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ケインズ 『一般理論』 私注 賃金基金説の系譜について (13)

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ケインズ 『一般理論』 私注 賃金基金説の系譜について (13)
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ケインズ『一般理論』私注 賃金基金説の系譜について
(13)
白井, 孝昌
經濟學研究 = ECONOMIC STUDIES, 37(4): 126-174
1988-03
DOI
Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/31791
Right
Type
bulletin
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37(4)_P126-174.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
華監さ青学研究
北畿道大宅診
374
1
9
8
8
.
‘S
四
ケインズ『ー毅理論J私注
く研究ノート〉
賃金基金説の系譜について (
1
3
)
白井孝
前穣 1) で,われわれはアダム・スミス F
国議
第 I羅第荻章[ストッグの利潤について f
l
び「賀い手たちの践の競争」の基本的なありよ
うについては, w
関富論2第 I編第 1
毒殺「商品の
の前半部分を検鈴した。その掌は2
4
倒のパラグ
商務について J3) で説務されて
自然価格と市場j
w器富論』の中ではきわめて短
1
1
)ま
い掌の一つであるが,そのパラグラフ (
た,労働市場における「親方たちの践の競争j
でを検討したところで前稿の議論は打ち切られ
は,持じく第 i編第糠章「労働の賃金につい
たのである。
て
.
15) で説明されているが,われわれはそれを
ラフから成り
われわれは例によって,その章の議論の全体
的な様成に見当をつけるためにパラグラブを単
とする内容閥次を作成し,それ合前稿の第
XLV舗に提示した。それによると,
いることを,われわれはすでに晃ている約。
ま
労織という商品の「買い手たちの請の競争jと
飲したのである 6)。 もっとも,スミス自身は本
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来の商品については f有効需婆J (
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ldemand) という諾を罷用ずるけれども,
i
!1はパラグラフ(1)とく 2) から成り,そ
労畿についてはその諮を用いなし可。にもかかわ
こではく社会の震が増進する状態において,ス
らず,われわれは商品市場と労働市場における
トックの増大は鐙金を上昇させると賂特に,斜
売り手と買い手という二つの立場の類似牲に議
路を抵下させる〉というスミスの議本的命題が
関して,スミスの賃金基金説は〈労働に対する
提示されている。そうして,
前稿の第 XLVI
有効需要〉の理論であるという表現をしてみた
節の課題は,その!i 1の内容を検討することで
のである。さらに, Jr隈富論』第 E編第lV掌「和
あったむそのさい,われわれは議論の焦点弘
子きど取って貸し付けられるストッタにつし、
スミスの基本的命題において科務を低下さ分る
て
.
17) で述べられている,そのストックの
原動力となるどころの「多数の富裕な商人たち
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登り手J (
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の……相友の践の競争J
, 資本の所有者たちの
rower) は
間の競争J
,あるいは「言語資本の競争j がどのよ
) という商品の売り手と鼠い予と看倣
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al
うな場面で行なわれるものであるかという問題
されるがゆえに,利子率はその商品の市場銭格
に合わせたのである。特定の商品の市場におい
と讃倣されること私われわれは前穣で指摘し
る。それに対して,ストックの f
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謂を
て行なわれる「売り手たちの諮の競争ム
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賃金基金談の系識について帥j 本総第 3巻第 3
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申
告5
.
4) 掛橋「笈金基金総の系穏について (
8
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J本総第3
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金
第 3号 (
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6) 約稿「策金基金5
誌の系穏について帥」本誌第37
滋
第 2号 α987
王手§月), p
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ケインズ『一般理論』私注
賃金基金説の系譜について
帥
白井
1
2
7(
5
6
7
)
低下させる「諸資本の競争」は,上述のような
うさいに詳しく触れることにして,ここでは
特定の商品の市場における売り手たちの聞の競
く生産関数〉の概念がく新古典派〉に固有のも
争と看倣すことはできないのであった。なぜ、な
のであって,く古典派〉の体系とは基本的にな
ら
,
1
資本の所有者たち」は,
そのストックを
じまない概念であることを指摘するにとどめ
みずから雇用して利潤をあげるのであって,彼
る。じっさい,<:古典派〉の体系をく生産関
らをストックの売り手と看倣すことはできない
数〉の視点から解釈する試みのほとんどが,
からである。要するに,利潤を何らかの商品の
〈古典派〉の分配理論の本質的要素を骨抜きに
市場価格と看倣すことはできないのである。
して再構築された擬似的古典派理論をめぐる架
じっさい,
~国富論』第 E 編第 N 章のパラグ
ラフ (8) の陳述によれば, 1
資本の所有者たち
の聞の競争」は特定のー商品市場において行な
われる競争ではなくて,
第 1に,その資本の雇用によって生産される
商品の市場で,それを売りさばくために行なわ
れる売り手たちの聞の競争と,
第 2に,その資本の雇用を達成するために調
達される原材料の市場,すなわち,別の生産物
市場において行なわれる買い手たちの聞の競争
と,そうして,
第 3に,やはりその資本の雇用を実現するた
めに必要とされる労働の調達のために,労働市
場で行なわれる「親方たちの聞の競争」とから
成る複合的な競争なのである。スミスにあって
は,そうして当然,マルサスとリカードにあっ
ても,利潤は何らかの特定の生産要素市場で成
立する市場価格と看倣されるものではなくて,
そのストックの雇用によって生産される生産物
の価値の中から,あらゆる諸経費を支払った後
に残される余剰なのである。
ちなみに,生産諸要素の投入と生産物の産出
とを対応させる一次同次のく生産関数〉の存在
を前提して,それに基づいて生産諸要素への所
得分配の体系を構想する限界生産力説に立つ,
いわゆるく新古典派〉の考え方は,
このような
余剰の存在を初めから排除して認めないという
意味で,本来のく古典派〉の考え方とはまった
く異質の思考体系であるということができる。
1
9世紀末における分配理論のこのような変質の
過程は,やがて賃金基金説論争の後半期的を扱
8) ここにいう賃金基金説論争の後半期とは,主とし
空の議論に堕しているのである的。
て,アルフレッド・マーシャルと賃金基金説との
関係を論じるさいに取り上げられる,彼とその同
時代人たちの聞の論争を指す。彼らの論文の代表
的なものは,拙稿「賃金基金説の系譜について
(
3
)
J 本誌第34
巻第 3号 (
1
9
8
4年 1
2月
)
, p
.1
5
3
(
4
3
3
) に列挙されて L、
る
。
9) 迂回生産に伴なう時間要素と限界生産力の概念を
用いて, リカードの利潤の理論を再構築しようと
する初期の試みのーっとして,次に掲げるエーデ
ノレバーグの論文がある。すなわち,
VictorEdelberg,
“ TheRicardianTh巴ory
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",Economica
,No. 3
9 (Feburuary
,
1
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3
3
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p
.5
1
7
4
.
当
時
, ロンドン・スクール・オヴ・エコノミッ
クスには, ヒッグスのいわゆる「ロビンズ・サー
クル」なる若手の研究者の集団がライオネノレ・ロ
ビンズの周辺に形成されていたことが,次に掲げ
るヒックスの回顧録の中に述べられている。
S
i
r John Hicks,
“ The Formation of an
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Economistヘ Banca N
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y Review (September, 1979), r
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I (Oxford:B
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lB
lackwe
,
1
l 1983),
p
p
.355巴s
p
.,p
.3
5
7
.
364,
エーデノレバーグの論文が「ロピンズ・サーク
ノレ」の中で検討されたであろうことは,その内容
と彼の謝辞に照らして,ほとんど確実と思われ
る。ヒッグス自身は,以下に掲げる後年の諸作品
の中でエーデノレパーグの論文に言及してはいない
けれども,それらは生産関数に拠って古典派の理
論を再構築すると L、う方針において,エーデノレパ
ーグの試みにつながるものである。
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r John Hicks,
“ Ricardo's Theory of
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r John Hicks and Samuel Holander,
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31-4
経 済 学 研 究
きて,われわれは前穣の第 X
LVII節におい
ない。じつのところ,これまでわれわれがして
て,スミスの「ストアグの潤潟について j
きたことは,その謂をく商業的社会〉と
の 32 I
スト?グの平均的な利鴻の推交をについ
ることによって,スミスが心に抱いていたイギ
てj を構或ずるパラグラフ (3) と (4) を検
リス経済のヴィジ翠ンヲピ指示する術識とし
討した。とここで,スミスは「いかなる障におい
用ずるという所業であったのである。われわれ
ても通鍔の市場朝子率が変化するのに応じて,
がそのような所業をあえてなしたのは,それに
ストックの通常利潤も変化しているにちがいな
いくつかの利点を認めるからである。そうし
いj という彼の判断の理論詰根拠を示して,純
て襲われわれはすでにこつの利点宏事受してき
子率から利韓率を推定する彼の方法の基礎令か
ている。その一つは,説来しばしば行なわれて
ためるのである。
きているように, 1
関富論Jの第 i編の中で,そ
それに続くさ 3で,スミス誌イングランドの
の第 i繁から第重宝章宏でをど, いわゆるスミスの
史料に艶って彼の基本的命題が通時的に成立す
分業論と称してひとまとめすることによって,
ることを爽誼しようとする。そうして, 9
4I
都
それらの章の議論から第 N意を挺3
之させるので
市と村落との間に見出される地域格差にかんす
はなくて,すでに目次の1f~で示したように,そ
る考察Jでは,彼の謀本的命騒が共時的にも成
れらの岱つの章、告とまとめて,商業前社会〉の
立することが,イングランド,スコットラン
最も基本的な素描を行なう部分として設えるこ
ド,プランへおよびオランダ、にわたる地域問
とができたところにある。い]:一つの利点は,
主較によって訴される。われわれは前稿の第
〈商業的社会〉の概念を「初期米関状懇の社会J
XLVIII鎮で, 94を構成する鰭パラグラフの
の鏡念と対壁ずることによって,後者の絞想的
とりわけ,パラグヅフ (9) と(10
)
建紫を明らかにすることができすたところにあ
中から,
を取り出して,その中の陳述がスミスの抱いて
る。その結果として,われわれは,いわゆるス
いた〈高業的社会〉のグィジョンの一端宏示唆
ミスの投下労働銀笛説なるものが, 1
霞富論』の
るものであるという解釈を示した。スミス自
議論の中で演じているレトリカんな役割を示す
身が「商業的社会j としづ語を, ;r爵富論i第 I
ことができたのである。「初期未開状態の社会j
鱗第 N章「貨幣の起灘と使用について j の末尾
に限有の傭値の環論である投下労機価‘値訟の説
、ところで,ほとんど一院掠りで使揺して
坊はスミスの用いたレト1):>'グの一つであっ
いるにすぎないことは周知の事実である。それ
て,く商業的栓会〉に本来的な儲鑑の理論では
ゆえ,その語を一つの術語であるかのように復
ないことをふわれわれはこれま
感ずることには,
u
国富論』の中での使用頼度
してきた
のである。
に照らすとき,大きな難点が残るのである。こ
前橋の最後の懇である第 XLIX簸では, 1
菌
れに対して,スミスがくりかえし使用している
富論』第 I鑓第江主主の S5 I
慈の趨勢が増進的
「初襲来開状態の社会j という諮勾を一つの術
であるか,褒退治で、あるか,あるいは,停欝的
として援用することには, このような難点は
るかによって,利潤と賃金はどのような影
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MethodsofDynamic Economics (Oxford:
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,pp. 294
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.
ClarendonPress,1
これらの一連の試みの中でとッグスが機築した
モデ、んが,スミスとリカードの理論の本質的褒素
さと切り捻てて議曲したものにたっていることは,
別の機会に論じるで、あろう o
るかにかんする具体的考察j に含まれ
るまつのケースのうち,富の趨勢が増進的な場
合金乙る
C
A
Jの前主幹部分合検討した。 C
A
J
はパラグラブ (
1
1
)と (
1
2
) から成るのである
が,われわれは前橋では,パラグラフ (
1
1
)を
検討したところで,稿毛f才?ち切ったのである。
そのパラグラフには,その場合の突倒として,
1
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8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について
北アメリカおよび西インド諸島における英領植
1
2
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5
6
9
)
帥白井
ついて j の S5は,富の趨勢が,
C
A
J増進的で
C
B
J衰退的である場合, C
C
J停滞
民地で高利潤と高賃金が同時に成立する事情が
ある場合,
述べられているのであった。そのスミスの陳述
的である場合の三つの部分から成っている。す
の中に,われわれは,土地の肥沃度と立地条件
なわち,スミスによれば,利潤の自然率のあり
の劣悪化がストックの利潤を低下させるとい
ょうは富の趨勢によって影響されるのである。
,
う
リカードの『利潤にかんするエッセイ』川
そうして,彼がヴィジョンとして心に抱いてい
の基本的論理と同型の論理を見出したのであ
るく商業的社会〉では富の趨勢は増進的であっ
C
A
J の後半を構成す
る。そうして,それはまた,マルサスの『地代
たので、ある。それゆえ,
の研究 tO の 基 本 的 論 理 で も あ っ た 。 こ う し
るパラグラフ (
1
2
)は
, この章の中で最も重要
て
,
な位置を占めるものと考えられる。スミスはこ
リカードとマルサスの両者がスミスのパラ
グラフ (
1
1
) の中の陳述の影響をそれぞれに強
く受けていることは否定すべくもないが,
とり
わけマルサスの場合には,その影響を受けたと
思われる時期は『地代の研究~
(
1
8
1
5年)の頃よ
りももっと早く,おそらく『人口論 ~12)
(
1
7
9
8年)
う述べている。
(
1
2
)I
新しい領土の,あるいは,貿易の新し
い分野 (newbranchesoftrade) の獲得は,
富の取得において急速に進歩しつつある固にお
いてさえも,時として,ストックの利潤を,そ
の時期にまで遡るものと推定される根拠をわれ
うして,それに伴なって貨幣の利子を上昇させ
われは示したのである。すなわち,マルサスが
ることがある。その国のストックは,それが分
『人口論』の改訂に示した情熱を支えたものは,
配されているさまざまな人々に対して,
このよ
富の増進する趨勢の中で北アメリカや西インド
うな領土の獲得が提供する事業機会の全体的拡
諸島の英領植民地の「労働の賃金は低下しないJ
大にくらべると十分ではないので,それらの機
というスミスの主張に対する挑戦の意志であっ
会のなかでも最大の利潤をもたらす特定の分野
たであろうと,われわれは述べたので、ある。
にだけ適用されるのである。以前にはその他の
諸業種 (othertrades) で雇用されていたスト
L
ックの一部分が,必然的にそれらの業種から引
『国富論』第 I編第 K章「ストックの利潤に
高い一部の業種に向けられる。それゆえ,旧来
き揚げられ,そうして,新しい, もっと利潤の
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のあらゆる業種 (
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lthoseoldtrades) では,
競争が以前よりも少なくなるのである。市場で
は,多くのさまざまな種類の商品の供給が以前
ほど十分には行なわれなくなる。それらの商品
の価格は,必然的に,多かれ少なかれ騰貴し,
そうして,それらを扱う人々に,前よりも大き
な利潤をもたらすのである。それゆえに,
らの人々は,
これ
もっと高い利子で借りることがで
きるようになる。この前の戦争の終結後,
しば
らくの間,最良の信用を有する私的個人のみな
らず,
ロンドンにおける最大の会社の一部のも
のは,普通
5パーセントで借り入れていたの
であるが,それ以前には,彼らは 4パーセント,
.
5パーセントを越える利子を払うこと
および4
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)
37-4
経 済 学 研 究
はなかったものである o ゴヒアメりカと間インド
諸島におけるわが需の領土の獲得による接関と
たんに霊長造業の諸業種のみならず,
も含みうることが示撲されていると受け取
(
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) の双方の大幅な
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その社会の資本ストック C
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) の減少を持ら線定することなくし
) の隣述札英泳;閣の農業な韓
パラグラブ(12
ても,上記の事実さと十分に説明するであろう。
入穀物の競争から保護しようとする穀物、法全め
られるのである。
このように受け取るときはじめて,スミスの
かくも大騒な新しい事業機会の遮加が!日来のス
くふって,
トックによって活用きれなくてはならないとい
された論争に緊穏な関係きと持つことができるの
リカードとマノレサスとの轄でたたかわ
うことは,多数の特定分野で雇用されるストッ
である。われわれはすでに,
クの震を必然的に減少さ必てきたにちがいな
スの聞で交わされた欝簡の若干念総介したこと
リカードとマノレサ
く,そうして,それらの分野では競争が蔀より
地代の研究J
がある 1九とりわけ,マノレサスの f
も少くなるので,その利潤は前よりも大きくな
の発司自にかんするジ z イコブ・ホランダ…の
ってきたにちがいない。私は以下で汽
推定の根拠を検討するために,
大ブリ
8
1
5
ザカ…ドの 1
ンの資本ストックがこの前の戦争の莫大な出
:
l1
3
1
3付,および間企ド 2
)
ヲ6日付の!尚書簡
1f
よってさえも議少しなかったと拡に信じさ
から引用したことがある。前者は,七つのパラ
せることになった理由を述べる議会を持つであ
グラブから成る議書撃であるが,われわれが先に
ろう
引用したの拭,その欝~出しの第 1 センテンス
われわれは,前械の第溜節で,スミスのパラ
グラフ
(
9
) の訳文言ど掲け。た後に9 そのパラグ
ラブの中の‘trade' と‘trades' の碍語~,それ
だけであった日〉。しかし,上掲のスミスのパラ
グラブ (
1
2
) とのかかわりでは,そ
2パラグラブと第 3パラグラフの文芸誌が非常に
ぞれ, i
貿易(あるいは,商業)_
1 と f
業種j と
興味深い。ヲカ…ド比そこでで、こう述ベ
訳したことについて注釈を加えた。その場合と
のでで、ある ο
1
2
) におい
ほぼ同様に,上掲のパラグラブ (
r
(2) 口ウダーデイノレ期!は次の点で誤って
ても,たとえば, i
紫 易 の 新 し い 分 野J (
new
いた(そうして,あなたも鱒と間
branch o
ft
r
a
d
e
) と「旧来のあらゆる
(
a
l
lt
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o
s
eo
l
dt
r
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d
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s
) のように訳してあるこ
新しい領土の獲得j
とをまず指摘しておこう。 i
(
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ea
c
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s
i
t
i
o
no
fnewt
e
r
r
i
t
o
r
y
) とは,
ちになっているものと私は信じておりまナが〉
この場合
2
主アメリフりや西インド諾島における
と私は考えざるをえないのです。すなわち,農
業者は畿内市場の独占を保持していないことか
ら,特段の不利な事情のもとに悶かれているの
t
h
e
r
して,その龍の多数の業種 (manyo
植民地の接待で、あり,そうして,そのこと
t
r
a
d
e
s
) が独おの思恵を家受していると卿は懇
とって「貿易の新しい分野の獲得 j
定しておられる。国内市場の独占は,それが授
味ずるのである o それは,英本留の中で製造業
の新しい薬草重が政援に開発されること
るのではけっしてなし、そうして,
より高い利
得られる「貿易の新しい分野Jに投下され
るストッグは,
i
l日来のあらゆる業種J でこれ
t
h
et
r
a
d
eonwhich
与されるところの業種 (
i
ti
sconf官民むにとって,議極ÉfJ~こは,有利
さないことに,あなたは悶窓なさるでし
ょう。それが外隠からの競争を遮断することに
よって,その商品の価格をど上昇させることは真
たストッグであるわけであるが,そ
1
4
) 総議「賃金基金殺の系議について (
3
)
J本
語審第34
巻
第 3分 (
1
9
8
4
年1
2Ji)の p
.1
6
2(
4
4
2
)以下念見
1
o
。
、
1
3
) Smith,0ρ
‘ CZ
,
ムp
.9
5
.
15) 抱犠 f後金基金説の糸諮について本誌~35考委
第 1号 (
1
9
8
5年 6月
)
, p‘ 1
6
1(
1
6
1
)
.
ま令嬢用されていたものの中から引き
1
9
8
8
.3
実ですが,
ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について
しかし, このことはすべての消費者
にとって等しく有害であり,そうして,その他
1
3
1(571)
帥白井
うと。J
17)
リカードによれば,マルサスは,
ロウダーデ
の業種 (
o
t
h
e
rt
r
a
d
e
s
) によりも農業者に大き
イル卿と同じように,当時の英国では,農業以
な抑圧を加えるものでもありません。もしも独
外の「その他の多くの業種」の生産者が国内市
占が労働の価格を上昇させる傾向を持っとする
場の独占の恩恵を受けているのに対して,農業
ならば,その不都合は労働を雇用する人々すべ
者はそのような恩恵に浴していないとする立場
てによって甘受されなくてはなりまぜん。そう
をとっていたわけである。にもかかわらず,
リ
して,それゆえに,その不都合は農業者あるい
カードは,園内市場の独占が,窮極的には,そ
は地主にとって,
の独占力を行使する業者にさえも大きな優位性
とりわけ有害で、あるというこ
とにはならないでしょう。もしも圏内市場のあ
をもたらすものではないということについて,
らゆる独占が直ちに廃止されたとするならば,
マルサスの同意を求めている。言い換えれば,
そこにはすくなくとも穀物を輸入しようとする
独占のもたらす優位性は,概して一時的なもの
強い性向が見られることでありましょう。一ー
であり,そこから生じる諸商品の価格の上昇の
もしもそうでああならば,それらの独占が穀物
効果が,やがて賃金の上昇によって吸収される
貿易 (
t
h
e corn t
r
a
d
e
) の自然的な推移に干
と,その害悪は農業以外の「その他の業種」の
渉しないからです。独占の効果にかんして御自
上にも等しく及ぶとリカードは考え,そうして,
身の意見をお持ちになるロウダーデイル卿は,
ロウダーデイル卿は別として,マルサスならそ
穀物の輸入に対する関税を勧告するということ
のことを了解するであろうことを確信していた
では首尾一貫しておられるのであると,私は考
のである。それゆえに,
えております。J
16)
対して,
(3) r
あなたは次のように主張しておられ
リカードはマルサスに
ロウダーデイル卿のように,穀物の園
内市場にも関税によって独占を成立させる方向
るのであると私は考えていました。すなわち,
を目指すのではなく,逆に,農業以外の「その
商業にかかわる高い,あるいは,低い利潤 (
t
h
e
他の業種」における独占的慣行の廃止を目指す
higho
rlowp
r
o
f
i
t
soncommerce) は,土地
よう示唆するのである。「独占の効果にかんし
の上で(農地で)雇用されうる資本の大きさか
て御自身の意見をお持ちになるロウダーデイル
らは完全に独立であると,そうして,その結果
卿は,穀物の輸入に対する関税を勧告するとい
commerce) が栄えるかぎり,
として,商業 (
うことでは, まったく首尾一貫しておられるの
2
0年でも, 1
0
0
年でも, 高い利潤が続きうるで
であると,
あろうというわけです。いま,私はあなたが次
のように主張なさるものと理解しております。
t
h
ep
r
o
f
i
t
so
f com
すなわち,商業の利潤 (
司
merce) が主導的なのであり,そうして,それ
は,ある期間にわたって,おそらくは,
にわたって,
農業の利潤
2
0
年間
(
t
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ep
r
o
f
i
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so
f
a
g
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i
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u
l
t
u
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) を規制することができるであろ
1
6
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u
s,J
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3,
1
8
1
5,The Works and C
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ρondence 01
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VI:
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s1810-1815 (
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s,1952),p
p
.169-170.
私は考えております J (
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fc
o
r
n
)1めというパラグラフ (2) の末尾の文
章は,独占の効果にかんするロウダーデイル卿
の意見が,アダム・スミスの正統的な権威に対
する異端の見解であることを示唆するだけでは
なく,スミスの正統に連なるマルサスが論理の
破綻を来たしていることをも示唆して,
て皮肉な響きを伝える文章である。
1
7
)I
b
i
d
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.1
7
0
.
1
8
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b
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d
.
きわめ
3
'
九d
き寄済学務発
1
3
2(
5
7
2
)
い人には,拘りやすいものではありません。そ
次に,上掲書簡のパラグラフ (3)
リカードが?ノレサスの立場を婆約していること
需にかんする品
目しよう。ヲカードの『科 j
うして,君も論争の主題が何であるかな全集理
解していないと撲は患うのです。
r
(2) 撲はこの開題にこれ以上深く立ち入
ッ-{::イ』についてわれわれが作成した内容医次
4
5
) とく4
6
) の部分からもわか
のパラグラフ (
らないようにして,その問題そのものを説明す
るように附,披 ~Jぎの立場を一震でいうなら
るよう勢力してみますのある国の中で資本(Ca-
ば,農業の科謂が,商業の科瀦も含めた資本一
般の耗潟な規制するということになろう。それ
p
i
t
al)が増加するとき,そうして,資本を雇用
t
h
emeanso
femployingi
t
) がす
する手段 (
して,マノレサスは,むしろ,高繋の利潤が
しているか,あるいは,それが資本と
農業の科寝を競?揺すると考えていると~カー r
詩じ釣り合いで増加するとき,潤子率と利潤率
は要鈴的に捉えているのである。リカード比
は低下しないでしょう o
,すなわち, 1815
年
そのような理解に,円、ま J
(3) r
資本のための雇用の手段 (
t
h
em結 問
1月13臼税義,達していると述べているけれど
。
femploymentf
o
rC
a
p
i
t
a
l
)がその資本自体
0ヶ月以上も前からそれと同じ
も,それよりも 1
に対して以蔀よりも大きな観合になるときはじ
理解を抱いていたと悪われる証拠が殺されてい
めて,精子は上昇します。そうして,
年 3月 8日付の,親友トラ
る。すなわち, 1814
その麗府のための,マノレサス氏のいわゆる,舞
アリ
m
ウワ…薙の書簡マ,
リカードは以下に掲げる文
しているのである。われわれはすでに,
ナ
台 (
t
h
earena…… f
o
ri
t
s emp1oyment)2)
に対して以前よりも大きな釣り合いになると
1814
年の初頭にジカードの『利潤にかんするよ乙
利子は低下します。この点については,
ッセイ Jの初期草稿と思われるものが存在して
たち(マルサスと翌カード)は全盟約に合意し
おり,それがトラウワーやジェイムズ・ミんな
ていると撲は信じています。しかし,僕は次の
どの親しい友人たもの聞で間環されていたこと
ように主慌しているのです。すなわち,
の証拠として,何年 3月 2日付でトラウワーが
かんする改良が起こらないかぎり一一あるい
t
l
) ;カードに宛てた番簡な紹介し, こ こ と が あ る
が20〉,それに対するリカードの返寝から以下の
1
用されるのである。
(1)r
僕は昨悶,君の家に行きました c 撲の
意見の弁護論に立ち入りたし
て
〉
ているのですが,僕はいま事業のほうに多くの
時鴎を繋いているので,それに必章容な時間を取
るこニ之ができないということ
したかっ
たのです。……設が読んでくれた論文は,マ/レ
サス誌と僕との間の全体的な議議を知っていな
1
9
)拙稿「資金基金説の采諮について本誌銘3
5滋
第 2{
予(
1
鵠5
年 9月
)
, p
p
.1
6
1く
3
3
7
)
1
6
2(
3
3
8
)
きと晃よ。
2
0
)L
e
t
t
訂
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7
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4
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o
'
sWorks,VoLVI
,p
.1
0
2
.そ
の引用については,拙橋
本誌第3
4
巻第 3号
, p
.1
6
5(
4
4
5
) な見
よ
。
は,外窪からの食糧の導入に新しい道が簡かれ
ないかぎりへ
新しい資本の襲用のための舞台
(
t
h
e arena f
o
rt
h
e employmento
fnew
C
a
p
i
t
a
ちがその資本自体と跨じか,あるいは
それよりも大きな割合で増加するようなこと
は,いかなる躍においても,起こりえないとい
うこと;一一撃をするに,幾薬害ーの利潤こそが,
t
h
ep
r
o
f
i
t
so
f
その飽のあらゆる業種の持続 (
a
l
lo
t
h
e
rt
r
a
d
e
s
)を規制するということ,一一
そうして,農業者の利潤はそのこと地の上で勝馬
怒れる資本が増大するたびごとに必、然的に減少
るにちがし、ないので, もしもそれと湾待に幾
耕にかんする改良が起こらないとするなら,そ
a
l
lo
t
h
e
rp
r
o
f
i
t
s
) は法
の舘のあらゆる利潤 (
下しなくてはならずきそれゆえに,潤子率も低
しなくてはならないということです。この命
マノレサス氏は同意しないのです。棋は次の
1
9
8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注
賃金基金説の系譜について
1
3
3(
5
7
3
)
帥白井
ように考えるのです。すなわち,輸入か,ある
る手段がすでに存在しているか,あるいは,そ
いは,改良された耕地かによって,食糧の生産
れが資本と同じ釣り合いで増加するとき,利子
a
c
i1
it
i
e
s …… f
o
rt
h
e
への新しい道 (newf
率と利潤率は低下しなし、」とし、う命題の背後に,
p
r
o
d
u
c
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i
o
no
ff
o
o
d
) が拓かれることがないと
しても,資本の雇用のための舞台 (
t
h
earena
f
o
rt
h
eemploymento
fC
a
p
i
t
a
l
) は増加しう
スミスの『国富論』第 I編第 K章のパラグラフ
読者は容易に気づくであろう。リカードは,
るかもしれず,そうして,その結果として,利
の命題をスミスの権威に依って述べているので
潤と利子が上昇しうるかもしれないというこ
ある。もっとも,
と;一一ーまた,農業者の利潤がその他の業種
「資本を雇用する手段J (
t
h
e means o
f emp
l
o
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p
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l
) とし、う語句は, スミスのそ
(
o
t
h
e
rt
r
a
d
e
s
) の利潤を規制するというより
(
1
1
) の論理が横たわっていることに,前稿の
こ
ここでリカードが用いている
も,むしろ,その他の業種の利潤が農業者の利
の章の中には見出されない。スミスの章のパラ
潤を規制するのであり,そうして,その結果と
1
1
) の中で,その語句に対応するもの
グラフ (
して,
もしも新しい市場が発見されるならば,
は,肥沃で立地条件の良好な「土地」なのであ
また,
このような市場の発見の以前よりも多量
る。そうして,北アメリカや西インド諸島の英
の外国商品をわれわれの商品と交換に市場で取
領植民地においてストックの蓄積が進むとき,
得することができるようになるならば,利潤は
「資本を雇用する手段」である肥沃で立地条件
増大し,そして,利子は上昇するであろうとい
の良好な「土地」は,すでに豊富に存在してい
て,ストックの蓄積と同じ釣り合いで耕地が増
うことなのです。
I (4) このような事態において,
たとえ以
加するから,そこではストックの利潤は低下せ
前よりも多くの資本がその土地の上で雇用され
ず
,
たとしても,利子率は農業者の利潤とともに上
低下することはないのである。もっとも,
したがって,その中から支払われる利子も
昇するであろうと,彼は考えるのです。わかり
ードは,スミスと違って,
ますか。
これらの植民地にだけではなく,イギリス本国
リカ
このような論理を,
(5) 食 糧 を 調 達 す る う え で 実 質 的 に も っ
の農業に適用しているとは,われわれがすでに
と安い方法以外には,いかなるものも,同じ資
前稿において指摘したところである。すなわ
本,あるいは,増大した資本でもってしては,
土地」という「資本を
ち,イギリス本国では, I
貿易にかんする利潤を恒久的に増加させること
雇用する手段」はすでに豊富ではなくなってお
ができないと僕は主張するのです。食糧を調達
り,その結果として,農業スト
するうえでもっと安い方法は,疑いもなく,利
業利潤を低下させ,ひいてはそれが資本一般の
潤を増加させるであろうけれども,
しかし,資
利潤率をも低下させるというのが, w
資本にか
本の増大にともなって利潤を増加させることの
んするエッセイ』におけるリカードの利潤の理
できるその他の事情がたくさんあるとマルサス
論の骨子なのであった。
氏は言うのです。わが国の製造業製品に対する
y
クの蓄積は農
ストックの蓄積が利潤に及ぼす効果だけにつ
大きな需要が見込まれるような新しい市場の発
いてなら,マルサスも『国富論』第 I編 第 K章
見は,その一つなのです。J21)
1
1
)の論理に従うであろうことは,
パラグラフ (
このリカードの書簡のパラグラフ (2) に述
われわれが前稿で述べたところから明らかであ
I
ある国の中で
ろう。マルサスは,賃金への効果について,ス
資本が増加するとき,そうして,資本を雇用す
ミスと対立しているのであった。上掲の書簡の
べられている命題,
すなわち,
2
1
)L
e
t
t
e
r 48:R
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ot
o Trower,March 8,
1
8
1
4
,i
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.,
p
p
.1
0
3
1
0
5
.
パラグラフ (3) でリカードは,
自分の用いて
t
h
e means
いる「資本のための雇用の手段J (
1
3
4(
5
7
4
)
37ω4
経済学務究
マルサスの『地代の研究Jの中には,そ
o
femploymentf
o
rC
a
p
i
t
a
りとし、ぅ
の言言葉で表現ずるのが連部であると思われる
マルサスの用いる了ぞれの麗用のため
(
t
h
earenaf
o
ri
t
semployment) とL、
ぅ
き換えることによって,パラグラフ (2)
携がいくつかあるにもかかわらず,設はその言
葉をけっして惑いないのである。そうして,蔀
で述べた命題を γ ノレサスもまた支持するにちが
・3度目の引舟をした,そのパンブレ
舗の末尾寸5
いないと示唆するのである。
3
5
) の中では,かえって,
ットのパラグラフ (
ァ y.
ー
ヅ
「それの震患のための舞台 j という語句には
f
I~
ラップァの脚注 2が
)ちー
ジカート、の用いる「資本女雇用する諸手段j
(
t
h
emeanso
femployingi
tC
=
c
a
p
i
t
al
])23)
L瑛来にわたる
という語句を採用しでさえいるのである。利潤
けれども,それをと見ておこち O スラッツァは次
論争の中で、マルサスがりカードから受けた影響
のように述べている。
の痕識の一つを,
IZ この語句は"'7ノレサスの
f
人口
こうして,設の作品の中
ることができる点において,スラップァの
かんするニにすセイの第 4版およびそれ以前の諸
j二揮の注釈はきわめて興味深いものであるが,
(
A
d
d
i
t
i
o
制
t
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eF
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1P
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i
o
払 1
8
1
7
,.
p
.1
1
1
) に初めて現
それはいま一つ支重要な問題点を示唆するもので、
われている。すなわち,くわが簡は,
版への議議~
あるように思われる。
われわれは前橋の来屠で, ケインズがマノレサ
その霞土
人口論Jの初版者三
スの評伝言ど幾くにあたって f
と,そうして,その緩民地の領土との芸さから
級済学の研究とはあたかも独立の作品であるか
して,増大しつつある資本の麗浴のための大き
のように扱っており,そうして,そのことがマ
'
T
h
i
s country
,
な舞台をおするのである>-(
ルサスの人物像のきわめて興味深い側崩な無袈
fromt
h
ee
x
t
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n
to
fi
鵠 l
a
n
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s,andi
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sr
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c
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i
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gc
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p
i
t
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l
'
) :本金集第 E巻
, p.293をも見よ。マルガー
することになっていること
したのであ
る。じっ怨い,マノレサスにおける経済学の研究,
あるいは, If望書第論』の研究と,そうして,彼の
『人口論Jをめぐる研究とが切り離すことので
スは,おそらく,この表現私この論争の
きたい器密な関係を有したことを訴す設題は龍
議かれた初議のー論稿のにやで用いていたのであ
にもある O たとえば,上掲のスラップァの注釈
8
1
7
年に宵行された『人口の原
が示すように 1
ろう
アヲ
ω
ナ
ヲカ…ドが f
資本の雇用のための舞台 j とい
8
1
4年 3月 8釘
うマルサスの言葉を 1
中で用いているということは,すくなくとも,
1
夜およびそれ以懇
理にかんするエッセイの第 4
の諸瓶への補遺j の中に,それまで言カードの
よって部託されていたマルサス自身の
ア pナ
1
8
1
3俸の夏蝦から始められている両者の科諮論
f
資本の麗用のための舞台 j とL、う詩句が初め
争の中で,マルサスが彼独自の言葉として用い
て姿を現わしているということも,マルサスに
たことさぞ意味している。にもかかわらず,スラ
おける経務学研究と人口論研究の関密な関係が
ップァの検討の結楽によると, 1
8
1
7年に刊符さ
それ以諮から長い賠にわたって持続していたこ
れた『人ねの謀還にかんするエッセイの第 4版
との証拠のーっとなりうるであろう。
およびそれ以前の諸按への補遺』よりも前の作
品のじいに,
この替業は晃出せないので、ある。
じっさい,筆者の検討したところでも,たと
2
2
)I
b
i
d
.
,p
.1
0
3
n
.
こここで,話を 1
8
1
4年 3J
i2
1
3付のリカ…ドの
寄書蓄のパラグラブ (3) の本文に戻そう
o
r
資
本が,その襲用のための……舞台に対して以前
2
3
) M呈l
t
h
u
s,o
p
.c
i
t
.,
p
.1
7
.
1
9
8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注
賃金基金説の系譜について
よりも大きな釣り合いになるとき,利子は低下
帥白井
1
3
5(
5
7
5
)
イギリス本国における利潤の動向を規制する
(する )
J という命題についてはマルサスとの
メカニズムをスミスがどのように考えているか
聞に全面的な合意が成立するとリカードは述べ
こ彼のパラグラフ (
1
2
)
は,本節の冒頭に掲けγ
ているのであった。しかし議論の次の段階で,
の後半の文章から明らかである。すなわち,
両者の主張は分かれるのである。すなわち,
リ
(
1
2
) I・ー…。北アメリカと西インド諸島に
カードが「農業者の利潤こそが,その他のあら
おけるわが国の領土の獲得による版図と貿易
ゆる業種の利潤を規制する」と主張するのに対
(
t
e
r
r
i
t
o
r
y and t
r
a
d
e
) の双方の大幅な増大
して,マルサスは「むしろ,その他の業種の利
は,その社会の資本ストッグの減少を何ら想定
潤が農業者の利潤を規制する」と L、う立場をと
することなくしても,上記の事実を十分に説明
るのであるとリカードは述べている。そうし
するであろう。かくも大幅な新しい事業機会の
て,議論のこの段階にかんするかぎり,
追加が,旧来のスト
リカー
γ
クによって活用されなく
ドよりもマルサスのほうがスミスの立場に近い
てはならないということは,多数の特定分野で
ことは, ~国富論』第 I 編第 K 章のパラグラフ
雇用されるストックの量を必然的に減少させて
(
1
2
) の第 1センテンスに照らして明らかであ
きたにちがし、なく,そうして,それらの分野で
る。すなわち, I
新しい領土の,あるいは,貿易
は競争が前よりも少なくなるので,その利潤
の新しい分野 (newb
rancheso
ft
r
a
d
e
) の獲
は前よりも大きくなってきているにちがいな
し、。…...J24)
得は,富の取得において急速に進歩しつつある
国においでさえも,時として,ストックの利潤
を,そうして,それに伴なって貨幣の利子を上
ある意味において,
~国富論』第 I 編第 K 章
の中の利潤の理論の核心的部分は,以上に尽き
昇させることがある」とスミスは述べているの
ると言うことができる。要するに,諸資本の競
であった。リカードの上掲書簡のパラグラフ
争の強度が利潤の動向を規制するのである。し
(3)の陳述によれば,マルサスは, I
輸入か,
かしながら,スミスのく商業的社会〉の全貌が
あるいは,改良された耕地かによって,食糧の
第 I編の最初の四つの章だけでは描き尽されて
生産への新しい道が拓かれることがないとして
はいないように,また,いわゆるスミスの「貨
arkets)が
も … … も し も 新 し い 市 場 (newm
幣論」が第 I編第 W章「貨幣の起源と使用につ
発見されるならば,……利潤は増大し,そうし
いて」だけでは尽されていないように,スミス
て,利子は上昇するであろう」と主張している。
の利潤の理論の全貌もまた,第 I編第区章「ス
そうして,
トックの利潤について」において論じ尽されて
このとき,スミスのいう「貿易の新
しい分野の獲得」とは,
リカードのいう「新し
いるわけではなし、。〈商業的社会〉の特徴的な
ι 発見」に他ならない。こうして,
い市場(の)
諸局面の説明は利潤についても,それ以後の諸
ストッグの利潤について」
マルサスの立場が, I
章の課題として残されるのである。その一端と
の章のパラグラフ (
1
2
) に述べられてあるスミ
1
2
) の最後でこう
して,スミスはパラグラフ (
スの論理に沿うものであるとするならば,
付け加えるのである。
リカ
ードはスミスと対立する立場をとっているわけ
(
1
2
) I…・・。私は以下でヘ 大ブリテンの資
である。リカードがそのような立場をとるにい
本ストックがこの前の戦争の莫大な出費によっ
たった原因の一つは,北アメリカと西インド諸
てさえも減少しなかったと私に信じさせること
島の英領植民地の特殊な条件下での利潤と賃金
になった理由を述べる機会を持つで、あろう。」明
1
1
)の
の動向を説明するスミスのパラグラフ (
そこに付されてあるキャナンの編者脚注 3は
論理を,
リカードがイギリス本国にまでも適用
しようと企てたことに求められるであろう。
2
4
) Smith,o
p
.c
i
t
.
,p
.9
5
.
2
5
)I
b
i
d
.
1
3
6(
5
7
6
)
37d
経済繁喜寿究
次の通りである。
倫
的収入の援泉について J31) と,この第回章から
p
.327
,328:Vo.
li,p
.4
1
4
.出向
ド〔以下, p
成っている。前 2主主は,それぞれの内容が,ス
ここに橋治されている『国憲論Jl (キャナン
されて題震が示され
ミス浅身の手によって縮分 i
H編「ス
ているけれども,第 m主主はそのような分割合受
および雇用について j の
けていないという点で,第 V舗の中では特異な
いて,あるいは,生産
っている。その環自は,何よりもその
版〉第 i巻の pp 327
,328は,そ
調
的および不生産的労働について Jの中に含まれ
殺が値の 2章容にくらべれば比較的短かいことに
るページである。上播のスミスのパラグラフ
0ページ
あろうけれども,その第襲撃にしても 4
1
1
) の来患の文章
なおに先立つパラグラフ (
2
個のパラグラフから成って, I
r
罷
富
にのぼり, 9
r
ストックの増加 ιそうして,勤労
論J全体について言言えば,長大な殺に属するの
の,あるいは,有用労働に対する需要の増加と
である。さて,キャナンが上に指示するところ
の謂係は, ……試?で2 ストッグの蓄積雪ピ設う
ろう J27)と
さいに,もっと十分に説明される
はそのパラグラフ詩的に含まれる一節であ
以下で j
述べられるとき,その f
デることにす
そのパラグラブの全文を以下に掲 i
におし、て,
H霧第議
していることに熊らして犯と この場合の
ると思われるので,その一節に傍点を付して,
る
。
r
キャナンの指示は,きわめて密然なものである
(
5
8
) それらのさまざまな閣で確立してい
ように授、われる。われわれは,やがて,スミス
る租税部農はイングランドの?在日産よりも劣ると
資本の蓄積について」の議会紹介する磯会
の f
ってよ L、かもしれな L、忍はそうであると
合持つことが予懇されるので,そこでスミスが
じている。しかし,最も緊明な政府でも,妥当
ブ Fテンの資本ストッグがこの前の戦争の
な課税対象のすべてから税な取り尽してしまっ
出費によってさえも減少しなかった j と
ているとき,焦腐の急を要する場合には,不適
害じるにいたった理由をどのように述べるかを
当なものにも手をイすげなくてはならなくなるも
見ることは,
しばらく保留することにしたい。
意しておくべきであ
のであるということは,記1
キャナンは,
しかしながら,それに加えて,
ろう。あの繁明なオラング共和留が,時として
(キャナン寂〉第 H巻の p.414をも
は,スペインの大部分の税自に劣らず不都合な
しているので,
ここではこの点に少し立ち入っ
ておくことにしよう。
キャナンのこの議後の指示繍所広第 V
権者な L号し欝家の収入について j の第 E
いて J29) に含まれるページである O 第 V
組税に頼らなくてはならなかったのであるか
ら。公的収入の負担の軽減がかなり進む以前
に郊の戦争が始まり,そうして,それがその
蕊の戦争に劣らず経費のかかるものに拡大して
行くならば,その戦争は,抗し難い必要性から,
ブザデンの租税制度を,オランダのそれに,あ
繍は,第 I意「主権者ないし盟家の出費につい
るいは,スペインのそれにさえ,劣らず苛酷な
o
うおよび,策目章「社会の全般的ないし公
てy
ものとして若くかもしれないので‘ある。
2
6
)I
b
i
d
.,p
.9
5
n
.
,p
p
.9
4
9
5
.訳文については,前稿,本総務
2
7
)I
b
i
d
.
3
7
巻第 3,
予 p
.8
9(
4
2
7
)をえよ。
2
8
) キャナンの編者開設 2,i
b
i
d
.,p
.9
5
n,を見よ。
2
号
) 滋o
okV :Oft
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eR号V暗殺u母 o
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総 l
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h,Chapter I
I
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3
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母r1:
Oft
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o
rCommonwealth,i
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.
,p
p
.1
8
6
3
0
1
.
。
の議行租税制度の名誉のために言えば,
じっさ
い,それはこれまでのところ,勤労の述惑にな
ることがきわめて少なかったので,その結果と
して,最も経費のかかった一議の戦争の経逸の
3
1
)C
hapterI
I:Oft
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3
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2
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1
蓑
1
9
8
8
.3
ケインズ
f一 般 理 論J君
主
注
後金基金鋭わ系害警について
なかでさえも,政府の無駄と浪費がその社会の
M
白井
1
3
7(
5
7
7
)
出Jが述べられているのは明らかである。もっ
じさせた損訴のすべてを,諸個人
.415にかか
とも,そのー館の末躍の部分は, p
の節倹と惑を得た行為は,貯蓄と蓄穣によって,
っているので,厳密に言えば,.:f-ャナンはこの
修複することができたように見えるのである。
ペ…ジクネ指示すべきで長うったということにな
これ愛で大ブリテンが戦ったもののなかでも
ろう O
も経費のかかった戦争であるとの前の戦争の終
ちなみに,傍点部分の綾初のセンテンスから,
結時において,それ弘前に劣らず,その農業は
スミスが「勤労の諸分野J (
b
r
a
n
c
h
e
so
fi
n
d
u
s
t
r
y
) も農業,製造索,および商業の,つ
繁栄し,その製造業者たちの数は多く,かつ,
され,そうして,その商業は手広く
づみちて言えば,幾工高の三大阪分で考えている
行なわれていた。それゆえ,それらのささ まざま
ことがおらかでるる。 リカ…ドがその『来日謂に
な勤労の藤分野のすべて (
a
l
lt
h
o
s
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i狂e
r
e
n
t
braucheso
fi
n
d
u
s
t
r
y
) た支えていた資本民
それ以前にあった盤と等しいものであったにち
がし、ない。その講和以降,農業はさらにいっそ
う改良され,そうして,あらゆる町と村で家資
は上昇してきているが,それは人々の富と収入
が増大しつつある一つの証拠である o そ う し
て
, I
日来の大部分の懇税の, とりわけ,詫最税
かんする且
y
セイ Jにおいて,その三大監分を
受け継いでいるととは,われわれの作成した内
呂次の中に現われている。すなわち,設が資
本一般の利潤を論じるとき,それは,農業,製
および商業でそれぞれに襲用される諾資
本の利稽の釣り合いとして捉えられているので
ある。
なお,上掲の論文でもそうであるが,われわ
れはこれまでスミスの文章のやの‘i
n
d
出土庁'
と関税の主要な税自のまド奴額は連続的に上昇し
とL、う議を一貫して f
勤労jと訳してきている。
てきているが,それもまた,消繋が増大しつつ
もちろん, i
勤労の諸分野J (
b
r
a
n
c
h
e
so
fi
ル
あることの,そうして,その結果として,もっ
d
u
s
t
r
y
) とL、う諾匂によって指示されている
ぱら消費を支えることのできる生皮物が増大し
ところのものが,現代語における諮生産部門と
つつあることの,等しく明白な証艶の一つであ
しての「議産業」という請の指示するところの
るO 大ブ1)テンは,半世紀以能にはそれが支え
ものと一致していることに疑いの余地は無いと
ることができるとは誰も議じなかったよう
i
n
d
u
s
t
r
i
e
s
'という
思われるけれども,それを '
:ffi私い;}:,やすやすと支えているよう
語だけで表涼する慣用法はもっと後の時代に
る。しかしながら,このようなことを根拠にし
て
, この国がいかなる負担をも支えることがで
きると速断しないようにしよう。そしてま
るのである。
の最終章である「公援について j
を,われわれがもうー援取り上げる機会があろ
これまでこの障に負わされてきたところ
うとは思われないので,最後に,いま一つ註釈
のものよりもわずかに大きな負担な弘大しJ
こ
,
を加えておきたい。われわれは, これまで,ス
苦痛もなく支えることができるだろうと過大な
32
)
昌信を抱かないようにしようではないか。J
このパラグラフの傍点を付してある一節にお
いて, i
大ブ Pテンの資本スト
γ
グがこの誌の
戦争の莫大な出較によってさえも読少しなかっ
たと私(スミス)に僑じさせることになった理
3
2
)I
b
i
d
.
,p
p
.414
…4
1
5
.
ミスの f
初期未機状態の社会J(
t
h
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l
yand
rudes
t
a
t
eo
fs
o
c
i
e
t
y
) の概念に,や L誇獲さ
(
a∞mmercials
o
c
i
e
t
y
)
れたく商業的社会
というわれわれの概念を対震ますることを過し
て,スミスの議論のにやにしばしば見出されるレ
トジック手法を明らかにしてきすた。それは,た
とえば,第 l繍の最初の四つの章における予備
的考察の中で患いられただけでなく,その議の
138 く
578)
37d
篠宮守学芸誇究
知
第 V章 f
商品の実質{泌格と名民側i
格について j
なものではとうていないということを,私は!潟
のパラグラフ (2)
.
.
.
.
.
.
j納
じ舗のやで示そうと努力したのである o
第羽主主「潟必の{函格の
f
封建時代におけるわれわれの祖先のあいだ
構成部分について j のパラグラフ(1)から (8)
にわたる議論,そうして,第溜章「労働の賃金
では,所領は長い諮問にわたって罷一家系に
について j のパラグラフ (2) から (5) ;
ま
で
よって継滋されていたものであるが,そのこ
の議論の中でも黒いられていたので、忘る。その
とは,彼らが自分の所得の範囲内で薬事らす
手 法 比 第 i輔の諮芸誌の議論に限って援用され
般的な性向を有していたことを立証するのであ
る。…… jS4)
の全体にわたる
ているのではなく,
く2) r
同
後の論法の特設のーっとなっているので、ある。
よび保蔵性向が,
公窪について J
そうして?それがこの最後の f
たちのあいだだけでなく,君主にもひろまって
の章にも克られることを,以下の引用によって
いたのである。商業と製造業がほとんど知られ
錦示しておこう。
ていない菌民のあ L
(1) I
荷重義の伸展と製造業の改良に先立つ
(
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trudes
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whichp
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fcommer
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eandt
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eimprovemento
fm
a
n
u
f
a
c
t
u
r
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s
)
附
とされる節倹の気風を自然に身につけさせられ
る状況の中に置かれているということは,すで
に第 N舗において考察したところで、ある。その
ような状況のもとでは君主の自費でさえも,
よろこぶような麗栄心によ
において,商業と製 j
設業によりはじめ
ることのできる高 i
臓な繋沢品がまったく知られ
って左右されることはありえない。…… jS!i)
(3) i
あらゆる議類の高価な費択品が豊
大きな収入をもっている人も,
きる人数にほぼ近い人々
acommercialc
o
u
n
t
r
y
) では,
にある商業霞 (
養ずる以外に,その収入会?使う,あるいは,楽
その君主は設の収入の大部分私自然にs 後の
しむことのできる
議内のほとんどすべての大地主たもと需
いということ私私は
それらの繁訳品の購入のため
本書の第蕊縞において示そうと努力したので、あ
るc 大きな収入が大設の生活必需品に対する
になるとは,あらゆる時代にも設えること
彼の協と,そして,近隣の諾罷が,
な
,
しかし無意味主主装委事をするための高値なあ
である。上言さの米開状態においては,苦手通には,
らゆる品々をたっぷりと供給する。それよりは
その収入はそれらの大量の必需品で,すなわち,
劣るけれども寓じ積額の装飾のために,般の皮
どない布類で,穀
加工されてない食鐘や手の込 i
下の貴族たちは,復らの詫者に暇をど出し小作
物や牛で,玄た,ネもや生皮で支払われるので
人を独立させて,しだいに披らの済畿の富裕
ある。それらの物質はその持ち主の消費分合大
ちの大部分の者と時じようなものにな
幅に懇過するけれども,殺がその余嬢部分と
換ずることのできる物を商業も製造業も供与す
ることがないときには,後はその余剰でもって,
それが食物と衣揮を与えることのできる
ほぼ近い人々を扶養ずる以外には鰐もすること
ができないので、ある。このような状況の中で
札機択とは無縁な歓待と,そして,見栄のな
い気前のよさが,護者や賢人の主要な自殺を引
き起こすのである O しかし,
それによって人々がよきを亡ぼすことになるよう
くのである。授らの行為に影響合及ぼし
ているのと同じ浮薄な情熱が,君主にも影響し
ている O …… j3s)
(4) i
平和時における第倹の心がけの欠
は,戦時において境務の契約を必然のものにす
る。……j37)
3
3
)l
b
i
d
.
,p
. 392
b
i
d
.
,pp. 392-393.
3
4
)I
3
5
)I
b
i
d
.,p
.3
9
3
.
3
6
)I
b
i
d
.
,p
.3
9
4
.
3
7
)I
T
t
d
.
1
9
8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について
(5) I道徳~{.t' にかかわる原因の作用によっ
て
,
このような仕方で政府を借り入れの必要に
帥白井
1
3
9(
5
7
9
)
フ (3) に見える「商業国 J (
a commercial
c
o
u
n
t
r
y
),すなわち,窮極的には,大ブリテン
追 い 込 む 同 じ 商 業 的 状 態 の 社 会 (Thesame
における公債の問題にかんする所見を明らかに
commercials
t
a
t
eo
fs
o
c
i
e
t
y
) が,その臣下
することが主たる目的なのであるからである。
たちのなかに,貸し付けの能力と意欲の両方を
ともに生み出すのである。…… J38)
「未開状態の社会」における君主やその臣下の
貴族たちの節倹の気風や, I
貯蓄および保蔵性
以上の抜粋を読むだけでも,く商業的社会〉
向」のありょう,それ自体にスミスの関心が向
における国家の債務が発生する理由を述べるに
けられているのではなく,それらのことが「商
あたって,スミスが援用しているレトリックの
業国」における国家の債務のありように光を当
ありょうを十分に知ることができるであろう。
てるかぎりにおいて,言及されているにすぎな
もっとも,
いのである。こうして,われわれは,第 I編第
ここで述べられている「商業の伸張
,
と製造業の改良に先立つ未聞状態の社会Jが
百章の末尾で,ほとんど一回限りで姿を現わし
第 I編第 W章の「ストックの蓄積と土地の占有
acommercials
o
c
i
e
t
y
)と
た「商業的社会J(
の 双 方 に 先 立 つ 初 期 未 開 状 態 の 社 会J(
t
h
a
t
いう語句が, ~国富論』の最後を飾る章の中で,
「商業国J(
acommercialc
o
u
n
t
r
y
) という形
1y and rude s
t
a
t
eo
fs
o
c
i
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t
y which
e
ar
precedes.
both t
h
e
'accumulation o
fs
t
o
c
k
andt
h
ea
p
p
r
o
p
r
i
a
t
i
o
no
fl
a
n
d
)39) とはかなり
で再たび現われるのを見たのである。もちろ
ん,それが「社会」ではなくて「国」と表現さ
条件の異なる社会であることに注意しておく必
れているのは, この場合, I
君主あるいは国家」
要はあるであろう。前者にあっては,商業と製
(
t
h
eSovereigno
rCommonwealth) の漬務
造業はまだ発達してはいないものの,農業はす
が問題にされているからである。第 I編の問題
でに十分に発達していて,農業ストックの蓄積
はすべて私的個人にかかわるものであったか
と土地の占有は進んだ状態にあるものと考えら
れる。それに対して後者は,
I
ストックの蓄積
と土地の占有に先立つ初期未開状態」にあるの
国」よりは「社会」の表現が適切で、あった
ら
, I
わけである。
最後に,上掲のパラグラフ(1)で,第 E編
で,農業さえも未発達で,スミスのいわゆる「狩
「さまざまな国民における富裕のさまざまな進
an
a
t
i
o
no
fh
u
n
t
e
r
s
)叫 の 表
猟者たちの国 J(
歩について J41) における,そうして,パラグラ
現が妥当するのであった。いまにして思えば,
フ (2) で第 M編「経済学の諸体系について」仰
e
a
r
1y) と
スミスがその未開状態に「初期の J(
未聞
における議論が言及されていることは, I
いう語を添えていたのは,意味のない繰り返し
状態の社会」というスミスのレトリック手法が,
ではなく,やがて姿を現わす別の未開状態から
『国富論』の第 I編と第 V編の中にとどまらず,
それを区別しておくための周到な表現であった
その全編にわたって援用されていることを示唆
わけである。
ところで, I
初期未開状態の社会J がそうで
あったように,第 V編第1lI章の「未開状態の社
会」がどのような実体を指示するものであるか
ということは,その章におけるスミスの議論に
するものである。
とって第二義的な意味しか持たないのである。
なぜなら,スミスにとっては,上掲のパラグラ
3
8
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i
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.3
9
5
.
3
9
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『国富論』第 I編第 K章「ストックの利潤に
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.395-462;a
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1I
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5
.
37-4
経済学研究
1
4
0(
5
8
0
)
ついて j の残余の部分については,われわれが
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na
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c
a
lp
r
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p
o
r
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n
)し
術的割合で、 C
作成して蔀稿に掲げたその章の舟容呂次から,
か上昇しないであろう c しかし,もしもそれら
その議論のありような比較的正磁に知ることが
の職人たちの異なる蕗用者のすべての利潤が 5
できるであろう o しかし,その章の最後のパラ
パー々ント引き上げられるとしたならば,その
2
4
) の小見出しは余りにも簡略で,そ
グラブ (
務品の{泌格のうち剥潤に帰禁ずる部分は,その
のパラグラフの含む理論上きわめて興味深い論
製造のさまざまな諸段潜のすべてを通じて,利
点を紹介するには不十分であるので,以下に,
調のこの増加分に対して幾詩的割合で、 (
i
ngeo・
その全文を訳出して,検討することにしたい。
m
e
t
i
c
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lp
r
o
p
o
r
t
i
o
n
)上昇することであろう。
われわれの作成した内容目次によれば,そのパ
ブラックスの仕上げ職人の雇用者は,そのブヅ
ラグラフは,パラグラフ (
2
3
) とともに,
γ
~ 8
F
蕗品の{回格と,利鞘および賃金との聞の欝係,
とりわけ,高利?関は高鍍金よりも商品の価格を
大轄に引き上げることについてよ合構成する。
ξ
ラグラフ (
2
3
) の全文比すでに,その内容
グス安売るさいに,授がその職人たちに前渡
しした原材料と援金の全錨{直 (
t
h
e whole
v
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l
sand wages which
headvancedt
oh
i
sworkmen)に対して追加
的にもう 5 パ-~ントの利 i憶を要求するであろ
医次の中に掲げられているが,以下では,それ
う。溜蘇糸紘ぎ殺人の麗舟者は,ブラ
まどまず再掲し,それに引き続いて,パラグラブ
能護し価格付加 a
dvancedp
r
i
c
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ft
h
e況a
x
)
y
クスの
と,その糸紡ぎ毒装人の賃金の両方に対して,
(
2
4
) の全文言ヒ示すことにする。
(
2
3
)i
富裕に向かつて盤、速に進みつつある
加的にもう Sパーセントの潤濯を撃さ求ずるであ
国々では,多くの潟ぷの i
師格の中において,低
ろう O そうして,亜麻布織り職人の態用者は,
い利潤率は労働の高賃金を相殺し,そうしてき
問に劣らぬ安さで商品な売ることを可能ならし
t
h
eadvancedp
r
i
c
eo
f
軍麻糸の龍諜し{脳絡 (
t
h
el
i
n
e
ny
a
r
n
) と,その布織り磯人の賃金の
湾方に対して,問様にもう 5パーセント
める。J43)
するであろう G 賃金の上昇は,それが商品の筒
労動の賃金がもっと低くて進歩の緩慢な近欝諮
(
2
4
)i
実質的には (
I
nr
e
a
l
i
t
y
), I議料調は
よりも製品の極格 (
t
h
ep
r
i
c
eo
fwork)
を大隅に上昇さぜる傾向がある O たとえば
9
させるとき,讃務の累積過程における
単科 (
s
i
m
p
l
ei
n
t
e
r
e
s
t
) と!湾じ具合に作用す
る。利潤の上昇は護符 (
compoundi
n
t
e
r
e
s
t
)
ンネル製品の製造において,フラックスの北上
のように作用する 10 わが国の海人たちゃ製造
げ隣人 (
t
h
ef
l
a
xd
r
e
s
s
e
r
s
),亜麻糸紡ぎ職人
業の親方たちは,高賃金が価格機資に懇し
(
t
h
es
p
i
n
n
e
r
s
),議麻布織り職人 (
t
h
e weav
e
r
s
) など,さまざまな職人たちの賃金が,す
べて 1日当たり 2ペンス上昇するものとする
ならは リンネノレ製品 1単位の僻務を,その製
造のために雇用、ぶれた人々の人教に 2ペンスを
a:'及ぼし,そうして,そのことによって,
掛け合わせ,そうして,それにこれらの人々の
日数さと乗じた額だけ引二げなくてはなら
J
E内
と海外との珂ブゴで、授らの商品の売り上げが減少
すると,大いに苦情を述べ立てる。彼らは高利
もつ悪い影響については何もぎわない。授
らは自分たちの利得が及ぼす有害な影饗には口
なつぐなのである。披らは,他の人々の利得に
ついてだけ苦靖宏言うのである 2oJ44)
ないであろう。その商品の価格のうち賃金に帰
パラグラフ (
2
4
) の米議にやャナンが付した
る部分は,その製造のさまぎまな諸段階の
縁者騨主張 2から先に尭ることにしよう。そこで
すべてを璃 ζ て,賃金のこの上昇分に対して算
4
3
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.
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l1
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.9
9
.
3,
珍 p
.6
7(
4
0
5
)から蒋橋。
本誌第3
7
巻第
設はこう述べている。
f事〔このパラグラフは初腹にはない。しか
4
4
)I
b
i
d
.,
p
p
.99-100.
1
9
8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について
しながら,その末尾の警句は,本書第 E巻の
帥白井
1
4
1(
5
81
)
(
2
4
) の追加もそのーであって,キャナンはそ
p
.1
0
0に
, いくらか洗練度の劣る形で(in a
s
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g
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1yl
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s
sp
o
l
i
s
h
e
dform) 出ているので,
れについて,次のように述べている。
第 2版のこの場所で初めて姿を現わしたわけで、
はない。J45)
利潤は高賃金よりも価格を大幅に上昇させると
われわれは,すでに一度,キャナン版『国富
論』の「編者の序言 J46) に述べられてある『国
f
a
I
I
a
c
i
o
u
sargument) は
, まったく新しいも
のである。もっとも,この学説自体は(第 E巻
,
富論』の初版から第 5版に及ぶ改訂の解説の一
p.100にある)別の一節の中で主張されている
部分を紹介したことがある日〉。そのとき引用し
けれども。……」町
たキャナンの文章の一部を,
ここにもう一度掲
げることにする。
r
(2) ……第 I巻の p
p
.9
9,1
0
0にある,高
t
h
e
いう命題を論証するための誤った議論 (
こうして,キャナンは,第 I編第lX章のパラ
2
4
) の前半部分を構成するスミスの陳
グラフ (
r
(1) W国富論』の初版は, 1
7
7
6年 3月 9日
に四折判の 2巻本で刊行された・
述を「誤った議論」であるとしているのである。
じっさい,その部分に付されてある編者脚注 1
(2) 第 2版は, 1
7
7
8年の初頭に……現われ
において,キャナンは彼自身の数値例によって,
たが,しかしその外見は先の版とほとんど変
スミスの議論が誤っている根拠を示そうと企て
わりなかった。…… J481
ているのであるが,キャナンの見解の当否を,
r(3) 第 2版と,
われわれは次の節で詳細に検討するであろう。
1784
年の末に刊行された
第 3版との聞には,かなりの相違がある。第 3
版は八折判の 3巻本である……。
なんとなれば,スミスが『国富論』の初版を
執筆していたとき,その第 I編第 K章「ストッ
(4) 第 2版と第 3版を比較すると,第 3版
クの利潤について」の最後をパラグラフ (
2
3
)
への追加分がかなりのものであることがわか
の短い文章で締めくくるにあたって,その陳述
る。……これらの追加は,その他のもっと蹟末
の根底にある原理の正しさに,彼が確信を持っ
な追加および訂正と合わせて,四折判の分冊と
ていなかったというようなことは,スミスにい
して印刷され,次の題名がつけられた。すなわ
ささかの共感を抱く読者には,はなはだ受け容
ち
, Wアダム・スミス博士の諸国民の富の性質
れ難いことであるからである。しかし,スミス
と原因にかんする研究の初版および第 2版への
がその原理のありょうを,パラグラフ (
2
4
)に
追加と訂正』がそれである。」叫
述べられであるような数値例によって説明する
こうして,
W国富論』の初版の改訂よりも第
必要があるか否かについて,判断に迷っていた
2版の改訂のほうが大掛りなものであったこと
かもしれないということは,考えられないこと
が明らかであり,われわれも前回の紹介では,
ではない。そうして,
後者の一局面を論じたので、ある。しかしなが
された後で,その章の議論を読み返してみて,
ら,初版の改訂にもかなり多くの事項が含まれ
スミスがパラグラフ (
2
4
) に見られるような数
ていて,その主要なものは,キャナンの「編者
の序言」のパラグラフ (2) の中で言及されて
いる。もちろん,第 I編第 K章 の パ ラ グ ラ フ
4
5
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i
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v
i
i.
i
4
7
) 拙稿「賃金基金説の系譜について帥」木稿第37
巻
第 1号 (
1
9
8
7
年 6月
)
, p
p
.1
2
4(
12
4
)ー1
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5(
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2
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4
9
)I
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.
,pp. xiv-xv.
i
W
国富論』の初版が刊行
値例を付け加えるほうがよいという考えを固め
たということは,きわめてありうることのよう
に思われるのである。そのようないきさつがあ
ったればこそ,短期間内での初版改訂の機会に,
2
4
) を書き加え,
スミスは手早くパラグラフ (
しかも,それ以後
5
0
)I
b
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d
.,p
.x
i
v
.
3度にわたる改訂の機会に
1
4
2(
5
8
2
)
374
豪華務学研究
も,パラグラフ (
2
4
) を部践することがなかっ
たのであろうとさえ,考えられるのである。こ
のように推i
則されるとき,そこに述べられてい
た議論j であるとする
される必要性がある
申
まで。
こうして,キャナンが指示するパラグラフ
(
1
1
5
)は
,
r
植E
宅地について j の議の第盟節の
前半部分の議論の中に註麗づけられるものであ
ることが,おおよそ察しられるであろう。そこ
でz その議論のやにもう少し立ち入って見るこ
と言わなくてはならない。
その検討に進む前に, しかしながら,パラグ
とにしよう。スミスは,それに先立つ第立節で,
ラフ (
2
4
) の末屠に付けられてある譲者関注 2
プメヲカにある繍民地がヨ…ロヅバ諸罷の政策
の後半部分について,少しく詳しい住釈を加え
の締結として享受したいくつかの利益さと論じた
ておこう。その後半部分で,キャナンは,パ汐
後,務理簡では,逆にアメリカの発見ムそ
グラフ (
2
4
) の最後の四つのセンテンスの擦述
の植民地の経営から,
ヨ一世
y バ諸説そして,
t
h
eepigram) と し て 捉 丸 そ の 警
を「警句J(
とりわけ大ブワテンが享受してきた利設の検討
句がすでに初援の中で,すなわち,キャナン販
に向かうのである。そのような利主主の考察にあ
の読ま五巻の p
.100で
,
r
いくらか洗
練度の劣る形でj 述べられていると指摘し "
n、
たって,彼は議論をニ段階に分ける。第 1の段
階比豆一口ッパ全体を一つの隠大な閣と護散
るのである o 初販のその欝軒は,第 N輔「経済
し,その金ヨ…ロッバがアメザカの発克之その
学の藷体系について Jの第 W掌 f
植民地につい
植民地の経営から享受してきた「一般的利議 j
てJ51) のパラグラフ (
1
1
5
) であると態われる。
(
t
h
e general advantages) を論じるもので
その意は合計194~聞のパラグラブから成り,第 N
あり,そうして,第 2の段階は,植民地を経営
繍の中の最大の寧である。それゆえ,それは,
する個別の
第 V繍のニつの長大な章と向様に,スミス自身
その閣に属ずる植民地か
t
h
ep
a
r
t
i
c
u
l
a
ra
d
してきた「特殊的利益J(
の手によって細分されて,次に示す三つの節か
vantages) を論じるのである。後者の議論は,
ら成っている。
9
6
) から始められるが,
その室誌のパラグラフ (
第 i鰐「新横長地合建設する諸動議につい
第
そこで,スミスはまず,
r
特殊的利主主j をニつの
r
第 1に,あらゆる
5
2
) パラグラフ(1)から (
2
2
)ま
てJ
種類に分類する。すなわち,
で
。
帝冨 (every empire) の支記下にある属
z
節 f
新橋民地の繁栄の誇露関
J53)
パラグ
(
p
r
o
v
i
n
c
e
s
) から,
その帝国が受け取る共通
ラフ (
2
3
) から (
8
6
) までG
の利謎 (
t
h
o
s
ecommonadvantages) と,そ
第 E節「アメリカの発見から,そうして,
うして,第 2に,アメリカにある双ーロッパ椴
望峰懸命の東インドへの航路の発晃か
民地のようなきわめて特異な続賞をキぎする鴎領
ら滋
から結果ずると考えられるところの特黙な利主主
.')'パが卒受してきた諸利益に
-p
U
8
7
)か ら (
1
9
4
)
) パラグラフ (
ついて J
5
1
) BookIV:
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fGoodHope,
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.詰1
1
4
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(
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o
s
e peculiar advantages)J5めがそれで、
ある。
第 1の f
共鴻の利益」比それらの鶏領が守谷
t
h
emilitary
間の訪衡のために提供する兵力 (
f
o
r
c
e
) と,そうして,帝闘の民放を維持するた
めに供与する収入とから成るが,アメリカ r
こあ
る滋ーロ
γ パ諸鶏の横民地は,
その本国 C
t
h
e
匂s
) の防衛のために, いまだ
mother countr
5
5
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.9
4
.
1
9
8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注
賃金基金説の系譜について
かつて兵力を提供したことがなく,むしろ,植
1
4
3(
5
8
3
)
帥白井
ンドの工業製品と,その他の諸国の工業製品が
民地自体の兵力はその植民地の防衛にとって不
ともにイングランドの植民地の砂糖と煙草と交
十分で、さえあるので,本国に負担を掛けてきて
換されるかぎりにおいて,
いる,
このような価格の優
とスミスは述べるのである。そういうわ
t
h
i
ss
u
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r
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yo
fp
r
i
c
e
) は,その他
位性 (
けで,アメリカにあるヨーロッパ諸国の植民地
の諸国が以上のような状況のもとで享受するこ
については,第 2の「特異な利益」のみが考え
とのできるよりも大きな助長的刺戟をイングラ
られるのであり,
しかも,その利益の「唯一の
ンドに与えるのである。その植民地の排他的貿
源泉J(
t
h
es
o
l
es
o
u
r
c
e
) は,本国の「排他的
易は,それゆえに,そのような独占を持たない
t
h
ee
x
c
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s
i
v
et
r
a
d
e
),あるいは, I
植
貿易 J(
諸国の生活の楽しみと勤労との双方を減退させ
民地貿易の独占 J (
t
h
e monopolyo
ft
h
ec
o
l
-
るか,あるいは,すくなくとも,それ以外の状
onyt
r
a
d
e
) であるとされる。北アメリカの英
況のもとでそれらの諸国が到達するであろうと
領植民地との貿易におけるイングランドの独占
思われる水準よりも低く抑えるので,
したがっ
の効果について考察は,議論のこの段階から始
て,それはそのような独占的権益を有する国に
められるのである。スミスはこう述べる。
対して,その他の諸国を上回る明白な利益を賦
(
1
01
) Iこの排他的貿易の帰結として,英領
与するのである。J56)
L、かなる固に向けても,送り出すことはできな
(
1
0
2
) Iこのような利益は, しかしながら,
おそらく,絶対的利益 (
a
na
b
s
o
l
u
t
e advant
a
g
e
) というよりも,むしろ相対的利益 (
a
r
e
l
a
t
i
v
eadvantage) と呼んでいいものである
いのである。その他の諸国は,その部分がイン
ことが,そうして,その利益を享受する固に対
グランドに送られた後で,イングランドからそ
して,その特定の国の勤労と生産量を自由貿易
植民地の余剰生産物の,たとえば,いわゆる指
定商品 (
enumeratedcommodities) になって
いる部分のすべてが,イングランド以外には,
れを買わなくてはならないのである。それゆ
の場合に自然的に到達するであろうと思われる
え,その部分は,イングランドでのほうが,そ
水準よりも高く引き上げることによるのより
の他のいかなる国でよりも安いにちがし、なく,
も,むしろ,他の諸国の勤労と生産量を抑圧す
そうして,その他のどの国のよりもイングラン
ることによって,その利益を与えるのであるこ
ドの生活の楽しみ (
t
h
eenjoymentso
fEngl
a
n
d
) を増大させることに大きく寄与してい
57)
とが,見出されるであろう。J
るにちがいない。同様にして,それはイングラ
ニアの煙車は,イングランドがそれについて享
(
1
0
3
)I
たとえば, メリーランドとヴァージ
h
e
ri
n
d
u
s
t
r
y
) を助長するのに
ンドの勤労 (
受している独占によって,フランスにとどけら
も
,
より大きく寄与しているにちがし、なし、。イ
れるよりも,確かに,安くイングランドにとど
ングランド自体の余剰生産物のうち,上述の指
けられるのであり,そうして,イングランドは
定商品と交換される部分のすべて巳ついて,イ
とどいたもののうちのかなりの部分をフランス
ングランドは,その他の諸国が彼らの余剰生産
に売るのが通例である。しかし,フランスと,
物のうち,同じ指定商品と交換する部分につい
その他のヨーロッパ諸国のすべてが,メリーラ
て取得することのできるよりも有利な価格 (
a
ンドとヴァージニアとの自由貿易を,
b
e
t
t
e
rp
r
i
c
e
) を取得することができる。たと
つねに許されてきていたとするならば,それら
えば,イングランドの工業製品は,その植民地
の植民地の煙草は,現在までに,それらの他の
の砂糖と煙草を,他の諸国の類似の工業製品が
諸国においてのみならず,イングランドにおい
同じ砂糖と煙草を購買することができるよりも
多量に購買するであろう。それゆえ,イングラ
5
6
)I
b
i
d
.,
ρ
.9
5
.
のIbid.
5
これまで
1
4
4(
5
8
4
)
37
・4
経済学研究
ても,それが現にとどけられているよりも安く
なかったで、あろう。イングランドは,おそらく,
なっていたかもしれないのである。煙草の生産
絶対的利益を得ていたかもしれないが,しかし,
量は,それがこれまで売られてきたよりもはる
確実に,相対的利益を失っていたことであろう
かに広い市場に売られたで、あろうことの帰結と
と思われる。」問
して,現在までに,非常に大幅に増大していた
(
1
0
4
)r
しかしながら,植民地貿易における
かもしれず,そうして,おそらく,増大してき
上記の相対的利益を獲得するために,すなわち,
煙草農場 (
a
その貿易のいかなる分け前からも他の諸国をで
t
o
b
a
c
c
op
l
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n
t
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t
i
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n
) の利潤は,穀物農場 (
a
c
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np
l
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n
t
a
t
i
o
n
) の利潤とともに, それらの
きるかぎり排除しようとする不公正で、悪意のあ
たことであろうが,
そのために,
る企画を実行するために,イングランドは,そ
自然的水準にまで低下してしまっていたことで
の貿易から享受したかもしれない絶対的利益の
あろう。それらの利潤は,現在なお,その自然的
一部分を,他のすべての国々とともに犠牲にし
水準より L、くぶんか高くなっていると思われる
てきただけでなく,また,貿易のその他のほと
のであるが,煙草の価格も,現在までに,いま
んどすべての分野
の水準よりもいくぶんか低いところに低下して
ncho
ft
r
a
d
e
)における絶対的および相対的不
利益 (
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) の両方を自ら蒙ってきていると信
いたかもしれず,そうして,おそらく,低下し
ていたことであろう。イングランドのであれ,
あるいは,その他の諸国のであれ,等量の諸商
品が, メリーランドとウゃァージニアにおいて,
(
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-
ずべき,きわめてもっともな理由があるのであ
る
。J
59)
現在可能で、あるよりも多量の煙草を購買するよ
(
1
0
5
)r
イングランドが航海条例によって,
うになっていたかもしれず,そうして,その結
植民地貿易の独占を自らの手に掌握したとき,
果として,
それまでそこで雇用されていた外国の諸資本
そこでは,
はるかに有利な価格 (
a
b
e
t
t
e
rp
r
i
c
e
) で売られるようになっていたか
は,必然的にそこから引き揚げられたのであ
もしれないのである。その煙草は,それゆえ,
る。それ以前には,その貿易の一部分しか担っ
その低廉さと豊富さとによって,イングランド
ていなかったイングランドの資本は,いまや,
あるいは他の国の生活の楽しみを増大させ,あ
その全体を担わなくてはならなくなった。それ
るいはまた,勤労を伸長させることができるか
以前には,諸植民地に対して,彼らが欲するヨ
ぎりにおいて,それは自由貿易の場合に,おそ
ーロッノ 4からの諸商品の一部分しか供給してこ
らく,現に生み出すことのできるよりもいくぶ
なかったイングランドの資本が,いまや,それ
んか大きな度合で,それらの両方の効果を生み
らの商品の全部を彼らに供給するために雇用さ
出すことであろう。じっさい, 自由貿易の場合
れるべき資本のすべてになった。しかし,イン
には,イングランドは他の諸国を上回る利益を
グランドの資本は諸植民地に彼らの欲する商品
何も得ることがなかったで、あろうと思われる。
の全部を供給することができなかったのであ
イングランドは,その植民地の煙草を,現に買
り,そうして,必然的に,その資本が彼らに供
っているよりもいくぶんか安く買うようになっ
給する商品は非常に高く売れたのである。それ
ていたかもしれず,また,その結果として,イ
以前には,その植民地の余剰生産物の一部分し
ングランドの生産する諸商品の一部を,現に売
か買っていなかったその資本が,いまや,その
っているよりもいくぶんか高く売るようになっ
全部を買うために雇用さるべき資本のすべてに
ていたかもしれないのである。しかし,イング
なった。しかし,その資本は,旧価格に近いど
ランドは,他の L、かなる国よりも,前者を安く
買うことも,また,後者を高く売ることもでき
5
8
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5
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1
9
8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について
帥白井
1
4
5(
5
8
5
)
のような価格でもその全部を買うことができ
らゆる業種から資本をヲ│き揚げさせることにな
ず,そうして,それゆえに,それがどれだけの
ったという局面にかんするスミスの議論は,パ
ものを買ったにせよ,それは必然的に非常に安
ラグラフ (
1
0
8
)と(
1
0
9
)で述べられている問。
く買うことになったのである。しかし商人が
そうして,その効果の第 2の 局 面 , す な わ
非常に高く売り,そして,非常に安く買うとい
ち,植民地貿易の独占が「ブリテンの貿易のさ
う形の貿易の中で資本が雇用されるとき,その
まざまな分野のすべて J (
a
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利潤は非常に大きくて,貿易のその他の分野
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)6めにおける利潤
(
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h
e
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r
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d
e
) における利潤の
率を,他のすべての諸国がブリテンの植民地と
通常の水準をはるかに上回るものであったにち
の自由貿易を許されていたとするならば自然的
がし、ない。植民地貿易における利潤のこのよう
に成立していたであろうと思われる水準よりも
な優位性は,貿易のその他の分野から,それ以
高くしてきたという局面にかんするスミスの議
前にそこで雇用されていた資本の一部分を引き
論は,
パラグラフ (
1
1
0
) 以下に述べられてい
揚げさせないで、おくはずがなかった。しかし,
る63)0
r
ストックの利潤について」の章のパラ
資本のこのような移動は植民地貿易における諸
2
4
) の末尾の編者脚注 2に指示されて
グラフ (
資本の競争 (
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h
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o
l
o
n
yt
r
a
d
e
) をしだいに激化させたにち
いる問題のパラグラフ (
1
1
5
)は,上述の効果の
第 2の局面にかかわる議論の中に位置するもの
がし、なく,したがって,それは貿易のその他の分
である。そこで,この議論の筋書をパラグラフ
野のすべてにおける諸資本の競争 (
t
h
a
tcom-
(
1
1
1
) から辿ることにしよう。
(
1
11
)r
植民地貿易の独占は,必然的に,そ
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) をしだいに緩和させてきたにちがいな
の貿易のほうに,大ブリテンの資本のうち自然
い。そうして,それは前者の利潤をしだいに低
o
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t
s own a
c
c
o
r
d
) そこに集まったで
に (
下させてきたにちがいなく,
したがって,それ
あろうと思われるところのものよりも大きな部
は,すべての利潤がそれ以前とは異なる,そう
分を引き寄せたので,
したがって,それは,す
して,それ以前よりもいくぶんか高い,新しい
べての外国資本を排除することによって,その
水準に到達するまで,後者の利潤をしだいに上
貿易に雇用される資本の全量を,
昇させてきたにちがし、ない。J
合に自然的に (
n
a
t
u
r
a
l
l
y
) 雇用されるであろ
(
1
0
6
) その他のあらゆる業種 (
a
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lo
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h
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r
t
r
a
d
e
s
) から資本を引き揚げさせるとともに,
うところよりも,必然的に低下させることにな
t
h
a
tbranch
った。しかし,貿易のその分野 (
また,
r
60
)
自由貿易の場
このような独占がない場合に,すべての
o
ft
r
a
d
e
) における諸資本の競争を緩和するこ
業種で(ina
l
lt
r
a
d
e
s
)成立していたで、あろう
とによって,それは必然的にその分野における
利潤率よりもその業種の利潤率をいくぶんか高
利潤率を上昇させたので、ある。また,貿易のそ
く引き上げるという, この二重の効果は,
の他のあらゆる分野 (
a
l
lo
t
h
e
r branches o
f
この
独占の成立当初に生み出されただけで、なく,ま
t
r
a
d
e
) におけるブリテンの諸資本の競争を緩
た,それ以降もその独占によって生み出され続
和することによって,それは必然的に貿易のそ
けてきたのである。」刊
れらの他の分野のすべてにおけるブリテンの利
その効果の第 1の局面,すなわち,たとえば,
潤率 (
t
h
er
a
t
eo
fB
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t
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s
hp
r
o
f
i
t
) を上昇させ
大ブリテンによる植民地貿易の独占が,その植
た。航海条例の制定以来,特定のどの時期につ
民地貿易で資本を雇用させるべく,その他のあ
いても,大ブリテンの商業資本 (
t
h
emercan-
6
0
)I
b
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.,p
p
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6
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7
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1
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2
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p
.9
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6
3
)I
b
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.
,pp. 9
9
f
f
.
1
4
6(
5
8
6
)
37-4
室主主青学研究
t
i
l
ec
a
p
i
t
a
l
) の状態ないし規模にかかわりな
し糠民地貿易の独占は,その状態の続いてい
るかもしれないのであるバ時〉
スミスがこのパラグラブの陳述な基にして第
る聞はブリデンの通常科潤率 (
t
h
eo
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n
a
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y
:編第区意のパラグラフ (
2
4
) をどのよう
設のを,数占のなし
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i
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i
s
hpro
き上げたかな,もっと藍議的に検討するために p
ブリテンの繋易のその分野とその龍のあらゆる
以下に,パラグラフ (
1
1
5
)の 原 文 ム そ れ に 対
分野の両方で成立したで、あろうと思われる水準
ると思われるパラグラブ (
2
4
) の部分の原
よりも高く引き上げてきたにちがいない。航海
文とすと鵠げることにする。
条錦の鍛定以来,ブヲテンの還常利潤率が,確か
(
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rowng
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n
s
.
な事実であったように,かなり低下してきてい
るとするならば,その条例によって確点された
独出がそれ念高く維持することに寄与しなかっ
たとした場合,それはなおいっそう抵ミなって
いたのでなくてはならない。J
制
〉
このように大ブザテンの F
商 業 資 本J (
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t
al)払植民地貿易の独点に
よって,特奥な高利潤を得てきているのに対し
て,そのような独占を持たない翠々の諸資本は,
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相対的利益J(
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) はも
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絶対的蒋益J(
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a
g
e
) も享受することができない事情私
スミスはそれに続くパラグラブ (
1
1
2
)から (
1
1
4
)
ちろんのこと,
までで述べるのである。そうして,そのように
いる大ブリデンの商人
たちの慈震のー島留を,設は間総のパラグラブ
(
1
1
5
) において,次のように分析する。
(
1
1
5
) わが簡の商人たちは彼らの売る
r
製品が外匿の市場で額格
に負ける原臨
しば
を述べ立てる。しかし,彼らはスト
y
グの高利
潤については黙して語ることがない。彼らは龍
の人々の法外な利得については苦情念言うが,
しかし彼ら自身のものにつし、ては街も言わな
いのである。ヅリテンのストックの高利潤は,
しかしながら, ブワテンの工業製品の価格者と引
き上げることにかんして,多くの場合札ブリ
テンの労働の潟費金に劣らず,そうして,一部
おそらしそれ以上に寄与してい
6
4
)I
b
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e
.時(イタザッグ筆者〉
パラグラブ
(
1
1
5
) の末尾の文章に対志ずる
明示的な棟述がパラグラブ (
2
4
) の末躍の警句
の部分には見出されないので,それに代わるも
のとして,パラグラブ (
2
4
) の努績の文療を加
6
5
)I
b
i
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.
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.1
0
0
.
6
6
)I
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6
7
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.
Ir
,p
. 住吉.
6
8
)I
b
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.
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.1
0
0
.
1
9
8
8
o3
ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について
帥白井
1
4
7(
5
8
7
)
えたものを掲げてみた。前者は,形式的に正確
長と引用したことについて,少し弁解しておき
を期するとすれば,たとえば,
たい。われわれは,そうすることによって,パ
Thehighp
r
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t
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e high wages o
fB
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i
t
i
s
h
more than
l
a
b
o
ur
.
ラグラフ
(
1
1
5
) がどのような文脈の中に置か
れているかを示すだけではなく,第 I編第 N章
に述べられている利潤の理論がスミス自身によ
って実際に適用される主要場面のーっとして,
第 W編第四章の議論の一局面を具体的に示して
おきたかったのである。その副次的帰結とし
でなくてはならないと思われるような点に加え
て,われわれが前節で取り上げた問題に対する,
て
, B
r
i
t
i
s
h という語の過度と思われる繰り返
より直接的な判断の材料を提示することができ
しなど,パラグラフ (
1
1
5
) のスミスの文章は,
た 。 す な わ ち , 第 I編 第 K章 の パ ラ グ ラ フ
一見しただけでも,キャナンの言うように「し、
(
1
2
) の努頭の語句, 1
新しい領土の,あるいは,
くらか洗練度の劣る形で J(
i
nas
l
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g
h
t
l
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e
s
s
p
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d form) 書かれているように思われ
る。そのうえ,第 N編第 W章「植民地について」
The a
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貿易の新しい分野の獲得J (
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f
r
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d
e
" という語が, より一
t
r
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d
e
)69) の中の“t
1
1
5
) が,もつばら「商
に含まれるパラグラフ (
,
そ
般的な意味の「事業」であるよりも,1貿易 J
業資本」の利潤を問題にし,そうして,大ブリ
うして,
テンの工業製品の外国市場における競争にのみ
るものであることが,いまや,上掲のパラグラ
言及する議論の中に置かれているのに対して,
4
) の「貿易のその他のほとんどすべて
フ(10
第 I編第 K章「ストックの利潤について」に含
a
l
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s
t every o
t
h
e
r branch o
f
の分野J (
t
r
a
d
e
)70) や,パラグラフ (
1
0
5
)の「貿易のその
他の分野J(
o
t
h
e
rbrancheso
ft
r
a
d
e
)71) など
まれるパラグラフ (
2
4
) は,農業,工業,およ
び商業の諸スト
γ
クにわたるストッグ一般の利
潤を論じる文脈の中に位置し,そうして,大ブ
より限定的に「植民地貿易」を意味す
の語句に照らして,明白になっているのである。
リテンの工業製品が圏内市場でさらされる競争
もっとも,パラグラフ (
1
0
6
) の中には, 1
その
にも触れているので,上掲原文中のイタリック
他のあらゆる業種J (
a
l
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s
)や
,
体で表示されている“m
aster-manuf
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s
"
a
l
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r
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d
e
s
) などの語句があ
「すべての業種J(
と“ a
thome" の語句が,パラグラフ (
1
1
5
)よ
り72) それらが前後の関係から,何よりもまず,
りも多くの内容を指示するために使用されてい
a
l
lo
t
h
e
r
「貿易のその他のあらゆる分野J (
る。それにもかかわらず,上掲原文の語数が,
brancheso
ft
r
a
d
e
) と「貿易のすべての分野」
1
1
5
) で8
1語,そして,パラグラフ
パラグラフ (
(
a
l
lbrancheso
ft
r
a
d
e
) をt
旨していることも
(
2
4
) で7
8語となっていることも,また,キャ
見逃されてはならないところであろう。しかし
ナンの判断の妥当性を支持するであろう。スミ
ながら,
スが『国富論』の初版の改訂にあたって, 1
手早
1
0
6
)と (
1
0
7
) の中に,例外的に使
ラグラフ (
くパラグラフ (
2
4
) を書き上げ」たとは,すで
にわれわれの述べたところであるが,以上の比
較によって,すくなくとも上掲の原文の部分に
ついては, このような推測が可能であることが
了解されることであろう。
最後に,
パラグラフ
(
1
1
5
) を紹介するため
に,それに先立つ諸パラグラフのいくつかを長
これらの語句は,非常に短い二つのパ
用されているにすぎず,それ以後の諸パラグラ
r
a
d
e
s
" が使
フでは,貿易の意味で複数形の“t
用される例がほとんど見出されないとし、う事実
6
9
)I
b
i
d
.
,p
.9
5
.
7
0
)I
b
i
d
.,Vo.
II
I,p
.9
6
.
b
i
d
.
.p
.9
7
.
7
1
)I
7
2
)I
b
i
d
.
1
4
8(
5
8
8
)
37-4
経 済 学 研 究
を,われわれは重く見たい。そうして,
じっさ
うして,亜麻布織り職人の雇用者は,亜麻糸の
い,われわれが上に掲げた訳文のように,パラ
前渡し価格と,その布織り職人の賃金の両方に
グラフ (
1
0
6
)C
そうして,パラグラフ (
1
0
7
)に
対して,同様に,もう 5パーセントを要求する
ついても同様で、あるが〕の中の“t
r
a
d
e
s
" とい
であろう。賃金の上昇は,それが商品の価格を
貿易」よりも広い意味を含めて, I
事
う語に, I
上昇させるとき,償務の累積過程における単利
業」ないし「業種」の訳語を当てても意味は十
と同じ具合に作用する。利潤の上昇は複利のよ
分に通るように思われるのである。
うに作用する loJ
町
この一節にキャナンが付した編者脚注 1を引
L
I
I
き続き見ることにしよう。
r Cここに述べられてある見解によれば,か
1
前節のはじめに引用した『国富論』第 I編第
K章のパラグラフ (
2
4
) の前半部分を, もう一
高利潤は高賃金よりも
製品の価格を大幅に上昇させる傾向がある。た
とえば,
3人の雇用者がそれぞれ,賃金と原材料
そうして, 利潤が当初 5
パーセントであって,それから 1
0パーセントに
度揚げることにしよう。
(
2
4
) I
実質的には,
りに
0
0を支払い,
費に.f:1
リンネノレ製品の製造において, フラッ
上昇するものとするなら,その完成品 (
t
h
ef
i
n
-
i
s
h
e
d commodity) は.f:3
3
1 0
5
.3
d
. から
64 2
5
. にまで上昇するのでなくてはなら
.
f
:3
もしも賃金が.f:1
0
0から.f:1
0
5に上
クスの仕上げ職人,亜麻糸紡ぎ職人,亜麻布織
ない。他方,
り職人など, さまざまな職人たちの賃金が,す
昇するならば,その完成品は.f:3
4
7 1
1
5
.3
d
.
1日当たり 2ペンス上昇するものとする
リンネル製品 1単位の価格を,その製
造のために雇用された人々の人数に 2ペンスを
掛け合わせ,そう Lて,それにこれらの人々の
o
v
e
r
) の利潤を意味するのであって,資本につ
いて l年当たり (
o
nc
a
p
i
t
a
lperannum) の
雇用日数を乗じた額だけ引き上げなくてはなら
それを意味するのではないことか,あるいは,
べて
にまで上昇するにすぎないであろう。(この場
ならば,
o
nt
u
r
n
合
, )利潤は資本 1回 転 に つ い て (
ないであろう。その商品の価格のうち賃金に帰
そうでなければ,
着する部分は,その製造のさまざまな諸段階の
その資本を 1年に 1回転させることが仮定され
すべてを通じて,賃金のこの上昇分に対して算
ているのである。しかし,
術的割合でしか上昇しないであろう。しかし,
いずれかが許されるときでさえも,<単利〉
これらの雇用者たちが各々,
これらの仮定のうち
ての利潤が 5パーセント引き上げられるとした
(
t
h
e‘
s
i
m
p
l
ei
nt
e
r
e
st
'
) のほうがく複利〉
(
t
h
e‘
compound') よりも容易に大きくなり
ならば,その商品の価格のうち利潤に帰着する
うることは明らかである。上述の数値例におい
部分は,その製造のさまざまな諸段階のすべて
て,われわれは利潤を 2倍にしたのであるが,
を通じて,利潤のこの増加分に対して幾何的割
0分の lを 加 え た に す ぎ な
しかし,賃金には 2
合で上昇することであろう。フラックスの仕上
い。もしも賃金を 2倍にして,利潤は 5パーセ
げ職人の雇用者は,そのフラックスを売るさい
ントのままにしておくならば,その完成品は
に,彼がその職人たちに前渡しした原材料と賃
.
f
:3
3
1 0
5
.から.f:662 0
5
.6
d
. にまで上昇しな
金の全価値に対して追加的にもう 5パーセント
くてはならないであろう。J
74)
もしもそれらの職人たちの異なる雇用者のすべ
の利潤を要求するであろう。亜麻糸紡ぎ職人の
まず,キャナンがこの編者脚注の中で示して
雇用者は,フラックスの前渡し価格と,その糸
いる数値例の作り方を検討することから,われ
紡ぎ職人の賃金の両方に対して,追加的に,も
う5パーセントの利潤を要求するであろう。そ
7
3
)I
b
i
d
.,Vo.
l1
,p
p
.9
9
1
0
0
.
b
i
d
.,p
.1
0
0
n
.
7
4
)I
1
9
88
.3
ケインズ『一般理論』私注
賃金基金説の系譜について
1
4
9(
5
8
9
)
帥白井
1
0
0
rパ
われの議論を始めよう。リンネル製品の製造過
るであろう。その資本に 1回転当たり
程におけるフラックス(亜麻の繊維)の仕上げ
ーセントの利潤を見込んで回収するためには,
業を,その過程の第 1段階,そのフラッグスを
亜麻糸の売り上げ総額を P2 とすると,
P2
=(W+M+P
,
)(
1十 r
)
={W+M+(W+M)(1十 r
)
}
(
l+
r
)
=(W+M){(l+
r
)+(
1+
r
)
2
}
加工して亜麻糸を作る紡糸業を,その過程の第
2段階,そうして,その亜麻糸で亜麻布を織り
上げる織布業を第 3段階とする。キャナンは第
3段階の製品である亜麻布を完成品 (
t
h
ef
i
r
ト
i
s
h
e
dcommodity) と看倣すのである。彼は,
でなくてはならなし、。
最後に,第 3段階では,他の諸段階と同額の
これらの三つの段階の雇用者が「それぞれ賃金
経費 W 十 M f
こ加えて,
0
0を支払しづと述べているか
と原材料費に.f:1
料である亜麻糸の仕入れ費用 P2 を前払いする
ら,いま賃金支払額を W,原材料費を M と表
ために
記すると,彼の数値例では
される。すると,同様にして,完成品と看倣さ
WトM =.
f
:1
0
0
になるわけである。この数字は各段階の雇用者
に共通の数字であるから ,W と M の記号に各
段階の番号をいちいち付けて区別する必要はな
い。利潤率を r と表記して,これも各段階に共
W+M十 P2相当額の流動資本が必要と
れる亜麻布の売り上げ総額九について,
P3=(W十M+P
)(
1+
r
)
2
=[W
ト
ー M十 (
W十 A〕
ダ
x{(l+r)+(l十 r
)2日 (1+
r
)
=(W+M){(l十 r
)
通に用いることができる。利潤率にかんしてキ
十
=(W 十 M) 一子~{(1 +
r
)3 _1}
ち,われわれは後者を採って,資本はどの段階
この仮定によって,各製造段階の資本はすべて
(
1+r
)2十 (
1十 r
)う
l+r
ャナンが提示している代替的な二つの仮定のう
でも 1年につき 1回転するものと仮定しよう。
この段階に特有の原材
が成立しなくてはならないであろう。
前掲の編者脚注の中に出てくる完成品の価格
流動資本から成ることになるが,その流動資本
についての三つの場合の数値は,
は賃金と原材料費の前払いに当てられるものと
式によって算出される。
まず,
する。
第 1段階の流動資本は,賃金と原材料費の総
額
W+Mに相応する額を前払いするものであ
最初に,
(ケース A) として,
W+M=.
f
:1
0
01
r
=
0
.
0
5
るから,費用と資本のディメンジョンを無視し
の場合について計算される
ても致命的な誤りにならなし、かぎりにおいて,
表記すると,
記号
W+Mを流動資本の表示に流用すること
にしよう。そうすると,その流動資本に 1回転
当たり
1
0
0
rパーセントの利潤を見込んで回収
するためには,フラックスの売り上げ総額を
この最後の公
P3 の値を P3.t1.
と
.0
5 1
P3A= .
f
:1
0
0
x一1
一一一 x(
.
0
53- 1
)
0
.
0
5
=.
f
:3
3
1
.0
1
2
5
となる。ここで
1ポンドが 2
4
0ペンスに相当
P,と表記すると,
P,
=(W+M)(1+r)
することを顧慮すれば,その1.2
5パーセントは
でなくてはならない。
ス A) について示している数字は
次に,第 2段階では,第 1段階と同額の経費
W+M に加えて,
いま一つの原材料であるフ
を前払いするため
ラ y クスの仕入れ費用 P,
に,合計
W+M+P,の流動資本が必要とされ
3ペンスである。こうして,キャナンが(ケー
P3A=
.
f
:3
3
1O
s
.3
d
.
となっているのである。
次に, (ケース B) として,利潤が 2倍に上昇
する場合,すなわち,
37-4
経 済 学 研 究
1
5
0(
5
9
0
)
wトーM =.f:100)
率の上昇率のわずか 1
0分の l強でしかないこと
が注目に値しよう。
r=O.l
の場合について計算される P3 の値を P3R と
キャナンは問題の編者脚注の中で,W十 M
を当初の.f:1
0
0から.f:1
0
5へと増加させることに
すると,
ついて,
1
.1
3
- 1
P3R=.
f
:1
0
0x一0
一
一 x(
1
.1
)
.
1
r
われわれは……賃金には 2
0分 の lし
か加えなかったのである」と述べているから,
~ LV V "
=
.
f
:3
6
4
.
1
である。ここで 1ポンドが 2
0シリングに相当
彼の議論は,事実上,M=Oの想定に立って進
0パーセントに当
することを顧慮すると,その 1
支払額
る額は 2シリングである。それゆえ,
ち
, .
f
:5の追加の効果,あるいは,賃金率の上
この場合
められていることがわかる。そうすると,賃金
w=.
f
:1
0
0 に対する 20分の1,
すなわ
昇率 5パーセントの効果は,絶対額で見て,
のキャナンの数字は
P3B= .
f
:3
6
42
s
.
P3C- P3A=
:
f
,3
4
7
.
5
6
3
1
2
5.
f
:3
3
1
.
0
1
2
5
=.
f
:1
6
.5
5
0
6
2
5
と表示されているのである。
最後に, (ケース C) として,賃金の上昇から
で,上記の利潤率上昇の効果 P3B-P
3A のほぼ
流動資本が.1::5だけ増大させられる必要の生じ
半分でしかないけれども,それを割合で見る
た場合,すなわち,
と
,
W+M=.
f
:1
0
5
)
r=0.05 J
として計算される
P"'-P'
JFτー~=O. 05
A
P3 値を P3C とすると,
3
P3C=.
f
:1
0
5x ~. ~~ X (
1
.05ー1
)
0
.
0
5
=
.
f
:3
4
7
.
5
6
3
1
2
5
であり,それは,賃金率の上昇率とちょうど同
じ大きさになっている。 じっさい,上掲の
の公式において M=Oとすると , P3 は
P3
wと
1ポンドに相当する 2
4
0ペン
比例することが明らかであるから,この結果は,
の
と r のいかなる値についても,また
6.3パーセントは約1
3
5ペンスであり,それ
スの 5
増加率のいかなる値についても,成り立つもの
である。ここで
は1
1シリング 3ペンスに相当するから,
この場
合についてキャナンの表示は,
P3
f
:3
4
7 l
1s
.
3
d
.
c=.
となっているのである。
以上のようにして計算された数値によると,
利潤率が当初の 5パーセントから 1
0パーセント
の水準へと
2倍の上昇率で上昇する場合に,
亜麻布の価値額の増加分は,絶対額で見て,
P3B- P3A=
.
f
:364.1-.
f
:3
3
1
.
0
2
5
=.
f
:3
3
.9
8
7
5
w
w
である。こうして,賃金率の上昇率と完成品価
格の上昇率は,つねに等しくなるから,上記の
3A よりも賃金上昇
利潤率上昇の効果 P3B-P
の効果を大きくするためには,賃金の上昇率を
1
0
.
2
6パーセントよりも高くすればよ L、。それ
ゆえに,キャナンは問題の編者脚注の中で,
「……これらの仮定のうちいずれかが許される
ときでさえもく単利〉のほうがく複利〉より
も容易に大きくなりうる……」と述べているの
で,おおよそ 3
4ポンドにのぼるが,それを割合
である。そうして,彼は,その編者脚注の末尾
賃金を 2倍にして, 利潤は 5パーセント
で
, r
で見ると,
のままにしておくならば」と想定して,換言す
P3B~-.L
-P3A =0・1026
-ーァ
で,約 1
0
.3
パーセントの上昇率となる。それに
対応する利潤率の上昇率が 1
0
0パーセントであ
ったのであるから,亜麻布の価格上昇率は利潤
れば,
(ケース D) として,
f
:2
0
0
)
W+M=.
r=0.05 )
の場合の数値を計算し,
1
9
8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注 賃金基金説の系譜について
1
5
1(
5
91)
帥 白井
P3
P3D=2
1
=
.
f
:6
6
2 O
s
.
6
d
.
という,明らかに,P3
B を大幅に上回る結果を
24,000ペンスに相当し,それを 300日で割って得
示したのである。
なるであろう。したがって
以上が,問題の編者脚注の中でキャナンが行
られる 8
0ペンスは
4人の職人の日 給の合計に
1
1人の職人の 1日
当たり賃金率は,当初2
0ペンスであったわけで、
っている論証のすべてであるが,彼は『国富論』
ある。それゆえ,賃金支払額 W を当初の1::1
0
0
第 I 編第 lX章の~ 8における,すなわち,パラ
グラフ (
2
3
)と (
2
4
) におけるスミスの陳述の
から1::1
0
5に
, 5パーセントの増加率で増加させ
中にある二つの重要な点を見落としている。
が2
0ペンスから,その 20分の 1,あるいは 5パ
第 1の点、は,パラグラフ (
2
4
) の第 1センテ
ンス,すなわち,
r
実質的には
(
I
nr
e
a
l
i
t
y
),高
利潤は高賃金よりも製品の価格を大幅に上昇さ
せる傾向がある JとLづ文章の文頭にある「実
質的には」とし、ぅ語句の意味にかかわる問題で
るというキャナンの想定は
1日当たり賃金率
1ペンスになると想定
ーセントだけ増加して, 2
することと同じであると解釈することができ
る
。
いま,
このような 1日当たり賃金率を,一般
的に,小文字の ω で表示し,そうして,上述の
ある。これまで,何度か注釈を加えてきたよう
ケース A,B, C,および Dにおけるその{直を,
1 ~国富論』の中の“in r
e
a
l
i
t
y
" という語
に75,
それぞれ,WA
,Wn
,Wc
,および ωD とすると,
句は,しばしば,“i
na
p
p
e
a
r
a
n
c
e
" に対立する
ものとして用いられていて,その場合,それは
n
o
m
i
n
a
l
l
y
) に見る
商品の価値を「名目的に J(
のではなくて,
r
実質的に J (
r
e
a
l
l
y
) 見ること
r
実質的に」見
WA=WB=20ペンス
ωc=21ペンス
WD=40ペンス
ということになる。そこで,それぞれのケース
を意味するのである。そうして,
における亜麻布の実質価値を労働量で表示する
るということは,場合によっては,貨幣(=銀)
と,次のようになる O
以外の特定の商品,
て
,
とりわけ穀物の量に換算し
しかし,窮極的には,労働量に換算して見
ることを意味するのである。上の例でいうなら
ば,亜麻布の名目価値額 P3 を,その布によっ
て購買ないし支配することができると看倣すこ
2
4
)
とのできる労働量,すなわち,パラグラフ (
のスミスの陳述に従うなら,労働日数で表示す
ることを意味するのである。スミス自身は賃金
率の上昇分を 1日当たり 5ペンスと想定してい
1
:3
P3
3
1_ 3
3
1x2
4
0
d
.
Aー ,
WA 2
0
d
.
2
0
d
.
=3972日分の労働
P3
6
4
.1_ 3
6
4
.1x2
4
0
d
.
:3
Bー 1
2
0
d
.
WB一 三 回
ー
4369日分の労働
P3
-,
1
:3
47.563_ 347.563x2
4
0
d
.
C'
恥-.亙瓦一一
言1d.----竺3
9
7
2日分の労働
賃金支払額 W の増加分を 5ポンドと定めたも
P3
D_ 2P
3
A _P3
A
WD 2WA WA
上掲のケース Cについて,われわれは概数で
のと思われる。いま,たとえば,各職人の 1年
計算した結果を示してみたので、あるが,その計
間の労働日数を 3
00日としてみよう。 5ポンド
算の公式に戻って考えてみると,
るが,それに対応する想定として,キャナンは
00ペンスに相当するから,それを 3
0
0日で
は
1
,2
割ると,それは 4人分の賃金増加分に相当する
0
0ポ ン ド は
こ と に な る 。 当 初 の 賃 金 支 払 額1
7
5
) たとえば,拙稿「賃金基金説の系譜について帥」
本誌第3
7
巻 第 2号 (
1
9
8
7
年 9月
)
, p
p
.1
7
8(
3
1
6
)
1
7
9(
3
1
7
)を見よ。
P3
c=1.05P
3
A
であることは明らかであるから,正確に,
P3
C_P3
A
Wc WA
が成り立つことがわかる。
以上の諸結果の大小関係は次のようになって
1
5
2(
5
9
2
)
37
・4
経 済 学 研 究
の陳述が「実質的に」見る立場からではなくて,
いる。
「名目的に」見る立場から述べられていること
P3A_ P3
P3
'P3
D/
C_
一二一
ー一
¥B
WA Wc WD 、 WB
すなわち,
r
実質的に」見ると,賃金率の上昇は
亜麻布の価値をまったく上昇させることがない
に求められるであろう。そうして,それと同じ
立場からの陳述は,第 I編第 K章のパラグラフ
(
2
3
) にも見られるのである。すなわち,
のに対して,利潤率の上昇はその価値を大幅に
(
2
3
)r
富裕に向かつて急速に進みつつある
上昇させることが,キャナンの数値例によって
国々では,多くの商品の価格の中において,低
も示されているのである。この点にかんするか
い利潤率は労働の高賃金を相殺し,そうして,
ぎり,キャナンは, w
国富論』第 I編第区章のパ
労働の賃金がもっと低くて進歩の緩慢な近隣諸
パラグラフ (
2
4
) の努頭の文章,すなわち,
国に劣らぬ安さでその商品を売ることを可能な
r
実
,質的には,高利潤は高賃金よりも製品の価格を
らしめる。 J77)
大幅に上昇させる傾向がある」と L寸 文 章 で 述
べられているスミスの命題が「誤った議論」
(
t
h
ef
a
l
l
a
c
i
o
u
sargument) によって支えら
れていることを論証してはいない。
(
2
4
) の後半にある警句の原文を,第 W編第 W
(
1
1
5
) の原文と比較したとき
のことを想い出そう。そのとき,われわれはパ
ラグラフ
工業製品を外国の市場で売ろうとしている状況
を想い描くことは許されるであろう。しかし,
ここで,われわれは前節においてパラグラフ
章のパラグラフ
ここで述べられている状況のより具体的なイ
メージとして,ブリテンの商人たちがその国の
(
1
1
5
) の末尾の文章に対応すべきも
それは「植民地について」の章のパラグラフ
(
1
1
5
) が置かれている文脈の議論のように,ブ
リテンの商人たちが独占の有利性を十分に享受
している状況ではなくて,他のヨーロッパ諸国
の
,
すなわち,
r
労働の賃金がもっと低くて進
のの代わりとして,パラグラフ (
2
4
) の第 1セ
歩の緩慢な近隣諸国」の類似の工業製品との競
ンテンスを警句の部分の頭に加えたうえで,両
争に直面している状況でなくてはならない。そ
者の比較を行なったので、ある。しかし,読者も
れゆえ,
気づいておられたことと思うが,パラグラフ
中海,あるいは,東インド方面の貿易を念頭に
(
1
1
5
) の末尾の文章はパラグラフ (
2
4
) の第 1
この文章は,たとえば,バルト海,地
おいて述べられているものと受け取られるので
センテンスのように断定的な陳述になってはい
ある。それらの方面の貿易においては,ブリテ
なかった。スミスは次のように述べているので
ンの商人たちといえども,あるいはむしろ,高
ある。
賃金の労働の生産物を売る彼らであるからこ
r
(
1
1
5
) ……ブリテンのストッグの高利潤
は
,
しかしながら, ブリテンの工業製品の価格
を引き上げることにかんして,多くの場合に,
そ,それに相応した低い利潤率を甘受しなくて
はならない。こうして,パラグラフ (
1
1
5
) の末
尾の文章とパラグラフ (
2
3
) の文章がそれぞれ
ブリテンの労働の高賃金に劣らず,そうして,
に述べている状況には,利潤率の水準に大きな
一部の場合には,おそらく,それ以上に寄与し
違いが認められるけれども,両者の中で問題に
ているかもしれないのである。J76)
されている商品の価格が実質価格ではなくて,
スミスのこの陳述が断定的な調子をまったく
欠いており,そうして,労働の高賃金の効果の
名目あるいは貨幣価格である点では,両者は共
通していることに,まず注目しよう。
ほうがストッグの高利潤のそれよりも大きくな
われわれがそのように判断する根拠の一つ
る可能性を十分に残していることに注目しよ
は
, w国富論』第 I編第 V章「商品の実質価格と
う。それはなぜか。おそらく,その理由は,
名目価格について,あるいは,労働で表示され
7
6
) Smith,o
p
.c
i
t
.,Vo.
lI
I,p
.1
0
0
.
こ
7
7
)I
b
i
d
.,Vol
.1
,p
.9
9
.
1
9
8
8
.3
ケインズ
r
一般葱ii6II1
J fl,注笈重量基金百誌の系議について
帥 尚弁
1
5
3(
5
9
3
)
る価格と貨幣で表示される鯖格について J
耐の
合いが成立するわけではないけれども,しかし,
…節である o その章について,われわれの作成
ある場月号から到の場所に議品をイ中継ぎする詩人
r
き 5 局面鏡尺度とし
は,それらの商品の賞幣価格以外の,あるいはp
ての穀物,銀〔貨幣),および労働の長短さと論じ
彼がそれらを買うために支払う銀の盤と,後が
る。長揺にわたる額値の比較については,穀物
それらそ売って手に入れることが予想される銀
した内容目次的によれば,
のほうが銀よりも適当であるけれども,短期の
との関の差頭以外の{汚物も髄麗ずることは
比較では銀のほうが穀物よりも安定している。
な L、のである。支那の広東における半オンスの
それゆえ,労働が唯一の普遍院な鑑値尺度であ
銀は,
るけれども,労働の価格について情報を入手す
多畿の労織を乙そうしてまた,生活必需品と使
ることはきわめて悶難であり,穀物のほうが比
制品を支配するかもしれない。それゆえ,五吉東
較的入手しやすいので,本書でも,
しばしば穀
において半オンスの銀と引き換えに売れるとこ
物を鐙鏑尺度として用いる使宜を採るであろ
ろの鴎品札その商品なその地で所有している
ロンドンにおける 1オンスのそれよりも
ンドンにおいて 1オンスの銀と
1
9
), (
2
0
),お
うj の中に含まれるパラグラフ (
人にとって
よび (
21)が鵠鶏の館所である Q 少し長いが,
5
1き換えに売れる商品が,その商品宏惇ンドン
ぞれらな以下に引用してみよう。
で所有している人にとって意味するよりも実賞
r
開じ時期と場所において,
(
1
9
)
あらゆる
の実紫錨格と名昆側格 (
t
h
er
e
a
landt
h
e
p
金令に高価で (
r
e
a
l
l
yd
e
a
r
e
r
), より多くの実質
的援要性 (
morer
e
a
li
m
p
o
r
t
a
n
c
e
) を有する
と o
fa
l
lcommodities) は,相互
nominalp
r
i
c
かもしれない。しかしながら,
にま篠?と釣り合っている。たとえば,あなたが
商人が広東で半オンスの鍛と引き換えにある
悶ンドン市場においてl, 、かなる簡品と引き換
品を買うことができて,その後にその蕗品をロ
えt
乙であれ,
より少な
ンドンで 1オンスの銀と引を換えに売ることが
い貨幣を取得するのに対症して,その商品はあ
できるとするならば,被はこの有利な敷引によ
なたに,その時期その場所において,
って (
b
yt
h
eb
a
r
g
a
i
n
)1
0
0パーセントの初得
の,あるいは,
より喜多くの, あるいは,
より多く
より少ない労働を購異ない
ロンドンのある
をすることになると考えられるのであるが,
こ
ることを可能ならしめるであろう。それゆ
のような考え方はあたかも悶ンドンにおける
え,向じ時期と場所において,貨幣はあらゆる
1オンスの銀が広東?とおける 1オンスの銀と同
t
h
ee
x
a
c
t
商品の実質交換制備の疋縫な尺愛 C
measure o
fr
e
a
l exchangeable v
a
l
u
eo
f
a
l
lcommodities) である。しかしながら,ぞ
るわけで‘ある。広東における学オンスの銀は,
れは陪じ持期と場苦においてのみ,そうなので、
とのできるよりも多くの労働に対する,そうし
80
)
ある。J
r
(
2
0
) 遠く隔たった場所の聞では,
じ価緩を有ずるものであるかのように考えてい
P
ンドンにおける 1オンスの銀が識に与えるこ
より多量の生活必需品と使利品に対する支
高品の
築資f
密接と貨幣鱒格 C
t
h
er
e
a
landt
h
emoney
p
r
i
c
eo
fcommodities) との懇に定まった釣り
7
8
)B
ook1,C
h
a
p
t
e
rV :O
ft
h
er
e
a
la
n
dn
o
m
i
n
a
l
邑 o
fCommodi
巴s
,o
ro
ft
h日i
rP
r
i
c
ei
n
P
r
i
c
o
u
r,a
n
dt
h
e
i
rP
r
i
c
ei
nMoney,i
b
i
d
.
,
p
p
.
L設h
3
2
4
8
.
7
9
) 拙稿 f
賃金基金説の系穏について M
J本誌第37巻
第 1サ (
1
容
器7
年 6月
)
, p
p
.113く113)-116(116)
た見よ o
8
0
)S
m
i
t
h,o
p
.c
i
t
.,p
.3
9
.
t
h
ecommand) 宏彼に与えたで、怠ろう
配力 (
にというようなことは,その商人にとって鰐の
もないのである。ロンドンにおける 1オ
ンスの援は,その場所でま手オンスの銀が彼に与
えるあらゆる物の 2傍の量に対する支配力を,
つねに被に与えるであろう。そうして,このこ
とがまさに鐙の欲していることなのである d川
(
21
) I
それゆえ, 商品の名目ないし貨幣信
8
1
)I
b
i
d
.,p
p
.39-40.
37-4
事童話等学絞究
1
5
4(
5
9
4
)
5パ一々ントから 1
0バ
格こそが,あらゆる売貿にかんす句る慎重な,あ
まず,利潤率が当初の
t
h
eprudence o
ri
m
.
るいは,軽率な判断 (
セントへと, 1
0
0パ…セントの上昇率で上昇し
B) と,そうして,賃金率が S
prudenceo
fa
l
lp
u
r
c
h
a
s
e
sands
a
l
e
s
) を最
た場合〈ケース
終的に決定し,そうして,そのことによって,
パ-.-ttントの上昇率で上昇した結果,賃金支払
日常生活の中で、錨務が関係するほとんどあらゆ
額が当初の 1
0
0ポンドから 1
0
5ポン下旬へと増加し
る仕事会規制するので,それが実賓館格よりも
た場合{ケース C) とを北較すると,
P3B .
s3
6
42
s
.>
f
:3
4
7l
1s
.
3
d
. =P3C
はるかに多くの註院を集めてきたことは驚くに
芯
となって,一見したところ,ーと述のくスミスの
当たらない oj82)
r
ストックの
定理〉が成立しているかのようであるけれど
科潤について」の意のパラグラフ (
2
4
) の米最
も,それは利潤率の上昇率のほうが賃金率の上
スミスのこの練述に照らして,
と
,
r
植民地について Jの宝誌のパラグラフ (
1
1
5
)
よりも詑般的に大きく惣定されていること
の問主旨の警句にそれぞれ関漉して述べられて
の締結である,
いるところの, "i持者のパラグラブ (
2
3
) と後者
それゆえ,彼は,賃金事の上昇率も現潤率のそ
(
1
1
5
) の末還の文章に出てくる
の{面格は,すべて,名目ないし貨幣{語格で
1
0
0パ…セントと想定することによ
0
0ポン i
ごから 2
0
0ポ
って,資金支払額が当初の 1
あることが明らかである。そうして,パラグラ
ンドに増加する場合(ケース D) の亜麻布の名
のパラグラフ
2
3
) の糠述は利 j
霞率が低水準にある状況に
ブ (
かかわり,パラグラフ
(
1
1
5
)の陳述は利潤率が
高水準にある状説にかかわるものであるという
、があるとはいえ,南者の陳述の根底には,
擬率の変化が商品の笈幣摘格に及ぼす効果に
利i
しく
目繍格額を計算いそれと〈ケース B) とを比
較すれば,
PSB=,
;
1
.3
6
42
s
.く.1;, 6
6
2O
s
.6
d
.=P3D
となって , ス ミ ス の 定 理 〉 が 明 ら か に 成 立 し
ない反例!を示しているのである。
こうして,今ャナンは,
ついて,共通の比較静学的命題が横たわってい
ることが認められるであろう。その命題乱調
るスミスの陳述さど額長撃しながら補足的
に述べると,次のようになるであろう。
ミスの定潔〉寓裕に向かつて急速に進み
とキャナンは考えるのである。
i編第 I
X
章のパラグラフ (
2
4
) におけるスミスの数値例
t
h
ef
a
l
l
a
c
i
o
u
sargument)
を「誤った議論J(
であると論断したのであろうと患われる
G
しか
しながら,この点にかんして,キャナンはパラグ
(
2
4
) におけるスミスの陳述の中に明示的
つつある国では,利 j
持率の上昇がその
ラブ
製品の名目ないし貨幣価絡を携索させる効果
に述べられである一館を読み務としているので
は,多くの場合において,賃金率の上昇がもた
ある。すなわち,スミスがそこで、,
らす効果に劣らないほどであり,そうして,一
ジンネル製品の製議において, フラックスの仕
部の場合には,それを上回ることさえもある。
さで,
w関 富 論 』 第 I輔第反議案のパラグラフ
r
たとえば,
上げ殺人,亜麻糸紡 f
!職人,亜麻布織り職人な
ど
,
さま1!:'まな職人たちの賃金が,すべて
1
(
2
4
) の第 2.-ttンテンス以下に述べられである
日当たり 2ベンス上昇するものとするならば, j
スミスの数{童保と,それに基づいてキャナンが
(
I
fi
nt
h
el
i
n
e
nmanufacture
,f
o
rexample,
t
h
ewageso
ft
h
ed
i
f
f
e
r
e
n
tw
o
r
k
i
n
gp
e
o
ρl
e
.
t
h
ef
l
a
x
d
r
e
s
s
e
r
s,t
h
es
p
i
n
n
e
r
s,t
h
ewea
v
e
r
s,& C.j83) と述べているように,スミス自
作成した数髄例は,
ともに,上掲のくスミスの
定理〉の論誌に向けられたものであるとも
られる。そうして,キャナンが緩者脚注 lにお
いて示している論誌の要領は次のように述べ直
すことができょう。
8
2
)I
b
i
d
.
,p
.4
0
.
圃
身は, この議論のゆで, ヲンネノレ製品の製造段
離の数を 3に限定してはいなし、。じっさい,カミ
8
3
)l
b
i
d
.
,p
.9
9
.
1
9
8
8
.3
ケイ γ ズ『一般理論』私注
賃金基金説の系譜について
1
5
5(
5
9
5
)
帥白井
りに亜麻布を第 3段階の製品で、あるとしたとし
から,われわれもその想定に従うことにしよ
ても,たとえば, ~国富論』第 I 編第 W 章「商品
う。さらに,上の方程式のあり方に照らして,
の価格の構成部分について」のパラグラフ (
1
3
)
一般的に,正の整数 tについて,第 t段階の製
に見られるように,その後に「漂白職人など」
品の名目価格額 Ptが
,
(
t
h
eb
l
e
a
c
h
e
r,& c
.
)84) が雇用される諸段階
が続くことは,スミス自身のみならず,当時の
読者にとって,
ことは,容易に推測することができるであろ
う。すなわち,
Pt
=W{(l十 r)+(1+r)2十 … +(
l
+
r
)
t
}
l
+
r
=W-"
子
'
{(
1十 r
)
t-I}
自明の事柄であったのである。
それゆえ,キャナンのように,第 3段階の製品
である亜麻布を完成品 (
t
h
ef
i
.nishedcommo-
d
i
t
y
) と想定するのは早計に過ぎるものと言わ
なければならない。加えて,
1
幾何的割合で」
(
i
ng
e
o
m
e
t
r
i
c
a
lp
r
o
p
o
r
t
i
o
n
) 累積される
算術的割合でJ(
ina
r
i
利潤率上昇の効果が, 1
t
h
m
e
t
i
c
a
lp
r
o
p
o
r
t
i
o
n
)で増大する賃金率上昇
の効果を上回るためには,第 3段階よりももっ
と高い段階を必要とするであろうことは,今日
のわれわれ読者にでさえ,容易に推察できる事
柄である。それゆえ,われわれが次に考察すべ
き問題は,キャナンの作成したモデルにおいて,
生産段階の数を 3に限定せず,より一般的に,
いま,利潤率が当初の水準 r から L
1r の幅
で上昇して
う記号で表示すると,
l+r+L
1r
Ptr=W~子王 J
う問題になる。キャナンの示した数値例に対す
るわれわれのコメントの第 2点は以上の通りで
あるが,以下,節を改めてこの問題を少し検討
しておくことにしよう。
;
'{(1+r+L
1r
)t
ーけ
であることは明らかであろう。
次に,利潤率は rの水準にとどめたままで,
賃金支払額が当初の水準 W から L
1W の幅で
増加して, W +L
1W の水準になった場合にお
ける第 t 段階の製品の名目価値額を PtW とす
ると,
l+r
Ptw=(W+dW)-y
寸(1十 r)t-I}
上昇の効果に追い付き,そうして,それを上回
どれほどの段階数を必要とするかとい
1r の水準になった場合にお
r十 L
ける第 t段階の製品の名目価値額を Pt
r とい
正の整数 t として,利潤率上昇の効果が賃金率
るには,
次のような形式になる
であることも見やすい。
キャナンの数値例の(ケース B) と(ケース
D) との比較は,利潤率と賃金支払額がともに
1
0
0パーセントの増加率で変化した場合, すな
わち,
L
1r
r
L
I
I
I
L
1W
W.
1
の場合の比較となっていたのであるが,以下で
前節で示したキャナンの数値例の基礎にある
0
0パーセントに限定せず,
はそれらの増加率を 1
モデノレの第 3段 階 の 式 の 構 造 を も う 一 度 見 る
より一般的に,
と
,
する。すなわち,
P3
=(W
ト
ーM+P
)(
1+
r)
2
=(W+M){(l+r)+c
1+r)2+(1+r)3}
r
=(W十 M)一l
子+
'
{
(
1
+
r
)
3
-I}
である。すでに見てきたように,キャナンは事
実 上,M=O と想定して議論を進めてきていた
t
8
4
)I
b
i
d
.,p
.5
3
.
1
0
0
α パーセントと置くことに
y-w-α
L
1r
L
1W
ー
あるいは,
L
1r=αf
L
1W =α防F
とする。
そうすると,
上掲の Pt
r と Ptw~;こかんする
1
5
6
(
5
9
6
)
37-4
経済学研究
ニつの方程式は次のように書き表わされるであ
の場合を視野に入れながら,
ろう。すなわち,
ようとしているわけで、ある。
この問題を検討し
そこで,上掲の方程式(1),および (2) に
l十 r
(
l十 α)
J
t
r
-" r
(
l+α) ({I+r(l+α)}t-l
Ptr=W .1~:, \~~~J
ついて,
.
.
.
・
・
・(
1
)
および,
Ptr=PnV
と置くと,次の方程式が得られる。
ptw=wJl士宅位~{(1 十 f川〉
ω
そこで,tが1. 2
,3
,……,と増加する過程
において,Pt
r と Ptw の値がどのような軌跡
を描いて増大するかについて,まず,大まかに
見当をつけておくことにしよう。
・
・
・(
3
)
この方程式の未知数 tは,本来,正の整数で
なくてはならないが,それではこの方程式が解
を有するとはかぎらなくなるので,一般的に解
いま,キャナンの数値例に従って,たとえば,
W=100 )
r=
0.05 (
が存在しうるように
tを正の実数の範囲にま
で拡張して考えることにしよう。その場合に,
方程式 (3) の解を f とすると,その値はパ
α=1
ラメータ - r と α に依存して一意に定まるも
とすると, これらの値について,方程式(1,
)
,
および (2) は
のと予想されるから,その依存関係を
t
*=ゆ(
r,
α)
t
Pt
.1
0
0(
1
.1
-1
)
r=1
……但)
と表示する。そこで,t
* の値が利潤率の水準 r
および,
と,利潤率と賃金率の共通の変化率 α とにだ
Ptw=4
,
2
0
0
(1
.0
5t- 1
)
け依存して,賃金支払額の水準 W には直接に
となる。
) について,
とくに,第 1段階 (t=1
依存していないことは,注目すべき事実であ
る。それは,もちろん,上掲の方程式(1)お
よび (2) において,製品の名目価値額 P
t
rお
P
t
γ=110
Ptw=210
よび Ptwが,ともに,賃金支払額 W に正比例
であるから , tが増加する過程の出発点におい
r よりもほとんど 2倍 に 近 い 水
て,Ptwは Pt
什の上昇を規
準にあるわけである。しかし ,P
制する因子
することの帰結である。
ここで,再たび, tを正の整数とするとき,
t
?
:
t
*
なる生産段階 t の製品について
t
{I+r(l+α)
}t=1
.1
Ptr~ミPnv
0パーセントで, Ptw のそれ
の成長率は 1
t
(
1十 r
)
t
=1
.0
5
の成長率のちょうど 2倍であるので
(l+r)(1+α)2{(1+r)t-I}
={I+r(l+α)}[
{
I+r(l+α)
}t-l
J
となるから,それらの生産諸段階の製品が完成
t
h
ef
i
n
i
s
h
e
d commodity) として市場に
品 (
tの増加
につれて ,P什のほうが P
tw よりも急速に上
昇し,やがて,前者は後者に追い着き,追い越
すことが予想される。われわれは,そのような
出されるとき,<スミスの定理〉が成立するわ
けである。
しかしながら
tを正の実数の範囲にまで拡
張したとしても,方程式 (3) を一般的に解く
どの段階で起こるかを知りたいのであ
ことは困難であるように思われるので,われわ
る。しかし,上の数値例のように,利潤率や賃
れは方程式 (4) の関数ゅの性質を陰関数定理
ことが,
金率が一挙に 2倍も上昇するという想定,すな
に従って調べるところまでで,一般的な考察は
わち, α=1 という想定は考え難いので, αく1
打ち切ることにしたい。
1
9
8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系議について
まず,方程式 (3) に基づいて,関数併を次
のように定義する。
-{1+r(l+α)}[{
1
十r
(
l十α)}I-1]
ることができるのであった。しかしながら,
スミスは職人たちの賃金が 1日当たり 2ペンス
上昇するとし、う想定を置いているので,われわ
れもここではスミスに従って,職人たちの 1日
そこで,
ゆ(r,
α,
t
)=0
0ペンスから 2
2ペンスへ
当たり賃金率が当初の 2
とすると,陰関数定理によって,
2空
一
a
坐
ー/
Y
J
ι
a
r/ a
t
f単一一
a土/~
a
α/ a
t
a
r
と想定すると,
α=0.1
とL、うことになる。
。
ψ
子(
1+r)t
=(l+r)(l+α)2i
a
t
V
-{1+r(l+α
)〉-Lfl+f(1+α)
}
t
a
t
=(
1+r)t+1(
1+
α
)
2
1og(
1+r)
-{I+r(l+α
)}
I+
1
1og{1+r(l+α)}
B
ψ
a
r
一=(1+α)2f37(1十 f)t+1-17(1+r)〉
一77f1+r(1+げ
と1
0パーセント上昇するものと想定しよう。そ
うして,利潤率 rも同じ上昇率で上昇するもの
が成立する。そうして,
か1+r(l+α)}
1+
=(
1
+
α )2{(1+r)t(
t十1)-I}
一(
1十α)[
{
1
十r
(
l十α)}I(t+1)-1]
3f=(1+f)f(1+ry-otrM)2
£
j
L
fκr
一
1
5
7(
5
9
7
)
『国富論』第 I編第lX章のパラグラフ (
2
4
)で
,
ゆ(
r
,
α,
t
)=(l+r)(
1十 α
)2
{
(
1+r)t-l}
B
α
帥白井
1+
村
ぺ
州
(
仕
刊
(
1
+
廿
+川 +
=2(1十 r
)(
1+α){(
仕
1+r)t一n
-r[{
1十r
(
l十α)}
t
(
t十1)-1]
方程式 (3) の解 P の性質について,一般
キャナンの数値例で、は,利潤率の当初の水準
が 5パーセントと想定されていたけれども,ス
ミスは第 I編第 K章のパラグラフ (
2
2
) でこう
述べている。すなわち,
(
2
2
)I
……大ブリテンでは, 利子を 2倍し
たものが,商人たちのいわゆる,妥当な,適度
の,穏当な利潤 (
agood,moderate,r
e
a
s
o
n
a
b
l
ep
r
o
f
i
t
) と看倣されている。これらの語
は,普通の,そうして通常の利潤 (
acommon
andu
s
u
a
lp
r
o
f
i
t
) 以上のものを意味するもの
ではないと私は受け取っている己通常純利潤率
(
t
h
eo
r
d
i
n
a
r
yr
a
t
eo
fc
l
e
a
rp
r
o
f
i
t
) が 8な
いし 1
0パーセントである国においては,事業が
借入金でまかなわれている場合にはつねに,そ
の半分は利子に向けられるのが穏当であろ
う
。J85)
スミスのこの陳述に照らして,キャナンが設
定した 5パーセントの利潤率は異常に低い数値
的な考察をこれ以上進めることは筆者の手に余
であると言わなければならない。われわれは,
るので,以上の結果を利用しながら,具体的に
再たびスミスに従って,利潤率の当初の水準を
数値例によって考えてみることにしよう。
1
0パーセントと想定することにしよう。すなわ
その数値例を設定するに先立つて,前節で取
り上げたキャナンの数値例の(ケース C) を振
り返って見ょう。その場合,賃金支払額 W が
1
0
0ポンドから 1
0
5ポンドへと 5パーセントだけ
増加すると想定されていたが,それは年聞に
3
0
0日雇用される 4人の職人たちの日給,すなわ
1日当たり賃金率が 2
0ペンスから 2
1ペンス
へと 5パーセント上昇した結果であると解釈す
ち
ち
,
r=O.l
である。
以上の数値を方程式(1)および (2) に代
入すると,
8
5
)I
b
i
d
.,p
.9
9
. このパラグラフの全文は,前稿「賃
金基金説の系譜について同」本誌第3
7
巻第 3号
,
p
p
.6
6(
4
0
4
)
6
7(
4
0
5
)に訳出されてある。
1
5
8(
5
9
8
)
37-4
経済学研究
1+0.1x1
.1
Pt
r=100x
述の結果が得られるのである。
0
.
1x1
.
1
1+O
.1x1
.1
)t- I}
x{(
=1
0
0
9
.
0
9x(
1
.11t- 1
)
および,
1
.1x1
.1 l
-1
Pt
.
lt
)
w=100x一一一一一一一 X (
O
.1
成立することは明らかであるが,その定理の陳
5段階以下の製品
述のありょうから言って,第 1
のすべてが,<スミスの定理〉の外に排除され
るとはかぎらないことに注意しておこう。すな
=1210X (
l
.
lt- 1
)
この場合,方程式 (3) の解
ところで,上述の結果が得られる場合,第 1
6
段階以上の製品についてはくスミスの定理〉が
t
*は
1
5
.
9
9
5くげく 1
5
.
9
9
6
の範囲内にあることが,計算によって確認でき
わち,
この定理によれば,
r
……利潤率の上昇
がその国の工業製品の名目ないし貨幣価格を騰
貴させる効果は,多くの場合において,賃金率
*の位
る。そうして,その計算の過程の中で,t
の上昇がもたらす効果に劣らないほどであり,
5
.
9
9
5のほうに大きく片寄っていることが
置は 1
そうして,一部の場合には,それを上回ること
推測されたので,われわれはこの場合の P の
さえもある」のであるから,われわれの数値例
における第四段階以上の製品は,
値を
件(
0
.,
1O
.1
)
与1
5
.
9
9
5
と表示することにしたし、。
そうすると,
く15.995
t
なる tについて,
Pt
rくPtW
が成立し,また,
1
5
.
9
9
5くt
なる tについて,
Ptr>P
tW
この定理にお
ける「一部の場合」に相当するのであり,そう
5段階以下の製品であっても , Ptγ が
して, 第1
PtW をあまり大幅に下回ることのない場合に
は,この定理における「多くの場合」に該当し
うるのである。この「多くの場合」に該当しう
る商品の製造段階数 t について具体的なあり
ょうを見る一助として,第 1表 を 作 成 し て み
た。この表の左端の tの欄に製造段階の数を 1
から 2
0まで表示してある。その次の ,
.
!
fP什の欄
には,賃金支払額 W を当初の 1
0
0ポンドの水準
に固定したままで,
利潤率 r を当初の水準の
が成立するのでなくてはならない。それゆえ,
0
.
1から 0
.
1
1まで 1
0パーセントの上昇率で上昇
0パーセントであって,そ
利潤率の水準が当初 1
させた場合における各段階の製品の名目価値額
0パーセントの上昇率で上昇した
れがそこから 1
Pt
r を英貨ポンドで表示した数字が掲げられて
場合に,商品の名目価格の上昇となって現われ
.
!
fPtW の欄には,利
いる。さらにその右側の ,
る効果が,利潤率を当初の水準に据え置いたま
.1
に固定したままで,賃金率
潤率 r を当初の O
0パーセントの上昇率で上昇させ
まで賃金率を 1
を当初の 2
0ペンスの水準から 22ペンスへと 1
0パ
た場合の効果を上回るのは,その商品が製造過
ーセントの上昇率で上昇させた結果として,賃
程の第 1
6段階以上の製品である場合にかぎられ
0
0ポンドから 1
1
0ポンドへと増
金支払額 W が1
るわけで、ある。われわれの数値例では,たまた
加した場合における各段階の製品の名目価値額
0ペンスになっているけれ
ま,当初の賃金率が 2
Ptw をポンドを単位として表示する数字が掲
ども,そのこと自体は,第1
6
段階以上という条
げられである。
件に影響を与えはしないことは,t
*が W の水
.
!
fP印の欄の数字と ,
.
!
fPtwの欄のそれ
いま , ,
準に依存していないことから明らかであろう。
を比較すると,段階数 tの進行につれて両者と
賃金率の当初の水準が何ペンスであろうとも,
も単調に増加し続けているが,
0パーセントであるならば,上
その上昇率さえ 1
5段階までの各段階において
階から第 1
しかし,第 1段
.EP
t
r
1
9
8
8
.3
1
5
9(
5
9
9
)
ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について 帥 白 井
の欄の数字よりもその右側の ,
E
:Ptw の 欄 の 数
までは差額 ,
E
:(
P
t- P
) の絶対値が増加傾向
tW
字のほうが大きくなっているのに対して,第 16
を示しているのに対して,後半の第1
0段階から
段階以後では,その大小関係が逆転して,前者
第 15段階にいたるまでの過程では,その絶対値
のほうが後者よりも大きくなっていることがわ
が減少傾向を示していることである。
カ
ミ
る
。
グ
ついでは,第 15段階と第 16段階の聞の飛躍し
その大小関係の変化は,
その次の.E, (
P
t
r
ている部分について,かりに
tの値を実数の範
-PtW) の欄に掲げられている ,
E
.Pt
E
:Pt
W
rと ,
囲にまで拡張して議論を進めるならば,すでに
との差額に付けられであるマイナス記号の有無
方程式 (3) の解を検討した結果から,その区
に現われている。すなわち,その欄の第 1段階
間内の
から第 15段階までの数字はマイナスの値である
ゆ(
0
.,
1O
.1)ー15.995
のに対して,第 16段階以後ではすべての数字が
の点にいたるまでは,差額 ,
E
: (P
tr-PtW) の絶
プラスに転じていることが,その現われであ
対値は減少を続け, (
0
.,
1 O
.1)の点でゼロに
る
。
達するわけである。そうして,
,
E
: (Prt-PtW) の欄の数字の動きについて二
つの顕著な特徴が観察されることに注意しよ
o
この点を境にし
て,その差額はプラスの値に転じ, tの増加と
ともに,増加傾向を示すであろう。
う。その一つは,マイナス記号の付いている数
いま一つの顕著な特徴は,第 16段階以後の過
字の動きで,その前半の第 1段階から第 1
0段階
程において,プラスの値をとる差額が急速に速
第 1表利潤率と賃金率とがそれぞれ 1
0パーセント上昇するこつの場合に
第 t段階の製品の名目価値額に及ぶ効果の比較〈その1)
(W=100,r=O.,
l 日=
0
.1
)
aP
t
r
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1
0
1
1
1
2
1
3
1
4
1
5
1
6
1
7
1
8
1
9
2
0
1
1
1
.
0
0
2
3
4
.
2
1
3
7
0
.
9
4
5
2
2
.
8
1
6
9
1
.
3
3
8
7
8
.
3
1
1
,
0
8
5
.
9
8
,
13
1
6
.3
6
1
,
5
7
2
.
1
6
,
18
5
6
.
1
2
2
,
1
7
1
.3
6
2
,
5
2
1
.
2
1
2
,
9
0
9
.
5
1
3
,
3
4
0
.
4
9
3
,
8
1
9
.
0
0
4,
3
5
0
.
0
1
4
,
9
3
9
.
6
0
5
,
5
9
3
.
9
9
3
2
0
.
2
3
6,
,
1
2
6
.
5
0
7
aPnv
1
2
1
.
0
0
2
5
4
.1
0
4
0
0
.
5
1
5
6
1
.
5
6
7
3
8
.
7
1
9
3
3
.
6
4
,
1
4
7
.
9
3
1
1
,
3
8
3
.
7
6
1
,
6
4
3
.
1
8
1
,
9
2
8
.
3
8
2,
2
4
2
.
2
5
2
,
5
8
7
.
4
6
2
,
9
6
7
.
2
8
,
3
8
4
.
9
8
3
,
8
4
4
.
5
3
3
4,
3
4
9
.
9
5
4
,
9
0
5
.
9
5
,
5
1
7
.
4
8
5
,
1
9
0
.
2
4
6
,
9
3
0
.
2
8
6
a(Ptr-Ptw)
-10.00
-19.89
-29.57
3
8
.
7
5
-47.38
-55.32
-61.94
-67.40
-71.02
-72.26
-70.89
-66.25
-57.77
-44.48
-25.53
0
.
0
6
3
3
.
6
5
7
6
.
5
1
1
2
9
.
9
9
1
9
6
.
2
2
a(Ptγ -Ptw)
aPtW
-0.083
-0.078
-0.074
一0
.
0
6
9
-0.064
-0.059
-0.054
-0.049
-0.043
-0.037
-0.032
0
.
0
2
6
-0.020
-0.013
0
.
0
0
7
0
.
0
0
0
0
.
0
0
7
0
.
0
1
4
0
.
0
2
0
0
.
0
2
8
1
6
0(
6
0
0
)
度を増しながら,
経
済
いわば「幾何的割合でJ (
i
n
学
37-4
究
研
というのは高すぎるようにも思われて,スミス
g
e
o
m
e
t
r
i
c
a
lp
r
o
p
o
r
t
i
o
n
) 発散的に増大し続
の時代の現実問題にこの定理を適用できる確率
けるものと推測されることである。
が十分な大きさにならないのではなし、かという
さて,当面われわれが問題にしているのは,
疑問の余地が残っていないわけでもなし、。そこ
5段階以前の製品の名目価格について,利潤
第1
で
率の上昇の効果が賃金率の上昇のそれに「劣ら
ることにしよう。
t
* をもう少し小さくさせる事情を検討す
ないほど」であると考えられるものがあるか否
まず,上の数値例の場合における関数秒 の
かであった。上で見たところろよると,差額
点 t
* における偏徴係数の値を計算するため
,
f
: (P
t
r-Ptw) の絶対値が減少傾向に転じた後
に,上掲の関数ゅの偏導関数の公式に所定の
4および第
のいくつかの段階の,たとえば,第 1
数値を代入すると,
1
5段階の製品はその候補として有望で、あろうと
思われる。しかし差額の絶対額の大きさでは
2
1
15
2
並
一 =1
・1
・1
1
o
g
1・1-1
.1
16
X1
a
t
2
多=1.1
(
1
6蜘 1 .1
1
5
.
9
9
5-1)
P
tγ セント下回っているかを示す比率:f, (
5
・
1
.1
(1
6
.
9
9
5x1
.1
11
9
9
5ー 1
)
Ptw)/
,
f
:Ptw を算出して,その数字を第 1表の
右端の欄に掲げたのである。その欄の,たとえ
ば,第 1段階では利潤率上昇の効果は賃金率上
昇の効果を 8
.3パーセント下回っており,そうし
ー-4.896905
5
1
4
止
一=2x1
.1x1
.1
(
1
.1
。
α
問一
あろう。そうして,第 8段階にいたると,それ
.
9パーセント
は 5パーセントの水準を割って, 4
5パーセントとい
う水準は,利潤率および賃金率の上昇率 α=0.1
に達している。いまかりに
に照らして十分に小さいと考えられるという立
1
)
5,
0
.1
(1
6
.
9
9
5X 1
.
1
11
9
9
5
_1
)
ー-0.226617
て,その割合の絶対値は段階数 t の進むにつ
れて,着実に減少していることが観察されるで
l
o
g1
.1
1
ー-0.032261
判定の基準がはっきりしないので,利潤率上昇
の効果 Pt
rが賃金率上昇の効果 Ptwを何パー
叩
凶
を得る。これらの数値にもとづいて,
2
ι
4
.堕型空立与一 1
51
.7
9
1
8
a
r .0
.
0
3
2
2
6
1
と
a
o~ 0.226611 7.0245
三と一一一一一一一一与一
8α0.032261
を計算することができる。
場に立つならば,第 8段階以後の製品の名目価
いまかりに,上に示したわれわれの数値例に
格について,利潤率上昇の及ぼす効果は賃金率
ついて,利潤率 rの当初の水準だけを,これま
上昇の効果に「劣らないほど」であるとするこ
.1
ではなく,
での O
5段階までの製品
とができて,第 8段階から第 1
れに対応して P の水準がどのように変化する
は,<ii(スミスの定理〉の「多くの場合」に該当
かを近似的に計算してみよう。利潤率の変更幅
するということになるであろう。さらに,もっ
1r と表示すると,
を L
と厳格に,その効果の差が 2
.
5パーセント以内で
0
.
1
5に変更した場合に,
なくてはならないという立場をとるならば,第
33dy--151拘 1
8x
O
.0
5
1
3段階から第1
5段階までの製品が「多くの場合」
=7
.5
8
9
5
9
に該当するということになるであろう。
* の水準は,
とし、う値が得られる。それゆえ, t
以上の説明によってくスミスの定理〉が持つ
意味がかなり明らかにされたと思われるが,
し
* の数値が
かし,なお,上の数値例の転換点、 t
ゆ(
0
.
1,
0
.1
)
ー1
5
.
9
9
5
そ
前例の
ゅ(
0
.,
1
.
o1
)
王寺
1
5
.
9
9
5
から約 7
.
5
6
0ほど低下して,
ゅ(
0
.
1
5,0
.1
)ζ8.405
1
9
8
8
.3
賃金基金説の系譜について
ケインズ『一般理論』私注
て,利潤率と賃金率の共通の上昇率 α をこれ
.1
ではなく, 0
.
1
5に変更した場合を考え
までの O
および,
て,その変更幅を dα と表示すると,
.
1x1
.1
5 1
Ptw=100x一1
一 一 一 一 一 x(
.1
5t- 1
)
0
.
1
5
..
8
4
3
.3
3x(
1
.1
5t-1)
xO.05
=0
.3
5
1
2
2
5
と計算される。それゆえ,
この場合の
1
6
1(
6
01)
Ptr =100x
他方,上で検討したわれわれの数値例につい
α
白井
1+0.15x1
.1
0
.
1
5x1
.
1
x{(1+0.15x1
.1
)
1
-I}
1
与7
0
6
.06x(
1
.1
6
5-1
)
に近い水準になると概算することができる。
; d広 一 7附
帥
t
* の水
を得る。
この場合,方程式
.
3
5
1低い
準は,前例よりも約 0
ー
ゅ(
0
.,
1.
o15) 15.644
(
3
) の解 P は
1
0
.
9
3
6
くPく1
0
.
9
3
7
になるものと概算することができる。しかしな
の範囲内にあることが計算によって確認でき
これは前例の場合の f と同じく, 1
5と
0
.
9
3
7のほうに近いと思
る。そうして,それは 1
1
6との中聞に位置するので,くスミスの定理〉
われるので,われわれはこの場合の P の値を
がら,
ゅ(
0
.
1
5, 0
.1
)
与1
0
.
9
3
7
の「一部の場合」にかかわる結果に何の影響も
及ぼさないのである。すなわち,利潤率の上昇
と表示することができる。
の効果が賃金率の上昇の効果を上回るのは,相
こうして,利潤率が当初の水準である 1
5パー
変わらず,第 1
6段階以後の製品についてのみ起
6
.
5パーセントの水準まで 1
0パーセ
セントから 1
こることなのである。
ントの上昇率で上昇した場合に商品の名目価格
より
の上昇となって現われる効果が,利潤率を当初
低い水準の f をもたらす数値例は,前例にお
0パーセン
の水準に据え置いたままで賃金率を 1
ける利潤率の当初の水準を引き上げるだけで,
トの上昇率で上昇させた場合の効果を上回るの
こうして,われわれの求めるところの,
容易に作ることができるのである。しかも,前
は,その商品が製造過程の第 1
1段階以上の製品
例の r
=O.l という数値は,スミスが第 I編第
である場合にかぎられるのである。前の数値例
K章のパラグラフ (
2
2
) で述べているように,
にくらべると,<スミスの定理〉の中の「一部の
当時の大ブリテンの商人たちにとって「穏当な
場合」に該当する最低限の段階数は 1
6から 1
1ま
利潤Jなのであった O 彼らが植民地貿易の独占
で
の,恩恵を十分に享受することができた北アメリ
5段階ほど低下している。
ところで,
0段階以下の製品の
この場合,第 1
カ植民地との貿易における利潤率は,明らかに,
うち,くスミスの定理〉の中の「多くの場合」に
それよりももっと高いものであったで、あろう。
該当するものを見るために,それぞれの段階に
そのような場合があったことを念頭におくと
γ
おける Pt
と PtW の値を比較してみよう。
き, r
=0.15 とする数値例もけっして現実離れ
したものとは思われないであろう。
第 2表の構成は第 1表のそれとまったく同じ
である。われわれは,直ちに,その表の左端か
そこで,以下では
ら第 4番目の E(
P
t
γ
PtW) の欄に目を向ける
W=100 1
r=
0.15 (
α=0.1 )
0段階
ことにしよう。その欄の第 1段階から第 1
までのマイナス記号のついている数字の動き方
の顕著な特徴として,それらの数字の絶対値が
の場合について,計算を進めてみよう。まず,
上昇傾向を示す前半過程には第 1段階から第 7
方程式(1)および (2) にこれらの数値を代
段階まで七つの段階があるのに対して,それら
入すると,
の数字の絶対値が低下傾向を示す後半過程には
1
6
2(
6
0
2
)
37
・4
経済学研究
第 7段階から第1
0段階までわずか四つの段階し
いま,たとえば,利潤率と賃金率の共通の上
かないことが注目される。それらの数字がすべ
昇率 α=0.1の半分にあたる 5パーセントとい
てマイナスの値であることを顧慮すれば,それ
う割合を基準にして,利潤率の上昇が製品の名
らの数字は前半過程において低下し,後半過程
目価値額に及ぼす効果 Pt
r が,賃金率上昇の
において上昇していることになる。そうして,
効果 PtW の 5パーセント以内におさまる製品
前半の低下過程よりも後半の上昇過程に要する
0段階
の製造段階 tを見ると,第 6段階から第 1
段階数が少なくなっているということは,
この
差額を上昇させる力が尻上りに増大しているこ
の製品が該当することが,
この欄の数字からわ
かるであろう。
1段階
とを意味するのである。その傾向は,第 1
スミスが第 I編第lX章のパラグラフ (
2
4
)で
以後もそのまま続いて,プラスの数字の動きに
述べているリンネル製品の事例について,かり
r
複利」
に亜麻糸で最初に織り上げられた粗布を第 3段
は,いわば「幾何的割合で J
,あるいは,
的に増加する傾向が明瞭に顕われるのである。
階の製品であると想定しでも,その粗布を漂白
0段階以下の数字に白を戻すと,
ところで,第 1
し,つや出しをして,さらに布目をそろえる等
どの数字までを比較的小さいものと判定してい
の諸段階を経た亜麻布は容易に第 6段階の製品
いかが,第 1表の場合以上にわかり難いので,
になるであろう。ましてや,それ以上の製造段
右端の:f:(
P
tγ -Ptw)/:
f
:Ptwの欄を見ることに
階を経て,たとえば,北アメリカの植民地の市
しよう。
場に出されるリンネノレ製品は,上掲のくスミス
第 2表 利 i
間率と賃金率とがそれぞれ1
0パーセント上昇する二つの場合に
第 t段階の製品の名目価値額に及ぶ効果の比較(その 2)
(W=100,r
=
0
.
1
5,α=0.1)
aPtr
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2
3
4
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-28.93
-37.08
-43.80
-48.22
-49.52
-46.67
-38.35
-22.89
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7
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aPtJv
-0.079
-0.073
-0.066
-0.059
-0.051
-0.044
-0.035
-0.027
-0.018
-0.009
0
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8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注
賃金基金説の系譜について
帥白井
1
6
3(
6
0
3
)
の定理〉の,すくなくとも, I
多くの場合」に該
てリカードの『経済学と課税の原理 ~86) を紹介
当し,さらには, I
一部の場合」に相当しうるこ
するときに,立ち入って論じる機会があると思
とも十分に考えられるであろう。
われるので,
以上の議論によって,
Ii国富論』第 I編第医
ここではこれ以上述べない。しか
しながら,本稿の冒頭で触れた,<:古典派〉の体
章「ストックの利潤について jのパラグラフ (
2
3
)
系をく生産関数〉の視点から解釈しようとする
に述べられている命題と,パラグラフ (
2
4
)の
現代の試みのほとんどのものが,スミスとリカ
第 2センテンス以下で述べられている論証が,
ードの体系を,固定資本の存在しない流動資本
けっして「誤った議論J (
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sa
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-
モデルとして特徴づけようとしているのであ
gument) でないことは明白になったと思う。
る。われわれは,すでに,スミスの「初期未開
利潤率の上昇は商品の名目価格の上昇に意外に
状態の社会」における投下労働価値説の議論が
大きな貢献をするものであるということを論証
一種のレトリックであり,それを『国富論』に
するさいに,スミスが固定資本の利潤を捨象し
本来的な価値の理論と看倣すのは誤りであると
て,流動資本の利潤をもっぱら論じたことは,
論じてきた。そうして,それと同じように,そ
キャナンの作成したモデルに明示されている通
の第 I編第 K章のパラグラフ (
2
4
) における,
りであるが,
しかし, このことはスミスの利潤
いわゆる「流動資本モデル」の議論もまた,一
の理論が固定資本の存在を考慮していないとい
種のレトリックであることを指摘したのであ
うことを意味しはしな L、。もしも固定資本の存
2
4
) の議論を根拠
る。それゆえ,パラグラフ (
在がスミスの命題の成立を妨げる重大な事情が
として,スミスの利潤の理論が本質的に「流動
予想されたとしたならば,そうして,その場合
資本モデル」であると断ずることが誤りである
でさえもその命題を論証することにスミスが意
のは言うまでもないであろう。
味を認めたとしたならば,おそらく彼は固定資
本の存在をその命題の論証の中にとりいれて論
LIV
じたことであろう。しかし,固定資本の存在が
スミスの命題の成立を妨げると思われる格別の
われわれは前稿と本稿の 2回にわたって,
事情がなく,あるいは,むしろ,その命題の成
『国富論』第 I編第 K章「ストックの利潤につ
立を助長する事情が容易に予想されるとするな
いて Jにおける若干の問題点を検討してきたが,
らば,議論の簡明化の一つの手段として,固定
それらのうち,
資本の利潤率を捨象した論証を行なうことは一
の陳述からマルサスが大きな影響を,
種のレトリックとして許容されるであろう。そ
うして,
じっさい,固定資本の利潤率がその資
本について将来見込まれる予想利潤の系列を現
在の価値に割りヲ│く割引率として決定されると
いう事情と,さらに,利潤率の上昇は複利的な
この章のパラグラフ (
l
l
)と(
1
2
)
しかも,
彼の『人口論』初版 (
1
7
9
8年)の刊行以前の時
期に,受けたであろうと推測されると述べた点
に,いま少し説明を加えて本稿を結ぶことにし
たい。というのは,上で論じたその章のパラグ
ラフ (
2
4
) の中に見られる「その商品の価格の
うち賃金に帰着する部分は,その製造のさまざ
累積過程を通じて商品の名目価格に意外に大き
まな諸段階のすべてを通じて,賃金のこの上昇
な効果を与えるものであるというスミスの議論
分 に 対 し て 算 術 的 割 合 で ( in arithmetical
の構造とを合わせ考えると,固定資本の利潤率
の存在はスミスの命題の成立を妨げるよりも,
むしろ助長する方向に作用するであろうことが
容易に予想されるのである。この問題は,やが
8
6
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37-4
経済学研究
w
人口論五の初版の原文が
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n
) しか上昇しないであろう。しか
者の注釈に加えて
し…ーその商品の締格のうち利潤に帰着する
再録されているが,編者の註釈のページ番号は
部分は,その製造のさまざ支な諸段構の
イタリック体のアラビア数字で表示されてい
じて,利調のこの上昇分に対して幾何的援
る
。
リグリーの「序論 j は合計76
個のパラグラブ
合で (
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) 上昇する
ことであろう j というスミスの諌述が,
スの
γ
ノ
レ
サ
F
人口論Jの初版の中の余りにも有名
から成る長文であるので,引用に先立つて,
次の形でその内容織成を示しておこう。
F
人口は,抑制されないときには,幾倒的比率
r
マノレサス全集J編者 Pグ p…の「序論j
で増大する。生存資料は算術的比率マしか増大
内容尽次
しなしづくP
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)Bη という文句を, われわれに容易に殺
させるからである O
ジョン・メイナード・ケインズ ;
/
;
γ ノレサスの
『人口論』について
I
最初のコニッセイは方法
において先験的かつ哲学的である(のに対して)
…その後の諾援では政治哲学 (
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) が経済学 (
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leconomy) にそ
日
!iI.まえがき
パラグラブ
(1) と (2
,
)
p
p
.
.7
8
.
き2
. 編 集 方 針 パ ラ グ ラ ブ (3) から (
2
0
)
;
1
:
で
, pp.8 13
吋
号3
.
γ
ノレサス
パラグラフ (
21)から
(
2
4
) まで, p
p
. 13-15.
~
4
. マルサスの思想:その性格と背;綾 4ラ
グヅフ (
2
5
) から (
7
6
)ま
で
、
, pp.15ω39.
ノ
の燃をゆずり j と述べることによって,あたか
も?閣官論3の影響が『人口論J初版よりも
になって現われているかのような印象を作り出
していることについては,すでに前稿において
指摘したところであるが,この点について,ケ
インズ以後,今日の研究者たちはどのよう
えているので為ろうか。その代表的な倒とし
て,最近刊行されたトマノレ十ス全然Jの第 I巻
の巻頭にある芯 A
. ザグリーの議いた「序
論 jW) と
,
そうして, D
. スーデンの手になる
I巻への序j90) に莞られる諌述な以下に紹
介する。この T
全集』の第 i宅金には, これら繍
8
7
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.9
.
88) 書官稔ヌド諒察37滋第 3~人予. 9
2(
4
3
0
)
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.7
-39.
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9
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) D註v
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.,
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p
.77-79.
リグヲーは次のように述べている O
(1) Ij:lパート・マ/レサスの公刊された作
品は,これまで→つの全集の中で科用ずること
ができなかった。授の著名ざと広 L、影響とに照
ら し て , 彼 の 設 後 か ら 畿 の 築3が完全な形
で初めて刊されるまでに 1
5
0年を越える歳月
が龍れたということは驚きであるが, しかし,
省話番されてきたものがここで後売されるの
しいことである c この序論ムそれに付路する
詮釈類は,この金露の性質を説明し,そうして,
マルサス自身につし、て,後の知的関心について,
;
1
:
f
;
こ,按にかんする著作物について,
十分な情
報告ど提供し彼の作品役研究するための文脈を
用意しそうしてまた,読者をしてもっと進ん
だ興味ある詩論語の逃究を可能ならしめようと
意関するものである。j91)
(4) I
W人口論Jの初版と第 2
J
肢には非常に
類似性が少ないので,たとえ後者が街者の拡充
と洗練の所度であり,そうして,荷者に共通す
9
1
) 必i
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.
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.久
1
9
8
8
.3
ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について
帥白井
1
6
5(
6
0
5
)
る文章が若干存在するとしても,なお両者は別
れは強い印象を生み出した。そうして,
個の作品と看倣してよいであろう。第 2版は初
論』の初版は非常に読みやすく,また,かなり
版のほとんど 4倍の長さになって,
この二つの
短いものであったので,そうして,彼のその他
版の聞に経過した 5年間にマルサスが行なった
の作品は大部分が閲覧上困難なものであったの
読書と旅行によって彼の見解が修正された跡を
に対して,それは印刷され続けて入手可能なも
映し出したのである。…… J
のであったので,それ以後の彼の見解がどのよ
92
)
(
21
) I
マルサスの生涯は
~人口
うに受け取られるかを大きく決定したのであ
1
8世紀と 1
9世紀
とに等分されるものであった。彼は 1
7
6
6年に生
8
3
4年に亡くなったのである。
まれ,そうして, 1
8
0
4年に結婚し,彼の妻ハリエット・エッ
彼は 1
H
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, 1
8
0
4年
,
カーサール (
図的に論争をいどむパンフレ γ トの形を取った
1
8
0
6年,および 1
8
0
7年に彼の子を産んだ。ジー
ものであったから,彼がその後に書いたものが
ザス・カレッジ(ケムブリッジ大学)の学部学
『人口論』の初版とは,強調点と洗練度とにおい
生として彼は数学を専攻し,それについて彼の
て異るものになったのも驚くにはあたらな
能力は彼の学年 (
1
7
8
8年)の第 9位優等生 (
t
h
e
し
、0
n
i
n
t
h wrangler) に な る ほ ど の も の で あ っ
1798年に『人口論』の初版が刊行され
た 。 …"
たことは,
た直後,彼は有名な,そうして,議論の的にな
の未来の展望にかんする彼の当初の悲観論から
93)
る人物となっていたのである。…一 J
(
3
3
)I
マノレサスは 1
7
9
9年 に ノ ル ウ ェ ー と ス
る。彼の最初の思想は,彼が説明しているよう
に,彼がまだ大きな蔵書を使用する機会を持っ
ていなかったときに,長い,問題提起的で,意
J
・
・
・
・
・
・ 95)
(
3
6
)I
知識を拡充し,そうして,考察を深め
しかしながら,マルサスを貧民たち
しだいに離れさせることになったのである。そ
うして,彼の成熟した見解は,古典派の経済学
エーデンを広しそうして,フィンランドとロ
者ーたちのなかの他の二人の偉大な人物のいずれ
シアのバノレティック海沿岸地方をそれよりもは
よりも楽観的になった。アダム・スミスはその
るかにわずかながら,旅行した。そうして,
く労働の賃金について〉の章において,二つの
1
8
0
2年にはフランスとスイスを訪れた。最初の
ことを明らかにした。すなわち,彼は実質賃金
旅行は,すくなくともその一部は,経済系と人
が 1世帯を養うのに必要な最低限度よりも大き
口系の機能様式,および,それらの相互作用に
いと信じていたこと,そうして,彼は実質賃金
ついて,彼の知識を拡充する目的をもって行な
が過去 1世紀聞にかなり上昇してきていると考
われたのであり,そうして
た
,
2度目の旅行もま
この点において有益なものとなったのであ
えていたことがそれである。しかし,彼はまた,
こうも主張したのである。すなわち,人聞を含
る。『人口論』の初版の公刊と第 2版の執筆と
む,動物のあらゆる種は,生存の諸手段に釣り
の聞に彼が行なった一連の集中的な読書に加え
合って増殖するであろうこと,そうして,社会
て,彼の旅行は『人口論』を構成する諸概念が
が資本の有利な投資のために利用できる機会を
彼の脳裡に初めて浮かんだ時に利用することが
捉えて行くく進歩的な〉状態にあるときに,実
できたよりもはるかに大きな経験的なデータ・
質賃金は,はじめて,上昇しうるということが
パンクに依拠することを可能ならしめたのであ
それである。しかしながら,彼は有利な投資機
る。…… J94)
(
3
4
) I
彼の見解を最初に表明したとき,
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9
3
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. 13-14.
9
4
)I
b
i
d
.,p
.1
4
.
会が限られていると考えていたので,
そ
より幸福
の少ない時がより楽しみの多い日々に取って代
わることが予想されていたのである。労働する
9
5
)I
b
i
d
.,p
. 19.
1
6
6(
6
0
6
)
37-4
経済学級究
ちにとって未来は長鰐的展望の中で、は,
勇気づけられるようなものではなかった。J96)
はわ「リカードふ
ア〆ム・スミスと!可様
加えて,
言グリーの論証悶体にも疑鵠の余地が
ある。こうして, ザマノレサスの思想のこのような
性格規定自体には,われわれの関心は向けられ
に,最低舞金を設定するさいに,社会的踏襲の
ない C われわれの関心は,パラグラブ (
3
8
)の
影響が及ぶことを認識し……,そうして,それ
末尾の傍点を付しである文家で,
リグりーが
ヨ 一 口 γ パの社会における貰金水準が
『人口論Jの初抜と第 2版の大きな相違の擦問
生活を維持するための必要最低課愛まで最下す
を,両者の聞に経過した 6年間のマノレサスの議
ゆえに,
ているところに向けられなくてはなら
るであろうとは予想、していなかったのである。
…しかしながら,労鶴者にとって不幸なこと
ない。リグりーは務示的には述べていないけれ
に,収益謹減の法郊の意味するところはこうで
ども,上掲のパラグラフの (4), (
2
2
),および
あった O すなわち,彼の穀物費金は低下する
(
3
4
) の中の,それぞれ傍点を付しである一節
ろうのそうして,重要金の市場本をその鼠然
の様述から,きわめて寄然に示唆されているよ
率よりも高く雑持するのが悶難になるこどによ
うに,マルサスがその 5年務に行なった外冨旅
って,穀物に対する設の支舵カのみならず, ま
行に加えて f
集中的な読書」がその原屈で、ある
た,後の全般的状態も懇北するであろう)>"
J)
と述べているように受け取られるのである。そ
97
(
3
8
)r
r人口論i初版の?ノレサコえはこれと似
た悲観論に霞いていた。そうして,彼の人口の
うして,それよりももっと不務範な所が残るけ
れども,パラグヅフ (
3
6
) の陳述は,そ
原理の義務によって,悲観的見解に有利な反論
スミスの『障言言論Jを読んだこ
不可読な議論であると多くの人々が受け取るこ
とも含まれているかのような印象をそれとなく
とになるものを供与したのである。しかし
与えるように患われる。そうではないとして
ら
,
u'人口論J の初該と第 2践との聞の 5年間
も
,
リグワーの論述はすでに紹介したケインズ?
ι すくなくとも対立するものでないこ
札彼がより多くの経験的情報を惨たことと,
の見解
そうして,経済的ー人ね的実惑の彼自身のモデ
とは明らかでるる。
ルの論理をもっと探く追究する機会を得たこと
次に,ディヴィ
のパラグラフから成る短いものであるが,以下
る原留となったのである d叫
上婦のパラグラフの (
3
6
) から (
3
8
) まで、の
ヲグリ…は『人口論』初肢のマ
ルサスの思想が,スミスとヲカードに劣らず悲
観的性格含有していたのに対して,第 2抜のマ
ノレサスのそれが尚殺のいずれよりも楽観的なも
のになったということを論説しようとしてい
る。思惑ないし学説の性格を悲観的と楽観的に
色分けする便法比経済学史の擦史の中で I
Aく
用いられたことのるるものではあるけれども,
多少とも客観的な議論を忠向ずる者にとっては
有益な方法たりえないと
9
6
)I
b
i
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p
.20-21
.
9の I
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.
,p
.21.
9
8
)I
b
i
d
.,p
p
.21-22.
ド・スーデンの手になる
l巻への序j を見ょう。それはわずか 6個
は,彼に後の分析を大きく……修正し始めざぜ
議論によって,
γ
る。それに
に 3I
{
屈のパラグラフを引揺する。
(3) I
γ ノレサニえのそれ以前のものとして知
られる唯一の作品は, 1
7
9
7
:
年に謬かれたけれど
も長刊、されなかったホイ
γ
グ的なパンブレット
『危機Jであった。そこからの引用は, マノレサ
r
経演学原理』の 1
8
3
6年肢の懇諜に収めら
れている伝記風の追憾の中でコr
"タ…主教によ
スの
って,そうしてまた, 1
8
3
7年のU':::x:.ディンパラ・
レヴュ…』誌に載った書評兼追悼論文の
ムブソンによって行なわれているが,それらの
引用文は人口と経済学の諸問題 (
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nandp
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leconomy)がすでに
マルサスの患考の中に活~活きとしてあったこ
とセ示している。
1
9
88
.3
ケインズ「一般理論』私注
賃金基金説の系譜について
(i)<人口の問題について,私は大執事ペイ
リーに同意することができない。彼は,いかな
帥白井
1
6
7(
6
0
7
)
(5) 1
後年, ~人口論』はかなり大きな改訂
を経ることになった。最も特筆すべきは,
1
陰
る固においても幸福の量は人々の人数によって
欝な」側面 (
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l
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) である積極的
最もよく測られると言う。人口が増加しつつあ
抑制 (
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k
s
), とりわけ飢謹,の作
ることが,一国家の幸福と繁栄の指標として可
用に置かれていた重点が軽くされることになっ
能なもののなかで最も確実なものである。しか
し,現実の人口は過去の幸福の指標でしかない
たのである。もっとも,予防的抑制 (
p
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s
) の,すなわち,道徳的自制 (mo
かもしれない……〉
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) の可能性は 1
7
9
8年にすで、に言及
(
i
i
)<ブリテンの有する唯一の希望は,郷紳
と社会の中産諸階級 (
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司
8
0
3
年の第 2版
されていた(そうして,それは 1
でマノレサス自身が示唆したほどには新味のある
1a
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c
i
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y
) が正気と理性
andmiddlec
ものではまったくなかった)けれども,彼の議
を取り戻すことにかかっている。彼らは,われ
論の中でその後ますます大きな役割を演じるこ
われの憲法に対する反対論の真実性を減少させ
とになったのである。マルサスは,人口が食糧
ることによってその反対論の重味を取り除くと
の供給を凌駕する潜在的能力を持っているとい
いう安全かつ啓蒙的な政策を採るように立法府
う彼の当初からの公理をつねに保持した。そう
に対して影響を及ぼすことができるかもしれな
して,その公理とともに,その傾向の発現を鉄
いからである。:>j99)
a
ni
r
o
nl
a
w
) であるかのように見せるこ
則 (
m人口論』の端緒は,
ロパート・マノレ
とになったあの幾何的および、算術的成長比率の
サスが,小地主であり, また,
ヒュームとノレソ
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e numerical examples o
fg
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o
数値例 (
(4)
ーの一時期の友 (
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) であった
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)を
父親ダニエルと,人聞が完全になる可能性
も,つねに保持したのである 0 ・… .jl0l)
(
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b
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l
i
t
y
) とL、う論題について,
上掲のパラグラフ (3) におけるスーデンの
ウィリアム・ゴドウィンとコンドルセ侯爵の出
陳述が, ケインズの人物評伝「ロパート・マル
版物をめぐって交わした論戦にあったと普通に
サス一一最初のケムブリッジ経済学者」叫〉のそ
は考えられている。これらの著者は両者とも
れに大きく影響されていることは,一見して明
に,かなりの成功を収めていたのであった。
らかである 103)。スーデンがそこで引用している
1
7
9
3年から 1
7
9
8年までの聞に,ゴドウィンの『政
治的正義~ (
P
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l
i
t
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c
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lj
u
s
t
i
c
e
) は 3版を重ね,
そうして, コンドルセは 1
7
9
4
年にロベスピエー
である。そのときケインズが,マルサスの『危
機』は 1
1
7
9
6年に書かれた j104) としていること
ルの革命の到達点で、死に直面していたときに,
は,われわれの指摘したところである。スーデ
人聞社会を完全なものにするための諸手段につ
1
7
9
7年に書かれた」としてい
ンは上掲の通り 1
i
) はケインズが引用したもの
マルサスの文章 (
いて著述をしていたのである。ダニエルは彼ら
る。しかしながら,われわれはオッター主教の
を擁護し,
ロパートは彼らに反対して論じた。
手になる「ロパート・マルサスの追憶」の中で
そうして,
限られた読書(li
m
i
t
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dr
e
a
d
i
n
g
)
と,彼の身近な環境と,そうして,彼の宗教的
および政治的信条とを証拠に立てて,
ロパー
ト・マルサスは『人口論』の辛錬な論争的作品
をものしたのである。 jl00)
9
9
)I
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p
.77-78.
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0
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.7
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p
.81-124. e
s
p
.,p
p
.9
7
9
8
.
1
0
3
) 前稿「賃金基金説の系譜について伺」本誌第37
巻
の, とりわけ, p
p
.90 (428)-91 (429)を
第 3号
参照せよ。
1
0
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.9
7
.
1
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6
0
8
)
は
,
37-4
経 済 学 研 究
それが r
1
7
9
7
年頃 J
I
Oむとなっていることを
題 jという誉棄を使うとき,その時期のマルサス
が『韓議論』の研究に深くかかわっていないと
知っているのである。
またスーデンは,その引潮文に先立つ説明文
いう主張の欝わりにならないよう配惑している
で,それがエムプソンのみならず,オッタ
のである。他方,スーデンの「経務学の識障題J
教によっても引用されたものであるかのように
という?誉棄は,当時のイギ Pスの経済学の状態
述べる点でケインズの競述を踏襲しているけれ
らして,マ )
vサスがその時期までに
ども,それがエムプソンの書評兼追悼論文
論 Jの研究に多少とも手当ど染めていたことを意
l時の中に
ノレサス氏のさ色謹,著作, および人物J
味するとも受け取られる。ケインズの言葉競い
しか見出されないものであることも,われわれ
とのこのような違いをス…デンはその後の陳述
はずでに指摘してきた。
によって裏付けているであろうか。
ところで,ケインズはその引用文 (
i
)が f
彼
まず, スーデンがケインズとは独立に付け加
〈マノレサス)の興味がすでオこ経諦学のかかわる
えていると態われる引用文 (
i
i
) を見ることに
社会問題に,そうして,人口問題自体にさえ肉
しよう
o
それは援の脚注の指示するように,ェ
している J (
仕o
Ji
n
d
i
.
ムブソンの「マノレサス氏の生瀧,著作,および
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.479からの引患である o エムプソン
人物Jの p
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l problems o
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裁にな
は,その引用文によって,吋ノレサスが 3
omy
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n the question o
fpopu
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)107) と述べているのに対・して, ス
ったとき日夜は政治問題一一1
7
9
6
年の政治問欝
げられていたこと
糊
司
デンはそれが{人口と経済学の諮問題がすで
から始めた J (He began with p
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l
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s 一一thep
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c
so
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7
9
6
.
)109) ことを論読しようと
じっ浅い,上掲の引用文 (
i
i
)
に γ ノレサスの思考の中に話き活きとしてあった
しているので、ある
h
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tquestions
ことを訴している J(showingt
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fpopulationandp
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l economywere
alreadya
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v
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nMalthus'smind)I
O
B
)と議く
の内容がそのようなものであって,スミスの F
罰
のである。両殺の言葉{吏いの徴妙な相違に注註
しよう。ケインズが f
経済学のかかわる社会問
1
0
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6
9
5
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6
. ちなみに,スーデ γ の腕波には,引用文(i)
c
と緊密なかかわりのあることを何も
していないのは努自であろう。
次に,上掲のパラグラフ
(
4
) を見ることに
しよう。その陳述は,ロパート・マノレサスが設の
権威をも後楯とすることなしに,単身でゴドウ
ィンとコンドルセの権威に対抗しているかのよ
鱒
. 480 e.指示しているが, それは p
.
の所在を p
8
4
2 の誤槌である。 M
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,
p.78
拡を見よ。
1
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後の身近な環境
ι そうして,設の宗教的
および政治的信条とを証拠に立てて J (
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stances around him
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t
i
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l belongs,
)110) とスーデンが述べ
るとき,その「限られた読議j の中に
の研究を彼が含めて考えているとはとうてい思
われな L、。われわれには,むしろ,マ/レサスが
i
f
J;m寓論』を集中的に研究するようになったの
は『人口論J初}涯の刊行以後のことであると示
1
0
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人 p
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‘
尚弁
1
6
9(
6
0
9
)
E
をするヲグリーと同じ立場に,スーデ、ンも
は初版本のそれであって,
第!巻のも
ているように思われるのである。
ので、はないこと
1
9
8
8
.3
ケインズ F
一般護主総 3私設
帥
賃金基金裁の 2
義務について
J
ニ掲のバラグラフ (5) においてス
ーデンは, u
人口論J の初版とそれ以後の諮版
最後に,
しておく O
第I.績は26
個のパラグラフから成る。もっと
も
,
そのうち,われわれがパラグラブ
(
1
4
),
との簡の結違が主として強調点の移者にJiられ
(
1
5
),および (
1
6
) としているものは,それぞ
ること,そうして,それに対して,マノレサスの
れ単一の文章だけから成るのであるが,それら
「当初からの公理j と,それに付翻する「幾何
の詑つの文章を合わせて一つのパラグラフと署
的および算術的成長比率の数館側J とが,すべ
倣すことも可能である。その場合には,第 i
ての版を議じてつねに保持されることを指摘し
は2
4
個のパラグラブから織成されることにな
ている O もしもマルサスの初版以諮の「幾られ
り,パラグラフ (
2
4
) 以後のパラグラフ
2だけくり上がることになるであろう o
のやにスミスの
まれていなかったとしたなら,そうして,初販
刊行後の 5年間の「集中的な読霧J (すグリ-)
の中の特さますベ
るとしたならば,
として『隠富論』が挙げ
γ
マルサス f
人口論』初鰹
第 1霊堂の内容信次
ノレサスが「幾何的およ
び算術的成長比率の数値鰐Jを作成するについ
て,意識的にせよ,無索、識的にせよ,
u
撞富論』
の影響のもとにあったことな,ス…デンは否定
き1
. 問題の提示 (
Q
u
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ns
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a
t
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d
) 一一パ
ヅグラフ(1) と
していることになるであろう O しかしながら,
マノレサスが『際議論』の, とりわけ第 i編の第
溜章「労舗の賃金について」のみならず,第lX
章「ストッグの利潤について」から,比較的早
い時期に深く影響されているのではなし、かとい
(
2
)0 p
p
.1
ω
3
.
喜2
. 対立する当事者たちの議文意から,その間
られる見込みはほとんどな
いこと (
L
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l
ep
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opposingp
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s
) 一一パラグラブ (3)
から (
8) ま
で
、op
p
.3
6
.
うことを予感さぜる箇所在,われわれはすで・に
き3
. 人簡が,そうして,社会が宛全になる可
これらの殺のやにいくつか見取してきたのであ
能性に反対する主要な議論は, これまで正
る
。
当な応答な受けたことがない (Thep
r
i
n
楕
こうして,蓋接に,
u
人口論』初肢の中のマノレ
サス自身の陳述をど検討することが,われわれの
進むべき方向であるだろう。しかし,本橋では
c
i
p
a
l argument a
g
a
i
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ep
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f
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.
b
i
l
i
t
yo
fmanando
fs
o
c
i
e
t
yhasnever
been f
a
i
r
l
y answered) 一一パラグラフ
巴
下では,その第 i章と第立重量の中から若ギの証
(
9
) から (
1
3
) まで o p
p
.6
1
1
.
喜4
. 人口から生じる困難の性質 CNatureof
拠を拾い出すにとどめることにする。部分的な
t
h
ed
i
f
五c
u
l
t
ya
r
i
s
i
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gfromp
o
p
u
l
a
t
i
o
n
)
もはや十全な検討を行なう余携がないので,以
号
[
J
l
l
を
r
rなうに先立ち,それぞれの殺の全体的
構成を,調によって,内容お次の作成を適じて
眺め,引用部分の位置を確認する一助にしよ
う。『人口論』臼体の釘次とそを家の腎議には,そ
れぞれマルサスの予になる小見出しが提示され
ているので,われわれは,それらの小晃出しに
一 一 パ ラ グ ラ フ な の か ら は0
) までo
p
p
.1
1
1
4
.
i
!5
. 本蓄の主要な議論の援賂 (Ou
t
1
ine o
f
部 a
y
)
thep
r
i
n
c
i
p
a
largumento
ft
h
ee
…ーパラグラフ (
2
1
) から (
2
6
) まで o
p
p
.1
4
1
7
.
パラグラフ番号と所桟ページ番号念添えること
にする。なお,以下,本文中で示すベー
この主主の中の最も重要な証拠はき 3に含まれ
1
7
0(
6
1
0
)
経済学研究
るパラグラブ (
1
1
)
る。それが置かれてい
る文脈をもう少しはっきりさぜるためにパラ
37-4
の原理J~ピ人口問題以外の議題と
たのでなくてはなるま L、。とするならば,それ
グラブ(12
) の前半部分会訴えて,以下に掲げ
は『国護論 j 第 i編務次章「ストックの利潤に
ることにしよう G
ついて」の末患のパラグラフ
(
2
4
) における
(
1
1
)I
私が以下に提示するであろうところ
の最も援要な議論は確かに,新しいものでは
f
その商品の倒格のうち賃金に帰着する部分
ない。その議議が依拠する原理はヒ品ームに
は,その製造のさまざまな諸設階のすべてを遥
よってある程度まで,そうして,アダム・スミ
じて,賃金のこの上昇分に対して算術的訴合で
ス博士によってもっと詳繭に説拐されたことが
(
ina
r
i
t
h
m
e
t
i
c
a
lp
r
o
p
o
r
t
i
o
n
) しか上昇しな
ある。その原理比ヌド害警の主題に対しては,ぞ
いであろう。しかし,……その商品の億絡のう
れに妥当する比重を援くことも,あるいは,
ち利絡に帰着する部分は,その製造のさまざま
も強力な論点として述べることもなされたわけ
な諸段階のすべてな通 ζて,持i
捕のこの増加分
ではないけれども, ウォ…レス氏によって提唱
に対して幾何的難合で C
i
ng
e
o
m
e
t
r
i
c
a
l pro
かっ適用されたことがある。そうして,おそら
p
o
r
t
i
o
n
)
糊
ることであろう J112!
く,その際理は私の知見にとまったことのない
多数の著述家たちによっても述べられたことが
という議論の根底に横たわる原理念指すものと
あるかもしれなし、。それゆえ,私は,もしもこ
受け怒ることもできるであろう。そうして,
の議論が正当に,かつ,申し分なく論駁されて
節の関原で引用した?ノレサスの有名な文句は,
いたとしたならば,たとえ私のこれまで、見てき
たどの議論ともある程度異なる観点からそれそ
第 i 章の~
4を締めくくるパラグラ
ブ (
2
0
) の全文であったのである。すなわち,
r
述べることになるとしても,私はそれてどここで
(
2
0
) 人口は,抑制されないときには,幾何
しようなどとは確かに,考えもし
的辻率で(in a g
e
o
m
e
t
r
i
c
a
lr
a
t
i
o
) 増大す
なかったであろう
o
J(
p
. 8
)
(
1
2
)I
人鎖が完全になる可能1
設を唱える人
人がこ
向けない理白域,
る。生存資料は算術的比率(in an a
r
i
t
h
m
e
p
.1
4
)113)
t
i
c
a
lr
a
t
i
o
) でしか;橋大しない。J(
しかしながら,われわれの当讃の関心比そ
説明のつくことではな L、。ゴドウィンやコンド
の原理が何であるかを限定することにではなく
ルセのような人物の才能を疑うことなど私にで
て,マルサスが『人口
きるはずもない。 被らの知的誠実さセ疑うつ&
て『悶富論』
りも私にはない。…… J (
p
p
.8
9
)111)
いうことに向けられているのである O そこで第
の初震の執筆におい
く受けているか否かと
上掲のパラグラフ (
1
1
) の中で,マルサスが,
立主震を見ることにしよう。第 i章の場合と時じ
f
その議論が依拠する原斑は,……アダム・ス
要領で,その内容目次を作ると次のようにな
ミス博士によってもっと詳細に説明されたこと
るO
がある j と連べるとき, I
その……壊現j という
言薬でi
'
JJtは何を意味しているのであったろう
マノレサス『人口論J初寂
か。それを「木議の i
巨額ムすなわち人口問題に
E震の内容傍次
適爵したのはウォーレスであるとマノレザスがわ
ざ新わっていることを見るムスミスはf
そ
1
1
1
) これらのベージ番号も初版本のものである。『念
務Jの参照箇所は次の j
議ちである。 M
a
l
t
h
u九
orks
,vol
.1
,p
.7
.
防T
~1.
る上七率で人口と食事量は増加すること
(Thed
i
f
f
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r
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t
i
o
si
nwhichpopu・
1
1
2
)S
m
i
t
h,o
p
.c
i
t
.
,p
.9
9
.
1
1
3
) 主主設l
t
h
u
s,o
p
.c
i
t
.,p
.9
.
1
9
8
8
.3
~
~
ケインズ
F一般理重量主主総主主
主翼金基金畿の系識について
l
a
t
i
o
nandf
o
o
di
n
c
r
e
a
s
e
)一一叩パラ〆ラ
フ(1)から (
1
2
) 支で o p
p
. 18~23.
2
. これらの呉なる増加の比率の必然的な結
果 (
The n
e
c
e
s
s
a
r
ye
f
f
e
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n
tr
a
t
i
o
so
fi
n
c
r
e
a
s
e
)一一一パラグ
ラフなおから (
1
8
) まで o p
p
.2
3
2
6
.
より低い
3
. それらの結果によっ
諮~皆級の状態の中に
み出される掻
(
O
s
c
i
l
l
a
t
i
o
nproducedbythemi
nt
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l
出 s
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so
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o・
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i
t
i
o
no
ft
h
elowerc
c
i
e
t
y
) 一一守パラグラフ(19
) から (
2
6
)ま
でo p
p
.2
7
3
2
.
帥
ゐ弁
1
7
1(
6
1
1
)
(
7
.
) I
この増加の比率は,
人口の護大限度
増加力には及ばないけれども,
しかし,それは
現実の経験の結果であるので,われわれは,た
とえば,人口が抑制されないときにはお年俸に
2倍になって背く,あるいは,幾倒的比率で
(
i
nag
e
o
m
e
t
r
i
c
a
lr
a
t
i
o
)増加するというこ
とを,われわれの通濯であると惹倣ずことにす
p
p
.20-21)
るであろう。J(
上織のパラグラフ
(
6
) は,われわれがすで
に紹介したことのある『霞議論』第 1舗第淑章
「労織の賃金について」のパラグラフ (
2
3
)の
中のある文章を, きわめて容易に惑い出させて
き4
. この振動が期待されるほど多く毅察され
くれる 11420 スミスはこう述べているのであっ
てこなかった理由 (
R
e
a
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o
n
s why t
h
i
s
o
s
c
i
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v
e
da
smightbee
x
p
e
c
t
e
d
)一一 ミラ
グラブ (
2
わから (
3
2
) iで o p
p
.3
2
3
6
.
i
!5
. 本書の一般的な議論が依存している三つ
Threep
r
o
p
o
s
i
t
i
o
n
s on which
の命題 (
t
h
eg
e
n
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r
a
l argument o
ft
h
ee
s
s
a
y
d
e
p
e
n
d
s
)一一一パラグラフ (
3
3
) から (
3
6
)
まで。 p
p
.3
7
3
8
.
i
!6
. 人類が存在したと知られているさ変ざま
たc
(
2
3
) I
しかし,
ゴヒアメリカはまだイングラ
ンドほどには富んではいないけれども,笛のい
っそうの獲得に向けてはるかに大きな努力を
し,そうして,はるかに急速に成長している。
どの認についても,その繁栄の最も決定的な指
標は,その居住者たちの人数の増加である。大
ブリテン,および,その鎮のほとんどの双ーロ
ヅパ緒習において,人口が 5
00年以内に 2傍に
なることは考えられない。北アメジカの英議植
な状態が, これら三つの命髄に際、らして検
民地では,それは20
年ないし25
年で 2僚になる
Thed
i
f
f
e
r
討されるべきことを提案する (
ことが知られている九現在でも,その増加は,
e
n
ts
t
a
t
e
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n which mankind have
beenknownt
oe
x
i
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o
p
o
s
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dt
ob
e
examined with r
e
f
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ot
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s
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3
7
)
t
h
r
e
ep
r
o
p
o
s
i
t
i
o
n
s
)一一パラグラブ (
のみ。 p
.3
8
.
として新語住者の絶え間ない諸入によるので
はなくて,出生率が高いことによるのであ
る。…… J
l同
ちなみに, このパラグラフの務 2センテンス
は
, ii'人口論Jよりも誌に欝かれ,そして公刊さ
危機Jの
れることのなかった?ルサスの手議 f
まず,この章のき lに 含 ま れ る パ ラ グ ラ ブ
中のケインコぐによって引用され, またスーデン
(6) と(7.)から見ることにしよう。マルサ
も引用している一節(i)を想越させてくれる。
スは次のように述べている。
(6) Iぉ一戸ッパの現代の諸障のどれよりも
投存資料が豊穣であり,人々の生活態震が純真
であり,そうして,その結果,学婚に対する抑
制が少ないアメリカ合衆国では,その人口はお
年毎に 2倍になってをたことが知られている。J
(
p
.2
0
)
きマノレサスがそこで f
人口が増加しつつるる
ことが,一関家の空宇需と繁栄の指標として可能
なもののなかで最も確実なもので為る」と述べ
1
1
4
) 拙稿「笈金基金説の系識について帥J本誌第 3
7
巻
第2
"
き(
1
9
8
7
年 2月
)
, p
p
.1
9
5(
3
3
3
)
ω
1
9
6(
3
3
4
)
を見よ。
1
1
5
) Smith,o
p
.c
i
t
.,p
.7
2
.
1
7
2(
6
1
2
)
3
7
4
経済学研究
たとき,彼はそれをスミスの「どの摘について
と締めくくり,そうして,
も,その繁栄の最も決諮的な議壌は,そ
のである o すなわち,
(
1
3
) iさて,
ちの人数の増加である j という文章に散っ
これらのこつの比率のそれぞ
れの結果を合わせて考えることにしよう斗 (
p
.
たのではないであろうか。
しかしながら,
i2の議論へと進む
ここでわれわれが注践しなく
てはならないものは塑スミスのパラグラブ (
2
3
)
の第 4センテンスである。その文章にはキャナ
2
3
)
(
14
)r
この島の人口は約7
0
0
万人と算定され
ている。そうして,われわれは現在の生廃物が
ンの編者欝在が付げられてあって,次のように
この人数の人々を維持する設に等しくなってい
述べられている。
るものと想定するであろう。最初J
の2
5
年聞に,
il[…
…1
7
0
3
年におけるグァ…ジニアの人口
は6
0
,
0
0
0
人であった。また,
1
7
5
5
年には5
0
0
,
0
0
0
人口は1, 4
0
0
万人になるであろう。そうして,食
もまた z
倍に増加するので,生密資料は人口
人であった。くそれらの数字によって,後らは,
のこの増加分を維持するのに今季しくなるであろ
ほとんど 2
5年毎に 2倍に増加してきたよう
う。その次の 2
5
年間に,
われる〉一一『農業,人民膏易,および製造
るであろう
o
人口は2
,
8
0
0
万人にな
そうして,生存資料は2
,1
0
0
万人を
業にかんする大ヅリテンと北アメリカの現状J
雑持ずる設に等しくしかならないであろう。そ
1
7
6
7
年琵 p
.2
2note。く 1
6
4
3
年にニューイング
ランドに植畏した人々の本来の人数は2
,
10
0
0人
の次の期間には,人口は5
,6
0
0
万人になり,そう
であった。それ以来,絞らから去って持った人
持する震に毒事しくなるであろう。そうして,
人のほうが,被らに加わった人々の数よりも多
初の
して,生存資料はその人口のちょう
1
7
6
0
年には,裁らは5
0
万
1世紀の終末には,人口は 1
1,2
0
0万人にな
り,そうして,生存資料はわずかに 3
,5
0
0
万人会
人に増加していた。それゆえ,後らは,そのき当
維持する量に等しくしかならないであろう G そ
いと記録されてしる。
初から,後ら自身でお年毎に 2倍に増加し続け
うして,そのことは, 7
,7
0
0
万人の人々
ているのである。〉一一寸チヤード・ヅライス
与えないでおくことになるであろうバ
『生命保険金支払額等にかんする考察~
1
7
7
1
p
p
.2
0
4
,2
0
5
. …...Jl16)
キャナンはこの記事によって?スミス
(
p
p
.
2
3
2
4
)
スーテ、ンの言う「あの幾何的および算術的成
長比率の数{菌剤J (
t
h
en
u
m
e
r
i
c
a
l examples
キャナンの推定が殺する蓋然性に劣らぬ緩から
o
fg
e
o
m
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r
i
c and a
r
i
t
h
m
e
t
i
c growth r
a・
t
i
o
s
) の一つは, ここに述べられているの
るo 1
0
0
万人な 1単位とする数で表わすと,人口
しさをもって,われわれはスミス
はお年毎に
くにあたって典識としたと推定され
ることろのものをど示してし、るのであろう O この
ほとんどそのままの形で、踏襲されている重要な
7
,1
4
,2
8
,5
6
,1
1
2
例のーっとして,マルサスの上掲のパラグラブ
と 2倍ずつ増加して行くのに対して,食機の増
(6) の文滋を指示する註釈な加えることがで
加の額向比その食撞で維持することの可能な
きるであろう。
dて
,
γ
ノレサスは『人口論』初肢の第 E
i 1をもう少し続けた後で,それを
(
1
2
)i
それゆえ, 生存資料は算術的比率で
増加すると言ってよいであろう J (
p
. 2
3
)
1
1
6
)I
b
i
d
.,p
.7
2
n
.
2
5
年毎に
2
1
,2
8
,3
5
人数で表わすと,
~
1~
と時間の経過に対して北鍔的にしか増加しない
のである。
いま,時間の経過を tの数簡で表現すること
にして,出発時点を
1
t=O としそうして, 2
5
とすると,上掲のこつの数列
1
9
8
8
.3
ケイ γ ズ『一般理論』私注
賃金基金説の系譜について
の各数値は,それぞれ
1
7
3(
6
1
3
)
帥白井
と,それに対応して,食糧増加の倍率の推移を
0,,
1 2
,3
,4
示す数列
1
,2
,3
,4
,5
,6
,7
,8
,9
,1
0
の時点に所属する。ここで,時点 Oから時点 4
までの聞に,ちょうど 1世紀の経過があること
が得られる。そうして,
は明らかであろう。
サスが『人口論』初版の第 E章のパラグラフ
そこで,それぞれの時点 tにおける人口を,
1
0
0
i
万人を 1単位とする数 N,で表わし,
そう
して,その時点の食糧で維持することのできる
これらの数列は,マル
(
1
7
)
で挙げている,いま一つの数値例にほかならな
し
、
。
4に含まれるパラグラ
フ (
3
0
), (
3
1
),および (
3
2
) にも,われわれの
マルサスのその章の~
1
0
0万人を 1単位とする数 5,で
表わし,最後に2
5年当たりの,すなわち, tの
論点の証拠として,きわめて興味ある陳述が見
1単位当たりの人口の増加率を r と表わすと,
出される。それらのうち,パラグラフ
一般に,
けを引用してみよう。
人数を,同じく
Nt= N
l+
r
)
'
o(
5,
=N
t
+I
)
o(
(
3
0
)だ
(
3
0
)I
労働の名目価格が全般的に低下する
ということは, きわめて稀にしか起こるもので
と書くことができて, これら二つの方程式がパ
はない。しかし,食糧の名目価格がしだいに上
(
1
4
) に与えられているマルサスの数
昇してきているときに,労働の名目価格が同じ
ラグラフ
値倒の一般的表現になる。彼は,当時のブリテ
ままにとどまることヵ:し t
まし t
まあるのは,
ン島の人口が約 7
0
0万人であったことに基づい
知られている。このことは,結局,労働の価格
て
,
の実質的な低下であって,
No=7
よく
このような期聞を通
じて,その社会のより低い諸階級の状態はしだ
という値を想定するとともに,北アメリカの英
いに悪化するにちがし、なし、。しかし,農業者と
領植民地で現実に観察された人口増加率を人口
資本家は労働の実質的な低廉さのおかげで富裕
の潜在的な増加能力の通則と看倣して,それを
になって行く。彼らの増大する資本は彼らをし
大ブリテンの人口にも適用して,
て
,
r=l
より多くの人々を雇用することを可能なら
しめる。それゆえ,仕事は多くなり,そうして,
という値を想定しているのである。これらの数
労働の価格は,その結果として,上昇すること
値を上掲の二つの方程式に代入して,それぞれ
であろう。しかし,労働市場における自由の不
N,と ふ の 値 を t=oから t=4 ま で 求 め れ
1
4
) に示されてい
ば,マノレサスのパラグラフ (
足は,教区条例 (
p
a
r
i
s
hl
a
w
s
)からか,あるい
る数値が得られるであろう。
て,貧者たちの聞ではそれが困難であるという,
また,初期値に対する倍率 N,
J
N。と 5,
j5。
に注目するならば,上の二つの方程式から
より一般的な原因からか,あらゆる地域社会で
多かれ少なかれ起こっていることであるので,
長 =(l+r)t
それは労働の価格が自然的な期間中に上昇する
立=
間にわたって,おそらくは,人々の要求が高ま
(
t十 1
)
が導びかれる。いま,それらについて ,t
=Oか
ら
は,富者たちの聞で団結が容易であり,そうし
t=9 までの値を計算すると,人口増加の倍
率の推移を表わす数列
,
12
,4
,8
,1
6
,3
2,6
4
,1
2
8
,2
5
6
,5
1
2
のを妨げる作用をし,そうして,
もっと長い期
り,必要が明白になって抵抗できなくなる入手
不足の年が来るまでは,労働の価格を低く抑え
続けるのである。J (
p
p
.3
4
3
5
)
このパラグラフの議論の根底に,
第 I編第 v
m章のパラグラフ
w国富論』
(
1
8
) に述べられて
1
7
4(
6
1
4
)
37-4
経 済 学 研 究
あるスミスの「賃金基金説」と同じ原理が横た
を示唆する証拠を提示することは, さほど困難
わっていることは,
なことではないのである。(この項続く)
とりわけ,われわれが傍点
を付しておいた文章を見るとき,明白であ
人口論』の初版を執筆して
る
。 117)このように, w
〔追記〕
p
o
l
i
t
i
c
a
leCOllいた時期のマルサスが,経済学 (
ついては,拙稿「サー・ジョン・ヒッグスとく古典派
経済学 >J‘
(S
i
rJ
ohnHicksandt
h
e“
C
l
a
s
s
i
c
s
",
)
'
omy) にかんする相当の素養を,
それもスミ
スの『国富論』の注意深い読書からはじめて得
られる類の素養を身につけていたであろうこと
1
1
7
) 拙稿「賃金基金説の系譜について帥」本誌第3
7
巻
第 2号 (
1
9
8
7
年 9月
)
, p
p
.1
8
3(
3
2
1
)
1
8
9(
3
2
7
)
の議論を見よ。
本稿の脚注 9) の末尾で示唆されている点、に
『経済研究~ (大阪府立大学〉第3
3
巻第 2号
3月
)
, p
p
.2
3
6
3,を参照せよ。
(
1
9
8
8年
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