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「栗山赤十字病院あり方検討」報告書の概要
平成24年3月 「栗山赤十字病院あり方検討」報告書の概要 1.検討の目的 ▼公立病院の改革が進められている 近年、多くの公立病院(都道府県立・市町村立病院)は医師の不足で診療の一部を休止するなどに より、経営環境が厳しい状況にあり、国においては経営の見直しを公立病院に求め、改革が進められ ている。 こうした背景の中で、栗山赤十字病院が今後も南空知南部地域で中核的役割を安定的かつ継続的に 果たすために、町と日赤により「栗山赤十字病院あり方検討会」を設置し、平成37年の患者推計な ども行いながら、今後の医療機能のあり方について検討し、このたび検討結果をとりまとめた。 ▼検討結果に基づく取り組み期間を平成24年度から26年度までの3年間とする 2.栗山町の医療などの現状 ▼道内の平均を上回り高齢化が進んでいる 人口と高齢化の推移 栗山町の高齢化率(65歳以上の 人口が占める割合)は32.6%で 全道179市町村中72番目。 全道平均を7.8ポイント上回って いる。 (平成23年10月現在) 栗山町人口 人口 ▼「医師の数」は道内及び南 空知医療圏の平均を下回っ ている 全道高齢化率 % 18000 16000 14000 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 35 30 25 20 15 10 5 0 H2 ▼「医療機関の数」は道内の 平均とほぼ同水準 栗山町高齢化率 人 H7 H12 H17 H22 医療機関数及び医師の数(人口10万人あたりに換算) 医療機関の数 医師の数 H23 平成22年末 栗山町 南空知医療圏 全道 全国 126 124 127.1 138.4 134.9 166.6 229 230.4 ▼住民の受診先は、通院は約7割が町内、入院は半数以上が町外の医療機関となっている 栗山町 1,999 栗山町 25,529 札幌市 6.8% その他 2.7% その他 18.1% 長沼町 7.4% 岩見沢市 14.2% 栗山町 41.1% 札幌市 19.9% 栗山町 68.9% 岩見沢市 20.9% 入院先市町の内訳 通院先市町の内訳 ※平成22年4月から12月の栗山町国民健康保険及び後期高齢者医療制度の被保険者を集計したもの 1 3.栗山赤十字病院の運営概況 ▼病院の概要 (1)沿 革 (2)病床数 (3)診療科 昭和29年に「栗山町立総合病院」が移管され「栗山赤十字病院」となり、昭和55年 に全面改築 136床 ( 一般 56床 療養 80床 ) 11科 常 勤 医 に よ る 診 療 科:内科、消化器内科、外科 非常勤医による診療科:循環器内科、整形外科、耳鼻咽喉科、精神神経科 泌尿器科、皮膚科 (眼科、小児科は休止) 平成24年2月現在 ▼医師、患者数ともに減少している 〈日赤病院の患者数推移〉 平成19年度に常勤医師は12人であったが、現 在(平成 24 年 2 月)は7人となった。 通院患者数 入院患者数 平成12年度 118,057 人 55,956 人 通院及び入院患者は毎年減少傾向にある。 平成17年度 85,218 人 47,499 人 10年前と比較すると、通院で43%、入院で26 平成22年度 66,937 人 40,978 人 %以上減少している。 平成22年に一般病床の一部を療養病床に転換したこと等により入院利用率は増加している。 ▼救急医療を担っている 栗山赤十字病院は、入院の必要のない軽症の「初期救急」の医療を担当するとともに、入院治療を必 要とする中等症・重症患者の医療を行う「2次救急」の二つの役割を担っている。 患者数は減少する傾向にあるが、8割以上が休日・夜間に自ら受診した患者であり、病状は入院の必 要がない軽症の救急患者が約9割を占めている。 救急医療を維持するためには、患者の有無にかかわらず医師や看護師を休日・夜間も配置するための 経費等に対して、町として補助金を交付している。 ▼透析医療は広く利用されている 患者数は増加しており、地域別では栗山町が4割のほか、夕張市、由仁町をはじめ周辺市町の住民が 広く受診しており、南空知南部地域では唯一の透析施設として重要な役割を果たしている。 ▼経営改善に努めている 栗山赤十字病院の経営収支は、医師の減少、患者数の減少、救急医療等の不採算部門についても公的 医療機関として維持していることなどの影響で厳しい状況にある。 平成22年度以降、病床数の転換、診療報酬加算の新規算定及び職員配置数の見直し等を重点的に進 め、平成22年度決算では、ほぼ収支均衡が図られ、平成23年度ではさらに改善が見込まれる。 2 4.住民の医療はこれからどのように変わるか ▼死亡率は平均を上回っている 栗山町住民の疾病別死亡分類では、①悪性新生物、②心疾患、③肺炎の順で、人口10万人 あたりの死亡率は平均を上回っている。 ▼栗山町住民の健(検)診受診率は低い 栗山町住民の特定健診受診率及びがん検診受診率は低調に推移しており、近隣の自治体との 差も非常に大きい。 生活習慣病に関連した疾病で医療機関を受診する割合が高いことと関連性があるものと考 えられる。 ▼高齢化がさらに進むことによる病気が増えると予想される(検討会独自推計) 循環器疾患 高血圧 虚血性心疾患 脳梗塞 2位 消化器系疾患 歯及び支持組織の障害 胃潰瘍及び十二指腸潰瘍 3位 筋骨格系疾患 関節症 脊椎障害 骨の密度及び構造の障害 ※平成19年5月 循環器系疾患は大幅に増加 (35%以上) 消化器系はやや減少 筋骨格系疾患は増加 (15∼20%) 栗山町国民健康保険被保険者 5.栗山赤十字病院(栗山町地域医療)の今後の機能に係る論点 (1)今後の人口減少、超高齢化への移行を踏まえた機能とする必要がある (2)公的医療機関として行政と協力・連携が必要である (3)医療にとどまらず、保健・福祉・介護との連携の仕組みを整える必要がある (4)医師等を安定的に確保する必要がある (5)経営の安定化が必要である (6)効果的・効率的な医療提供体制として機能分化・相互補完を進める必要がある 3 37 年 高齢化率 1位 H 〈現在 住民が病院を受診する上位3疾病〉 44 % 6.今後の栗山赤十字病院(栗山町地域医療)の機能のあり方と必要な施策 ▼基本的な役割 「入院」、 「外来」を基本とし、 「救急医療」及び日赤の使命である「災害医療」を地域に必要な機能と して運営する。 一般的な急性発症した疾患から、慢性期医療まで地域に密着した領域を担うことを役割とする。 〈あり方〉 入 《主な施策》 院 ○一般病床のうち4床程度を「亜急性期病床と して整備する。 ○「急性期医療」「亜急性期医療」「慢性 期医療」の3つの領域を担う。 一般病床は現行規模を堅持する。 ○リハビリ機能充実のため、理学療法士等を増 員する。 ○病床規模 136床を維持 外 来 現行の月から金曜日とする。 ○日中の急患への対応方法を改めて明確化し、 町内医療機関と円滑な連携を図る。 ○診療時間 手術や検査日程を除き、原 則として9時から17時とする。 ○内科医師の確保が進めば部分的にでも内科 午後外来を開設する方向で検討。 ○診療日 診 療 科 ○整形外科の常勤医を確保する。 ○今後は10科を基本とする。 ○常勤医は9名を必要最低数とし、内科・消化 器内科・外科・整形外科を診療する。 内科、消化器内科、外科、整形外科 循環器内科、耳鼻科、泌尿器科、精神科、 皮膚科、(小児科) ※小児科外来機能は休止、眼科は廃止 ▼地域に必要な医療機能 救急医療 ○初期救急〈入院の必要のない軽症患者〉 町の責務として、町内で完結できる よう努める。 ○町は町内の医療機関の協力も得て、町内で初 期救急医療が実施できる体制を構築する。 ○町は初期救急の実態調査及び適正受診につ いて住民啓発を十分行う。 ○2次救急〈入院を必要とする中・重症〉 引き続き可能な2次救急を日赤で行 う必要がある。 災害医療 ○「栗山町地域防災計画」に栗山赤十字病院に よる医療救護活動等を明確に位置付け、地域 防災活動の充実を図る。 ○日赤は災害救助に対する責務を負って いることを踏まえ、地域との連携を強 化し救護活動の強化を図る必要があ る。 4 人工透析 ○現在週3日は半日しか開設していないが、必 要な職員を確保して終日体制に移行する。 ○人工透析を必要とする患者は増加して おり、態勢を強化する必要がある。 予防医療 ○町は健(検)診率増加を最優先課題とし、他 自治体の取り組みも参考にしながら、効果的 な勧奨、健(検)体制の見直しを行う。 ○生活習慣病予防のために、行政と医療 機関が連携した対策が必要である。 総合的な医療・介護・福祉体制 ○地域包括ケアシステムのコーディネート機 能は「栗山町地域包括支援センター」が担 うとともに、同センター職員を日赤に研修 派遣する。 −栗山型地域包括ケアシステムの実現− ○高齢化への進展を踏まえ、医療や介護 のみならず、福祉サービスを含めた 様々な生活支援サービスが日常生活 の場で包括的・継続的に提供できる体 制「地域包括ケアシステム」が必要で ある。 ○町は介護・福祉施策を一体で提供できるよ う組織の見直しを行う。 ○栗山赤十字病院入院患者の在宅生活への移 行を促進するために、入退院調整機能を強 化する。医療ソーシャルワーカーを配置す る。 在宅医療の充実 ○栗山赤十字病院への訪問看護ステーション (部門)設置の必要性について検討を行う。 ○訪問診療や訪問看護が整備され介護サ ービス等と一体となって提供される必 要がある。 ○理学療法士等による訪問リハビリテーションを実施 する。 ○町は在宅医療を充実させる展開方策を検討 する。 ▼安定的で活力ある組織づくり 人材確保・資質の向上等 ○医師の確保に当たっては、町としても日赤 と連携して関係団体等に要請するととも に、町の移住・定住施策とも連動させる。 ○医師、看護師等の退職動向を踏まえ計 画的な確保が必要である。 ○看護師確保のために、未就業者を対象とし た研修会を日赤が実施する。 ○組織体制は細分化され、役職の欠員も 生じており、適切な指揮命令系統を確 立する必要がある。 ○日赤の組織体制の見直しを行う。 ○職種ごとに研修計画を策定し計画的に実施 する。 ○良質な医療を提供するために、有する 技術を常に向上させる必要がある。 5 ▼経営改善の推進 住民に身近な病院づくり ○患者サービスの向上を図る。 ○診療案内、医師の紹介等の情報を住民向けに 提供する。 ○外来患者数は今後も減少すると予想 されるが、可能な限り地元で受診でき る環境を整える必要がある。 ○ホームページをリニューアルする。 ○患者満足度調査を定期的に実施する。 収支の改善 ○他病院との連携により病床利用率のさらな る向上に努める。 ○収支が改善する傾向が伺えるが、今後 も継続的に収入の確保及び費用の抑 制を病院一体となって取組む必要が ある。 ○診療報酬明細書の点検や請求漏れのチェッ クを定期的に行う。 ○職員配置数の適正化に努め、外部委託をさ らに進める。 ○医療機器の計画的修繕・更新を行う。 戦略的視点での経営計画策定 ○目標値及び取り組みを明確化した経営計画 を策定し全職員と共有する。 ○毎年度策定する経営計画においては、 戦略性をもった計画を組織的に策定 する必要がある。 ○年度途中で定期的に進捗状況の確認及び必 要な見直しを行う。 ▼医療の連携及び広域化 医療連携・広域化 ○医療機器の共同利用など日赤の機能を町内 医療機関が活用する。 ○患者を主体とした町内医療機関相互の 医療連携が一層必要である。 ○町外の病院と機能の相互活用・連携を重ねな がら、広域連携による効果等を明確化する。 ○住民に身近な医療を提供する圏域は 市町村ごとに考えられている傾向にあ るが、今後は複数の病院間で機能を分 担または補完する体制を構築する必要 がある。 ○広域化については、空知総合振興局(岩見沢 保健所が設置する検討会に町及び日赤が引 き続き参画する。 検討に伴う機能の再編・集約化等につ いては、住民理解のもと慎重な対応が 必要である。 6 7.あり方検討結果の着実な推進 着実な推進 ○町と日赤両者で検討したことにより、今 後の医療機能及び行政的課題を踏まえた 日赤の公的役割を明確化するとともに、 町の医療政策の方向性も示したものであ り、検討結果を両者が着実に推進する必 要がある。 ○「主な施策」を推進するために、町及び日赤 による「栗山赤十字病院あり方検討推進会 議」及び「推進チーム」を設置する。 ○平成37年の動態推計などを行った検討 結果であるが、当面見直しが急がれるも のを「主な施策」として抽出した。 ○検討報告書及び今後の進捗状況は関係機関 に定期的に報告し、ホームページでも公開す る。 ○「主な施策」の推進期間は平成24年度から 26年度までの3年間とする。 ○この見直しが着実に進められる際には、 築後32年経過する現有施設について、 整備のあり方を検討する必要がある。 7