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分散ファシリティ統合マネージャの開発 ― 統合運用管理ソフトウェア

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分散ファシリティ統合マネージャの開発 ― 統合運用管理ソフトウェア
分散ファシリティ統合マネージャの開発
― 統合運用管理ソフトウェア「Hinemos」 ―
1.背景
インターネットやイントラネットを活用し様々なサービスを提供するシステム
では、複数の安価なハードウェアをネットワークで並列接続し、高性能かつ高信頼
なサービスを提供する技術が普及し一般化している。また、企業における社員用端
末は企業のOA化の進展により台数が激増し、この現象は大企業のみならず中小企
業にも浸透しつつある。
このようなコンピュータ・ネットワークの大規模化・分散化・多様化により、複
雑化したネットワークの盲点を利用したコンピュータ犯罪が激増し、個人も企業も
プライバシー侵害や経済的損失、社会的信用の低下の危険にさらされ、不利益を被
っている。これらの危険に対応するために、セキュリティパッチの適用、設定の変
更など多数の作業が突発的かつ頻繁に発生し、対処が追いつかないことも課題とな
っている。
オープンソースソフトウェア(以下、OSS)の普及に伴うソフトウェアの低コ
スト化が進んでいる状況の中、上記のとおり運用の仕組みは逆にコストやリスクが
増大する方向に進んでおり、既存のOSSを組み合わせただけでは解決できない課
題が多く残されている。
2.目的
大規模化・分散化・多様化したコンピュータ・システムを効率よく運用できる各
種機能を提供することによって、運用管理コストの増大を防ぐことを目的とする。
また、オープンソースソフトウェアとして公開し、企業内システムにおけるオー
プンソースの活用機会を広げ、さらなるオープンソースの発展に貢献する。(図1)
ログチェック
パッチ適用
Webサーバ群
CPUCPUCPU
CPU
CPU
メモリ
メモリ
メモリ
メモリ
メモリ
HD
HD
HD
HD
HD
性能チェック
ジョブ実行
PC端末群
CPU CPU
メモリ
メモリ
HDHD
etc..
APサーバ群
CPUCPUCPU
CPU
メモリ
メモリ
メモリ
メモリ
HD
HD
HD
HD
効率的な運用
DBサーバ群
CPU CPU
メモリ
メモリ
HD HD
監視コンソール
図1.効率的な運用
3.開発の内容
本開発では、大規模化・分散化・多様化したコンピュータ・システムを運用する
ために、システム管理を統合する共通プラットフォームとなるソフトウェア基盤と、
その基盤上にて動作する状態監視・性能管理機能、一括制御機能、ジョブ管理機能
の3つの機能を開発した。
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以下に、本開発にて実現した主な機能を記す。
(1)共通プラットフォームとなるソフトウェア基盤
Hinemos は、以下に示す2つの機能により、統合管理の操作性と、様々な用途に
使用されるノードをまとめあげる柔軟性を実現する。
(1−1)統合画面機能
運用者が使用する操作画面を統合する機能である。GUIの統合により各種運用
管理の画面操作を支援する。さらに、各種管理の操作画面を業務システムやユーザ
毎に設定し、画面レイアウトの設定・保存を可能とすることにより操作性の向上と
セキュリティの確保に対応する。また、複数管理者による同時アクセスの管理も行
えるようにする。
(1−2)情報の効率的管理と利用促進のためのリポジトリ機能
システム全体を管理するうえで必要な情報を統合する機能である。このリポジト
リでは、ノードの構成情報や資産管理情報を登録可能とする。さらにその情報を任
意の視点からグループ化・階層化して管理することを可能とする(図2)。なお、
このグループのことを Hinemos では「スコープ」と呼ぶ。また、その情報を各種機
能モジュールから利用することを可能とする。
ユーザ定義のグループ階層
適
用
パ
ッ
チ
Linux
コールセンタ
営業支援
端末
端末
Fedora
性能チェック
RH-AS3.0
ログチェック
業務
OS
AP
サーバ
サーバ
DB
ジ
ョブ
行
実
図2.リポジトリ機能におけるグループ化
(2)統合的な運用作業を実現する3つの機能
上記ソフトウェア基盤上にて動作する3つの運用管理機能を以下に記す。
(2−1)一括制御機能
一度の操作で複数のノードに一括処理を行う機能である。セキュリティパッチの
適用も、前述の「スコープ」を利用してどのノードに適用するかを指定し、簡易か
つ迅速に作業を進められ、緊急事態を短時間で解決できる。また「スコープ」で分
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類管理するので、ノードが増加しても作業が複雑化せず、システムの拡張による作
業の増加を回避できる。
(2−2)状態監視・性能管理機能
状態監視・性能管理機能は、スコープ別に障害や性能を管理できる機能である。
これにより、利用者は管理システム対象内に存在するノードを「スコープ」レベル
でGUI操作すること可能なため、システムの稼動状況のチェックや設定作業を簡
単に行うことができる。(図3)
図3.状態監視・性能管理機能画面
(2−3)ジョブ管理機能
繰り返し行われる処理や作業のような定型的な作業を自動化する機能である。こ
れにより、定型的な作業に振り分ける人的コストを抑えることができる。(図4)
図4.ジョブ管理機能画面
4.従来の技術(または機能)との相違
既存 OSS で存在しない機能を実装した。さらに、既存 OSS のみの組み合わせだけ
では困難であった統合管理環境を実現した。(図5)
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既存OSS群(ばらばら)
性能情報のグラフ表示
(リアルタイム動的表示)
(代表例なし)
性能情報のグラフ表示
(静的表示)
MRTG
RRDtool、OpenNMS
Hinemos(統合環境)
性能情報のグラフ表示
(静的表示)
性能管理機能
連携
連携
ログの集中モニタ表示
Nagios
OpenNMS
ジョブ管理機能
(代表例なし)
性能情報のグラフ表示
(リアルタイム動的表示)
性能管理機能
連携
ログの集中モニタ表示
連携
状態監視機能
複数ノードの
グループ操作基盤
リポジトリ機能
連携
連携
ジョブスケジューラ
Quartz
複数ノードの
グループ操作基盤
(代表例なし)
連携
ジョブ管理機能
ジョブ管理機能
多数マシンを
画面で一括操作
一括制御機能
連携
ジョブスケジューラ
ジョブ管理機能
多数マシンを
画面で一括操作
(代表例なし)
図5.ばらばらな既存 OSS 群から統合環境としての Hinemos へ
5.期待される効果
運用管理への関心の高まりの期待に応える唯一の OSS 統合管理ツールとして普及
を期待できる。また、他の既存 OSS との連携の拡大と、不足機能の OSS 開発への機
運の高まりにより、OSS 活動の活発化が期待される。
6.普及(または活用)の見通し
Hinemos は既に OSS として公開されている。今後は社内外に対して積極的なアピ
ールを行う。まず、国内の技術展示会などを利用する。既にIPAX2005にて
デモと講演を実施したが、今後も継続的に幅広く活動を行う予定である。さらに、
受託会社の事業での採用など、自社ビジネスでの活用に積極的に取り組む。既に社
内セミナを実施しているが、今後は実証実験を行うなどエンタープライズ環境にお
ける有効性を示し、活用に向けた活動を進めていく。
7.開発者名(所属)
田中 一男、藤塚 勤也、西川 治
(参考)
((株)NTTデータ 基盤システム事業本部)
連絡先:[email protected]
URL:http://www.nttdata.co.jp/services/hinemos/index.html
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