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タイトル: 3DCG 映像制作 「海」

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タイトル: 3DCG 映像制作 「海」
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タイトル: 3DCG 映像制作 「海」
提出年月 : 平成 13 年 1 月 11 日
指導教員 :
草薙 信照
学籍番号 :
M97−5008
クラス : 4 年 M 組 8 番
氏名 : 井 上 寛 之
目次
1. はじめに...................................................................................................................................1
2. 制作方針・最終結果.................................................................................................................1
2.1. テーマおよび制作方針 ..................................................................................................1
2.2. 最終出力のシーンカット ..............................................................................................2
3. 制作環境...................................................................................................................................3
4. シーン構成 ...............................................................................................................................4
4.1. オブジェクト制作 .........................................................................................................4
4.1.1. キャラクター......................................................................................................4
4.1.2. ヨット.................................................................................................................5
4.2. シーンコントロールとオブジェクトジオメトリの変形 ...............................................7
4.2.1. シーントコントロール .......................................................................................7
4.2.2. ウェイトマップを使用したボーンデフォメーション........................................7
4.2.3. モーフマップとディスプレイスメントマップ...................................................8
4.2.4. Motion Desingner を使用した衣服のアニメーション....................................10
4.3. シーン構造 − 海面、大気、水中 .......................................................................... 11
4.3.1. 海面の表現 ....................................................................................................... 11
4.3.2. 大気の表現 .......................................................................................................12
4.3.3. 海中の表現 .......................................................................................................16
5. シーンレンダリング、加工・補正・編集..............................................................................18
5.1. シーンレンダリング....................................................................................................18
5.1.1. アンチエリアシングの設定..............................................................................18
5.1.2. レイトレーシングの設定 .................................................................................18
5.1.3. 分散レンダリング ............................................................................................19
5.2. 出力データの加工、編集 ............................................................................................20
5.2.1. AfterEffect による画像の補正と加工..............................................................20
5.2.2. Premiere によるムービー編集 ........................................................................20
6. 制作を終えて、今後の課題....................................................................................................21
7. 参考文献.................................................................................................................................22
3DCG 映像制作 「海」
1. はじめに
私の記憶に残る一番古い3DCG映像は、「NHKスペシャル 驚異の小宇宙人体」において
つかわれていたものである。この番組では、普通では見ることの出来ない超ミクロの世界をCG
を使って表現している。体の各器官は、きわめて独特なイメージを持って解釈され、CG技術を
使っているということ以上の印象をこの映像に与えた。当時、その映像は番組本体を離れ、映像
自体の特集も組まれるほどだったが、3DCG映像制作には、きわめて時間のかかるものである
と説明していた。
ここ数年で様々な場所で、多くの CG 映像を目にするようになった。特に3DCG映像の使用
は大きく伸び、テレビ放送においてもCG制作であるとわかる映像が頻繁にみられるようになっ
た。また、ユーザーの作った作品の中にも傑出したクオリティを持つものが現われ、注目を集め
ている。現時点では一種の流行に近い形で、これらの映像が扱われている感は拭えないが、CG
を用いた画像や映像は、一つの表現方法として定着しつつあるいえる。
私は、本ゼミにおいて CG に関することを中心に学んできた。特に 1999 年より、3DCG制
作ソフトの「Lightwave3D」
(当時は Version5.6 であった)を扱うようになってからは、いっそ
う本格的に3DCGの制作を実践してきた。それらこの1年半の間に取り組んできたことを、し
っかりとした形にするため今回の制作を行った。
2. 制作方針・最終結果
2.1. テーマおよび制作方針
今回の制作テーマは、「海」とし、海が織りなす世界の一部をCGで表現する事を試みた。
現在、海の表現は、CGソフトについている機能を使って擬似的に表現するか、実際のデータ
をシミュレートし再現するという二種類がある。後者の技術を用いれば、海洋だけでなく大気を
含め実写と遜色ないものを作ることも可能である。さらに。自然の波に加えて、船の航跡などで
発生する二次的な波にいたるまで、忠実な再現も可能となる。しかし、それら再現をするための
ソフトウェアは、ソフトウェア自体が高価な上、連携できる3DCGツールも選別される。また、
海そのもののシミュレートと、航跡などの波のシミュレートには、別のソフトが必要な場合が多
い。最近では、海や大気の表現では、安価で良質のシミュレータが出てきてはいるが、多くは静
止画むきであり、今回のメインツールである Lightwave との連携は困難である。また、波のシ
ミュレータには、安価で性能のよいなものは見あたらない。
そのため今回は、Lightwave 付属の機能を主として、実在の海の光景を擬似的に表現すること
を主とした。なお、レンダリング後の画像に対しても、積極的に加工、補正をかけて品質を上げ
ることにする。
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3DCG 映像制作 「海」
2.2. 最終出力のシーンカット
今回制作した映像のシーンカットである。Lightwave で個別に作った8個のシーンを全てまと
めて「海 −OCEAN−」とした。最終出力は NTSC 解像度(640×480)
、秒間 30 フレームで行
った。
■海−OCEAN− 1分2秒 1859 フレーム
CLOUD&WAKE 1
CLOUD&WAKE 2
DIVING SCENE 1
SPHRAENA PICUDA
UNDERWATER LIGHT
YACHT&FUYUMI 1
YACHT&FUYUMI 2
DIVING SCENE 2
VIEW −SUNSET−
図2-1 海 −OCEAN−よりシーンカットの一覧
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3DCG 映像制作 「海」
3. 制作環境
今回の制作は、以下のコンピュータとソフトウェアを使用して行った。なお、使用プラグイン
で Lightwave に標準で搭載されているものは、記載を省略した。
ここ数年で信じられないほどのコンピュータの低価格化が進んでいる。特にハードディスクと
メモリの値段の定価と大容量化は著しく、CG制作で必要になるハードウェア条件を満たすのに
かかる費用はかなり低く抑えることが出来るようになった。3DCG映像制作用としては、比較
的低価格になる Lightwave であっても20万円近くかかる代物であり、簡単には購入に踏み切
れない。
■使用ハードウェア
PC/AT互換機
CPU
:Pentium III 600Mhz(Dual)
メモリ :768MB
VGA
:MGA−G400
OS
:Wimdows2000 SP1
■使用ソフトウェア
Lightwave Ver.6.0 E2 (D-storm)
Lightwave Ver.6.5 (D-storm)
PhotoShop Ver.5.0.2 (Adobe)
AfterEffect Ver.3.1 (Adobe)
Premiere Ver.4.2 (Adobe)
簡単ムービー作成 AVI Maker V 1.32 (多摩の岳夫氏)
■使用プラグイン
Plane Belt Optimizer Ver 1.0 (岩崎 洋一郎氏)
MirrorWeights Ver 1.1 (岩崎 洋一郎氏)
QuickMirror (岩崎 洋一郎氏)
面取りぃ(Mentory) Ver.2.03 (風見 圭治氏/今村 嘉男氏)
KW-Spread for LightWave[6](Intel) Ver.1.0 (渡辺 賢一氏)
Uuwrap (Ernie Wright 氏)
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3DCG 映像制作 「海」
4. シーン構成
4.1. オブジェクト制作
シーンを構成するアイテムのうち、オブジェクトは LightwaveModeler によって制作される。
この実体を持つオブジェクトは、オブジェクトジオメトリと呼ばれ、Modeler 上で制作した後、
Layout に読み込み、必要な処理を加えた後レンダリングされる。
オブジェクトは、ポリゴンによってモデリングされたものに、テクスチャマッピングを加えて
仕上げている。
4.1.1. キャラクター
今回のメインキャラクターは、主にヨット上での服装のものと、スキューバーダイビングのシ
ーンのために、ウェットスーツを装備したものを用意した。原画を元に3Dに起こし、修正を加
えてある。なお、キャラクターの原画の制作は、同じゼミの坪井美智子さんに依頼した。
■キャラクター原画とレンダリング画像
図4-1 キャラクター原画
図4-2(a) レンダリング画像1
図4-2(b) レンダリング画像2
図4-2(c) レンダリング画像3
名前:蓼川 冬美
通常の衣服
ダイビングスーツ
水着(未使用)
■オブジェクト構造
図4-3 オブジェクト構造
オブジェクトは、サブパッチ(SubPatch)を
利用してモデリングしてある。画像は、図 42(a)レンダリング画像1のオブジェクト。
左から、正面図、側面図、上面図
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3DCG 映像制作 「海」
■テクスチャマップ画像
キャラクターオブジェクトに使用したテクスチャ画像の一部
図4-4 (a) キャラクターテクスチャマップ画像 1
左から、顔のカラーマップ、バンプマップ、スペキュラーマップ、頭部のカラーマップ、髪の毛の透過マップ
図4-4 (b) キャラクターテクスチャマップ画像 2
左から、眼球のカラーマップ、眼球のスペキュラーマップ、ダイビングスーツのカラーマップ、水着のカラーマップ、水着のバンプマップ
肌のカラーマップ、肌のバンプマップ、シャツのカラーマップ、スカートのカラーマップ、靴のカラーマップ、
4.1.2. ヨット
海のシーンをよりダイナミックなものとして表現するため、海洋上のオブジェクトとしてヨッ
トを選択した。ヨットの形状は、プラモデルとして一般に販売してあったのもをベースとしてあ
る。
■レンダリング画像
図4-5 レンダリング画像
ヨット
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3DCG 映像制作 「海」
■オブジェクト構造
図4-6 ヨットオブジェクト構造
オブジェクトは、サブパッチ(SubPatch)
を利用してモデリングしたのち、細分化し
適正なポリゴン数に減少させてある。画像
は、図 4-5 レンダリング画像1のオブジェ
クト。左から、正面図、側面図、上面図
■テクスチャマップ画像
ヨットのオブジェクトに使用したテクスチャ画像の一部
図4-7 ヨットテクスチャマップ画像
左から、甲板のカラーマップ、甲板のバンプマップ、甲板の拡散レベルマップ、船体カラーマップ(上段)、船体バンプマップ(中段)、キ
ャビンカラーマップ(下段)、帆(A)のカラーマップ、帆(A)のバンプマップ、帆(A)の透過マップ
■オブジェクト制作
上記のキャラクターやヨットなどのオブジェクトは、サブパッチ(Subdivision Patch の略称)
と呼ばれるモデリング手法を用いてモデリングした。サブパッチを使用すれば、有機的なオブジ
ェクトを容易に制作できる。また、Lightwave6.0 以降は、サブパッチオブジェクトを直接レイ
アウトで扱えるようになり、レンダリング解像度に応じて、オブジェクトの細分化レベルを容易
に変更できるようになった。しかし、ポリゴン数は非常に多くなりがちで、十分な CPU 性能や
メモリ容量が要求される。また、シーンロード時にオブジェクトの細分化処理をそのつど行うの
で、ロード時間が長くなる欠点がある。このため、本レンダリング時には、前もって細分化した
オブジェクトに差し替えて、レンダリングを実行した。
■テクスチャ画像制作
3DCG でシーンを構成するオブジェクトは、ポリゴンモデルだけでは望みの結果を得ることは
難しく、テクスチャを貼ることによってはじめて完成するといえる。上記のテクスチャ画像は、
オブジェクトのスクリーンキャプチャ画像を元に PhotoShop にて制作した。
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3DCG 映像制作 「海」
4.2. シーンコントロールとオブ ジ ェクトジオメトリの変形
4.2.1. シーントコントロール
Lightwave Layout におけるシーンのコントロールはキー(キーフレーム)によって行われる。
キーは、フレームごとの、カメラ(Camera)、オブジェクト(Object)、ライト(Light)、ボー
ン(Bone)などの各種アイテムの変化(移動、回転、拡大縮小など)を記したものである。こ
のキーには、アイテムの変化の情報以外にも、ライトの明るさやテクスチャの大きさ、位置情報
など、シーンの状態を変化させるすべてのものを記録していく。なお、Lightwave ではトゥィー
ニング処理により、キーフレームの間は自動的に補間処理される。
シーン上に存在するアイテムは、各アイテムの間に親子関係による階層構造を持てる。親の変
化は子に対して影響力を持つので、子アイテムは親アイテムの変化に追従する。
オブジェクトジオメトリの変形はボーン(Bone)
、ディスプレイスメントマップ(Displacement
Map)
、モーフ(Morph)等によって行われる。これらを使うことによって、オブジェクトジオ
メトリの形状を変化させることができる。
4.2.2. ウェイトマップを使用した ボ ーンデフォメーション
Lightwave においては、オブジェクトの内部にボーンと呼ばれる骨格のようなものを埋め込む
ことにより、オブジェクトを自由に変形(デフォメーション)させることができる。(図 4-8 a )
ボーンは、個々に影響を及ぼす範囲を持ち、複数のボーンがある場合は、より影響力の強いボー
ンに追従してオブジェクトは変形する。このため、人体モデルなどでは、親子関係を持つ複数の
ボーンを埋め込むことにより自在な変形を可能とする。が、ボーンの影響力は、オブジェクトジ
オメトリの全体に及ぶため、本来変形しなくてよい場所にまで干渉してしまうことがある。
(図
4-8 b)この干渉や、不本意なオブジェクトの変形を防ぐためには、変形防止用に押さえとなる
ボーンを埋め込んだり、オブジェクトを構成するポイントに対して、個別のボーンごとの影響力
を設定するウェイトマップ(WeightMap)を使用することにより回避することが出来る。(ウェ
イトマップの設定例:ポイント A は、ボーン B の影響を 80%受けるが、ボーン C の影響は全く
受けない)このウェイトマップを使用すれば、オブジェクトの一部分のみを特定のボーンにより
変形させることといった高度なボーンデフォメーションが可能となる。(図 4-8 c 図 4-8 d)
ただ、このウェイトマップを適用した場合は、オブジェクトを構成するポイントが、ボーンの
影響力のデータを持つ必要があるため、ウェイトマップデータを持たないオブジェクトに比べデ
ータ量が多くなり、変形演算にコンピュータの高いパフォーマンスが必要となる。今回の制作で
は、キャラクターアニメーションのために使用したボーンは、ウェイトマップを設定したオブジ
ェクトと組み合わせて構成した。
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3DCG 映像制作 「海」
図4-8 (a)
ボーンによるオブジェクトの変形
各ボーンの影響力は均等であり、親子関係に
もとづいたボーンの変形が行われている。
図4-8 (b) ボーンの干渉
右側では、腕のボーンが脇腹をつぶしてい
る。左側には押さえのボーンを埋め込むこと
により、変形を防いでいる。
図4-8 (c) ウェイトマップの設定
腕に仕込むボーンの影響する範囲を色の変化
した部分のみに限定することが出来る。
色の変化していない部分に影響力は及ばな
い。
図4-8(d)
ウェイトマップを使用したボーン変形
腕のボーンの影響範囲が腕のみに限定されて
いるため、体の部分に対して干渉することは
ない。
4.2.3. モーフマップとディスプレ イ スメントマップ
ヨットの波しぶきは、オブジェクトジオメトリ変形の手段である、モーフィングとディスプレ
イスメントマップを使用して表現した。モーフフィングは、モーフマップ(Morph Map)と呼
ばれるオブジェクトを構成するポイントの移動情報(モーフターゲット)をオブジェクトに記録
しておくことにより、オブジェクトを本来のオブジェクト形状から、ターゲットオブジェクトに
変形する。これにより、オブジェクトジオメトリの変形をボーン以上に正確に行うことが可能と
なる。
ヨットの波を表現するためのオブジェクトに、モーフマップを複数記録しておき、それを組み
合わせて波を表現した。(図 4-9)
図4-9 モーフ情報 左から順に、基本形状、モーフターゲット情報 1.2.3 となる。
この複数のターゲット情報を時間軸に沿ってモーフィングさせ波を作る
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3DCG 映像制作 「海」
モーフマップのみを使用した状態では、波のオブジェクトは非常になめらかで、自然界に存在
するものが持つ不規則性をもたない。そこで、ディスプレイスメントマップを併用して、形状を
ゆがんだものにする。ディスプレイスメントマップは、後述のバンプマップが見た目だけの変化
になるのとは違い、テクスチャの情報を元にオブジェクトジオメトリを直接変形させる。
(図 410)
■ディスプレイスメントマップによる変形例
図4-10 (a) 変位マップの適用結果
左…適用前 右…適用後
平面がテクスチャ画像に基づいて変形している。
図4-10 (b) 変位マップとして使用した画像
グレースケール画像で、明るさに基づいてオブジェ
クトは変形される。
このディスプレイスメントマップとして、画像マップの代わりにプロシージャルと呼ばれる、
ソフトウェアの内部計算によって作られるパターンをマッピングに使用し、オブジェクトに不規
則な変形をかける。その上に、オブジェクトの表面質感に透過マップによる透過処理をかけ、波
しぶきを作り上げる。
図4-12 プロシージャルパターン
図4-13 透過マップ
波の変位マップ用にプロシージャル
波のオブジェクトに適用した透過パタ
パターン Turbulence(乱流)フラク
ーン、この画像を元に、平面オブジェ
タルをかけ、オブジェクトを細かく
クトを透過処理し、波しぶきを作り上
変形させる。
げる。
左 図4-14 波のレイアウト画面
黄色い部分が波しぶきのオブジェクト
右 図4-15 レンダリング画像
波の完成画
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3DCG 映像制作 「海」
4.2.4. Motion Desingner を使用し た 衣服のアニメーション
『MotionDesingner は、弾性体モデルを利用して風・重力・オブジェクトの動きによりオブ
ジェクトを変形し、アニメーションデータを作成するソフトボディダイナミクスエンジンであ
る』
(Lightwave6.5 追加マニュアルより)といわれているとおり、オブジェクトの物理計算を行
い、様々な動きを作り出すことができる。Lightwave6.0 までは、外部のプラグインとして用意
されていたが、Ver 6.5 よりシステムにインテグレートされ、プラグイン上で計算を行い、その
データを Lightwave にインポートするといった、手間を省くことができるようになった。
プラグインの概要は、ターゲットとなるオブジェクトジオメトリを指定し、MotionDesingner
で設定したオブジェクト特性・風・重力の値を元に計算を行う。複数のターゲットオブジェクト
や衝突オブジェクトを加えると、オブジェクト同士の衝突計算を行うこともできる。
今回、この MotionDesingner は、衣服のアニメーションに使用しようとしたが、設定したア
ニメーションに対して、納得のいく計算結果を得ることができなかったため、実際の映像の中で
は、前述のボーンウェイトマップを細かく設定したオブジェクトを使用して、破綻のない結果を
得ることを優先させたため使用しなかった。
図4-16 Motion Desingner の操作画面
プラグインは、わずか4 つのタブでコントロールされる。
画面では、ジャケットがスカートとターゲットオブジェクトとなり、体
がコリジョンオブジェクトとなる。衝突オブジェクトには、ポリゴン数
を減らしたダミーオブジェクトを使用し、本体と同様の動きをさせ判定
をとらせている。なお、ダミーオブジェクトは判定のみに使い、通常は
表示させないようにしてある。
■キャラクターアニメーションのコントロール
今回の制作では、キャラクターアニメーションのシーンをいくつか制作した。キャラクターの
オブジェクトジオメトリ変形はボーンで行ったが、そのボーンのコントロールには、ボーンにフ
レームごとの動きを直接キーで記していく方法と、IK(インバースキネマティクス:Inverse
Kinematics)という方法を用いた。複数のボーンでコントロールされるオブジェクトでは、直
接ボーン1つ1つにキーを打っていけば、シーン管理が複雑になってくる。しかし、階層下位の
アイテムから、上位アイテムをコントロールする IK を使用すれば、少ないキーの数でアイテム
を操れるようになる。たとえば、ダイビングシーンでは、魚や、足ひれに IK を利用してモーシ
ョンを作っている。Lightwave 6 以降では、アイテムの角度の制御を、ヘディング(Heading)、
ピッチ(Pitch)
、バンク(Bank)の軸ごとにキーフレームや IK などに指定できるようになり、
より高度なアニメーションコントロールができるようになった。
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3DCG 映像制作 「海」
4.3. シーン構造 − 海面、大 気 、水中
4.3.1. 海面の表現
■ディスプレイスメントマップとバンプマップによる海面
今回の制作の根幹である海は、ディスプレイスメントマップとバンプマップ(BumpMap)を
組み合わせることにより表現した。これは、Lightwave のマニュアルにおいても解説されている
手法であり、およそ、Lightwave を使用して海の制作を行う場合、まず最初に取り上げられるほ
ど一般的な手法ではあるが、その表現力は高く、自由に海を表現することができる。
バンプマップは、テクスチャマッピングの手法の一つで、テクスチャによって法線を変化させ
オブジェクトの表面に擬似的な凹凸を作り出すことが出来る。この擬似凹凸によって波をつくる。
さらに、カラー、拡散レベル、反射、透過の各パラメーターを表面質感に設定することより、海
を表現する。ディスプレイスメントマップは前節でも紹介したが、海を直接変形させることによ
り、海が平面上になるのを防ぐ。この手法によって作り上げる海面は、反射と設定と、ライト設
定が重要になる。
■カラーマップ、バンプマップの設定
図4-17 海面オブジェクトの表面質感の設定(プロシージャルパターン)
左から、カラーマップ(TurbNoise)、バンプマップ1(Crumple)、バンプマップ2(Crumple)、バンプマップ3(FractalNoise)
バンプマップには、大小2種類の Crumple パターンをかけるのが基本手法とされているが、今回は Crumple パターンは細かな波に専念させ、
FractalNoise に大きな値をいれ波のうねりとした。
カラーマップには、白のTurbNoise を設定し、波頭がところどころ白くなるように設定した。
図4-18 レンダリング画像 バンプマップを使用した海
表面質感はプロシージャルのカラーマップや、反射、光沢などの設定
を行っている。バンプマップに反射光が入り、波のうねりが表現され
ている。
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3DCG 映像制作 「海」
図 4-19 レンダリング画像 図 4-18 に ディスプレイスメントマッ
プを併用した海
海面を実際に変形させるが、シーンに応じてかけるレベルを調節する
必要がある。大海原になるとカメラの位置が上がると、水平線はなだ
らかになる。が、カメラを水面近くにおいて撮影すると水平ではなく
なってくる。そのほか、荒れた海を表現するときに有効である。
4.3.2. 大気の表現
■グラディエントテクスチャとプロシージャルテクスチャの組み合わせで作る大気
グラディエントテクスチャはオブジェクトの表面質感を任意の要因(他のテクスチャレイヤー
やライトの角度など)によって自由に変化させることができる。これにより、特定のオブジェク
トとの距離や、オブジェクトジオメトリ内の高さにおいて、表面の色を変化させると言ったこと
が可能となる。
大気は、球体を変化させたオブジェクトを天球とし、その内部表面にテクスチャを張り付けて
表現した。天球は大気と雲の二重構造になっており、それぞれに個別の表面材質を設定する。
(図
4-20)大気の表面材質には、グラディエントと呼ばれる着色方法を使用した。
(図 4-21)さらに、
雲には専用の天球を大気の天球の内部に配置し、透過マップを使用して雲を表現した。
(図 4-22)
なお、これらの設定を変更すれば様々な空が表現できる。
図4-20 大気の構造
黄色くなっている部分が天球部。二重構造になっており、外側が大気、
内側が雲の為のオブジェクトである。それぞれ、球体を上下にストレ
ッチして制作した。
図4-21 大気オブジェクトのテクスチャ
カラーにグラディエントレイヤーを使用し、入力パラメータにY軸上
の距離を取り、地平から離れて行くにつれての色の変化をグラデーシ
ョンの用に指定する。水平線上の大気となる、Y 軸からすぐには、白
を指定し、上空に行くに連れスカイブルーに変化するように指定する。
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3DCG 映像制作 「海」
図4-22 雲オブジェクトのテクスチャ
雲を作り出すために、オブジェクトを完全に透過 100%の設定を
して、透過マップににプロシージャルパターン PuffyCloud フラ
クタルを、除算処理でかける。(左)その上に、グラディエン
トレイヤー(DistanceY軸)をアルファ処理でかさねて、水平
線近くの雲が消えるように設定する。(右)
図 4-23 レンダリング画像 グラディエントテクスチャとプロシージ
ャルテクスチャによる大気の表現(標準)
上記の各種設定を適用した後にレンダリングした画像である。
図 4-24 レンダリング画像 グラディエントテクスチャとプロシージ
ャルテクスチャによる大気の表現(朝焼け)
大気に DistanceY軸(地平)と Distance(太陽)からののグラディエ
ントテクスチャを二重にかけ、朝焼けを表現した。
■スカイトレーサーを使用した大気のシミュレート
大気を表現するには、前記の表面材質を操作することにより擬似的に表現する方法と、実際の
大気の情報を元に、シミュレートする方法がある。別のシーンにて、シミュレートによる大気を
制作した。
Lightwave には標準で SkyTracer と呼ばれる大気のシミュレータが付属しており、それを利
用して夕焼けの空を表現した。(図 4-25)
SkyTracer は、大気の光の分散と吸収を物理的にシミュレートする環境プラグインであり、こ
のシミュレーションのパラメータは、現実の大気の厚さで指定できる。SkyTracer では、ヴォリ
ューメトリック(Volumetric)処理より、雲から落ちる光など、前記の表面材質の表現では難し
い処理を簡単に行うことが出来る。しかし、ヴォリューメトリック処理をつかった影を演算する
と、非常に時間のかかる計算を必要とするため、使いどころが難しい。
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3DCG 映像制作 「海」
図4-25 レンダリング画像 スカイトレーサーを使用した大気
天球には、環境 Plug-in として SkyTracer を設定した。SkyTracer は
シーン上にある特定のライトを太陽として扱うことができ、ライトの
角度と色によって大気の色を変化させる。また、雲の設定も可能で、
詳細なパラメータによってリアルな雲を自在に制作できる。特定のオ
ブジェクトに対して雲の動きを追従させることも可能である。
■レンズフレアを使った太陽の表現
上記の大気の表現における太陽には、ライトのレンズフレア(Lens Flare)を利用した。
Lightwave のライトは、オブジェクトを明るく(あるいは暗く)する他に、ライトの光源とし
ての設定ができる。
(通常では、ライトはレンダリングしても画面上には何も表示されない)こ
のレンズフレアの設定により、光彩や反射といった光源がカメラに写った際に入るレンズフレア
を表現できる。このレンズフレアを使用してライトを太陽に変化させた。
(図 4-24、4-26)
図4-26 レンズフレアの描写
図 4-25 のシーンの太陽のアップ。ライトの中心部を発光させ、ライ
トの周辺部には光の筋を描写している。今回は使用しなかったが、逆
光のシーンでカメラに入る光の筋を描写することも可能。後述のボリ
ュームライトと組み合わせると、更に多くの効果を生み出すことがで
きる。
■HyperVoxcel を用いたヴォリューメトリクス処理の雲
これまでのプロシージャルや、SkyTracer で作ってきた大気は遠景用のものであり、近距離で
の雲や、積乱雲のようにボリュームのある雲を表現するには不向きである。このため、近距離で
映る雲の表現に、HyperVoxcel を使用した。(図 4-30)HyperVoxcel でのヴォリューメトリクス
(Volumetrics)処理は、実体のない Null オブジェクトやポリゴンのポイントに対して計算上の
実体を持たせることができる。
(図 4-28)このため、ポリゴンによって作られたオブジェクトジ
オメトリでは、表現の難しい効果を容易に作り出せる。
図4-27 HyperVoxcel の適用例
Lightwave の画面キャプチャ。中央に NULL オブジェクトを配置しただ
けのシーン。この NULL オブジェクトを核として HyperVoxcel を適用し
てみる。
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3DCG 映像制作 「海」
図4-28(a) レンダリング画面 HyperVoxcel 未使用
オブジェクトに HyperVoxcel を設定していない状態。NULL オブジェクトはレン
ダリングされない。
図4-28(b) レンダリング画面 HyperVoxcel(サーフェイス)を設定
HyperVoxcel のオブジェクトタイプはサーフェイスを指定。サーフェースベース
のオブジェクトは、通常のオブジェクトジオメトリと同様の表面質感の指定がで
き、内部は空洞である。
図4-28(c) レンダリング画面 HyperVoxcel(サーフェイス)を設定
図 の設定にオブジェクトの形状を変化させる HyperTexture を追加した。
ThubuLence
HyperTexture にはいくつかのプロシージャルのパターンがある。
図は、
を適用。バンプマップ処理とは違いオブジェクトに実際の凹凸が発生している。
図4-28(d) レンダリング画面 HyperVoxcel(ヴォリューム)を設定
オブジェクトタイプはヴォリュームを指定。オブジェクトは三次元での中身を持
ち、内部が存在するオブジェクトになる。HyperTexture には ThubuLence を使用。
図4-28(e) レンダリング画面 HyperVoxcel(スプライト)を設定
図 のオブジェクトのタイプはスプライト変更。ヴォリューメトリクスの処理が
変化する。ヴォリュームオブジェクトを二次元で描写する。そのため、レンダリ
ング時間が高速になる。HyperTexture にはThubuLence を使用
図4-29 使用例 HyperVoxcel を使用した雲
点ポリゴンを散らしたオブジェクトを Modeler で制作。オブジェクト
に HyperVoxcel を適用した。オブジェクトのタイプはスプライトに設
定、上下二重にオブジェクト配置して、雲に奥行きを与えた。上下の
オブジェクトでHyperTexture の種類を変えている。
(FBM と ThubuLence
パターン)
図4-30 レンダリング画像 HyperVoxcel を使用した雲
上図のレンダリング画像。点ポリゴンが雲を作り上げる。雲の下は海
面。
点ポリゴンオブジェクトが雲となって描画される。
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3DCG 映像制作 「海」
4.3.3. 海中の表現
Lightwave のオブジェクトジオメトリは、その構造上内部は空洞の物体となる。つまり、水の
ように一定の体積の内部を、何かが満たしているといった状況を作り出すことができない。外部
から液体のオブジェクトを写す場合ならば方法はあるが、液体の内部にオブジェクトが存在して
いるといったシーンは再現が難しい。このため、水中の光景を再現するために、実際の水中の写
真を元にそれに近い結果が出るように各種のアイテムを配置した。
■基本構造
海中の基本構造は、ポリゴンの法線を反転させた海面を地面とその下に半球のオブジェクト
を配置し海中に見立ててある。
(図 4-31)水上からの太陽の光は、海面と同じ高さにポイントラ
イト配置し表現しいる。海面は、そのポイントライトを中心としてグラディエントテクスチャで
海面の着色を施し変化を加えている。
図4-31 海中の構造
黄色い部分が海面。中央にオブジェクトが配置されている。
さらに、背景としてフォグを設定し、一定以上の距離でオブジェクト
が消えていくような効果を加えてある。
■ヴォリューメトリクスライトによる海中の光を揺らぎ
ライトに対してヴォリューメトリクス処理を行うと、ライトが出す光線に対して実体を持たせ
ることができる。さらに、実体を持たせた光線に対して様々なテクスチャを加えることができる。
(つまり光線をオブジェクトジオメトリのようにテクスチャマッピング処理できる)このヴォリ
ューメトリクスライトにテクスチャパターンを使い、海水が起こす光の揺らぎを表現した。
(図
4-32)
図4-32 ヴォリューメトリクスライト
ヴォリュームライトには、テクスチャパターンを適用し、光線の現れ
方を海中の揺らぎのようにした。テクスチャには、プロシージャルパ
ターン(Crumple)を設定。ライトの種類はポイントライト
画像のの光彩とリングは、ライトのレンズフレアである。
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■パーティクルと HyperVoxcel を組み合わせた泡
スキューバーダイビングのダイバーが出す空気をパーティクルと HyperVoxcel を組み合わせ
て制作した。パーティクルの粒子を散らす処理には、Lightwave6.5 より加えられた Particle FX
(図 4-33、図 4-34)と、一般に公開されているプラグイン BANG!(図 4-35)を使用した。散
らされた粒子の描画には、HyperVoxcel を使用して形状を与えた。
図4-33 ParticleFX の使用画面
ParticleFX によって、設定された条件に従って、パーティクルが散ら
さていく。ParticleFX では、散らされる量や粒子の重さや、大きさ、
濃度、速度、発生率、風や重力の影響、衝突計算など細かな設定が可
能。また、特定のアイテムで、動きをコントロールすることも可能。
設定を元にオブジェクトの生成までParticleFX が自動的に行う。
図では、タブごとに設定画面を開いている。
図4-34 レンダリング画像(ParticleFX)
このシーンでは、粒子の発生後、徐々に拡散、上昇するように設定し
た。パーティクルには HyperVoxcel を適用。透過と発光率を調整した。
また、オブジェクトの大きさにもバリエーションをつけてある。
図4-35 レンダリング画像(BANG!)
放出量と重力を設定した。こちらの画像では、散らされたパーティク
ルは、通常の表面質感の設定で行っている。
BANG!は、パーティクルとして使用できるディスプレイスメントプラグインである。モデラ
ーで作った点ポリゴンの固まりに対して、拡散、放出量、抵抗、簡易の重力設定が可能である。
BANG!の設定画面のキャプチャは、Lightwave を 6.0 から 6.5 にアップデート後、プラグイン
が実行できなくなったため省略した。
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5. シーンレンダリング、加工 ・ 補正・編集
5.1. シーンレンダリング
今回の制作では、大量の画像を生成する必要があったため、レンダリングにかかる時間をでき
るだけ押さえる必要があった。単純に一枚 5 分と考えても、30 フレーム/秒の 10 秒のシーンを
作るだけで、25 時間のレンダリング時間がかかる。シーンを構築した後、この画像生成にかか
る時間を少しでも押さえるため、いくつかの設定を無効にしたり、CPU のパフォーマンスをで
きるだけ発揮できるような方法をとった。
5.1.1. アンチエリアシングの設定
Lightwave のレンダリングでは、レンダリングする画像の品質を決めるいくつかの項目がある。
アンチエリアシング(Antialiasing)処理は、レンダリングした画像のエリアスと呼ばれる斜め
線での階段状のぎざぎざを補正する処理である。この処理をかけることにより、画像はなめらか
な線を描画できるようになる。Lightwave では、9段階(なし∼最高:エンハンス)のアンチエ
リアシングのレベルを指定できる。今回のシーンのレンダリングでは、主に「低い:エンハンス
(EnhancedLow)に設定した。Lightwave でアンチエリアシング処理の補間の回数(パス)が
増えるごとに極端にレンダリング時間がかかるようになる。
(図 5-1)このため、大量に枚数を
レンダリングする今回の制作では、高いアンチエリアシングでの処理はできなかった。
図 5-1 アンチエリアシングによる画像の違い
左:アンチエリアシング無し(レンダリング時
間88 秒)右:EnhancedLow(レンダリング時
間 301 秒)画質は明らかに向上しているが時間
も大幅にのびている。
5.1.2. レイトレーシングの設定
Lightwave ではレンダリング時に、レイトレーシング(RayTracing)の設定を変更すること
ができる。レイトレーシングでは、『光源からの光線がどのようにオブジェクト表面で反射して
カメラに届くかを追跡する画像処理の方式』である。
(Lightwave[6]マニュアル イントロダク
ション/チュートリアルより)そのため、ライトの増えるごとにレンダリング時間が増していく。
Lightwave はライトの数が増えても高速にレンダリングできるが、計算を行うレイトレースの種
類を限定することで更に高速にレンダリングできるようになる。Lightwave では、以下のレイト
レースの実行を選択できる。
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・影レイトレース:オブジェクトから落ちる影の処理を行う。
・反射レイトレース:オブジェクトの表面に写る他のオブジェクトや画像の反射処理を行う。
・屈折レイトレース:空気や水、ガラスなど透明な物体が起こす光の屈折を計算する。
今回、ほとんどのシーンでは影レイトレースの処理のみとした。影のレイトレース処理を除く
と、全体に浮き上がった画像となるうえ、3DCGとしての質感を大きく失ってしまう。そのた
め、このオプションだけは実行した。通常これらの設定を全て有効にしなければ、本来の画質は
得られないわけだが、個人制作のアニメーションでは、全ての処理を加えて計算する余裕は無か
った。
5.1.3. 分散レンダリング
今回制作したシーンの一部では、Lightwave 本体のレンダリングプロセスではなく、ネットワ
ークレンダリングシステムである、スクリーマーネット II(ScreamerNet II)というプロセス
を利用してレンダリングを行った。
Lightwave は、マルチスレッドに最適化されたソフトウェアではない。シーンの編集において
は、シングルスレッドでの動作にしか対応しておらず、マルチスレッドに対応しているのは、シ
ーンのレンダリングのみである。その上、レンダリングプロセスにおいて、マルチスレッドを完
全に利用するのは、レンダリング演算に関するプロセスのみあり、それ以前のプロセス(オブジ
ェクトの変形、ポリゴンの処理など)においては、シングルスレッドでしか動作していない。ま
た、特定のプラグインでは、マルチスレッドでのレンダリングを行うと、画像にノイズが混入し
たり、プログラムが異常終了してしまうことがある。また、多くのメモリを搭載したマシンでは、
1つのフレームを複数のスレッドでレンダリングすると、未使用のメモリが使われないまま残る
ことがある。このため、ムービーなどで複数フレームのレンダリングする際には、1つのフレー
ムを複数のスレッドでレンダリングするより、1フレームを一つのスレッドでレンダリングし、
それを複数行った方が効率がよくなる場合がある。
スクリーマーネットは、本来、ネットワーク上の各コンピュータをノードとして実行されるが、
今回は、スクリーマーネットの各ノードを、1つのコンピュータの各 CPU で実行する単体での
分散レンダリングを行った。単純に Lightwave 本体を複数起動してレンダリングするというこ
とも考えられるが、この場合、レンダリングするフレームを設定したシーンを複数作る必要があ
る上、メモリ使用量が多くなるためスクリーマーネットを利用した方が効率的である。
(スクリ
ーマーネットの場合、コントロール用に1つの Lightwave を起動するだけでよい。さらに、レ
ンダリングするフレームの割り当てもこの Lightwave により自動的におこなわれる。
)
このネットワークレンダリングの出力は、静止画として保存されるため、後に結合してムービ
ーファイルとする。
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5.2. 出力データの加工、編集
Lightwave より出力された画像を加工、編集して一つのムービーを作り上げていく。
5.2.1. AfterEffect による画像の補 正 と加工
Lightwave から出力された画像ファイルは、AVI ファイルとして映像化した段階で納得がいく
場合はそれでいいが、さらに品質を上げるために、AfterEffect によって、画像の補正と加工を
行った。AfterEffect は、ムービーに対して Photoshop のように、レイヤーによる管理や特殊効
果をかけることができる。また、AfterEffect 自身で静止画からムービーを制作することも可能
である。
AfterEffect では、主にレンダリング画像の補正処理と、個別にレンダリングした画像の合成
処を行った。
図5-2 AfterEffect の操作画面
複数のムービーファイルを合成処理できる。この画面では、レンダリ
ングしたダイビングシーンの RGB 画像にアルファチャンネル画像を加
え、別途レンダリングした光の部分をスクリーン合成している。
さらに、画像の補正や細かな調整が可能。動画版の PhotoShop である。
5.2.2. Premiere によるムービー編 集
これまでシーンごとに作っていたムービーファイルを最終出力として一つの映像とするため、
Premiere を使用した。カットを編集し全体を通した上での補正と調整もここで加えている。テ
ロップの挿入も Premiere にて行った。
図5-3 Premiere の操作画面
AfterEffect で加工したムービーを編集した。
PhotoShop のようなフィルタや、多くの効果を適用できる。その場で、
PhotoShop
確認しながら調整でき、
操作性も高い。
AfterEffect と同じく、
との親和性があり、フィルタ処理は PhotoShop と同じ名称と効果で、
同ソフトになれていると把握しやすい。
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3DCG 映像制作 「海」
6. 制作を終えて、今後の課題
個人で、数十万ポリゴンのオブジェクトを扱い、100MB単位の映像を難なく扱うことができ
る環境が容易に手にはいるようになった。これが、作品の質が一見向上したかのように思わせる
ことができるのではないか?確かにそれも含めて見るべきであるが、数年前にその当時としてで
きるものを作れたか?というと、若干の疑問を覚えるときがある。今回、一つの作品を作り上げ
ることができたのは、十分なインフラが整ってきたからであると考えている。それはつまり、数
多く見られるようになった作品であり、それらを扱った解説書や雑誌などで、身近なところで充
実した情報が得られるようになったことである。
ソフトウェア自体も、バージョンアップを重ねるにつれ、実に使いやすくなってきている。今
までは、外部ソフトと独自ファイルを介して計算結果のやりとりを行うといったことが、直接、
本体からコントロールし、計算結果を記録できるようになった。余分な行程を省けることにより、
結果に関係する部分だけを集中して扱うことができるようになる。これは、ソフトを扱う上での
敷居をさげ、品質を上げる重要な要因になる。
今回の作品制作では、今の自分のできることをぎりぎりまで注ぎ込んだ。結果、次の作品を作
る際の種を得ることもできた。しかしながら、作品そのものは、ソフトウェアの機能紹介の為に
作ったものにとどまってしまったのでは無いかという、物足りなさがある。(実際はその機能で
すら満足に押さえることができなかったのだのだが)それはつまり、今の自分では自分にわかる
ソフトウェアの機能以上のことを発想して、何かを作り上げることが出来ていないことを意味す
る。
この一年、一番つらかったことは、『要求するのは、美術的な基礎能力であって、ソフトを使
う能力ではない。ソフトなどいつでも覚えられる』と言われたことである。(就職活動時の企業
の募集要項より)私にとって、3DCGというのは、「ソフトウェアを含めて、これで何かを作る」
ということであった。それが、あっさりと一蹴され、突然、美術的な基礎能力という得体の知れ
ないものを要求された。本校においては美術や CG に関する専門的な講義はなく、すべてを自己
流に学んでいくしかなかっため、どうすることもできなくなったことがある。
今後、私がめざすのは、作品として今一歩上のもの−「作った手法や技術ではなく、できあが
った作品自体が価値を持ってくるもの」−を作っていけるようになることである。今、何か作品
を作る際に必要になってくるのは、「どんなものを作るか」という着眼点と、「どうやって実現す
るか」という点であると考えている。そのうち後者を「いかにより良いものにするか」に昇華で
きるようにする。いずれにしても、その時の自分にできる一番よい結果を出力できるように、今
後の作品制作に取り組むつもりである。
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3DCG 映像制作 「海」
7. 参考文献
「Lightwave3D Ver.6.0 日本語マニュアル シェイプ:モデリング、サーフェイス&ライト」
、
米国 NewTek 社、2000 年
「Lightwave3D Ver.6.0 日本語マニュアル モーション:アニメーション&レンダリング」、米
国 NewTek 社、2000 年 11 月
「Lightwave3D Ver.6.5 日本語追加マニュアル」、米国 NewTek 社、2000 年 12 月
「Lightwave3D Ver.5.6 日本語追加マニュアル」、米国 NewTek 社、1998
「CG&Digital Video WORLD VOL.9」特集 3大 CG ソフトで作る人物・自然・メカの制
作テクニック、株式会社ワークスコーポレーション、1999 年 4 月
「CG&Digital Video WORLD VOL.13」CG メイキングピンポイント・セミナー第1回自
然編[リアルな海]
、株式会社ワークスコーポレーション、1999 年 8 月
「CG&Digital Video WORLD VOL.23」CG メイキングピンポイント・セミナー第 9 回自
然編[津波の表現]
、株式会社ワークスコーポレーション、2000 年 7 月
「CG&Digital Video WORLD VOL.25」特集 プラグインスーパーガイド、株式会社ワー
クスコーポレーション、2000 年 9 月 1 日
「Graphics World 2001 1」 特集 風景を創造する、株式会社アイ・ディ・ジー・ジャパン、1991
年1月
「Graphics World 2001 1」 特集 3DCG で創造する爆発・雲・水、株式会社アイ・ディ・ジー・
ジャパン、1991 年 1 月
「海 THE OCEAN」
、株式会社クレオ、1996 年 3 月
「ダイビングワールド 10」
、株式会社マリン企画、2000 年 10 月
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