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01 表紙 - 経済産業省

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01 表紙 - 経済産業省
経済産業省委託事業
平成 26 年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(ISO 50001(国際規格
エネルギーマネジメントシステム)関連規格及び我が国における ISO 50001
の普及等に関する課題等分析調査)
報告書
平成 27 年 2 月
一般財団法人 省エネルギーセンター
平成 26 年度 調査報告書
目
次
報告要旨
ページ
1. 事業の目的
1
2. 事業内容とスケジュール
1
2.1 事業の内容
1
2.2 スケジュール
2
3. ISO 50001 関連規格の策定・制定に関する情報収集と分析
3.1 ISO/TC242(Energy management) 技術委員会に関する情報収集
3.1.1 チリ国際会議の概要
3
3
3
3.1.2 ISO 50001 関連規格ドラフトの概要
10
3.1.3 ISO 50001 の改定の動向
35
3.2 ISO/TC257(Energy saving) 技術委員会に関する情報収集
37
3.2.1 オランダ国際会議の概要
37
3.2.2 フランス国際会議の概要
51
3.2.3 ISO/TC257 関連規格ドラフトの概要
57
3.3 GSEP エネルギーマネジメント WG に関する情報発信
66
3.3.1 GSEP エネルギーマネジメント WG の各国取組動向
66
3.3.2 エネルギーマネジメントタスクフォースの活動概要
67
3.3.3 計測検証タスクフォースの活動概要
69
3.3.4 有資格者タスクフォースの活動概要
76
3.3.5 GSEP EMWG 情報共有サイトの概要
77
4. エネルギーマネジメントにおける ISO 50001 規格の活用に関する国内調査
4.1 認証取得企業の規格活用の実態調査
92
92
4.1.1 空調機製造業における事例
92
4.1.2 大学における事例
100
4.2 エネルギー管理活動への規格要求事項の活用実態
104
5. 海外主要国のエネルギー管理に関する政策動向調査
111
5.1 米国・中国・EU 等におけるエネルギー管理標準化の動向
111
5.2 エネルギー使用設備の効率評価基準運用の動向
126
6. ISO 50001 規格の国内普及に向けた情報発信
134
6.1 広報サイトのコンテンツの作成
134
6.2 講演会等による普及
138
i
報
告
要
旨
2011 年 6 月に発行された国際規格エネルギーマネジメントシステム(ISO 50001)は,事業者がエネ
ルギー使用に関して,方針・目的・目標を設定し,計画を立て,手順を決めて管理する活動を体系的に
実施するために必要とされる事項を定めた国際規格であり,エネルギー使用の体系的な運用管理を可
能とすることで,省エネルギーのみならず,エネルギーコストや環境負荷を低減することができ,また
企業イメージの向上や商取引上における優位性にも繋がるものである。
また,従来の ISO 9001,14001 などの品質・環境マネジメントシステムとは異なり,エネルギーレビ
ュー等の項目として,データの測定・分析・評価や運用基準・手順の設定から文書類の整備などが要
求事項として設けられていることで,事業者が国内法であるエネルギーの使用の合理化に関する法律
(以下,省エネ法)の対応を進めるうえでも整合が図られた規格となっている。
これは,本規格の制定プロセスにおいて,我が国の省エネ技術やエネルギー管理に詳しい専門家を
派遣しつつ,かつ省エネ法との整合性を念頭において規格案の作成を各国と協調して進めてきたこと
によるものである。
以上から,本事業では,現在関連規格として策定作業が進められている ISO 50001 シリーズの関連規
格の策定においても積極的に策定作業に関与していくとともに,国内法である省エネ法との整合性を
図ることで,国際的にも我が国の優れたエネルギーマネジメント手法を普及させ,エネルギー需給の
安定と我が国企業の競争力強化に繋げるための課題の調査分析を実施した。
(1) ISO 50001 関連規格の策定・制定に関する情報収集と分析
①ISO/TC242 技術委員会及び ISO/TC257 技術委員会に関する情報収集・発信及び関連会合への参加
エネルギーマネジメント構築の手引となる ISO 50001 関連規格の開発審議が行われている
ISO/TC242 及び ISO/TC257 技術委員会に参加し,省エネ対策としての実効の観点に加え,我が国の企
業に対する実務上の負担軽減,国際競争力への影響,省エネ法との整合性等の観点から情報収集・分
析を行い,関連規格へ盛り込むべき項目等についてコメント提案した。
②GSEP エネルギーマネジメントワーキンググループに関する情報収集・発信及び関連会合への参加
GSEP のエネルギーマネジメント WG に参画し,各種の検討テーマについて,各国の取組み事例の情
報を収集しつつ,省エネ法等に基づく我が国の省エネ対策に係る実績等を情報発信した。
上記の委員会等において議論される詳細規格について,我が国の企業に与える影響,省エネ法との
整合性を整理し,盛り込むべき項目や落とすべき項目などをまとめ,国際会議に参加するとともに必
要に応じて我が国としての意見を表明し,調整を行った。
(2) エネルギーマネジメントにおける ISO 50001 規格の活用に関する国内調査
ISO 50001 の認証を取得した工場やオフィスにおいて,事業者(省エネ法規制対象外の中小規模事業
者を含む)が省エネ法に基づく取り組みを進めるなか,ISO 50001 規格をどのように活用(自己宣言も
含む)しているかなど,エネルギーマネジメント運用時の実態についてのヒアリングや文献等による
分析調査を行った。
①認証取得企業の規格運用の実態調査
他の事業者の参考となるよう,既に ISO 50001 を認証取得している企業のエネルギーマネジメン
トの取組事例 2 件を新規に調査し,規格の有効な活用方法や導入運用における課題・コスト等の実
態を分析した。得られた規格を活用したエネルギー管理の進め方の事例として体系的に整理し,資
源エネルギー庁ホームページの ISO 50001 ポータルサイトに公開した。
(3) 海外主要国のエネルギー管理に関する政策動向調査
米国,中国,EU 等主要国の省エネルギー関係施策における ISO 50001 の活用法,ISO 50001 の普及促
ii
進策及び新たなエネルギー管理標準化,政策制度等についての情報収集・動向調査を文献等により行
った。
情報を収集した ISO 50001 の制度化を進めている海外主要国の政策動向をポータルサイトに公開し
た。
(4) ISO 50001 規格の国内普及に向けた情報発信
ISO 50001 規格の認証取得数の増加に向け,認証取得の検討に際し必要な最新情報及び取得メリッ
トの情報を体系的に整理するとともに,情報発信を行うためのウェブ用電子データを作成し,資源エ
ネルギー庁ホームページに掲載した。
また,地方公共団体等の公的機関が参加費無料で開催する ISO 50001 に関する説明会やセミナー等
へ専門家を派遣することで理解普及に繋げた。
①広報サイトのコンテンツの作成等
事業者が ISO 50001 規格に関する最新の情報を知り,その活用メリットを理解できるよう,本調査
業務で得られた知見等をコンテンツとして作成し,ポータルサイトに公開した。
②講演会等での講演
地方公共団体等公的機関等が事業者を対象に主催する ISO 50001 関連の説明会・セミナーに専門
家を派遣し,先行事例等を活用し,省エネ効果,国際取引の円滑化等導入メリットを講演した。説明
会参加者にエネルギーマネジメントに関する問題意識等をアンケート調査した。
iii
1. 事業の目的
2011 年 6 月に発行された国際規格エネルギーマネジメントシステム(ISO 50001)は,事業者がエネ
ルギー使用に関して,方針・目的・目標を設定し,計画を立て,手順を決めて管理する活動を体系的に実
施するために必要とされる事項を定めた国際規格であり,エネルギー使用の体系的な運用管理を可能
とすることで,省エネルギーのみならず,エネルギーコストや環境負荷を低減することができ,また企
業イメージの向上や商取引上における優位性にも繋がるものである。
また,従来の ISO9001,14001 などの品質・環境マネジメントシステムとは異なり,エネルギーレビュ
ー等の項目として,データの測定・分析・評価や運用基準・手順の設定から文書類の整備などが要求事
項として設けられていることで,事業者が国内法であるエネルギーの使用の合理化に関する法律(以下,
省エネ法)の対応を進める上でも整合が図られた規格となっている。
これは,本規格の制定プロセスにおいて,我が国の省エネ技術やエネルギー管理に詳しい専門家を派
遣しつつ,かつ省エネ法との整合性を念頭において規格案の作成を各国と協調して進めてきたことに
よるものである。
以上から,現在関連規格として策定作業が進められている ISO 50001 シリーズの関連規格の策定にお
いても積極的に策定作業に関与していくとともに,国内法である省エネ法との整合性を図ることで,国
際的にも我が国の優れたエネルギーマネジメント手法を普及させ,エネルギー需給の安定と我が国企
業の競争力強化に繋げていく。
2. 事業内容とスケジュール
2.1 事業の内容
本事業の目的を達成するため,以下の内容の業務を実施する。
(1) ISO 50001 関連規格の策定・制定に関する情報収集と分析
①ISO/TC242 技術委員会及び ISO/TC257 技術委員会に関する情報収集・発信及び関連会合への参加
②GSEP エネルギーマネジメントワーキンググループに関する情報収集・発信及び関連会合への参加
上記の委員会等において議論される詳細規格について,我が国の企業に与える影響,省エネ法との
整合性を整理し,盛り込むべき項目や落とすべき項目などをまとめ,国際会議に参加するとともに必
要に応じて我が国としての意見を表明し,調整を行う。
(2) エネルギーマネジメントにおける ISO 50001 規格の活用に関する国内調査
ISO 50001 の認証を取得した工場やオフィスにおいて,事業者(省エネ法規制対象外の中小規模事業
者を含む)が省エネ法に基づく取り組みを進める中,ISO 50001 規格をどのように活用(自己宣言も含
む)しているかなど,エネルギーマネジメント運用時の実態についてのヒアリングや文献等による分
析調査を行う。
(3) 海外主要国のエネルギー管理に関する政策動向調査
米国,中国,EU 等主要国の省エネルギー関係施策における ISO 50001 の活用法,ISO 50001 の普及促
進策及び新たなエネルギー管理標準化,政策制度等についての情報収集・動向調査を文献等により行
う。
(4) ISO 50001 規格の国内普及に向けた情報発信
ISO 50001 規格の認証取得数の増加に向け,認証取得の検討に際し必要な最新情報及び取得メリット
の情報を体系的に整理するとともに,情報発信を行うためのウェブ用電子データを作成し,資源エネ
ルギー庁ホームページに掲載できるようにする。
また,地方公共団体等の公的機関が参加費無料で開催する ISO 50001 に関する説明会やセミナー等
- 1 -
へ専門家を派遣することで理解普及に繋げる。
2.2 スケジュール
表 2.2.1 に本事業の調査内容とスケジュールを示す。
表 2.2.1 事業スケジュール
- 2 -
3. ISO 50001 関連規格の策定・制定に関する情報収集と分析
3.1 ISO/TC242(Energy Management)技術委員会に関する情報収集
3.1.1 チリ国際会議の概要
(1) 第 8 回国際会議の概要
○会議名:ISO/TC242 チリプレナリ―会議
○日時:平成 26 年 6 月 8 日(日)~13 日(金)
○場所:チリ サンチアゴ市 ベストウエスタンプレミアマリナラスコンデスホテル
○参加国:カナダ,ブラジル,チリ,中国,フランス,インド,アイルランド,韓国,メキシコ,
スウェーデン,英国,米国,日本 計 13 か国
○日本からの参加者:石原 明 委員(省エネルギーセンターより専門家派遣)
(主に JWG4 に参画)
同行者:井上委員(JEITA),坂本事務局員(エネルギー総合工学研究所),岩崎補佐(METI)
○会議日程
表 3.1.1.1 チリ会議日程
※
※WG 会合テーマの概要:
○WG1P1:ISO50004 の開発/「EnMS の実施,維持と改善の指針(ガイダンス)
」
…ISO50001 の章立てに沿って,導入,実施,改善のポイントを解説するもの。
○WG2:ISO50006 の開発/「エネルギーベースラインとエネルギーパフォーマンス指標(EnPI)を用
いたエネルギーパフォーマンスの計測の一般原則と指針(ガイダンス)
」
…組織のエネルギーパフォーマンスを管理するために用いられる EnPI の設定と使用,見直しと改善
等及びエネルギーベースラインを確立,運用,維持,更新するための指針及びツールの提供を行うも
の。
○WG5:ISO50007 の開発/「エネルギーサービス」
…韓国が新規に提案したテーマで,エネルギーサービスを行う事業者がユーザーのニーズと期待を
どのように特定し,どのように適合しているかを評価するためのガイダンスの提供を行うもの。
○WG6:ISO 規格の開発/「ビルのエネルギーデータ交換プロトコル」
…米国が新規に提案したテーマで,ISO50001 を効率的に実施するためのエネルギー管理システムか
ら出力されるデータセットの要求事項を規定するもの。
○JWG4:ISO17747 の開発/「組織の省エネ方法」
(主に参画した WG)
…プラント,事業所,会社,公的機関,NPO を含む組織の省エネルギーの技術的なルールの標準化を行
うもの。組織全体の省エネルギーの計算方法に関するガイダンス等を含む。
- 3 -
(2) TC242-JWG4 討議結果まとめ
今回の会議では,省エネ法に基づく省エネ推進を進める事業者の活動に関係の深い JWG4「組織の省
エネ方法」のテーマの議論に参画し,情報収集と日本コメントの発信を行った。
1) ISO17747 の概要と目的
ISO17747 の趣旨は,組織における省エネ量を組織全体の観点から求めることにある(規格の表題は,
“Determination of Energy Savings in Organizations”
)。
この方法として 2 種類の方法が想定されており,Method1,Method2 として議論されている。今回の討
議の結果では,Method1 の名称は Organizational Approach,Method2 の名称は EPIA-based Approach
(EPIA:Energy Performance Improvement Action)となっている。
Method1 は,組織のエネルギー使用を把握し,それによって組織の省エネ効果を求めるもので省エネ
量把握の基本的な方法と考えられる。
Method2(EPIA-based Approach)は,EPIA による省エネ効果を積算することで組織全体の省エネ量が
得られるという考え方に基づいている。この規格は,個々の EPIA の効果の計算方法を提示するもので
はなく(個々の計算方法は他の規格に提示されているという前提に立っている),個々の効果を積算し
て組織全体の効果とすることに着眼していることに注意する必要がある。
2) Method1 の論点
組織全体を把握するときに,特に大きな組織では,事業所単位に分けてエネルギー使用を把握し,そ
れを積算することが行われる。
また,同じ事業所の中でも製品等の種類によってエネルギー使用を把握
し,それを積算することが行われる。
従って,これらの方式を定式化することが本規格の要点の一つである。そして,異なる 2 時点間を比
較して省エネ量を求めるために,条件変化をどのように織り込むか,原単位を使用する方
法,normalization の有無などの記述が論点となる。
3) Method2 の論点
EPIA をベースとして積算する場合,EPIA 間での効果の重複カウント,相互干渉によって,また EPIA
以外による変化によって,積算値と Method1 で求めた値とが異なる可能性がある。差異がありうること
を前提として,注意点を記述することが本規格の Method2 に関する要点の一つである。重複カウントと
は何か,相互干渉とは何かなど適切に定義することも必要ではあるが,これらを具体的に求める一般的
な方法があるわけではないので,定義してもそこから計算方法が得られるわけではない。
Method1 が通常に実施されていることは明らかと思われるが,Method2 は必ずしも常に行われている
わけではない。しかし,Method1 のみでは具体的にどのような対策によって省エネ効果が得られたかが
明らかでないため,効果を得られた理由として実際に分析されることが多い。また,Method2 による分
析は,組織として省エネ計画を進め,実施するために必要な情報でもある。
4) 原単位と normalization
重要な論点の一つである。効果検証の一般理論の観点では ,例えば,一次式などによる
normalization を行うことが望ましいが現実には,このような式をもっているケースは限られており,
また,回帰式を統計的に求めようとしても EPIA の効果と交洛する可能性もある。このようなことを考
慮すると原単位によって評価することは,効果の把握と管理の方法を包含する形で有力である。
この点についての議論は結局どちらかに絞ることはできず,オプションとして併記される形となっ
ている。ただし,現テキストは原単位把握を定数項ゼロの一次式として捉え,統計的な回帰式を必要と
しないものと捉えているが,数式的な観点だけでなく,別の観点での有用性記述を次回コメントで提案
することが考えられる。
5) 温室効果ガス排出との関係
- 4 -
省エネ効果の把握は,温室効果ガス排出削減量の計算のためのインプットとなるため,ISO17747 に
はそのことが記述される。
しかし,組織を超えて広い範囲での温室効果ガスの排出削減との関係を論じ
ることは省エネ効果の把握という ISO17747 の範囲外であると考えられるため,記述はごく限定された
範囲となる見込み。
6) 式記述
分かりやすくするために,ISO17747 は式記述を一部使用する。しかし,これを多用することには反対
が強い
(かえって分かりにくくなる,式の形にすることであたかも理論的に答えが得られるかのような
誤解を与える可能性がある等)ため,最小限にとどめる。
7) Annex
Method1 と Method2 の把握の対比の図示,複数製品を有する場合の省エネ効果把握例(日本作成),
セメントにおける省エネ効果把握例(インド作成),省エネ効果把握に使われる物理単位などの Annex
を添付する。
複数製品を有する場合の省エネ効果把握例については,現在の内容は複数製品の総合化に
おいて金額を使用しているが,その点についての反対が強く,金額ではなく物理量を使用する内容に修
正することとした(2 週間程度で提示する)
。
8) ISO17747 の今後の作成スケジュール
コメントを出している国が少ないことなどから,WG 内の多数の意見により,すぐ DIS に行くことはせ
ず,現在の CD2 から CD3 へ進めて広くコメントを求め,その次に DIS を予定することとなった。ただし,
内容はかなり煮詰まってきているとの認識では一致している。
(CD3 の議論時期として秋を予定。その DIS 案を投票にかけ,そのコメントを 2015 年 6 月のメキシ
コでの会議で議論する見込み。
)
(3) TC242-JWG4 討議状況(個別討議記録)
◇2014 年 6 月 8 日(AM/PM)
参加者:計 8 名
参加者内訳:Ian Byrne(UK,JWG4 主査),David Hyde(UK, secretary) ,Suhas Lohokare(インド副主
査),石原,Michel de
Laire(チリ),Peter Therkelsen(US),William Miller(US),Kevin Wallace
(Canada)
<議事概要>
1) 討議スケジュール
主要部から討議するということで,次の順番で進めたい旨,主査から提案があり,了解された。
① 全体と introduction(コメント 1~47)
② 第 4 章(コメント 63~130)
③ 第 5 章(コメント 131~247)
④ 第 6 章(コメント 248~262),第 3 章(コメント 48~62),ANNEX(コメント 263~)
第一日は①を終了。
なお,ANNEX については,A,D,E は改定版(一部は会議中送付)をもとに討議するとのこと。
2) 次のステップについて
次のステップが DIS の場合は,次回のミーティングは DIS 投票後,2015/1~3 月にアジアで開催と見
込まれる TC257 全体会議の予定(主査説明)
。これに対して,US から CD3 で一度討議したいとの提案が
あり,この点については進捗を見て,最終日に決定することとなった。
3) 全体に関する討議
US から,Method1(組織全体の把握)と Method2(EPIA の積み上げ)について各文との対応などを明
- 5 -
確にして,混乱しない規格とする必要がある旨の意見。
日本からは,特に Method 1 の部分が重要であり,エネルギー管理の観点からの実用性を重視したい旨
の意見を説明。
日本委員から提出されている意見文について,インドから比例的な式の使用は固定的なエネルギー
消費部分を無視しており,理論的に不適切で実際にも合わないとの主張。これに対して,近似的に固定
部分を扱わないことで取り扱いが容易となり,エネルギー管理の観点から有用と説明したが,インドの
賛成は得られなかった。
しかし,日本委員が提出した意見文中の Method1,Method2 の特徴を対比した表
は非常に有用であり,一部を修正して,この表を採用してはどうかとのインドからの意見提出があり,
使用することで一致。本文か Annex の議論についての結論は出ていない(本文として入れるには適当
な場所が難しい)
。
4) introduction の文章の修正
修正案文を提示しているインドと US の案文をベースに検討。メインパートに US の案文をベースと
して採用することとし,その修正作業を実施(他の規格との関係, boudary の記述の仕方などで意見が
まとまらず,最終的には主査の修正案となっている)
。
コメント 1~47 についての検討も実施しているが,案文の修正がメインであるため,コメントごとに
は大きな論点はなかった。
また,温室効果ガスの計算との関係について,全体的に記述した文章は,本規格の対象外の事項であ
る不適切との US の意見があり,これを削除し,計算の面で本規格による省エネ量把握は,温室効果ガス
の計算のためのインプットとなりうることを冒頭の部分で記述することにとどめることになった。
◇2014 年 6 月 9 日(AM/PM)
参加者:計 6 名
参加者内訳:Ian Byrne(UK,JWG4 主査),David Hyde(UK, secretary) ,Suhas Lohokare(インド副主
査),石原,Peter Thekelsen(US),William Miller(US)
<議事概要>
1) 第 4 章(energy accounting)の討議
US から多くの案文変更が提案されており,その点を中心に討議。内容的には,事前チェックでも US
の案文に特段の問題はないと考えられるため,特段の論点はない。US はまた 4 章の内容が,スコープ,
バウンダリーからエネルギー集計(energy accounting)に及び広範であるため,二つの章に分けるこ
とを提案。討議をしたが,特別反対する理由もないため全員が了承する形で,二つに分けることになっ
た。
日本からは,スコープにおける目的の記述,バウンダリーの記述に関するところで,項目によって,計
算 Method1,計算 Method2 に多少偏る場合もあるため,その点の記述を入れるべきというコメントが複
数提出されているが,計算 Method は後述の章のテーマであるため具体的な入れ方が難しく,また,目的
と計算方法を完全に紐付けすることには反例による反対が多く,断念。代わりに,5 章(4 章の分割によ
る 6 章となる)に計算 Method の特徴を記述する案文を翌朝提案して論議することで了承を得た。案文
は討議終了後作成しており,翌日朝提出。
その他の Editorial なコメントについては基本的には了承されているが,US の提案文に変化したこ
とによって,コメントの対象外となっているところもある。
2) 5 章(新 6 章)のコメント処理(コメント 63~途中まで実施)
上述の計算 Method の特徴についての説明は,6.1.3(旧タイトルでは topdown と bottomup に関する
記述)に追加することとなった。topdown と bottomup の名称については,bottomup は日本,US の案で
- 6 -
ある EPIA-based とすることとなった。しかし,topdown については決定的な名称を得られず,再度協議
することとなった(日本:index-based,US:boundary ともいまひとつ適切でないという見解が大勢。
)
◇2014 年 6 月 10 日(AM/PM)
参加者:計 7 名
参加者内訳:Ian Byrne(UK,JWG4 主査),David Hyde(UK, secretary) ,Suhas Lohokare(インド副主
査),石原,Peter Therkelsen(US),William Miller(US) ,Michel de Laire(チリ)
<議事概要>
1) 5 章(新 6 章)の討議とコメント処理
5 章について,文章を詳細に提供しているアメリカのコメントを中心に検討。アメリカの検討内容に
は大きく論議になる点は少なく,スムーズに進行した。
一点,前回のカナダでの討議の後, 日本委員から追加がなされた determination of energy の
general principle について,用語の記述についてはよいが,数式については追加分を削除し,元に戻し
たいという発議があった(アメリカの発議であるが,他の参加者全員が賛成)。日本委員の意図を確認
して回答することとしたが,WG 全体の見解であること,また,インドの提案もあり,モデルには複数の
オプションを採用することとしたため,数式で記述する場合はそれらの全部を記述すると非常に煩雑
になることから,元に戻すことは了承せざるをえないと考えられる。なお,この点の討議の過程で,ここ
までドラフトがまとまってきたことへの日本委員の貢献について,WG の各メンバーから改めて謝意が
あった。
2) 6 章(新 7 章)及び 3 章の討議とコメント処理
これらのコメント処理を終了し,残された討議項目は,6.1.3 の記述と Annex となった。これらを翌
日に討議する予定。
6 章の論点は Method2 における二重カウントの取り扱い。二重カウントが存在しうること,二重カウ
ントは Method1 と Method2 の計算結果を異ならせる原因となり,その分析自体が重要であることなどは
記述できるが,具体的な二重カウント分の計算方法があるわけではないので,誤解を生じないよう慎重
な記述が求められる(フランスのコメントなど)
。
6 章の第二の論点は,Method2 において全ての EPIA を計算すべきとするかどうかという点。結論とし
ては,厳密な意味ですべてということでなく,組織のエネルギー管理者が実施し認識している重要な
EPIA は対象に含めるべきというところに落ち着いた。そうしないと Method1 と Method2 の対応性を確
保できず,一方で厳密にすべてというのは現実的でないため。
3 章(定義)については,double count, interaction, overlap などの定義の仕方が議論の対象。た
だし,これらの用語は,定義によって内容が変更になるものではなく,時間をかけて細かい定義文を検
討することの意義が乏しいため,厳密さを求めないということで合意。
◇2014 年 6 月 11 日(AM/PM)
参加者:計 8 名
参加者内訳:Ian Byrne(UK,JWG4 主査),David Hyde(UK, secretary) ,Suhas Lohokare(インド副主
査),石原,Peter Therkelsen(US),William Miller(US) ,Mary-Rose Nguyen(US),Kevin Wallace(Canada)
<議事概要>
1) Annex A の討議とコメント処理
Annex A(normalization):Normalization についてはすでに本分に詳細の記載があり,追加すべき
内容に乏しいから削除してはどうかという US のコメントを考慮し,意味がある部分のみを本文に移し,
- 7 -
他は削除することとなった。
Annex B(省エネ量把握のマクロ的な図示)
:特に大きな変更なし。
Annex C(省エネ量把握例,日本作成)
:複数のプロダクトをもつケースとして意味があり,あったほ
うがよいというのが共通の認識。ただし,金額を原単位分母として用いることは,現実には使用される
場合もあるが,誤った認識を広める恐れがあり,また,少なくとも本規格の例としては適切でないとの
見方が大勢。そこで本例の基本的な構造を残して,金額の使用を削除した文案を日本サイドで作成し,
主査に確認した上で Annex C とすることとした(1~2 週間で対応)。また,複数のプロダクトの評価に
ついては,ベースプロダクトに還元する方法を使用してほしい WG 意見(インドコメント)を考慮し,
その方向で作成する。
Annex D(セメント工場のデータ分析例,インド作成)
:日本から修正コメントが多く出ている例であ
るが,インドサイドでコメントを考慮した変更分を準備しており,これによってコメントへの対応はな
されているため,変更案を採用することで承認された。ただし,長文になっていることもあり,分析過程
を 2 つに分けて,2 つの Annex として掲載することとなった。
Annex E(省エネの表現単位,イギリスがコメントの形で新たに提案したもの)
:必要な内容の記載で
あることから,Annex として採用する。
なお,討議過程で出ていた日本のコメントの中の表を織り込んではどうかという考え方については,
今回は十分議論できず,Annex としての挿入は見送られている。分かりやすい表に直して CD3 へのコメ
ントとして提出してはどうかと考える。
2) Method1 と Method2 に関する特徴の記述(6.1.3 章)の討議
今回の討議過程で作成し,提案した文案が基本的に採用された。英文としての修正,他の章から移動
する内容の追加などを主査が実施した上で CD3 に織り込む。なお,検討過程では日本サイドで複数の案
をもっているため,再度チェックし,修正が必要な部分があれば CD3 へのコメントとして提出すること
としたい。
3) 今後の予定
今回の作成文書についての WG 内でのコメントを求めて練り直して DIS 投票とするか,また,CD3 とし
てコメントと投票を求めるかを議論。アメリカ,日本,カナダが CD3 投票を支持し,TC242 事務局と相談
の結果 CD3 の方向で進むこととなった。今後 7 月に CD3 を circulate,コメントをまとめて 10 月頃 WG
会議を行って DIS 案を作成して投票し,次回の TC242 全体会議(メキシコを予定)で DIS へのコメント
を討議し,発行に向かう予定。
4) 今回作成された案文についての見方
組織の energy manager が本規格(ガイダンス)の主要な使用者として想定されている。組織全体の
省エネ量を把握するときの基本的な考え方などを整理したものになっており,概念を整理する上で役
に立つ内容としてまとまってきている。組織による省エネ量の外部への報告の基準として使用される
かどうかは不明であるが,省エネの評価・ランキングなどを行う機関が評価の際に,組織が行うべき省
エネ量の把握が本規格の考え方を踏まえているかどうかの判断基準として使用される可能性はあると
思われる。
(4) TC242 第 8 回会議のまとめ
チリ会議での決議事項(Resolution)は以下の通り。
1) WG1 の推薦に基づき,TC242 は FDIS を飛ばして ISO50003:2014 発行に同意
2) WG1 の推薦に基づき,TC242 は ISO50004 の FDIS に同意
3) WG2 の推薦に基づき,TC242 は ISO50006 の FDIS に同意
- 8 -
4) JWG4(TC257 が主導)の推薦に基づき,TC242 は ISO17747 の CD3 に同意
5) TC242 は IAF(International Accreditation Forum)をリエゾンメンバーに加えることを同意
6) TC242 は消費者国際連盟(Consumers International,CI)をリエゾンメンバーに加えることを同意
7) ISO50001 の改定のための作業
・ISO50001 を ISO マネジメントシステム共通のハイレベル(上位)構造にマッピングすること
・修正すべき単一項目,ISO50001 実施において特定された処理が必要な項目,取り扱うべき新たな項目
の特定を TC242 メンバーに調査
・2015 年の本会議にガイダンスとして報告
8) WG6 の設置
・ビルシステムのエネルギーデータ交換に関する作業
9) TC242 コンベナーの確認
WG1:米国
WG2:ブラジル,カナダ
JWG3:南ア,ドイツ
WG4:英国,日本
WG5:韓国,マレーシア
10) TC242 会合開催
第 9 回 TC242 会合は 2015 年 6 月にメキシコで開催。2016 年スウェーデン,2017 年韓国の予定。
- 9 -
3.1.2 ISO50001 関連規格ドラフトの概要
ISO50001 関連規格のドラフトは以下の 7 つの WG で審議されている。
①WG1/P1:ISO50004 の開発
EnMS の実施,維持,改善のためのガイダンス(EnMS 実施のための利用手引)…主査:アイルランド
②WG1/P2:ISO50003 の開発
EnMS 監査ガイダンス(EnMS 監査員の力量,実施基準の利用手引)…主査:韓国
③WG2:ISO50006 の開発
エネルギーベースラインとエネルギーパフォーマンス指標を用いたエネルギーパフォーマンスの測
定(一般的な原則とガイダンス)…主査:ブラジル&カナダ
④JWG3:ISO50015 の開発
エネルギーパフォーマンスの計測・検証( EnPIs 改善度の測定と検証の方法)…主査:南ア&ドイ
ツ
⑤WG4:ISO50002 の開発
エネルギー診断(エネルギーレビューにおける診断の要求事項)…主査:英国&日本
⑥WG5:ISO50007 の開発
エネルギーサービス(ユーザーに対するサービスの評価と改善のためのエネルギーサービスガイド
ラインに関する活動)…主査:韓国,マレーシア
⑦WG6: ISO50008 の開発
ビルシステムのエネルギーデータ交換に関する作業・・・主査:米国
以下に各ドラフトの概要と特徴を示す。
- 10 -
①ISO50004:EnMS の実施,維持と改善のためのガイダンス
○目的
あらゆる規模,タイプ,立地場所,成熟度をもつ組織に対して適用可能な,EnMS の確立,実施,維持,改
善のための実施ガイダンスと例を提供すること。
○ISO/FDIS50004 目次
1 適用範囲
2 引用規格
3 用語,定義,略号
4 EnMS 要求事項
4.1 一般要求事項
4.2 経営層の責任
4.2.1 トップマネジメント
4.2.2 管理責任者
4.3 エネルギー方針
4.4 エネルギー計画
4.4.1 一般
4.4.2 法的要求事項
4.4.3 エネルギーレビュー
4.4.4 エネルギーベースライン
4.4.5 EnPI
4.4.6 エネルギー目的,目標,行動計画
4.5 実施及び運用
4.5.1 一般
4.5.2 力量,教育訓練,自覚
4.5.3 コミュニケーション
4.5.4 文書化
4.5.5 運用管理
4.5.6 設計
4.5.7 エネルギーサービス,製品,設備及びエネルギーの調達
4.6 点検
4.6.1 監視,測定及び分析
4.6.2 測定と成果物の原則
4.6.3 EnMS 内部監査
4.6.4 不適合に対する修正
4.6.5 運用の記録
4.7 マネジメントレビュー
4.7.1 一般
4.7.2 マネジメントレビューへの入力
4.7.3 マネジメントレビューからの出力
・記録管理
図 3.1.2.1 ISO/FDIS50004:EnMS 実施ガイダンスの目次構成
・マネジメントレビュー(MR)
・MR へのインプット
・MR へのアウトプット
・アネックス A:エネルギー方針の例
・アネックス B:エネルギーレビューの例
・アネックス C:行動計画の例
・アネックス D:エネルギー測定計画の策定
・アネックス E:キーコンセプトの関係
- 11 -
○管理責任者(Management representative)の要件
管理責任者には,技術専門的なバックグラウンドに関わらず以下の能力が必要である。
・要員をリードし,動機付けを与えられること
・変化を管理し,変化に働きかけられること
・組織全体にわたって有効なコミュニケーションが図れること
・問題解決や合意形成ができること
・エネルギー使用や消費量のコンセプトを理解できること
・エネルギーパフォーマンスを理解する基礎的分析力をもつこと
○エネルギーマネジメントチーム(Energy management team)のメンバー選任要件
組織の規模や複雑さに応じてチームメンバーには以下の人を加える。
・EnMS の技術的要素と組織的要素の両面について言える技能と機能をもつ活動要員
・予算を決定できる人または予算に立ち入れる人
・購買担当の要員
・設備の運転要員,特に著しいエネルギー使用(SEU)に関わる人
・業務用ビルのテナント責任者
・EnMS の運用管理に責任のある人
・保守と施設の要員
・継続的改善チームのような改善活動に参加している生産要員
・組織全体の EnMS を促進することができる人
・交替班(クルー)の責任者
・サプライチェーンの管理者
・設備のエネルギー費用や建物管理データなどの重要データを参照できる人
○法的要求事項(Legal requirements)
法的要求事項等には以下のようなものがある。
(法令)
・国の法律,自治体の条例
・設備のエネルギーパフォーマンス基準
・エネルギーのアセスメント規則や監査の要求事項
・ビルのエネルギー規定
(その他取り決め事項)
・組織で決めたガイドライン
・顧客やサプライヤーとの合意事項
・ガイドライン
・自発的な実行要綱
・自発的なエネルギー合意事項
・地域団体との合意事項
・組織団体の公のコミットメント
・政府や民間のエネルギーパフォーマンスの最小限度の要領規定
・電気やガスの供給網の制限
○エネルギーレビュー(Energy review)
エネルギーレビューは,エネルギー計画の策定プロセスの分析の部分に当たる。エネルギーレビュー
- 12 -
の良し悪しは,収集データの利用可能性,品質,分析によって影響を受ける。
(データソース)
データ分析では,下記のようなエネルギー関連のデータソースを対象とすればよい。
・計器の読取値
・エネルギー消費量の推計
・モデルシミュレーション値
・装置データ
・週毎のメンテナンスログ
・サービスログ
・コントロールシステムデータ
・エネルギー源購入時の請求書
・エネルギー診断レポート
・前回のエネルギーレビュー記録
(著しいエネルギー使用の領域(SEU)の特定)
著しいエネルギー使用の領域は,エネルギーマネジメントの優先度を確立する目的で以下の基準に
基づいて決められる。
①多大なエネルギー消費量の領域で,組織全体の消費量の一定割合以上のエネルギー使用の領域と
するか,またはパレット分析を用いて決める。
②かなりのエネルギーパフォーマンスの改善の機会がある領域で,エネルギー診断,エンジニアリン
グ検討,要員とのインタビュー,内部外部のベンチマークの結果に基づいて決める。
複雑なエネルギーシステムを解析する手法には以下のようなものがある。
・エネルギー診断
・プロセスマップ
・グラフとチャート
・スプレッドシート
・サンキーダイアグラム
・マスフローバランス
・エネルギー使用図
・エネルギー使用と消費のシミュレーションモデル
・関連変数の回帰分析
SEU に関連する変数の例示では,
・気象条件(冷暖房デグリーデー)
・生産関連(数量や品質)
・プロセスパラメータ(外気温度,冷却水設定温度,蒸気温度)
・材料フローとその属性
・ビルの入居率
・昼光利用率
・運転時間
・活動レベル
・エネルギー輸送距離
・車の積載率
・エネルギー源の利用可能性と成分(含水率やカロリー値)の範囲
- 13 -
(現状のエネルギーパフォーマンスを決める手法の例示)
・生産数量や外気温度に対して補正したエアーコンプレッサーの電力使用量
・冷却負荷や供給温度・周囲温度に対して補正した冷蔵プラントの電力使用量
・入室率や冷房日に対して補正したビルの電力・ガス使用量
・アウトプット当たりのエネルギー使用量(原単位)やエネルギー効率
・COP
・過去のエネルギー使用量との比・差異
改善機会を見つけるツールや手法の例示では
・従業員の提案
・ビジネス改善手法(シックスシグマなど)
・エネルギー診断
・ニーズ分析(過重な仕様設計)
・内部と外部のベンチマーキング
・製造メーカや設計設備の仕様
・メーター計測値のレビュー
・保守アセスメント
・予防保全手法
・最新の注目技術の適用検討
・ケーススタディ
・チーム検討会やブレインストーミング
・公開されている省エネ対策や省エネ手法
・設定されたパフォーマンスからのばらつきをレポートする連続監視システム
・アイデアを交換する関係者の集まり
・分析手法やモデリング
改善機会の優先度を決める基準要素の例示では
・予測されるエネルギー削減量
・ビジネスインパクト
・費用対効果
・実施コスト
・実施難易度
・環境影響の改善度
・法的要求事項
・リスクの許容度
・基金の利用可能性
○エネルギーベースライン(Energy baseline)
ベースラインは EnPI の使用目的によって次の 4 タイプがある。
①エネルギー消費量と関連変数の関数とする数学的関係式で表現されたもの
②エンジニアリングモデル
③単純な比(原単位,効率)
④単純な消費量データ(関連変数がない場合)
「あらかじめ定められた方法」とは,関連変数でノルマライズする方法,移動ベースラインまたは決
められた期間を用いてリセットする方法,法的要求事項を遵守した方法
- 14 -
○EnPI
EnPI のタイプは 4 つある。
① エネルギー消費量
② 単純な比(原単位,効率)
③ 統計モデル
④ エンジニアリングモデル
○エネルギー行動計画
有効な計画には以下のものを含むべき。
・責任の割り振り
・目的/目標の記載
・目的/目標を満たすための行動の要約(パフォーマンスの監視の手段,力量・訓練・自覚への必要な
見直し,運用管理とコミュニケーションへの必要な見直し)
・リソース(人材,技術,予算)の配分
・エネルギーパフォーマンスの検証の方法
・行動計画の有効性の検証の方法
・計画した行動スケジュール
・計画のレビューと更新のスケジュール
行動計画のアクション例として
・不要な装置の電源オフなどのベストプラクティスの実施
・圧縮空気漏れを削減するプログラムの確立
・エネルギー効率のよい調達の採用
・新設更新を含む予算プロジェクト
○実施と運用
内部コミュニケーションとしては次のものがある。
・イントラネットサイト
・電子メールや冊子
・要員向け掲示板,社報,エネルギー情報モニター
・定期会合,セミナー,現場の話し合い
・意識付けの日,キャンペーン
・報償制度
・ポスター
・ラべリングキャンペーン
○内部コミュニケ―ション
組織内コミュニケ―ションによって,EnMS のパフォーマンス,エネルギーパフォーマンスの他に以下
に示す情報が得られる。
・金融効果
・行動計画,目的,目標の達成度
・エネルギーパフォーマンス向上によるその他の利益(例えば環境性能または品質の向上)
・エネルギーパフォーマンスをより向上する構想
・情報収集源
・マネジメントレビューからのフィードバック
○外部コミュニケーション
- 15 -
組織外部のコミュニケーションには次の項目を含む。
・ISO50001 認証取得の声明
・エネルギー方針
・省エネ,エネルギー削減または改善の公約
・エネルギーに関する責任ある声明または公約
・各団体からの受賞
・改善または向上のための費用確保
・向上の目的,目標
・達成したエネルギーパフォーマンス
・エネルギーパフォーマンス向上分の排出量
・持続可能性
○文書管理
EnMS の管理計画に影響を与える外部文書の例を以下に示す。
・法律,条令,規則
・ビルの規約
・業務上の自主規制
・工業または他の規格
・公共料金と関税
・プロトコル(合意規定)
○運用管理
運用管理は以下の形態をとる場合がある。
・文書化された手順
・運用指導
・運用パラメータ
・機器(例えばフローコントロールバルブ,自動システム,またはプログラムコントローラ)
・設定値
・保守
・認可を受けた要員
・設計または他の仕様
・管理図のような監視の技術
・上述の項目の組み合わせ
○保守技術
保守は運用管理において重要であり,しばしばコスト要因の 1 つとなる。
保守技術を以下に示す。
・予防保全
・予知保全
・機器全体の実効性
・総合生産保全
・他の方法(1 回の施行で達成可能のような)
・壊れた場合の緊急対策
○設計
設計工程でエネルギー効率が減退する例を以下に示す。
- 16 -
・エネルギーパフォーマンスを考慮する前になされた決定
・小さなまたは補助的な機器のライフサイクルコストを考慮したことによる
・組織の追加的要求により,現存の同等のエネルギー効率の機器を最適化するより新しい機器を導入す
ること
・よりエネルギー効率を向上する代案があるときに,現存の機器,設備を新しい設計に統合すること
・システムが過大(例えばポンプシステム,圧縮空気システム,モータ)
・専門設計チーム間の協調の欠落
・設計においてサービスに対する契約上のエネルギーコストへの配慮の欠如
・要求事項に合致した設計より規格化された解を使用すること
・エネルギーパフォーマンスを最大化するための自動コントロールシステムの統合の欠如
・パイプ,ポンプのような小さなまたは補助的なシステムへの配慮の欠如
○エネルギーサービス,製品,機器,エネルギーの調達
調達の決定に影響または管理するため以下の項目に留意すると良い。
・組織のエネルギーパフォーマンスに大きな影響を持っている製品,機器,サービス
・組織が確認した SEU
・SEU に関連したエネルギーサービス,機器,製品の購入に対して,エネルギーパフォーマンスの基準を
サプライヤーへ連絡する事の必要性
・組織のエネルギーパフォーマンスへ影響を与える購入品のライフタイム全体にわたるエネルギーの
使用,使用量,効率を評価するために構築された基準
・機器の故障の頻度と緊急の置き換えに対して,よりエネルギー高効率な選択肢の利益評価
・エネルギーの料金体系:従量料金,契約料金,宅配サービス
・エネルギー購入契約に含まれている支給品
○エネルギーサービス
組織が購入したサービスの中には,以下に示すようなエネルギーパフォーマンスに影響を与える多
くのサービスがある。
・保守契約と保守サービス
・機器と技術的なアドバイス
・プロジェクトの設計,構築,稼働
・乗り物と交通のサービス
・エネルギーまたは用役の供給
○製品,機器の調達
エネルギーの調達品において,エネルギーの使用,使用量,効率を評価する基準の例を以下に示す。
・ライフサイクルコスト
・システム全体のエネルギーパフォーマンスにより期待される効果
・部分負荷または変動する負荷の下でのパフォーマンス
・エネルギー効率の等級(ラべリング制度を元にしたものも含む)
・政府機関または第三者からの認証
○エネルギーの調達
エネルギー調達の際の評価要素を以下に示す。
・数量
・配達
・価格または率
- 17 -
・契約期間
・柔軟性
・信頼性
○監視,測定,解析
エネルギー計画は,次の項目が記述されていればよい。
・何を測定,監視しているか
・なぜ測定するのか
・どのようにして測定されるのか
・期待される数値
・測定に関して重大な逸脱は
・重大な逸脱に関してとられる行動
・データの収集と測定のための要員の対応
・記録はどこで何を
・測定又は係数であるより特別なプロセス又は安全限界
・将来の測定要件
○EnMS の内部監査
内部監査のプロセスは,文書化され,次の項目を含むと良い。
・資格を有する審査員
・審査員の能力の検証
・監査される領域から独立した審査員
・定められた期間をカバーする審査スケジュール
・監査スケジュールと個々の監査計画作成は条項のみを基礎とせず,EnMS のプロセスにおいての組織
の工場,機器,プロセスのシステムを考慮に入れる。
・EnMS の監査範囲と狙いに合致し,定められた取組み
・監査の様式,チェックリストまたは他の監査ツールを含めて監査の実施と計画に対するプロセス
・トップマネジメントへの監査結果の編集と報告
・監査の不適合に関して責任,是正処置の完了,取り除くための要求事項を明確に決める
・監査プロセス,監査結果の適切な記録
○不適合,修正,是正処置,予防措置
修正,是正処置,予防措置で挙げられた要求は,以下の EnMS のいくつかのソースから決められる。
・内部監査,外部監査の結果
・順法の評価結果
・監視または測定のプロセスにおいて目標への達成度
・他社比較
・競争相手の分析
・供給者またはアウトソーシング
・法改正
・条令の変更
・公開された好事例
・業界団体
○記録の管理
次のリストは,ISO50001 を基にした最小限のリストである。
- 18 -
・エネルギーレビュー
・エネルギーの改善の機会
・エネルギーのベースライン
・エネルギー指標(EnPI)
・EnPI を更新または決定するための方法論
・能力と訓練
・設計
・指標の特質の測定と監視
・校正
・順法の評価
・内部監査
・修正と是正処置
・マネジメントレビュー
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②ISO50003:EnMS 監査し認証を与える機関への要求事項
○目的
EnMS 監査員の力量,監査の実施基準を提供すること。
ISO17021(マネジメントシステム認証登録機関(第三者審査・外部審査)への要求事項)のエネル
ギーマネジメント版の位置付け。
○ISO/DIS50003 目次
1 適用範囲
2 引用規格
3 用語,定義
4 EnMS 監査の特徴
5 監査プロセスの要求事項
5.1 一般
5.2 監査チームの選定
5.3 監査期間の決定
5.3.1 監査期間
5.3.2 効果的な人材
5.4 複数の現地サイトのサンプリング
5.5 現地審査の実施
5.6 監査レポート
5.7 初回認証監査
5.7.1 第一段階監査
5.7.2 第二段階監査
5.8 中間監査
5.9 更新監査
6 力量の要求
6.1 一般
6.2 一般の力量
6.3 技術分野の力量
・アネックス A : EnMS 監査の期間
・アネックス B: 複数サイトのサンプリング
・アネックス C: エネルギーパフォーマンスの継続的改善
図 3.1.2.2 ISO50003:EnMS 監査の目次構成
○一般の力量
監査員は以下の知識を備えていなければならない。
・EnMS と原則,エネルギー特有の用語,基礎的なエネルギー原理,エネルギー関連法規や条例な
ど,EnPI・ベースライン・関連変数,エネルギーパフォーマンスに関係する統計解析,エネルギーパフ
ォーマンスの評価,共通するエネルギーシステム,エネルギーパフォーマンス,改善活動,改善技術,
計測と検証,データ監視と分析
○技術分野とは
・産業(中規模以下,大規模),ビル,複合ビル,輸送,鉱業,農業,エネルギー供給
- 20 -
③ISO50006:エネルギーベースラインと EnPIs を用いたエネルギーパフォーマンスの測定
○目的
エネルギーパフォーマンスを計測するプロセスとして,エネルギーベースライン(EnBs)とエネルギ
ーパフォーマンス(EnPIs)の確立,使用,維持について,どのように要求事項に適合するかのガイダン
スを提供すること。
○ISO/FDIS50006 目次
1 適用範囲
2 引用規格
3 用語,定義
4 エネルギーパフォーマンスの測定
4.1 一般概要
4.1.1 一般
4.1.2 エネルギー消費
4.1.3 エネルギーの使用
4.1.4 エネルギー効率
4.1.5 エネルギーパフォーマンス指標(EnPIs)
4.1.6 エネルギーベースライン(EnBs)
4.1.7 エネルギーパフォーマンスの変化の定量化
4.2 エネルギーレビューによる関連するエネルギーパフォーマンス情報の獲得
4.2.1 一般
4.2.2 EnPI の境界の決定
4.2.3 エネルギーフローの特定
4.2.4 関連変数の特定
4.2.5 統計的要素の特定
4.2.6 データの収集
4.3 EnPI の特定
4.3.1 一般
4.3.2 EnPI のユーザーの特定
4.3.3 エネルギーパフォーマンス特性の決定
4.4 エネルギーベースラインの決定
4.4.1 一般
4.4.2 適切なベースライン期間の決定
4.4.3 エネルギーベースラインの決定と検証
4.5 EnPI と EnB の使用
4.5.1 ノルマライズが必要な場合の決定
4.5.2 エネルギーパフォーマンスの改善の計算
4.5.3 エネルギーパフォーマンスの変化の連絡
4.6 EnPI と EnB の維持と調整
図 3.1.2.3 ISO50006:エネルギーパフォーマンスの測定の目次構成
- 21 -
○エネルギーパフォーマンスの測定
EnPI のタイプ(区分)としては,計測生(なま)値(絶対値),比率(相対値)統計モデルあるいは
工学モデルがある。組織は各 EnPI に対して目標値を設定すべきである。役員クラスの人は施設レベル
の EnPI を要求し,運転管理者は生産ラインあるいは施設エリアの EnPI を要求するので,エネルギーパ
フォーマンスは複数の EnPI で表わされることが多い。
組織が EnMS のエネルギー計画プロセスの一部としてエネルギーパフォーマンスに対する目標値を
定める際,EnPI と EnB を特定しなければならない。EnB に対する EnPI の変化(改善)の測定の考え方
を下図に示す。
図 3.1.2.4 ISO50006:エネルギーパフォーマンスの測定の全体像
○用語の定義
・アジャストメント(調整)
報告期間とベースライン期間で,等価的な条件でエネルギーパフォーマンスが比較できるようにエ
ネルギーベースライン(EnB)を修正するプロセスのこと。
EnB の調整が必要なのは,EnPI が組織のエネルギー使用や消費量を反映しなくなったとき,プロセス,
操業パターン,エネルギーシステムが大きく変化したとき,あらかじめ定めた方法によるとき。
すなわち,調整とは統計的要素の変化に配慮した調整を行う場合や,決められた期間の EnB をリセッ
トする場合のことをいう。
・エネルギーベースライン(EnB)
EnPI の比較基準となる量的参照値。
EnB は変数を用いてノルマライズ(正規化)できる。また,EnB はエネルギーパフォーマンスの改善
活動の導入前後の基準としても使用できる(プロセスエンジニアが各種対策の改善効果を評価すると
きやデザインの段階での活用)
。
・ノルマザイゼーション(正規化)
等価的な条件でエネルギーパフォーマンスが比較できるように,関連変数の変化に配慮するために
- 22 -
エネルギーデータを定期的に修正するプロセスのこと。
○エネルギーパフォーマンスの測定プロセス
エネルギーパフォーマンスの測定は,EnPI と EnB の設定,運用,更新のプロセスである。このプロセ
スは,組織がエネルギーパフォーマンス測定を継続的に改善するのに有用である。
エネルギーレビューによるエネルギ
ーパフォーマンス情報の収集
・境界の決定 ・エネルギーフローの決定
・関連変数の決定 ・統計要素の決定
・データ収集
エネルギーパフォーマンス指標
(EnPI)の特定
・EnPI ユーザーの特定
・定量化すべきエネルギーパフォーマンス特
性の決定
ベースラインの確立
継続的改善
EnPI とベースラインの使用
・適切な期間の決定
・ベースラインの決定
・ノルマライズが必要な場合を決定
・エネルギーパフォーマンスの改善の算定
・エネルギーパフォーマンスの改善の報告
EnPI とベースラインの維持と調整
図 3.1.2.5 ISO50006:エネルギーパフォーマンスの測定プロセス
○エネルギーフローの定量化
EnMS の境界が決まると,境界内のエネルギーフローを特定しなければならない。フェンスダイアグ
ラムやエネルギーマップのような図はエネルギーの流れを見やすくしたもので,EnPI の分析や設定に
重要な計測ポイントや生産物の流れも合わせて理解することができる。
○関連変数の決定と定量化の方法
年間の季節による冷房と暖房の需要の違いによるエネルギー消費の月別トレンドの把握。
図 3.1.2.6 ISO50006:エネルギー使用量への季節変動による影響
- 23 -
散布図(相関図)からエネルギーの
使用と著しい関係を持つ変数の決定
図 3.1.2.7 ISO50006:著しい関係の 3 レベル
○統計的要素が変化し,EnPI や EnB の保守が必要になる場合
・新製品など生産物のタイプが変化するとき
・1 日の生産物シフト回数が変化するとき
・ビルの入居者数が著しく変化するとき
・ビルの床面積が著しく変化するとき
○EnPI の特定の方法
EnPI を設定するときには,ベースロード,生産数量,入居(占有)率,気象条件などによるエネルギー
消費特性を理解しなければならない。
EnPI の主なタイプとしては
①測定したエネルギー値
②比率:エネルギー効率の標記
③統計モデル:線形・非線形回帰式を用いた関連変数とエネルギー消費量の関係
④工学シミュレーションモデルによるもの
がある。
○エネルギーパフォーマンス改善の計算方法
エネルギーパフォーマンスにおける変化を評価するには,報告期間の EnPI の値と EnB の値を定量的
に比較する。
評価の共通的な計算方法には以下の 3 つがある。
1)EnPI 差分:報告期間の EnPI 値 - ベースライン期間の EnPI 値
2)パーセント変化:
[(報告期間の EnPI 値 - ベースライン期間の EnPI 値)/ベースライン期間の EnPI 値]
×100
3)現状比:報告期間の EnPI 値 / ベースライン期間の EnPI 値
○EnPI のタイプ
EnPI のタイプを,単純なエネルギー絶対量の比較に有用なエネルギー測定値,エネルギー効率を比
較評価するのに有用な原単位,関連する変数が少ない場合に有用な統計モデル,運転条件の変更など関
連する変数が多い場合の評価に有用な工学モデルを 4 タイプに分け,それぞれの適用法,具体例,不利
な点を以下のように整理している。
- 24 -
表 3.1.2.1 EnPI のタイプ
EnPI のタイプ
1
使用が有効なケース
例
所見
・エネルギー絶対量の削減を測定する
kWh,GJ,ピーク時間帯の
・関連変数の影響を考
・エネルギー削減量の法的要求を満たす
kWh
測定したエネル
・エネルギーの在庫とコストの監視統制
ギー値
・エネルギー消費量のトレンドの把握
慮しないので結果を
見誤る場合が多い。
・エネルギー効率は測
・メーターによってエネルギー消費量が測
定しない
定される
・関連変数が 1 つだけのエネルギー効率の
kWh/生産量,kWh/m2
監視
2
測定した値の比
率
ベースロードがあり,エ
ネ ル ギ ー使 用に 非 線
・ベースロードがない監視システム
形性がある場合には信
・複数施設や組織の比較の標準化(ベンチ
頼性に欠ける。
マーキング)
・エネルギー効率の法的要求を満たす
・エネルギー効率のトレンドの把握
・一連の装置やシステムのエネルギー効率
の表現
・複数の関連変数のあるシステム
・ベースロードがあるシステム
施設のエネ ルギーパ
・エネルギーパフォーマンスを比較するのに
フォーマンス
ノルマライゼーションが必要な場合
3
統計モデル
・2~3 の製品を生産する
設のエネルギーパフォ
・組織レベルのエネルギーパフォーマンス
ーマンス
明
は精度の確保が困難
・ベースロードをもつ施
・複雑なシステムのモデリング
・エネルギー消費量と関連変数の関係を説
変数を多く持つモデル
・変化する占有率や外気
温のあるホテルのエネ
ルギーパフォーマンス
・運転条件の変更など関連する変数が多い
場合の評価
4
工学モデル
・ダイナミックフィードバックループを含む過
外気温度に影響を受け
モデルはきちんとメン
る冷房負荷を用いてチラ
テされていること
ーの電力消費モデル
渡的プロセス
・設計段階でエネルギーパフォーマンスを
推定する
○EnBs のノーマライズ(補正)の変数
ベースライン期間と報告期間のエネルギー使用量(エネルギー絶対量を EnPI とするエネルギーパフ
ォーマンス)を比較しようとする場合には, 下記の関連変数の影響を考慮してノーマライズが必要で
ある。
エネルギー使用量の変化=ノルマライズしたエネルギー使用量-報告期間のエネルギー使用量…(1)
ノルマライズしたエネルギー使用量=関連変数※を関数とするモデル式 …(2)
※関連変数の例:外気温度,ビルの入室率や使用用途,運転時間,生産変数,原材料変数,製品種類変数,プロセス変
更,量や質の変化,立地場所,環境条件,使用する装置,法的要素
- 25 -
④ISO50015:組織のエネルギーパフォーマンスの M&V
○目的
組織のエネルギーパフォーマンスの計測・検証プロセスに必要な一般原則と指針を示すこと。
M&V とは,エネルギーパフォーマンスあるいはエネルギーパフォーマンス改善に対する計画,計測,
データ収集,分析,検証,レポートのプロセスのこと。
○IS/DIS50015 目次
1 適用範囲
2 引用規格
3 用語,定義
4 計測・検証の原則
4.1 一般原則
4.2 適切な精度と不確からしさの管理
4.3 プロセスの透明性と再現性
4.4 データ管理と測定計画
4.5 M&V プラクティショナーの力量
4.6 公平性
4.7 信頼性
4.8 適切な手法の使用
5 計測検証の計画
5.1 一般
5.2 適用範囲と目的
5.3 エネルギーパフォーマンス改善行動(EPIA)
5.4 M&V の境界
5.5 事前の M&V 計画評価
5.6 EnPIs 含むエネルギーパフォーマンスの物差しの特徴づけと選定
5.7 関連変数と統計要素の特徴づけと選定
5.8 M&V 手法と計算方法の選択
5.9 データ収集計画
5.10 エネルギーベースライン(EnB)の設定と調整
5.11 必要な資源
5.12 役割と責任
5.13 M&V 計画の文書化
6 M&V 計画の実施
6.1 データ収集
6.2 EPIA 実施の検証
6.3 変化の観測
6.4 M&V 分析
6.5 M&V レポート
6.6 繰り返しが必要かレビュー
7 不確からしさ
8 M&V 文書
アネックス A:M&V フローの概要
アネックス B:計測の不確からしさの例
図 3.1.2.8 ISO50015:エネルギーパフォーマンスの M&V の目次構成
○M&V 計画を明記したプロセスにおけるステップ
M&V プロセスでは以下の 6 つの基本ステップがある。
1)M&V 計画を確立し文書化(各段階で行うべきことを記載する)
2)データ収集
- 26 -
3)エネルギーパフォーマンス改善アクション(EPIA)の実施の検証
4)M&V 分析の実施
5)M&V 結果をレポートし文書を発行
6)繰り返しの必要性をレビュー
○データ収集計画
データ収集で必要な項目には,データ変数の名称,収集頻度,データソース,装置名,測定プロセス,
計測手法,計測器の較正情報などがある。
○M&V レポーティング
レポーティングに含むべき項目には,初期の計測計画通りかの確認,実施されなかった計測の時期
と理由,元の計画と異なる実施の詳細情報,想定されない調整変更の発生の特定,問題に対する専門家
の判断指示の内容,データ品質などがある。
データ品質を確保するため専門家と合意すべきオンサイト計測の留意点として,計測ポイントリス
ト・計測期間・計測頻度・計測要員・運転操業による制約・計測装置の設置条件などがある。
○M&A プロセスの繰り返しの必要性レビュー
以下の点に基づき,再度行うかを判断すべき。
・M&V の実施頻度
・得られた結果
・実施機会または EPIA
・M&V 計画で特定された他の要求事項
・発生した問題やチャレンジの影響
- 27 -
⑤ISO50002:エネルギー診断(2014 年 7 月 1 日に発行)
○目的
エネルギーパフォーマンスの改善のための機会の特定につながる過程,省エネ診断に関する要求事
項を定義する。
まえがき
序文
1 適用範囲
2 引用規格
3 用語及び定義
4 原則
4.1 一般
4.2 エネルギー診断員
4.3 エネルギー診断
4.4 コミュニケーション
4.5 役割,責任,権限
5 エネルギー診断の実施
5.1 一般
5.2 エネルギー診断計画
5.3 開始会議
5.4 データ収集
5.5 測定計画
5.6 現場訪問の管理
5.7 分析
5.8 エネルギー診断報告
5.9 終了会議
附属書A(参考)この国際規格の利用の手引き
A1 この国際規格の適用可能性
A2 ISO50001 のエネルギーレビューに対するこの国際規格の適用可能性
A3 診断タイプの評価
A3.1 一般
A3.2 エネルギー診断の配慮事項
A4 エネルギー診断員の原則
A4.1 力量
A4.2 データ測定計画
A5 コミュニケーション
A6 診断計画業務における組織的役割,責任,権限
A7 データ測定計画
図 3.1.2.9 ISO50002:エネルギー診断規格の構成
- 28 -
○エネルギー診断員に必要な力量
1)地方または国のガイドラインや推奨に配慮した適切な教育,技能,経験及び訓練
2)エネルギー使用,適用範囲,境界,診断目的の関連専門技能
3)法的その他の要求事項の知識
4)診断を受けるエネルギー使用への精通
5)ISO や国のエネルギー診断規格の要求事項の知識
6)エネルギー診断チームの管理と主導:職業的なリーダーシップ
○エネルギー診断実施の原則
エネルギー診断では,以下を原則とする。
1)合意された適用範囲,境界,目的と一致していること
2)計測と監視はエネルギー使用と使用量に適切であること
3)収集したエネルギーパフォーマンスデータは,活動,プロセス,装置,システムを代表したもので
あること
4)エネルギーパフォーマンスを定量化し, 改善機会を特定するのに使用されたデータは一貫性が
あり,唯一のものであること
5)データの収集,評価,分析のプロセスは追跡可能であること
6)エネルギー診断報告書は,適切な技術的・経済的分析に基づき,エネルギーパフォーマンスの改
善機会を提供すること
○エネルギー診断の実施プロセス
エネルギー診断の実施は下図の各段階から成る。
開始会議
エネルギー診断計画
データ収集
測定計画
現場調査
分析
レポーティング
終了会議
図 3.1.2.10 ISO50002:エネルギー診断プロセスフロー
○エネルギー診断計画
エネルギー診断活動は,適用範囲や診断目的を決め,初期情報を組織から収集するために不可欠であ
る。効果的なエネルギー診断を実行するために以下の事項をしなければならない。
a) エネルギー診断員と組織は以下のことを合意しなければならない。
・診断の適用範囲,境界,目的
・目的達成の必要性及び期待
・詳細さの程度
・エネルギー診断の完了期間
・エネルギーパフォーマンスの改善機会の優先順位付けの評価基準
- 29 -
例 投資の回収額,省エネ量,ライフサイクルコスト,より効率の良い装置への置換にともなうコスト増
・時期の約束及び他の資源
・エネルギー診断開始の前に利用可能としておく関連データ
例 図面,過去のエネルギー使用量,マニュアル及び診断対象,計画された測定及び/又はエネル
ギー診断中に行われる調査に関係する他の技術的文書
・報告書に要求される書式と期待される記載項目
・組織への最終報告書案をコメントのために提出すべきかどうか
・組織内におけるエネルギー診断過程の責任者
・エネルギー診断の適用範囲変更における合意プロセス
b) 該当する場合,エネルギー診断員は次の情報を要求しなければならない。
・エネルギー診断に影響する法的要求事項や要因など
・スコープ又は提案されたエネルギー診断の他の側面に影響する規則又は他の制約
・組織のエネルギーパフォーマンスに影響する戦略計画
・マネジメントシステム(環境,品質,エネルギーマネジメントシステム又はその他)
・エネルギー診断範囲,プロセス,結論に影響する要素と特別の配慮事項
・エネルギーパフォーマンスの可能な改善手段に関する現存の見解,アイデア,制約を含む配慮事項
c) エネルギー診断員は,組織に対して以下のことを伝えなければならない。
・エネルギー診断の実行を可能とするのに必要な特別の装置,設備機器,サービス
・結論又は推奨事項に影響を及ぼす可能性のある営業上のまたは他の利益
・その他の利害相反事項
○開始の会議
開始の会議の目的は,関係者に診断対象,スコープ,境界,詳しさの程度の概要説明を行い,かつエネル
ギー診断の段取りについて合意することにある。
段取りの例:サイトにおける安全に関する事項,アクセス,安全確保,その他
注 この規格において,会議には電話,ウェブ,及び/又はその他の遠隔の相互相談を含む。
a) エネルギー診断員は,組織に次のことを要求しなければならない。
・エネルギー診断員と連絡し,必要なときは,目的のために形成されたチームの他の適切な個人から支
援される人を特定すること
・影響を受ける人及び他の利害関係者に,エネルギー診断及びそれに関連して要求されることについて
知らせること
・影響を受ける関係者の協力を確実にすること
・エネルギー診断中に発生する,通常でない条件,整備業務又は他の活動を開示すること
エネルギー診断員が一人ではない場合,エネルギー診断チームの一人が,エネルギー診断リーダーと
して指名されなければならない。
b) エネルギー診断員は,組織と次のことについて合意しなければならない。
・エネルギー診断員のためのアクセスの段取り
・健康,安全,安全確保,緊急事態の規則と手順
・提供される資源,エネルギーデータ,追加計測のニーズ
・非開示の協定(例えば,ビルのテナント)
・必要な場合,特別の測定のために必要な事項
・必要な場合,測定設備を設置するために従うべき手順
エネルギー診断員は,エネルギー診断の過程,方法,スケジュール及び追加的な計測装備の必要の可能
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性について詳細をレビューしなければならない。
○データ収集
データ収集が必要であると決定された場合,エネルギー診断員は以下の情報を照合しなければなら
ない。
a) エネルギーを消費するシステム,プロセス及び設備のリスト
b) 既知の関連変数及びそのエネルギー使用量への影響の仕方についての組織の考えを含む診断対象
の特性の詳細
c) 現在及び過去のデータ
・エネルギー使用量
・関連変数
・関係する関連測定
・エネルギー消費に影響を与えた運転履歴と過去のイベント
d) 監視設備,構成及び分析の情報
例 単独の圧力計,分散型制御システム,計測器の形式
e) エネルギー使用に影響する将来計画
例1 生産量の拡大計画,縮小計画又は変化
例 2 エネルギー上大きな意味をもつ,設備又はシステムの変更計画又は更新
f) 設計,運用及び保守の文書
g) エネルギー診断又はエネルギー及びエネルギーパフォーマンスに関する以前の検討
h) 財務分析に使用する現在の又は参照の料金表
i) その他の経済的関連データ
j) 組織のエネルギーを管理する仕方についての知識
k) エネルギー供給システムのつながり及び運営構造
○データ測定計画
オンサイトのデータ測定・収集については,エネルギー診断員と組織は以下のことを合意しなければ
ならない。
a) 現存する測定点リストとその関係するプロセス,測定装置
b) 追加的に必要な測定点,適切な測定設備,その関係するプロセス及び設置可能性の特定
c) 測定において要求される精度と再現性
d) 測定の継続期間:一回限りまたは電子的ログ
e) 各測定のデータ取得頻度
f) 企業の活動の代表的期間の特定
g) 組織によって与えられる関連変数(操業パラメータや生産データ)
h) 測定実行の責任箇所(組織で働く人,組織のために働く人含む)
i) 測定装置の校正と履歴管理
○現場調査
エネルギー診断員は以下のことしなければならない。
a) 組織境界内のエネルギー使用を把握すること
b) スコープ,境界,診断対象及び詳しさの程度に従って診断対象のエネルギー使用を評価すること
c) 運用作業及びエネルギーパフォーマンスに関する使用者の行動の影響を理解すること
d) エネルギーパフォーマンスの改善に関して,あらかじめアイデア,機会,運用の変更又は手法を考案
すること
- 31 -
e) エネルギー診断に明確性を与え,又はエネルギー診断の結論を支持するかもしれない追加的な量的
データに係わる分野及びプロセスをリストすること
f) 測定データが運転実績を代表していることを確実にすること
g) 過去データが平常運転を代表していることを確実にすること
h) データ・文書の参照が予想に反して困難になった時,組織に速やかに連絡すること
○実施
エネルギー診断員は以下を行わなければならない。
a) 通常の運用を代表する環境下での測定と観察
注
観察と測定を,通常の稼動時間以外で,休止の期間中又は気候の負荷が予期されないときに行う
と有益かもしれないことは受け入れられる。
b) 提供された過去のデータが通常の運転を代表することを確実にすること
c) 調査中に出会った予期しない困難についてすみやかに組織に知らせること
○サイトの訪問
エネルギー診断員は組織に以下のことを要請しなければならない。
a) エネルギー診断員に対し,サイト訪問の間,必要な場合に,ガイド及び同行を行う一人又は複数の人
を指定すること
b) 適用される場合には,データロガー及びエネルギー監視装置をインストールする人を指定すること
c) エネルギー診断員を関連する文書にアクセスさせること
例 図面,マニュアル及び他の技術的文書
d) エネルギー監視装置及びデータロガーを設置することを許可すること
○分析
エネルギー診断員は以下のことをしなければならない。
・提供されたデータの信頼性を評価し,欠落又は異常に注意し,提供された情報が診断の継続と合意さ
れた診断対象の達成を可能にするものであるか否かを判定すること
・透明性があり,技術的に適切な計算方法を使用すること
・使用した方法と設定した仮定を文書とすること
・エネルギーパフォーマンスを改善する機会の規則又はその他の制約を考慮すること
注 エネルギー効率のレベル,ラベリングプログラムなど
○現在のエネルギーパフォーマンスの分析
この段階において,エネルギー診断員は診断対象の現在のエネルギーパフォーマンスを確立しなけ
ればならない。現在のエネルギーパフォーマンスは改善の評価のベースになる。それには以下のこと
を含まなければならない。
・エネルギー使用量の使用及び供給源の内訳
・エネルギー使用量に対するエネルギー使用の積算
・類似プロセスとの比較
・エネルギーパフォーマンスの過去のパターン
・予想されたエネルギーパフォーマンス
・適切な場合には,エネルギーパフォーマンスと関連変数の関係
・現在のエネルギーパフォーマンス指標を評価し,必要な場合には,新しいエネルギーパフォーマンス
指標を提案すること
注 エネルギーパフォーマンスを改善する機会は,代替エネルギー源,燃料転換,コジェネレーショ
ン,再生エネルギー源などの提案によっても補足されるかもしれない。
- 32 -
○改善の機会の特定
エネルギー診断員は,エネルギーパフォーマンスの改善の機会をデータの分析と次のことに基づい
て特定しなければならない。
・診断員自身の専門性
・システムの必要性に対応する設計及び構成上の選択肢の評価
注 「システムの必要性」とは,診断対象が機能するための最小のエネルギー使用量のこと
・年数,状態,運用及び保守レベル
・市場における最も効率的なものと比較した現在の診断対象の技術
・新しい先進技術によるソリューション
・ベストプラクティス
○改善の機会の評価
エネルギー診断員は,現在のエネルギーパフォーマンスの改善の機会の効果を以下のことに基づい
て評価しなければならない。
・合意された期間の省エネルギー
・エネルギーパフォーマンスの改善の機会によって可能となる財務上の低減量
・必要な投資
・合意された経済的基準
・その他のエネルギー以外の利得(生産性又は保守など)
・エネルギーパフォーマンス改善の機会のランク付け
・複数の改善機会の潜在的相互関係についての注意
・エネルギー診断の合意された対象範囲,境界及び診断対象に適切な場合には,エネルギー診断員はこ
れらの結果を以下によって補うことが望ましい
1) 追加的なデータの必要性
2) 更なる分析の必要性の定義
○結果報告
エネルギー診断の結果報告に際し,エネルギー診断員は以下の事項を行わなければならない。
・組織との間で合意したエネルギー診断の要求事項が確実に実現されるよう保証する
・エネルギー診断の期間中に実施した関連の測定を特定する。その際,次の事項について言及すること
1) データの頻度,安定性,精度および再現性
2) 測定根拠,および測定がどのように分析に貢献したか
3) データ収集および実地診断の中で直面した問題
・分析結果が計算,シミュレーション,予測のいずれに基づいているかを記載する
・分析を要約し,前提条件を設けた場合はそれについて詳述する
・該当する場合は,省エネルギーおよびコストの精度の限界について記載する
・エネルギーパフォーマンスの改善機会の優先順位を報告する
・提言を行い,実施プログラムを提案する
○報告内容
結果報告の正確な内容は,エネルギー診断の適用範囲,境界,診断目的に沿ったものでなければならな
い。
エネルギー診断の結果報告には,以下の項目を含まなければならない。
・要旨
1) エネルギーの使用およびエネルギー使用量の概要
- 33 -
2) エネルギーパフォーマンスの改善機会の優先順位
3) 実施プログラムの提案
・背景
1) 診断対象組織,エネルギー診断員,エネルギー診断の手順に関する一般情報
2) エネルギー診断の実施背景
3) 診断対象物の説明
4) エネルギー診断に適用可能な,関連する法的要求事項およびその他の要求事項
5) 秘密保持についての声明
・エネルギー診断
1) エネルギー診断の説明,適用範囲,境界,診断目的,時間枠,詳細度レベル
2) データ収集についての情報
i) 測定計画
ii) 使用データについての記載(測定データおよび予測データの両方についてデータ取得の頻
度を記載)
iii) 該当する場合,鍵となる使用データ,試験報告,および測定装置の校正証明書のコピー
3) エネルギーパフォーマンスおよびエネルギーパフォーマンス指標(EnPls)の分析
4) 計算,予測および前提条件の根拠
5) エネルギーパフォーマンスの改善機会の優先順位を決定するための基準
・エネルギーパフォーマンスの改善機会
1) 提言および実施プログラムの提案
注記
エネルギー診断の詳細度レベルに応じて,本項目には実施に向けた実行可能性や行
動手順等を含んでもよい。
2) 省エネルギーの計算に使用された前提条件,およびその結果として計算された省エネルギーと
その効果の精度
3) 実施コストの計算に使用された前提条件,およびその計算結果の精度
4) 既知の奨励金やエネルギー以外の利益などを含む,適切な経済分析
5) 他の提案との相互作用の見込み
6) 提案された改善機会を実施後に評価する場合に使用される,望ましい測定手法および検証手法
・結論と推奨
○最終ミーティング
エネルギー診断の結果報告は,最終ミーティングの前に組織に提出されなければならない。
最終ミーティングでは,エネルギー診断員は次の事項を行わなければならない。
・組織の意思決定を促すような方法でエネルギー診断の結果を発表する
・診断結果を説明し,質問することができる
・該当する場合は,エネルギー診断員によるさらに詳細な分析または追跡調査が必要な項目を特定する
- 34 -
⑥WG5:ISO WD1-50007 の開発:エネルギーサービス(エネルギーサービス事業の利用手引き)
○目的:
エネルギーサービスを行う事業者が,ユーザーのニーズと期待をどのように特定し,どのように適合
しているかを評価するガイダンスを提供する。
○狙い
この規格では,サービスの実行とユーザーとのやり取りの品質を継続的に改善するために,サービス
プロバイダー(事業者)にベストプラクティスの利用の手引きを提示する。
規格の範囲には,
・さまざまな利害関係者に共通する用語の定義
・ニーズや期待などに関するユーザーに対するサービスの重要な要素や特性の定義
・ユーザーのニーズと期待を満足するガイドライン
・サービスの評価基準
・パフォーマンス指標の導入
・パフォーマンス指標の例示
が入るが,以下のものは入らない。
・エネルギー製品,輸送,配分システムの設計と施工の手法
・契約を含むエネルギーサービスに関する活動の運用と管理のマネジメント構造と手法
・建物内部のシステムに関連するテーマ
○エネルギーサービスの定義
「エネルギーサービス」とは,エネルギーの生産,輸送,配分,供給および関連するサービスに必要な
組織,プロセス,活動,手段,リソースの全体の集合体
○サービスの情報に含まれるもの
・顧客サービス(連絡先詳細,苦情手続き,請求・支払い手続き,支払い支援利用)
・法的枠組み(顧客契約,ユーザーの権利・責任,科料と手続き,既存契約と新規契約提案)
・運用マター(サービス拡大の時間帯,緊急時手順)
・財務マター(コスト構造,課金方式)
・パフォーマンスデータ
○パフォーマンス指標
・指標には,エネルギーサービスへのアクセス,サービスの提供,契約管理と請求,ユーザーとの良好な
関係作り,環境保護,安全緊急管理を含む。苦情に対する対応の時間など
3.1.3 ISO50001 の改定の動向
(1) ISO マネジメントシステム規格構造の共通化にともなう改定の概要
ISO/IEC 専門業務用指針 補足指針の改正(2012 年)により,今後,改正されるすべての ISO マネジメ
ントシステム規格(MSS)については,その構造,分野共通の要求事項及び用語・定義を共通化すること
が規定された。
TC242 では,ISO50001 の発行(2011 年 6 月)から改定が可能となる 3 年が丁度経過したことから規
定内容の見直しの検討が始まった。
各 ISO マネジメントシステム規格(MMS)の整合性確保のための MSS 共通基本構造(上位構造:High
Level Structure[HLS]
)が下記のように定められており,これに沿って ISO50001 の改正作業が進めら
れる。その際,“XXX”には分野固有のテキスト「エネルギー」に書き換えられる形式で進む。
○ISO MSS 共通テキストの章構成
- 35 -
1. Scope(適用範囲)
2. Normative references(引用規格)
3. Terms and definitions(用語及び定義)
4. Context of the organization(組織の状況)
4.1 Understanding the organization and its context(組織及びその状況の理解)
4.2 Understanding the needs and expectations of interested parties(利害関係者のニーズ
及び期待の理解)
4.3 Determining the scope of the XXX management system(XXX マネジメントシステムの適用
範囲の決定)
4.4 XXX management system(XXX マネジメントシステム)
5. Leadership(リーダーシップ)
5.1 Leadership and commitment(リーダーシップ及びコミットメント)
5.2 Policy(方針)
5.3 Organizational roles, responsibilities and authorities(組織の役割,責任及び権限)
6 Planning(計画)
6.1 Actions to address risks and opportunities(リスク及び機会への取組み)
6.2 XXX objectives and planning to achieve them (XXX 目的及びそれを達成するための計画
策定)
7. Support(支援)
7.1 Resources(資源)
7.2 Competence(力量)
7.3 Awareness(認識)
7.4 Communication(コミュニケーション)
7.5 Documented information(文書化された情報)
7.5.1 General(一般)
7.5.2 Creating and updating(作成及び更新)
7.5.3 Control of documented Information(文書化された情報の管理)
8. Operation(運用)
8.1 Operational planning and control(運用の計画及び管理)
9. Performance evaluation(パフォーマンス評価)
9.1 Monitoring, measurement, analysis and evaluation(監視,測定,分析及び評価)
9.2 Internal audit(内部監査)
9.3 Management review(マネジメントレビュー)
10. Improvement(改善)
10.1 Nonconformity and corrective action(不適合及び是正処置)
10.2 Continual improvement(継続的改善)
- 36 -
3.2 ISO/TC257(Energy Saving)技術委員会に関する情報収集
3.2.1 オランダ国際会議の概要
(1)第 4 回会議の概要
○会議名:ISO/TC257 オランダプレナリ―会議
○日時:平成 26 年 4 月 7 日~11 日
○場所:オランダ デルフト市 オランダ規格協会(NEN)
○参加者:駒井啓一(省エネルギーセンターより専門家派遣)
同行者:石本祐樹(エネルギー総合研究所 国内審議委員会事務局)
○会議日程および出席
表 3.2.1.1 オランダ会議日程
WG1
WG2
WG3
Plenary
/ISO17743
/ISO17742
/ISO17741
&
/General
/国,地域
プロジェクト
Workshop
4/07
AM
駒井,石本
---
---
---
(月)
PM
---
(不参加)
駒井,石本
---
4/08
AM
---
(不参加)
駒井,石本
---
(火)
PM
駒井,石本
---
---
---
4/09
AM
---
駒井
駒井,石本
---
(水)
PM
駒井
---
石本
---
4/10
AM
駒井,石本
---
---
---
(木)
PM
---
---
---
駒井,石本
4/11
AM
---
---
---
駒井,石本
(金)
PM
---
---
---
駒井,石本
○経緯と概要

今回は 2 月の TC242 カナダ会議で TC242 とのジョイントである JWG3 及び JWG4 が合議された直後
のためキャンセルとなり,WG の審議テーマ は TC257 単独規格の 3 件となった。当初は WG1 及び WG2
と WG3 とを日本出席 2 名で分担して参加する予定であったが,仏より WG3(プロジェクト)に関し
抜本改訂するという大きな提案が出てきたため,2 名の出席者が共同で対処することにした。一
方,WG2 は CEN 規格をベースにした国・地域・都市等に関する規格であり,我が国で活用の可能性は
比較的小さいとの判断から限定的な出席に止めることにした。WG1 については,本 TC のゼネラル規
格であることから,我が国で活用の可能性が高い JWG3,JWG4 への影響の可能性もあるため 1 名は出
席することとした。

WG1 のゼネラル規格は当初から非常に理解しにくく,質問・コメントを行うたびにむしろ改悪さ
れていくという悪循環を繰り返しながら DIS まで進んできた。このため日本からは,DIS 投票に際
して,「基本概念図が理解可能なものにならない限り FDIS に進んではならない」と強いコメントを
提出した。他国からの反対もあり,会議前の投票結果は 66%に満たず,今回は DIS として審議した。
徹底的な討議の結果,ベースラインの考え方が他の規格とは大きな違いがあることが初めて相互
確認された。この結果,大幅な修正が行われることになり,仏主査から,FDIS の再投票には進ま
ず,DIS2 として WG コメントを求めることとしたいと提案され,出席者合意した。

今回の確認された WG1 のゼネラル規格の従来の考え方の特徴は,『経済成長や生産量変化に伴い
ベースラインを変えることはアジャストメントにもノーマライゼーションにも該当しない』と言う
- 37 -
点であり,これを『固定ベースライン』と捉えている。
これに対し,例えば我が国では前年度のエネルギー消費量そのままの実績値をベースラインとし,
当年度のエネルギー消費量の差を省エネ量(あるいは増エネ量)とするのが一般的で,これが固定
ベースライン方式と考えられる。
固定ベースラインについては,ISO50001,ISO50006,ISO50015,ISO17751,ISO17747 でも我が国と同
様な考え方である。これらの規格では,原単位が一定の条件で経済成長や生産量変化に応じてベー
スラインを増減するようなベースラインアジャストメントの方が固定ベースラインよりも一般的
である。しかし,省エネの評価はベースラインのアジャストメント方法次第で良くも悪くもなるの
で,アジャストメントについては慎重に扱われており,これら規格の WG 審議では常に大きな論点と
なっている。
それにも係らず,WG1 では経済成長によりベースラインが変化するのは当たり前として,これを固
定ベースラインと言う捉え方がされていたことは,ある意味では非常に危険なことであったとも言
える。
このような相違が生じた大きな原因は,WG2 が扱う国/地域ベースの省エネ計算方法がインジケー
タと呼ぶ原単位等の指標をベースにしていることによるもの。ドライバーと呼ばれる原単位の分母
に該当するファクターをインジケータに掛け算すればエネルギー消費量となるので,結局は他の規
格と同じことになるが,エネルギー消費量データを直接見ないことが,このような差が生じた原因
と考えられる。国/地域ベースでは,組織やプロジェクトと違って直接的にエネルギー消費をメータ
で測ったり,エネルギー費用としてアカウンティングしたりすることがないので,インジケータも
ドライバーも社会経済的手法と称して統計データに頼っている。アジャストメントにはこの他に,
気象条件,社会構造変化,フリーライダー,オートノマス,リバウンド等様々あるためにこの中に紛
れ込んで,「経済成長によるエネルギー消費の単純増加は固定ベースライン」という見方になった
ようである。

WG2 には水曜の最終回のみ出席したが,蘭主査は WG1 に概ね出席していたので,しばしば意見交換
を行った。日本コメントは後回しにしているので出席して説明して欲しいと要請されたが WG3 と重
なり出席が難しいので,「重要なコメントはアンアジャスティッドエネルギーセービング(調整な
し省エネ量)の考え方であって,後は分からなければ今回は無視されてもやむを得ない」と伝えた。
WG2 主査も WG1 主査と同様に,これまでは経済成長に伴うベースラインの調整はアジャストではな
いという捉え方をしていたが,WG1 における議論に参加する中で,他規格との考え方のギャップは相
互認識されることになった。

本規格も WG2 同様に不明点も多かったが,我が国への悪影響は小さいと見られることから会議前
の DIS 投票は賛成票を投じ,85%の賛成票で可決されていた。これを以て,今回の会議結果を踏まえ
た修正ドラフトを FDIS とすることになった。なお,DIS ではノーマティブリフェレンスとしていた
WG1 ゼネラル規格が大幅修正され,組織,プロジェクト,M&V 等の他規格の概念が組み入れられたこ
とから,国・地域ベース規格としては逆に何らかの齟齬が生じて審議が遅れることを嫌い,FDIS で
はノーマティブリフェレンスから除外し,参考文献とする方針が出された。
前述の通り,インジケータ×ドライバー=エネルギー消費量であるから,インジケータを用いる
国/地域規格も,エネルギー消費量を直接用いる組織/プロジェクト等の他規格も本質的な違いはな
く,このことは今回ほぼ全員が原理的には共通認識に至った。しかし,対象の違いから自ずと観点が
違ってくるようである。一連のファミリー規格として数式等の表面的な規格の表現の共通化を図る
べきか,あるいは別種の規格として袂を分かつか,やや難しい選択である。
- 38 -

WG3 は議長国の中国が TC257 に最初に提案したプロジェクトの省エネ計算規格だが,審議の進行
が遅く,WD5 まで行って今回ようやく CD の審議に入った。この間,IPMVP(国際 M&V プロトコル)を
主導する EVO(Efficiency Valuation Organization)が支援,指導を行い,英国及び日本もかなり
の協力作業をしながら,ex-post(プロジェクト実施後評価)の M&V 規格としてようやく何とか形が
出来てきた。
CD コメント募集の中で, TC257 共同議長国の仏から CD 改良のため全文を書きかえるべきと言う
大胆なコメントと代替文案の提案とが提出され,その対応が今回の会議の最大の課題であった。代
替文案自体は規格文案として非常に洗練されていたが,我が国とは省エネに関する考え方が種々異
なる欧州規格の影響を受けていることが懸念され,事前に国内で検討が行われた。欧州規格の影響
による直接的な問題については事前には十分確認できなかったが,ex-ante(プロジェクト事前評
価)が新たに追加されたことが大きな特徴であった。このため,我が国がこれまで大きな協力をし
てきた事後評価を主体する規格の枠組みが振出に戻り,また,大幅修正であるため規格発行の大幅
遅延が想定されるため,我が国としては反対の立場をとることにした。
本規格の提案国である中国は,5 名のエキスパート及び TC257 議長,同事務局の総勢 7 名が参加し
てきた。一方のフランスも総勢 6 名の大デレゲーションであったが,必ずしも代替文案で国全体が
一枚岩ではなく冷静に合理的に対応してきた。
あくまで中国を主体とし,日,英,EVO は側面から理論的に中国を支援すると言う形で議論を進め,
結論として主として時間的な制約から,今回は仏の代替案への変更は見送り,現状案のブラッシュ
アップで各国とも協力することになった。
IPMVP を主導する EVO は,この結果に非常に満足の模様。
その他のコメント処理も一応終了したが,最後までもたつきがあったようであり,中国主査から,
もう一度 CD で審議したいとの案が出され,ISO ルール上 DIS 移行のタイムリミットに遅れると振出
に戻る(CD 移行段階で既に 1 回遅延を出している)との警告が出されると,NWIP からやり直しても
良いとの発言があった。これ以上の遅延に対してはフランスが最も強く反対したとのこと。

WG2 仏の代替案は ADEME(フランス 環境・エネルギー管理庁)からの委託で独立リサーチャーが
TC242,257,IPMVP,CEN 規格等を広範に調査,比較検討の上で作成したもののようであり,非常に良く
できているように思える。EU 指令のガイダンス作成にも参加しているが EVO 等とも交流があり,必
ずしも EU 指令に固執してはいない。WG1 においてもコンビナーの招待講演の形で各種規格の比較
分析と整合性についてプレゼンを行ったが,良くまとまっていた。少なくとも仏主査や蘭主査のよ
うなベースラインアジャストメントに関する勘違いはしておらず,規格間の相互矛盾を的確に鋭く
指摘している。

WG3 でウィズドローしたフランス代替案のうち,ex-ante(プロジェクト事前評価)部分について
は別規格として NWIP を出したいとフランスから意向が示され,各国とも賛意を示した。
日本も NWIP
提出は賛成であり,積極的に参加を考えたいと発言した。
ex-ante のプロジェクト省エネ計算は,事業者自身の省エネ投資判断,ESCO 事業者による省エネ
プロジェクト提案等に有効であり,中長期計画書における省エネ期待量計算のガイダンスや省エネ
診断における改善提案等,我が国でも活用の可能性は大きいと考えられる。そもそも省エネ計算を
プロジェクトの計画時点では一切行わずに,プロジェクトの事後評価においてのみ行うと言うこと
が不自然と言える。
しかし,WG3 でこれまで開発してきた規格は計算のみに関するものではなく,M&V
と計算の両方をリンクさせる点が特徴となっている。M&V は基本的に事後評価が対象であり,事前
には計画や準備が主体となるので,事前と事後を一体化すると規格が曖昧で使いづらくなると言う
問題があり,このことが仏代替案に反対する一つの理由である。
- 39 -
従って,フランスから NWIP 提案が出された場合には,我が国にも有用な良い規格になるよう積極
的に参加,協力していくのが良い。

NWIP としては,このほかに「①省エネ計算選定エバリュエータのガイドライン」,「②火力発電
省エネ性能アセスメントのガイドライン」の 2 件が中国から,「③省エネ効果の要因分析」1 件が
仏・蘭から,それぞれプレゼンされた。
①は前回ヘルシンキでもプレゼンされたもので,今回は国際規格認証等と少し踏み込んだ内容と
なっているが TC257 の中の各規格の選定等では余り意味がなく,また WG3 の進行等から見て中国の
実力ではこのような規格をまとめることは難しいのではないか。EVO は国際規格とするなら,教育・
訓練等で EVO として貢献できるとコメントしていた。発表者の中国はしきりに日本の参加が望まし
いと言ってきたが特に態度表明はしていない。しかし,仮に国際認定規格等に進むと厄介なので動
向はウォッチングする必要がある。
②については TC257 が適切な舞台ではなく,電力セクターに関する別の舞台で専門的に議論し規
格開発すべきものではないかと考えられる。①,②ともに,TC257 議長国である中国としての威信を
示すことが主たる目的のプレゼンに思われるが,今後の動向は一応ウォッチして行く必要がある。
③については WG2 と同様に国/地域ベースが対象となっており,エネルギートレンドの要因分解
のように社会経済的な統計分析手法が主体となっている。我が国への応用で考えれば,例えばエコ
ポイントによる省エネ効果の抽出,節電行動の定着とリバウンドの分解等が想起されるが,これら
はモデルやその条件設定によって大きく結果が異なり,国状の異なる国々で統一手法を用いること
はほとんど無理なのではないだろうか。この点,ワークショップに参加していた IEA や CEN と意見
交換したが,彼らも同意見であり,条件設定やモデリングに任意性の強く各国の国情・国益も絡むこ
のような計算方法を,透明性・再現性が必要な国際規格にまとめるのは難しいと意見一致した。プ
レゼンターの仏主査には,このような手法は社会経済分析の学術研究のための手法であり,個々の
研究者がそれぞれ工夫考案して実施すべきものではないかと投げかけておいた。

JWG4 組織の省エネ計算(ISO17747)については,今回は WG が開催されなかったが同じ TC257 シ
リーズの規格であることからプレナリ―及びワークショップで英主査からプレゼンがあった。
TC257 シリーズとして WG2 と同様にインジケータベース法(IBM)とメジャーベース法(MBM)の 2
通りの計算を行うが,IBM では国/地域のような社会経済的な統計データであるインジケータではな
く,組織単位の明確なエネルギー消費量データを用いる。我が国の省エネ法のエネルギー管理で言
えば,定期報告書で報告される事業者単位のエネルギー消費量や,企業単位でこれらを合計したも
のに相当する。これに対して MBM は,中長期計画書等に記載が期待される省エネ投資や省エネ行動
単位の省エネ量を事業者全体で集計するようなことが該当する。
プレゼンでは「2+2=3?」として,この二つが一致しない理由を分析,見える化することの意義
を訴えている。プレゼンにはカナダ会議で日本が整理協力したインプットが活用されており,今回
の会議期間中も意見交換を行った。

ちなみに WG2 の国/地域ベースでは IBM と MBM はそれぞれ独立して実施すべきものであって,この
二つの結果を照合・分析することはほとんど不可能として,規格の対象外としている。企業等の組
織ベースでは,国/地域ベースのような大きな曖昧性は生じにくいので使いやすい規格となること
が期待される。
英国とは各 WG で意見が一致し,日英協力で規格間の整合化に大きく貢献できたと考える。懇談で
TC257 各規格の活用の可能性について日英で意見交換した。
今回主に WG1,WG2 で活動した JWG4 主査は,WG2 国/地域規格は EU ではどうなるかはわからないが
1 枚岩ではなく強制されることはないので,英国としては使うことはないだろうとの意見。
- 40 -
今回 WG3 で日本とともに中国を支援した英のメンバーは,個人的には M&V としては FDIS まで進ん
でいる ISO50015 があれば十分ではないかと考えており,率直なところ WG3 プロジェクトの MCV を英
国で活用する可能性は小さいとの意見。

なお中国は TC257 全体の流れにはほとんど無頓着で,日英の協力支援でファミリー規格として何
とか歩調を揃えている状況(7 名もの大デレゲーションながら WG1,WG2 にはほとんど参加せず)
。
全体整合については仏が,プロジェクトの省エネ計算は MBM のみであって IBM はないことが特徴
と整理したが,このようにしっかり整理しておいた方が分かりやすい。恐らく ex-ante に関する
NWIP も MBM としてしっかり整理して提案されるのではないか。

ワークショプで WG2 主査は,ISO17742 は CEN のトップダウン
(IBM に相当)
,ボトムアップ(同 MBM)
をベースにして,これを大きく改善した特徴ある規格と喧伝した。一方,ADEME が欧州のトップダウ
ン法の動向について講演し,2020 年ターゲット(エネ効率 20%ダウン)に向けて EU 諸国の 3/4 が多
かれ少なかれ TD 法(IBM),BU 法(MBM)を採用しており,ほとんどがそれを IEA,WEC に報告している
と説明。完全には実施していない国として英国等が挙げられた。両者の報告には微妙な不一致が見
られる。ADEME のプレゼンには more or less とか most 等の修飾語が目立ち,欧州が必ずしも一枚
岩でないことや,曖昧さがうかがえる。

TC257 議長から会議期間中に,「次回のプレナリ―を日本で開催できないか」と打診されたので,
我々は回答する立場にはないので本国に伝えておくとした。第 1 回アジア,2~4 回ヨーロッパが続
いたので 5 回目はアジアにしたいとのこと。
(2)会議詳細
以下に個別会議の概要を示す。
表 3.2.1.2 個別会議概要
①
ISO/TC257/デルフト会議 No.01
日時
2014/04/07 AM
参加会議
WG1 General
出席者
Ge Changrong(中),Li Tienan(中),Liu Meng(中),Ouyang yanyan(中),
Li Pengcheng(中),Wang Xiaotao(中),Riou Sylvie(仏),Ziegler Bruno(仏),
Yuki( 日 ),Komai Keiichi( 日 ),Boonekamp Piet( 蘭 ),Dijkstra Bert( 蘭 ),
Ishimoto
Byrne
Ian(英),Nijjhar Rajvant(英),Kromer Steve(米/EVO),
Broc Jean-Sebastien(仏)
経過

ロールコールに次ぎ,仏から TC257 内の各規格の整合性確保に関するプレゼンテーシ
ョンが行われた。

次いで WG2 主査から TC242 と TC257 の対比に関するプレゼンテーションが行われた。

これらプレゼンに対する意見交換を行ったが明確な結論は出ずに,翌日(4/8)朝に予
定されているコンビナー会議で協議を行うことになった。

コメント処理については,本規格全般に関する事項及びイントロダクション関連,用
語定義の一部のみ実施。細部についてはコンビナー会議の結論を踏まえ翌日午後から
議論することになった。
内容等

仏からのプレゼンは,ADEME アデムのファンドによって実施された調査研究の成果の
位置づけ。EU 指令関連のみでなく,ISO50001,50006,50015,17747,IPMVP 等も含めて非
常に広範な比較調査に基づいており,時期的な問題を別にすれば筋は通っている。
- 41 -

WG2 主査からのプレゼンは TC257 と TC242 はアグリゲートのレベルが異なるので根本
的に違うと言う主張であるが,これは WG2 の国,地域レベルに限定したものであって
WG3,JWG4 には共通しない。確認したところでは,この点は主査自身も認識していると
のこと。また仏も,この食い違いは正しく認識していた。

ゼネラルコメントの審議において,JP より Fig.2 に関するアンアジャスティッドセー
ビングの根本的な違いを指摘。関連して JWG4 主査から発言あり。17747 の ANNEX-B
のカスケード図を用いてアンアジャスティィッドセービングの考え方を提示。明日の
コンビナー会議で議論されるものと思われる。

コンビナー会議で議論される用語定義の大きな議題はネット,グロス,アンアジャス
ティッドの各エナジーセービングス。エナジーセービングス自体は極めて広い概念を
含むと WG2 主査が主張

アジャストメントファクターの定義に関し,具体的には各規格ごとに定義すると言う
旨の Note を付すことが主査の要求で決まった。
②
ISO/TC257/デルフト会議 No.02
日時
2014/04/07 PM
参加会議
WG3 Project
出席者
Ge Changrong(中),Li Tienan(中),Liu Meng(中),Ouyang yanyan(中),Peng Xu dong(中),Li
Pengcheng( 中 ),Wang Xiaotao( 中 ),Bosseboeuf Didier( 仏 ),Givois Denis( 仏 ),Marcq
Nicolas( 仏 ),Riou Sylvie( 仏 ),Ziegler Bruno( 仏 ),Hassanbegi Shirzad( イ ラ
ン ),Ishimoto
Yuki( 日 ),Komai
Keiichi( 日 ),Boonekamp
Piet( 蘭 ),Dijkstra
Bert( 蘭 ),Magyar Jan( ス ロ バ キ ア ),Holmberg Rurik( ス ウ ェ ー デ ン ),Byrne
Ian(英),Nijjhar Rajvant(英),Kromer Steve(米/EVO),Broc Jean-Sebastien(仏)
経過

ロールコールに次ぎ,仏からの新提案に関しプレゼンテーションが行われた。

中国主査から仏案に関する各国からの意見表明が求められ,議論された

休憩をはさみ,現状テキストの第 4 章からのコメント審議が行われ 73 番までが終了し
た。

仏案の採否については未決のままであり,翌日のコンビナー会議の審議結果に基づき
進むことになるものと考えられる。
内容等

仏からのプレゼンは,午前中と同様に ADEME のファンドによって実施された調査研究
の成果の位置づけ。

仏のプレゼンに関し,主査からの各国コメント要求に応じ JP から下記 3 点コメント。

各規格とのハーモナイゼーションの主旨は良いが,だからと言って国や地域まで
スコープを広げることは不要了解された。ただし Ex-ante への拡大までは否定
できていない

Ex-Post に関し,実施後 1 年だと近視眼的な対応になることは分かるがライフタ
イム分析まで入れると方法が全くことなるので,精度確保が曖昧になる。付記程
度にすべき説得できなかった。

Ex-Post に関し,Ex-Ante との比較評価を必須とすべきでない了解された。

EVO より,ビッグチャレンジだが難しいとのコメント。

英からも種々反論。また休憩時間に,中国主査に対し,何故仏案のプレゼンから始める
- 42 -
のかとのクレーム。英の提案で,現状ドラフトの 4 章のコメント処理から行われた。
③
ISO/TC257/デルフト会議 No.03
日時
2014/04/08 AM 9:30~
参加会議
WG3 Project
出席者
Ge Changrong( 中 ),Liu Meng( 中 ),Ouyang yanyan( 中 ),Li Pengcheng( 中 ),Givois
Denis( 仏 ),Marcq Nicolas( 仏 ),Riou Sylvie( 仏 ),Ziegler Bruno( 仏 ),Hassanbegi
Shirzad( イ ラ ン ),Ishimoto Yuki( 日 ),Komai Keiichi( 日 ),Magyar Jan( ス ロ バ キ
ア),Nijjhar Rajvant(英),Kromer Steve(米/EVO)
経過

コンビナー会議(1 時間)終了に開催

コンビナー会議結果に関し特に報告はなく,昨日に引き続き 4 章コメント処理が行わ
れた

13 時過ぎまで延長してコメント NO.134 まで終了。

水曜 AM にて No.141 までの残りコメント及びイントロダクション関連等のゼネラルコ
メントを処理して木曜午後のプレナリに臨むが,最大のコメント(仏提案)が残って
いるとのコンビナーからの説明。

今回結果を踏まえ CD を改訂,vote にかけるが,10 月には DIS 移行が不可欠と中国シク
レタリーから説明。
内容等

特記すべき事項はなく,淡々とコメント審議が行われた。比較的重要な事項としては
以下が挙げられる。

バウンダリーに関して,プロジェクトバウンダリーとは別に M&V バウンダリーが
重要と言う点で各国意見一致し,ネイティブスピーカの米,英が文案表現を担当
する。

3 タイプの計算方法のうち,典型応用としてⅠのみが詳しく,Ⅱ,Ⅲが殆ど記載さ
れていない点に関し,日本及び各国がⅡ,Ⅲの具体例を検討することになった。

M&V の報告に際して,「シミュレーションプリントアウトを添付すべき」との記
載に関し,「モデルも報告すべき」との US コメントに関し協議,「シミュレーシ
ョンは条件と結果を報告する」を基本表現に,条件については[現実性,実効性の
ある=トレーサブル,トランスペアレンシー確保する]と言う形で条件を整理(米
等が検討)となった。
④
ISO/TC257/デルフト会議 No.04
日時
2014/04/08 PM
参加会議
WG1 General
出席者
Li Pengcheng( 中 ),Wang Xiaotao( 中 ),Givois Denis( 仏 ),Marcq Nicolas( 仏 ),Ziegler
Bruno( 仏 ),Ishimoto Yuki( 日 ),Komai Keiichi( 日 ),Boonekamp Piet( 蘭 ),Dijkstra
Bert(蘭),Magyar Jan(スロバキア),Holmberg Rurik(スウェーデン),Byrne Ian(英)
経過

昨日のゼネラルコメント処理に引き続き,本文のコメント処理を実施

英がネイティブスピーカとしてコンビナーを補佐。

この過程で WG1 主査から,昨日議論(JP 指摘)を踏まえた図 2 の見直し結果が提示さ
- 43 -
れた。

しかし,見直し図も矛盾があり,再度 JP より指摘したところ, WG1 主査から具体的な
反論があり,英,仏等も含め大きな議論の結果,ようやく双方の本質的な考え方の違い
が明らかになった。
内容等

WG1 主査が再検討する。

WG1 主査の当初の考え方

ベースラインはエボリューション効果(社会・経済成長)によって年々変化する
が,これはアジャストとかノーマライズとかには該当しない。ベースラインは固
定されたものであり,一切変更されないものである。

従って,アジャストやノーマライズされるのは,実際のエネルギー消費の方であ
る。

このため,固定ベースライン(実際には固定でなくエボリューション効果でアジ
ャストされている)と実際のエネルギー消費の差をノンアジャスティッドセイビ
ングと呼ぶ。

これに対し,エボリューション効果による変化もアジャストの 1 種であり,これを反
映したベースラインは固定ベースラインではないと JP より指摘し,ようやく議論が
かみ合った。

英が JWG4 のカスケード図を用いて WG1 主査を説得しようとしたが,この図ではエボリ
ューション効果が隠れていて, WG1 主査の考え方も成立することがわかった(WG1 と
JWG4 は整合していることになる)

仏 257 共同議長は WG3 プロジェクトで積極的に参加し,IPMVP のルーチン,ノンルーチ
ンアジャスト等も理解していたので,JP 指摘の主旨を理解し, WG1 主査説得に回った。
お互いに同じことを言っているが用語の違いであるとしてまとめた。

関連して英から JWG4 でレトロフィット等と呼んでいた現状値の方をアジャストする
方法と,ベースラインをアジャストする方法を比較対照する説明が行われる等,種々
の議論が進展し, WG1 主査の理解が深まった。
⑤
ISO/TC257/デルフト会議 No.05
日時
2014/04/09 AM(~11:00)
参加会議
WG3 Project
出席者
Ge Changrong( 中 ),Liu Meng( 中 ),Ouyang yanyan( 中 ),Peng Xu dong( 中 ),Li
Pengcheng( 中 ),Wang Xiaotao( 中 ),Givois Denis( 仏 ),Marcq Nicolas( 仏 ),Riou
Sylvie( 仏 ),Hassanbegi
Shirzad( イ ラ ン ),Ishimoto
Yuki( 日 ),Komai
Keiichi( 日),Holmberg Rurik( ス ウェ ー デン ),Nijjhar Rajvant( 英),Kromer Steve(米
/EVO)
経過
コンビナーより No.1 コメント(仏)に戻りたいと提案

Afnor から,現在のコメント審議の中で,仏案から必要部分を抽出して盛り込む
ことを提案するのは難しいので,ウィズドローするとの説明。

仏から,決めつけないで出席者の意見を聞いてみたらどうかとの発言があった
が,仏のミラーコミッティ決議は No.1 コメント記載の通り全文の差し替えであ
り,それが不可能であればウィズドローするのがミラーコミッティ決議の主旨と
- 44 -
発言。

英,米等から種々コメントがあって,ウィズドローするが NWIP とするのが適切と
の結論となったので,JP からも仏の ex-ante はアプリシエイトしているので NWIP
を出すなら協力したいと意見表明。
内容等

引き続き,本文のコメント処理が行われたが中座して,WG2 に移動した。

No.1 コメント(仏)提案に関する結果は上記の通り。
10 月までに DIS 移行というスケジュール上のネックが基本的理由。
現状ドラフトのスコープを超えるという認識とはなったが,NWIP で承認されたスコ
ープを超えるという認識にまではなっていない。

他のコメントの中では中国から出された No.144,第 5 章の全面差し替えが大きなも
の。ただし,根本的に規格の主旨を覆すようなものではない。
⑥
ISO/TC257/デルフト会議 No.06
日時
2014/04/09 AM(11:00~)
参加会議
WG3 Countries, Regions, Cities
出席者
Li Pengcheng(中),Wang Xiaotao(中),Ziegler Bruno(仏),Komai Keiichi(日),Boonekamp
Piet(蘭),Dijkstra Bert(蘭),Magyar Jan(スロバキア),Byrne Ian(英)
経過
内容等

コメントの最終処理が行われた。

次いで,本文全体のレビューが行われた。

コンビナーから,修正 FDIS を 2 週間以内にメンバーに発行する。

今回は仏からの全面変更案が出た WG3 に集中するため,WG2 については出席していな
かったが,前日に主査から最終確認には出席するよう強く要望されていた。

出席者メンバーリストに署名(これもコンビナーからの要請の一つの理由)

JP コメントについては特に議論はなし。前日,主査から JP コメントについてわから
ない点があるので出席して説明して欲しいとの要望があったが,①WG3 が佳境に入っ
ており十分な時間が取れない,②国ベースの規格は TC257 の中心となる重要規格とは
認識するが日本等の EU 以外の国では活用の可能性が少ない,③JP から種々コメント
を出したが重要なのは昨日 WG1 で議論したアンアジャスティッドセービングに尽き,
この点で他の規格(プロジェクト,組織)と整合をとってくれれば他は余り大きな問
題ではないと話してあった。

本文のレビューの中で WG2 としてはアンアジャスティッドセービングの用語は使用
しないことになったと説明があり,3 章の定義から削除されたことを確認した。
WG2 ではネットセービングとグロスセービングの二つが使用される。グロスセービン
グが,これまでのアンアジャスティッドセービングにほぼ対応するとの説明があっ
た。

アジャストメントファクターの定義に関する Note では,「本規格においては」の言葉
が付され,他規格との不整合による問題発生回避が配慮されている。

JWG4 主査(英)の参加により,組織の省エネ計算や 50001 シリーズとの整合,英文表
現上の問題等はかなり改善されたと考えられるが,詳細については十分確認できてい
ない。
- 45 -
⑦
ISO/TC257/デルフト会議
No.07
日時
2014/04/09 PM
参加会議
WG1 General
出席者
Wang Xiaotao(中),Ziegler Bruno(仏),Komai Keiichi(日),Boonekamp Piet(蘭),Dijkstra
Bert(蘭),Magyar Jan(スロバキア),Byrne Ian(英)
経過

昨日に引き続きコメント処理が行われた。

この過程でベースラインのアジャストに関する確認が再度行われ,日英から TC257 他
規格及び TC242 の考え方に関する説明を行った結果,仏主査の理解がさらに高まり,
大きく改善された。

WG2 主査も出席して意見交換の結果,他規格と国ベースの規格との違いに関するピエ
ット主査の理解も高まったので,WG3FDIS にも良いフィードバックとなることが期待
される。

最終コメントまで処理が終了

議論結果を WG1 主査がまとめ明日 AM の確認を経て,午後のプレナリ―に臨む。

WG1 主査から,今回は非常に大きな修正となったので FDIS とはせず,DIS として再度
WG でコメント募集することにしたいとの発言。
内容等

アンアジャスティッドセービングについては WG2 からは除外するが WG1 では残す。た
だし,アジャストの意味(範囲)については,これまでの国ベースの考え方に限定せず,
組織,プロジェクト,等とも整合させる。

現状 DIS は 4.5 章アンアジャスティッド&ネットセービング,4.6 章にベースライン
となっていたが,これを逆にする。
(図 2 と図 3 が逆になる)

4.6 章ベースライン及び主査が準備した図 2 改訂案に基づき議論。JP 及び英からの説
明を踏まえ,次のような整理となった。

アジャストメントは①ルーチンアジャストメントと②ノンルーチンアジャスト
メントの 2 種類しかない。

ルーチンアジャストメントを行うためのファクターはオーガナイゼーションや
プロジェクトではレレバントバリアブルと呼んでいる。国ベースではドライバー
と呼んでいるが,本質的には同じものである。
 レレバントバリアブルのうち,国ベースでは気候条件のみを考えており,これに
よるアジャストメントをノーマライゼーションと呼んでいる。
 重要なレレバントバリアブルとしては,この他に生産量,ボリューム効果がある。
この調整は,これまで WG1,2 ではアジャストに含まれない(固定ベースラインで
ある)と考えてきたが,組織,プロジェクトベースではルーチンアジャストメン
ト,あるいはノーマライゼーションと考えてきたので,これら規格と整合をとる
ためアジャストに含めることになった

ノンルーチンアジャストメントを行うファクターは,組織,プロジェクトではス
タティックファクタと呼んできた。
 国ベースで考えてきたストラクチャエフェクト,オートノマスエフェクト等もノ
ンルーチンエフェクトとして捉えることができる。

アジャストの方法として,①ベースラインをレポート時に合わせる方法,②レポート
時をベースライン時に合わせる方法があることを確認した。
- 46 -

他 WG では①が主であることや。①~②以外に別の基準時に合わせる方法,②が用
いられるのは ex-ante の場合が多いこと等を日英からコメント。
⑦
ISO/TC257/デルフト会議 No.08
日時
2014/04/10 AM
参加会議
WG1 General
出席者
Ge Changrong( 中 ),Li Tienan( 中 ),Wang Xiaotao( 中 ),Givois Denis( 仏 ),Marcq
Nicolas(仏),Ziegler Bruno(仏),Hassanbegi Shirzad(イラン),Ishimoto Yuki(日),Komai
Keiichi(日),Boonekamp Piet(蘭),Dijkstra Bert(蘭),Magyar Jan(スロバキア),Byrne
Ian(英),Nijjhar Rajvant(英)
経過

WG1 主査から昨日の結果を反映したドラフト概要が報告された。

関連事項として WG2 主査からプレゼンが行われた。

特に WG2 主査からの追加プレゼンは昨日の結論を超えるものがあり,日英を中心に議
論となった。

相互理解は更に深まったとは考えられるが, WG2 主査提案の扱いについての結論には
至らず。
内容等

WG1 主査から示されたドラフト概要の本文では,
【ベースライン時のエネルギー消費量(生値)】マイナス【レポーティング時のエネ
ルギー消費量(生値)
】イコール【アンアジャスティッドセービング】
が示され,同時に

代表例として提示されたのは,
【ベースライン時のエネルギー消費量(生値)】マイナス【レポーティング時の
エネルギー消費量(アジャスティッド)】イコール【ネットセービング】
となっていた。

そしてアネックスとして,日,英が提供した図等を用いて
【ベースライン時のエネルギー消費量(アジャスティッド)】マイナス【レポー
ティング時のエネルギー消費量(生値)】イコール【ネットセービング】
等が示される構成となっていた。

これまで ISO50001,ISO50006,ISO50015,ISO17747,ISO17741 等で想定していた構成と
は代表例が逆ではあるが,一応矛盾はしていない形となったので,アンブレラスタン
ダードと受け取ることにし,異議は出さなかった。

英から,日本が採用しているムービングベースラインについてコメントがあり,プリ
ディターミンドアジャストメントの一つの形として,ネットセービングであると認識
していると WG1 主査も確認(原単位変化ではないので省エネ法とは異なるが,主旨は
共通する部分もあるので,敢えて異議は出さなかった。

WG2 主査からのプレゼンでは,消費量ベース(CBM:consumed energy base method)
と言う用語が本日になって提示され,これと従来の IBM(インジケータ法,かってのト
ップダウン法),MBM(メジャード法,かつてのボトムアップ法)との 3 区分で対比す
ることが提案された。

かなり意味不明な部分があり,入手した PPT を詳細に分析する必要があるが,国
レベルと組織やプロジェクトレベルとではアグリゲーションが大きく異なるの
- 47 -
で区別して考える必要があるという主旨のようである。組織やプロジェクトはデ
ィスアグリゲートされているのでエネルギー消費量を直接把握できるが,国・地
域レベルだと統計的な指標であるインジケータを用いることになるという説明
である。

極めて混乱を招く分類であると異議を唱えた。インジケータは原単位ないしエネ
ルギー効率として,組織やプロジェクトでも広範に使用されているので,この有
無で国・地域レベルと他レベルを区別することはできない。エネルギー消費量は
【インジケータ(原単位)
】×【関連変数】であることは明らかであり,数式表現
が見掛け上違っているだけなのに,そこに根本的な違いを持ってくることは大き
な誤解である。関連変数のことを国ベースではドライバーと読んだり,組織・プ
ロジェクトベースではルーチンかノンルーチンかの違いによってレレバントバ
リアブルと呼んだりスタティックファクタ等と呼んだりしているが,ようやく概
念整理と共通化ができてきたところである。また組織ベースでも,組織全体やサ
ブ組織ごとに大括りで原単位で分析して行く方法と,個別の省エネ活動ごとの省
エネ量を積み上げて行く方法の 2 つがあるとの認識で,国と同様に IBM と MBM で
分析して行く規格がようやくできつつある。この段階になって,今更このような
分類をされることは不本意である。

英からも,ISO17747 における IBM,MBM で検討している内容に言及しながら,日と
同様の主旨で多くの異論が提示された。

これに対し,WG2 主査からも多くの反論があり,蘭仏 vs 日英で長時間の議論が続
くことになった。視点の違いによるものとの認識は共有しながらも最後まで合意
に至らず,午後からのプレナリ―会議もあるので議論は打ち切ることになった。
ただし,その後のプレナリ―やワークショップにおける WG2 主査からのプレゼン
では IBM,MBM,CBM 対比表は登場することはなかった。
⑧
ISO/TC257/デルフト会議 No.09
日時
2014/04/10 AM
参加会議
Plenary
出席者
Ge Changrong(中),Li Tienan(中),Liu Meng(中),Ouyang yanyan(中),Peng Xu dong(中),Li
Pengcheng( 中 ),Wang Xiaotao( 中 ),Givois Denis( 仏 ),Marcq Nicolas( 仏 ),Riou
Sylvie(仏),Ziegler Bruno(仏),Hassanbegi Shirzad(イラン),Ishimoto Yuki(日),Komai
Keiichi(日),Boonekamp Piet(蘭),Dijkstra Bert(蘭),Magyar Jan(スロバキア),Byrne
Ian(英),Nijjhar Rajvant(英),Kromer Steve(米/EVO),NEN 幹部 1 名,ISO より Web 参加
経過

議長より開会挨拶。

NEN より挨拶。

秘書から出席者(国)数の確認と会議の成立の報告

秘書から予定のアジェンダが読み上げられ,全員賛成で採択された。

議長からレゾリューションは英文で作成する旨提示があり,作成委員会に関し,母国
語 メ ン バ ー 国 と 非 母 国 語 メ ン バ ー 国 か ら の 立 候 補 の 呼 び か け が あ っ た 。 Ian
Byrne(英), Yuki Ishimoto(日), Nicolas Marcq(仏),Ouyang Yanyan(中)の 4 名が挙
手し,全員賛成で承認された。
- 48 -

ISO 事務局から WEB による参加があり,PPT によって審議の加速化等について説明があ
った。CD や FDIS がオプションになるので,WD からいきなり DIS になり採択されれば
IS になる。

秘書から TC257 に関し,これまでの審議経過及び今回のデルフト会議の経過について
報告があった。

引き続き WG1~3 の各主査から今回の各 WG 審議概要について報告があり,各主査から
提示された今後の方針が全員賛成で承認された。

参加者及びリエゾンから 7 件のプレゼンがあった。

議長から,これまで第 1 回アジア(北京),2~4 回欧州(パリ,ヘルシンキ,デルフト)
で開催してきたので,次回は場所未定ながらアジアを想定しており,2015 年 1 月ない
し 2 月に開催予定との説明があり,全員一致で承認された。

レゾリューション作成委員会によって休憩時間にレゾリューションがまとめられ,休
憩時間に秘書から報告され全員一致で承認された。
内容等

NEN の概要紹介

人員規模 225 人。年間予算規模 34 億円。事業は①規格,②出版,③IT 等電気関係
の 3 分野。規格の活動範囲は①国際,②EU がほぼ同等で③オランダ内は少ない。

各 WG からの報告

WG1 主査:DIS 投票否決を経て大きな見直しを行い,ベースラインやアジャストメ
ントの定義を変更,ルーチン/ノンルーチンアジャストメント等の考え方を取り
入れたので,アンブレラ規格として他のグループ規格とのハーモナイゼーション
が大きく改善されたが,変更が大きいので新 DIS として新たに TC 投票に諮ること
にしたく,4/18 までに新版を事務局に提出する。

WG2 主査:議論が進み良い結果が出たのでデルフト会議終了 4 週間以内に主査か
ら事務局に改訂版を提出し,FDIS 投票に諮りたい。なお,これまで ISO17743(WG1
で審議中のもの)をノーマティブレフェレンスとしてきたが,整合性確保に時間
がかかるのでノーマティブレフェレンスから除外することを決定した。従って,
本規格にはノーマティブレフェレンスはなくなる。

WG3 主査:各国の議論により良い成果が出た。今回 CD2 を審議したが,NWIP 提出
からの時間が経過しており,今回の結果を反映して DIS 投票に諮りたい。

参加者及びリエゾンからのプレゼン

JWG4 主査:本 TC のファミリー(関連)規格として TC242 とのジョイントで開発
しているとして概要紹介があり,デルフト会議でファミリー規格としての整合性
が進んでいるとコメント。

中国からは省エネ計算 M&V に関する国際エバリュエータ(CMV)
制度に関する NWIP
提出の計画に関するプレゼン。本件は昨年のヘルシンキ会議でもプレゼンされて
おり,EVO から確認のコメント。ISO50002 や ISO50003 との関連も曖昧。ファミリ
ー規格内の規格の選定能力,国際認定等が新規ポイントか。EVO より,エバリュエ
ータの教育に関する規格とすれば良いのではないかと言うような主旨のコメン
ト。

中国からは火力発電のエネルギーパフォーマンスアセスメントに関する NWIP 検
討に関するプレゼン。
- 49 -

仏アフノールからは Ex-Ante のプロジェクト省エネ計算に関する NWIP(PPT は特
になし)及び後ほど WG2 主査からプレゼン予定の省エネ効果の要素分解に関する
NWIP の 2 件を仏としては検討しているとのコメント。

イランよりエネルギー効率取組のポリシーに関するコメント(PPT は特になし)
。

蘭より省エネ効果の要素(要因)の分解に関するコンセプトの照会。
⑨
ISO/TC257/デルフト会議 No.10
日時
2014/04/11 AM
参加会議
Workshop
出席者
Ge Changrong(中),Li Tienan(中),Liu Meng(中),Ouyang yanyan(中),Peng Xu dong(中),Li
Pengcheng( 中 ),Wang Xiaotao( 中 ),Bosseboeuf Didier( 仏 ),Givois Denis( 仏 ),Marcq
Nicolas( 仏 ),Riou Sylvie( 仏 ),Tromop Robert( 仏 ),Ishimoto Yuki( 日 ),Komai
Keiichi(日),Boonekamp Piet(蘭),Dijkstra Bert(蘭),Magyar Jan(スロバキア),Byrne
Ian( 英 ),Nijjhar Rajvant( 英 ),Kromer Steve( 米 /EVO),
Piet-Hein Daverveldt
(NEN),Rpbert Tromop(IAE), Jaap Hogeling(CEN)
経過

司会:ピエット(蘭)

NEN のゼネラルマネージャより挨拶があり,NEN の組織及び活動について紹介のプレ
ゼンがあった。

議長より挨拶があり,「省エネ量の評価,便益を得るのは誰か?」と題して TC257 の概
要及び活動状況の状況,今後の方針等に関しプレゼンがあった。

WG1 はメソッド,アジャスト,ベースライン,WG2 はトレンド,エネ効率,省エネに
続き,WG3 を Moters,HVAC が主な活動範囲と紹介した点が若干気になる。

NWIP として M&V evaluator(エバリュエータ)を特に強調していた。

受益者として政府機関,ESCO,情報,国際貿易,メーカ,銀行,国際機関(IEA,世銀)
などを挙げた。

EVO から、
「IPMVP による M&V プログラム――現在,未来,全世界への展望」と題して活
動を紹介。

DOE と連携 20 年にわたる M&V 活動。NGO,NPO,北京に本拠,世界各国に拠点。M&V
の製品はエネルギー効率と強調。新版の IPMVP は 30 ページとコンパクトになり
使いやすくなったとアピール。今回の WG3 の成果についても貢献して行きたい
(教育活動等)とプレゼン。

IEA から、
「ワールドエナジーアウトルック 2013」に関して講演。

CEN/TC371 議長から、
「ビルの省エネに関する各種規格の整合性確保」に関する講演。

休憩後 WG2 主査からプレゼン。開発中の ISO17742 に関し,CEN16212 との対比が説明
され,CEN のメリットを維持しつつ大幅に適用範囲を拡大し使いやすくなった良い規
格と強調

JWG4 主査からプレゼン。開発中の ISO17747 に関し,2+2=3 をテーマに,企業の省エネ
量と個別省エネ活動の省エネ効果の合計量が一致しない原因の考察が述べられた。カ
ナダ会議前後で日本から提供した種々のコメントや資料が盛り込まれている。

WG3 主査からプレゼン。開発中の ISO17741 に関し概要を報告。
- 50 -

仏 ADEMME からトップダウン法に関しプレゼン。現在,180 種のインジケータがデータ
ベース化されており,既に EU29 か国及びノルウェーが採用。
政府機関のみならず ESCO
事業者,メーカ,金融機関等も活用しているとのこと。
3.2.2 フランス国際会議の概要
(1) 第 5 回会議の概要
○会議名:ISO/TC257 パリ WG 会議
○日時:平成 26 年 12 月 2 日~5 日
○場所:パリ市 フランス規格協会(AFNOR)
○参加者:石原 明(国内審議委員会委員,省エネルギーセンターより専門家派遣)
同行者:井上賢一(国内審議委員会 WG 委員,JEITA)
○会議日程
WG1:一般,WG2:国・地域の省エネ計算,WG3:プロジェクトの省エネ計算,JWG4:組織の省エネ計算
1) 全般
全てのコメント処理を終了し,DIS への移行を図ることとなった。次回メキシコ(TC242 全体会議)
を想定。ただし,TC257 の事務局と相談する必要があり,別途に WG 会議を行う可能性も残っており,2
月の TC257 の北京の全体会議の折に JWG4 を実施することは今回から間がなく,時間的に難しい。
2) ISO17747 の特徴
討議によってまとまってきた ISO17747 の特徴は,組織における省エネ量の決定(計算,認識を含む)
のための structural analysis の考え方を,organizational と EPIA-based の二つの概念を用いて整理
したことであり,ガイドラインであって強制力はないが情報として有用性が認められる。
一方,計算の方法においては,インドと US の強い主張により,統計手法が前面に出ており,他の手法
についての記述が乏しく,また,現実には Annex における事例が示すような単純なプロセス以外は統計
手法が完全な形で適用できているわけではないことへの配慮に乏しい。
今後の対応としては,手法の追加をコメントする形で単純な統計計算に限定されすぎないよう主張
することも必要と考えられる。
しかし一方,今回の討議を通じて,US,インドなどの意見をみると統計手
法による計算に対しての信頼感が高いのも事実であり,コンピュータを使用したモデル化など日本で
も努力していることについて,この規格が普及に役立つよう誘導していければ意義があると思われる。
3) 日本の寄与について
本規格の作成の中心となった参加者は,イギリス(主査),インド(副主査),US,日本であり,今回フ
ランスからもかなりコメントがあったものの,作成を支えたのは上記の 4 者である。参加者は相互に 4
者の作成における貢献を評価している状況である。
- 51 -
4) boundary について
Boundary は計算 data の範囲を決め,accounting の基礎となる点で重要であり,また boundary の設定
は計算手法と密接に連関しているため,ISO17747 は boundary について詳しく記述している。
5) annex について
日本からは,複数の製品を生産するケースを annex D として提案して採用されており,本規格を複雑
性を有する組織に適用する場合の有用な手がかりを提供している。
6) normalization について
本規格は計算における normalization を重視しているが,normalization と adjustment の関係につ
いては確立されている 50000 シリーズの考え方に従うべきであるとする日本の提案が受け入れられて
いる。
7) primary energy について
各国の概念に矛盾しないよう primary energy については記述に注意が払われた。
8) double counting について
同一の省エネ効果を 2 つ以上の活動の成果として二重にカウントすることが double counting であ
り,これを避けるる観点からの日本の提案を含めて記述がなされている。
9) 統計論の帰結と EnMS の概念の食い違いについて
単純に統計論を徹底させると,省エネ量の計算ができなくなる,改善量の少ない省エネは統計的に検
証できないため実施する意味がないという帰結となる可能性がある。このような結論は避けるべきで
ある,その観点からの問題提起を今回一部行って記述を修正しているが,次回はこの点についてさらに
広くコメントを行って討議をしたいと考える。
(2) 個別議事メモ
○2014 年 12 月 5 日(AM/PM)
参加者:計 6 名
参加者内訳:Ian Byrne(UK,JWG4 主査),Suhas Lohokare(インド副主査),石原委員,Peter Therkelsen
(US),William Miller(US) ,Guy Claus(France)
他に,午後の一部には井上委員など WG3 の一部が出席
<議事概要>
1) double count について
double count の認識と処理の procedure を記述すべきとする日本のコメントについて,その必要性
を説明。記載の仕方は修正するが説明は必要ということで了解された。
2) Annex A について
前回の WG で日本のコメントにある対比表(organizational と EPIA-based の特徴を比較したもの)
が理解の助けになるとして,Annex A に追加された。しかし,US がその削除をコメントで要請。理由は,
対比表は作成過程において非常に役に立ったが,その内容がすでに本文に織り込まれたため,対比表は
必要なくなっているという点。
表そのものの作成過程における役割は高く評価されており,現段階では
本文との整合性をとることの煩雑さのほうが問題になっていること,他の参加者の US と同意見であう
ことを考慮して,削除の要請に同意。
3) Annex B,C について
日本を中心として表現修正に関するコメントが出ており,primary energy と delivered energy の
扱いが統一されていないことなど,主なコメントに対応して修正した文がインドから提出された。しか
し,なお分かりにくいところがあり,対応を討議。数値表については,EXCEL の output であるとして,簡
- 52 -
素化のための修正にインドは難色を示していたが,全員の修正要請,できる範囲で簡素化して分かりや
すくすることとなった(具体的な内容は,主査とインドで決めていく)
。
4) Annex D について
Annex D は日本の提案によるもの。Annex D には,historical data がなく,事例として不適切なため
削除すべきとのコメントが US から出ていた。しかし,US 参加者を含め,統計とは別の観点から有用で
あると意見が一致し,残すこととなった。
5) Annex E について
Annex E はイギリスの提案によるもの。省エネ量の表現の仕方についての追加説明であるが,本文に
ある省エネ量計算とは観点が異なっているので削除すべきという US のコメントが出ており,日本から
も一部削除のコメントが出ていた。討議では主査(イギリス)が有用性を主張した。次の観点から,
イギリスの主張を支持。結果的には US も決定的な反対はせず,Annex E は残すこととなった。ただし,
表題を reporting に関するものでなく,communication に関するものとして変更。
Annex E を採用する理由:省エネ量の計算結果は,その計算の必要性に応じて,対外的にさまざまに
使用される。Annex E はその表現の仕方について有用な情報を与え,計算そのものに関する記述ではな
いが,ISO17747 に必要なものである。
6) uncertainty について
改善において省エネ量は standard error に対して 2 倍以上とすべきと記述している 7.3 の原案(イ
ンドがコメントとして作成)について,EnMS の概念に反するものであるとして,削除を要請した。統計
論として適切とインドから主張があったが,説明の結果,上記の内容は小改善を集積することを妨げる
恐れがあり適切でないということが了解され,表現を ISO50001 に矛盾しないように修正することとな
った。
合わせて,統計を重視するあまり,EnMS として不適切な内容とすることがあってはいけないという
ことを原則論として参加者に要請した。
7) コメント処理
その他,表現の修正等のコメント対応などを含めて,417 件すべてのコメントの処理を終了。
○2014 年 12 月 4 日(AM/PM)
参加者:計 6 名
参加者内訳:Ian Byrne(UK,JWG4 主査),Suhas Lohokare(インド副主査),石原委員,Peter Therkelsen
(US),William Miller(US) ,Guy Claus(France)
<議事概要>
1) Data quality
イ ン ド の コ メ ン ト と し て uncertainty の 記 述 の 追 加 に つ い て 討 議 。 Uncertainty に つ い て
は,ISO50015 など他の規格に記述があり,ISO17747 は M&V について ISO50015 に整合させるとなってい
ることから不必要として反対したが,インドとアメリカの賛成によって記述することとなった。第 7
章として作成し,内容はコメントを反映させる。記述を予定する内容は概略次の 3 点であるが,特に最
後の項目については,今後の討議で慎重な記述を求めて行きたい。
・error の種類についての説明
・適切な measurement の選択と設置を管理すること
・省エネ量は standard error に対して 2 倍以上とすべき
2) model preparation における考慮事項(6.4.6.3 節)
Model データなどについての記述であるが,常に適用可能なものではないので,削除すべきという日
- 53 -
本のコメントについて,常に適用されないからといって記述が不必要なのではなく,applicable な場
合のガイダンスとして意味があるという理由で,インドとアメリカの意見により reject された。ただ
し,同コメントが option として提案する記述のうち,EPIA-based approach については,個々の EPIA の
特 性 に 従 っ て モ デ ル を 考 慮 し ,statistical method を 適 用 す べ き で な い と い う 記 述 に つ い
て,statistical method を適用すべきでないという部分を削除し,EPIA-based approach の特性に従っ
てモデルと normalization が選択されるべきという記述に修正されて採用された。
3) model の validity(6.4.6.4 節)
Specific すぎるので削除すべきという日本のコメントについて,modelling において statistical
check は必要とするインドとアメリカの意見によって reject された。
つねに statistical な modelling
が可能とはいえないと主張したが,残念ながら受け入れてもらえなかった。またインドからのコメント
として,statistical test に合格する modelling がない場合,modelling はできず,エネルギー消費量の
固定値を baseline として使用すべきという note が挿入されている。反対は受け入れてもらえなかっ
たが,statistics を重視するあまり,エネルギーマネジメントの精神に反する内容の note と思えるの
で,慎重な対応を求めていく。なお,このような議論はもっと前の段階ですべきであったという主査か
らのコメントがあった。
6.4.6.4 の記述を前提として,statistical test を採用する場合には,その criteria を組織が決める
べきというコメントは部分的に採用されているが,統計重視の考え方のため,有意な統計とするために
という理解になっており,組織に自由度をもたせようとするコメントの趣旨が反映されたとはいいに
くい。
4) EPIA-based approach
計算対象は all EPIA ではなく,all identified EPIA とする日本のコメントについては,ensure all
actions でなく the organization may seek to identify all actions that impact energy performance
という形に変更することで,部分的に反映された。
5) コメント処理
319/417 のコメントの処理を終了。
言葉の適切性,adjustment などについての日本のコメントはほぼ
採用された。
○2014 年 12 月 3 日(AM/PM)
参加者:計 8 名
参加者内訳:Ian Byrne(UK,JWG4 主査),Suhas Lohokare(インド副主査),石原委員,Peter Therkelsen
(US),William Miller(US) ,Guy Claus(France),Sangkug Im(Korea),Hyun Woong Lee(Korea)
<議事概要>
1) normalization の定義
日本のコメントによって static factor に言及する表現は除くこととなった。
2) boundary の討議(続)
日本のコメントで boundary を図示したものが分かりやすいと,挿入提案が採用された(annex でな
くメインテキストに挿入)
。図自体は,transportation などを一部追加修正して別途提出する。
3) primary energy について
次のような討議と対応を実施。
・primary energy の取り扱いは法的要請等によって異なる可能性があることを追記する。
・水素の取り扱いは,その原料,製造過程,使用目的によって異なるため,primary energy の例として水
- 54 -
素を例示した部分は削除(日本コメント関連)
。
・conversion factor の設定方法については,default の部分が不明確という点を中心に討議。EU での
実施例があるということで現在のテキストを維持。
・primary energy の conversion factor が 1 という表現は不適切ということで削除(日本のコメント
関連)
。
・CHP を用いた省エネの正確な計算には primary energy を用いる必要があるということの表現の仕方
を修正(sub-optimal という語が使用されていたが,不明確なため直接的な表現に変更)
。
4) 集計対象について
次のような討議と対応を実施。
・minor energy を集計対象から外すことがあるという言及については,集計対象の選択が恣意的にな
りうるということでフランスが反対。討議の結果,必要性があることから,この考え方を維持するこ
ととなった(ただし,処理の仕方を記録しておくことが必要)
。
・EPIA の省エネ計算については,全ての energy を集計するのではなく,EPIA が影響する部分のみを集
計することがあることを明記(日本のコメント関連)
。
・燃料転換(fuel switching)の場合に,前後を正しく比較するため,一部を minor energy として除く
べきでないというテキストの例示として,1%の変化に言及しているものについては,1%という記述
を 削 除 す る 。 日 本 のコメ ン ト は 1 % の 論 拠 の説 明 も な く 全 体 を削 除す る 提 案 を な っ てい た
が,switching の例示は継続したいということから(インドなど)例そのものは残すこととなった。
5) コメント処理
上記の対応を含めて,170/417 のコメントの処理を終了。
○2014 年 12 月 2 日(AM/PM)
参加者:計 8 名
参加者内訳:Ian Byrne(UK,JWG4 主査),Suhas Lohokare(インド副主査),石原委員,Peter Therkelsen
(US),William Miller(US) ,Guy Claus(France),Liu Meng(China),Rurik Holmberg(Sweden)
<議事概要>
1) スケジュールについて
今回まとめる結果に基づく次の会議はメキシコ(TC242 全体会議)を想定。ただし,TC257 の事務局
と相談する必要がある。
2 月の TC257 の全体会議で討議を行うのは,今回から間がなく時間的に難しい。
2) France からのコメント(反対投票理由)について討議の仕方を議論
個別に修正すればよい(インド),企業での使用を想定しており,その観点からまとめるので
calculation ではなく,determination とすべき(US),2 つのメソッドにフォーカスする現在の考え方
は有効なのでこの方向で進めるべき(日本),温室効果ガス削減について米中で協議をしていることな
どを踏まえると,温室効果ガス削減につながる規格という見方で進めたい
(中国)
などの意見があった。
スウェーデンからは 2 つの方法のうち結局,温室効果ガス削減の計画の基礎になるのは,現実には
top down method(bot-up は効果見積もり適切性について疑問が多く提示される)との指摘,これに対
して UK から組織の場合でも個々の EPIA の効果の過大評価が生じやすいので,それをいかに抑えるかも
ポイント,などの補足の意見があった。
フランスから,boundary と scope の説明が明確でないことが最も重要な課題との表明があり,この点
を最初に討議することとした。
3) Boundary と Scope について
フランスの指摘の要旨は,組織の boundary で捉える説明となっているが,accounting の内容から見
- 55 -
ると組織の boundary とは違う内容になっている。
これと scope がどういう関係あるのかが明確でない,
との趣旨。
(討議の結論)
①boundary は実質的な内容としては,accounting の boundary であり,scope が,何を取り上げ,何を取
り上げないかを選択する基準となる。本規格における scope の意義は,この点に限定して認識する。
②determination の結果の報告する場合などでは,このようにして選択された boundary を明確にして
行うべきである。
③boundary は変更が必要になる場合もある。例えば,一つの工場の管理において,輸送エネルギーは省
エネ効果の boundary の外とすることが行われる場合もある。その場合でも,グローバルな生産フロ
ーの見直しの評価が必要になったときには,輸送エネルギーを入れなければ適切な評価とはならな
い。
④ 以 上 の よ う な 考 え 方 に 基 づ い て ,boundary か ら 除 か れ る も の の 例 な ど を 4.2 Determining
Boundaries に追加する。
4) adjustment の取り扱いについて
日本から,adjustment についての記述を ISO50006 の考え方に統一すべき,adjustment の定義を追加
すべき,などのコメントについて討議を行った。
(討議の結論)
①他の規格において adjustment の概念,normalization との関係は確立されており,それに基づいて記
述 す る 。 そ の た め , 単 に adjustment と 記 載 さ れ て い る と こ ろ を そ の 内 容 に 従 っ
て,normalization,non-routine adjustment などと書き分けることで記述を,確立された概念に従っ
て明確化する。
②adjustment については他の規格の説明に準拠しているだけであり,説明を詳細に書くことは本規格
の目的から必要なく,また,新たな説明と受け止められて混乱の原因になってはいけないので,本規
格での詳細説明は行わない。
5) double count の定義について
Double count は overlap に伴って生じる 2 重計上である。定義で詳細に書くことは難しいため,定
義では誤った 2 重計上であると記載するにとどめ,overlap に関する説明を 6.5.3.4 avoiding double
counting に追加する。また,日本からのコメント(interactive effect の定義の追加)を考慮
し,interactive effect についての説明を合わせて追加する。
6) 上記を含むコメント処理
55/417 のコメント処理を終了。日本のコメントは,adjustment に関するものについて上記 4)に基づ
いて処理。Boundary の明確化の要請(general comment)については,上記 3)で一部考慮されているが,
個別には,個々のセクションのコメントで討議する。
- 56 -
3.2.3 ISO/TC257 関連規格ドラフトの概要
TC257 関連規格のドラフトは以下の 4 つの WG で審議されている。
①WG1:ISO17743 の開発
省エネ量の計算及び報告に適用可能な方法論的枠組みの定義・・・主査:仏
②WG2:ISO17742 の開発
国,地域または都市のためのエネルギー効率及び省エネ量に関する一般的計算方法・・・主査:蘭
③WG3:ISO17741 の開発
プロジェクトの省エネ量の測定,計算,及び検証のための一般的技術ルール・・・主査:中国
④JWG4:ISO17747 の開発
組織の省エネ量の決定(組織のエネルギー効率と省エネ量に関する一般的計算手法)
・・・主査:英
TC257 では,地域,都市,組織,プロジェクトを対象にした省エネ量を定量化するために用いる基準を
提供することを意図している。ISO 規格では各規格間での一貫性をもたせるため定義,情報タイプに関
する枠組みを提供する。
これらの WG の関係を下図に示す。
図 3.2.3.1 ISO/TC257 各 WG の関係
以下に各ドラフトの概要のポイントのみ示す。
- 57 -
①ISO17743:省エネ量の計算及び報告に適用可能な方法論的枠組みの定義
○目的
エネルギーパフォーマンスの改善対策活動による省エネ量を計算するのに適用する方法論的ルール
を規定すること。
○目次構成
○IS017743 目次
・適用範囲
・引用規格
・用語,定義
・省エネ量と定量化の手法
・原則
・省エネ量
・システム境界
・エネルギーベースラインの決定
・未調整の省エネ量と正味の省エネ量
・調整ファクターの使用
・調整ファクターのタイプ
・他のノンルーチン調整ファクター
・省エネ量の報告
・報告情報
・省エネ量の結果の通知
・アネックス A:ベースラインに関する調整ファクターの影響
・アネックス B:異なるレベルの省エネ量のプレゼン
・アネックス C:組織レベルでの省エネ量の例
・アネックス D:省エネ量計算手法で使う調整ファクターの例
図 3.2.3.2 ISO17743:方法論的枠組みの目次構成
○省エネ量とは
・省エネ量を定量化する方法は,測定によるもの,計算によるもの,指標を使うものがある。指標を使う
のは統計に基づくセクターレベルの場合が多い。
例.住宅の平均床面積,住宅の床面積当たりのエネルギー使用量,車当たりの平均燃料使用量
・省エネは,エンドユーザー行動を促進する対策(法律,規制,合意)に起因するものと,(それとは独
立した)エンドユーザー行動に起因するものがある。
・エンドユーザーは省エネになるようにアクションを行う。これをエネルギーパフォーマンス改善ア
クション(EPIA)という。
・ビルの床面積当たりのエネルギー使用量は壁の断熱効果や効率の良い窓ガラス,高効率ボイラーの相
乗効果による。新築住宅の省エネ量は,断念,高効率ボイラー,熱回収,太陽光による水加熱,エネルギ
ーパフォーマンス基準,太陽光利用補助,住宅建設会社との合意事項などの結果である。
- 58 -
(補正なしの省エネ量と正味の省エネ量)
未調整の省エネ量
調整後の正味の省エネ量
ベースライン
報告期間
調整後
図 3.2.3.3 トータルの省エネ量とエネルギーベースラインの関係
○未調整の省エネ量と正味の省エネ量
・正味の省エネ量は,アクションが混在する未調整の省エネ量から自律的な省エネ改善分と政策誘導分
を差し引いて求める。
- 59 -
②ISO17742:国,地域または都市のためのエネルギー効率及び省エネ量計算
○目的
地理的な事業主体である国,地域,市を対象に指標ベースと対策ベースのエネルギー効率と省エネ
量計算の一般的なアプローチを提供すること。
○目次構成
○IS0/DIS 17742 目次
・適用範囲
・引用規格
・用語,定義
・計算する省エネ量
・計算する省エネ量のタイプ
・省エネ量
・手法,アプリケーション,計算した省エネ量
・指標ベースの省エネ量計算
・一般的な指標ベースの省エネ量の計算方法
・指標ベースの省エネ量の計算における他の問題
・対策ベースの省エネ量計算
・一般的な対策ベースの省エネ量の計算方法
・計算した省エネ量の品質
・アネックス A:エネルギー効率指標の例
・アネックス B: 対策ベースの省エネ量計算における詳細レベルとデータハンドリング
図 3.2.3.4 ISO17742:国・地域・市の省エネ量の計算方法の目次構成
- 60 -
(政策誘導と自律的省エネ)
4:ベースとなる年のエネルギー消費
6:ボリューム効果
7:構造効果(店舗やビルの長い開店時間、手洗いから洗濯機への移行、住居床面積の変化、
車から鉄道への産業シフト)
8:総省エネ量 9:エネルギー消費(報告年) 10:エネルギー消費の変化
11:自律的な省エネ量 12:計画的な省エネ量
13:政策誘導による直接的省エネ量
14:政策誘導による間接的省エネ量
図 3.2.3.5 政策誘導による省エネ量とエネルギー使用量の変動内訳
○対策のタイプ
・省エネはエネルギー効率改善(EEI)の結果であり,エンドユーザアクションと助成制度やボランタ
リー合意などの促進策の 2 つによって加速される。
○指標(インディケーター)ベースの省エネ計算法
・エネルギー使用量とドライバーが関係付けられたエネルギー指標を用いる方法。国レベルの指標で
は「GDP 当たりのエネルギー使用量」が指標になる。住宅 1 件当たりの平均ガス使用量の指標が使わ
れる。国,地域,都市レベルでは,指標ベースのアプローチは世帯数,就業者数,生産数がある。さらに
分解して産業のサブセクターのエネルギー使用量や生産数,車両の総燃料使用量と走行距離が使わ
れる。
○対策(メジャード)ベースの省エネ計算法
・高効率ボイラーへの更新や天井断熱など個別の省エネ対策によるものを「対策ベース」という。
- 61 -
③ISO17741:プロジェクトの省エネ量の測定,計算,及び検証のための一般的技術ルール
○目的
プロジェクトを対象とした省エネ量の測定,計算検証の一般的なルールを規定すること。
○プロジェクトとは
・名称例「戸建住宅の外壁の断熱」では,住所,オーナー名,断熱業者名,予定工期,○○m2 の断熱材で外
壁 4 面を覆う,断熱材と厚みは熱抵抗○○m2・K/W,断熱材は保証付きで認証業者により施工される。
・エネルギーパフォーマンス改善アクション(EPIA)
:プロジェクトのタイプは改修か更新か,どのよ
うに EPIA を監視検証するか(技術的か,組織的か,振る舞いか)
・バウンダリーの定義は,エネルギーを使用するシステム,境界内の全エネルギー源を決めるデータソ
ース
○定量化の 4 手法
・手法には 4 つある。
(タイプ 1:推計,タイプ 2:統計計算,タイプ 3:物理ベースの計算,タイプ 4:
測定)
○省エネ計算に用いる計算式またはモデル
・省エネ量計算は,例えばビル断熱では外皮部分の熱抵抗の差に基づく。EPIA(材料のタイプや厚さ)
の特性に応じて変わる。
・タイプ 1 では,他に方法が無い時に推計をするもの。タイプ 2 では,多年にわたるデータが利用可能
な時に統計計算を用いるもの。またタイプ 3 では,周知のエネルギー消費の物理モデルが使用できる
時にエンジニアリング計算を使うもの。さらにタイプ 4 では,EPIA が分離されており,測定費用が低
価の時に測定を用いるもの。
○IS0/CD 17741 目次
・適用範囲
・引用規格
・用語,定義
・プロジェクトの省エネ量に関する M&V
・省エネ量
・省エネ量に関する M&V の手順
・省エネ量の M&V と省エネプロジェクトの実施との合理的な関係
・M&V 計画の内容と要求事項
・境界の特定
・ベースライン期間と報告期間の決定
・エネルギーベースライン
・省エネ量に関する M&V のための計算手法の選定
・概観
・直接比較手法Ⅰ
・調整済ベースライン計算手法Ⅱ
・校正済のシミュレーション手法Ⅲ
・報告
・データ補正の要求
・不確からしさ
図 3.2.3.6 ISO17741:プロジェクトの省エネ量の計算方法の目次構成
- 62 -
Ea:調整済ベースラインエネルギー消費量
Er; 報告期間のエネルギー消費量
Es: 省エネ量
図 3.2.3.7 省エネ量の計算概念図
- 63 -
④ISO17747:組織の省エネ量の決定
○目的
組織を対象とした省エネ量計算の手法を提供すること。
○IS0/CD 17747 目次
・適用範囲
・引用規格
・用語,定義
・適用範囲と境界
・エネルギー計算
・境界の決定
・共通のエネルギー単位への変換
・1 次と 2 次のエネルギー
・省エネ量の計算
・計算の対象期間の決定
・ベースラインの確立
・関連変数のノーマライズ
・省エネ量の決定
・省エネ量結果精度の向上
・データ品質
・省エネ量決定の誤差
・場所ごとの省エネ量の結合
・受け入れ可能な不確実基準
・省エネ量の報告
図 3.2.3.8 ISO17747:組織の省エネ量の計算方法の目次構成
○省エネ量計算のアプローチ
省エネ量の計算には 2 つのアプローチがある。
1)トータルの組織のエネルギー消費の変化(トップダウンアプローチ)
2)個別のエネルギーパフォーマンス改善アクション(EPIA)
(測定ベースのアプローチ)
○計算期間の設定について
・エネルギー消費が天候に影響を受けやすい時には,計算期間は通常は 1 年である。
・1 年より短い期間は,エネルギー消費が季節的な変動を受けやすい時である。
・早急な省エネ評価をしたいときには,組織は短期の計算期間を使ってもよい。
・極端な年が無い時には,1 年以上の期間をベースラインとして用いてもよい。
○トップダウンアプローチと測定ベースのアプローチの比較
・EPIA が期待した省エネ量を達成しないことがある。理由として,リバウンド効果,設備製造者による
楽観的な製品性能,設備の運転管理の問題など。また,EPIA にエネルギーパフォーマンスに影響する,
特定されていないエンドユーザアクションが含まれる。固定要素や自律的な改善のアジャストメン
トが省かれている。
- 64 -
図 3.2.3.9 組織の省エネ量の計算概念図
Annex A: 組織レベルと EPIA ベースでは省エネ量に不一致が生じる原因
・エネルギーパフォーマンスに影響するとみなされていないアクションが EPIA から抜けている
・EPIA を行っていない一部の組織でのエネルギー消費の増加が EPIA による省エネ量を打ち消してい
る
・エネルギー計算ルールの違い測定集計誤差やノルマライズにおける不確実誤差
・統計ファクターの想定外の変動
・価格影響
・EPIA ではない新しい器具のエネルギー効率の向上
・メンテナンス体制の効果を含む運転管理上の問題
・リバウンド効果
- 65 -
3.3 GSEP エネルギーマネジメント WG に関する情報発信
3.3.1 GSEP エネルギーマネジメント WG の各国取組動向
GSEP エネルギーマネジメント WG(EMWG)の目的は,世界規模でエネルギー効率が継続的に改善する
ように,産業施設及び業務建物におけるエネルギーマネジメントシステムの導入や活用を促進するこ
とにある。この目的のため,EMWG は 3 つの TF(①Energy management activities and task force, ②
Measurement and verification activities and task force, ③Qualified workforce activities and
task force)を通して活動を進めている。
各 TF では以下の活動内容を含んでいる。
①Energy management activities and task force(エネルギーマネジメント TF)
・EnMS ツールボックス(豪主導)
・EnMS 動機付け方策(豪主導)
・EnMS ケーススタディ(EMWG ウェブサイトで公開)
・エネルギーパフォーマンスデータベース(EPD)
②Measurement and verification activities and task force(計測・検証 TF)
・エネルギー計算(豪主導)
・計測検証データ品質(南ア主導)
・計測検証決定木(南ア主導)
③Qualified workforce activities and task force(有資格者 TF)
・ISO50001 監査員認証スキーム
・知識と技能の研修プログラム(BOK)
(豪,日,韓,南ア,米)
○各国の EnMS 取組動向
2014 年 5 月時点で 7,300 サイトの ISO50001 認証取得があり,前同月比 140%増。
各国の主な取り組みは,以下の通り。
・豪州:産業事業者組織や業務ビル,輸送業者向けのエネルギー診断基準を発行した。輸送基準は世界
的にも初めてのもの。(AS/NZS 3598.1, Energy audits, Part 1: Commercial buildings; AS/NZS 3598.2,
Energy audits, Part 2: Industrial and related activities; and AS/NZS 3598.3, Energy audits,
Part 3: Transport related activities)
・カナダ:8,000 件のビルに対してエネルギースターのポートフォリオベンチマークシステムを拡大
中である。ポートフォリオマネジャは業務ビル,学校,病院を対象にしている。
http://www.energystar.gov/buildings/facility-owners-and-managers/existing-buildings/useportfolio-manager
・南ア:300 人以上のエンジニアが審査員認定を受けた。4 サイトが ISO50001 認証取得し,拡大傾向に
ある。他に少なくとも 6 社が EnMS を構築中である。
・韓国:2014 年は中小企業のエネルギーパフォーマンス向上を支援するものとして,監視システムや
計測設備のような EnMS インフラを整備しようとする際に助成金が与えられている。2011 年~2013
年に上記対策によって得られた省エネ量を評価。中小企業は財政的にも人材的にも困難な状況にあ
り,計測器を設置して収集したデータを活用し,システムを監視することを通してエネルギー管理す
るには長期的な支援プログラムが有用としている。
・スウェーデン:大規模会社へのエネルギー監査を義務付ける法律ができる。これは ISO50001 認証す
ることで法律に適合する。EnMS 実行のためのハンドブックを発行した。
・米国:エネルギー省(DOE)は規格協会(ANSI)と合同で,ISO50001 の国内及び国際的な実行に対す
- 66 -
る支援と強化の方策を探っている。
・カナダ/米国:両国はそれぞれの EnMS ツールの研修会合に参加。米国のツールは eGuide for ISO
50001 (U.S. Department of Energy),カナダツールは Energy Management Information Systems (EMIS)
tool (Natural Resources Canada)。
・日本:省エネ法では,従来からのエネルギーの使用の合理化(エネルギー効率の改善による化石燃料
の有効利用の確保)の強化に加え,電力需給バランスを意識した(ピーク対策などの時間の概念を含
んだ)エネルギー管理が求められるようになった。また,エネルギー消費量が特に大きく増加してい
る業務家庭部門において住宅建築物や設備機器の省エネ性能の向上対策を強化する必要があった。
この様な背景から,電気需要の平準化の推進やトップランナー制度の建築材料への拡大が追加,省エ
ネ法が改定された。
(Jun-July 2014)
3.3.2 エネルギーマネジメントタスクフォース(EMTF)の活動概要
(1)EnMS ツールボックス(豪主導)
・第一段階では EnMS 実施のための訓練教材など,ツールのタイプ,ドラフト,構成,質疑応答などの教材
をレビューする。しかし,第二段階は予算措置がないため中断中である。
(2)EnMS ケーススタディ(EMWG ウェブサイトで公開)
・後述(3.3.5 参照)
。
(3)エネルギーパフォーマンスデータベース(EPD)
・EPD は多くの国から得られる EnMS プログラムやエネルギーパフォーマンスデータを共通のデータベ
ースとして利用可能にするもの。現在,メンバー国からの提供を待っている状態。
・この EPD は産業分野や業務ビル分野における EnMS 使用のコストや利便に関して影響を分析するため
に作られた国際的なデータベース。
・分析のイメージ(図 3.3.2.1)
:EnMS 活動によってエネルギー削減の割合が大きく伸びている例(米
国内で実施した SEP の取組事例から)
- 67 -
図 3.3.2.1 分析のイメージ
○概要
EPD は参加国が,有効な EnMS 実施に対する変動因子や課題の詳細を理解するのに有用なツールとす
る狙いがある。
変動因子や課題を理解することは,各国が自国の制度や政策を見直すことができるよう
にするものである。EPD から得られる結果は,産業・業務・公的セクターの組織に EnMS 事業を実施す
ることの価値を示す。
参加国は組織の EnMS 実施を詳細に示すデータを提出し,EnMS 規格である ISO50001 に限定されるこ
となく,競争力のある EnMS 事業ケースを開発するためにデータ分析が行われる。参加国はさらに,EnMS
実施の分析の関係を説明する国家制度や政策を記述するよう求められる。
この EPD は 2 段階で設計される。1 つはキーとなる発見のための初期データの分析にフォーカスした
段階。2 つ目は長期のデータベースの進展とセクター,施設,会社規模による EnMS の影響分析の段階。
○利点
・確実で信頼性の高い,国際的な EnMS の実施,制度,政策データの貯まり場
・EnMS を使用するためのデータドリブンな事業ケースの開発
・産業分野のエネルギー使用,消費に関する洞察,エネルギーパフォーマンス改善に関する操業変更や
技術向上の果たす役割を得る
・EnMS を実施する国の政策や制度の影響の理解
・国際的なベストプラクティスの意見交換への参加
○データの保護
・初期のデータベースはローレンスバークレー国立研究所(LBNL)に保管される。EPD に提出を求め
られたデータについては,所有データが最小になるようなデータ収集プロセスを参加国と一緒に開
発されている。データ提出した国は個別に LBNL と非公開協定を結ぶことができる。多重保護により
提出されたデータは機密が保持される。
- 68 -
3.3.3 計測検証タスクフォース(MVTF)の活動概要
(1)エネルギー計算
・エネルギー計算は政策立案者や組織が監査や M&V を行う際に,施設のエネルギー消費を効果的に計算
する適切な方法の選択を可能にするもの。現在,エネルギー計算の決定木(けっていぼく)が開発中
である。
(2)計測検証データ品質
・EnMS では M&V するのに必要な精度レベルのガイダンスを開発している。
このドキュメントは信頼性を高め,M&V をレポートする際の国際比較を促進することを目的にして
いる。
“Energy Performance Measurement and Verification: Guidance on Data Quality”は,最小
の報告手段,書式,統計手法,データ品質レベル,コスト上の意味,不確実性を管理する戦略を含むエ
ネルギーデータについて記述している。
<データ品質に関するガイダンス>
○エネルギーパフォーマンスの計測・検証(Energy Performance Measurement and Verification)
データ品質の手引き(Guidance on Data Quality)の概要
<目次構成>
A 導入
B 推奨される M&V のデータ品質のフレームワーク:要約
C 報告すべき対策の決定
D M&V 報告様式と報告期間
E データ品質の定義
F アプローチ
G データ品質値 vs データ品質コスト
H 統計的手法
I 不確実性に対するマネジメント
J リファレンス
A 導入
計測・検証(M&V)は省エネ対策の価値を決定し,報告するための重要な手法である。M&V のデータ品
質は,検証者が報告の信頼性を保証し,究極的には投資家や利害関係者の信頼を得るためのとりわけ重
要な側面となる。
B 推奨される M&V のデータ品質のフレームワーク:要約
<M&V で報告すべきエネルギー尺度>
・エネルギー(MJ,MWh など)
・エネルギー源(LPG,電気,石炭など)
・日付と発生時刻
<M&V 報告様式>
・毎時,1 日 24 時間,1年 365 日のエネルギーパフォーマンス。
<M&V データ品質の定義>
・M&V レポートにおける‘データに関する品質’は精度レベル,信頼性レベル,利害関係者が受け入れ
可能なコストに対してのものであるべき。
- 69 -
<M&V データ品質レベル>
・報告するパフォーマンスは過大評価することなく,控えめなものでなければならない。
・パフォーマンスは統計的な妥当性がどうかで語られるべきである。
<コスト>
・典型的な M&V コストは全改善対策プロジェクトコストの 5~10%の範囲に入る。
C 報告すべき対策の決定
M&V プロセスの初期のステップでは報告するデータ尺度の特定とすること。
1 次的な報告段階の尺度にはエネルギー消費,エネルギー消費のタイプ,エネルギーパフォーマンス
改善の日付と時刻を含めること。
M&V プロセスでは重要な関連変数に対する値やトレンドを見込んでおく。例えば,比較基準が生産量
に対してノルマライズされたものなら,エネルギー消費が増えていても省エネと報告されるかもしれ
ない。
表 3.3.3.1 報告尺度区分グループの例
報告尺度区分
尺度の例
環境的尺度
空気,水,雰囲気への影響
社会的尺度
健康便益,プログラム参加への影響
経済的尺度
雇用創出,統治,コミュニティへの影響
財政的尺度
プロジェクトの回収,内部リターン率,投資回収
地域,セクター,イニシアチブ的尺度
国家,地域,市への影響
プロジェクト段階尺度
ファンド了承段階,M&V 計画段階,パフォーマンス
エンジニアリング尺度
エネルギー需要,技術的実現性,設備効率
D M&V 報告様式と報告期間
報告様式は計測を想定している期間に拠る。
評価日付は評価期間の終了日と決められる。
GSEP の報告様式での推奨期間は 1 年 365 日毎時の施設エネルギーパフォーマンスに拠る。
E データ品質の定義
・計測器
計測器は 100%正確ではない。測定装置誤差は較正の問題,不正確な計測,不適切なメータ選定・設
置・操作に起因する。
・モデリング
エネルギー使用におけるすべての変動に対して十分に説明できる数式を見つけることは困難である
が,モデリングは重要な管理部分である。モデリング誤差は不適切な関数,無関係な変数の取り込み,
関連変数の排除によって起こる。
・サンプリング
サンプリングは個体群の値の変化に起因する誤差を生じうる。サンプリングは,一定の割合のエネル
ギー使用機器類を選定するか(
(例.照明器具),単位時間当たりの測定(例.1 時間に 1 回だけの計
測)とするかによって実施すべき。
・相互作用効果
照明の効率を良くすると空調に影響が及ぶ。照明システムを計測範囲に含むときには,空調システム
への効果は別に考えなければならない。
- 70 -
・パラメータ推定
パラメータ推定はすべてのパラメータを測定するのではなく,M&V 改修オプションを用いて行われ
る。すなわち,パフォーマンスは施設全体のエネルギー使用とは別に,部分的な短期または連続測定
によって決定される。例えば,ボイラーの改修前後の効率の計測,運転時間の明記など。
・不確実性管理
不確実性管理とは結果が受け入れられるレベルまでデータ品質の管理をすること。
・M&V に要するコスト
コストは通常,品質と利用可能なデータ量に直接関係している。しかし,データが多くなったからと
言っておおむねよい結果を示すわけではない。多量のデータ利用を行うに当たっては追加的コスト
の発生ということを考慮して行うべき。
F
M&V アプローチ
表 3.3.3.2 M&V アプローチ
M&V アプローチ
概要
典型的なパフォーマ
適用
ンス計算
1.1
キ ー パラ メー タ測
パフォーマンスは部分的な
短期または連続計測
ボイラーの改修
定
計測により決定される
と条件を用いた計算
前後の効率を計
測,運転時間を明
記
1.2
全パラメータ測定
パフォーマンスは計測によ
短期または連続計測
空調機の改修前
り決定される
を用いた計算
後のエネルギー
使用を短期また
は連続計測で決
定
2
施設全体
パフォーマンスは施設レベ
回帰分析
EnMS パフォーマ
ルのエネルギー計測により
ンスは改修前後
決定される。改造後の期間に
の施設請求書デ
おいて測定
ータの回帰分析
による
3
較 正 シミ ュレ ーシ
削減量はシミュレーション
月毎の請求書データ
改修前請求書デ
ョン
により決定される
で較正したエネルギ
ータと改造後の
ー使用シミュレーシ
エネルギー使用
ョン
の天候影響の尺
度。または,大規
模なカスタマイ
ズされたプラン
トのような新し
い適用
測定法
説明
適用可能な省エネ
対策
- 71 -
適切な分野
典型的なコスト
(省エネ対策コス
トにおける割
合%)
①スポット計測
正確な結果が得ら
一定負荷プロジェ
小規模プロジェク
れるように,照明
クト(照明,電動機
ト(M&V コストを
時間や冷房時間の
置換,)
正当化するのが
ような運転ファク
1-5%
難)
ターが明記されな
ければならない
②連続計測
装置やシステムの
変動負荷プロジェ
高い M&V コストを
契約期間を通じて
クト,隔離できる
吸収できる大規模
連続的に計測
装置やシステムの
プロジェクト,ベ
プロジェクト,ま
ースライン計測に
たはいくつかの計
対して時間利用で
測ポイントが必要
きるプロジェク
な(例えば,チラ
ト,オーナーや利
ー , ボ イ ラ
害関係者がパフォ
ー,HVAC,制御シス
ーマンスリスクを
テム)プロジェク
想定したがらない
ト
プロジェクト以前
3-10%
は集めなかったデ
ータを集めるのに
運転上の理由があ
るプロジェクト
③施設請求書比較
いろいろ使える高
エネルギーパフォ
度な M&V アプロー
ーマンス改善がベ
チ。現在と過去の
ースラインの 10%
施設メータデータ
~20%より大きい
を用いて分析
プロジェクト
④較正シミュレー
パフォーマンスが
計測値が利用でき
ション
施設要素のシミュ
ないプロジェクト
1-10%
3-10%
レーションで決定
される
上記の 4 つのアプローチによる計測を確証するために定期的な監査とデータの整合を行わなければ
ならない。
G データ品質値 vs データ品質コスト
データ品質値は M&V コストに比例する。M&V では不確実性を減らすためにお金がかかる。このよう
にコストを決定する多くの要素がある。
その際,次のことが問われる。
・どのような目的に対して M&V が行われるのか
・コストとデータ精度の最適なバランスは何か
・観測値と実際に報告されるパフォーマンスの許容可能な差異(誤差範囲)とは何か
・より高い精度で行うことの便益は何か
- 72 -
・利害関係者は不確実性を考慮するためにどの程度,パフォーマンスを差引こうとしているか
・メータを設置する運転上の理由は何かあるか(圧力監視など)
大事なことはどれくらいの M&V データ品質レベルが利害関係者のニーズに合致し,不必要に過剰に
ならないかを理解すること。
例えば,IPMVP では M&V に投資する金額は年間プロジェクト資金の 10%を
超えないことが推奨され,日本と南アでは 5%となっている。プロジェクトの利害関係者に受け入れら
れるコストレベルとすることが最も重要である。
H 統計的手法
定量化し,評価し,不確実性を減らすいろいろな統計的な手法は M&V の報告で用いられる。統計的手
法の目的は,利用可能なデータ品質を評価し,ベースラインを調整するための適切な変数を見つけるの
に個々のデータ集合の間の関係を評価し,信頼性の高い結果が報告されることを確実にすることにあ
る。
I 不確実性に対するマネジメント
エネルギーパフォーマンスの改善プロジェクトの M&V の精度は,真値が期待される範囲で定義され
る。95%の信頼性とは 5,000 ユニットのメータに対する±100 ユニット精度の場合,同じ真値のメータ
表示の読み取りが期待される範囲が 4,900~5,000 ユニットの間が期待される。推奨としては±7.5%
の精度,80%信頼性。
○IPMVP に見る計測検証のアプローチ概要
ビルや工場における省エネ改修を促進する ESCO 事業などにおいて,事業の成果として省エネ量を客
観的かつ科学的に評価する必要が生じてきた。このため米国では,国際性能計測・検証議定書(IPMVP:
International Performance Measurement & Verification Protocol)を作成し,省エネ量の評価方法
を提示している。この省エネ量を求める行為が計測・検証(M&V)である。
1) オプション A
省エネ効果を算出するために,設備容量の定格入力値(単位時間のエネルギー消費量)
と運転時間
(運
転スケジュール)を乗じて求める方法
・計測コストは最少だが適用範囲が狭い
・危機の定格入力値の把握は改修前後のスポット測定(または短期測定),機器のカタログ値による推
定
・エネルギー消費構造が単純なモデルで表現(エネルギー使用量が機器の使用時間と比例,負荷が安定
している機器)
・定格運転する器具の高効率器具への取り換え
・計測・検証精度(予測精度)が非常に良い
・対策後のエネルギー使用量の計算式
Q = Σ(単位時間のエネルギー消費量)×(運転時間)
2) オプション B
省エネ改修前後に,機器のエネルギー消費量と運転時間を一定期間(または長期)計測して平均的な
エネルギー消費量や稼働時間を推定して乗じて求める方法
・負荷変動が定常的で,周期性,季節性がないエネルギー消費が前提
・動作時の負荷変動や使用時間の変動が大きな対象に適用可
・インバータ制御タイプの動力,センサー付き照明装置
・対策後のエネルギー使用量の計算式
- 73 -
Q=Σ(単位時間のエネルギー消費量平均)
(運転時間平均)
・変動要因が多いほど精度は悪化
3) オプション C
エネルギー消費量と説明変数(パラメータ)の関係を求め(モデル化),検証する方法
・機器やシステムの相互影響が大きく,効果の測定が困難(または計測コスト増大)
・施設全体または系統別のエネルギーの実測結果を統計的に処理
・コストを抑える方法
・エネルギー消費量が単純な統計モデルで近似できる。
(複雑な場合はオプション D の適用を検討)
・省エネ量の計算式
Q = ベースラインエネルギー消費量(当該年,稼働日数,平均外気温)-対策後エネルギー消費量
(実績値)
4) オプション D
建物と設備の仕様,部屋の稼働状況,気象データを入力してエネルギー消費を計算するモデル(空調
熱負荷シミュレータ)により,エネルギー消費量を推計して省エネ効果を求める方法
<M&V 関連ドラフトレビュー>
TF 事務局では,エネルギーパフォーマンスの計測検証において,データ品質に関するガイダンス
「Global Super Energy Performance」をまとめている。日本に対してドラフトの内容レビューを要請
されたため,この分野の専門家がコメントを加えた。
コメントの主なものは,
1)M&V のガイダンスを開発することは重要。特に計測は ESCO ビジネスや省エネ活動,クリーン開発メ
カニズム<Clean Development Mechanism(CDM)>,二国間オフセット・クレジット制度<Joint
Crediting Mechanism(JCM)>その他のクレジットビジネスにおいて必要なもの。
2)「M&V アプローチ」や「統計手法」において実例があるとよい。
3)モデル精度についてはもう少し説明があるとよい。
4)精度,期間,コストは対象に依存するので,出典が明記されるのが望ましい。
- 74 -
表 3.3.3.3 エネルギーパフォーマンスの計測検証ガイダンスドラフト(目次)
表 3.3.3.4 ガイダンスドラフトのレビューコメント一覧
- 75 -
(3)計測検証の決定木
・EnMS のエネルギー影響を M&V するのに一番よいアプローチを決定するプロセスを開発している。こ
の決定木(けっていぼく)は,M&V プラクティショナーが一貫性と信頼性のある M&V を実施するのに
有用。
“ Measurement & Verification Process for Calculating and Reporting on Energy and Demand
Performance – General Guidance”が 2014 年 9 月に発行された。
※決定木とは決定を行う為のグラフであり、計画を立案して目標に到達するために用いられる。 決定木は、意
志決定を助けることを目的として作られる。 決定木は木構造の特別な形。
<決定木文書の必要性・価値>
・種々の報告者グループや個人間の一貫性の向上
・効率プロジェクトの影響を評価する計測検証実施者に対して実用的な決定木材料
・投資家が効率プロジェクトの信頼性を得る
・導入対策の設計,運転,保守の向上
・結果の分析と必要な修正措置を取る能力を可能にする
・プロジェクトのパフォーマンスの向上(すなわち投資回収の改善)
<どのように GSEP EMWG の目標とつながるようになるのか>
・政策担当者と同様に産業分野におけるよりよい意思決定を容易にする
・M&V のための信頼性の高い,一貫性のある,同等のプロセスを容易にする
・エネルギー削減における利益の定量化の事業支援
・適切で完全なプロジェクト実施に関する支援
3.3.4 有資格者タスクフォース(QWTF)の活動概要
(1)ISO50001 監査員認証スキーム
・主任監査員と ISO50001 実施に関する一般原則のため,各国制度のジョブタスク分析と認証審査スキ
ームを開発している。
(2)知識と技能の研修プログラム(BOK)
・豪,日,韓,南ア,米で作業者の研修プログラムで関連する知識と技能をまとめたもの。
・最終報告書は“Knowledge and Skills Needed to Implement Energy Management Systems in Industry
and Commercial Buildings”。
- 76 -
3.3.5 GSEP EMWG 情報共有サイトの概要
GSEP では,TF 活動で得られた各国の制度や基準などについて,参加メンバーが情報共有する目的で
Sharepoint と呼ばれるウェブサイト(ログイン名,パスワード付)が開設されている。昨年度、各ワ
ーキンググループページの Library 情報等が充実され、内容も更新されている。
以下に共有サイト(http://portal.vsecorp.com/energetics/gsep/)の最新情報の概要を示す。
①
②
③
図 3.3.5.1 GSEP シェアポイントの開設画面(認証ワーキンググループ全体)
①ライブラリー
- 77 -
②:Learn More: EMWG Fact Sheet(活動実績情報)
③Latest News: EMWG Status Reports(活動状況の報告書)
- 78 -
エネルギーパフォーマンスデータベース(EPD)や EnMS ツールボックスの紹介サイト
図 3.3.5.2 GSEP シェアポイントのエネルギーマネジメント TF 画面
図 3.3.5.3 GSEP シェアポイントの EMTF 画面
Resource Library:
「エネルギー政策基本法」
(日本)の掲載画面
- 79 -
図 3.3.5.4 GSEP シェアポイントの M&V TF 画面
- 80 -
図 3.3.5.5 GSEP シェアポイントの有資格者 TF 画面
○ EnMS 導入事例
GSEP の EMWG では,事業者が EnMS 導入するのに役立つ事例を上記シェアポイント以外にもクリーン
エネルギー大臣会合サイト
(http://www.cleanenergyministerial.org/Our-Work/Initiatives/Buildings-and-Industry/Energy
-Management/Build-the-Business-Case#CaseStudySpotlight)で公開している。
これらの事例は米国・カナダ・豪州・南アの各国から提供されたもの。
以下に公開された企業名(国)を示す。
1) New Gold (Canada)
2) Harbec (United States)
3) IBM (Canada)
4) Lincoln Electric (Canada)
5) AngloGold Ashanti Australia (Australia)
6) BHP Billiton Worsley Alumina (Australia)
7) General Dynamics (United States) (see news article)
8) Nissan (United States)
9) Simplot Australia Pty Ltd. (Australia)
10) University of Queensland (Australia)
-以下,The Institute for Industrial Productivity (IIP)
11) 3M Canada (Canada)
12) Darigold (United States)
13) St. Marys Cement (Canada)
-以下,The Industrial Energy Efficiency Project
14) ArcelorMittal Saldanha Steel Works (South Africa)
15) Toyota SA (South Africa)
16) Johnson Matthey South Africa (South Africa)
- 81 -
以下,主要な事例について取組内容の概要を記す。
<New Gold (Canada)>
○会社概要
分野:鉱業,製品:金・銅,従業員数:400 人,エネルギー種別:電気・天然ガス・軽油・ガソリン・プ
ロパン
○目的:コスト削減
○目標:2012 年比で 2014 年はエネルギー消費量を 3%削減
○改善ポイント:採鉱におけるエネルギー効率
○取組内容
・班交代の際のコンベヤーの運転休止により月 12,500 ドルを節約。
・ブロワー(圧縮機)のバルブの空気漏れ修理。
・従業員からの改善提案内容を分析。
・情報管理,データ収集のためのサーバを導入。
・省エネ対策一覧
図 3.3.5.7 エネルギー管理プロジェクト
図 3.3.5.6 エネルギー源の内訳と経年変化
・e メールやポスターによるコミュニケーション手段ではなく,フェースツーフェースが重要。EnMS
がいかに仕事を容易にし,利益をもたらし,会社イメージを強化するかを伝達することが重要。
○バリアー(障壁)
・計測システム接続に手間と時間がかかった。
・もっと効率の良い設備パラメータや設定値を決めるのが難しい。運転クルーと金属技師,監督者はそ
れぞれ見方が異なるので合体するのが大変。
○教訓
・ISO50001 に着手する際には EMIS(Energy Management Information System)マニュアルやツールを使
用することが推奨される。
・エネルギーマネジメントコンサルタントと EMIS サプライヤーが(建物分野ではなく)産業分野の経
験を持つことが有効。
・従業員の改善提案プロセスはよいアイデアを集めるのによい方法。
○成果
・北米で最初の鉱業分野の認証取得を達成。
- 82 -
・年間削減量:9GWh
○今後
・鉱業分野はコアカンパニー行動として強力なエネルギーマネジメントの促進が図られている。
・EMIS はエネルギーマネジメントの見える化のために各組織の階層に使用され続ける。
<Harbec (United States)>
○会社概要
分野:プラスチック製造業,製品:特殊プラスチック,売上 1,500 万ドル,投資費用:127,000 ドル,投
資回収年 2.4 年,エネルギー種別:電気/天然ガス
○目的:カーボンニュートラル
○改善ポイント:コジェネレーション/CHP
○取組
・2 サイトの風力タービン発電機(250kW,850kW)と「コンバインド・ヒート・アンド・パワー(Combined
Heat and Power:CHP)
」(750kW)で天然ガス燃焼から熱・電気の発生に切り替え,低炭素を指向し,効
率アップでプラントコストを低減。
・CHP プラントが全体の 47%エネルギーを供給していることから著しい領域に選定。
図 3.3.5.8 コスト分析
図 3.3.5.9 SEP 導入スケジュール
- 83 -
・熱需要の無い時間帯の運転を減らし,クーリングタワーファンや温水循環ポンプの回転数制御による
エネルギー低減,マイクロタービンの必要台数運転適正化。
・CHP 設備の効率アップのための運転教育研修を実施。
・リアルタイムのエネルギー消費データやアラームの見える化のため自動監視システムを導入。
・会社はポスター掲示や改善提案表彰によってエネルギー効率向上の気づきを与えた。
○バリアー
・エネルギー計算上,風力発電と CHP 発電の量は購買電力とは分けて取り扱う必要がある。
○教訓
・ISO50001 の文書化には,マネージャ・プロというソフトウェアを活用。
○成果
・エネルギーパフォーマンス 16.5%改善(SEP のプラチナレベル)
・エネルギーコスト削減 52,000 ドル(6,300GJ 相当)
<IBM (Canada)>
○会社概要
分野:半導体製造業,製品:半導体,投資回収年 2 年以内,エネルギー種別:電気/天然ガス
○目的(キードライバー)
:コストと CO2 排出量削減
○目標:毎年 4%エネルギー削減
○改善ポイント:生産と建物運転プロセスのエネルギー効率
○取組
・EnMS 構築のために 181 のプロジェクトを立ち上げた。そのプロジェクトは縦門システムの再検証,
自動ボイラー制御,HVAC システムの最適化,冷却水システムの最適化,ポンプ・ファンの可変周波数制
御,圧縮空気システムの改修。投資回収は 2 年以内。
○バリアー
・ISO14001 と共通した基盤があったので ISO50001 の認証はすんなり行った。継続的に改善していく
コミットメントを維持していくには新しいアイデアと革新が必要。
図 3.3.5.9 エネルギー削減結果
- 84 -
○教訓
・著しいエネルギーユーザーの特定と活動集中。
・ツールや関連エネルギーを使用するスタッフの教育訓練への投資。
○成果
・36 プロジェクトからエネルギーコスト削減 9.2%(550,000 カナダ)
・削減量の 27%は製造側のツール修正によって得られた。残り 73%は設備改修で得られた。
・トロント本社の認証を支援中。
<Lincoln Electric (Canada)>
○会社概要
分野:溶接ワイヤと装置の製造業,従業員 250 名,製品:溶接ワイヤ,エネルギー種別:電気/天然ガス
○目的(キードライバー)
:コストと環境サステナビリティ,エネルギー価格の高騰
○目標:毎年 2~3%エネルギー削減
○改善ポイント:電気と天然ガス消費量削減
○取組
・EnPI のレビューは 3 か月に一回実施。
・焼き入れ装置はエネルギー使用量の最大の設備。電力デマンドコストピークを減らすよう生産スケ
ジュールを変更。電力消費を 8%減らすよう最適化。
・ワイヤ引っ張り成形ラインも最適化。
・加熱空気がプラント内にとどまるよう煤煙吸引システムを設置した。
○成果
・年間削減 22%
図 3.3.5.10 エネルギー費用の内訳
<AngloGold Ashanti Australia (Australia)>
○会社概要
分野:鉱業,鉱物加工業,従業員 500 名,エネルギー種別:天然ガス/軽油
○目的(キードライバー)
:生産性
- 85 -
○目標:粉砕プラントのダウンタイム削減による生産性向上
○改善ポイント:プロセス制御(既存 SCADA システムの活用)
○取組
・PLC の制御プログラムの改修。
・鉱石粉砕設備のアイドリングタイムの削減。
・プラントの制約条件を把握するため,回路が不安定になる事例を調査。
・オペレータによるマニュアル介入を最小化が重要。そのための訓練プログラムを導入。
○成果
・粉砕機運転のエネルギー年間削減量は 50GJ
<BHP Billiton Worsley Alumina (Australia)>
○会社概要
分野:鉱物加工業,製品:アルミナ,従業員数:2000 名,投資回収期間:7 か月,エネルギー種別:電気/
天然ガス/石炭
○目標:プロセス制御システムの最適化
○改善ポイント:自動多変数制御(MVC)
○取組
・オペレータがプロセスを理解し,システムの緊急時制御能力を信頼させるため,訓練シミュレータを
作った。
<General Dynamics (United States)>
○会社概要
分野:防衛産業,製品:大口径砲・発射体,エネルギー種別:電気/天然ガス,投資額:255,000 ドル,
投資回収期間:6 か月以内
○目的:環境負荷低減,政府の要求,コスト削減
○目標:2020 年までに 25%削減
図 3.3.5.11 省エネ対策プロジェクトの例
- 86 -
○取組
・ISO14001,ISO9001,OSHAS18001 の運用経験があったので ISO50001 のコミットメントを得るのは容易
にできた。
・TV 放送を活用した教育訓練実施。
<Nissan (United States)>
○会社概要
分野:自動車製造業,製品:乗用車と SUV,投資額:331,000 ドル,投資回収期間:4 か月以内,エネルギ
ー種別:電気/天然ガス/石炭
○目的(キードライバー)
:環境負荷低減とコスト低減
○目標:CO2 削減
○改善ポイント:塗装工程と中央共益プラント
○取組
・エネルギーコストは生産コストの 3.3%。
・ENERGY STAR プログラムのパートナーとなり,チームには生産・保守・法務・施設技術・広報・購買・
財務・環境・契約の部門から毎週,会議を開催。
・著しい領域のエネルギーを把握するためメータシステムを改修,21,000 ドルを投資。
・エネルギー管理活動:製造プロセス加熱,圧縮空気,ポンプ類はエネルギーコストの削減に有効と分
析。
・省エネ対策:ボイラー制御の改修,配管絶縁部の取り換え,圧縮機エアー制御高度化,ポンプ類の改善。
・エネルギーレビュー(DOE ツールの活用)
:エネルギー原単位に影響する変数の分析,エネルギーデ
ータを分析,ノルマライズする統計手法によって工場の EnPI の経年変化を作成。
図 3.3.5.13 エネルギーパフォーマンスの月別変化
図 3.3.5.12 コスト分析
- 87 -
・著しいエネルギー使用の領域の特定:車体塗装工程が最大のエネルギー消費箇所,そのうち塗装ブー
スと乾燥機が工場全体エネルギーの 70%を占め,改善余地の可能性。
○成果
・年間エネルギーコスト削減 938,000 ドル
・施設のエネルギーパフォーマンス 7.2%
<Simplot Australia Pty Ltd. (Australia)>
○会社概要
分野:食品加工業,従業員 300 名,製品:冷凍野菜,エネルギー種別:電気/天然ガス
○目的(キードライバー)
:コスト低減
○目標:10 年間で 25%エネルギー原単位削減
○改善ポイント:プロセスコントロール
○取組
・従来のデータ収集法では分析ができないため,新たなシステムに投資。エネルギーパフォーマンスを
改善するため,電気と流量メータを SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)システム
に取り込むようにした。
・ユーザインターフェースと,データ収集と制御を行う PLC から成る SCADA では,冷蔵システムのエネ
ルギー使用が最小になるよう制御アルゴリズムが機能。
・ロジックコントローラーは,プラント負荷に応じてエネルギーパフォーマンスが最大になるようコン
プレッサを選択。
○成果
・冷蔵制御システムでは,数%~10%以上までのレンジで電力削減ができた。一般に夏場より冬場の方
がコンデンサーの負荷が少ないので最大の削減ができる。
図 3.3.5.15 冷凍機運転データ収集画面
図 3.3.5.14 データ収集と分析システムへの移行
- 88 -
○教訓
・SCADA システムでは,主要な生産プロセスにおけるエネルギーパフォーマンスを監視できるので,迅
速なエネルギーの無駄やエネルギー使用の改善の機会の特定ができる。
<University of Queensland (Australia)>
○会社概要
分野:教育,従業員 5,000 名,エネルギー種別:電気/天然ガス/太陽光,導入コスト:チラーメータと
最適化に 150000 豪ドル,投資回収期間:2 年以内
○目的(キードライバー)
:UQ 炭素削減目標とエネルギー効率機会プログラム
○目標:2020 年までに炭素排出削減 25%
○改善ポイント:エネルギーデータ分析,空調チラー効率,職員と学生の行動変化
○取組
・キャンパスのエネルギーの 45%を消費するエアコン冷水チラーのパフォーマンスを向上。
・大学には空調と照明をコントロールするビルマネジメントシステム(BMS)があったが,SCADA シス
テムによって,エンドユーザが BMS から容易にデータアクセスできるようにした。
・エネルギーチームがチラーの COP を測定して,SCADA に表示した。
○成果
・年間削減予測 20%(年間エネルギーコスト削減 10 万ドル)
図 3.3.5.16 空調システム分析画面
<Toyota SA (South Africa)>
○会社概要
- 89 -
分野:自動車製造業,導入コスト:335 万ランド,投資回収期間:2 年以内
○目的(キードライバー)
:エネルギーシステム最適化の推進
○目標:電気の使用量削減
○改善ポイント:ポンプ最適化,圧縮空気運用適正化,昼光利用,組立ラインの照明削減,照明・空調自
動化
○取組
トヨタ SA は,2010 年に南アのエネルギー効率向上(IEE)プロジェクトと契約した。トヨタの要員
は全員,IEE プロジェクトから提供された EnMS とエネルギーシステム最適化研修プログラムに登録
された。
EnMS は以下のステップで取り組んだ。
・継続的改善をコミットするエネルギー方針を設定。
・エネルギー監査を行い,著しいユーザを特定。
・自動リアルタイムのエネルギー測定システムをすべてのプラントに導入。
・EnPI には一台当たりの GJ を選定。目的と目標を設定し,行動計画を策定。
・プラントの要員は,非稼働時間帯の運転停止のための行動に必要なサポートを受けた。
・エネルギー削減プロジェクトでは,人感センサーをより大きな事務所に設置。多くの非高率な天井換
気システムは小規模の局所システムに置き換えた。太陽熱による水加熱が設置。水銀灯は高効率な
蛍光灯に置換。
・エネルギー削減結果は正確な計測により検証。目標値に対するパフォーマンスの改善は 2 か月毎に
トップに報告。
○ポンプの最適化
・溶接プロセスにおけるポンプ台数を削減して流量を確保。
図 3.3.5.17 冷水ポンプの省エネ
○圧縮空気運用適正化
・プラントからのエアーの要求量に応じたコンプレッサの運転・停止のシーケンスの設定。
図 3.3.5.18 圧縮空気の省エネ
- 90 -
○昼光取り込み
・昼光利用により照明台数を減らす。
図 3.3.5.19 昼光利用による省エネ
○組み立てラインの照明削減
・人工照明の半分は取りやめ,半分は蛍光灯から高効率な照明や反射板へ置換。
図 3.3.5.20 照明の間引きによる省エネ
○照明と換気の自動化
・非生産稼働時の照明と換気の自動停止。
図 3.3.5.21 照明と換気自動化による省エネ
○成果
・年間エネルギー削減 8.15GWh(年間エネルギーコスト削減 4,847 千ランド)
- 91 -
4. エネルギーマネジメントにおける ISO50001 規格の活用に関する国内調査
4.1 認証取得企業の規格活用の実態調査
ISO50001 規格運用における事業者の工夫や課題への対処方法を抽出するために,EnMS を導入した企
業に対して,下記の項目のヒアリング調査を行った。
①事業者の概要(省エネ法特定事業者/指定工場の有無,EMS,QMS 等の MS 取得状況含む)
②EnMS 導入の経緯
③EnMS 適用範囲
④推進体制(組織関係図,役割分担,省エネ委員会含む)
⑤エネルギー方針(外部公開されているもの)
⑥エネルギー目的・目標・行動計画
⑦活動の工夫
(省エネ法スキームの活用,エネルギーパフォ-マンスの設定の仕方,運用障害要因と
その解決法を含む)
⑧取得に要した費用(人件費,研修費用,コンサル費用,認証取得費等)
⑨活動の成果・効果金額(削減量,金額換算値など)
⑩その他,他の事業者に参考となる情報等
以下に調査項目に関する各企業の取り組み内容を示す。
なお,本情報は他の事業者の参考となるよう,調査先の了解を得てウェブサイト広報のコンテンツと
して掲載した(6.1 参照)
。
4.1.1 空調機製造業における事例
①事業者の概要
ダイキン工業株式会社滋賀製作所は,滋賀県草津市に立地する家庭用空調機の生産拠点である。
「う
るさら 7」をはじめ,エネルギー効率,環境性能に優れた家庭用空調機を年間約 100 万台世に送り出し
ている。
ISO9001(品質マネジメントシステム)を 1994 年に認証取得。また,ISO14001(環境マネジメントシ
ステム)を 1996 年に取得後,2004 年に国内グループ統合認証を取得している。
主要な製造ラインは,塗装工程を含む板金加工や圧縮機製造,熱交換器製造,樹脂製品製造を経て空
調機組立,検査等の製造工程がある。また,商品開発に当たって性能・信頼性試験室を有している。
②EnMS 導入の経緯
エネルギー効率に優れた製品を生産する中で,全社の環境負荷低減(CO2 削減)にも取り組んできた。
製造工場として省エネ活動に継続的に取り組み,環境影響やコスト低減にいっそうつなげるため,エネ
ルギー削減効果が見込める ISO50001 を導入し,パフォーマンス改善に必要なシステムやプロセスの確
立を行う必要があった。
すでに組織としてマネジメントシステムの運用基盤があり,整合性ある形でエ
ネルギーマネジメントに取り組めることへの期待があった。さらに今後中国をはじめ海外の生産拠点
でも ISO50001 取得の動きがあり,グローバル対策にも他社に先行して取り組み,はずみをつけたい。
③EnMS 適用範囲
認証の範囲は,滋賀製作所のエネルギーを使用する全部門で社内外注業者や構内請負作業者も含む。
年間エネルギー使用量は原油換算 12,000kL で,第 1 種エネルギー管理指定工場に指定されている。
認証範囲に含まれる要員数は約 2,000 名。
- 92 -
関連子会社
関連子会社
サプライヤ
サプライヤ
サプライヤ
図 4.1.1.1 適用範囲と境界のイメージ
④推進体制
トップマネジメントは製作所長。EnMS の推進体制については,従前から環境マネジメントシステム
の省エネ活動において,エネルギー削減分科会がその役割を果たしていたことから,分科会をエネルギ
ーマネジメントチームとして,EnMS 活動の効果的な実施とエネルギーパフォーマンスの改善推進に責
任をもつ専門技術集団と位置づけた。
分科会は エネルギーを使用する各部門より選任され,製作所全体のエネルギーレビュー,目的・目標,
改善計画の立案を EnMS 管理責任者と共に実施し,各部門での改善活動,運用管理の主導的役割を担う。
もともと分科会組織はあったが,EnMS プロジェクトの確立によって組織とメンバーの役割・責任が
より明確となり,また,活動実施内容も具体的に整理できた。内部監査員の EnMS 監査対応は,品質・環
境マネジメントシステムの内部監査を従来から実施している経験を生かし,EnMS 監査の実務教育を受
講することで容易に出来た。
- 93 -
図 4.1.1.2 EnMS 推進組織
⑤エネルギー方針
トップマネジメントがエネルギー方針を制定し,イントラに掲示して部門に周知した。
表 4.1.1.1 エネルギー方針
- 94 -
⑥ エネルギー目的・目標・行動計画
○エネルギー目標
EnMS プロジェクトで設定した目標は以下のとおり。
表 4.1.1.2
EnMS プロジェクトにおける目標
(1)当期の目標
①S製作所全体での節電マネジメントシステムの確立と電力のピークカット
電力ピークカット目標:10%
②事業所全体での管理標準を主体とした省エネPDCAサイクルの確立
管理標準の見直し:12対象設備(総量80%以上)
エネルギー削減目標:使用エネルギー3%の削減
③省エネ人材育成プログラムの構築
省エネ教育プログラムの作成及び関係者全員への取り組みの周知と自覚
(2)中長期目標
・グループ国内の他工場への本システム適用による節電・省エネの推進拡大
・グローバル拠点への拡大と現地サプライヤーとの構築モデルとして展開
→EnMSを活用した事業競争力強化の事例確立を目指す
○エネルギーレビューの方法
製作所全体としてのエネルギーレビューの実施は以下の手順で行った。
1) エネルギーの使用及び使用量の分析
・省エネ法定期報告書で報告しているエネルギー源は下記の 5 種
①電気 ②都市ガス ③軽油 ④LPG ⑤ガソリン
・過去及び現在のエネルギーの使用及び使用量の変動分析
2) 著しいエネルギーの使用及び使用量の領域の特定
・製作所における著しいエネルギーの使用及び使用量の領域として製造部以下 14 部門を特定した。
3)著しいエネルギーの使用に影響を及ぼすその他の関連変数(EnPI 指標の変数)の特定
・製作所全体としては,EnPI は CO2 排出量(t-CO2)/生産高(億円)に設定
・各部門の指標は,例えば,製造部:製品組立系(電力量/生産台数),半製品系(電力量/出来高)のよう
に選定することの妥当性を分科会として検討し,承認した。
4) 改善の機会の特定
・各部門の改善の機会は,例えば,製造部は
・圧縮機ラインヒートポンプによる蒸気レス化
・高効率ボイラー更新による都市ガス削減
・冷媒タンクゼッフル塗装(遮熱)による電力削減
・事務所・工場・製造ライン,天井照明 LED 化
・熱交換器組立ライン,乾燥炉の熱効率改善による電力削減
・低圧エアー供給圧力見直しによる増圧弁排気ロスの低減
のように選定することの妥当性,行動計画に展開することを分科会として検討し,承認した。
5) 優先度の決定
・各部門の行動計画における改善対策の優先度は大・中・小で区分し,その妥当性を分科会として検討
し,承認した。
○エネルギーベースライン
部門において 2010 年度,2012 年度,2010 年度~2012 年度の 3 年度間平均値の 3 種のうちから適切な
期間を検討して,エネルギーベースラインを設定した。
- 95 -
○エネルギーパフォーマンス指標(EnPI)設定の方法
EnPI の設定は,製品組立系では生産台数当たりの電力量とし,半製品系では出来高当たりの電力量
とした。このほか,試験台数当たりや開発テーマ数当たり,人数・稼働日当たりの電力量などが種々検
討された。
○エネルギーマネジメントシステム文書の構成
ISO50001 の要求事項をどのように満たすかを規定する文書として,「エネルギーマネジメントシス
テムマニュアル(エネルギー管理要領)
」を新らたに策定した。
表 4.1.1.3 エネルギーマネジメントシステムマニュアル
⑦活動の工夫
○EnMS の運用における工夫
EnMS 構築に当たって,すでに省エネ法の各種スキームの順守や省エネ活動の実態を踏まえ,法と規
格の整合性あるマネジメントの仕組み作りを意図した。
ISO50001 の PDCA サイクルにおける活動のポイントとなる計画・運用に関して,省エネ診断や管理標
準の関係を下図のように整理した。すなわち,省エネ法の判断基準に基づいて行われる省エネ診断は,
エネルギーレビューの
「エネルギーパフォーマンス改善の機会の特定」
の一部をなすものであり,また,
管理標準は,設備の監視測定・分析評価の基準設定を含む「運用管理の基準の確立」に対応させた。
活動では,外部専門家による省エネ診断を実施し,診断手法や着眼ポイントなど新たな気付きを得た。
また,外部専門家の指導による管理標準の見直しを行い,要員の力量アップを図った。
- 96 -
図 4.1.1.3 省エネ法スキームの規格要求事項への活用
節電要請時への対応については,管理標準に「節電措置」の項目を新設し,緊急性に応じて段階的な
対応措置が組織内で一元的に取れるようにした(下表)
。
表 4.1.1.4 運用基準における工夫例(節電要請時の措置)
○ISO50001 の導入及び運用において困難を感じた部分
要求事項を組織に具体的に適用するに際して,以下のような困難を感じた。
(1)従来,環境 ISO14001 を取得し,エネルギー削減活動に取組み,実績を上げてきた。その為,従業員
からは,なぜ今更 ISO50001 を取得する必要があるのか,また,ISO14001 と重複した取組になるので
- 97 -
はないかといった懸念事項(抵抗感)に対し,従業員への理解,意識改革に労力がかかった。
(2)ISO14001 と ISO50001 の活動が重複しないように,規格要求事項で併用できる部分はないか検討,
整理することに時間がかかった。
(3)繁忙期における推進メンバーへのスキルアップ教育の参加要請(調整)
(4)エネルギーレビューの理解と作成
⑧EnMS の構築・認証に必要とした資源
○ISO50001 及び EnMS の運用に関する研修
▬
EnMS に関する基本的な知識の習得
ISO50001 の要求事項の理解,エネルギーレビューの進め方に必要な知識を 4 日間の研修コース
にて受講
▬
内部監査員研修
EnMS 内部監査において,監査の原則,適合性・有効性の評価,監査計画,チェックリスト,所見に
関するロールプレイ教育を 2 日間の研修コースにて受講
写真
研修コース受講風景
○エネルギーパフォーマンス向上のための設備投資等
エネルギーパフォーマンス向上のための設備投資としては以下のものがある。
・事務所及び工場天井の LED 照明の導入
・事務所空調設備の更新
・事務所棟太陽光発電装置の導入(30kW)
○ISO50001 構築及び認証までのスケジュール
EnMS プロジェクト発足から認証取得までのスケジュールを下表に示す。
EnMS 構築の柱となる体制構築やレビュー,活動マニュアル整備と同時並行して規格の集合教育や省
エネ診断,管理標準の見直し整備を進めることで,キックオフからほぼ 8 か月で外部審査を受審できる
までになった。認証登録は 3 月 26 日。
- 98 -
表 4.1.1.5 EnMS 構築のスケジュール
⑨活動の成果
○ISO50001 の導入による成果
・2013 年度実績は 2012 年度比原単位 9.1%改善(生産高増に伴う削減効果分も含む)
(金額換算 1,800
万円)した。
・昨年度の実績から予想される電力ピーク値に対し,平均 12%の実施可能な対策措置が管理標準に盛
り込まれた(電力節電要請への柔軟な対応ができる体制の構築)
。
・エネルギーレビューの実践を通じた部門担当者の省エネ意識が向上した。
○今後の改善の可能性
・エネルギーレビューを活用した EnMS 基盤のさらなる強化とエネルギー削減の継続的改善に取組んで
いく。
・開発系領域における EnPI の設定の妥当性検証や新たな指標設定に向けデータ分析と影響変数の検討
に注力していく。
・省エネ法の改正を契機に法的要求事項として,ピーク対応・電気需要平準化等の指針・判断基準告示
の内容理解と運用順守を推進していく(ピーク電力抑制設備の見直し,管理標準への措置設定による
体系的な節電対応の確立)
。
・責任者レベルから部門作業者レベルへの力量教育・スキルアップの対象範囲を拡大していく。
・ダイキン中国グループの EnMS 取得状況と中国政府・省・市の規制の情報共有と EnMS 運用課題にお
ける国内との連携を進めていく。
- 99 -
4.1.2 大学における事例
①事業者の概要
千葉大学は 1949 年位創設され,現在 9 学部 11 研究科,13 研究センター等で構成される総合大学。
県内に 4 キャンパスを有し,教職員総数は 2,970 名,また千葉大学の学部学生の入学定員は 2,322 名,
学部学生の収容定員は 9,994 名。年間のエネルギー使用量は 42 万 GJ で省エネ法の特定事業者に指定
されている。
②ISO50001 導入の経緯
2004 年から千葉大学環境 ISO 学生委員会に所属する学生が中心となって環境マネジメントシステム
の構築に着手し,2005 年に ISO14001 の認証取得。環境マネジメントの一環として省エネルギー活動を
推進してきた。既に全国の総合国立大学の中でもトップ水準のエネルギー消費効率(原単位)を達成
しているが,エネルギー使用機器の更新をさらに積極的に推進できる環境を整備する等,省エネの取り
組みに関する刺激が必要と感じていた。エネルギーマネジメントシステムについても環境 ISO 学生委
員会が主体となって構築,運用を行っている。
③EnMS の認証の範囲
認証の範囲
教育研究の提供に関わる業務活動
〔登録範囲に含まれる拠点〕
西千葉キャンパス,松戸キャンパス,柏の葉キャンパス,亥鼻キャンパス
認証範囲に含ま
れる要員数
1,965 名 (うち学生委員会メンバー(*1)約 190 名)
(*1)全学生が,EMS 及び EnMS の適用範囲に含まれるわけではなく,環境マネジメントシス
テムの単位選択者だけが,EMS 及び EnMS の適用範囲に含まれる仕組みになっている。
④推進体制
既に ISO14001 の認証を受け,環境マネジメントシステムに取り組んでいたため,環境マネジメント
システムの推進体制を利用し,省エネ法に基づく省エネの推進のための“省エネリーダ会議を統合化し,
環境・エネルギーマネジメントの推進体制を整備した。
最高経営層
学長,企画担当理事(エネルギー管理統括者),総務担当理事
内部監査委員会
環境管理責任者
教員系:人文社会科学研究科教授,事務系:施設環境部長
環境 ISO 企画委員会
環境 ISO 学生委員会
松戸・柏の葉地区
西千葉地区
亥鼻地区
環境 ISO 実行委員会
環境 ISO 実行委員会
環境 ISO 実行委員会
松戸・柏の葉地区部局
西千葉地区部局
亥鼻地区部局
図 4.1.2.1 EnMS 推進体制
- 100 -
環境 ISO 事務局
省エネリーダ会議
⑤エネルギー方針
従来から運用されていた環境方針に,エネルギーに関する取り組みを追加し,「環境・エネルギー方
針」とした。
表 4.1.2.1 エネルギー方針
環境・エネルギー方針
わたしたち人類は,産業革命以来,大量の資源エネルギーを用いてその活動を発展させてきました。その結
果,地球の温暖化,化学物質汚染,生物多様性の減少など,さまざまな環境問題に直面しています。まさに,人
間活動からの環境への負荷によって人類の存続の基盤となる環境がおびやかされています。また,福島第一
原子力発電所の事故に伴い,安全で持続可能なエネルギー源の確保が急務となっています。われわれは,こう
した現状に対して何をすべきか考え,英知を結集させるべきです。
千葉大学は,総合的な教育・研究機関として,この英知の形成と集積と実践に寄与していく責務がありま
す。このため,とくに次の事項を推進していきます。
1. 文系と理系の知恵を集積し,また附属学校と連携し,総合大学としての特長を活かした環境教育と研究
の実践を進めます。
2. 省エネルギー・省資源,資源の循環利用,グリーン購入を推進し,構内の緑を保全します。また,化学物質
の安全管理を徹底し,汚染を予防します。これらにより環境負荷の少ない緑豊かなキャンパスを実現し
ます。とくに,環境・エネルギーに関連する法規制や千葉大学が同意する環境に関する要求事項を理解
し,遵守します。
3. 環境・エネルギーマネジメントシステムの構築と運用は学生の主体的な参加によって実施します。また,
学生による自主的な環境活動を推奨し,多様な環境プログラムが実施されるキャンパスを目指します。
4. 環境・エネルギーマネジメントシステムを,地域の意見を反映させながら,地域社会に開かれた形で実施
していきます。
5. 国立大学の中で全国トップ水準のエネルギー効率を維持し,継続的に改善していきます。また,エネルギ
ーパフォーマンス改善に繋がる製品やサービスの調達 ,施設の設計を支援します。
千葉大学では,この環境・エネルギー方針に基づき目標を設定し,その実現に向けて行動するとともに,行
動の状況を監査して環境・エネルギーマネジメントシステムを見直します。これにより,継続的にシステム
の改善を図ります。
また,この環境・エネルギー方針は文書化し,千葉大学の教職員,学生,常駐する関連業者などの関係者に周
知するとともに,文書やウェブサイトを用いて一般の人に公開します。
2004 年 4 月 1 日制定
2013 年 7 月 24 日改定
千葉大学長 徳 久 剛 史
⑥目的及び目標
表 4.1.2.2 エネルギー目的・目標
エネルギー目的(2013~2015 年度)
エネルギー目標(2014 年度)
エネルギー使用量を今後 3 年間にわたり年
エネルギー使用量を前年度比で原単位 1%以
平均で原単位 1%以上削減する。
上削減することに務める。
○エネルギーレビューの方法
1) 一般エネルギー分析
- 101 -
〔各建物別にエネルギーの流れと消費量,エネルギーの使用に著しい影響を及ぼす設備を把握し,
分析する方法〕
エネルギー管理統括者の指揮監督のもと,施設環境部が実施。施設環境部は,受変電単線結線図,
県水,井水,ガス等の系統図を整備して,エネルギーの流れを把握。施設環境部は,建物別エネルギー
消費量を把握するため,積算電力計,量水器,ガスメーターを建物別に配置している。施設環境部は,
エネルギーの使用に著しく影響を及ぼすものとして,受変電設備,熱源設備,昇降機設備,ガスヒー
トポンプ設備を把握。
2) 特定エネルギー分析
〔各部屋別,構内事業者別にエネルギー多消費型設備の保有状況を把握し,分析する方法〕
環境 ISO 事務局が行うアンケート調査(自己点検)によって行っている。
「千葉大学エネルギー効率改善チェックシート」を利用して実施。
3) 関連事業者エネルギー分析
〔関連事業者との契約に際して,その事業者にエネルギーパフォーマンスの改善を要請するのかを
決定するために,その業務内容を検討する方法〕
環境 ISO 事務局が,会計書類を参照して関係事業者をリストアップし,エネルギーパフォーマン
スへの影響の程度を評価。
現在のところエネルギーの使用に関連する業者としては,構内の施設メンテナンスを委託してい
るサービス会社一社が該当し,「エネルギー配慮対象調達の基準」を利用し,エネルギーパフォーマ
ンスの改善への協力の要請を行っている。
4) 関連大学エネルギー分析
〔他の国立大学法人におけるエネルギー使用効率の状況を把握し,分析する方法〕
環境 ISO 事務局が主要国立大学法人の環境報告書などを分析して実施。
これらのエネルギーレビューの結果に基づき,省エネ計画を作成している領域(27 部門)を“著しい
エネルギー使用の領域”として特定している。
⑦活動の工夫
すでに導入し,運用されている環境マネジメントシステムの仕組み及び省エネリーダ会議等の活動
をうまく利用することによって,最小限の工数で,広範囲な領域を網羅するエネルギーマネジメントシ
ステムを構築し,運用を開始することができた。
⑧エネルギーパォーマンス向上のための投資
平成 17 年度に NEDO 事業として,エネルギー使用量の見える化の仕組みの導入を行い,以降継続して
計測点の追加,デマンド監視の導入,計測機器・ソフトの更新等を行っている。
表 4.1.2.2 投資実績
導入
平成 17 年 3 月
NEDO 事業実施
第Ⅰ期
平成 21 年度
(亥鼻)高圧系統計測点追加(46)
第Ⅱ期
平成 22 年度
(西千葉)教育 2 号棟,総合校舎 E 号館(624)
第Ⅲ期
平成 23 年度
(西千葉他)屋外通信線新設,4 団地デマンド監視追加
附属図書館系統計測点追加(51)
第Ⅳ期
平成 24 年度
(松戸,西千葉)D 棟計測点追加(56)
監視機器・ソフト更新,電力使用量の追加
第Ⅴ期
平成 25 年度
(西千葉)
(亥鼻)
(松戸)の未計測に新設
- 102 -
2014 年度の取り組みとしては,各研究室等における空調機,冷蔵庫等の省エネ機器への更新,省エネ
対策の実施に掛かる費用の半額を支援するエコ・サポート制度として予算を計上している。
その他,2011 年度から太陽光発電設備も導入を継続し,創エネルギーの取り組みについても成果を上
げている。さらに 2012 年には,「地球温暖化問題 千葉大学行動計画学生原案」として,学生主体で,
千葉大学に太陽光発電設備を導入する「学生太陽光発電所プロジェクト」も発足している。
⑨活動の成果
1) 省エネルギーの更なる進展
今回の取り組みによって,千葉大学全キャンパスにおいて合計 5.49%の電気削減量が見込まれるこ
ととなった。
2) ISO14001 と ISO50001 の統合運用モデルの提供
独立して運用してきた環境マネジメントとエネルギーマネジメントを統合することによって,効
率的にマネジメントシステムを運用できるものと期待している。
3) 学生の実務教育の機会の広がり
千葉大学のシステムの構築と運用に学生が関わることによって,学生の実務教育機会が広がると
ともに,NPO 法人千葉大学環境 ISO 学生委員会等を通じて,学生から地域社会へのノウハウ普及が進
むことを期待している。
- 103 -
4.2 エネルギー管理活動への規格要求事項の活用実態
本節では,省エネ法に基づく取り組み(エネルギー管理活動)を進める中,ISO50001 を取得した事業
者は規格の要求事項をどのように活用しているか,実態を分析する。すなわち,省エネ法ではエネルギ
ー管理の PDCA 全般にわたって活動内容や手順まで明示的に規定していない中で,エネルギーマネジメ
ントシステム規格の要求事項へ適合する取り組みが行われることで,エネルギー管理活動がいっそう
強化され,省エネが進んでいる好事例を以下に示す。
事例 A.エネルギー供給業
エネルギー管理の関連
活用した規格の要求事
エネルギー管理への規
規格活用の効果・メリ
分野(PDCA)
項
格活用方法(どのよう
ット
に取り組んだか)
・行動計画の策定(計
画)
・監視,測定,分析(点
検)
・エネルギーレビュー
の構築(著しいエネル
ボイラー,冷凍機,CGS
台を電動ターボ式冷
ギー使用の領域を特
のメイン 3 設備の
凍機 2 台に更新し,エ
定し,EnPI を設定)
EnPI を設定し,パフォ
ネルギーパフォーマ
ーマンスを評価し改
ンスを向上
・運転員の力量教育(運 ・行動計画は個別の目
用)
・コミュニケーション
(点検)
・効率管理指標として ・ガス吸収式の冷凍機 1
標達成のための手段
を含む
善
・日々のデータ監視,効
・エネルギーパフォー
率特性の分析,翌日の
マンスを決定する運
エネルギー需要予測
用特性を監視,測定,
に基づく供給計画を
分析
適正化
・エネルギーパフォー
(エネルギー使用に影
マンスの著しい逸脱
響する変数(エネルギ
を調査し,対応
ー販売量,製造量,負
・著しいエネルギーの
荷率,外気温度等)を
使用に関連する人の
特定し,改善の機会
適切な教育訓練
(空気比設定,運転台
・自分の活動に伴うエ
ネルギーの使用量に
関係する影響を自覚
・従業員のエネルギー
管理に対する意識が
向上
・データに基づく改善
提案を志向
数適正化,需要予測,
蓄熱計画)を特定)
・ 毎朝 , 朝礼で 設備の
・EnMS に対してコメン
COP,その他の状況を
ト又は改善提案する
報告させ,悪化した場
ことができるプロセ
合には悪化原因も報
スを確立
告(力量訓練・改善提
案)
事例 B.内装施工・ビルメンテナンス業
エネルギー管理の関連
活用した規格の要求事
エネルギー管理への規
規格活用の効果・メリ
分野(PDCA)
項
格活用方法(どのよう
ット
に取り組んだか)
・行動計画の策定(計
画)
・エネルギーレビュー
の構築(EnPI を設定)
・ 照明 , コンセ ント電
力,空調電力の使用量
- 104 -
・エネルギーパフォー
マンスを改善
・ 力量教 育訓 練, 自覚
(運用)
・監視,測定(点検)
・エネルギーパフォー
を推計
・自分たちの取り組み
マンスを決定する運
・改善の余地があるエ
の成果数値として結
用特性を監視,測定,
ネルギー使用の領域
果に表れることによ
分析
として照明,PC,空調
る張り合いと,見える
設備を特定
化の程度が向上し,よ
・自分の活動に伴うエ
ネルギーの使用に関 ・省エネタイプの PC に
り社員の協力が得ら
係する影響,自分の行
更新,業務効率化によ
れやすくなった。
為がエネルギー目
る時間外勤務の削減,
的・目標の達成に与え
空調設定温度の適正
る影響を自覚させる
化,こまめな消灯の対
・改善されたエネルギ
・社内における省エネ
意識向上
策を実施
ーパフォーマンスか
・省エネ対策の成果の
ら得られる利点を自
測定・数値化による見
覚
える化
・エネルギーパフォー
・時間外勤務時間の削
マンスを改善するた
減に対し,福利厚生の
めに必要な資源を用
レクリエーション費
意
を上乗せしインセン
ティブを付与
事例 C.鋳物製造業
エネルギー管理の関連
活用した規格の要求事
エネルギー管理への規
規格活用の効果・メリ
分野(PDCA)
項
格活用方法(どのよう
ット
に取り組んだか)
・計画
・エネルギーパフォー
・個別機器毎のエネル
・監視,測定(点検)
マンスを決定する運
ギーマネジメントの
・是正処置(点検)
用特性を監視,測定,
ため,エコサーバーシ
分析
ステムを導入
・エネルギーパフォー
・部門内の電力使用量
マンスの著しい逸脱
50 点をリアルタイム
を調査し,対応する
収集,原単位を月単位
・不適合の原因を特定,
で部門ごとにグラフ
適切な処置の決定
化しイントラで公開
・エネルギーパフォー
マンス指標は売上高
エネルギー原単位に
設定,グラフ化し,ベ
ースラインと対比す
る形で管理
・月次の課題解決プロ
グラムの中で目標未
達の部門に対しては
対策案を要求し,幹部
- 105 -
・エネルギーパフォー
マンスを大幅改善
・レビューの結果とし
て空調用チラーを更
新
等へ報告
事例 D.装置設計製作業
エネルギー管理の関連
活用した規格の要求事
エネルギー管理への規
規格活用の効果・メリ
分野(PDCA)
項
格活用方法(どのよう
ット
に取り組んだか)
・行動計画の策定(計
画)
・運用基準(運用)
・ 力量教 育訓 練, 自覚
(運用)
・エネルギーレビュー
・エネルギーレビュー
・毎月の平均のベース
の実施により,メカニ
ラインに対し,電気使
・エネルギーの使用に
カルセンターのクリ
用料を削減
著しく影響を及ぼす
ーンルームにおいて
・運用による省エネ改
施設を特定
多量のエネルギーを
善のほか,マネジメン
・エネルギーパフォー
消費していることが
ト活動を通じて社員
マンスを決定する運
データ分析を通じて
のエネルギー管理に
用特性を監視,測定,
明らかになり関係者
関する意識が向上
分析
で共有できたこと。
の構築(EnPI を設定)
・自分の活動に伴うエ
(EnMS の導入前には,
ネルギーの使用に関
この点は意識されて
係する影響,自分の行
いなかった。
)
為 が エ ネ ル ギ ー 目 ・空調設定温度の適正
的・目標の達成に与え
化,中間期の外気導
る影響を自覚させる
入,昼休み消灯,天井
・運用の基準を確立
等の LED 化
・影響変数として半導
体製造装置の入荷状
況,空調設定温度,外
気温度を分析検討
・
「設備管理規定」と「ク
リーンルーム管理規
定」を新たに作成
事例 E.インフラシステム設計製造業
エネルギー管理の関連
活用した規格の要求事
エネルギー管理への規
規格活用の効果・メリ
分野(PDCA)
項
格活用方法(どのよう
ット
に取り組んだか)
・行動計画の策定
・監視,測定,分析(点
検)
・運用基準(運用)
・エネルギーレビュー
の構築(EnPI を設定)
・スマートメータやマ
ルチメータを 900 か
・エネルギー消費原単
位を削減
・エネルギーの使用に
所に取り付け(センサ
著しく影響を及ぼす
ーの設置によるリア
施設を特定
ルタイムのエネルギ
・部署間の原単位が横
ー使用状況の見える
並びで見える化され
化)
たことで,日常業務に
・エネルギーパフォー
マンスを決定する運
・エネルギーコストを
削減
用特性を監視,測定, ・工場内の電気・ガス・
エネルギー使用量又
分析
灯油のエネルギーフ
はエネルギー効率と
ローを作成
いう意識付けが根付
・運用基準に従って設
- 106 -
備を運用
・平均原単位を上回っ
いた。エネルギー使用
ている部署を著しい
が上限に近付くと,経
エネルギー使用の領
営陣からの状況確認
域に特定
が入るなど,経営トッ
・運用基準の確立では,
プから現場の作業者
照明,空調,事務用機
まで共通の課題意識
器の管理標準を新た
を持って業務に当た
に設定
ることが可能になっ
た。
事例 F.空調・給排水設備設計・施工業
エネルギー管理の関連
活用した規格の要求事
エネルギー管理への規
規格活用の効果・メリ
分野(PDCA)
項
格活用方法(どのよう
ット
に取り組んだか)
・行動計画の策定
・エネルギーレビュー
・運用管理
の構築(EnPI を設定)
・エネルギーの使用に
著しく影響を及ぼす
施設を特定
・エネルギーパフォー
マンスを決定する運
用特性を監視,測定,
分析
・エネルギー源として
空調電力と車両のガ
ソリンを特定
・エネルギー消費原単
位を削減
・エネルギー使用量を
・空調運転適正化やエ
削減(空調の電力
アコンフィルタ定期
削減,車輌のガソリン
点検,車両の管理のル
削減)
ール化
・エネルギーマネジメ
・社員の意識向上によ
る社内への改善提案
ントマニュアルによ
・運用基準に従ってシ
ステムを運用
る業務の手順化ワー
クフローを確立
・改善提案することが
できるプロセスを確
立
事例 G.自動車部品製造業
エネルギー管理の関連
活用した規格の要求事
エネルギー管理への規
規格活用の効果・メリ
分野(PDCA)
項
格活用方法(どのよう
ット
に取り組んだか)
・行動計画の策定
・エネルギーレビュー
・電気,都市ガス,エア
・エネルギー管理シス
ー,溶接シールドガス
テムで収集されたデ
・エネルギーの使用に
の使用状況を常時計
ータについて,データ
著しく影響を及ぼす
測できるエネルギー
の解析,施策立案,施
施設を特定
管理システムを活用
策実施,効果確認のス
・エネルギーパフォー
・各工程設備の使用エ
テップが標準化され,
マンスを決定する運
ネルギー区分,能力適
永続的にシステマチ
用特性を監視,測定,
性の見極め,更新時期
ックな省エネ展開
分析
の見極め,エネルギー ・各部門実務担当者(従
の構築(EnPI を設定)
・エネルギーパフォー
効率改善項目と対策
来の省エネ担当部門
マンスを改善する機
実施状況を一覧にし
以外)のエネルギー管
- 107 -
会を特定,優先度を決
た「エネルギーレビュ
理データの解析スキ
める
ー調査表」や「改善の
ルが向上
・著しいエネルギーの
機会チェックシート」
使用に関連する人の
等,エネルギーレビュ
適切な教育訓練
ーの関連文書を新た
に整備
・省エネワイガヤ話し
合い,講習会を実施
事例 H.小売業
エネルギー管理の関連
活用した規格の要求事
エネルギー管理への規
規格活用の効果・メリ
分野(PDCA)
項
格活用方法(どのよう
ット
に取り組んだか)
・人材教育
・力量,教育訓練及び自
・グループ主要 4 社の
・従来は,施設・設備管
エネルギー使用量を
理の担当者が中心と
目的・目標の達成に
毎月モニタリングす
なって省エネルギー
必要な力量を従業員
ることにより ,エネ
活動を展開してきた
に持たせるために,エ
ルギーパフォーマン
が ,新たに店舗の後
ネルギー管理の社内
スをこまめに確認
方スタッフ(人事総務
覚
教育制度を構築し,推
・店舗におけるエネル
課長等)を対象とした
進
ギー管理では,イオン
エネルギー管理研修
○要求事項:全ての人
リテール直営店舗の
を実施したことによ
が適切な教育,教育訓
施設管理業務はイオ
って十分なエネルギ
練,技能又は経験に基
ンディライトに委託。
ー管理知識を持ち ,
づく力量を持つ
直営店舗の人事総務
より店舗の運営に直
○エネルギー管理及
課長や後方管理担当
結した省エネルギー
び EnMS の運用に関わ
者はエネルギーアド
が実現
る教育訓練のニーズ
バイザーとしてエネ
を明確にする
ルギー管理を研修受
○ニーズを満たす教
講。力量をもった要員
育訓練を提供し,記録
の養成。人事総務課長
を維持する
や広報管理担当者が
エネルギーアドバイ
ザーの候補。社内制度
により多店舗にて未
経験者にエネルギー
管理のポイントを継
続的に教育。
事例 I 空調機製造業
エネルギー管理の関連
活用した規格の要求事
エネルギー管理への規
規格活用の効果・メリ
分野(PDCA)
項
格活用方法(どのよう
ット
に取り組んだか)
・行動計画の策定
・著しいエネルギーの
・製作所における著し
- 108 -
・原単位を大幅な改善
使用及び使用量の領
いエネルギーの使用
・予想される電力ピー
域の特定
及び使用量の領域と
ク値に対し,電力節電
して製造部以下 14 部
要請への柔軟な対応
門を特定
ができる体制が構築
・著しいエネルギーの
使用に影響を及ぼす
そ の 他 の 関 連 変 数 ・製作所全体として
・エネルギーレビュー
(EnPI 指標の変数)
は,EnPI は CO2 排出量
の実践を通じた部門
の特定
(t-CO2)/生産高(億
担当者の省エネ意識
円)に設定
が向上
・改善の機会の優先度
の決定
・各部門の指標は,例え
・運用の基準の確立
ば,製造部:製品組立
系(電力量/生産台
数),半製品系(電力量
/出来高)のように選
定することの妥当性
を分科会として検討
し,承認した。
・各部門の行動計画に
おける改善対策の優
先度は大・中・小で区
分し,その妥当性を分
科会として検討し,承
認
・省エネ法管理標準に
節電要請時への対応
のため,「節電措置」
の項目を新設し,緊急
性に応じて段階的な
対応が一元的に取れ
るようにした。
事例 J. 大学
エネルギー管理の関連
活用した規格の要求事
エネルギー管理への規
規格活用の効果・メリ
分野(PDCA)
項
格活用方法(どのよう
ット
に取り組んだか)
・行動計画の策定
・エネルギーレビュー
の構築(EnPI を設定)
・建物別エネルギー分
析
・エネルギーの使用に
各建物別にエネルギー
著しく影響を及ぼす
の流れと消費量,エネ
施設を特定
ルギーの使用に著し
・エネルギーパフォー
い影響を及ぼす設備
マンスを決定する運
を把握し,分析。エネ
用特性を監視,測定,
ルギー管理統括者の
分析
指揮監督のもと,施設
- 109 -
・年間の電気エネルギ
ー消費量を削減
・計画された取り決め
事項に適合
環境部が実施
・部屋別エネルギー分
析 (環境 ISO 事務局
のアンケート調査)
・各部屋別,構内事業者
別にエネルギー多消
費型設備等の保有状
況を把握し,分析。エ
ネルギー消費量の大
きい機器,エネルギー
効率の改善機会大き
い機器の使用されて
いる部屋を把握して,
対策
・環境 ISO 事務局が行
うアンケート調査(エ
ネルギー効率改善チ
ェックシート)によっ
て部屋ごとに実施
・従来から運用されて
いる省エネリーダ会
議を PDCA サイクルに
組み入れ,省エネ行動
計画を内部監査の対
象
・各部屋が個別法規制
に該当するかどうか,
各部屋にエネルギー
多消費型機器がある
かどうか,を把握する
ための調査。4,000 以
上の部屋について入
力
・事務局において,ユニ
ットごとまとめ,各ユ
ニット環境責任者に
フィードバック
・内部監査時に,それぞ
れの自己点検シート
の点検状況を確認
- 110 -
5 海外主要国のエネルギー管理に関する政策動向調査
5.1 米国・中国・EU 等におけるエネルギー管理標準化の動向
(1) 調査の目的
米国,中国,EU 等の産業部門および業務部門におけるエネルギーマネジメント推進のための政策,制
度,関連する活動等に係わる動向を調査することを目的とする。
(2) 調査の方法
海外主要 6 カ国(米国,EU,英国,フランス,ドイツ,中国)のエネルギーマネジメントシステムに関す
る実施状況及び国の支援動向を以下の 5 項目に分けて整理した(表 5.1.1)
。
① エネルギー管理に係わる規格・制度
② 管理システム規格認証の取得方法
③ ISO50001 認証取得関連の最近の状況
④ 機関及び組織
・認定機関
・認証機関
・認証取得企業
⑤ 国の支援策
表 5.1.1 主要国の動向調査のまとめ方
米国
EU
英国
フランス
ドイツ
中国
エネルギー管理に係わる
規格・制度
管理システム規格認証の
取得方法
ISO50001 認証取得関連の
最近の状況
機関
認定機関
及び
認証機関
組織
認証取得企業
国の支援策
その他の国として,インド及び韓国の動向について最後に概要を示す。
(3) 調査の結果
○世界の ISO50001 認証取得件数
ISO の年次調査によると,2013 年に International Accreditation Forum (IAF)の会員によって認定
された認証機関が行った認証件数は以下の通りである。
①7 種類の ISO 管理システム(エネルギーに関しないものを含む)全てについて、全世界の認証件
数は実質的に 4% 増加した。
②ISO50001 規格認証件数は 4,826 件となり、前年から 116% の増加となった。
③ISO50001 規格認証の要求はヨーロッパにおいて著しく、特にドイツが突出している。
- 111 -
図 5.1.1 世界の地域別 ISO50001 認証取得件数
表 5.1.2 2013 年 ISO50001 認証取得件数上位 10 国
順
位
国名
認証総件数
2013 年におけ
る増加件数
1
ドイツ
2477
1344
2
イギリス
330
194
3
イタリア
258
184
4
スペイン
196
69
5
インド
172
98
6
台湾
137
87
7
タイ
132
91
8
韓国
111
63
9
スウェーデン
96
22
10
フランス
86
49
主要国の調査結果を表 5.1.3 に示す。
- 112 -
表 5.1.3 主要国の動向
1) 米国,EU
米国
エネルギ
EU
1
・SEP プログラム
・エネルギーに関する 6 つの EC の指令
ー管理に
エネルギー効率を継続的に向上させるロー
係わる規
ドマップを持った産業組織を奨励する認証
格・制度
プログラム。
-Energy Efficiency Directive
2012/27/EU2, 2012.10.25 発行
- Energy Performance of Buildings
2008-2011 年 に フ ィ ー ル ド テ ス ト を 実
Directive 2010/31/EU, 2010.7 発行
施,2-3 年間でエネルギーパフォーマンスを
-Eco-design Directive 2009/125/EC
6.5-17%向上し,SEP 認証を得た最初の 16
-Energy Taxation Directive
企業サイトでは,その後更に 25%に伸びたと
2003/96/EC,2003.10 発行
報告。
-Energy End-use Efficiency and
・エネルギースター/エネルギー管理ガイド
Energy Services Directive
ライン:製造会社がエネルギー管理を組織
2006/32/EC
的に始めるに当たっての入り口になるも
2006.4 発行(CD 93/76/EEC の修正)
の。
-Indication by Labeling and
・ANSI/MSE2000:2008:2011 年 ISO50001 の発
行に伴い,ISO50001 へ移行。
Standard Product Information of
Consumption of Energy and
・ANSI/MSE50021:SEP が要求する高い基準を
達成するために ISO50001 を補完するもの。
・ANSI/MSE50028:ANSI 及び ANAB が SEP の検
証を行う組織を認定するための米国の国家
基準。
other Resources by Energy-related
Products Directive 2010/30/EU,
2010.5 発行
・CEN3 は EC の法令に併せて規格を発行
している。EN ISO50001:2011 に関連す
・ISO50001:SEP プログラムの中心要素として
る以下の 4 つの規格を開発,又は開発
活用。現在 SEP 適合性監査では, ISO50001
中。
に従っている事とエネルギーパフォーマン
-EN 16247-1:2012:エネルギー監査,
スの向上を達成することの両者を立証する
Part 1 2013.1 発 行 , Part2 ~ 4
ことを要求しているが,ISO50001 の合理的
2014.11,Part5 2015.10 公開予定
改良が検討されている。
-EN 16325:2013:エネルギーの由来の
保証とエネルギー証明書,2013.8 発
行
-EN 16231:エネルギー効率ベンチマー
キング手法,2013.3 発行
-EN 16212:エネルギー効率と節約計算
2013.2 発行
1
2
3
SEP プログラム:DOE,EPA,大学,大企業等の代表からなる「US Council for Energy-Efficient Manufacturing」によ
って指揮される国家プロジェクト。
Energy Efficiency Directive 概要:2011 年 6 月発行,2012 年 10 月改正。この指令はエネルギー効率に関する EU の
ヘッドライン目標「Union’s 2020 20%」を確実なものとし,それ以後の更なるエネルギー効率の向上を期して,EU 内
のエネルギー効率推進対策の共通の骨格を確立するもので,その 8 条では省エネの取り組みを確かなものにするため
に有効な高品質のエネルギー監査の推進を求めており,又中小企業以外の企業は 2015.12.5 迄にエネルギー監査を行
い少なくとも 4 年毎に再監査を行うことを義務付けている。
CEN:the European Committee of Standardisation
- 113 -
管理シス
・規格認証取得方法は世界共通。
・規格の認定・認証取得について,EU は直
テム規格
ISO9001 及び ISO14001 に同じ。
接的行為はしない。認定は加盟各国の関
認証の取
係機関によって行われる。
得方法
ISO50001
・既に ANSI/SME2000-2008 を取得している企
・導入当初はゆっくりであった認証数は
認証取得
業の ISO50001 取得は自動的では無く,審査
ここにきて急速に増加し,過去 3 年間で
関連の最
による認証が必要と ANSI が示唆している。
顕著な上昇傾向を示している(一昨年
・ SEP プ ロ グ ラ ム に 参 加 し て い る 企 業 は
332%、昨年 206%上昇)
。製造業が典型的
ISO50001 認証取得が義務付けられている。
であるが,小売業,公共施設,事務所でも
近の状況
・ISO50001 の認証は産業部門から始められた
認証例が見られる。
が、後になって SEP プログラムが商業施設
に適用され、商業施設への ISO50001 認証が
始められようとしている。
機
認
・認定取得は以前 2 通りあったが, ISO50001
関
定
発行に伴い ANAB4に統一され,認定方式は
及
機
ANAB の指定方式による。
び
関
組
認
織
証
在 11 機関
た認証機関により実施され、認定された
機
(ABS,AJA,AWM,BSI,DEKRA,SAI,SGS,IRQS ,
機関は認証サービスを国際的に提供す
関
ULDQS,NSF,RR)
。
ることができる。
・ANAB の認定を受けた ISO50001 認証機関は現
・認定はそれぞれの国の認定機関が実施
する。EU としては持たない。
・認証は各国の認定機関により認定され
ISO14001 は 55 機関,ISO9001 は 70 機関であ
り ISO50001 認証機関は他よりゆっくりでは
あるが増加傾向にある。
認
・2014 年時点で 43 社及び 62 の現場が取得,
・ISO の調査によると,2013 年 EC 36 カ国
証
43 社の内,プラチナ,金及び銀の SEP 認証を
での ISO50001 の認証取得数は 3,957 件,
取
得た企業は 27 社、
その他の 16 社は ISO50001
前年度から 2,033 件増え,上位 4 カ国は
得
認証を得ているが SEP プログラムに登録さ
ドイツ,イギリス,イタリア,スペイン
企
れていない。
であるがドイツが突出している。
業
・認証取得企業数の見込は市場によるが
ISO14001 の企業数(4900)と同じと見られ
ている。認証取得数の立ち上がりは ISO9001
及び ISO14001 でも 5~7 年を要しており
ISO50001 もこの立ち上がりと同様とみられ
ている。
国の支援
策
・US Department of Energy (DOE)は SEP プロ
・EU は 2007 年”Energy for a Changing
グラムの推進を通して,ISO50001 の認証を
World”と称する包括的エネルギー政策
支援している。但し,SEP プログラムは強制
に関する提案書を発行。
ではない。
・2008 年 12 月,2020 気候とエネルギーの
・法制化による支援は一般国民から望まれて
4
ANAB:the ANSI-ASQ National Accreditation Board
- 114 -
パッケージを採択(2020 年迄にエネル
いないので,将来的に ISO50001 が法制度に
ギー効率 20%向上を含む。
)
5
組み込まれることは無いとの意見が強い 。 ・2010 年,排出量 30%削減を提案。
・ISO50001 に関連する 2 つの環境・エネルギ
・2014 年 10 月,2030 年構想に同意し,エ
ーに関する大統領令がある。
ネルギー効率を EU として少なくとも
EO13514(2009.10.5),EO13423(2007.1.24),
27%向上することとした。
特に EO13423 は 2003 年をベースに 2015 年
・マネジメントシステム規格は,各国によ
迄の間,連邦機関のエネルギー指標を毎年
って考慮されるものであるが,EU の役
3%削減し,2015 年迄に 30%削減するとしてお
割は,エネルギーマネジメント規格の組
り,ISO50001 は法的強制ではないがこの要
織的実施を刺激して,参加各国に相互の
求を達成するための政府の有力な武器にな
枠組みに関するマクロレベルの展望を
ると考えられている。
与える機会を提供することであり,様々
・The Federal Energy Management Program
な指令や規格でこれを実施している。
(FEMP)
:連邦局が国のエネルギー関連目標
・2012 年 10 月に改正された「新しいエネ
(大統領令等)を達成できる様に鍵となる
ルギー効率指令(New Energy Efficiency
個人と提携して行っている事業。
Directive)」では,加盟国に対しエネル
・The Building Technology Office( BTO):
ギー監査及びエネルギー管理システム
BTO はよりエネルギー効率的、生産的かつ購
の実施を義務付けているが、ヨーロッパ
入し易い建物を開発しており、現在 7 組織
又は国際規格に基づく独立した機関に
の 12 現場において ISO50001 の導入を行っ
よって認証されたエネルギー又は環境
ている。
管理システムを実施している企業に対
しては,強制的エネルギー監査を免除す
るとしている。
5
2011 年 Askew による電話調査結果。
- 115 -
2) 英国,フランス
英国
フランス
エネルギー
現在,下記のエネルギー管理に関する規 ・POP 法(2005)
:最終エネルギー消費を 2015
管理に係わ
格がある。
年に 2%,2030 年に 2.5%を削減するための
る規格・制度 ・ISO50001: 2012.4.30,BS EN1600 が廃
エネルギー需要抑制策。
止され、代わって英国の主要なエネル ・エネルギー効率行動計画(2011. 6)
(PKEE
ギー管理規格となる。
又は PNAEE)
:エネルギー効率を 2020 年の
・EN 16247-1:エネルギー監査規格
最終エネルギー消費の 19.7%~21.4%の間
6
・カーボントラスト(Carbon Trust) :
エネルギー管理とは異なるカーボンフ
ットプリント削減規格である。
・Energy Saving Opportunities Scheme
にすることを目標とする。
・NF EN ISO50001 が 2011 年 6 月に発行,既
存の NF EN16001 は 2012 年 4 月に取り消
された。
(ESOS)7 :エネルギー管理目標を強化す ・NF EN16247(1,2,3,4):エネルギー監査規
るための立法上の措置。
格。
・EU EED を履行するための法律(2013.12.4
発行):英国の ESOS に相当。
管理システ
・認定方法及び認証方法は他の国際規格
・Cofrac は 2014 年から ISO50001 認証機関
ム規格認証
と 同 じ で あ り 、 認 証 過 程 は
の認定を始めることを公表。これ迄
の取得方法
ISO14001;2004 と同様である。ISO50001
ISO50001 認証機関は Cofrac の認定を受
の認定及び登録を望む私的認証機関は
けないか,又は外国の認定機関の認定を
UKAS の認定を受けなければならない。
受け認証を行っていた。
・2012.4.30 に EN16001 は取り消され,そ ・2014.1 Cofrac はフランスの監査機関のた
れ迄に UKAS から認定を受けた機関から
めの認定プロセスに関するガイドライン
EN16001 の 認 証 を 得 て い た 企 業 は ,
「SERT CEPE REF 33」の第2版を出版し
ISO50001 へ自動的に移行することがで
た。これにより Cofrac による NF EN ISO
きた。それ迄に認証を得ていなかった
50001: 2011 の認定が開始された。マネジ
企業は,新規顧客として通常に扱われ
メントシステム規格認証は,ISO17021 及
る。
び ISO19011 に拠っており世界共通であ
る。
・Afnor によれば, 既に EN16001 を取得して
いる組織が監査のフォローアップ中必要
とされる要求を満足していれば
ISO50001 への自動的移行は可能。
・フランスの EN16001 を取得している全て
の会社は,2011 年末に ISO50001 へ移行し
た。
6
Carbon Trust:組織が自己のカーボンフットプリントを決定し,そのフットプリントの明確な削減達成することを可
能とする適切なカーボン管理化の基準を提供することにより,組織の実質的炭素削減及び削減進めていることを証明
する制度。ISO50001 とは競合するものではなく,公的に関係していない。
7
Energy Saving Opportunities Scheme (ESOS):2013.7.11 公開され,2014 年施行。EU のエネルギー効率指令(EED)
(2014.6.26 発効)の第 8 条を施行するための方策を示したもので,従業員 250 名以上,年間売上 5 千£以上,等の
条件に合致した個別私企業に対し強制的実施を求めている。
- 116 -
ISO50001
・UKAS の ISO50001 試験的査定プログラム ・Cofrac は,2015.1 現在 ISO50003 への移
認証取得関
に 14 社参加し,2015.1.5 現在 8 社が認
行計画を実施しており,2014.10.1 以降,
連の最近の
定を受け、残る機関の評価が続けられ
認証機関は Cofrac の開発した文書「CERT
状況
ている。
CEPE REF 33」に従う必要がある。2015
・2013 年時点で英国は明確な認定スキー
年に ISO50003 基準が完全に実施される
ムを持たなかったが,ドイツに次ぎ認
と、文書「CERT CEPE REF 33」によって
8
証件数の立ち上がりが速い。CRC に適合
規定されたガイドラインは修正される。
する努力と企業の社会的責任として効
・ISO50003 は現在英語版が発行されたとこ
率的エネルギー管理の重要性が高く認
ろで、フランス語版は 2015 年初めに発行
識されていたことに依ると考えられ
される予定。
る。
・2013.7 フランス議会は EU EED を履行する
・UKAS の認定を受けない多くの企業が
新しい法律を通過させた。この法は
ISO50001 関連サービスを提供してい
2013.12.4 に発行され、最大のエネルギー
る。
消費企業に強制的エネルギー監査を実施
・ISO50001 認証取得のための研修に関
することを求めている。しかし、法令に
し,BSI グループや SGS 等 10 社以上の機
基づく監査の範囲は 2014.12.24 に発行さ
関が様々な研修プログラムを提供して
れ,実行は遅れている。既に ISO50001 に
いる。
基づく監査を Cofrac の認定を受けた認証
2015.1 現在,BSI の行っている典型的
機関により実施している会社は,この強
な研修として,以下のものが挙げられ
制的監査を免除される。また、認証は
る。
2015.1.1 迄にエネルギー消費会社の少な
-BS ISO50001EnMS 概要講習会
くとも 80%をカバーしなければならない。
-BS ISO50001EnMS 実施講習会
-ISO50001 内部監査員コース
-ISO50001 監査員指導コース
-レベル 1-3 の研修コース
(E-learning, Open- learning,
Advanced)
機関
認 定 ・英国唯一の政府が認めた認定機関:
及び
機関
組織
United
Kingdom
Accreditation
Services
(UKAS)
・フランス唯一の認定機関:
Comité Français d'Accrédition (Cofrac)
1994 年設立,2008.12.19 の法令によりフ
ランス唯一の認定機関となり,2014.1.1
から ISO50001 の認定を始める。
認 証 ・UKAS の認定を受けた機関は,NQA, BM
・Cofrac の認定を受けた機関は 2015.1 現
TRADA, Certification Europ UK,
在,3 社(Afnor, Veritas, AB)にすぎな
GlobalGROUP, Knight International
い。
機関
Inspectrate, Lloyd’s Register Quality
・2014.2 現在,フランスでは 33 の機関が
Assurance , Lucideon CICS, SGS UK
ISO50001 認証提供を行っており,この内
である。
7 機関(Afnor, Bureau Veritus, LRQA,
TüV, BSI France, SGS, Apav)が ISO50001
8
CRC:Carbon Reduction Commitment
- 117 -
認証の認定を受けている。
・2014.1 に Cofrac は ISO50001 認証機関の
認定を始めると発表したが、このシステ
ムが認定を発行するまでの間,認証機関
は認定の無いままか、海外の認定機関の
認定を取得するかして認証している。
・EnMS の研修は ADEME,MEDD 及び Pollutec
Horizons が提供している。
・ISO50001 認証の訓練を受けた審査員は,
Afnor 20, Bureau Veritas 22 となってい
るが、国のデータは不明である。
認 証 ・現在、最終的な立ち上がりを見通すのは ・2004 年に AFAQ10が Afnor11グループに統合
取得
困難だが,規格の相補性から監査人の数
されて以来,グループの関わった認証活
企業
は ISO14000 の監査人の数と同程度にな
動はフランスマーケットの約 50%になる。
ると考えられている。
・2013 年末現在,フランスで ISO50001 認証
・認証取得企業数は市場によるが ISO14000
を取得した会社は 86 社にすぎない。この
取得企業数と同じ程度と考えられる。一
数は他の欧州主要国に比べ著しく少な
方,両者の発行からの期間には大きな差
い。
があり予測はむずかしい(英国の
ISO14000 認証取得企業数は 1,400 社)
。
・現在英国での ISO50001 認証取得会社は
9
約 300 社以上,以下を含む
Camfil
Farr,
City
・税制度による刺激策が無いことがフラン
スにおける ISO50001 認証の遅れている原
因と考えられている。
・ISO50001 を各企業分野で最初に取得した
of
London
企業としては
Corporation, Thornhill and Southbank
-Bouygues Telecom and Areva
University
-Dalkia(エネルギー供給会社)
-University of Haute-Alsace
がある。
国の支援策
・この種の規格は通常法令には含まれな
い。
・認証は自主的なものとしながらも,フラン
ス政府は EnMS 認証を取得する企業を支援
・ISO50001 規格認証は今なお自主的なも
のであり,取得の判断はそれぞれの企
業の判断に委ねられている。
・英政府は ISO50001 の実行に消極的であ
するため省エネ証明書,他の刺激策を実
施している。
・省エネ証明書(energy saving
certificate)12(2005.7 法制化):AFNOR
るとされたが,2012 年 10 月に発行され
によれば,2014.11 時点で ISO50001 認証
た EU のエネルギー効率指令は,加盟各
企業 54 の 83%が認証の結果として省エネ
国政府の指令に対する直接関与を求め
証明書を受けた。
9
Askew による電話及び e-メール調査結果(2013.2)
AFAQ :the association française pour l’assurance de la Qualite
11
Afnor :the association française de normarisation
12
Energy Saving Certificate:政府が,EDF や Gas de Fance の様なエネルギー供給事業者に対し,一定期間内にエネ
ルギー消費を削減させ,また,消費者を通して省エネをさせるもの。目的を達成する手段は供給事業者の自由である。
目標が期間内に達成されると,証拠として証明書を発行し,目標が達成できない供給事業者には国庫(treasury)よ
り罰金が科せられる。
10
- 118 -
ており,指令の付帯要項に ISO50001 の
・POPE 法(2005):前記
使用が謳われている。
・ エ ネ ル ギ ー 効 率 行 動 計 画 ( PAEE or
・EU エネルギー指令(EED)第 8 条に対応
PNAEE): 行動計画の一つとして,従業員
して,英政府は国内対策として 2014 年
数 50 以下の中小企業は ISO50001 の認証
に強制法として ESOS の実施を決めた。
を行った場合,2%ローンを政府から受け
その 36 項で EU 指令のエネルギー監査
ることができる。
要求に基づき,ISO50001 又は EN16247
・2014 年,政府は環境保護の持続的発展に
に従った監査が全ての企業に適用され
関する新しい法制度の提案を行ってお
ることとなった。
り、下院を通過し上院で議論されている。
法の根幹としているところは,2050 年に
国のエネルギー消費を 50%削減し再生可
能エネルギーを拡大させることにある
が、エネルギー管理システム認証にいつ
いては触れていない。
- 119 -
3) ドイツ,中国
ドイツ
中国
エ ネ ル ギ ー ・ISO50001 を実行する上で,エネルギー使
管理に係わ
用と効率に関連して適用される関連法
る規格・制
規には以下のものがある。
度
-
・省エネ法:2008 年施行
この中でエネルギー管理の推進を規定。
・ GB/T23331-2009 “Energy Management
EnEV: Energy Saving Regulation
13
Systems – Requirements”は 2009 年 3
EEG : Renewable Energy Sources Act
月発行:中国独自の国家エネルギー管理
(EEG)
基準,多くの点で ISO50001 と共通点を持
EDL-G: Act on Energy Services and
ち,ISO50001 発行に伴い 2012 年に改定
Energy Efficiency Measures
版。GB/T23331 は ISO50001 に則している
-
EnEG: Energy Saving Act
が「Chinese ISO50001」と称して使われ
-
BimSchV: Fedral Immission Control
る。政策や制度的には「ISO50001」とは
Act
記載されない。
-
-
EuPA: Energy-using Products Act
-
BAT: Best Available Techniques
・ISO50001 に関係した減税措置法
-
14
EET : Energy and Electricity Tax
Law
-
・” Energy Management Systems – Guidance
for Implementation”2011 年 7 月公式ド
ラフト完成。
・CNCA と NDRC15は,2014 年にエネルギー管
理システム認証規則を公開した。
EEG:The Renewable Source Act
・ ドイツの EnMS に関す る規格 は, DIN
EN16001/2009 が 2012.1.24 に廃止され,
DIN EN ISO50001 に置き換わった。
・ISO50001 を補足する関連規格として、以
下のものが加えられた。
-ISO50002(2014.7),-ISO50003(2014.10
),-ISO50004(2014.12),-ISO50006(2014
.12),-ISO50015(2014.12)
管 理 シ ス テ ・認証方法は,ドイツとして特に特徴的な
ム規格認証
の取得方法
事項は無い。
・2012 年,CNCA は認定授与対象を主要 10
業種から 13 業種に増やし,業種毎に 1 な
・DAkks の認定は IAF 規格に則って行われ
る。
いし 2 つの認定機関を認めることにして
いる。
・認定基準としては,専門家の数等かなり細
かな規定を設けている。
・2014 年に CNCA と NDRC はエネルギー管理
システム認証規則を発表した。認定及び
認証活動は GB/T23331 及び GB/T27021 に
基づかなければならないとされる。
14
Energie und Stromsteuergesetz (Energy and Electricity Tax Law):1999 年に電力消費に課せられた税率で,一
つは住宅保険の軽減を目的とし(即ち,税収の殆どは住宅基金に充てられている),もう一つはエネルギー製品及び電
力に課税することで,エネルギー効率の高い製品や環境に優しい製品にインセンティブを与えることを目的としてい
る。
15 NDRC (National Development and Reform Commission):国家開発改革委員会
- 120 -
ISO50001
・ 2012.12 DAkks は DIN EN16001 の移行計
・ ISO50001 に 先 立 ち ,GB/T23331-2009 を
認証取得関
画を発表,2012.4.24 以前に発行した認
2011 年 3 月に発行,2009 年 11 月 1 日,自
連の最近の
証 は 2013.4.24 を 最 終 日 と し て
主ベースで認証を開始し,ISO50001 をベ
状況
ISO50001 へ移行することとした。
ースに GB/T23331-2009 の改正を実施し
・DIN EN16001 が ISO50001 へ置き換わった
ことにより,現在,多くの認証機関が
ISO50001 認証の認定を取得過程にある。
た。
・ ISO50001 の 導 入 に 先 駆 け ,GB/T23331
-2009 に基づき 2 年間の試行を実施。この
・ドイツ再生可能エネルギー法(EEG)に
ため,高エネルギー消費部門を持つ鉄鋼,
基づく罰金徴収を制限する目的で,2012
金属加工,化学工業等の 130 の企業が選ば
年法改正を行い EEG 適合評価に EnMS 認
れた。2 年間の試行実験の結果,国際規格
証を加え,製造事業者に取得を求めてい
の ISO50001 を全企業へ適用することとし
る。
たが,国内規格も残しており,現在,国際
・2013 年以降,
“Spitzenausgleich”16とし
規格への移行過程にある。
て知られる特別な税の軽減が EnMS の導 ・2012 年に試行を終え,130 社が基準に基づ
入を始めた者に対し,「エネルギーと電
き EnMS を開発した。この内,77 の企業が
力税」の枠内で適用されることとなっ
GB/T23331 の認証を与えられた。
た。
・2012 年,ISO50001 を基に GB/T23331-2009
・多くの認証機関は DAkks の認定取得以前
の改正を行い,対象とする対象業種を 10
に,企業のエネルギー管理チームの教
から 13 へ増やし,この結果を見て近く
育,内部監査,予備審査等,ISO50001 関連
ISO50001 を導入する予定。2013.2 現在,
のサービスを提供している17。
導入の検討は進行過程にある。
機関
認 定 ・ Die Deutsche Akkreditierungsstelle ・
「国家認証認可監督管理委員会(CNCA18)」
:
及び
機関
組織
GmbH (DAkks):ドイツ唯一の認定機関:
2010.1.1 に DGA と DKD とを吸収。
国務院の認証と認定の統制部門。
・13 の産業部門毎に 1 ないし 2 の認定機関
が設けられる。
認 証 ・DAkks に認定された ISO50001 認証審査機
機関
・2009 年,EnMS 基準発行後 2 年間の認証試
関の数は 2015.1.21 現在 55 社,これ以
行期間が設けられ,都合 13 の産業部門が
外に DAkks 以外の機関に認定された 7 機
選ばれ,各部門に 2~3 の認証機関が選定
関がある。更に詳細な見通しは現時点で
された。
は無い。
・2014.12.17 現在,37 の認証機関が政府に
・ISO50001 認定を取得していない認証機関
の或るものは ISO50001 認証のトレーニ
ングを提供している。
認められている。
・監査員は 7 段階に分かれ,772 名が登録さ
れている。
・ ISO9001 の 認 定 取 得 機 関 数 は 132,
ISO14001 の認定取得機関数は 61 であ
・2009.10.9, CNCA は EnMS 認証機関のリス
トを発表した。
る。
認 証 ・最近,ISO50001 認証を取得した会社数は ・2015.1 迄に約 600~800 の企業が認証を受
16
17
18
Spitzenausgleich(SpaEfV):電力税法(Energy StG)第 55 条及び電力税法(StromStG)第 10 条に基づきエネルギ
ー電力税法の免税に関する変更
サービスを提供している認証機関:・Energy Consulting Allgaeu GmbH, ・Initial consultation,
・Detailed consultation, ・TÜV SÜD, ・DNV, ・UDS Bertung, ・Envidatec GmbH
CNCA:The Certification and Accreditation Administration of People’s Republic of China
- 121 -
取得
2014.1 現在 1,918 社(3,441 か所)であ
けたとされ、最も活発な産業は化学と鉄
企業
り(全世界では 7,346 か所(ISO 調査)
),
鋼である。
DQS の見積もりでは約 25,000 の会社が ・CNCA は認証の質を維持する目的で,認証数
認証を取得しようとしているとされる。
を急速には伸ばさないようにしている。
・2013 年以降,ISO50001 に対応した EnMS
・最近,GB/T23331 の認証を取得した企業と
を実施している産業部門の会社に対し
して、Wuzheng Group, Cangzhou Huahai
※1
減税措置
が講じられているために,ド
Refinery and Petrochemical Co. Ltd.,
イツ全企業の 1%は ISO50001 規格認証
Xinxin
and
China
Tobacco
Fujian
を取得するであろうとされている。
Industrial Co. Ltd., 等がある。
・ 正確な予測は困難であるが,EEG の改正
により 2,400 社は ISO50001 の認証取得
が必要になるとされる。
国の支援策
・ドイツは,1990 年から 2020 年の間に 40%
の CO2 削減を目標として 2050 年迄にエネ
・ISO 規格は完全に自主的なものであり,
国が企業に強制することは無い。
ルギー部門の完全な変換を求めており, ・中国は 2008 年に省エネ法を実施しており,
この事が EnMS を強化することへつなが
この法の中で省エネ規則に違反する企業
っている。
に対し罰則を科している。従って,関連す
・
「エネルギーと電力税法」の改正19
2012.12.11 にエネルギーと電力税法が
る要求事項が法に組み込まれるのは,時
間の問題と考えられている。
改正され,10 年間の税の返済規定が ・
「中国人力資源社会保障部」の訓練機関が,
2013.1.1 より開始された。このためには
「上席エネルギー管理者及び上席エネル
ISO50001 規格に従った EnMS を実施する
ギー審査員トレーニングコースを始めお
ことを必要とするが,中小企業に対して
り,数百名のエネルギー管理者及び審査
は DIN EN16247-1 のような他の EnMS が
員を訓練している,加えて何十もの研究
適用可能である。
機関及び会社が同様のトレーニングコー
・ISO50001 に関連したドイツ税法の改正に
ついては欄外※1に記述。
スを開いている。
・ANSI/MSE2000 及び CEN/EN16001 は中国の
・
「再生可能エネルギー法(EEG)
」
国家基準に適合していない。中国は独自
2011.12.15 改正の内容
の EnMS に関する基準を作り,適用してい
-EEG の評価を確証するために,2012 年
る。一方で,中国は ISO/TC242 技術部会の
か ら 合 法 的 な ISO50001 又 は DIN
主 要 メ ン バ ー で あ り ,2011.5 に
EN16001 を実施していることが必要。
ISO/TC257 の初会合を北京で開催した。
-現在,ISO50001 による監査のみ認めら
・2012 年から始まる第 12 回 5 カ年計画に
れる。
ISO50001 に従ったエネルギー効率プロジ
-年間 10GWh 以上を使用する会社は認証
を必要とする。
ェクト「万社計画20」が組み込まれ,2015
年までに全エネルギー削減目標の 37%が
19
エネルギーと電力に対する課税に関する法律の改正:BGB Teil Nr.57(S.2436) 2012.12.11
20
年間エネルギー消費量が標準炭換算 1 万トン(原油換算 7559kL に相当)以上の 16078 社(工業企業 14641 社,非工
業企業 1437 社)が対象。GDP 当たり 16%のエネルギー削減を目標。評価審査は,省エネ目標の達成状況と省エネ対
策実施状況を点数評価。成績優秀な企業は表彰,不合格(60 点以下)企業はメディア公開,免税・優遇措置の資格喪
失,格付け・融資が一定の制限を受ける。
- 122 -
- 2013 年 か ら , EEG は EnMS が
期待されている。
EMAS(Europian Eco-Management and ・2014.12 ,国家開発改革委員会は 2014 年 1
Audit Scheme)又は ISO50001 に関する
月から 11 月の地域省エネ目標達成状況を
国際基準の下での認証が証明されて
公開した。12 次 5 カ年計画の現状と比較
いることを求めている。
され,チベットのデータは無いが、北京
2014.8.11 改正の内容
や上海を含む 25 地区で良好であり,海南
-市場と配電網の再生可能エネルギー
等 5 地区で不良と報告された。
を統一させ,エネルギー方向転換によ ・2014.12, 13 次 5 カ年計画がスタートした。
るコストを削減させると共に企業を
今次計画では環境関連がホットトピック
含む消費者の支払っている EEG 追徴金
スである。
「国家経済社会開発計画」は「国
の削減が図られた。
家経済社会環境開発計画」と改称され,
-この改正により,ISO50001 との関係は
環境の章が独立して設けられている。
変更されていない。
※1 EnMS とリンクしたドイツの税免除に関する法律:
エネルギーと電力税法(Energy and Elecrticity Tax Law)は電力消費課税に関するドイツの税法
である。これは環境税であり,企業にとって付加的コスト要因であり,また特に工業部門の企業に対し
ては免・減税の選択を提供するものであった。エネルギーと電力税法が改正されたことに伴
い,2013.7.31に税軽減効率システム法(The Tax Relief Efficiency Ordinance)が廃止され,税の軽
減を継続して受けたい工場は2013年~2015年の間にエネルギー管理システムを実施することが不可欠
となった。一方,この減税は原則として全ての組織に適用され,例えば,商業事業者,病院,不動産
業者に適用されるが,現在までに税軽減による利益を得ている登録事業者は製造業者だけである。
この税法に影響されるエネルギー集約産業と認められる会社は,少なくとも250人の従業員を持ち,
年間売上が5千万ユーロ以上又は年収支勘定が4千3百万ユーロ以上であること,また中小企業(従業員
250人以下,年間売上最大5千万ユーロかつ年間収支勘定4千3百万ユーロ以下)はエネルギー管理の代
替対策により過大なコスト負担から免れることができる。
<税の減免を得るための要求事項等>
―2015年から EnMS(即ち ISO50001)を持っていること(または,2013年~2014年の間に ISO50001の
実施過程にあることを示すこと)及び1.3%のエネルギー消費量削減を全体として達成していること
―EnMS の早期採用する者への動機付けが導入された。例えば,EnMS が DIN EN50001に従って認証され
ると政府は2022年までのエネルギーと電力税の削減を認める。2013年と2014年は移行期間とみなさ
れ税引きによる利益を得るために EnMS を完全に実行可能とすることが必須となる。
実際の税引き割
合は,その時の電力価格に基づき,また決められた方式で毎年計算され,加えて2013年から2017年の
間,毎年1.3%のエネルギー使用の削減及び2018年以降年1.35%の削減が求められる。
エネルギー削減量は,
2007年~12年を基準年として求められ,免税の適用年に基準年と適用年の前々
年との間でのエネルギー需要削減量を計算することとしている。
表5.1.4 ドイツの免税に必要なエネルギー削減量
Year of tax break
Year of energy
Energy reduction
application
reduction
required (based on
2007-12 baseline)
2015
2013
1.3%
- 123 -
2016
2014
2.6%
2017
2015
3.9%
2018
2016
5.25%
2019
2017
6.6%
2020
2018
7.95%
2021
2019
9.3%
2022
2020
10.65%
―課税の詳細
税控除は,ディーゼル油/軽油,その他の石油製品,改質ガス/天然ガス(石油ガス),液化石油ガ
スに対して定められている。製造業に認められる減税は,全ての税割当(全ての化石燃料の和)の90%
に等しく750ユーロ削減される。更に減税はキャップが掛けられ,会社の税額と年金保険の削減分の
会社持ち分との差の最大90%に等しくすることができる。エネルギー多消費会社で従業員数が比較的
少なく,過去において年金保険の部分の削減の恩恵が無く,また電力税法10章による電力税の充分な
救済が受けられないような場合,この法律(SpaEfV)によって救済される。
<エネルギー削減目標>
2013 年~2017 年の間,毎年 1.3%のエネルギー使用量の削減が要求され,2018 年以降は 1.35%とな
っているが,これらの数字の遵守状況は,独立した科学研究所によりモニタリングされる。これは個別
の会社の目標というよりはむしろ全体の目標なので, 評価は中央行政機関により行われる。この評価
は企業のエネルギー請求書に示されているエネルギー消費の年次報告書を中央機関へ提出することに
よってなされることが期待される。
エネルギー請求書は,他の計測システムに比べてごくわずかの誤差しか含まないので,最も正確なエ
ネルギー消費量の計量器。さらなる追加計測も必要とせず,会社は既に有している報告書のデータを
求められるだけである。平均的削減量を求めるために,総収入によって分けられたエネルギー消費に
基づいて全ての会社のデータが集計される。これが削減目標を満足する見込みなら,会社は税免除の
資格を有することになる。
4) その他の国
○インド
・2013 年 8 月から BIS (Bureau of India Standards) は IS/ISO50001 の管理システム認証スキームの
運営への関与を始めた。
・管理システム認証活動は 5 つの地方事務所(デリー,カルカッタ,チャンディガル,チェンナイ,
及びムンバイ)に分散されている。BIS 本社でこの活動を担当する副理事長がライセンスの権利を
認証、更新、廃止を行い、地方の管理システム認証事務所が活動を調整している。
・インドの最新の状況としては、119 の会社と 161 のサイトが ISO50001 に認証された。
・インドの ISO50001 認証企業は最近急速な増加傾向にある。それには主として 3 つの理由がある。
-海外企業の輸入又はインド企業からの製品の購入に対する優遇である。これらの海外バイヤーは
任意であっても認証を持った会社に優遇を与えている。
-産業化が進み経済規模が大きくなり,エネルギー価格が大きくなったことで,
エネルギー効率向上
が必要となったことである。
-インド政府は省エネの重要性と利益の観点から,2001 年に省エネ法(Energy Conservation
Act,2001)を施行し,EC Act 2001 は IS/ISO50001 に対し,法的枠組みを与えた。また、この法は,
- 124 -
2010 年に改正され,法の規定を実施する国家レベル及びセンターレベルの節となる機関として
BEE(Bureau of Energy Efficiency)の設置を規定した。BEE はエネルギー管理者の育成と監査に
関与し,教育訓練とウェブサイトによる情報の発信を行っている。
2012.3.31 に BEE は PAT
(Perform,
Achieve and Trade)を立法化し,8 つの産業部門が 3 年間で省エネを進めることとし,3 年後省エ
ネをエネルギー監査員が評価して,予定よりも多く省エネしていた者に対し省エネ証明書(Energy
saving certificatres(ESC))発行することとした。目標以上の達成分は販売することができ,達
成できなかった工場は省エネ証明書を購入しなければならず,その価格は市場に委ねることにし
ている。
○韓国
・KBA21は通商産業エネルギー省(KAB)によって認められた唯一の国の認定機関であり、管理システ
ムと人材に関する認証機関の認定を行っている。KBA によると,韓国国内には 5 つの公的認証機関が
ある(KFQ,KPC-QA,KR,KSA,KEMCO)
。また,韓国には 123 社が ISO50001 を取得しているが、KBA が把
握しているのは 40 社で、約 80 社は海外の代理店によって認定を得た機関によるものである。KAB
はこれら海外の代理店に関する情報は持っていない。
・韓国は現在,ISO50001 を導入する丁度出発点にいる。最近になって韓国企業はエネルギーを包括的
に管理しなければならないと意識し始めた。
・韓国では 2011 年に ISO50001 が成立し,2012 年末になってやっと ISO50001 の認定が現実化したが,
その時点では認証機関は充分ではなかった。2013 年 3 月に KEMCO が認定を受けた。
・ISO50001 は民間の認証制度なので,政府レベルでこれを推進する理由は無く,従って政府の後押
しは無い。
・EnMS の韓国国家基準として KS A 4000:2007 が 2007 年 12 月に発行されていたが,2011.6 の
ISO50001:2011 国際規格の採用に従って 2011.10.4 に KS A ISO50001:2011 に置き換えられた。
・KEMCO は 2 種類の EnMS 研修コースを開発しており,一つは EnMS 監査のためでもう一つは企業のスタ
ッフのため。
・KEMCO は,EnMS の認証試験プログラムを 2008 年から 2011 年の間実施し,このプログラムは 2012 年
の初めに完了した。
・KEMKO によって ISO50001 を獲得した会社は,2013 年は 2 社のみであったが,2014 年には 9 社に増
えた。この増えた理由としては、一つには会社のイメージアップ,二つ目にはエネルギー管理シス
テムの導入に指導的役割を果たしたい為。
21
KAB: the Korea Accreditation Board
- 125 -
5.2 エネルギー使用設備の効率評価基準運用の動向
(1)エネルギーラベル国際ワークショップの概要
ISO50001 の規格の要求事項である「エネルギー効率評価の基準の設定」の仕組みとしては,我が国
で運用している「トップランナー基準」の制度がある。ISO/TC257 を主導する中国標準化研究院から
日本の取組みを紹介してほしいと打診があり,我が国の省エネ手法を世界各国の標準化政策に積極的
に反映していく本事業の観点から,中国で開催する国際ワークショップ(WS)に出張した。WS では我
が国制度の取組みを情報発信するとともに,参加各国のエネルギーラベルの動向を調査した。
図 5.2.1 エネルギーパフォーマンスの評価基準の設定とトップランナー基準の関連
○WS の目的:エネルギーラべリング制度強化によるエネルギー効率の優れた製品の促進のプロジェク
ト活動の一環で開催するもので,
1)技術支援プロジェクトと活動成果の発表
2)プロジェクトに関わる政策担当者や利害関係者からのフィードバックを得る
3)エネルギーラベル順守を強化する様々な制度から経験を共有する
が WS の目的である。
○出張者:
(一財)省エネルギーセンター 早井 佳世(H24 年度トップランナー基準委託事業 PJ リ
ーダー)
○出張先:中国 北京市 ダブルツリーバイヒルトンホテル
○出張期間:2014 年 6 月 2 日(月)~6 月 4 日(水)
○参加国・団体等:オーストラリア,カナダ,ドイツ,日本,大韓民国,スウェーデン,LBL (Laurence
Barkley Laboratory;ローレンスバークレイ研究所),IEA(International Energy
Agency;国際エネルギー機関),CLASP( Collaborative Labeling and Appliance
Standard Program;機器及びラベルの共同標識化プログラム),中国(NGO,消費者
協会,メディア代表)
○傍聴参加者:メーカー,試験機関関係者など
○WS スケジュール
以下に WS のスケジュールを示す。
- 126 -
表 5.2.1 WS スケジュール
International Workshop on Improvement of Compliance Regime of
China Energy Labelling Program
3 June 2014 (Meeting Room 9)
08:30 am - 09:00 am
Workshop Registration
09:00 am - 09:25 am
Welcome and Opening Remarks
1.
2.
3.
4.
Welcome: General Administration of Quality Supervision, Inspection, and Quarantine (AQSIQ)
Opening remarks from PRC Government: MOF/NDRC
Opening remarks from Asian Development Bank
Opening remarks from China National Institute of Standardization
PART ONE: Project on Promoting Energy Efficient Products by Strengthening the Energy Labelling
Scheme
Session 1: Overview on the ADB TA Project Progress
This session will introduce and summarize the current status of the ADB TA project on “Promoting Energy
Efficient Products by Strengthening the Energy Labelling Scheme”.
09:25 am -
09:40 am
09:40 am - 10:00 am
Introduction to ADB Technical Assistance Project by Dr. Pengcheng Li, CNIS
Progress on (i)Policy Review on the Compliance of Energy Labelling
Schemes and (ii) Development of technical instruction for energy efficiency
testing
by Dr. Nan Zhou, LBL
10:00 am - 10:15 am
Coffee break
PART TWO: International Best Practices on Compliance Regime of
Energy Labelling Schemes
Session 2: International Best Practices for Improving Compliance of Energy Labelling Schemes
This session will present international best practices from different labelling schemes and learn key lessons
to improve compliance of energy labelling schemes.
10:15 am - 10:35 am
Compliance Regime of Energy Label Program by Mr. Mark Ellis
10:35 am - 10:55 am
Compliance of Nordic Swan by Dr. Prof. Ake Thidell, International Institute for
Industrial Environmental Economics, Lund University, Sweden
10:55 am -11:15 am
Korean Energy Label by Jong-ug Jeon, Korea Refrigeration & Air-Conditioning
Assessment Center, Republic of Korea.
11:15 am - 11:35 am
Energy Conservation Label in Japan by Kayo Hayai, Energy Conservation
Center Japan
11:35 am - 11:55 am
Lessons from European Energy Labelling Schemes by Melanie Slade, IEA
11:55 am - 12: 15 am
Q&A
12:15 am - 13:30 pm
Lunch
Session 3: Fundamental of Compliance Regime: Testing Facility
This session will present international best practices of different testing labs.
13:30 pm -13:50 pm
Experience from Germany by Christoph Tuerk, VDE
13:50 pm -14:10 pm
Experience from Canada by David William Dulmage, Nemko Canada Inc
- 127 -
14:10 pm – 14:30 pm
Experience from China by Zhang Shaojun, CNIS
Session 4: Impetus of Compliance Regime: Public Engagement
This session will present experiences from civil society groups in promoting energy efficient products and
enhancing compliance of energy labelling.
14:30 pm -14:50 pm
Understanding Consumer Demand for Energy-Efficient Products
Zeng, Collaborative Labelling and Appliance Standards (CLASP)
by Steven
14:50 pm – 15:10 pm
The Role of NGOs in Promoting Energy Efficient Products by Zheng Tan,
Top10 China
15:10 pm – 15:30 pm
Experience from Chinese Consumer Association by TBD
15:30 pm - 15:45 pm
Coffee Break
Session 5: Panel Discussion
This panel session will discuss (i) key elements of effective compliance regime of energy labelling schemes
and (ii) prospective of compliance regime of the China Energy Label Program.
Moderator:
Zhang Xin from CNIS
15:45 pm -16:30 pm
Key elements of effective compliance regime of energy labelling program
16:30 pm – 17:00 pm
Prospective of compliance regime of the China Energy Labelling Program
17:00 pm -17:15 pm
Summary
○WS 概要
2014 年 6 月 3 日~4 日,ADB(Asian Development Bank;アジア開発銀行) 主催,AQSIQ( General
Administration of Quality Supervision, Inspection, and Quarantine;中国品質監督検査局)国際
協力部及び CNIS( China National Institute of Standardization;中国標準化研究院)の後援による
エネルギー効率ラベル遵守システムに関する国際 WS が北京で開催された。
中国では,2005 年より China Energy Label(CEL)が導入されているが,2010 年に実施した 9 製品のラ
ンダムテスト(メーカーが表示しているエネルギー消費効率値と商品テストの値を比較)により重大
な相違が発見され,この度 ADB の支援を受けて CEL の遵守に関する改善を図ることとなった。本 WS は
「エネルギーラベルの遵守強化による高効率製品の普及促進」のためのプロジェクト活動の一部と位
置づけられている。
本 WS では,国際機関ならびに 9 カ国から 11 名の専門家が招聘され,ラベリングの遵守体制に関する
最新の達成状況,国際的なベストプラクティスの推進状況を共有した。
日本からは,6 月 3 日(火)のセッション 2(International Best Practices for Improving Compliance
of Energy Labelling Schemes)でトップランナー基準の概要と省エネラベル・統一省エネラベルにつ
いての制度構築と遵守方法について紹介した。また,セッション 5(Panel Discussion)でラベリング
プログラムの効果的な構築及び中国のラベリングプログラムへの展望を述べる予定になっていたが,
セッション 4 までが長引き,時間が少なくなったため,中国のラベリング制度(主に遵守)について各
国からの提案及び発表者への聴衆からの質問という構成に変更となった。
翌日は通訳なし(中国語のみ)のパラレルセッションで,3 品目(エアコン,冷蔵庫,テレビ)に分か
れた試験方法及び試験機関に関するパートと,高効率製品のための企業投資に関するセッションが開
催。
- 128 -
写真 5.2.1 WS 参加の各国代表と関係者
(2)日本の省エネラベリング制度の情報発信
日本から紹介した省エネラべリング制度の内容を以下に示す。
- 129 -
- 130 -
図 5.2.1 日本の省エネラベリング制度の紹介内容
(3)各国の省エネラベリング制度の取組
○セッション 1:ADB の技術協力プロジェクトについて
後援者の AQSIQ ,中国政府,ADB,CNIS からの挨拶の後,CNIS より ADB の技術協力プロジェクトの概要
紹介があった。また,LBL から中国のエネルギー効率テストのための(ⅰ)エネルギーラベル制度の遵守
政策方針,(ⅱ) エネルギー効率試験のための技術的指針の発展について発表があった。
○セッション 2:主要各国のプレゼン概要
1) オーストラリア ”Compliance Regime of Energy Label Program”
オーストラリアからは,CLASP から発行された MV&E( Monitoring, Verification, and Enforcement)
ガイドブックの紹介があった。このガイドブックでは,既存の S&L(Energy Efficiency Standards and
Labeling)プログラムの経験に基づくコンプライアンスのフレームワークに関する実際的な情報が提
供されている。ラベリングプログラムには,以下の 8 つの鍵となる要素を扱う MV&E プロセスが必要で
ある。このプロセスには取り扱いが容易なものから複雑なものまである。
①コンプライアンスを促進するメカニズム
②マーケットサーベイランス
③立証試験
④(法律の)施行
⑤伝達,報告,フィードバック
⑥法律上及び行政上の枠組み
⑦予算と資源配分
⑧評価プロセス
解決法には,法律,組織の構造,文化的な問題,政治的意思等に依存し,どのように各々の要素を組織
すべきかという多くのオプションがある。
図 5.2.2 オーストラリアのラベリング制度のガイドブック
- 131 -
2) スウェーデン ”Compliance of Nordic Swan”
ルンド大学の産業環境経済国際研究所より,環境ラベルタイプ 1 のノルディックスワンラベルの遵
守レジームについて紹介があった。本ラベルは任意だが,第三者機関の ISO14024(「環境ラベル及び環
境宣言−タイプI 環境ラベリング−原則及び手順」のための国際規格)に基づいた認証による信頼性
が鍵となっており,消費者の認知率 94%,信頼性 84%と高い。
3) 韓国 “Korean Energy Label”
韓国は,1980 年に制定された「エネルギーの合理的な利用に関する法律」の下,知識経済省(MKE:
the Ministry of Knowledge and Economy)と韓国エネルギー公団(KEMCO:Korea Energy Management
Corporation)が,エネルギー効率管理プログラムとして,下図に示す 3 つの制度を運用している。これ
らのエネルギー効率ラベリングスキームは,機器分野のエネルギー効率改善政策の重要な役割を担っ
ている。
図 5.2.3 韓国のエネルギー管理制度の構成
メーカーは,1 から 5 段階のエネルギー効率ラベルを表示し,報告することが義務となっている。試
験機関は,試験結果をオンラインでインフォメーションセンターに登録する。コンプライアンスは
KEMCO によりモニタリングされている。
KEMCO は,試験サンプルを選び市場から買い上げ,試験機関に送
り試験を実施する。
試験に不合格となったメーカーにはヒアリングを行い,必要な場合は知識経済省に
よる指導が入る。
ヒアリング委員会は,NGO,政府,試験機関,KEMCO,製品の専門家などにより構成されて
おり,この場による 2 度目の合格チャンスが与えられる。メーカーに対しては,違反した場合の罰金も
規定されているが,罰金だけではなくリコールと悪用に対する制裁にも対応する必要がある。
4) IEA “Lessons from European Energy Labelling Schemes”
IEA からはラベル制度の目的とその働きはどうか,どうやったらラベルの内容表示遵守が改善され
るのか,EU メンバー国の現状と展望が紹介された。
2009 年 10 月 21 日付「エネルギー関連製品の環境配慮設計(エコデザイン)要求事項設定の枠組み
確立に関する欧州議会・理事会指令 2009/125/EC」が発効され,ラベル表示(CE マーキング)に関する
事項,実施方法や罰則等が規定されている。
EU では,「Come On Labels」プロジェクトを実施しており,ラベルの可視性と信憑性を強化すること
により,ラベルが貼付された製品市場を改善することが目的となっている。
その方法は下図のとおり。
- 132 -
図 5.2.4 EU のラベル制度
○セッション 3:試験機関について
試験機関・試験方法のベストプラクティスについて,ドイツ,カナダ,中国から発表があった。
○セッション 4:国民の関与について
高効率製品の推進とラベリングの遵守について,CLASP,Top 10 China,中国消費者協会からそれぞれ
その役割と現状が発表された。
○セッション 5:パネルディスカッション
①中国のラベリング制度(主に遵守方法)について各国・各機関からの提案
・コンプライアンスが働く方法は 1 つではなく,様々な方策が相互に関係し合ってうまく回るもの
である。
・いかに消費者など関係者を巻き込んで,複数の目で監視するかが鍵である。
②各国・各機関発表者への聴衆からの質問
・主に,試験方法,試験機関の内容などについて質問があった。
○まとめ
日本は中国及び世界参加国に対し,我が国トップランナー基準の取組みを発信することができた。
中国からは,本 WS で発表された各国のコンプライアンスの方法と現状,及び各機関の調査内容など,
今後コンプライアンスを強化するにあたり良い示唆を得ることができ,また,ベストプラクティスを各
国が共有する有意義な WS となったと謝辞が述べられた。
- 133 -
6. ISO50001 規格の国内普及に向けた情報発信
6.1 広報サイトのコンテンツの作成
国内において事業者等の ISO50001 の認証取得を促して,省エネルギーの取組を推進するためには,
事業者等が ISO50001 に関する情報を得て,そのメリットを理解し,認証取得を検討することができる
機会を増やすことが重要である。そのため,ISO50001 に関する基礎的な情報や本事業において得られ
た知見等を体系的に整理し,ウェブ用電子データを作成し,事業者等向けに情報発信を行った。
資源エネルギー庁ホームページの ISO50001 ポータルサイトのメイン画面を下図に示す。
図 6.1.1 ISO50001 サイトのメイン画面
- 134 -
メインメニューのうち,今回追加・更新したメニューに○を付す。
(1)ISO50001 とは
○(2)導入活用のポイント
○ (3)EnMS 導入事例紹介
(4)認証制度のしくみ
(5)認証取得の流れ
(6)普及促進のための制度
○ (7)海外主要国の動向
(8)海外の実行ガイド
(9)よくある質問回答 FAQ
(10)ご相談・お問合せ
(11)関連リンク
以下に追加・更新したコンテンツを示す。
・
(2)導入活用のポイント
<更新部分>
図 6.1.2 エネルギーレビューのプロセス
- 135 -
図 6.1.2 の要求事項(1)~(7)については以下のようなエネルギー管理が求められる。
(1)(2)エネルギー使用のプロセスごと測定分析
組織のエネルギー使用量の測定を行い,エネルギー源を特定し,どれだけのエネルギーが使用されて
いるか,過去から現在までのエネルギー使用量の履歴(トレンド)を評価する。すなわち,増加傾向な
のか減少傾向なのか,全体に占めるエネルギー源ごとの使用量の割合がどうか,使用量の大きな変動の
原因は何かなど分析する。
設備単位または設備群単位,作業工程単位によるきめ細かいエネルギー管理を徹底し,BEMS/FEMS を
エネルギー管理の中核となる設備として位置づけ,系統別に年・季節・月・週・日・時間単位等でエネ
ルギー管理を実施し,数値・グラフ等で過去の実績と比較した消費動向等が把握できるよう検討する。
自動のデータ測定システムが無い場合には,月々の電気料金請求書,契約使用料超過請求書,計測メ
ーターの読取などを基にエネルギー分析を行う。
(3)(4)エネルギー使用に影響を及ぼすプロセスと変数の特定
エネルギーパフォーマンスに大きな影響を与えるエネルギーの使い方か,多量のエネルギー使用量
か,エネルギーパフォーマンス改善の余地があるかに基づき,「著しい領域」を特定する。改善の余地
のある対象プロセスの特定は,各種の同一セクターや製品別の原単位比較やベンチマーク比較などに
よっても特定できる。
影響を及ぼす変数としては,工場等の操業条件(原料,生産量,要求品質,周囲条件)によりエネルギ
ー使用量が変動することが多いので,統計分析ツール等を活用して変数を特定する。ビル建物に対して
は,延床面積,従業員数,営業時間,PC 台数,空調温度,外気温度などが影響を及ぼす変数と考えられる。
また,要員の知識や技能が十分でないことにより,エネルギーの無駄のない設備運転が確保されてい
ない場合もあるので,運用基準の確立や教育訓練の実施により対処する。
(5)エネルギーパフォーマンスの決定
施設,設備,システム,プロセスなど上記で特定された領域(複数領域でも可)に対して,エネルギー
効率,エネルギー消費量,影響を及ぼす変数に配慮して定めた原単位など,組織が定めたエネルギーパ
フォーマンス指標(EnPI)に基づき,エネルギーパフォーマンスを算定する。
(6)将来のエネルギーの使用および使用量の予測
将来の製品計画,生産計画,需要動向など勘案してエネルギー使用状況を推計する。生産数量が将来
大きく減少するようなら,エネルギー使用量が減少し,またはエネルギーパフォーマンスの改善余地が
少なくなるなどによって著しいエネルギーの使用の領域も見直される。
(7)エネルギーパフォーマンス改善の機会の特定
改善の機会は,エネルギーパフォーマンスの測定と観察に基づいて行うエネルギー診断等により決
定する。エネルギー診断は組織内部の人材,またはコンサルなど外部専門機関に託してもよい。改善提
案,省エネ量,実施コスト,優先順位をつける。
- 136 -
・(3)EnMS 導入事例紹介
エネルギーマネジメントシステムを導入した企業の導入背景や規格運用上の工夫,従来スキームと
の違い,改善効果などを紹介した(詳細は 4.1 参照)
。
・(7)海外主要国の動向(コンテンツ)
○世界の ISO50001 認証取得サイト数の推移
図 6.1.3 世界の ISO50001 認証取得件数(トップ 20)
○世界の ISO50001 認証取得件数(上位国)
世界 70 カ国の ISO50001 認証取得企業名が公表
※ DIN/Environmental Protection Standards Committee (NAGUS) (調査 2014 年 5 月時点)
図 6.1.4 世界の ISO50001 認証取得件数(トップ 20)
- 137 -
6.2 講演会等による普及
(1)講演会の概要
国内において公的機関等が開催する事業者向けの説明会等(下表)に講師を派遣し,ISO50001 に関
する講演を行った。
○講演内容の骨子
ISO50001 とはどういうものか,ISO50001 の特徴は何か,エネルギー管理での規格活用のポイント,エ
ネルギーパフォーマンスの改善評価の方法,米国・中国・欧州など海外各国の ISO50001 導入状況はど
うか,企業の導入事例の紹介など。
表 6.2.1 講演会一覧
NO.
開催日
講演会名称
参加事業者
場所
参加人数
(会社)
1
平成 26 年 4 月 9
埼玉地区会講演会
日
2
3
4
8
9
ま市
神奈川県内エネルギー 横浜市
19 日
演
管理指定工場
平成 26 年 9 月 9
電機電子 4 団体講
団体会員
日
演会
平成 26 年 11 月
新潟地区会講演会
平成 26 年 11 月
群馬地区会講演会
平成 26 年 12 月
東京都千代田
新潟県内のエネルギー
新潟県糸魚川
管理指定工場
市
群馬県内のエネルギー
群馬県太田市
管理指定工場
茨城地区会
茨城県内のエネルギー
中部 経産局省エネ
16 日
シンポジウム
平成 27 年 1 月
ENEX2015 ISO50001
中部地域の中小企業者
東京都荒川区
愛知県名古屋
東京都江東区
※
30 日
セミナー
平成 27 年 2 月
紛体 塗装研究会セ
日本パウダーコーティ
24 日
ミナー
ング協同組合会員
80 名
34 名
(25 社)
43 名
(27 社)
50 名
41 名
(33 社)
市
事前申込の事業者
(50 社)
(40 社)
管理指定工場
平成 27 年 1 月
50 名
(72 社)
区
16 日
7
管理指定工場
神奈 川県地区会講
11 日
6
埼玉県さいた
平成 26 年 5 月
5日
5
埼玉県内のエネルギー
50 名
(43 社)
100 名
(70 社)
東京都港区
50 名
(50 社)
※ENEX セミナー概要
工場,ビル,住宅の省エネルギー製品・技術の専門展示会である ENEX2015(第 39 回地球環境とエネル
ギーの調和展:一般財団法人 省エネルギーセンター主催)において,セミナーを通じて ISO50001 を広
報した。また,聴講者に対して質疑応答及びアンケート調査を行った。
- 138 -
写真 6.2.1 ISO50001 講演風景
(2)アンケート調査
講演会参加者に対して ISO50001 の理解,認証取得へのニーズ,規格取得のメリット感の共有などに
ついてアンケート調査を行った。
○アンケート設問
Q1.御社の概要(該当項目に「✔」
)
① 業種
□ 建設業
□ 製造業
□ 情報通信業
□ 卸売業・小売業
□ 金融業
□ 運輸業
□ サービス業
□ 認証機関
□ 研修機関
□ 審査員評価機関
□ その他(
)
② 従業員規模
□ 100 人未満
□ 100 人以上 500 人未満
□ 1,000 人以上
- 139 -
□ 500 人以上 1,000 人未満
③ 省エネ法の特定事業者または特定連鎖化事業者指定の有無
□ あり
□ なし
④ エネルギー管理指定工場等の区分
□ 第一種
□ 第二種
□ 指定なし
Q2.ISO 50001 の認証取得について(該当項目に「✔」
)
□ 既に認証を取得している→その理由(
)
□ 認証取得を目指す→その理由(
)
□ 必要性を検討したい
□ 普及状況を見て判断する
□ 現時点では認証取得は考えていない・分からない→その理由
(
)
Q3.他のマネジメントシステムの認証取得状況(該当項目に「✔」
)
□ ISO 9001(品質)
□ ISO 14001(環境)
□ ISO 22000(食品安全)
□ ISO 22301(事業継続)
□ ISO/IEC 27001(情報セキュリティ)
□ OHSAS 18001(労働安全衛生)
□ その他(
)
Q4.セミナーの内容(活用のポイントやメリット感など)について理解できましたか(該当項目に「✔」
)
□ よく理解できた
□ だいたい理解できた
□ まだ分からないところがある
□ 理解できなかった(下記に理解できなかった点を具体的にご記入ください)
Q5.ISO 50001 認証取得に当たっての課題と思うことは(該当項目に「✔」,複数可)
□ 認証取得及び維持の経費
□ 人員の確保及び配置
□ 条例等を含め負荷の拡大
□ 組織内認知度(必要性)
□
□ 同業他社の動向
既存マネジメントシステ
ムとの両立の仕方
□ その他(下記に具体的にご記入ください)
Q6.ISO 50001 認証取得の判断材料として特に必要な情報は(該当項目に「✔」,複数可)
□ 導入のメリットを判断できる手法
□ 導入事例(成功体験)
□ 規格の要求事項の解説
□ 省エネ法との違い
□ 品質・環境マネジメントシステムとの違い
□ 取得費用・期間などを相談できる機関
□ その他(下記にご記入ください)
- 140 -
Q7.経済産業省資源エネルギー庁の ISO 50001 サイトを閲覧したことがありますか(該当項目に「✔」)
URL:http://www.enecho.meti.go.jp/policy/iso50001/index.html
□ ある
□ ない
Q8.その他ご意見・ご要望・コメント等をご自由にご記入ください
○アンケート集計結果
Q1-1 企業の属性(業種)
建設業・・・ 11 名,製造業・・・295 名,情報通信業・・・4 名,卸売業・小売業・・・74 名,金融業・・・3 名,サー
ビス業・・・9 名,その他・・・32 名,無回答・・・1 名
Q1-1.企業の属性(業種)
1%
2%
0%
9%
0% 0% 0%
0%
3%
2%
1%
82%
建設業
製造業
情報通信業
卸売業・小売業
金融業
運輸業
サービス業
認証機関
研修機関
審査評価機関
その他
無回答
図 6.2.1 回答者の属性(業種)
Q1-2 企業の属性(従業員規模)
100 人未満・・・28 名,100 人以上 500 人未満・・・106 名,500 人以上 1,000 人未満・・・54 名,
1,000 人以上・・・167 名,無回答・・・6 名
Q1-2.企業の属性(従業員規模)
2%
8%
29%
46%
15%
N=361
100人未満
500人以上1000人未満
無回答
100人以上500人未満
1000人以上
図 6.2.2 回答者の属性(従業員規模)
- 141 -
Q1-3 企業の属性(特定事業者または特定連鎖化事業者指定の有無)
省エネ法の特定事業者または特定連鎖化事業指定がある・・・246 名
省エネ法の特定事業者または特定連鎖化事業指定がない・・・ 78 名
無回答・・・37 名
Q1-3.企業の属性(省エネ法の特定事業者または特定連鎖化事業者指定
の有無).
10%
22%
68%
N=361
あり
なし
無回答
図 6.2.3 回答者の属性(特定事業者または特定連鎖化事業者指定の有無)
Q1-4. 企業の属性(エネルギー管理指定工場等の区分)
第一種エネルギー管理指定工場・・・266 名, 第二種エネルギー管理指定工場・・・33 名,
エネルギー管理指定工場なし・・・50 名,無回答・・・21 名
Q1-4.企業の属性(エネルギー管理指定工場等の区分)
6%
13%
9%
72%
N=370
第一種
第二種
指定なし
無回答
図 6.2.4 回答者の属性(エネルギー管理指定工場等の区分)
Q2 ISO50001 の認証取得について
既に認証を取得している・・・7 名, 認証取得を目指す・・・6 名, 必要性を検討したい・・・88 名,
普及状況をみてから判断する・・・144 名, 現時点では認証取得は考えていない・・・107 名
無回答・・・17 名
【自由記述】
◇ 認証取得を目指す理由・・・
①ISO50001 導入支援のサービスを行っている。そのアピール材料としたい。
②会社方針
- 142 -
◇ 現時点では認証取得は考えていない理由・・・
① 認証取得したことのメリットが分からない。ISO14001 で経験している形骸化のイメージがあ
る。
② テナント入居であることと,親会社の指示による。
③ 運用に手間が掛かる。
④ 既に省エネを進めており,新規に ISO50001 を取得するメリットがないと判断。
⑤ 他の法律との関連で設備を容易に改造することが出来ない。ISO14001 の一部に省エネを項目
として取り組んでいる。
⑥ 上層部の判断(経営層の判断)
。
Q2.ISOの認証取得について
既に認証を取得している
4% 2% 2%
29%
認証取得を目指す
24%
必要性を検討したい
普及状況を見て判断する
39%
現時点では認証取得は考
えていない/分からない
N=369
無回答
図 6.2.5 ISO50001 の認証取得について
Q3 他のマネジメントシステムの認証取得状況
ISO 9001(品質)・・・272 名,ISO 14001(環境)・・・295 名,ISO 22000(食品安全)・・・19 名,
ISO 22301(事業継続)・・・1 名,ISO /IEC 27001(情報セキュリティ)・・・14 名,
OHSAS 18001(労働安全衛生)・・・43 名,
その他・・・プライバシーマーク,ISO/TS16949(自動車産業品質),EA21(エコアクション 21)
Q3.他のマネジメントシステムの認証取得状況
ISO9001(品質)
3% 0%
2%
ISO14001(環境)
5%
6% 2%
ISO22000(食品安全)
39%
ISO22301(事業継続)
ISO/IEC27001(情報セ
キュリティ)
OHSAS18001(労働安全衛
生)
その他
43%
N=695
無回答
図 6.2.6 他のマネジメントシステムの認証取得状況
- 143 -
Q4 セミナーの内容(活用のポイントやメリット感など)について理解度
よく理解できた・・・32 名,だいたい理解できた・・・216 名,まだ分からないところがある・・・96 名,
理解できなかった・・・6 名,無回答・・・11 名
【自由記述】
◇まだ分からないところがある・・・①説明が速い。
②ISO14001 と ISO50001 及び,省エネ法の関係と必要性が不明確。
◇ 理解できなかった・・・
①ISO50001 が ISO14001 や省エネ法と何が違い,何の為に ISO50001 を取得する必要性。企業にと
っての具体的(数値化できる)メリットは何か。
②帳票(文書類)内容をもう少し詳しく説明が欲しい。
③ISO50001 と省エネ法の決定的な違いをクローズアップして説明して頂きたかった。
④既に(エネルギー)管理はできており,メリットがない。
⑤ISO14001 との差,違い。
目的は同じはず。
ISO50001 の運用の仕方が厳しいだけではないのか?
Q4.セミナーの内容(活用のポイントやメリット感など)
2% 3%
26%
よく理解できた
9%
だいたい理解できた
まだ分からないとこ
ろがある
60%
理解できなかった
N=361
無回答
図 6.2.7 セミナーの内容(活用のポイントやメリット感など)について理解度
Q5 ISO50001 認証取得に当たっての課題
認証取得及び維持の経費・・・157 名,人員確保及び配置・・・178 名,条件などを含め負担の拡大・・・72 名,
組織内認知度(必要性)・・・143 名,既存マネジメントシステムとの両立の仕方・・・156 名,
同業他社の動向・・・58 名,その他・・・16 名,無回答・・・13 名
【自由記述】
◇ その他・・・ ①商取引上の優位の有無。
②具体的メリット,デメリットを明確化する(カンタンに!)省エネ法によって規
制される内容について作業等がどれくらい軽減できるのか(人・モノ・金)
。
③改善ツールとしてのシステムの有効性。
④普及・啓発が必要。
- 144 -
Q5.ISO50001取得に当たって課題と思うことは
認証取得及び維持の経
費
人員の確保及び配置
7% 2% 2%
条例等を含め負荷の拡
大
組織内認知度(必要性)
20%
20%
22%
18%
9%
既存マネジメントシステム
との両立の仕方
同業他社の動向
その他
N=793
無回答
図 6.2.8 ISO50001 認証取得に当たっての課題
Q6 ISO50001 認証取得の判断材料として特に必要な情報
導入のメリットを判断できる手法・・・248 名,導入事例(成功体験)・・・108 名,
規格の要求事項の解説・・・80 名,省エネ法との違い・・・139 名,
品質・環境マネジメントシステムとの違い・・・118 名,取得費用・機関などを相談できる機関・・・65
名,その他・・・12 名,無回答・・・14 名
【自由記述】
◇ その他・・・
① 国 or 地方自治体の規制,制度化に向けた動向。海外輸出国の認証制度化(輸出先国の輸入認
証制度など)の情報。
② 具体的なメリット(投資回収年数,数値化できコミットされるもの)
。取得前後のシミュレー
ションによって判断基準が目視化できること。
③ 省エネ法があるのに必要なのか!?
④ ISO14001,ISO9001 と併せて必要か?
⑤ パフォーマンス,毎年低下時は認証継続できないのか?
⑥ トップマネジメントがその気になる提案/具体的な省エネ手法。
⑦ ISO14001 の導入の場合と ISO50001 導入の場合のメリット,デメリット(手間)。
Q6.ISO認証取得の判断材料として特に必要な情報は
導入のメリットを判断できる
手法
導入事例(成功体験)
8% 1% 2%
規格の要求事項の解説
15%
32%
18%
10%
14%
省エネ法との違い
品質・環境マネジメントシス
テムとの違い
取得費用・期間などを相談
できる機関
その他
N=784
無回答
図 6.2.9 ISO50001 認証取得の判断材料として特に必要な情報
- 145 -
Q7 経済産業省資源エネルギー庁の ISO50001 サイトの閲覧有無
閲覧したことがある・・・56 名,閲覧したことがない・・・294 名,無回答・・・11 名
Q7.経済産業省資源エネルギー庁のISO50001サイト
を閲覧したことがありますか
3%
16%
ある
ない
81%
無回答
N=361
図 6.9.10 経済産業省資源エネルギー庁の ISO50001 サイトの閲覧有無
Q8 その他ご意見・ご要望・コメント等
◇ 特に ISO で規定する必要があるのか疑問。
どこの企業でも日常業務でやっているのではないか?
◇ 国として ISO50001 をどの様に位置付けているのか。ISO14001 と併せて明確な方向性を示して欲
しい。
◇ 他の手法ではなく ISO50001 を導入した事によって得られるメリットが明確でない。
◇ 環境経営(EMS)の中でやれないのでしょうか?マネジメントシステム(MS)が多すぎて会社運営
の負担になる。
◇ 原単位の決定方法の事例を作って欲しい。
◇
ISO50001 をコストと時間をかけて認証を取るメリットがあまり感じられなかった(ISO14001
との違い)
。
(有効な)手法はどんどん取り入れるべきと感じた。
◇ 省エネ推進部署と ISO 認証取得に関する部署が異なる為,イニシアチブもどの部署が取るかが
問題となりそうである。
◇
トップの関与がなければ出来ないような感じなので,より社内に省エネを浸透させるには
ISO50001 は魅力的。しかし理想かな。そこまで社員が力を入れている感じもしない。
(規格の)
考え方,手法は良いと思う。
◇ 会社で省エネに力を入れている。
省エネのネタ探しに苦労しているので,このような場があれば
参加していきたいと思う。
◇ 海外進出へのメリットの必要性,各国の対応が違うのでは?
◇ ISO9000 と ISO14000 を統合中。更に追加となると 3~4 年が必要だ。
◇ ドイツの減免措置のような直接的なメリットがあると導入を検討しやすい。
◇ ISO9000 や ISO14001 も同様であるが,実効よりもカンバン(イメージ)目的で取ることが多い
が文書管理 etc に代表される「手間対効果」の低い業務がネックである。手間を最小限にし,
かつ実効を上げる「いいとこ取り」の「ミニ 50001」が望まれる。
◇ ISO の MS をもう一つ導入すれば組織に基本的な MS(PDCA)が構築される。現在,世の中(日本,
世界)では企業としてエネルギー対策に必要課題。
(環境対策も同様)
。やるべきことであるの
- 146 -
に〔ISO の MS の認証取得〕をすると「審査のために」
「審査があるから」の活動になってしま
うのが,今の ISO 取得企業の問題だと思う。
○分析とまとめ
・環境や品質のマネジメントシステムの認証を取っている製造業の事業者の参加が多く(約 8 割強),
規格のポイントやメリット感は「ほぼ理解できた」人が多い。しかし,「ISO14001 との差が分からな
い」,「省エネ法との違いが分からない」など,「まだ理解できないところがある(約 25%)人もいた。
・ISO50001 の認証取得について,約 6 割強の人が「必要性を検討したい」
「普及状況をみてから判断す
る」としている。一方,認証取得を考えていない人の多くは,「取得メリットが感じられない」,「上
層部(経営層)の判断(待ち)
」とのこと。ISO50001 講演では事例を通してメリット感を伝えていく
ことが重要。
・取得にあたっての課題として,「既存のマネジメントとの両立の仕方」や「取得にかかる経費」など
があり、体制作りやコストやが負担となると感じている。また,取得の判断材料として,「導入メリ
ットの判断手法」や「導入事例における成功体験」の情報を求めている。経済産業省のウェブサイ
トにて公表している取得企業の事例はエネルギー管理の活用ノウハウであり,今後事例が増えてい
くにつれ,よい判断材料となると思われる。
・国の ISO5000 サイトの存在を知らない事業者がまだ多く(サイトを見たのは 16%),今後とも,広報
の機会を通じて PR していく必要がある。
- 147 -
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