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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University

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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University
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血液循環モデルを用いた“定常流V-Aバイパス法”の効
果の検討
梅津, 光生
東京女子医科大学雑誌, 49(2):167-182, 1979
http://hdl.handle.net/10470/3722
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
87
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' VenodeArterial Bypass Method" by the
Effects of "Nondpulsatile
' of the Cardiovascular Simulator ' '
use
'
'
Mitsue U]NCEEZU
'
Visiting Fellow, Department of lst Surgery (Pro£ Juro WADA) Heart Institute ofJapan,
t tt tt '
. . Tokyo Women's 'Medical Co}lege
'
'
'
Department of Mechanical Engineering (Pro£ Kiichi TSUCHIYA) Faculty of Science and
Engineering, Waseda University
'
To make the cardiac function recover from the postoperative failure state, Veno-Arteriai Bypass
method (V-A Bypass) with non--pulsatile '(roller) pump is often applied for the weaning period from
the extracorporeal circulatory stage. However, there remain several questions, especially concerning
the most eflective flow and reasonable pressure control and its applicable limitations. The author
aimed to solve them from the viewpoint of fluid control engineering by the use of simulation method.
At first, a mathernatical model of cardiovascular system was induced from the engineering
analysis of the circulatory one. The model was composed of lumped elements (capacitance elements),
each of which was serially connected with resistance element, respectively. 'With digital computer,
changes of flow rate and blood pressure in any section were calcu}ated and successively printed out.
System parameters were determined from physiological, anatomical and clinical data. On the basis
of the mathematical model, mechanical simulator was developed. This was a closed fluid-dynamic
system composed of 2 artificial heart (right and left heart), 7 elastic tubes (vascular vessels) and 7
piston cylinders (capillary resistances). With those models various heart failure states were simulated,
and operating the conditions of V-A bypass, hemodynamics in each section of the model in each
"heart" state were obtained.
The findings from the simulation data were as foIIows;
1) "Non-pulsatile V-A bypass" was effective to the right heart failure.
2) However, for the left heart failure such effectiveness was not always expected, except whefi the
heart had well preserved the cardiac contraction.
3) In the latter case, supporting l/3-1!2 bypass flow'of the cardiac output from the fallure heart,
left atrial pressure went down and mean aortic pressure rose; its contractility recovered and cardiac
output and total tissue flow tended to increase.
-・167-
88
4) In severe case,‘‘non−pulsatile V−A bypass,, rather gave all overload to the left heart・The
data suggest that this method has亡he limit ill applicadon長)r the亀ilure heart and especially fbr
severe cases some other assisting method should be adopted.
Various changes in parameter of these simulation data had been compared to those of the exper。
imental animal data and it was丑〕und that these two showed high resemblallce to each other, Fro皿
these data, it was proved that this simulator was well applicable to the evaluation of‘‘V−A bypass”.
略す)がある.一般に,重症心疾患の外科治療の
目 次
1.緒言
あとでは人工心肺からの離脱が重要なポイントと
∬.血液循環系のシミュンーショソモデル開発の背景
なっている.人工心肺離脱時は,術中の完全体外
皿.補助循環の工学的写方
循環から,生体心臓による固有循環へと移行する
IV.血液循環系のシミュレーションモデルの開発
段階であり,通常の人工心肺の延長としてローラ
V.シミュレーションモデルによるV・Aバイパス法
ポンプによる定常流の部分体外循環(V−Aバイパ
の解析
ス)が行なわれる.離脱期のV−Aバイパスの目
W.動物実験によるモデル解析結果の検証
的は,末梢に十分な潅流量:を確保しつつ,心内修
粗.結語
復を完了したぽかりの心臓のポンプ機能の回復を
文献
L 緒
待つことであるが,その適用については従来,右
言
心不全に対しては:右心補助効果が期待できるが,
最近の心臓外科治療の進歩は著しく,今まで手
のつけられなかった重症心疾患の症例に対しても
左心不全に対してはその退応に疑問があるとされ
積極的に外科治療にふみ切るようになってきた.
ている1)2).したがって,重症例の術直後のよう
しかし,外科治療の適応ラインぎりぎりの位置に
に,極端に心機能の低下した心臓に対してはV−A
いるような超重症の患老に対しては,きわめて条
バイパス施行にあたり,本法の効果:と限界に関し
件の悪い心筋を種々の手段を用いて補助しつつ外
て十分に把握しておくことが必要である.そこで
科手技を完了させ,最終的には修復した患者自身
本論文では,著者が開発した血液循環系のシミュ
の心臓でひとり立ちさせなくてはならない.患者
レーションモデルを使用して,V−Aバイパス法の
の低下したポンプ機能を少しでも向上させ,同時
効果を工学的に解析し,また動物実験による検証
に末梢臓器への血液潅流を確保する目的で,機械
を行ないながら,本法の最適施行法と限界を明確
的操作によって生体の血液循環を補助する方法を
にすることを試みた.
一般に「補助循環法」と呼んでいる.この「補助
II・血液循環系のシミュレーシ日ンモデル開発
循環法」にはいろいろな種類があるが,重症患者
の背景
早大土屋研究室では,東京女子医科大学予研外
科との共同研究により主として人工心臓の流量制
御に関する研究を進めてきた3).血液循環系のシ
では改善すべきパラメータの数が多数存在してい
るため,どのタイプの補助循環法を選択すれぽよ
いか,また,患者の時々刻々変化する循環動態に
対し,何を指標としていかなる制御を施せばよい
のか,などを明確にすることは難しく,今までは
医学サイドでそれらの問題点を経験的に処理して
いたに過ぎず,不明確な部分が多かった.
重症心疾患の開心時にしぼしぼ用いられる補助
循環法のひとつに,動静脈間部分心肺バイパス法
(Veno−Arterial Bypass,以下V−Aバイパス法と
ミュレーションモデルはその開発研究の一環とし
て生まれたものであり,本論文はそのモデルを
V−Aバイパス法の解析に応用するものである.こ
こではモデル開発の背景に関する説明を行なう.
人工心臓の開発研究は,内外の研究機関で今ま
でに多くの基礎研究が積み重ねられており,最近
では人工心臓を装着した動物も半年間という長期
にわたる生存が可能となった4)5).しかし,それ
一168一
89
系という閉鎖型流体回路)内でのポンプの特性が
(工)
把握でき,このデータは工学的にはポンプの実効
Mean A。rtに
Pre55,
∠
ノユ
Pump
荊》
特性(E漉ctive Characteristics)と呼ぶことがで
きる.多くの研究者は,固有特性と実効特性との
間を,各自の‘‘経験的な仮説”で結びつけ,点出
量制御のあり方を模索している.しかし,そのよ
LI3
A至rium Ventrlcle
うな状況においては,動物実験を重ねると同時
に,それと並行して,各時点における動物実験デ
Left Pump
(n)
ータの再現や予測のできるシミュレーションモデ
!
Pulmonary
〃Sys∼emi⊂
戸
Circu且a量…δ〔
/
Cirこu〔atiQq
、
ル(図1(豆))をつくり,システム的な考察6)
を行なうのもひとつの有効な方法であると思われ
る.モデルによる実験は,i)実験条件を自由に
Right P・mp
設定できる.i三)実験結果にバラツキがなく,動
物実験における個体差の概念を取除くことがで
(皿)
剛師
隙画
図1
き,しかも結果に再現性がある,などの利点を有
Q\
蝿
している.特に(皿)のモデルは,完全一巡閉鎖
の流体回路系として構成するので,循環系のマク
ロな挙動を知る上で有利と考えられる.したがっ
て,人工心臓の制御の問題以外にもモデルの幅広
3Types of experiments in How character・
い応用が考えられ,そのひとつとして今回,補助
istics of artificial heart
(1)
Pressure−load test
apParatus(Test for in・
循環への応用を試みた.
herent characteristics)
(H)
夏亙正 補助循環の工学的視方
Mechanical simulator(Test for e昼ective
生体の血液循環系をマクロにとらえた場合,心
chafacter量st量cs)
(巫)
Artificial hearts attached to experimentaI
anima1
らの動物実験における流量制御の問題,たとえぽ
臓というポンプを有する一巡流体回路系とみるこ
とができる.もしもポンプ機能が低下した場合,
その影響は心臓のみならず循環系全体に及び,正
時々刻々変動する生体系の反応に対して,何を基
常時の循環状態とは異なった別の安定状態へと移
準としていかに心拍出量を制御してゆけぽよいの
行するため,各部の血圧の異常といったパラメー
か,などの問題に対する答については,未だ十分
タ変動が観察できる.図2は心不全時の循環状態
な解明がなされていない.人工心臓の開発研究に
おいては,一般に心臓ポンプが完成した時点でま
に対してV・Aバイパスを施行している状態を示
す模式図である.心臓ポンプ機能のうち,静脈系
ず,図1(1)のような装置を用いて,ポンプ固
からの‘‘くみ出し機能”が低下した場合,血液は
有特性(Inherent Characteristics)をあらかじめ
主に低圧系(体循環静脈系および肺循環系)に停
調べる.これは,ポンプの流入圧,流出圧をそれ
滞する傾向がみえる.このうつ血した血液を体外
ぞれ生体の静脈圧,動脈圧に近い圧力に設定して
に導き,それを動脈系へ送りかえす方式の補助循
ポンプを駆動し,ポンプ流量特性を把握する方法
環法がV−Aバイパスである.「補助循環回路」と
である.この試験の後,直ちに図1(皿)に示す
生体心臓による「固有循環回路」とは,末梢系を
ような動物実験へと研究が進められるのが通常の
共有する二系統の流体ループとしてとらえられ
パターンである.動物実験から得られるデータに
る.V−Aバイパスを最適に施行するとは,この二
よって,使用すべきシステム(ここでは血液循環
系統の流体ループを最:適制御することである.生
一169一
90
その大多数は循環系の一部の機能を調べるための
NeτVOUS
Syste皿
ものあり,一巡回路としての特性を再現できるも
工uれ9
のは殆どない.著者の一巡回路モデルは1973年よ
画該辱h
り開発を進め,現在はディジタルコンピュータを
用いた数式モデルと,実際に流体を流す機械式モ
デルの2種類を有している1坦2).これらを補助循
Right
Heart
環法の最適制御法の解明に応用しようとする場
1eft
Heart
合,人工心臓の制御方法の検討用として開発した
モデルがそのまま使えるか否かの検討が重要であ
る。人工心臓の制御の場合,制御すべき対象を単
に心臓とその周辺に限定せず,血液循環系全体と
考えるという立場のもとに研究を行なったが,補
助循環の効果を調べる場合,この場合もやはり心
臓のみに注目せず,循環系全体がどの程度よくな
ったかを調べることが必要である.したがって,
’ Oxygena七。r Pump
両者の制御対象は同一とみることができるので,
σon七rol System
従来のモデルをそのまま用いることにした.
数式モデルは機械式モデルの前段階として構成
図2 Schematic drawing of V−A bypass.
Two c三rculatory!oops(cardiovascular system and
したものであり,数式モデルにおけるシステムパ
CirCUIatOry assist SyStem)Were COmlnOnly Conne−
ラメータをもとにして機械式モデルにおける設計
cted to the capi11aries.
諸元を決定するという方式をとった.モデル化に
際し,まず制御対象(本論では血液循環系全体)
体心臓による「固有循環回路」は,生体制御系(神
経系)の支配下にあり,これに対して「補助循環
の特性の本質を把握するため,生理学的,解剖学的
回路」は人為的制御によって支配される.したが
データ,臨床データ,動物実験データをもとに,
って,固有循環をできるだけ最適な循環状態に維
工学的手法13)を用いて血液循環系の解析を行なっ
持するためには,固有循環系自身(制御対象)の
た.その解析結果を基礎として循環系の特性に関
特性と,その制御系の特性とを十分に把握しなが
する基本的な仮設を立て,それをもとに血液循環
ら,補助循環の制御系の設計を行なってゆくこと
系の数式モデルを構成した.模式図を図3に示
が重要である.しかし,血液循環系は複雑な流体
す.数式モデルでは心臓と血管系とを,集中定数
回路網であるので,前述の一巡閉鎖系のシミュレ
化した要素に分割し,それぞれをタンクで代表さ
ーションモデルを利用して,循環系のおよその特
せた(二二にはコンプライアンスと表示).各タ
性を把握し,その上で,固有循環一補助循環のシ
ンクは直列に接続して一巡回路系を構成し,接続
ミュレーションを行い,その挙動を調べながら,
部には血圧降下用の抵抗(二二には逆三角形で表
補助循環の最:適施行法の検討を試みてゆくことに
示)要素を配置した.ただし,体循環末梢系は機
した.
能別に3本の並列回路に分割した14).この系は工
1V・血液循環系のシミュレーションモデルの
学的にはC−R回路と呼ばれる.タンクの容量や
開発
血液循環モデルは,過去において,電気モデ
揖抗の強さなどのシステムパラメータは,生理
ル,数式モデル,機械式モデルなどが目的に応じ
この数式モデルにおいては,図3下部に示す基礎
てさまざまな形で考案されてきた7)”10).しかし,
方程式が成立するものとし,計算プログラムにし
学,解剖学的データ15)16)をもとに順次決定した.
一170一
91
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図3 Schema of cardiovascular mathematical model for digital computer simulation.
Graphs on both sides showed typical calculation data in each section of the model.
たがって,図中のごとく,左室圧・右門守が矩形
心・左心として用いた.このポンプの流量特性に
波状の圧力変化をした場合の各部の血圧・血流量
おける最:大の特長は,駆動空気圧が一定の条件下
変化を,ディジタルコンピュータを用いて計算さ
では,拍動数を60∼180cpmで電気的に変化させ
ぜた.計算結果の1例は図3の中にグラフ化して
ても1回拍出量は不変である点にある.これは,
表示した.
二室(心房・心室)の駆動タイミングを,数式的・
機械式モデルは大別して血液ポンプ部分と弾性
実験的検討により,心室収縮の直前の100msec間
管部分の2要素から成り,それぞれ心臓と血管系
に心房を収縮させる方式を採用しているためであ
にあたる.写真1は機械式モデルの全景であり,
り,高拍動数領域においても1回拍出量の低下が
図4にその要素説明を掲げた.図のごとく本モデ
防止できた.また,当然のことながら,拍動数一
ルはオープンな部分を持たぬ完全閉鎖の一巡流体
定の条件下では,生体の心筋収縮力にあたる駆動
回路系であり,作動流体は血液の代わりに水道水
空気圧を変化させれぽ1回拍出量も変化できる.
を用いた。
血管系としては,ラテックスゴム製の弾性チュ
血液ポンプは空気圧駆動方式であり17)18),心房
ーブを用い,管の拘束条件(コンプライアンス)
・心室にあたる二つの直管形の血液室を有してい
を調整できるように,各チューブはそれぞれアク
る。弁も生体心臓と同様に,心室前後に一つずつ
リル製空気室に内蔵する構造とした.末梢抵抗は
装着した。このポンプを2台用意し,モデルの右
シリンダ内の粒状ゴムの密度をピストンを用いて
一171一
92
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Systemic
Capillarie3
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Unit8
図4 Explanation of elements in mechanical sim−
Ulator
写真1 Whole view of mechanical silnulator to
cardlovascular system・
生体の血液循環系の挙動と類似していることが確
Size;2×1〔m〕, see Fig.4for funαion of ele・
認された.
men重S.
数式モデル・機械式モデルという2つのタイプ
変化させる方式を開発した.これにより抵抗変化
のシミュレーションモデルには,それぞれ一長一
の微調節が可能となり,抵抗を通過する流量およ
短がある.機械式モデルにおいては,実際に弾性
び抵抗前後の圧力差をここの部分で決定すること
管内に流体を流すため,一巡閉鎖回路系内での流
ができる.各部弾性管の容量・長さや,末梢抵抗
体力学的なエネルギーの流れをシミュレートする
の強さなどは,前述の数式モデルにおけるシステ
ことが可能である.そして,臨床や動物実験に使
ムパラメータをもとに決定した.
用している人工心肺回路やカニューレをそのまま
シミュレータに接続させて特性をとることができ
本モデルの動的挙動が生体の血行動態と類似し
ているか否かを調べるため,モデルデータと動物
るので,その意味では臨床や動物実験と非常に近
実験データとの比較検討を試みた.動物実験にお
い形で実験を進めることができる.しかし,現在
いては,シミュレータに用いた血液ポンプ2台を
の機械式モデルにおいては,末梢における代謝の
用い,それぞれイヌの右心,左心と完全に置換す
状態,肺機能の変化,薬剤投与の影響といった化
る方式を採った19).シミュレータで動物実験の状
学的エネルギーの流れを再現するまでには至って
態を再現した結果が図5に示す血行動態であり,
いない.これに対して数式モデルでは,流体の弾
非常に類似したものが得られた.これにより,機
性管内での脈動流を忠実に再現しようとすると,
械式モデルにおける基準状態付近の動的挙動が,
非線形偏微分方程式が多数出現し,一巡モデルと
一172一
93
原則を実行した.
200一
Aortiζ
mmH9
パス法の解析
0一
Cen吐剛V,noug
Pro弱ure
1.機械式モデルによる実験21)22)
20−
nnmH9
1)実験El的:V−Aバイパスの施行により,一
o−
Pulmo[oryA段ery
40一
Prρ55ure
mmHg
2・一験\八へへ酬臥へへ八八ト欄
Q鱒
PulmonoryVein
巡閉鎖回路内での血液がどのように動く(v・lume
sbift)のか,そして各部の血圧がバイパス条件に
よってどのように変化するのかを定性的に把握す
20_
窟簿e 。.』囲_一
の
V・シミュレーションモデルによるV・Aバイ
τOO蹴∼八∼八」胸■
ρre5sure
400一
るため,まず機械式モデルを用いてシミュレーシ
ョン実験を行なった.
蟹謂2。1:四」〕〕1L四鮒ロ山L腿
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山〕〕〕糊闘
1…山〕〕山1
D。9ゆ㎏) M8chanlcal slmula竜。「
τota[Heart Repiacement
図5 Co・nparis・n Qf hemQdynamics between ex−
perimental animal and mechanical simulator.
The data from mechanical simulator were gotten
2) 実験方法:正常時心拍出量の50%程度の心
不全状態を作成するため,人工心臓駆動空気圧を
左心で正常時200mmHgであったものを100mmHg
に低下させ,右心でも同様に駆動圧を70mmHg
から40mmHgへと低下させた.この状態はいわ
ゆる心筋収縮力の低下を想定したものである.ま
た,うつ血性心不全の状態を想定して,循環血液
量(充填液量)を増加さぜ,心停止時の平均充満
血圧を正常時の7mmHgから22mmHgへと上昇
させた.動脈圧はpreshockレベルに維持するた
め,末梢前部の抵抗を上昇させた.以上の操作に
より,機械式モデルにおける両心不全時の循環動
by regulating the conditions of vessel elements.
態の再現を行なった.次に,女子医大心研におい
These two showed high resemblance to each
て現在使用している人工心肺回路をそのままシミ
other.
ュレータに接続し,温血,送二三の2基のローラ
して構成することは不可能に近い.しかし,単純
ポンプを使用して定常流v−Aバイパスを行なっ
に集中定数化した現行モデルでも,血液循環系の
た.モニタは心臓前後の血圧を圧力トランスデュ
マクロな形での挙動をつかむことができる.しか
ーサで計測し,また,ポンプ二二量,バイパス流
も,現行モデルにおけるシステムパラメータを実
量は電磁流量計を用いて測定した.実験は,バイ
験者の仮説のもとに変化させることが自由にでき
パス量変化に対する各部のパラメタ変化を調べ,
る.したがって,化学的エネルギーの流れや細か
さらに循環血液量をかえて同一の実験を行い,そ
い神経支配などを考慮したより高次のモデルを作
の影響なども調べた.
成してゆくことも可能である.現在は機械式シミ
3)実験結果:機械式モデルにおける血行動態
ュレータと数式モデルの両者を目的に応じて使い
を図6に示す.左から順に,正常時,両心不全
時,V−Aバイパス施行時である.不全心拍出量
分けている.ただし,シミュレーションから得ら
れた結果をすべて信じこむのではなく,動物実験
データ,臨床データとの比較検討を十分に重ねな
を50%に低下させると,中心静脈圧(Central
Venous Pressure;以下CVPと略す.)は5mmHg
がら,シミュレーション結果を生かしてゆくとい
から15mmHgへと上昇し,左房圧は2mmHgか
う方向で研究を進めており20),以下にのべる補助
ら10mmHgへと顕著な上昇がみられた。その状
態でV−Aバイパスを行うと,CVPは著しく低下
循環法(V・Aバイパス)の解析においてもその
一173一
94
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層
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Normα巳 Heαrt
Heqrt Fαi匿ure
(L十R)
図6
F F
‘V−A}
3states of hemodynamics in mechanical simulator
工eft:Normal heart(control). Middle:工eft and right heart failure state.
Right:Circulaωrγassis‡ed state(V−A bypass).
したが,左房圧の低下は微少であった.また平均
おいてはn・rmovolemiaの場合と同様,上昇傾向
動脈圧はバイパスによってわずかに上昇した.な
をがした.
お,この場合のバイパス量は不全心拍出量の40%
2.数式モデルによる計算
の流量である.
1) 計算:目的:機械式モデルにおいては冠循環
バイパス時のパラメータ変化をさらに詳しくま
モデルを組込んでおらず,V−Aバイパス施行に
とめたのが図7である.図7では不全心拍出量に
よる動脈圧の上昇傾向がみえても,その結果とし
対するバイパス流:量の比率を横軸にとり,動脈圧
ての冠」血流量の増加と,それに伴う人工心臓ポン
・中心静脈圧・左房圧の変化を縦軸にとった.通
プ機能の向.ヒとを結びつけるまでには至っていな
常臨床におけるV−Aバイパス施行時には,循環
血液量中のうつ血の部分のv・1umeを体外回路へ
ータ諸値の変動との関係を十分に把握できなかっ
い.したがって,ポンプ機能回復の度合とパラメ
取りこみ,人工的なhyp・volemiaを作成している.
た.そこで,数式モデルにおいては,従来の心臓
図7においては,循環血液量の変化の影響を知る
部モデルに改良を加え,心筋収縮力を心室拡張末
ため,normovo]em蛤とhypovolemiaの2種類の
期容量と冠血流量の2つのパラメータの関数とし
状態におけるパラメータ変化を併記した.徳望,
てとらえ,しかも,後負荷(動脈圧)の影響を受
5%hypovolemiaとは,循環血液:量の5%を体外
けるモデルを想定し,機械式モデルの結果を補う
回路に取り出した状態を指し,ここでは,充填液
形でこの数式モデルを利用し,V−Aバイパスの
量4,000ccのうちの200ccを取出した.図7よ
施行に対する心機能の回復状態を調べることにし
り,バイパス流量の増加に対しては,機械式モデ
た.
ルにおける体血圧は.ヒ昇し,CVPは低下する.
2)計算方法:数式モデルにおける心不全の作
左房圧はhypovolemiaの状態においてのみ,40
成は,女子医大賭碁カテーテル検査室における僧
%バイパス量をこえるあたりまでは低い値を維持
帽弁狭窄症(MS)の臨床データを回心に統計処
している.しかし,それ以上の高流:量バイパスに
理をした値を基準値とし,体循環末梢部および肺
一174一
95
140
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2
v−A Bypa33 FIow
図7 Parame重er changes during V−A bypass in
mechanical simulator
L/min
図8 Parameter changes during V−A bypass in.
c・mputer simulation.
The data suggest:
3types of cardiac function were supposed and
量)5%hypovolemia state showed better perform−
ance in Iighting the volume Ioad of the left
the effects of V−A bypass in each‘‘heart,, state
were calculated. Onlyく‘Reversible Heart,, show−
heart than normovolemia state.
ii)Operat三ng the bypass flow in 25−40% 6f
ed a maximum cardi鼠。 output during V−A bypass;
acardiac recovery would be expected here(ha−
cardiac output from the failure heart(hatched
tched area).
area),1.AP and CVP kept Iower level and
aortic pressure maintained at the.co瞭ol Ieve1.
機能を有する心臓モデルに対して,バイパス流量
の血管抵抗の変化,冠循環容量の変化などを決定
の変化に対するパラメータ変化を計算させ,比較
した23).機械式モデルの場合と同様に,平均充満
検討した.
血圧を7mmHgから22mmHgへと上昇させた.
3)計算結果:図8は数式モデルによる計算の
結果をまとめたものであり,横軸はV−Aバイパ
計算機シミュレーションは,術前の心臓ポンプ機
スの流量,.縦軸は上から順に冠血流量,左房圧,
能のちがいに対するV−Aバイパスの効果を検討
するため,3種類の異なった心機能を有する心臓
心拍出量である.V−Aバイパス直前の状態では,
を想定して行なった24).3種類とはまず,心内修復
正常心では拍出量が6〃minで,その10%が冠循
が完了し,回復へむかう可能性のある不全心で,
環に流れ,左房圧は4mmHgであった.これに対
心筋予備力が正常心に近い状態のモデルであり,
し「可逆心」では心拍出量は2.41/min,「不可逆
これを「可逆心」 (Reversible Heart)と名付け
心」では1・2♂/minと,それぞれ正常心の40%,
る.次は,心筋予備力が十分でなく,機能回復が
20%の拍出:量を呈し,それに伴い冠血流も減少
著しく困難な重症不全心モデルで,これを「不
し,左房圧も20mmHgという高値を示した,冠
可逆心」 (lrreversible Heart)と名付ける.最後
血流量は,不全の程度が大のほどバイパス流量に
の3番目は,不全心と比較するための「正常心」
対する流量増加率が大となった.左房圧は正常心
(Normal Heart)である.以上3種類のポンプ
においては低く保たれるが,不全心では,バイパ
一175一
96
ス流量が不全心拍出量の1/3付近まで低下するが,
が薬剤によってコントロールされているので,循
それを越えると上昇し,機械式モデルの結果と類
環血液量の変動と各部パラメータとの関係が個々
似する傾向が得られた.左心拍出量とバイパス量
バラバラで,循環血液量の最適条件を画一的に決
の関係は,3種の心臓によって異なった傾向とな
定することはできない.低圧系のパラメータ変動
った.まず「可逆心」では,バイパス流量の1/3∼
と体血圧の変化とを連続的に監視しながら,シミ
1/2に対して心拍出量は心不全時のコントロール
ュレーション結果を考慮し,最適な循環血液量を
値よりも増加し,拍出量に最大値が存在した.し
決定してゆくことが重要である.
かし「不可逆心」においては,バイパス流量の変
機械式モデルにおいて最:適な循環血液量が決ま
化に対して心拍出量は不感受であった.また,当
った時点で,今度は最適バイパス量に関する検討
然のことながら,「正常心」においてはバイパス
を行なう.図7において左房圧に注目すると,人
量=0が心拍出量の最大値であり,・ミイパスをす
工的hypov・lemiaによってはじめ弓馬を保って
れば心拍出量は減少した.なお,計算プログラム
いた左房圧は,バイパス流量が不全心拍出量の40
の関係上,各データとも,不全心拍出量以上のバ
%を越えるあたりから上昇傾向がみえ,それ以降,
イパス量ではデータが発散し,流量:の少ない「不
バイパス流量の増加とともに左心流入負荷は増大
可逆心」のデータに関しては検討の余地がある.
する.これは通常経験的に考えられているよりも
3.モデル解析に関する考察
誇張して示されているが,その理由は,人工心臓
(1) 循環血液量とバイパス流量の最適制御に
が生体心臓とくらべ,流入圧(左房圧)に対する感
受性が低いためと考えることができる.人工心臓
関する検討
機械式モデルから得られた実験データ(図7)
では,わずかな流入圧変化に即応して拍出量を大
によれぽ,バイパス流量の増加に伴い,右心にと
きく増加させる形にはなっておらず,そのため流
って流入負荷と考えられるCVPは低下してゆ
入負荷が著しく増大した.しかも,バイパス流量
く.しかも,右心流出負荷にあたる肺動脈圧は,
の増加に伴う動脈圧の上昇でポンプ流出側も過負
その場合高くはならず,右心にとってはバイパス
荷となり,ポンプ言出量も増加できず,流入負荷
量が増加するほど右心前後の容量負荷(volume
増大に拍車をかけたものと考えられる.したがっ
load)は軽減されるという傾向があった.
て,左心系にとってはV−Aバイパス流量は40%
一方,左心においては,バイパス流量の増減に
程度のバイパス量で一応の線を引くことができ,
図7の中でハッチングを施した部分が適切なバイ
対する負荷変動を論ずる前に,循環血液量の変化
が左心前後の負荷変化に大きく関与していること
パス条件とみることができる.機械式モデルに組
が機械式モデルによる各種実験結果から判明し
込まれている人工心臓の特性は前述のごとく,生
た23).図7は,循環血液量を正常時(normovole−
体心とくらべて流入特性が悪く,流入圧に対する
mia)と,5%hypovolemiaの2つの状態を示し
感受性も低い,また,ポンプからの戸出量は流出
たものであるが,後者の場合,モデルにおける総
圧によって左右され,その点でも生体心の流出特
充填液量4,000ccのうちの5%,すなわち200ccを
性とは異なっている.しかし,これらの人工心臓
体外回路に取りこんだだけで,特に低圧系の中心
の特性は正常な生体心臓のポンプ特性と比較した
静脈圧,左房圧の減圧が達成できた.現モデルに
ものであり,この人工心臓の特性こそ実際の不全
おいては,この5%hypovolemiaの条件は,低圧
系の容量負荷をとり,しかも体血圧を大きく下げ
心の特性と類似したものであると思われる.
ることがないので,この心不全モデルに対する理
ポンプ機能がどのように回復するのかという点に
想的な循環血液量制御と考えることができる.し
ついて調べた.現時点の機械式モデルではその点
かし,実際の開心術においては,生体の循環動態
を調べるには不十分のため,数式モデルを用い,
次に,最適バイパスを行なうと,実際に心臓の
一176一
97
心臓部モデルを改良して,バイパスに対する心臓
ポンプ機能が循環系の諸変化に対して自動的に
ポンプ機能の回復の要素を組込んだ.図8の数式
変化してゆくという機構になっておらず,単に
モデルの計算結果において「可逆心」に注目する
volume shiftの立場から,主として心臓前後の負
と,V−Aバイパス施行によって機械式モデルに
荷変動をみて,V−Aバイパスの効果に関する検討
おける左房圧の推移と同様,バイパス流量の増加
を行なってきた.機械式モデルでは右心不全を単
に伴い,左房圧は一度わずかに下降し,そのあとし
独に作成することはできるが,左心不全のみをつ
ばらくして上昇傾向に転ずる.このとき心拍出量
くろうとして左心用人工心臓ポンプの駆動空気圧
の変化をみると,左房圧が低く保たれている所で
を下げ,ポンプ機能を低下させてゆくと,肺循環
心拍出量の最大値がみられる.この状態は左心の
系へのvo1Ulne shiftがおこり,それが右心の後負
流入負荷がとれて心拍出量が増加しており,バイ
荷増大を招く。そして右心ポンプ拍出量が結果的
パスが最も有効に行なわれている状態と考えられ
に減少し両心不全に陥ってしまうが,この状態は
る.拍出:量の最大値の存在については阿久根らが
慢性うつ血性心不全のときのパターンと類似して
右心不全を主体とした症例に対するV−Aバイパ
いる,図7はその両心不全をさらにきびしく右心
スにおいて指摘しているが2),著者の両心不全数
駆動圧も低下させて作った状態でV−Aバイパス
式モデルにおいてもそ胴と同じ傾向がみられた.
を施行したデータである.両心不全以外にも:右心
計算結果は,バイパス施行により左心流入負荷が
不全に対しても,また各心不全の程度が強くと
軽減され,かつ冠血流:量が増加したため,左心機
も弱くとも,V−Aバイパス施行によって一様に
能が動脈圧負荷に打ち勝つ程度まで回復したこと
CVPは低下し,右心補助効果が認められた.し
たがって,従来からいわれているV−Aバイパス
を示している.この場合の適正バイパス条件を
図8の中にハヅチングで示した.「可逆心」のバ
の右心補助効果は,モデル実験からも確認でぎ
イパス前拍出量は2・4Z/minであり,これに対し
0・81/min付近のバイパス流量で拍出量の最:大値
た.しかし,左心補助効果については前述のごと
を記録している.このことから,不全心拍出量の
いが必要となった.
く機械式モデルでは不十分であり,数式的な取扱
約1/3のバイパス量が最適と考えられ,機械式モ
図8の計算結果において3種類の心臓ポンプ機
デルから得られた40%という値とも近い値となっ
能を想定したのは,V−Aバイパスが左心系にと
ている.
って常に有効であるとは限らないことを示すため
以上の結果,V−Aバイパスの施行においては,
であった.その場合,V−Aバイパスに対する効
i)中心静脈圧,左房圧,体血圧をみながら適
果判定の指標として,心拍出量を採用した.この
切なhyp・volemiaの状態をつくる.
数式モデルにおける心臓部分は,心臓モデルの第
ii)i)の条件下で,そのときの不全心拍出量
の30∼40%でV−Aバイパスを行い,左房圧を連
続監視して,バイパスによって左房圧が上昇しな
一次近似として,心室拡張宋期容量と冠血流量の
い流量を設定する.
ち心臓前後の負荷云々を論じなくとも,その結果
2つの関数としてとらえ,しかも流入流出負荷の
影響をうげるモデルとして構成したため,いちい
ことが望ましい.本実験および計算では,正常心
の半分程度の拍出:量の不全心を対象とした場合で
あり,バイパスによって心臓ポンプ機能が回復し
てくると,循環血液量をnormovolemiaへと戻
してゆき,それに伴い,最適バイパス量も20%∼
10%へと移行することが予想される.
(2)V・Aバイパス法の適応範囲に関する検討
現在の機械式モデルにおいては,人工心臓の
としての心拍出量をみていれば,ポンプ機能の回
復の度合が把握できる.図8において,バイパ
ス中に心拍出量の最大値が存在した「可逆心」で
は,バイパス前よりも心拍出量が増加し,末梢へ
は心拍出量以外にバイパス量がうわのせされた形
で潅流されるので,V−Aバイパスの効果が十分
に発揮されていると考えられる.一方,「不可逆
一177一
98
心」では門出量の最大値は得られず,流入負荷の
で,バイパスの左心補助効果が十分理解できな.
減少や冠血流量の増加があっても心筋予備力が十
い.そこで主として拍出量に注目して,シミュレ
分でないため,左心ポンプ機能の改善がみられ
ない.これは,臨床において時々経験するpump
試みた.
ーション結果を動物実験によって検証することを
o仔できない患者の心臓の挙動に類似している.
2) 実験方法:雑種成犬(15∼25kg,10頭)に
対して静脈麻酔,調節呼吸下で正中切開した.図
しかし,現在の数式モデルでは,計算プログラム
の関係で,バイパズ流量が不全心拍出量以上で
9に動物実験回路を示す.」血液は右房からローラ
は,各値が発散してしまうため,高流量バイパス
ポンプで脱些し,膜一人工肺,リザーパ,送血用
に関する考察は現在未だできない.「不可逆心」
ローラポンプ,熱交換器を通り,上行大動脈へと
の場合,高流量バイパスが必要となるが,その点
送血される.心不全を作成するため,前下行枝お
よび回旋枝からの分岐を多量結紮し,30分以上放
の検討はモデル精度向上後に行なう。
以上より,V−Aバイパスの右心補助効果は明白
置した。大動脈に装置した電磁流量計プローブを
であるが,左心に対しては積極的に補助できる方
用い,不全心拍出量:が約1・01/minで安定してい
法ではなく,心筋の状態によって左心補助効果が
ることを確認した.そのときCVPを10mmHg
期待できる場合とできない場合が存在することが
付近に固定するよう循環血液量の調整を行なっ
予想された.そこで,V−Aバイパス法の左心補助
た.
その後,心内修復直後の可逆心に近い形を想定
効果の可能性をさらに追求するために,さらに動
し,結紮の一部を解除し,その状態でV−Aバイ
物実験が必要となった.
VI・動物実験によるモデル解析結果の検証
パスを施行した.1回目実験はバイパス量を0か
1.V・Aバイパスの動物実験
ら増加させ,最大バイパス量になった時点で再び
1)実験目的:現在の数式モデルは,心筋の回
バイパス量:を減じ,最:終的に0に戻す。その間の
復に関与するパラメータをおさえきれていないの
血行動態の変化を調べるものであり,心機能の時
2塾_
間による変化の影響が無視できるようにすみやか
理。w工型q,9旦
Pre3εure一 _
一
一
一
に行なう.一連の実験中は循環血液量が一定とな
一
AoP
@
館
ノ
《
.》一
@
∠
@
するように,リザーバ部で厳密にチェックした.
fVP
Y__A。t,。i。、
齔浴x壇
デルの場合と同様5%hypovolemiaの状態に固定
撃uP
I ク叱
uenou3
kine
ることが必要であり25)26),脱血送血バランスをモ
撃`:P
kine
し,それをコントロール値とした.モニタは,図
9に示すごとく,血圧4本,流量2本を連続計測
Hea七
Exch鋤9・r
し記録した.
Reservoir
、
3) 実験結果:10例のデータは,中心静脈圧
イ〃Membrane
nxygenato憩
.…「
7
02
(CVP)は10mmHg付近に設定してあり,バイ
パス流量増加とともにすべてのケースで低下し
た.また左室収縮期圧(■VP)は上昇の程度に差
はあるがすべての例で,バイパス流量増加に伴い
Venous
ouエnp
なお,結紮直前にも同一方式でバイパスを施行
Circulating
上昇した.左房圧(LAP)は値がバラつき,一定
uolu皿e Balance
@ σ0皿亡ro1
Arteria:L
@ P㎜P
傾向は得られなかった.心拍出量のバイパス量に
対する変化は,どのケースにおいても後述に示す
3つの曲線パターンに分類できた.図10は10例の
図9 V−Abypass circuit of animal experiments
一178一
99
鞭
収縮期圧の各線は,門出量グラフの各線に対応さ
10
▼
1日
せたものである.なお,実線はバイパス開始前の
LAP
拍出量が1・2ηminの場合のデータであり,中心静
5
σVP
一一一
〇.5
100
脈圧,左房圧に関してもこの場合のデータを掲げ
1.O
た.バイパス流量の増加に伴い,左室収縮期圧に
一7r△ ’
一触’
関しては実線の上昇が著しく,血圧が100mmHg
。
垂
以上,又は40mmHg以下という他の2本の場合
ロ
では,バイパスに対し不感受であった.中心静脈
弩 50
ガ
圧はバイパスによって低下したが,左房圧はこの
_鴫_鴫冊」一イ
一一一
〇,5
例では変動がみられなかった.
1.0
2.動物実験データに関する考察と解析結果の
、
蔑\、△
重
1.o
図10において,コントロール値として表示した
e
目看
\
温
属㌔5
、、
喜
\》、
㌔・{k
q5
冠動脈結紮直前の一点鎖線データでは,左室収縮
期圧が100mmHgを越えており,バイパスを施行
しても体血圧はすでに高く,それ以上の大きな血
李
、、
o
o
検証
玉
圧上昇が得られなかった.循環血液量をhypo−
1.Q
Bypass Fユow
volemiaからnormovolemiaに戻してゆくと,
玉/靴in
血行動態は改善し,開胸直後の拍出量が2・o♂/min
図10Experimental animal data during V−A bypass
(do9,20kg)
付近の状態にもどった.この状態は数式モデルで
△;before ligation of coronary arteries (control).
8曾3・m・・dhea・・f・・1・・e・t・・…nv・・i・u・d・g・ee・・
いう「正常心」に一番近い状態と考えられる.次
口;SeVere heart fa玉IUre State.
The data could be classified into 3 categories which
mmHgと著しく丁丁であり,このときすでに循
seemed due to 3 types of cardiac function found
環血液量が減りすぎていた状態と推察される.こ
in mathematical model:‘‘Normal Heart’,,‘‘Re・
の状態ではバイパスを施行しても血圧は上らず拍
に破線の場合,バイパス前の左室収縮期圧は40
versible Heart,, and‘‘Irreversible Heart,’,respec.
出量も増加しない.シミュレーション結果から予
tively・
測すると,この状態は数式モデルにおける「不可逆
うちの典型例のデータである.図10における最下
心」に近い挙動を示している.心拍出量における
段は心拍出量の変化曲線で,一点鎖線は冠循環結
実線の曲線群は,上述の2本の曲線の中間に位置
紮直前のコントロールのデータであり,流量が
する不全心である.同一の心臓でも,循環血液量
1.3」/minからバイパスを開始した.この状態で
の微妙なちがいや,機能回復の程度のちがいによ
バイパスを行なうと図のごとく円弧に近い形を描
り曲線は一本とはならない.これらの多くはバイ
く.次に破線は,拍出量が最:も少ないケースで,
パス中に拍出量の最大値を有するか,又は低流量:
0・5ηminであった.この状態からバイパスを開
バイパスにおいて生体心拍出:量が減少しない領域
始すると,拍手量:は直線的に低下する.一点鎖線
を有している.この時点では流出負荷が高くなっ
と破線とに囲まれた曲線群(実線)は,いずれも
ても冠血流量が増加するので,心機能の回復がみ
バイパス直前の心拍出量が。.8∼1.2‘/minの不全
られる状態27)と解釈でき,その値は不全心拍出量
心のものである.これらの曲線群の多くは最大値
の1/3∼1/2程度でモデルの適正・ミイパス条件とも
を有するか,又は低流量バイパス時に生体心拍出
一致した.これらの曲線群は数式モデルにおける
「可逆心」と同一の範ちゅうに属するものと考え
量の減少をみない領域を有していた.中段の左室
一179一
100
られる.以上のように,動物実験データにおいて
が28)30),少なくとも心筋予備力の温存されている
も,数式モデルのシミュレーション結果のごと
のには有効であるという報告があり3η,シミュレ
く,心臓を3つの範ちゅうに分類することができ
ーション結果および動物実験結果を裏付けるもの
た.このように,シミュレーション結:果と動物実
である.一方,心筋予備力の著しく低下している
験データとは多くの点においてきわめて類似した
「不可逆心」では,定常流V−Aバイパスの効果
挙動を示したが,一部異なる点もある.まず,可
は「可逆心」ほど期待できない.その場合は,右
逆心における面出量最大値のパターンが動物実験
心系の補助効果の強い定常流V−Aバイパスのみ
より顕著にあらわれた.その理由は,冠血流変化
で左心の回復を待つのは間接的で得策ではない.
が心筋収縮力を決定する因子として関与する部分
左心補助,とくに流入負荷の軽減として手頃なの
が大だつたためであり,今後はこの心臓部モデル
は経心房中隔バイパスによる左房から直接に七三
を手直しする必要がある。また,左房圧は,高流
する方法であり33),本法は少量バイパスで補助効
量バイパス時には著しい上昇傾向を示したが,動
果が発揮できることがシミュレーションからわか
物実験ではその傾向は一様でなくむしろ減少する
っている.導入期に著者らは,V−Aバイパスの
傾向にあるものも存在した.これは慢性心不全と
適応に対して上述の適正バイパス法をとり32),そ
と急性心不全犬とでは循環動態が異なっているた
の効果が十分得られない場合には経心房中隔二心
めと考えられる.本実験ではすべて急性心不全犬
バイパスを併用し,良好な成果をあげている.本
を使用したが,この場合単に容量負荷をかけても
法は離脱期においても有効である.ただし,左心
末梢容量が慢性犬の場合とくらべて広く,特に肺
機能の早期回復を第一にめざすには,心筋酸素消
循環系にその傾向が強く,volumeの逃げが存在
費の面から考えて,左心のpressure wQrkを軽減
して左房圧の大きな上昇がなかったものと考えら
すべきであるといわれている34).そのような場合
れる.’このことから,慢性うつ血心不全の循環動
には,各種補助循環法の効果判定に関しては,も
態の再現は,動物を用いるよりも,血管床の大き
はや血行力学的側面からの検討は限度がきてお
さを固定できるシミュレーションモデルの方が有
り,代謝面かち検討35)するという研究方向が重要
利とみることもできる.しかし現モデルの不備に
である.臨床的には,心収縮期に負荷圧を下げて
よって高流量バイパス時の計算:が正確に行なえな
心仕事を軽減し,拡張期に冠血流量の増加を促
いので,その点に関しては今後の詰めが必要とな
す,いわゆるd互astolic augmentationの方法がと
る.また,機械式モデルにおいても,神経反射回
られる.しかし,重症の両心不全に対しては,左心
路の設置により,人工心臓ポンプ機能が自動的に
機能の回復と末梢潅流量の確保とを同時に行なう
変化することが可能となれぽ,モデルの精度が向
必要があり,定常流V−Aバイパス法とdiastolic
上し,幅広く定量的なデータがとれるはずであ
augmentati・n法の併用といった方法を用いるべ
きであろう36)僧39).これによって,定常流V−Aバ
る.以上,モデル自身の改良の必要性も指摘した
イパスに対しては「不可逆心」の範ちゅうにある
が,現在のモデルにおいても心不全の循環動態の
ものも,他の有効な左心補助方式の併用によって
マクロな形でのシミュレートが可能であることも
「可逆心」へと移行することも可能と考えられ
わかり,V−Aバイパスの適切な制御によって右
る.
心補助効果のみならず,左心補助効果を発揮する
V1二 結
可能性のあることが工学面から定量的につかめた
ことは大きな収穫である.
V−Aバイパスの臨床例を文献的にふり返って
語
シミュレーション技法による定常流V−Aバイ
パス法の解析結果,および動物実験結果から,次
の事項が明らかになった.
1)定常流V−Aバイパスは,右心不全に対し
みると,その効果に関しては統一した評価はない
一180一
101
て有効な補助効果を示した.
8)Brigbωn, J.A., et a1.: Simulation of the
human systemic and pulmonary circulations
2)左心不全に対しては,心筋予備力が十分に
fbr testing artificial hearts.2nd International
ある場合に限って補助効果が期待できた.
JsME syInpo.229∼236(1972)
3)2)の場合,循環血液量の調節が必要であ
9)Tsang, S.H。L, et a1.3 Simulation of car−
diovascUlar dynamics with the all pneumatic−
る.また本法に最適バイパス量が存在し,その値
artificial ventricle system as a replaccment of
は不全心拍出量の1/3∼1/2であった.
』the myocardial function. J・of Biomechanical
4)定常流V−Aバイパスに対して補助効果が
Engineering 10035∼43 Trans ASME(1978)
期待で.きない重症例では,バイパス施行によりか
10)Aas1董d, R.=Simulation of the indivisual
cardiovascular system. Ph. D Thesis, The
えって心臓前後の負荷増大を招き,他の有効な左
Norwegian institute of technology, Trondiurn
心補助手段をとる必要のあることが示唆された.
University(1974)p.1∼160.
Il)Tsuchiya, K. and Umezu M.=Mechanical
以上の実験データを通じ,諸種の条件下におけ
る定常流V−Aバイパスのシミュレーション結果
と動物実験データとを比較検討したところ,両者
simulator to cardiovascular system. Memoirs
of the school of science and engineering,
Waseda University 391∼14(1975)
12)梅津光生・土屋喜一:血液循環系の機械モデ
ル.人工臓器5(5) 266−270(1976)
は非常に類似しており,著老の開発した血液循環
モデルがV−Aバイパスの効果の検討に十分に利
13)高橋安人:システムと制御.初版岩波書店
用できる性能を有していることが証明された.
東京(/968)117∼207頁
14)佐藤登志郎:体循環の力学的特性による心拍
出量の制御.医用.電子と生体工学13(1)26∼
本研究費の一部は(財)日本心臓1血圧研究振興会と文
部省科学研究費の補助によるものであることをここに付
記し,関係各位にお礼を申し上げます.
34 (1975)
15)Green, H.; Medical Physics, vol.1, The
Year Book Medical Publishers, Inc., Chicago,
(1944)p.210[Attinger, E.0.(Editor)Puレ
稿を終るに臨み,懇篤なるご指導とこ校閲をいただい
た東京女子医科大学日本心臓血圧研究所外科・和田寿郎
satile Blood Flow, First Edition. McGrow−
Hil Book Comp. New York,(1964)より引用
主任教授に深謝し,また本研究を進める上でご協力いた
だいた同教室の関係諸氏にも感謝致します.さらに工学
サイドの永きにわたるご指導と綿密な:ご校閲を賜わった
16)堀 原一:静脈帰来.呼吸と循環20(8)
644∼ 655 (1972)
17)梅津光生・他:心房心室駆動型人工心臓の開
発とその制御.心臓7(7)867−868(!975)
早稲田大学理工学部土屋喜一教授に深甚なる謝意を表し
18)Tsuch董ya, K., et a1.=1)ulsatile blood pump
ます.
and its control. Proc. IFAC Sympo. on
文
献
control aspects of artificial internal organs
1)Co皿01y, J.Eりet aL;Mcchanical supPGrt
(1977>
19)富野哲夫・他:完全置換型人工心臓の装着法
of the circulation in acute heart failure.
Surgery 44255∼262 (1958)一」
と駆動法.人工臓器4(SupPL)59(1975)
20)土屋喜一:人工臓器工学.医学のあゆみ105
2)阿久根淳・他:補助循環施行後興味ある経過
をたどったうっ血性心不全症の1例.心臓5
(5)311∼317(1978)
21)梅津光生:血液循環系の機械モデルの開発と
その医工学的臨床的評価に関する研究.早大
大学院修士論文(1976)77∼83頁
22)堀籠秀和・他:血液循環モデルによる補助循
726∼729 (1973)
3)土屋喜一:人工心臓.システムと制御20(3)
140∼ 146 (1976)
4)Akutsu, T.2 Recent status of artificial heart
research and fhture prospccts.’亡♪臓10(1)92∼
環法の解析.人工臓器5(Suppl)32−35(1976)
99(1978)
23)堀籠秀和=シミュレーション技法による補助
5)福増広幸・他=184日の人工心臓による長期
生存例.人工臓器7(1)156∼159(1978)
6)佐川喜一:BMEと循環系の生理学.医用電子
と生体工学11(4)241∼248(1973)
7)阿部裕=シミュレーションの医学応用.医用
循環の解析.早大大学院修士論文(1977)37∼
60頁
24)益田博之・他二血液循環系シミュレータによる
V−Aバイパス法の基礎解析と動物実験による
検証.心臓10(1)83∼85(1978)
25)野田栄次郎・他:補助循環の効果についての
電子と生体工学10(6) 533∼537(!972)
一181一
五〇2
考察.人工臓器2(5)253∼26!(1973)
26)
rnyQcardial infarction. Circuiation 38 (SupPL
Wilde▼u盟r, C・R凪, e重a1・:Supplemen愉ry
4) 40(1968)
32)橋本明政・他:成人動脈管開存兼肺高血圧症
mechanically assisted circulation. Ann Thorac
Surg 6137∼145 (1968)
27)
の外科治療における部分体外循環の応用.日
胸外会誌24(12)1551∼1558(1976)
Salisbury, P.F., et a1.3 Physiological mech−
33)小柳仁・他:補助循環の現況(1).呼吸と
anism which explain the cHヒcts of venoarterial
循環24(5) 405∼412(1976)
pumping and of le翫ventricular bypass in ex−
34)samo丑」s・J・, et a1.=Hemodynamic de輩er−
perimenta正heart failure, Trans ASAIO 6176∼
minations of oxygen consumption of the hcart.
179(1960)
28)
Am J physiol 192148∼156(1956)
Litwak, R.S., et a1.2 Management of low
35)渡辺浩一郎・他:継続的心筋酸素消費量測定法
cardiac output af㌃er open intracardiac o王)era−
t三〇nwith a le實heart assist dcvice, Bregman,
と経心尖的左心バイパス.人工臓.器4(SuppD
D.(Editor):Mechanical support of the飴iling
98 (1975)
36)林盈司:反脈動法ならびに部分心肺バイパ
heart and lungs。 Appleton Century Crofts,
New York,(1977)p.47∼59.
29)
30)
ス法の併用による両心系捕助循環の血行力学
.Wakabayashi, A・, et a1。3 Clinical ex−
perience with heparinless venoarterial bypass
的研究.日循環器会誌35433∼443(1971)
37)川副浩平・他:拍動流ポンプによる補助循環
法.人工臓器7(1)53∼56(1978)
without oxygenation. J Thorac Cardiovasc
Surg 68687∼695(1974)
Kennedy,」.H・and D.L B欝ickα=Criteria
38) connolly, J・E・, et a1.3 clinical experience
with pulsatilc le庇heart bypass without an−
ticoagulation fbr thoracic aneurysms.JThorac
fbr selection of patients R)r mechanical cir−
culatory supPort. Am J cardiol 2733∼40
Cardiovasc Surg 62568∼576(1971)
39).Umezu, M。, et a1.3 Technological analysis
(1971)
31)
of pulsatile V−A bypass systcm and its clinical
Beanlands, D.S., et aL 3 Mechanica正sup・
port of the circulation in the treatment of
application. Abstracts of 2nd ISAO 28(1977)
一182一
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