章において同じ。)の都道府県知事に届け出なけれ
ばならない。
2 都道府県知事は、前項の届出を受けたときは、すみやかに厚生労働大臣に報
告しなければならない。
刑事訴訟法
(昭和23年7月10日法律第131号;最終改正:平成23年6月24日法律第74号)
第239条 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
2 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発
をしなければならない。
※覚せい剤取締法には通報義務規定なし
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考えてみて下さい
4. 診療所に既往や投薬歴を尋ねても回答拒否
1. どういう手順を踏めば回答してもらえると思います
か
2. 診療所の立場ではどうですか
5. 病院では、この患者の状況(データ)について
の扱い(公表・提供等)についてどう考えるべき
ですか
1.
2.
3.
4.
家族・親戚からの照会
患者の療養の世話をしている介護事業者
近医との診療情報連携
学会における症例研究
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医療情報の活用と保護
• 現下の個人情報保護法制では医療情報の活用
と保護には不向きな点がある
• ここでは仮に、「健康個人情報の利用と保護に
「健康個人情報の利用と保護に
関する法律案(仮称)」とでも称して考察する
関する法律案(仮称)」
– 個人情報保護法6条による医療分野の特段の措置
6
– 公共の利益に資する健康個人情報の活用を促進す
るため、医療情報に特有の機微性に十分に配慮し
た情報保護法制
情報保護法制とし、患者並びに医療者が安心し
て情報の利活用ができる環境を整える
– 前記目的を達するため、医療等分野の情報化の一
層の推進を目指すとともに「健康個人番号
健康個人番号」を創設
する
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医療分野から見た個人情報保護法とは
1. 情報のセンシティヴ性を問題にしてはいない
– 疾患の重篤さ、患者の社会的地位、結婚・就職等における不利
2. 死者に関する情報を対象としていない
– 治療中の患者が死亡、遺族の立場
3. 本人同意/本人の求めを優先する原則が生かされにくい局面が
ある
– 開示の可否、患者の認識・意思表示
4. 個人識別性をなくした情報は個人情報でない
– 医療情報は身体の特徴を良く表すことがあり、単に名前を消しただけでは匿名化と
いえない状況がある
5. 公益上の必要性から生じる情報活用に対する特別の配慮に関す
る規定が明確でない
– 学術研究、公衆衛生上の措置、犯罪捜査
6. 対象の別(民間・行政機関・独法の別)による法律の違い、自治
体は条例で
– 結果として規制の高さの違いが情報連携の妨げに
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医療分野への特別の配慮
【参議院個人情報保護に関する特別委員会
個人情報の保護に関する法律案に対する附帯決議】
五 医療(遺伝子治療等先端的医療技術の確立のため国民の協
力が不可欠な分野についての研究・開発・利用を含む)、金融・
信用、情報通信等、国民から高いレベルでの個人情報の保護
が求められている分野について、特に適正な取扱いの厳格な
実施を確保する必要がある個人情報を保護するための個別法
を早急に検討し、本法の全面施行時には少なくとも一定の具体
的結論を得ること。
※医療は特別に厳しい保護が必要ながら、医療情報を活用でき
なければ研究等もできないのだから、個人情報保護法では適
さない局面があり、「医療の個別法」が必要なのではないか、と
いう意味
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医療分野における個人情報保護
• 「個人情報保護法」はあらゆる個人情報を対象と
する法律
– 分野ごとの措置を要請
– 「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な
取扱いのためのガイドライン」
– 法第6条及び第8条の規定に基づき、法の対象となる
病院、診療所、薬局、介護保険法に規定する居宅サ
ービス事業を行う者等の事業者等が行う個人情報の
適正な取扱いの確保に関する活動を支援するための
ガイドライン
– 厚生労働大臣が法を執行する際の基準
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個人情報の保護に関する法令等の適用関係
個人情報の保護に関する法律
(平成15年法律第57号)
ガイドライン
行政機関の保有する
個人情報の保護に関する法律
(平成15年法律第58号)
ガイドライン
独立行政法人等の保有する
個人情報の保護に関する法律
(平成15年法律第59号)
ガイドライン
○○県個人情報保護条例
ガイドライン
○○市個人情報保護条例
ガイドライン
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個人情報の保護に関する法令等の適用関係
行政機関の保有する
個人情報の保護に関する法律
(平成15年法律第58号)
独立行政法人等の保有する
個人情報の保護に関する法律
(平成15年法律第59号)
○○県個人情報保護条例
○○市個人情報保護条例
医療情報の利活用と保護に関する法律
個人情報の保護に関する法律
(平成15年法律第57号)
ガイドライン
番号制度
マイナンバー法
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