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国内旅行の実態と地域への課題

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国内旅行の実態と地域への課題
Nara Women's University Digital Information Repository
Title
国内旅行の実態と地域への課題
Author(s)
加茂, 祐子; 長田, 彩
Citation
人間文化研究科年報, Vol.24, pp.65-80
Issue Date
2009-03-31
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/1105
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publisher
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国内旅行の実態と地域への課題
加茂 祐子*・長田
彩
1.はじめに
わが国では、伝統的にも旅行1)は人気の高い余暇活動の一つである2)。また最近では国策とし
て観光を推進すべく、昭和38年制定の観光基本法に変えて平成18年には観光立国推進基本法が制
定され、更に平成20年10月より観光庁が発足した。これらに先立つ「観光立国推進戦略会議報告
書」や「観光立国推進基本計画」及び上記平成18年制定法の前文には、“観光立国”を目指して、
国際競争力のある魅力ある観光地を形成し、国内外からの旅行客を増加させることが、地域経済
の活性化に繋がるという趣旨が述べられている3)。ここでいう地域には、都市と農山漁村の双方
を含んでいる。
このうち農山漁村地域について、旅行を地域振興の起爆剤にしょうという発想は、昭和62年制
定の総合保養地域整備法(リゾート法)や4>、同法下での開発が挫折した後の農村型リゾート5)、
あるいはグリーン・ツーリズムの提唱6)、更には平成6年の農山漁村余暇法の制定7)へと引き継
がれて今日に至っているという経緯がある。
国策としての観光の推進にも農山漁村余暇法にも共通しているのは、魅力的なツーリズムの選
択肢を提供することが地域経済活性化の鍵の一つになり得る、という認識であろう。そのような
認識を具体化するためには、わが国における旅行のトレンドとその変化について分析し、また入
込客の増加に成功している地域についてその要因を探る必要があると考えられる。
そこで本研究では、既存データをもとに、日本人による国内旅行の実態に注目して、1)まず
国内旅行の動向について、①家計支出、②行動者率、③旅行先での活動内容の三つの側面から概
観し、2)次に近畿圏に着目して、入込客の動向が対照的な滋賀県と奈良県の場合を比較しなが
ら、入込客の④空間的分布、⑤季節的な分布、⑥観光目的の特徴とその変化について両県の違い
を明らかにし、1)2)の結果を照らし合わせながら地域観光の今後の課題について考察を加え
ることとする8)。
2.国内旅行の動向について
(1)家計面から見た旅行関連消費の推移
図1は、総務省「家計調査」より各項目の世帯員一人あたり実質支出額を算出し、昭和55年
(1980年)を100とした指数で示したものである。図示した期間の背景をふり返れば、1980年代後半
には円高が進み海外旅行に割安感が生じた。またバブル景気に後押しされて余暇ニーズが高まっ
た時期である。他方消費者の本物志向が強まるとともに、国内旅行についても従来からのマス・
ッーリズムとは異なる新しい観光のありが模索され始めたのもこの時期である9)。また1990年代
*社会生活環境学専攻 共生社会生活学講座
一65一
図1 旅行関連支出の推移(1980年二100とした実質額指数)
260
240
220
一●一宿泊料
200
・…
180
ォL…・教養娯楽サービス
μ・竃蹴騒紺全細△=綴テ費
160
140
)一
120
100
80
60
1980 198319861989199219951998200120042007年
(S55) (S58) (S61) (Hl) (H4) (H7) (HIO) (H13) (H16) (H19)
注:実質額計算のためのデフレータには消費者物価指数総合(2005年基準、全国)
を用いた。
資料:総務省「家計調査年報」(全国;世帯員二人以上の世帯)「消費者物価指数年報」(各部)
には消費不況の下で消費者のコスト意識が研ぎ澄まされた。
さて図1を見ると、宿泊料は1980年代後半に大幅な伸びを示し1990年には10年前の2倍を超え、
その後の長引く景気停滞の下でも変動を伴いながらも緩やかな伸びを続け、2000年代に入って横
ばい状態を呈するようになった。いわゆる消費不況の間にも、宿泊料に代表される家計の旅行費
支出は維持され続けたことがわかる。
注目されるのはパック旅行費の動きで、1992年をピークにほぼ横ばいとなり、2000年代に入っ
て大きく減少していることである。実質所得が伸び悩む中で、支出の対価としてより高い実質内
容を求めようとする消費者行動の変化が旅行面にも表れ、画一化されたパック旅行離れを加速し
たためと考えられる。
(2)旅行者のプロフィルとその変化一「社会生活基本調査」データより一
1)国内旅行の推移についての概観
次に総務省「社会生活基本調査」データから見た国内旅行行動の変化について概観しよう。図
2は男女別に「(日帰り)行楽」および「(宿泊あり)国内観光旅行」の推移を見たものである。
このうち、「(宿泊あり)国内観光旅行」の行動者率を見ると、過去5回の調査では年々低下の
一途を辿っており、先の図1で宿泊料が伸び悩みつつも減少傾向には至っていなかったのと比べ
て、対照的である。
他方、「(日帰り)行楽」の行動高率については、女性の場合にはっきり表れているように1990
年代に入って増加し平成ユ3年度(2001年度)でピークに達したが、5年後の平成18年度には落ち
込んでいる。但し落ち込みの程度は、「(宿泊あり)国内観光旅行」に比べると小幅にとどまって
いる。また「(宿泊あり)国内観光旅行」でも「(日帰り)行楽」でも、過去3回の調査では女性
の行動者率が男性を上回っているが、行動準率の低下の度合いは男性のほうがより大きいため、
一66一
後年になるほど行動者率の男女差が開く傾向にある。
図2 国内行楽・観光旅行の行動者率の変化
。/o
70
e
65
一〇一行楽(女性)
60
→一行楽(男性)
55
・層
寤鼾蒼煌マ光旅行
(女性)
50
ロ ロロコロロロココロロコロコ ココロココココロココココロロロコヘコロ
コの
の
x ’o
トロロロロロコロロロロロコロ
一一
怦鼾蒼煌マ光旅行
「しrし
(男性)
℃・
45
1986年
1991
(S61) (H3)
1996
2001 2006
(H8)
(H13) (H18)
注:行動者率とは、調査日(各年10月)までの過去1年間に、該当する種類の活動
を行った人(15歳以上)の数を15歳以上人口で除して求めたものである。
資料:総務省「社会生活基礎調査」
次に図3右側より「(宿泊あり)国内旅行」(観光旅行以外を含む)の旅行頻度等分布を見る
と10)、年1回∼10回以上のどの層においても、平成13∼18年度では行動者率が僅かずつ低下して
いる。この結果は、家計の宿泊料支出の動きが(図1)、同期間においても維持され続けているの
図3 1年間における旅行の頻度別行暗者率の推移
25.0
O/o O/o
25.0
(日帰り)行楽
(宿泊あり)国内旅行
一 H13
一H13
20.0
20.0
國H18
圏H18
15.0
15.0
10.0
10.0
5.0
5.0
o.o
年
o.o
1
2
年
3
年 年 年
4
5
6
回
回
回
回
回
∼
年
7
三
資料:総務省「社会生活基本調査」
より作成。
年
年
8
10
s
9
回
(各年度)
年 年 年 年 年 年 年
1 2 3 4 5 6 8
回
回
以
上
回
回
回
回
∼ ∼
7 9
回 回
注:「(宿泊あり)国内旅行」には、観光旅行の他
「帰省・訪問などの旅行」
「業務出張・研修・その他」が含まれる。
一67一
年
10
回
以
上
と相違しているが、その一因として旅行先のシフト、すなわち国内旅行から円高によって割安感
が生じた海外旅行へという動きがあると見られる。
他方、「(日帰り)行楽」については、平成13∼18年度にかけて全体では5.6ポイント低下したが
(図2)、その原因として年10回以上の高頻度層の3.6ポイント低下(図3)の影響が大きいと見
られる。実際、行楽頻度年1∼5回層の占める割合は、平成13年度の39.7%から平成18年度の38.3%
へと1.4ポイントの小幅な低下にとどまっており、年3回層にいたっては僅かだが行動者率の上昇
が見られるのである。また年10回以上の高頻度層で行動者率が落ち込んだといっても、10歳以上
人口の約2割(17.1%)をキープしており、「(宿泊あり)国内旅行」の場合とはかなり様相が異
なるといえる。
2)年齢別に見た国内旅行の動向
一般に消費者行動は年齢によって差異を生じる場合が少なくないが、国内旅行についても年齢
間で異なる点があるだろうか。図4は年齢別行動者率の変化を旅行のタイプ別に示したものであ
る。図4より、まず、平成13・18年度ともに「(日帰り)行楽」と「(宿泊あり)国内旅行」のど
ちらも、行動課率は30歳代で最も高いことがわかる。
図4
年二二に見た行動者率の推移
「(宿泊あり)国内旅行」
「(日帰り)行楽」
%
90
60
90
十 H13
80
70
o/0
t・・o一“ H3
ρ“’”●
ロロロロロ ロの ユロ ロロロロコ
3
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80
十 H18
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70
コロロロ
60
p’””}圏”p’”【t一’一}一一”一“’一一一‘一
50
50
40
40
轍∼艦搬喋ゐ墾細
φ鴫鴨艦噸艦船説
「国内旅行」には「観光旅行」の他「帰省・訪問等の旅行」
「や業務出張・研修・その他」が
注1:
含まれている。
2:行動者数とは、各年10月の調査日より遡って過去1年間に該当する種類の活動を行った者の数。
行動者率とは、(当該年齢)行動者数÷当該年齢人口×100(%)
資料:総務省「社会生活基本調査」 (各年度)より作成。
次に行動者率の時系列的な推移を見ると、図4右側より「(宿泊あり)国内旅行」では、若者か
ら50歳半まで幅広い年齢層において折れ線グラフは年々下方シフトし、国内旅行離れが深刻であ
ることを伺わせる。平成3∼ユ3年度のいわゆる“失われた10年”と重なる期間における行動者率
の低下よりも、景気回復期を含む平成13∼18年度の5年間における行動者率の低下のほうが大き
いという実態は、「観光立国」の行方に危惧を抱かせるものといえよう。
次に「(日’帰り)行楽」の場合は、平成3∼13年度の10年間に50歳以上で行動者率の増加が見ら
れ、その後の5年間(平成13∼18年度)では逆に全ての年齢層で行動者率が低下している。但し
一68一
その下げ幅は60歳以上では小幅にとどまっている。この60歳以上層で直近の5年間(平成13∼18
年度)における行動者率の下げ幅が小さいという点は、「(宿泊あり)国内旅行」にもあてはまる。
すなわち60歳以上層に限れば、59歳以下の層とは対照的に、「(日帰り)行楽」でも「(宿泊あ
り)国内旅行」でも国内旅行離れは殆ど見られず、結果として国内旅行者の高齢化が進んでいる
ことがわかる。国内旅行の振興のためには、定年後の団塊世代を迎え入れ惹きつけられるような
工夫が一層重要になると考えられる。
3)男女別に見た年齢別旅行行動パターンの差異
次に図5では、男女間で行動者率の年齢別パターンに差異があるか、直近の平成18年データに
より比較を行った。まず「(日帰り)行楽について見ると、女性の行動者率には25∼44歳層で70%
を超える高いピークがある。またその他の年齢層でも70歳以上を除けば、ほぼ60%水準がキープ
されている。男性の場合も、年齢別に見ると、女性とほぼ同様のパターンを描くが、総じて女性
に比べ行動者率は低い。とりわけ、20∼39歳の若い年齢層と50∼64歳の熟年層での男女差が大き
い。すなわち「(日帰り)行楽」の趨勢については、女性の動向が鍵を握っており、地域観光の振
興にとっては女性客を惹きつける工夫が重要と考えられる。
図5 男女・年齢別に見た旅行行動者率一平成18年
「(日帰り)行楽」
o/0
80 一一一一一一一一一一一
【
零
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60
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50
一一一一
40
「(宿泊あり)国内旅行」
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40
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次に、「(宿泊あり)国内旅行」についても、女性の行動興宮は「日帰り旅行」の場合とほぼ同
じ年齢層でピークを形成している。男性の場合には、出張旅行の機会が多いと見られる40歳代と
平均年齢が女性より低い65歳以上では、行動者率が僅かに女性を上回っている。けれども、それ
以外の年齢層、特に15∼34歳の若い年齢層では、女性の行動者率のほうが男性を大きく上回って
いる。その背景には、独身女性が旅行に対して積極的だという事情があろうかと察せられる。ま
た、50歳代前半から60歳代前半にかけても女性の行動者率が男性を上回るが、この年齢層は子供
が独立した後の生き方について様々な模索を試みる年齢層でもある。
若い女性と熟年女性、世代の異なる女性層が求める広い意味での本物志向に対してどの様に応
えるかが、旅行客を受け入れる地域にとって、シルバー世代対応と並んで重要な課題となるであ
ろう。
一69一
(3)消費者の観光・行楽ニーズの多様化
次に人々が国内旅行求めているニーズの所在を探るため、日本観光協会の『平成14年度観光の
実態と志向』データをもとに分析した。図6は、『観光の実態と志向』所収の全国を対象とした調
査データより、「旅行先での行動」について、昭和57年度と平成17年度の結果を比較したものあ
る11)。
図6 宿泊旅行先での行動(複数回答)
@1
.Ei!,ttzlffsS
温泉
名所・旧跡を見る
神仏詣
都会見物
温泉浴
登山・ハイキング
キャンプ・オートキャンプ
サイクリング
ドライブ
スポーツ
…
自然の風景を見る
■
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■
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■
海水浴
水泳
つり
ヨットなど
スキー
ゴルフ
テニス
その他1の.,塾丞二2.
羅{
レジャーランド・テーマパーク
@
@
l
博覧会・イベントを見物する
演劇・音楽・スポーツ等の鑑賞
祭りや行事を見る
季節の花見
潮干狩り、いちご・ぶどう狩りなど
その他の
参加型
写生・写真、動植採集など
動・植物園
1
特産品などの買物・飲食
;
民工芸品づくり
?
ll
l
■
o/o
O 10 20 30 40 50 60
注:調査対象は、全国、15歳以上
期間は、各回の4月∼翌年3月の1年間
資料:に本観光協会『観光の実態と施行』より作成
図6より、昭和57年度に比べて平成17年度では、「見物型」「スポーツ」の占める割合が低下し
ており、「スポーツ」の中では1ドライブT、晦水浴暫の割合がほぼ半減している。対照的に平成
17年で増加しているのが「温泉浴」や「イベント性のある参加型」である。後者のうち’レジャ
ーランド・テーマパーク’と’博覧会・イベントを見物する’(昭和57年ではレジャーランド・テ
ーマパークに含まれている)を合わせた割合は3倍以上も増加している。これには、ユ983年開園
の東京ディズニーランドやUSJ(2001年開園)の影響が大きいであろう。またこれらの行動にお
いては単に見るだけでない「体験の共有」という要素が大きいと考えられる。また見物型のうち
「自然の風景を見る」の割合には変化が無く、「その他の参加型」のうち’季節の花見tや璽動・
一70一
植物園’などの割合が増加しているが、その背景には大自然や動植物との間近な触れ合いに「本
物」や「癒し」を求めるという要素があるかもしれない。
以上図6の分析結果と先の図1での家計支出面からの分析結果を照らし合わせると、観光に対
する国民のニーズが、受動的な「見物型」を中心とするマス・ツーリズムから、多様な能動的体
験・参加・触れ合いを求めるオルタナティブ・ツーリズム12)ヘシフトしつつあると見られるわけ
である。
3,奈良県観光の特徴一滋賀県の場合と比較して一
(1)近畿6府県における入込客の動向
以上で見たわが国の旅行行動の変化についての分析結果を踏まえながら、以下では近畿圏にお
ける観光動向から地域観光の課題について探りたい。その際、奈良県と滋賀県に注目して分析を
進める。表1の平成18年の数値が示すように、両県では入込客13)の数や宿泊客の割合については
比較的近い水準にあるものの、図7より入込客の年次的な推移を比べると対照的な傾向を示して
いるからでる。以下では両県についてその背景を詳しく探ることとした。
図7に見られる両県の入込客思の変化を、1980年(昭55)を100とする指数で見れば、平成18年
では滋賀県が180.6、奈良県が90.3となり、観光客の低減傾向が続く奈良県と、入込客の誘致にお
いて躍進を続ける滋賀県との、両極端な趨勢が表れている。
表1近畿6府県における入込客数の比較
平成18年
滋賀県
椏s府
蜊纒{
コ庫県
゙良県
a歌山県
計
(構成比)
入込客
(実数)
うち日帰り うち宿泊
4,650万人i 93.3%
奄Wα・ 2住・i 91.0
6.7%
9.Oi8ag lal
V,260
P4,310
P3,327
R,500
奄Xα3 軌7i 82.7
17.3
R,064
46,112
注:滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県については
平成18年1月∼12月、大阪府については平成18年4月
∼平成19年3月の集計による。
資料:「滋賀県観光入込客統計調査書」、「兵庫県勢要覧」
「奈良県観光客動態調査報告書」「和歌山県統計年鑑」
京都府「観光入込客数及び観光消費額の推移」
(以上、平成18年)
「大阪府観光統計調査」 (平成18年度)
一71一
図7 入込噸数の推移一滋賀県及び奈良県一
万人
5,000
なら・シルクロード博
4,700
^一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一; 」i i:i ili;iX!iki;」” iizr一
4,400
“’“一一一“’一一一一一一’”一…一”一”’
4,100
3,800
3,500
奈良県
3,200
2,900
2,600
2,300
2,000
十一一 一 一
トー トー
トー 一 トー F一一, F一.L 一 一 トー一 一 一 一
トー ←一一 一
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資料:「滋賀県観光入込客統計調査書」(平成18年)及び
「奈良県観光客動態調査報告書」(平成18年)より作成
(2)日帰り客の動向
観光面における滋賀県の躍進について、図8よりその内訳を見ると、1990年以降におけるわが
国経済の長期停滞の間にも、日帰り坪数はほぼ順調に伸び続けて、入込客の増加に寄与している
ことがわかる。他方、宿泊客数については80年代に急増した後90年代以降は変動を繰り返しつつ
ほぼ横ばいに推移して来た。
図8 入込客数の内訳の推移 一滋賀県一
万人
万人
500
5,000
入込客
4,500
450
4,000
3,500
日帰り白州
400
3,000
350
2,500
2,000
300
1,500
宿泊客数[右目盛]
1,000
250
500
200
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一
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一
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一
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資料:「滋賀県観光入込客統計調査書」(平成18年)より作成
一72一
次に表2は、近畿6府県の「(日帰り)行楽」行動者率とその推移を比較したものであるが、平
成3∼13年間では和歌山を除く近畿の6府県の行動者率は全国平均を上回り、10年間に奈良県や
京都府では行動者率の増加さえ見られる。すなわち、近畿6府県民が近畿圏内に日帰りで行楽に
出かける割合がく全国的に見ても多いと見られる訳である。
しかしながら、平成13∼18年の5年間での変化には近畿6府県の間で様相が異なっている。すな
わち奈良県民による「(日帰り)行楽」行動者率は大阪府・兵庫県とともに10ポイント以上もの大
幅な低下を示しているのに対して、滋賀県民の行動者率は小幅な低下にとどまっている。そこで、
以下では奈良県と滋賀県における入込客の実態について、より詳細な分析を試みた。
表2 「(日帰り)行楽」の行動者率の推移
15歳以上
A
ス成3年度
全
65.4 %
国零 o 畠 一 P 一 一 一 一 騨 一 一 璽 9 一 一 一 一
10歳以上
B
ス成13年度
B−A
65.1 %i −0.3
一…”……’……”肩…’…’一”…一”…
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椏s府
蜊纒{
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゙良県
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65.7
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ス成18年度
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ス成13年度
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U6.9
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59洛i−11£
51.6 i −7.8
■
V0.6
T9.4
資料:総務省「社会生活基礎調査」(各年度)より作成。
(3)エリア別の入込客数分布から見た奈良・滋賀両県の特徴
図9は、奈良県と滋賀県の両県について、観光の目的地別に入込客語の割合を見たものであ
る14)。図9より明らかなように、滋賀県では琵琶湖を取り囲む県内の各エリアに分散している。
図9 エリア別に見た入込客の分布
奈良県
一平成18年一
滋賀県
五條・吉野地域
湖西
大和高田市平野地域;82.6%
資料:「奈良県観光客動態調査報告書」 「滋賀県観光入込客統計調査書」(平成18年)より作成
一73一
こと、それに対して奈良県では奈良市の占める割合が圧倒的に高く、奈良市から図9の円グラフ
を時計回りに見てその他の大和平野地域まで、県北部だけで入込客の8割以上を占めており、県
内面積の8割近くを占める大和高原地域や五条・吉野地域を訪れるのは奈良県入込客の2割に満
たないという極端な偏りが見られる。
(4)月別の入込客数割合から見た奈良・滋賀両県の特徴
次に図10により、滋賀県と奈良県への入込客の月別パターンを比較すると、両県では対照的な
パターンをとっていることがわかる。奈良県の入込客は1月がピークであるのに対して、滋賀県
は8月がピークである。奈良県では12月と1∼5月の占める割合は滋賀県より高いが、滋賀県で
は6月∼11月の占める割合が奈良県よりも高い。奈良県で1月の占める割合が一番高い理由は、
初詣のためかと見られる。これに対して、滋賀県で初夏以降特に8月がピークとなるのは夏のレ
ジャーのためかと見られる。また、滋賀県では4∼5月と10∼11月が同じような割合である。平
成18年の月別入込客数の変動係数の計算結果からも、奈良県が31.8%、滋賀県が27.9%で、奈良県
のほうが季節的な偏りが大きいことを示し、滋賀県の方が相対的に季節問での偏りが小さく観光
客が年間を通じてよりコンスタントに訪れていることを示している。観光(旅行)に不可欠な人
的サービスには、需給の空間と時間が一致するという経済特性が伴うため、時間的によりコンス
タントな需要のあることが供給側にとっても好ましいことは言うまでもない。
図10 入込客数の月別パターン 一平成18年一
。/o
16.0
■奈良県
14.0
□滋賀県
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
o.o
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月ll月12月
注:(各月の入り込み盗塁)÷(1∼12月の入り込み恒数合計)×100(%)
資料:「滋賀県観光入込客統計調査書」「奈良県観光客動態調査報告書」
以上により、滋賀県の場合には、奈良県に比べて、空間的には県内の特定の箇所に入込客が偏
らず広いエリアの観光資源が活用されるとともに、時間的にもよりコンスタントな客の入込があ
るといえよう。すなわち、滋賀県の方が、地域のローカルな特徴を活かした「もてなし」がより
効果的に提供されていることを反映していると見られる。言い換えれば、エリア別の観光・行楽
マーケティングが、交通アクセスの良さに後押しされて効を奏しており、かつエリア間での連携
も図られているではないかと思われる。実際に滋賀県のどのエリアを訪れた観光客も、当該エリ
ー74一
アだけでなく県内の他のエリアの観光資源の多様性と魅力についても積極的にアピールする努力
が払われていると感じることであろう。これに対して、奈良県では豊かな自然と古代からの歴史
の息吹に彩られた魅力的な観光資源が、訪れる人もないままにひっそりと埋もれている場合が多
いといえるだろう。
(5)観光目的について一滋賀県の特徴一
滋賀県の地域観光に対する工夫の一端を以下の図11に見ることができる。入込客の旅行目的に
ついて尋ねた日本観光協会による全国調査と滋賀県による同県入込客の調査結果を比較したもの
である。但し、全国調査と滋賀県調査では、調査対象(全国の場合は宿泊客、滋賀県の場合には
宿泊客と入込客を含む)、調査期間(全国の場合の平成17数値は平成17年4月∼18年3月、滋賀県
の場合の平成17年数値は同年1∼12月のもの)及び調査目的の項目にも注の表に示したような齪
鱈を含んでいる。
図11旅行別目的
レ
篁等参
注:観光の目的についての分類
地域
殺亮麦
ツン 財
流
@\・・、. 出拠
レ的の種類\一..
一般行楽
●
●
O
5
。
昌
滋賀県H177
■
■
io/o
1
巳
。
■
■
。
Xキー、スケート
Lャンプ
1
。
。
゙り、ゴルフ、テニス
1
’ =く儒
凵E醒鴇W,・陸轍・÷鰐ゐ#郵轡毒伽・..・椰解無富ウ.甜《漁、撒
3
@統計調査書」
登山、ハイキング
?j、舟遊び
,
D
全国S577
「滋賀県観光入込丁数
酔
く
1その他
;=照艦
スポーツ・
スポーツ・
激Nリエーション 激Nリエーション
■
。
1‘lo ・
w観光の実態と志向」
「
。
。
く捌
全国H177
全国
. . 一 9 9 一 一 一 一.
、亀軸
8
社寺・文化財
■
O.O 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0
神仏詣
社寺・文化財
?。.研究
イベント・交流
旅先での出会いや交流
行催事
ユり.イベント
資料
1:全国については、日本観光協会編『観光の実態と志向』(平成18
年度版)に拠っているが、同著は「第25回国民の観光に関する
動向調査」(調査期間:平成17年4月∼18年3月)の集計結果を
もとに作成されている。昭和57年度調査についても調査期間は
同じである。調査対象年齢は15歳以上である。
2:滋賀県については、滋賀県による「滋賀県観光入込客統計調査
書」(調査期間:平成17年1∼12月)拠っている。調査対象年齢
については特に記載されていない。
一般行楽
温泉に入る・湯治
暑・避寒
一般行楽
V覧船
繼L以外の保養.休業
V婚旅行
ヤ安旅行
ゥ然・名所・スポーツ見物
竝s楽
その他
その他
それら齪齢を考慮に入れてもなお、全国と滋賀県には歴然とした違いのあることがわかる。す
なわち、滋賀県では、「スポーツ・レクリエーション」と「一般行楽」に偏よるのではなく、また
近畿圏の特徴である豊富な「寺社、文化財」を活かしつつ、また「行催事」といった滋賀県なら
では参加・体験の機会も多い、すなわち旅行客にとって観光の選択肢が多様であるという特徴が
見られるのである。観光目的の選択肢の多様さ一とりわけイベント・交流(行催事)の多さは、
前節の図6で見た体験・触れ合い・交流を求める国民の観光ニーズに上手く合致しているといえ
るだろう。
一75一
表3 入込客に占める修学旅行客の割合
奈良市
入込客総数
逅l
うち修学旅行生
@千人
(%)
(%)
1997年[H9]
13,392 (100)
Q000年[H12]
P3,261 (100)
X48 (7.1)
Q005年[H17]
P3,050 (100)
W08 (6.2)
1,326 (9.9)
資料:奈良市統計書「統計なら」より作成
図12
千人
奈良市への修学旅行客の推移
1,200
1,000
日帰り
800
600
400
宿泊
200
o
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005
(H9) (HIO) (Hll) (H12) (H13) (H14) (H15) (H16) (H17)
資料:奈良市統計書「統計なら」より作成
(6)修学旅行について一奈良市の推移一
奈良県全体について入込客の旅行目的を見渡すデータが不在なのだが、県内入込客の4割以上
を占める奈良市については、旅行目的のうち修学旅行についてのデータが整備されているので、
その推移を見たのが図12である。また、表3には奈良市への入込客に占める修学旅行客の割合を
示した。奈良県観光にとってそ修学旅行動向は重要なポイントの一つと考えられるからである。
表3を見ると1997年に奈良市への旅行客の1割近くを占めた修学旅行客割合は、近年低下の一
途を辿っている。但し、人数的には、1997∼2000年の3年間で378千人減(28.5%減)であったの
が、2000年代に入っての5年間では140千人減(14.8%減〉と減少スピードはやや弱まって来たよ
うにも見られる。但し、図12のグラフから見られるように、それは2000年代に入ってから奈良市
内で宿泊しないタイプの修学旅行の減少に歯止めがかかったためで、奈良市内での宿泊を伴うタ
イプの修学旅行は減少の一途を辿っていることがわかる。奈良市の観光業にとっては大きな問題
であり、その理由を探る必要があるだろう。
4.要約と結語
第2節では「社会生活基本調査」データよりわが国の旅行行動を分析し、近年①宿泊を伴う場
合については、60歳未満の年齢層による国内旅行離れが加速する一方で、定年後の世代による国
内旅行は比較的堅調である。②日帰り行楽については、20歳代∼60歳代までの幅広い年齢の女性
一76一
と60歳以上の男女を中心に堅調に推移していると見られる。すなわち、国内旅行者の高齢化・女
性化が進んでいること等を明らかにした。また③日本観光協会「観光の実態と志向」による“旅
行先での活動”調査結果や総務省「家計調査」のパック旅行費支出の動きの分析より、観光に対
する国民のニーズが、受動的な参加を主とするマス・ツーリズムから、多種多様な能動的体験を
主とする新しい観光(オルタナティブ・ツーリズム)へと変化しつつあること、を明らかにした。
この第2節の分析結果を踏まえて、第3節では、奈良県と滋賀県における観光動向について分
析し、④滋賀県への観光入込客数の順調な伸びは主に日帰り客の増加によること、⑤また他府県
に比べ滋賀県民自身が「(日帰り)行楽」に活発と見られること、⑥中央に琵琶湖を抱える滋賀県
は、陸路中心の現代交通事情下では不利とも思えるのだが、実際には県内全域に入込客が広く散
らばっており、陸上交通のネットワークが上手く活かされていると考えられること、反面、奈良
県では北部のエリアに入込客の8割以上が偏っていること、⑦入込客の月別パターンを見ても奈
良県では1月のウェイトが突出しており一すなわち従来型の受動的な寺社詣観光に偏っている一
のに対して、滋賀県では8月を最高に春先から晩秋まで比較的コンスタントに客の入込がある。
④∼⑦の分析結果を勘案すると、滋賀県では地域ごと季節ごどのローカルな特徴を活かしたもて
なしで、県内の隅々にまで観光客を誘導するのに成功しているのではないかと推察される。その
背景には、滋賀県観光の選択肢の多様さを伺うことができる。反面、奈良県入込客の4割以上を
占める奈良市において修学旅行で宿泊するケースが年々減少の一途を辿っている。新しいトレン
ドに敏感な若年層を惹きつけられるかどうかは、奈良県観光の試金石の一つとなるかもしれない。
以上、①∼③のわが国旅行行動の実態と、④∼⑦の滋賀・奈良両県の入込客動向の分析結果を
照らし合わせると、滋賀県への入込客数の増加は、消費者の多様且つ能動的な旅行ニーズに対応
した取り組みの積み重ねによってもたらされたと考えざるを得ない。
奈良県経済にとって観光(旅行)の活性化は重要な課題であるが、そのためには奈良県に存す
る地域観光資源の持つ今日的な意味を再評価して奈良県旅行の魅力を再発見し、旅行客のニーズ
に合った具体的な選択肢として県内外に訴求できる体制づくりが必要になるだろう。同時に、観
光に携わる人々の認識を高め、積極的で多様な情報発信を行う必要があると思われる。より具体
的には、地域の観光ボランティアの育成や、女性や中高年層をターゲットとした多様な参加型観
光ポイントづくりの工夫や行催事の実施、若者や修学旅行生を対象とした参加・体験型学習機会
の提供が課題になるだろ。
その好例と考えられる取組を都市部と農山村部について一例ずつを挙げるなら、都市部では奈
良灯火会(1999年∼)を挙げることができるだろう。夏の宵、奈良公園に集い、自然と古代の息
吹に包まれて幅広い年齢の人々が参加でき、ロハスなニーズにも応え、且つ多くのボランティア
に支えられて行われているという点で、先に述べた要素を備えている。また農村部では桜井市の
中山間地域に位置する「そば処笠そば」を拠点とした地域ぐるみの地産着駅の取り組みを挙げ
ることができる。笠三宝荒神という歴史的遺産、清浄な山の空気、蕎畑を眺めながら食べる美味
な蕎、村人による心のこもったもてなし、蕎打ち体験やイベントといった、地域の持ち味を活か
した触れ合いと交流・体験機会の提供という点で先に述べた要素を備えている。いずれも新しい
奈良観光のモデル・ケースになると考えられる。
但し、奈良県全体の観光活性化には、県内に散在する観光地への交通アクセスの便宜を図ると
一77一
ともに15)、県内各エリア間での連携強化が欠かせないと考えられる、宿泊施設の少なさを克服す
ることの重要な課題であり16)、設備面でも若い女性客あるいは修学旅行生のニーズに応える方向
で充実が図られる必要があるだろう。バリアフリーの完備に取り組む必要もあるだろう。本研究
を通じて、奈良県観光の振興にはクリアしなければならない課題が山積していることを痛感した
が、それらの課題が克服されて行くことを期待したい。
注
1)本稿では、「旅行」と「観光」を、ほぼ同じ意味合いで使っている。図3∼図5で両者の使い
分けを記しているのが例外的なケースである。宿泊の有無や移動距離の遠近を問わず、日常
の生活圏から離れた旅行には、帰省・出張・研修・修学の類であっても僅かなりとも観光的
要素を含むと考えるからである(但し、通学・通勤については、遠近を問わず日常生活圏内
での移動として、旅行とは峻別する)。
2)一例を挙げれば、十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』は庶民の問で広く愛読された。ま
た近世において庶民の問で伊勢参りが盛んであったことは周知の通りである。
3)参考文献3)5)6)を参照。
4)同法は様々な批判に晒されつつも、平成16年2月の『「総合保養地域整備法第一条に規定する
整備に関する基本方針」の変更について』を経てようやく平成16年3月改正にいたる。同法
は、後述するグリーン・ツーリズムの提唱や農山漁村余暇法とは趣旨を異にしている。
5)「平成3年度 農業の動向に関する年次報告」儂業白書)M−5 農村社会の変化と魅力あ
る農村地域 (活発になる農村と都市との交流への取組)を参照。
6)「平成4年度 農業の動向に関する年次報告」(農業白書)IV−4 農村社会の変化と活性化
(農村と都市の共生に向けた取組)を参照。
7)正式名称:農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律。
8)なお本研究では、日本人の国内旅行に注目して分析を試みている。これに対して「観光立国
推進基本法」では、海外からわが国への旅行者の積極的な誘致と、旅行を通じて国際理解を
促すことを第一の柱としているが、そのために必要な海外からの旅行者の日本国内での旅行
動向の分析については他日を期したいと思う。
9)地域生活と共生し地域の観光資源を持続的に活用しようとする様々な観光のあり方一一一グ
リーン・ツーリズムやヘリテイジ・ツーリズム等々一一一を総称して新しい観光(オルタナ
ティブ・ッーリズム)と呼ぶことがある。参考文献1)8)参照。
10)ここでの「(宿泊あり)国内旅行」には、「(宿泊あり)国内観光旅行」(図2)の他、「帰省・
訪問などの旅行」「業務出張・研修・その他⊥が含まれる。
11)昭和57年では「博覧会・イベントを見学する」の項目が無く、「レジャーランド・テーマパー
ク」に含み込まれている。
12)この点については、参考文献4)所収「地産・地消とオルタナティブ・ッーリズムの接点」
を参照されたい。
13)日本観光協会、奈良県、滋賀県の調査(資料1,4,5,6)で用いている「入込客」には、「日帰客」
と「宿泊客」があり、前者は総務省調査(資料3)の「(日帰り)行楽」、後者は「(宿泊あ
一78一
り)旅行」行動者に対応する。
14)奈良県「奈良県観光客動態調査報告書」では、県内を以下の20のエリアに分けて、入込客の
集計を行っているが、この20のエリアは、奈良県HPのキッズならけん「奈良県の姿②地理
編」(2008年8月15日現在)の奈良県地図で大きく3区分された地域に含まれている。すなわ
ち、大和平野地域(県面積の約23%を占める。20のエリアのうち、奈良、矢田、山の辺、生
駒、信貴、曽爾、二上・当麻、明日香、橿原、金剛・葛城を含む)、大和高原地域(県面積の
約14%、室生・長谷を含む)、五条・吉野地域(県面積の約64%、吉野山、東吉野、吉野川、
大台ケ原、大峰山北部、大峰山南部、高野・龍神、十津川を含む)の3地域である。
15)紙幅の関係で割愛したが、「旅行行動の実態と地域観光の課題一滋賀県と奈良県を事例として
一」(参考文献2所収)では、地域別の入込客数を被説明変数とした要因分析への第一次的接
近を試みており、その中で、奈良県モデルではホテル数やインターチェンジ・ダミー変数と
いった説明変数について有意な係数が計測されている。
16)上記に同じ
参考文献
1)石原照敏・吉兼秀夫・安福美恵子編『新しい観光と地域社会』古今書院,2001
2)加茂祐子編『生活経済学視点によるグローバル・シューへのファースト・アプローチ』(第
4章)奈良墨子大学生活経済学研究会,2004
3)観光立国推進戦略会議「観光立国推進戦略会議…報告書」(平成16年11月30日)
4)近畿運輸局・近畿農政局『観光における地産地消推進戦略会議提言集』,2007
5)国土交通省総合政策局観光部門「観光立国推進基本計画」(平成19年6月)
6)国土交通難「観光白書」データベース
7)嶋口即興『顧客満足型マーケティングの構図』有斐閣,1996
8)マック,ジェームズ著,瀧口治・藤井大司郎監訳『観光経済学入門』日本評論社,2005
参考資料
1)滋賀県「滋賀県観光入込客統計調査書」
2)総務省統計局「家計調査年報」
3)総務省統計局「社会生活基本調査」
4)奈良県「奈良県観光客動態調査報告書」
5)日本観光協会『観光の実態と志向一国民の観光に関する動向調査』
6)日本観光協会『全国観光動向一都道府県別観光地入込客統計』
一79一
Current Tendency of the Japanese Behavior of tourism
KAMO Yuko, NAGATA Aya
It has been often pointed out that there are some chan・ges of the Japanese behavior of tourism. The
present study investigates the current tendency of the behavior according to the statistical data published
by the Statistics Bureau of Japanese Government, Japan Tourism Association, Shiga Prefectural
Government and Nara Prefectural Government.
The main results are as follows:
’
In general, (1) the number of domestic tours is decreasing. (2)However, the number of a day trip is
not so decreasing. (3)Travelers’ needs are changing from a typical sightseeing to a tour including various
experiences or participation of an event.
In particular, we made a comparison between Nara Prefecture and Shiga Prefecture. (1)The
number of tourists visit to Shiga Prefecture grows year by year. The increase of a day trip contributes
largely to the growth. By contrast, the number of tourists visit to Nara Prefecture is decreasing with each
year. (2)Tourists are dispersed throughout Shiga Prefecture compared with Nara Prefecture. The difference
is partly caused by the convenience for traffic access. (3)ln Shiga Prefecture, tourists get considerable
satisfaction from various experiences or participation. Hearty hospitality of the local people may be
effective for an incentive to travel in a rural area.
一80一
Fly UP