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多数決の限界 - ISFJ日本政策学生会議

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多数決の限界 - ISFJ日本政策学生会議
ISFJ2015 最終論文
ISFJ2015
政策フォーラム発表論文
多数決の限界1
新たな社会的選択方法の実現
同志社大学 伊多波研究会 行政分科会
棚江慎吾
東徹志
橋本結衣
久野寛大
中井萌子
2015 年 11 月
本稿は、2015 年 12 月 5 日、6 日に開催される、ISFJ 日本政策学生会議「政策フォーラ
ム 2015」のために作成したものである。本稿の作成にあたっては伊多波教授(同志社大学)
をはじめ、多くの方々からの有益かつ熱心なコメントを頂戴した。ここに記して感謝の意
を表したい。しかしながら、本稿にあり得る誤り、主張に一切の責任は言うまでもなく筆
者たちの個人に帰するものである。
1
ISFJ2015 最終論文
要約
私たちは多数決に存在する問題が非常に大きな問題であると考える。
1 章では、1 節で多数決の構造的な問題を明らかにしていく。私たちが構造的に大きな問
題であると考えているものは 4 つある。
1、票の割れに対する脆弱性
2、中位投票者を選ぶ
3、アローの不可能性定理を満たす
4、ペア全敗者を選ぶ
私たちはこの 4 つの問題の中でも特に 1(票の割れに対する脆弱性)が大きな問題であ
ると考え 1 章 2 節、3 節で実際に起こった例を参照しながら詳しく見ていく。また、多数
決ルールがアローの不可能性定理を満たすことから、多数決では社会全体の意思を汲んだ
選択をできないことは明らかである。
2 節では 1 節で特に私たちが問題であると考えている票の割れに対する脆弱性が実際に
起こった例として 2000 年アメリカ大統領選挙を見ていく。ゴア・ブッシュの一騎打ちと考
えられていたこの大統領選挙であったが、ネーダーという第 3 者が出現したことによって
票の割れが起こってしまったのである。有権者の多くはブッシュよりもゴアを支持してい
たにもかかわらず、ゴアとネーダーの掲げる政策が非常に似ていたため、ネーダーに多く
の票が流れてしまった。その結果、ブッシュが勝つ結果となってしまったのであった。
では、国内において票割れの例が見られなかったのか、それについて 3 節で平成 27 年 8
月 30 日に実施された大阪府枚方市長選挙と平成 24 年 4 月 8 日に実施された大阪府茨木市
長選挙を取り上げる。
この 2 つの市長選挙では維新 VS 反維新の構図になっており維新の当
選を阻止しようと立候補する人たちがいた。しかし反維新として何名か立候補した結果反
維新同士で票割れを起こしてしまい、結果両方の選挙にて維新の立候補者が当選するとい
う結果になったのであった。
以上、現状分析・問題意識で挙げた多数決制度の問題点が深刻なものであるととらえ他
の選択方法を考えていきたいと考える。
2 章先行研究として私たちは、坂井豊貴の「多数決を疑う」・「社会的選択論への招待」
を使用した。
ISFJ2015 最終論文
「多数決を疑う」では、1 章 1 節にて挙げた多数決に含まれる問題点について言及したう
えで、それに代わる社会的選択論について述べられていた。特にその中でもボルダルール
(順位付けルール)の優位性が論じられていた。
「社会的選択への招待」では、ボルダルールが優れていることを数式等を用いて証明して
いたため分析にて多数決ルールとの優位性の比較の際に使用した。
3 章分析ではまず社会的選択方法として優れていると考えた、ボルダルール・コンドル
セルール・ヤングの最尤法がどういったものであるのかを表等を用いて説明していく。そ
れらを踏まえたうえで全員一致に達するのに一番早いものはどの社会的選択方法であるか、
平均得票率の最大化、ペア全敗者を選ばない唯一のスコアリングルールという観点でみて
いく。
次に、1 章 2 節で論じた 2000 年アメリカ大統領選挙において、もしボルダルールを採用
していたとしたら結果は多数決を用いた時と変わっていたのか、それを明らかにするため
に 2000 年 アメリカ大統領選挙の一般選挙(フロリダ州)の結果を用いて私たち自身で仮
説を立ててシミュレーション分析を進めた。またシミュレーション分析を進めるにあたっ
て 16 人いた立候補者の中でも二大政党である民主党代表者のゴアと共和党代表者のブッ
シュ、そしてこの選挙のキーパーソンとして挙げられるネーダー、この 3 人に絞ってシミ
ュレーションをしていく。
なお他の 13 人に関しては選挙に与えた影響が小さかったことか
ら省かせていただいた。シミュレーション分析を行った結果、多数決ルールを用いた本来
の結果とは大きく異なった結果となったのであった。また 1 章 3 節の枚方市長選挙につい
てもでもシミュレーション分析を行った。これらの結果から考えられることは、多数決制
度でみられた票の割れにより落選してしまった候補者をボルダルールは正しく選び取れる
ということであった。
多数決の問題点が非常に大きな問題であることは今までに示してきた通りである。そこ
で、私たちは政策提言として、日本の市長選挙に関して、多数決ではなくボルダルールを
用いていきたいと考える。では、なぜ国政選挙ではなく市長選挙なのかという点に関して
だが、国政選挙ではスケールが大きすぎることから政策提言の実現可能性が極めて低いと
考えたからである。同時に周知のとおり、現在の日本における選挙の問題として投票率の
低さ・若年層の政治的無関心が挙げられるであろう。あくまでも私たちの論文の主題は多
数決から新たな社会的選択方法へ変えていくというものであることから深くは言及しない
が少し考察を加える。現在の選挙が記名方式をボルダ投票に切り替えると同時にマークシ
ート方式に切り替えていきたいと考える。そうすることによって人件費の削減が可能とな
り、削減した人件費で投票所の増設、また期日前投票の充実化を進めることができるので
はないかと考える。若年層が投票に行かない理由の 15%が投票所が遠いから(NPOドッ
トジェイピーの資料 http://www.dot-jp.or.jp/nl/2012/1215-2.pdf より引用)となって
いることからも増設することによる投票率アップは非常に期待できると考える。
最後に、ボルダルールを用いたからといって有権者の民意がすべて反映されるかと問われ
ればそうではないと付け加えておきたい。ボルダルールにも問題点は存在する。それでも
私たちは多数決ルールの問題点とボルダルールの問題点を比較した際にボルダルールの問
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題点のほうが改善できる余地が十分にあると考えると同時に、多数決よりも多くの民意を
反映することができると考えボルダルールを推奨したい。
ISFJ2015 最終論文
目次
はじめに
第1章 多数決制度についての考察
第 1 節(1.1)多数決制度の構造的欠陥
第 2 節(1.2)アメリカ大統領選挙 2000 年
第 3 節(1.3)日本における票の割れ
第 4 節(1.4)死票
第 5 節(1.5)選挙不正
第2章 先行研究および本稿の位置づけ
第 1 節(2.1)先行研究
第 2 節(2.2)本稿の位置づけ
第3章 社会的選択方法についての考察
第 1 節(3.1)ボルダルール
第 2 節(3.2)コンドルセルール
第 3 節(3.3)ヤングの最尤法
第 4 節(3.4)全員一致までの近さ
第 5 節(3.5)ペア比較における平均得票率の最大化
第 6 節(3.6)ペア全敗者を選ばない唯一のスコアリングルール
第 7 節(3.7)2000 年アメリカ大統領選挙におけるシミュレーション分析
第 8 節(3.8)大阪府枚方市長選挙におけるシミュレーション分析
第 9 節(3.9)アンケート調査に関する考察
第4章 政策提言
第 1 節(4.1)政策提言の概要
第 2 節(4.2)政策提言の実現性
第 3 節(4.3)死票・投票率に与える影響
先行論文・参考文献・データ出典
ISFJ2015 最終論文
はじめに
多数決という言葉の響きには、
多数派の意見を重視しようという方針が強く認められる。
しかし目的と手段が異なる概念であるのと同様に、方針と実現の間にも大きな隔たりは存
在する。果たして多数決の結果は多数意見を反映しているのだろうか、と疑問に思うこと
は日常生活ではほとんどないと考える。多数決こそ民主的な仕組みと考える人は多く、
「選
ばれた私の言うことが民意」という橋下徹氏はその典型だろう。
しかし最近になって、多数決が本当に民主的なのか、民意を反映させるのかなどの問い
直しをする漫画や評論が出てきた。
本稿では現在の多数決制度の限界を考え、新たな集約ルール、社会的選択方法の実現を
目指す。そのうえで、多数決制度の構造的な問題点を現状分析し、その構造的欠陥が、私
たちの身の回りで実際に起きていることを発見した。多数決に代わる新たな集約ルールと
してボルダルールを紹介する。1770 年にジャン=シャルル・ト・ボルダはパリ王立アカデ
ミーにおいて、多数決という意思集約方法の本質的な欠陥に関する研究報告を行った。そ
して多数決に疑義を呈したボルダは、投票用紙にただひとつの選択肢だけを書くのではな
く、
各選択肢への順位をすべて書き、
それに応じて加点し和をとる集約ルールを考案した。
私たちはこのボルダルールが多数決より優れているとして、ボルダルールを市長選に導
入するちう政策提言が本稿の独自性であり、特徴である。
ISFJ2015 最終論文
第 1 章多数決制度の考察
1.1 多数決制度における構造的欠陥
現在、日本のみならず様々な各国において選挙を行う際の集約ルールとして多数決制度
が利用されている。
私たちがこの多数決制度に問題意識を持ったのはほかの集約ルール(ボ
ルダルール、コンドルセ・ヤングの最尤法)と比較したときに多数決制度には数多くの欠
陥が存在しているということ、そして何よりも多数決制度を利用しているがために多くの
問題が実際に起こってしまっているという現状があったためである。
では、
この多数決制度の構造的な問題は何なのかというと主に以下の 4 つが挙げられる。
1.票の割れへの脆弱性
2.中位投票者を選ぶ
3.アローの不可能性定理
4.ペア全敗者を選ぶ
1 については本章第 2 節
(アメリカ大統領選挙
で見ていく。
2000)
、
第 3 節(衆議院議員選挙
2012)
2 については中位投票者を選ぶとはつまり、中位投票者の考える、望む政策が実現され
ていくということになる。高齢化が進んでいる今日、中位年齢はどんどん上がっていき、
その結果実現されていく政策は高齢者寄りのものになっていってしまうことになってしま
う。
3 について、アローの不可能性定理とは経済学者ケネス・アローが発見した定理で、以
下の 3 つの前提と 4 つの条件が受け入れるとき
「社会の中の個人はそれぞれ個人的な選好をもち、そうした各人の選好を合計すると社
会全体の選好を得ることができる」というのは成り立たないというものである。
・3 つの前提
ISFJ2015 最終論文
1.選好2は推移的である。(A>B、B>Cの時、A>C)
2.選好は完全である。(選好A,Bが存在するとき、A>B、A<B、A=Bのどれ
かである。
3.3 人以上の当事者が含まれる。
・4 つの条件
1.当事者はいくつかの選択肢に関してどのような選好順位をつけてもよい。すなわちA
>B>Cという選好 順位が認められる一方、C>B>Aが認められないということはない。
2.A>Bの人が少なくとも一人いて、B>Aの人がいないときA>Bが社会全体の選
好になる。
3.社会全体の選好は絶対に独裁的な方法では決まらない、つまりある個人の選好によ
ってのみ社会全体の選好が決まることはない。
4.2 つの選択肢A.Bの順位はほかの選択肢によって影響を受けない。たとえば、A,
B,C,D,Eという 5 人の候補者が出馬したとし、C,D,Eの三人が辞退したとする。
このとき 3 人の辞退によってA,Bの相対的順位は変わらない。
→多数決の原理はこの 3 つの前提と 4 つの条件を満たすことから社会全体の選好を得る
ことはできないといえる。
4 については以下に説明を加える。
今、ある選挙が行われた結果以下のような順位付けがされたとする。
[図 1-1 多数決勝者とペア敗者]
8人
7人
6人
1位
x
Y
z
2位
y
Z
y
3位
z
X
x
出所:筆者作成
2
あるものを選び、それを欲求すること。「選択」に比べて「あるものより別のものを好
んで選ぶ」という意味が強い。
ISFJ2015 最終論文
この場合、多数決制度を利用すると 1 位票の一番多い x が選ばれる。しかし、ここで x
と y、x と z といったペアで比較すると x は 8 人、y は 13 人となり x は y に負けてしまう。
また x は 8 人、z は 13 人となり x は z にも負けてしまう。
このようにペアで比較した場合に負ける人のことをペア敗者といい、どのケースでも負
けてしまう(この例でいえば x にあたる)人のことを“ペア全敗者”という。
このように多数決制度ではこのケースのようにペア全敗者を選んでしまうことがある。
以上が多数決制度の構造上の問題である。
1.2 アメリカ大統領選挙 2000 年
これから 2000 年のアメリカ大統領選挙で起きた問題点について見ていくが、その前にま
ずアメリカ大統領選挙の流れについて説明を加える。
〈一連の流れ〉
1.各州において一般選挙を実施し、選挙人を選出する。
2.選出された選挙人3によって大統領選挙を実施する。
3.開票
4.当選
このような流れで進んでいく。
では、これらを踏まえたうえで 2000 年のアメリカ大統領選挙ではどのような問題が起
きてしまったのかを考察する。
そもそもアメリカというのは民主党と共和党の二大政党とその他少数政党によって構成
されている。
大統領選挙でもこの二大政党に票が大きく集中し、
ほかの政党については各々
が獲得票数全体の 1%にも及ばないため選挙結果に大きな影響を与えていないというふう
にみられる。2000 年の大統領選挙でも同様に民主党のゴアと共和党のブッシュに票が大き
く集中し、ゴアが優位でブッシュが不利と予想されていた。しかし実際に当選したのはブ
ッシュだった。
3各州での一般投票の結果に従って大統領候補に投票する人。全米に
人口に応じた数の選挙人が割り当てられる。
538 人いて、州ごとに
ISFJ2015 最終論文
では、なぜ周囲の予想を覆す結果になってしまったのか。それは第 3 候補者の出現によ
る票の割れが原因だった。
前述のとおり基本的には二大政党にほとんどの票が集まり、それ以外の候補者には全体
の 1%にも及ばない数の投票しかされない。しかし 2000 年の大統領選挙では候補者“ネ
ーダー”は全体の 2.74%の票を獲得した。たったの 2.74%というふうにしか感じないだろ
うがこの 2.74%が選挙結果を大きく変えてしまったのだ。
実際の一般選挙における 3 人の獲得票数・得票率は以下のようになる
[図 1-2
2000 年
アメリカ大統領選挙
得票数
50,158,094
49,820,518
2,883,105
ゴア
ブッシュ
ネーダー
獲得票数]
得票率
50,17%
49,83%
2,74%
出所:2000 OFFICIAL PRESIDENTIAL GENERAL ELECTION RESULTS
表より明らかのように一般選挙においてネーダーの 2.74%二大政党の二人に影響を与え
たかというとそのようには見えない。しかしここで選挙人の獲得人数を見てみると
[図 1-3
2000 年
ゴア
ブッシュ
ネーダー
アメリカ大統領選挙
獲得選挙人]
選挙人獲得数
267 人
271 人
0人
出所:2000 OFFICIAL PRESIDENTIAL GENERAL ELECTION RESULTS
となり最終的な当選者はブッシュになる。つまり一般選挙における票数はゴアのほうが
多かったものの選挙人を多く獲得したブッシュが当選した。
ではいったいなぜゴアは選挙人を 267 人しか獲得できなかったのか、そこでこの 2.74%
が大きく関係してくる。
そもそもこの 2.74%は本来ならだれに投票されていたか、それは二大政党のひとりであ
る民主党のゴアである。ではなぜゴアに投票されるはずであった票がネーダーに流れてし
まったのか、それはネーダーの掲げていた政策というのがゴアの政策と非常に似たもので
あったためである。その結果、ゴアに投票されていたはずの票がネーダーに流れてしまっ
たのだ。つまり一般投票で本来ゴアが獲得していたはずの選挙人がネーダーへの票割れの
せいで獲得できなかったのだ。
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その一例がフロリダでありフロリダは選挙人の配分が非常に多い州でもある。
下の表よりネーダーの獲得票数が 97488 となっているが、二大政党の二人の獲得票数の
差は 537 であることから票割れが起こっていなければゴアがこの州で選挙人を獲得してい
たことは明らかである。
[図 1-4 フロリダにおける獲得票数]
順位
1位
2位
3位
氏名
ブッシュ
ゴア
ネーダー
獲得票数
2912790
2912253
97488
出所:2000 OFFICIAL PRESIDENTIAL GENERAL ELECTION RESULTS
1.3 日本における票の割れ
2 節では、アメリカで起こった票の割れについて 2000 年の大統領選挙を見てきた。
では、現在の日本の国内において票の割れが起こっていないのか?
それについてこの節では見ていく。
結論から述べると日本国内の選挙において票の割れは起こっている。平成 27 年 8 月 30 日
に実施された大阪府枚方市長選挙・平成 24 年 4 月 8 日に実施された大阪府茨木市長選挙
この 2 回において票の割れが見られた。
① 大阪府枚方市長選挙(平成 27 年
8 月 30 日)
[図 1-5 枚方市長選挙における得票数]
伏見
たかし
竹内
おさむ
なんば 秀哉
福川
ひろこ
所属政党
大阪維新の会
無所属
無所属
無所属
獲得票数
55,156
52,801
9,517
7,122
得票率
44.27
42.38
7.64
5.72
出所:筆者作成
(http://www.city.hirakata.osaka.jp/uploaded/life/167543_802764_misc.pdf 参照)
ISFJ2015 最終論文
この選挙では大阪維新の会の伏見たかし氏と大阪維新の会の当選を阻止しようと考えて
いた 3 人、維新 VS 反維新の構想になっていた。
反維新側が 3 人もいれば維新側に入る票は少なくなる。それが大方の見解であったのだ
が、実際は反維新側に投票された票が 3 人に割れてしまったのであった。
反維新側で最も得票数が多かった竹内氏と維新の伏見氏での得票差が 2355 票であった
ことから反維新側での票の割れが起こっていなければ選挙結果は変わっていた可能性があ
るといえるだろう。
② 大阪府茨木市長選挙(平成 24 年
4 月 8 日)
[図 1-6 茨木市長選挙における得票数]
木本やすひろ
桂むつこ
山下けいき
吉野宏一
所属政党
無所属(維新推薦)
無所属(民主党推
薦)
無所属
無所属
獲得票数
32,266
24,692
得票率(%)
42.24
32.32
12,166
7,260
15.93
9.50
出所:筆者作成
(http://www.city.ibaraki.osaka.jp/shisei/senkyo/kekka/1337745091079.html 参照)
こちらについても枚方市長選挙と同様の構図になっており 2 位以下の 3 人の票が割れてし
まったのである。この場合も当選した木本氏と桂氏の得票数の差が少ないことから票の割
れが起こっていなかった場合に選挙結果が変わっていた可能性があるといえるだろう。
以上、この 2 つが国内で起こった票割れの実際に起こった事例である。
2 節.3 節で票割れの具体的事例を説明したが、私たちは1章 1 節で示した多数決の問題
点の中でもこの票の割れがもっとも大きな問題であると考え、多数決以外の集約ルールを
採用すべきと考えます。
1.4 死票
[図 1-7
届け出政党別得票数(小選挙区)]
政党名
獲得票数
得票率
自民党
25,643,309,437
44.8801%
ISFJ2015 最終論文
民主党
13,598,773,592
23.8001%
日本維新の会
6,942,353,536
12.1503%
公明党
885,881
0.0016%
みんなの党
2,807,244,610
4.9131%
日本未来の党
2,992,365,627
5.2371%
日本共産党
4,700,289,803
8.2263%
社会民主党
451,762,273
0.7907%
新党大地
315,604
0.0006%
国民新党
117,185
0.0002%
計
57,137,417,548
100%
出所:総務省より筆者作成
第 46 回衆議院議員選挙は以上のような結果となった。これから読み取れることは全体の
約 44%の票を獲得した自民党が議席をもっとも多く獲得した。しかし、44%というのは過
半数を下回っており、過半数の有権者の意見が反映されていないこととなる。つまりそれ
らの票は死票となったこととなる。衆議院議員選挙においての問題点の1つとしてこの死
票が挙げられる。民意の半分が議会に届いていない現状では、民主主義社会が機能してい
るとはいいがたい。結果的に自分の票が死票になってしまうような事態が多く発生するこ
とで、有権者の投票のインセンティブの低下にもつながると考えられている。
死票率はすなわち民意の排除の比率を示し、民主主義の多数決原理における「少数意見の
尊重」を満たすか否かの基準となる。小選挙区制導入で死票率が半数近くを占める選挙に
おいて「死票」も「国民の民意がより正しく反映された社会」において改善されるべき課
題として看過できない。
1.5 選挙不正
多数決における選挙制度は不正の発生を促すと考えられている。
ISFJ2015 最終論文
多数決制度は政党中心のキャンペーンとは対照的に個人的なものになり、候補者が票を
買収するインセンティブを多数決主義の選挙制度は高めると思われる。
実際、2014 年に青森県平川市で公職選挙法違反により逮捕された事例がある。平川市長
選について、当選した長尾忠行市長側(旧田沢・竹内派)から 3 人、落選した大川喜代治
前市長側(木村派)から 2 人の計 5 人の平川市議が、2014 年 2 月 19 日に公職選挙法違反
容疑で逮捕された。同年 4 月 1 日には新たに 1 人の市議、5 月 1 日には落選した大川喜代
治前市長、5 月 21 日には 3 人の市議、更に 7 月 16 日には 6 人の市議が逮捕され、議員定
数 20 名中 15 名が逮捕されるという事態に陥った。その後の市議会議員補欠選挙では、幸
福実現党元公認候補の石田昭弘が当選し、党の初の議席獲得に貢献している。
また有権者の投票参加を弱める選挙制度は不正を同時に促すかもしれない。多数決制度で
は議席を獲得できなかった敗者に投じられた票は死票となってしまうが、ボルダルールに
おいては全員に得点を与えるので、死票は存在しない。そのため、票の有効性はボルダル
ールを採用した場合のほうが大きい。そして、多数決制度では有権者の投票参加を減らす
こととなる。有権者の投票参加が低下するならば当選するために集める票は少なくて済む
ため、票を買収する効果は大きくなる。堀内は 2005 年に「集団サイズが減少するにつれ、
候補者間の得票差が減少することが分かっている。」という研究報告を行った。つまり都
市部に比べて、地方の法が候補者間の得票差が減少する傾向にあるということである。
ISFJ2015 最終論文
第 2 章先行研究および本稿の位置
づけ
2.1 先行研究
私たちは、現在の多数決制度には数多くの問題点があり、そのほかの社会的選択方法の
利用を考えている。そのための先行研究として『多数決を疑う』(坂井豊貴 2015 岩波新書)
を利用した。
本書では多数決制度の問題点・実際に起こった事例をまず取り上げている。そこからほ
かの集約ルールとしてどういったものがあるのか、またその中でどれが実用的であるのか
が記されていた。
まず多数決という方法には
1.票の割れへの脆弱性
2.戦略的投票4への脆弱性
3.アローの不可能性定理を満たす
4.ペア全敗者を選ぶ
という 4 つの欠陥が存在する。
ここで、アローの不可能性定理を満たすということは“多数決制度では社会的に適切な
選択を選ぶことは不可能”ということである。
では本書においてどういった集約ルールがあげられていたかというと
1.ボルダルール
2.コンドルセ・ヤングの最尤法
4
選挙における有権者の投票行動の中で、個別の意見表明のためではなく、有権者にとっ
て望ましい結果を得るために行うもの。
ISFJ2015 最終論文
の 2 つである。
この 2 つの集約ルールについての詳しい説明については第 3 章で与えるが、本書では 2
つの集約ルールのうち有権者に仕組みが理解しやすいボルダルールを採用すべきと記され
ていた。
2.2
本稿の位置づけ
先行研究を踏まえたうえで、まず私たちはボルダルールが本当にほかのものより優れて
いるといえるのかを分析していく。
そのうえで実際に起こった問題(2000 アメリカ大統領選挙における票割れ問題)につ
いてボルダルールを利用するとどう変わったかをシミュレーション分析していく。
また、ボルダ投票にかかわるアンケート調査行い、その結果を踏まえて分析を行った。
これらの分析より多数決に代わる新たな集約ルールの実現を目指す。
ISFJ2015 最終論文
第 3 章社会的選択方法の検討
3.1 ボルダルール
1770 年にジャン=シャルル・ド・ボルダ(1733-1799 Borda)はパリ王立科学アカデミー
において、多数決という意思集約方法の本質的な欠陥に関する研究報告を行った。その内
容として、投票用紙にただひとつの選択肢だけを書くのではなく、各選択肢への順位をす
べて書き、それに応じて加点し和をとる集約方法を考案した。その方法をボルダルールと
呼ぶ。選択肢の数が 3 個なら、1 位には 3 点、2 位には 2 点、3 位には 1 点というように
加点して、得点和が最大になる選択肢を勝者とするものである。
[図 3-1 ボルダ勝者]
1位
2位
3位
4人
x
y
z
4人
x
z
y
7人
Y
Z
X
6人
z
y
x
出所:筆者作成
上の表を例にして得点和を計算すると、

x には、(3×8)+(2×0)+(1×13)=37 点

y には、(3×7)+(2×10)+(1×4)=45 点

z には、(3×6)+(2×11)+(1×4)=44 点
が入ることになる。こうした得点和をボルダ得点と呼び、ボルダ得点が最大になる選択肢
をボルダ勝者と呼ぶ。ここでボルダ勝者は y であり、多数決勝者 x とは異なっている。
3.2 コンドルセルール
コンドルセはパリ王立科学アカデミーの代表的な学者であった。同アカデミーには、数
学への貢献により 1769 年に入会を認められ、1776 年には終身書記の地位を得ているが、
この職はフランスにおける科学のスポークスマンの役割を果たすものであった。数理分析
を本格的に用いる社会学者である。
ISFJ2015 最終論文
いま 13 人の有権者が存在するとして、3 つの選択肢 x,y,z のうちそれぞれ 2 つに対し総
当たり戦でペアごとの多数決を行い、次の結果が得られたとする。
[図 3-2 コンドルセ勝者]
x
y
z
x
―
5-8
7-6
y
8-5
―
2-11
z
6-7
11-2
―
出所:筆者作成
ペアごとの多数決の結果は

8 対 5 で x が y に勝つ

7 対 6 で z が x に勝つ

11 対 2 で y が z に勝つ
である。ここではペアごとの多数決で循環が生じているが、これをコンドルセサイクルと
いう。ペアごとの多数決に基づき選択肢全体の順序付けを行うためには、このサイクルを
崩す必要がある。
そこでコンドルセは、最も得票差が少ない「7 対 6 で z が x に勝つ」を結果から消去す
ることを提案した。すると残る結果は

8 対 5 で x が y に勝つ

11 対 2 で y が z に勝つ
なので、全体の順位が x,y,z として定まり、勝者は x となる。
このように得票差が小さな結果を消してサイクルを崩していくコンドルセの方法は、選
択肢が 3 つのときは簡単に実行できる。しかし選択肢が 4 つ以上存在するとき、この方法
は必ずしもうまく機能しないことを Nanson(1882)や Black(1958)によって指摘されてきた。
次の例は Young(1988)によるものである。
いま 25 人の有権者と 4 つの選択肢が存在する状況で、選択肢 2 つずつの総当たり戦で
多数決を行い、次の結果が得られたとする。
[図 3-3 コンドルセサイクル]
ISFJ2015 最終論文
x
y
z
w
x
―
13-12
15-10
17-8
y
12-13
―
16-9
11-14
z
10-15
9-16
―
18-7
w
8-17
14-11
7-18
―
出所:筆者作成
つまり多数決の結果が

13 対 12 で y が x に勝つ

15 対 10 で x が z に勝つ

17 対 8 で x が w に勝つ

16 対 9 で y が z に勝つ

14 対 11 で w が y に勝つ

18 対 7 で z が w に勝つ
のようになり、サイクルが y,x,z,w,y のように複雑に発生している。
そこでもっとも得票差が小さな結果「13 対 12 で y が x に勝つ」を消去すると

15 対 10 で x が z に勝つ

17 対 8 で x が w に勝つ

16 対 9 で y が z に勝つ

14 対 11 で w が y に勝つ

18 対 7 で z が w に勝つ
になる。しかし、これでもサイクル y,z,w,y が残る。そして次に得票差が小さな結果「14
対 11 で w が y に勝つ」をさらに消去すると

15 対 10 で x が z に勝つ

17 対 8 で x が w に勝つ

16 対 9 で y が z に勝つ
ISFJ2015 最終論文

18 対 7 で z が w に勝つ
となり、これでサイクルがなくなる。
しかし残った 4 つの結果から、x と y のどちらを上位にすべきかは確定できない。これ
が前述した、コンドルセの方法が必ずしもうまく機能しないということである。
3.3 ヤングの最尤法
[ 図 3-4 ヤングの最尤法]
x
y
z
x
―
5-8
7-6
y
8-5
―
2-11
z
6-7
11-2
―
出所:筆者作成
2 つの選択肢があり、ある 1 つの選択肢が正しいときに正しい方を選択できる確率を v
で表す。そして 0.5<v≦1 が成り立つものとする。この仮定は、人間理性による判断は、
表と裏が半々の確率で出るコイントスよりは精度が高いことを意味する。判断に必要な情
報や知識が有権者に十分ない場合には、この仮定をおくのは妥当ではない。
そしてこれを用いひとりの有権者が正しい判断ができる確率を表す。ここで、真の
順序付けの候補は 6 通り
xyz, xzy, yxz,yzx,zxy,zyx
ある。ここで例えば xyz が真の順序付けである確率はどの程度であるかを説明していく。
有権者の総数は 13 人である。
そのうちの 8 人は x を y より高く順序付けているから、xyz が真であれば、その 8 人は
13!
x,y の判断について正しく、
残る 5 人は間違っている。
そして、13 人から 8 人の選び方は8!5!通
りある。よって xyz が真であれば 13 人のうち 8 人が x,y の判断について正しい確率は
13! 8
𝑣 (1 − v)5
8! 5!
である。
ISFJ2015 最終論文
そのうち 7 人は z を x より高く順序付けているから、xyz が真であれば、その 7 人は x,z
の判断については間違っており、残る 6 人は正しい。そして、13 人からの 7 人の選び方は
13!
通りある。よって xyz が真であれば、13 人のうち 7 人が x,z の判断について間違ってい
7!6!
る確率は
13!
(1 − v)7𝑣 6
7!6!
である。
そのうち 11 人は y を z より高く順序付けているから、xyz が子音であれば、その 11 人
は y,z の判断については正しく、残る 2 人は間違っている。そして 13 人からの 11 人の選
13!
び方は11!2!通りある。よって xyz が真であれば、13 人のうち 11 人が y,z の判断について正
しい確率は
13! 11
𝑣 (1 − 𝑣)2
11! 2!
以上の議論より、「『8 対 5 で x が y にかち、7 対 6 で z が x に勝ち、11 対 2 で y が z
に勝つという状況』が、xyz の真の順序付けであるもとで生まれる確率」は
P(xyz)=
13!
8!5!
5
𝑣 8 (1 − v) ・
13!
7!6!
=
(13!)3
11!2!
𝑣11 (1 − 𝑣)2
𝑣 8+6+11 (1 − 𝑣)5+7+2
8!5!7!6!11!2!
=
13!
(1 − v)7 𝑣 6 ・
(13!)3
8!5!7!6!11!2!
𝑣 25 (1 − 𝑣)14
となる。以上の議論から明らかなように、(1,13)における v の肩にかかる 25 とは、x の y
に対する得票数 8、y の z に対する得票数 6、x の z に対する得票数 11 の和である。(1-v)
の肩にかかる 14 についても同じことである。
順序付け xyz に対してそれが真である確率 P(xyz)を求めたのと同じ方法により、他の順
序付けについてもそれが真である確率をそれぞれ求めることができる。例えば xyz の場合、
P(xzy)はどうすれば求められるかというと、
v の肩にかかる数が、
x の z に対する得票数 6、
z の y に対する得票数 2、x の y に対する得票数 8 の和である 16 なので
(13!)3
P(xzy)= 8!5!7!6!11!2! 𝑣16 (1 − 𝑣)23
が得られる。こうして得られるすべての結果をまとめると
(13!)3
P(xyz)=8!5!7!6!11!2! 𝑣 25 (1 − 𝑣)14
ISFJ2015 最終論文
P(xzy)=
P(yxz)=
(13!)3
8!5!7!6!11!2!
(13!)3
8!5!7!6!11!2!
𝑣16 (1 − 𝑣)23
𝑣 22 (1 − 𝑣)17
(13!)3
P(yzx)=8!5!7!6!11!2! 𝑣 23 (1-𝑣)16
P(zxy)=
P(zyx)=
(13!)3
8!5!7!6!11!2!
(13!)3
8!5!7!6!11!2!
𝑣17 (1 − 𝑣)22
𝑣14 (1 − 𝑣)25
となる。これら 6 個の確率の大小比較は容易である。そもそも係数
(13!)3
8! 5! 7! 6! 11! 2!
は共通なので、大小比較に際してここは無視してよい。そして v>0,5 なので、これら 6 個
の確率の大小比較は v の肩にかかる係数の大小比較と等しい。ということは
25>23>22>17>16>14 なので
P(xyz)>P(yzx)>P(yxz)>P(zxy)>P(xzy)>P(zyx)
が得られる。これら諸確率はその順序付けが真である確率を示しており、その値が最も高
いのは xyz ということになる。
議論を整理する。ここで「x の y に対する得票数」を n(xy)のように表す。そして「順序
付け xyz の総当たりポイント」を
N(xyz)=n(xy)+n(yz)+n(xz)
のように定義する。
このように最尤法の考え方に基づき、N が与えるポイントにより選択肢に順応付けを行う
方法をヤングの方法と呼ぶ。
これより私たちはボルダルールが最良の社会的選択であると仮定し、数理分析を開始す
る。
3.4 全員一致までの近さ
ISFJ2015 最終論文
全員が同じ選択肢を 1 位とする状況では、意思集約においては対立が発生しない。そう
した状況では単にその選択肢を選び取ればいいだけだし、常識的に定義されたあらゆる集
約ルールはそうした選択を行う。問題は、全員一致の状況はめったに訪れないことだ。た
とえば、
[図 3-5 全員一致までの近さ]
1位
2位
3位
佐藤
y
x
z
高橋
y
x
z
中野
y
x
z
松岡
x
z
y
浜田
x
z
y
出所:筆者作成
のケースは、当然ながらどの選択肢も全員一致の支持は受けていない。しかしここで、「全
員一致の支持を受けていることにもっとも近いのは、どの選択肢か」を問うことは可能で
ある。
いま x がボルダ勝者で、y がペア全勝者である。ここでまず各有権者の順位内で x を 1
位に上げていき、それに伴い x より上位の選択肢の順位を 1 つ下げていくと
[図 3-6 全員一致までの近さ]
1位
2位
3位
佐藤
x
y
z
高橋
x
y
z
中野
x
y
z
松岡
x
z
y
浜田
x
z
y
出所:筆者作成
が得られる。具体的には、佐藤と高橋と中野について、x が 1 位になるように、y を追い
越させたわけである。なお、松岡と浜田については x が最初から 1 位なので何も変更して
いない。全体としては追い越し 1 回が 3 人で計 3 回、よって x は 3 回の追い越しで全員一
致に到達できたことになる。同時に y を 1 位に上げていくと
[図 3-7 全員一致までの近さ]
佐藤
高橋
中野
松岡
浜田
ISFJ2015 最終論文
1位
2位
3位
y
x
z
y
x
z
y
x
z
y
x
z
y
x
z
出所:筆者作成
となる。ここでは松岡と浜田にとって 3 位だった y が、まず z を追い越して 2 位になり、
次いで x を追い越して 1 位になるという操作を行っている。全体としては、追い越し 2 回
が 2 人で計 4 回、よって y は 4 回の追い越しで全員一致に到達できたことになる。
さらに z に対しても同様の操作をすれば 8 回の追い越しで全員一致に到達できる。
このようにボルダ勝者は最少回数で全員一致に到達できる。
この議論を厳密に定式化したものを以下にあたえる。
個人 i=1,…,n で表し、選択肢の数をⅿで表す。個人 i が選択肢 x に与える順位を𝑟𝑖 (𝑥)
で表せば、個人 i が選択肢 X に与えるボルダ得点𝑝𝑖 (x)は
𝑝𝑖 (x)=m-𝑟𝑖 (x)+1
である。たとえば x が 2 位ならば𝑟𝑖 (x)=2 なので、そのとき x には m-2+1=m-1 点が入る。
よって x が獲得するボルダ得点𝑝𝑖 (x)はそれらの総計
n
𝑝𝑖 (x)=∑𝑖=1(𝑚 − 𝑟𝑖 (x) + 1)=nm-∑𝑛𝑖=1 𝑟𝑖 (x)+n
(1.1)
で表される。
さて、前述のように、x が全員一致の支持を受けるような個々人内での x の順位を 1 位
になるまで上げていくと、各 i について𝑟𝑖 (x)-1 回の「追い越し」が必要である。よって x
が全員一致の支持を受けるような個々人内での順位を上げていくと、そのために必要な追
い越しの総数 s(x)は
n
s(x)=∑𝑖=1(𝑟𝑖 (x) − 1)=∑𝑛𝑖=1 𝑟𝑖 (x) − 𝑛
(1.2)
であたえられる。
[定理] ボルダ勝者である選択肢 x と、ボルダ勝者でないどのような選択肢 y についても
s(x)<s(y)
が成り立つ。つまりボルダ勝者は全員一致への「追い越し回数」を最少化する選択肢であ
る。
ISFJ2015 最終論文
[証明]
いま x はボルダ勝者で、y はボルダ勝者でないので p(x)>p(y)が成り立つ。よって(1.1)よ
り
nm-∑𝑛𝑖=1 𝑟𝑖 (x)+n>nm-∑𝑛𝑖=1 𝑟𝑖 (y)+n
が成りたち、これは
∑𝑛𝑖=1 𝑟𝑖 (x)<∑𝑛𝑖=1 𝑟𝑖 (y)
を意味する。よって(1.2)より
s(x)= ∑𝑛𝑖=1 𝑟𝑖 (x)-n<∑𝑛𝑖=1 𝑟𝑖 (y)-n=s(y)
が得られた。
3.5 ペア比較における平均得票率の最大化
有権者数を n、選択肢数を m で表し、ある選択肢 x について考える。そして y を x と異
なる選択肢とする。ここで、もし有権者 i が x に y より高い順位を与えるならば
ℎ𝑖 (x.y)=1
と書き、また y に x より高い順位を与えるならば
ℎ𝑖 (x.y)=0
と書くことにする。すると x に y よりい高い順位を与える有権者の総数は
∑𝑛𝑖=1 ℎ𝑖 (x,y)
となり、x と y のペアごとの多数決における x の得票率は
∑𝑛𝑖=1 ℎ𝑖 (𝑥, 𝑦)
𝑛
により表される。
ここで x の m-1 個存在するほかの選択肢 y≠x に対する、ペアごとの多数決における平
均得票率を
ISFJ2015 最終論文
∑𝑛
𝑖=1 ℎ𝑖 (𝑥,𝑦)
∑
𝑦≠x
f(x)=
n
𝑚−1
として定義する。
平均得票率の式は次のように書き換えていくことができる。まず
∑𝑛
𝑖=1 ℎ𝑖 (𝑥,𝑦)
∑
𝑦≠x
f(x)=
n
𝑚−1
1
=𝑛(𝑚−1) ∑𝑦≠𝑥 ∑𝑛𝑖=1 ℎ𝑖 (𝑥, 𝑦)
(1.3)
が成り立つ。
いま個人 i が選択肢 x に与えるボルダ得点
𝑝𝑖 (x)=∑𝑦≠𝑥 ℎ𝑖 (𝑥, 𝑦) + 1
であることに注意されたい。
これは∑𝑦≠𝑥 ℎ𝑖 (𝑥. 𝑦)が x の下に位置する選択肢の総数を表し、
それゆえ x は下から∑𝑦≠𝑥 ℎ𝑖 (𝑥. 𝑦) + 1番目だからである。よって(1.3)より
f(x)=
=
=
1
𝑛(𝑚−1)
1
𝑛(𝑚−1)
1
𝑛(𝑚−1)
∑𝑛𝑖=1(𝑝𝑖 (x)-1)
∑𝑛𝑖=1 𝑝𝑖 (x) -
∑𝑛𝑖=1 𝑝𝑖 (x) -
𝑛
𝑛(𝑚−1)
1
𝑚−1
が得られる。そしてボルダ得点が p(x)=∑𝑛𝑖=1 𝑝𝑖 (x)であることに注意すると、
𝑝(𝑥)
1
f(x)=𝑛(𝑚−1) - 𝑚−1
(1.4)
であることがわかる。
[定理] ボルダ勝者である選択肢 x と、ボルダ勝者でないどのような選択肢 y についても
f(x)>f(y)
が成り立つ。つまりボルダ勝者は平均得票率を最大化する選択肢である。
[証明]
ISFJ2015 最終論文
いま x はボルダ勝者で、y はボルダ勝者ではないので、p(x)>p(y)が成り立つ。よって(1.4)
より
𝑝(𝑥)
1
𝑝(𝑦)
1
f(x)= 𝑛(𝑚−1) - 𝑚−1>𝑛(𝑚−1) - 𝑚−1 =f(y)
が成り立つ。
3.6 ペア全敗者を選ばない唯一のスコアリングルール
いま選択肢 m=3 とする。我々はボルダルールが各選択肢につける得点を
𝑎1=3 𝑎2=2 𝑎3=1
と定めている。しかし以下のように定めることも可能である。
𝑎1=2 𝑎2=1 𝑎3=0
や
𝑎1=4 𝑎2=3 𝑎3=2
のようである。これを一般化すると
𝑎1-𝑎2=𝑎2-𝑎3>0
(1.5)
と表すことができる。
[定理] ボルダルールでない、どのようなスコアリングルールについても、その勝者がペ
ア全敗者であることが起こり得る。
[証明]
ここでは m=3 のケースについてのみ証明を与える。ボルダルールでないスコアリングルー
ルということは(1.5)が成り立たないということなので、そのスコア𝑎1>𝑎2>𝑎3について
𝑎1-𝑎2≠𝑎2-𝑎3
が成り立つ。
まず𝑎1-𝑎2<𝑎2-𝑎3の場合について考える。すると 2𝑎2-(𝑎1+𝑎3)>0 なので、十分大きな整数 k
について
k(𝑎2-(𝑎1+𝑎3))> 𝑎1-𝑎3
(1.6)
ISFJ2015 最終論文
が成り立つ。
ここで、
[図 3-8 ペア敗者を選ばない唯一のスコアリングルール]
k人
y
x
z
1 位(𝑎1点)
2 位(𝑎2点)
3 位(𝑎3点)
k人
Z
X
Y
1人
y
z
x
出所:筆者作成
を考えてみると、x はペア全敗者である。さて、各選択肢が獲得する総スコアを計算する
と
p(x)=2k𝑎2+𝑎3
p(y)=k𝑎1+k𝑎3+𝑎1
p(z)=k𝑎1+k𝑎3+𝑎2
となっている。そして(1.6)より p(x)>p(y)>p(z)が成り立つことが容易に確かめられる。よ
ってペア全敗者である x がこのスコアリングルールの勝者となっている。
次に𝑎1-𝑎2>𝑎2-𝑎3の場合について考える。いま十分大きな整数 k について
𝑘−1
𝑘
𝑘+1
𝑎1 -𝑎2>𝑎2-
𝑘
𝑎3
(1.7)
が成り立つ。
ここで
[図 3-9 ペア敗者を選ばない唯一のスコアリングルール]
1 位(𝑎1点)
2 位(𝑎2点)
3 位(𝑎3点)
k-1 人
x
z
y
k人
X
Y
Z
k人
y
z
x
出所:筆者作成
k人
z
y
x
ISFJ2015 最終論文
を考えてみると、x はペア全敗者である。そして、各選択肢が獲得する総スコアを計算す
ると
p(x)=(2k-1) 𝑎1+2k𝑎3
p(y)=k𝑎1+2k𝑎2+(k-1)𝑎1
p(z)=k𝑎1+(2k-1) 𝑎2+k𝑎3
となっている。まず p(y)>p(z)は明らかである。
次に(1.7)より
(k-1) 𝑎1-k𝑎2>k𝑎2-(k+1) 𝑎3
だが、この両辺に k𝑎1+k𝑎2+2k𝑎3を足すと
p(x)= (2k-1) 𝑎1+2k𝑎3> k𝑎1+2k𝑎2+(k-1) 𝑎3=p(y)
が成り立つことがわかる。よってペア全敗者である x がこのスコアリングルールの勝者と
なっている。
3.7 2000 年アメリカ大統領選挙におけるシミュ
レーション分析
第 1 章 2 節で示したように、2000 年アメリカ大統領選挙では票の割れが起こってしま
った。ではもし選択方法が多数決ではなくボルダルールを用いていた場合に結果がどのよ
うにして変わったかを選挙人の配分が多く且つ票の割れが実際に見られたフロリダの一般
投票の結果を用いてシミュレーションしてみいく。
ここでシミュレーション分析を進めるにあたり私たちが考慮した点は
①ブッシュとゴアが二大政党であることから順位付けをするにあたってどちらか一方を 1
位にした場合、戦略的にもう片方を最下位にしようとする動きが起こる可能性が高いとい
うこと。
例)ゴアを 1 位にする人の順位付けは、ゴア→ネーダー→ブッシュという順位付けのほう
がゴア→ブッシュ→ネーダーよりも多くなると考える。
ブッシュが 1 位に場合も同様の動きがみられるであろう。
ISFJ2015 最終論文
②次に、ネーダーとゴアの政策が非常に似たものであったことを考えればネーダーを一位
にする人というのは 2 位をゴアにするという動きがとられると考えた。
以上、この 2 点を考慮したうえでシミュレーション分析を進めていく。
[図 3-10 シミュレーション分析]
ケース 1
パターン
A
投票数
1747674
順位
1位
ブッシュ
2位
ネーダー
3位
ゴア
*A:B=6:4,C:D=6:4
ブッシュ
ゴア
12913012
13009641
ケース 2
パターン
投票数
順位
1位
2位
3位
B
1165116
C
1747352
D
1164901
E
97488
ブッシュ
ゴア
ネーダー
ゴア
ネーダー
ブッシュ
ゴア
ブッシュ
ネーダー
ネーダー
ゴア
ブッシュ
ネーダー
9612533
A
2038953
B
873837
C
2038577
D
873676
E
97488
ブッシュ
ネーダー
ゴア
ブッシュ
ゴア
ネーダー
ゴア
ネーダー
ブッシュ
ゴア
ブッシュ
ネーダー
ネーダー
ゴア
ブッシュ
*A:B=7:3,C:D=7:3
ブッシュ
12621787
ケース3
パターン
投票数
順位
1位
2位
3位
ゴア
12718362
ネーダー
10195037
A
2330232
B
582558
C
2329802
D
582451
E
97488
ブッシュ
ネーダー
ゴア
ブッシュ
ゴア
ネーダー
ゴア
ネーダー
ブッシュ
ゴア
ブッシュ
ネーダー
ネーダー
ゴア
ブッシュ
*A:B=8:2,C:D=8:2
ブッシュ
ゴア
ネーダー
ISFJ2015 最終論文
12330562
ケース4
パターン
投票数
順位
1位
2位
3位
12427083
10777541
A
2038953
B
873837
C
1747352
D
1164901
E
97488
ブッシュ
ネーダー
ゴア
ブッシュ
ゴア
ネーダー
ゴア
ネーダー
ブッシュ
ゴア
ブッシュ
ネーダー
ネーダー
ゴア
ブッシュ
*A:B=7:3,C:D=6:4
ブッシュ
12913012
ケース5
パターン
投票数
順位
1位
2位
3位
ゴア
12718362
ネーダー
9903812
A
1747674
B
1165116
C
2038577
D
873676
E
97488
ブッシュ
ネーダー
ゴア
ブッシュ
ゴア
ネーダー
ゴア
ネーダー
ブッシュ
ゴア
ブッシュ
ネーダー
ネーダー
ゴア
ブッシュ
*A:B=6:4,C:D=7:3
ブッシュ
12621787
ゴア
13009641
ネーダー
9903758
出所:筆者作成
(注
数値については http://www.fec.gov/pubrec/2000presgeresults.htm
参照)
以上、前述した 2 つの考慮をもとに 5 つのケースを想定してシミュレーション分析を行
ったが、ケース 4 以外のすべてのケースでゴアが勝者になっていることが見てもらえるだ
ろう。以上より、多数決で導き出された結果というのはボルダルールを用いた場合にはほ
とんどの確率で実現しないといえよう。
ISFJ2015 最終論文
3.8
大阪府枚方市長選挙におけるシミュレ
ーション分析5
[図 3-11 枚方市長選挙におけるシミュレーション分析]
枚方市長選挙シミュレーション分析
氏名
年齢
党派
得 票
数
伏 見
A
隆
会
竹 内
B
大阪維新の
47
66
無所属
C
D
難 波
秀哉
福 川
妃路子
パターン1
投 票 者 22062
数(人)
1位
A
2位
B
3位
C
4位
D
投 票 者 5280
数(人)
1位
B
2位
C
3位
A
4位
D
投 票 者 476
主な肩書き
5280
元大阪府議、元
枚方市議
42.38
元枚方市長
5515
6
脩
得 票
率(%)
44.27
1
60
無所属
9517
7.64
52
無所属
7122
5.72
一般社団法人代
表理事
無職
22062
2758
3310
2206
2758
10561
10560
A
B
D
C
10560
A
C
B
D
5280
A
C
D
B
10560
A
D
B
C
2855
A
D
C
B
952
B
A
C
D
1903
B
A
D
C
1903
B
C
D
A
1428
B
D
A
C
2137
B
D
C
A
712
C
A
B
D
1424
C
A
D
B
1424
C
B
A
D
357
C
B
D
A
1068
この場合、候補者の数が 4 人なので、1 位には 4 点、2 位には 3 点、3 位には 2 点、4 位
には 1 点という点数が与えられる。
5
ISFJ2015 最終論文
数(人)
1位
2位
3位
4位
結果
C
C
D
D
A
B
B
A
A=360338
パターン 2
投 票 者 11031
11031
数(人)
1位
A
A
2位
B
B
3位
C
D
4位
D
C
投 票 者 15840
5280
数(人)
1位
B
B
2位
C
C
3位
A
D
4位
D
A
投 票 者 475
1428
数(人)
1位
C
C
2位
D
D
3位
A
B
4位
B
A
結果
A=35345
D
D
A
A
B
C
C
B
B=397007
D
D
B
B
A
C
C
A
C=247890
D
D
C
C
A
B
B
A
D=240815
5516
11031
5516
11031
5281
5280
A
C
B
D
15840
A
C
D
B
5280
A
D
B
C
1428
A
D
C
B
476
B
A
C
D
2855
B
A
D
C
2855
B
D
A
C
1068
B
D
C
A
356
C
A
B
D
2137
C
A
D
B
2137
C
B
A
D
356
C
B
D
A
1068
D
D
A
A
B
C
C
B
B=363115
D
D
B
B
A
C
C
A
C=266445
D
D
C
C
A
B
B
A
D=261055
出所:筆者作成
(http://www.city.hirakata.osaka.jp/uploaded/life/167543_802764_misc.pdf を参照)
我々はアメリカだけでなく日本で票の割れが見られた大阪府枚方市長選挙(平成 27 年 8
月 30 日投開票)においてもシミュレーション分析を行った。
パターンとしては 2 つ用意した。この 2 つのパターンで見られる順位づけに関して、着
目した点は、大阪維新の会と反大阪維新の会についてである。現状分析のところで詳しく
述べたが、当選した伏見隆は大阪維新の会所属、そして落選した 2 位、3 位、4 位は反維
新である。維新の会の伏見氏に投票した者の大部分はキャリアや経験の差から 2 位に竹内
氏を置くことが考えられる。(戦略的にライバルである竹内氏を最下位にしないと仮定す
ISFJ2015 最終論文
る。)反維新の竹内氏に投票したものは、2 位に維新の伏見氏を置くとは考えにくく、そ
の他反維新の 2 人を 2 位、3 位に据えると考え、その人数の割合を高くした。
この 2 つのシミュレーション分析から読み取れることは、アメリカ大統領選挙の時と同
じく、多数決制度の欠点である票の割れに対して非常に弱いことから落選してしまった候
補者をボルダルールを採用した場合、正しく選び取れるということである。
3.9 アンケート調査
私たちは、2015 年 11 月 22 日に実施される大阪市長選挙についてアンケート6を実
施し、その結果をボルダルールを用いて集計した。そこから読み取れたことを述べて
いきたい。
以下に挙げた表が、その結果である。
[図 3-12 アンケート調査結果]
大阪市長選挙 アンケート結果
吉村(大阪維新)
柳本(無所属)
中川(無所属)
1位
81
46
32
2位
39
63
68
3位
40
52
68
合計(人)
361
316
300
出所:筆者作成
6
アンケートの対象者は(160)名であるが、学内アンケートを多く実施したため学生の
割合が多くなっている。
ISFJ2015 最終論文
[図 3-13 アンケート調査における年齢構成]
年齢構成
11人([パーセン
テージ])
2人([パーセン
テージ])
3人([パーセン
テージ])
15人([パーセン
テージ])
129人([パーセ
ンテージ])
18~19
20~29
30~39
40~49
50~
出所:筆者作成
[図 3-14 順位付けの傾向]
パター
パター
パター
パター
パター
パター
ン1
ン2
ン3
ン4
ン5
ン6
吉村
1位
1位
2位
2位
3位
3位
柳本
2位
3位
1位
3位
1位
2位
中川
3位
2位
3位
1位
2位
1位
43
26
12
19
20
合計(人) 40
出所:筆者作成
合計
160
ISFJ2015 最終論文
[図 3-15 順位付けの傾向]
大阪市長選挙の順位付け傾向
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
-
1
2
3
4
5
6
出所:筆者作成
また私たちは市長選挙についてのアンケートとともに以下の項目について尋ねた。
1、順位付けの理由
2、現在の選挙制度に対して不満
3、多数決制度とボルダルールどちらのほうが良いか
1、については、順位付けにあたって参考にしたものとして政党名を挙げている人が
多く見られた。
・“維新派だから”
、
“大阪都構想に賛同しているから”
・“維新に反対の立場”
2、について多かった意見の多かった意見は
・若者の投票率を上げるべき
・選挙に行くのが面倒
・選挙可能年齢(18 歳に下げるべき)
・ネット選挙を導入してほしい
3、については
ISFJ2015 最終論文
多数決制度:65
ボルダ投票:95
とボルダ投票を支持する人が多く見られた。
その理由としては、少数派意見の反映や、より民意を反映させられるというものが多
かった。
以上、ボルダ投票に賛成してくれている人たちが多くいることから、まず私たちは市
長選挙においてボルダ投票を導入する。
ISFJ2015 最終論文
第 4 章政策提言
4.1 政策提言の概要
現在我が国では、多数決制度を採用しているが現状分析のところで示したように票割れ
が起こってしまう。票割れが起こることにより国民の意見を正しく示さないこともしばし
ばみられ、その一例が 2000 年 アメリカ大統領選挙である。国民の過半数以上がゴアを支
持していたのにも関わらず票割れを起こしてしまったがためにブッシュが当選するという
結果になってしまったのだ。
また、現状分析の第 3 節でみたように日本のような多党制の国では第一党を支持する人
の割合が過半数を切ってしまうこともある。裏を返せば過半数以上の人たちが第一党を支
持していないというふうにとらえられるはずだ。
これらは多数決制度を利用した場合のほんの一部の問題点にすぎず、そのほかにも多数決
制度を使っているがために起こってしまった問題は数多く存在する。
そこで私たちは集約ルールを現在の多数決制度からボルダルールに変更したい。
ボルダルールについては分析のところで説明したが、では多数決制度よりどういった点で
優れているか。主に以下の4つがあげられる。
1.票の割れが発生しない
2.ペア全敗者を選ばない。
3.全員一致の原則に近づく
4.平均得票率が高い
1 については私たちが多数決制度における最も大きな問題であると考えており、ボルダ
ルールではそれが発生しないと考える。
2 については、まずペア全敗者については現状分析で説明したとおりだがボルダルール
ではこのペア全敗者を選ばないといったメリットが存在するのである。
3 と 4 については分析のところで詳しく解説してあるのでそちらを参照していただきた
い。
我々はこのボルダルールを各地方の市長選で導入することを政策提言とする。
ISFJ2015 最終論文
4.2 政策提言の実現性
公職選挙法が施行されて以降(1950 年〈昭和 25 年〉4 月 15 日以降)の日本では、同
法の第 61 条から第 74 条にかけて記されている開票に関する規定に沿って開票が行われる。
開票所では選挙の開票に関する事務を行う開票管理者の下で、不正がないかどうかを監
視する開票立会人が立ち会う中で開票作業が進められる。選挙の有権者は開票管理者の制
限の中で開票作業を参観することができる。
公職選挙法第 65 条では開票日について「すべての投票箱が送致された日か翌日」とし
ている。投票日の投票終了後に開票を始めることを「即日開票」と呼び、投票日の翌日に
開票を始めることを「翌日開票」と呼ぶ。2000 年代以降の国政選挙では原則即日開票が行
われているが、地方選挙では、超過勤務手当が発生しないことから大きな経費節減効果が
ある翌日開票を選択する地方自治体もある。
また現在の公職選挙法に従って進められる開票作業には莫大な人件費がかかっている。
第 46 回衆議院議員選挙において横浜市だけで 1 億 2 千万以上もの額を開票にかかる経費
として計上されていることが総務省による行政レビューレポートよりわかった。
我々の政策提言である「多数決制度からボルダルールへの段階的に導入すること」によ
り、開票の複雑化が容易に考えられる。そのままではさらなるコストの増加につながる。
そこで我々は現在の記名方式からマークシート導入による開票の電子化を提案したい。
マークシート方式は選挙では導入されていないものの、官公庁では防衛省や法務省、国
土交通省、それ以外にも多くの民間企業や大学などの教育機関で集約方法として使用され
ている。国外ではアメリカをはじめとし、多くの国でマークシートを活用した選挙が実施
されている。よって日本でもマークシートを選挙に導入することは可能であるといえるだ
ろう。
図 4-1 アメリカにおける州ごとのマークシート導入
州
アラバマ
アラスカ
アリゾナ
アーカンソー
カリフォルニア
マークシート
◎
○
○
○
○
VVPAT 付 き VVPAT なし直
直接記録方式 接 記 録 方 式
電子投票
電子投票
○
○
○
○
○
ISFJ2015 最終論文
コロラド
コチネカット
デラウェア
コロンラド特別区
フロリダ
ジョージア
ハワイ
アイダホ
イリノイ
インディアナ
アイオワ
カンザス
ケンタッキー
ルイジアナ
メイン
メリーランド
マサチューセッツ
ミシガン
ミネソタ
ミシシッピー
ミズーリ
モンタナ
ネプラスカ
ネヴァダ
ニューハンプシャー
ニュージャージー
ニューメキシコ
ニューヨーク
ノースカロライナ
ノースダコタ
オハイオ
オクラハマ
オレゴン
ペンシルヴァニア
プエルト・リコ準州
ロードアイランド
サウスカロライナ
サウスダコタ
テネシー
テキサス
ユタ
ヴァーモント
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
◎
◎
◎
○
○
◎
◎
○
○
○
○
◎
○
◎
○
◎
○
◎
◎
○
◎
◎
○
○
○
○
◎
○
○
◎
○
○
○
○
ISFJ2015 最終論文
ヴァージニア
ワシントン
ウェストヴァージニア
ウィスコンシン
ワイオミング
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
出所:筆者作成
以上の表は、2008 年時点でマークシート(電子投票)を導入している州を表している。
表から見て取れるように、ほぼすべての州で電子投票が導入され、中でもマークシート方
式を採用している地域は非常に多い。
次にマークシートの読み取り機に関しては株式会社教育ソフトフェアを参考にする。マ
ークシートの価格は A4 片面が 11.5 円(1000 枚以上購入時)となっている。
[図 4-2 マークシート読み取り機にかかわる概要]
機種
名
SR-6
000p
lus
価格
129,800
読み取り
枚数
100 枚/分
対 応 サ 長さ
イズ
ハガキ、 365mm
A4 サイ
ズ
幅
高さ
227mm
575mm
使用時
の長さ
947mm
重さ
約
17.0kg
出所:株式会社教育ソフトウェアより筆者作成
本稿では横浜市でのマークシートを導入した場合の開票作業にかかる費用対分析(差額
減価分析)を行った。分析をおこなうにあたって必要な資料を以下に与える。
[図 4-3 開票作業の概要]
横浜市における投票総数(票)
開票人数(人)
開票にかかる人件費(円)
開票時間(分)
一人当たりの処理枚数(枚/分)
1,683,985
4,001
12,700,000
5,334
1.42
出所:早稲田大学マニフェスト研究会より筆者作成
以上の要素とマークシートの概要を踏まえると、マークシート読み取り機は 1 台で 1 分 100
枚のマークシートを処理できる。これは1人の人間が1分に処理できる枚数が 1.42 枚であ
ることから約 70 倍の処理速度である。よって 4000 人いた開票人数も 70 分の 1 の 57 人
で済むことになる。また現在同じ時間開票に充てるとすれば、約3台の読み取り機を導入
ISFJ2015 最終論文
することによって可能となる。また開票にあたった人の賃金は総務省の発表している平均
時給(3780 円)で5時間労働した場合を考える。
これらを考慮した結果、
開票にかかる人数
マークシートの購入
読み取り機購入
4001 人→57 人
3780 円×3943 人=74,522,700 円 (1)
11.5 円×1,683,985 枚=19,365,827 円 (2)
129,800 円×3 台=389,400 円 (3)
54,767,473 円
効果額:(1)-(2)-(3)
横浜市だけで 54,767,473 円もの費用が浮くこととなる。また読み取り機に関しては初
期投資であり 2 回目以降は費用がかからないので、さらに費用対効果は大きくなる。
しかし費用削減効果はみられるものの導入開始時は機器の取り扱いに不慣れであること
から上記のような大きさの費用対効果はみられないかもしれない。しかしマークシート導
入により費用が削減されることは明らかである。
次に政策提言の課題として考えられる情報量について考察を行う。ボルダルールは全候
補者に対して順位付けであることから、1 人のみに投票する多数決の場合と比べてより有
権者に対して情報を提供する必要があることは明白である。
2010 年 2 月に全国の 20 歳~79 歳の個人 1,124 人を対象に行われた「選挙について参考
にする情報源」についてのアンケート調査によると、
「新聞」を参考にするという人が最も
多い事が分かった。この調査は複数回答形式で行われた。
[図 4-4 投票する政党を検討する際の参考情報源]
出所:朝日新聞社広告ウェブサイト
ISFJ2015 最終論文
図 4-4 から読み取れるように、上位 6 位は 1 位「新聞」53.9%、2 位「テレビ」46.5%、
3 位「家族・知人などの話」20.3%、4 位「政見放送」19.4%、5 位「政党のマニフェスト
(冊子)
」18.4%、6 位「選挙公報」14.1%という結果になった。また、上記の 6 項目を参
考にすると答えた人の重複回答状況を表したのが図 4-4 である。
[図 4-5 投票する政党を検討する際の情報源の重複回答状況]
出所:朝日新聞社広告ウェブサイト
図 4-5 より、
「テレビ」
「政見放送」
「政党のマニフェスト(冊子)」
「選挙公報」を参考に
すると回答した人の 6 割~7 割の人が「新聞」も参考にしていることがわかる。よって、
「新聞」は選挙についての参考情報源として中心的な存在であるということが言える。
幅広い年齢層でのアンケート調査では、
「新聞」を参考にすると回答した人が最も多かった
が、若年層に限定したアンケート調査では、「テレビ」と回答した人が一番多かった。
2015 年 7 月に 15 歳~23 歳の男女 1000 人を対象にして行われたアンケート調査を見てい
く。このアンケート調査も複数回答形式である。
[図 4-6 普段何からニュースなどの世の中の動きを知っているか]
90.0%
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
1000人
出所:朝日新聞社広告ウェブサイト
ISFJ2015 最終論文
普段何からニュースなどの世の中の動きを知っているか聞いたところ、上位6位は 1 位
「テレビ」82.6%、2 位「ニュースサイト」50.7%、3 位「SNS」49.2%、5 位「インター
ネット検索」41.4%、5 位「親との会話」28.7%、6 位「友人知人との会話」27.3%となっ
た。図 2 からも「テレビ」が圧倒的に多いことが分かる。ちなみに、
「新聞」は 20.8%で 8
位であった。
次に、
第 47 回衆議院議員選挙で投票した全国の 20 代男女 200 名を対象に行われた、2014
年 12 月のアンケート調査を見ていく。このアンケートも複数回答形式である。
[図 4-8
選挙の投票先を決めるのに参考にしたメディア情報は何か]
図3
今回の選挙の投票先を決めるのに参考にしたメディア情報は何
か
50.0%
45.0%
40.0%
35.0%
30.0%
25.0%
20.0%
15.0%
10.0%
5.0%
0.0%
200人
出所:日本労働組合総連合会
今回の選挙の投票先を決めるのに参考にしたメディア情報を調査したところ、上位 7 位
は 1 位「NHK」45.5%、2 位「民放テレビ」44.0%、3 位「新聞」28.5%、4 位「インター
ネットポータルサイト・ニュースサイト」21.0%、5 位「ネット掲示板・まとめサイト」
15.5%、6 位「政党・候補者サイト」13.0%、7 位「SNS」11.5%という結果になった。
「NHK」
と「民放テレビ」を合わせると「テレビ」は 89.5%となり、約 9 割の人が参考にすること
になる。
これらの結果より、一般的に選挙情報の情報源とされるものとしては「新聞」が多かっ
たが、若年層は「テレビ」を参考にする人の方が圧倒的に多いことが分かった。よって、
情報提供をする際ターゲットに合わせた対策をとる必要がある。最も多く参考にされてい
る「新聞」には選挙情報、候補者情報、政党の情報などを詳しく掲載し、有権者に、より
多くの情報を提供することに力を入れる。また、若者が参考にすることが多い「テレビ」
では、選挙情報と世の中の動きを分かりやすく解説することに力を入れる。候補者が掲げ
ている政策や公約だけでなく、現在世の中で起きている出来事を分かりやすく報道する番
組により力を入れれば、政治は親しみやすいものとなり、若者の正しい理解や政治への関
心の向上に繋がる。また、近年若い世代を中心に参考にする人が増えているインターネッ
トや SNS を使った情報提供も強化していく必要があると言える。
ISFJ2015 最終論文
4.3 死票・投票率に与える影響
特定非営利活動法人ドットジェイピーは 2012 年に 1330 名の学生を対象に衆議院議員選
挙に関する意識調査アンケートを行った。その結果は次のようである。まず 8 割以上の学
生が今回の選挙に関心があるものの、投票に行くと答えている学生は 6 割であること。ま
た投票に行かない理由の 1 位に「投票環境」が挙げられた。そこで我々はこの「投票環境」
の充実化が投票率の向上につながると考えた。
よって本報告の議論は、投票所へのアクセスが投票率に影響を及ぼすことを前提に展開
する。したがってまず、この前提が一定の蓋然性を持つことを示していく。この前提は、
Downs (1957) が提起し、Riker と Ordeshook (1968) によって定式化された投票に関
する期待効用モデルに基礎づけられる。彼らは、有権者の合理性を前提とした投票参加モ
デルを R=P・B-C+D の式で表現した。有権者の投票/棄権(R)は、結果に対する影響の
主観的確率(P),候補者間の期待効用差(B),市民的義務感などに基づく長期的利益(D)
と、投票にかかるコスト(C)の計算によって選択されるという議論である。そして、投票
所へのアクセスは、有権者の経済的・心理的コストに影響を及ぼすと考えられる(坂口・
和田,2007)。アクセスが良くなればコストは軽減され、投票を選択する確率が高まり、
悪化すればコストが高まり棄権確率が高まることになる。
我々が提言しているマークシート導入による開票作業の電子化により、費用削減効果が
見られた。そこで削減できた差額分を期日前投票の充実化や投票所の増設に充てることが
できれば、
投票へのアクセスがより簡単になり、有権者の心理的コストの軽減につながる。
それらは結果として投票率の増加につながることは以上から明らかである。また死票に関
することとして、公共選択学会は次のような研究結果を発表している。「最近の研究は、
比例代表制の下での投票率は小選挙区制のもとでのそれよりも 7%高くなる。」この理由と
して比例代表制は「小選挙区制と比べて死票が少なく少数政党に有利な選挙制度であるた
め、たとえ少ない議席であっても確実に確保しておこう。そのために危険を避けて確実に
投票しておこうというインセンティブが働くためだと考えられる。」よって死票の減少が
投票率の向上に対して正に働くことが考えられる。市長選において比例代表制の導入は理
論上不可能である。
全有権者にたいして得点を配分するボルダ投票では死票は発生しない。
ISFJ2015 最終論文
よって比例代表制の時のように、投票率は向上する。投票モデルに置き換えても、結果に
対する影響の主観的確率(P)が大きくなることは投票率の上昇を意味する。
ISFJ2015 最終論文
先行研究・参考文献・データ出典
・主要参考文献:
・
・
坂井豊貴(2015)
坂井豊貴(2013)
『多数決を疑う』 岩波新書
『社会的選択理論への招待』 日本評論社
・
・
・
引用文献:
山口洋(2010)「投票としての調査」『佛教大学社会学部論集』 第 50 号
古藤浩(2010)「多数決による意思決定の集団効果について」『日本オペレー
ションズ・リサーチ学会春季研究発表会アブストラクト集』89 ページ
・
吉水弘行(2014)「多数決は民主主義の絶対原理か」『総合政策論集』 第 13
巻第 1 号
・
佐野浩一(2008)「不平等と経済成長」『経済学研究』58 巻 2 号
・
湯淺墾道(2008)「2008 年アメリカ大統領選挙における電子投票」
・
村田忠彦(2008)「コンピュータを用いた政策立案支援システム」
・
小畑経史・石井博昭(2004)「ランク付き投票モデルにおける類似度分析」
・
石田苑実・本田浩之(2012)「政治的受益の格差是正と地方分権化政策の提言」
・
高井亨(2013)「地域コミュニティ支援事業の費用便益分析」『鳥取環境紀要』
第 11 号 p29-47
・
福本潤也・小島昌希(2002)「中位投票者仮説による公共投資地域間配分の実証
分析」『土木計画学研究』19 巻 第 2 号
・
中井まづる(2012)「一票の格差の問題をどう考え、どうすべきか。そして、そ
うした考察をどのように制度の会か買う・設計につなげていけばよいか」
・
山下功(2010)「マークシートによる授業支援システムの費用対効果:新潟国際
情報大学における試行導入事例」『新潟国際情報大学情報文化学部紀要』p115-123
・
鍵福竜也・松原繁夫(2012)「逐次参加型 m 票先取投票方式の分析」『4 情報処
理学会論文誌』53 巻 11 号
データ出典:
・
State Elections Offices
(2000)
「 2000 OFFICIAL PRESIDENTIAL
GENERAL
ELECTION
RESULTS
」
(http://www.fec.gov/pubrec/2000presgeresults.htm) 2015/9/20 データ取得
ISFJ2015 最終論文
・
総 務 省 「 届 出 政 党 別 得 票 数 ( 小 選 挙 区 ) 」
(http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/shugiin47/)
2015/9/10 データ取
得
・早稲田大学マニフェスト研究所(http://www.maniken.jp/)
2015/10/8 データ取
得
・ 株 式 会 社 教 育 ソ フ ト ウ ェ ア 「 OMR
一
(http://www.kyoikusw.co.jp/omr/omr_list.html) 2015/10/12 データ取得
覧
茨
木
市
選
挙
管
理
事
務
(
http://www.city.ibaraki.osaka.jp/shisei/senkyo/kekka/1337745091079.html
2015/10/13 データ取得
」
・
所
)
・
所
)
枚
方
市
選
挙
管
理
事
務
(
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