...

孤立した地域を上空からつなぐ小型無人飛行機による無線中継

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

孤立した地域を上空からつなぐ小型無人飛行機による無線中継
2014年11月10日 自動制御連合講演会(伊香保)
小型無人飛行機を活用した無線LAN中継システムの
開発と実験
~大規模災害で孤立した地域との通信確保と情報収集をめざして~
三浦 龍*1、滝沢賢一*1 、小野文枝*1 、辻宏之*1 、
浜口清*2 、井上真杉*2 、大和田泰伯*2
*1 ワイヤレスネットワーク研究所
*2 耐災害ICT研究センター
[email protected]
(独)情報通信研究機構
内容
• システム利用シーンの例
• システム構成概要
(小型無人飛行機システムと無線中継システム)
• 実証実験の概要(仙台、大樹町、坂出、福島)
• 無人航空機(UAS)を制御するための無線周波
数の動向(ITU)
• 今後の展望
2
災害時に緊急出動!
小型無人飛行機を活用し,孤立地域を上空からつなぐ
想定される災害の流れ
△△地区にて
地震発生!
通信途絶
周辺道路寸断
通信回線断
孤立地域発生
道路・ネットワークの復旧までには数週間を要する場合がある
某月某日
東日本大震災では数
千か所以上が孤立
孤立地域との通信が
確保される
小型UASを発進
1号機
道路・ネット
ワーク復旧
この間、救助活動の遅れ・犠牲者増大
救援物資供給の遅れ
UASの活用
 孤立地域との通信を迅速に確保
 ユーザは手持ちの携帯端末でWi-Fi接続
(電子メール、IP電話、Webアクセス等)
2号機
 飛行機間の空中リレーで,より遠方
の地域もカバー
役場・消防等
制御局
孤立地域
孤立地域
救助活動の遅れ
や,犠牲者増大,
救援物資供給の
遅れを防ぐ
3
無人機を経由したWi-Fiゾーン形成と
安否確認の例
無人機を経由して
Wi-Fiがつながり,安
否発信やメール・電
話ができる
小型
無人機
無人機の出動によ
り子供の安否が確
認される
スマホ等
地上局-A
地上局-B
Wi-Fi ゾーン
インターネット等
孤立集落、避難所など
子供が取り残される
ネットワーク
生存地域(役場等)
メッシュ局
4
整備した試験研究用小型無人機の主要諸元
機体名
PUMA-AE (米国エアロバイロンメント社製)
翼長・機体重量
2.8 m, 5.9kg
ペイロード
0.5 kg
飛行時間・進出距離
2-4時間、15km
耐風速
25ノット(13m/s)
最高飛行高度
4000 m (実証実験では対地高度70~1200m程度を飛行)
動力、運用方法
電動、手投げ発進、失速回収、GPSによる自律飛行、防水仕様
実績等
2001年初飛行、製造数:数100(姉妹機は10,000機以上、ほとんど軍事
偵察用)、実時間可視・赤外映像伝送、放射線モニタ、化学センサ等
選定理由
 豊富な実戦でのハード・ソフトの運用実績
と信頼性 (世界の最先端機の1つ)
 地上に落ちても壊れにくい頑丈さ
 離陸・回収の場所を選ばない手軽さ
 全天候性(雨、雪、風)と長時間飛行
 水上回収可能
 バックパックでの運搬性
 専用設計されたモーター、バッテリとその
5
充電器の信頼性
米国FAAは2機種の小型無人機に対して
初めて商用利用を認可(2014.6.10)
エアロバイロンメント
Puma-AE
ボーイング
Scan Eagle
6
小型固定翼無人機とマルチコプターとの
主な違いと適用分野
小型固定翼無人機(Puma-AE)
マルチコプター型無人機
飛行時間
2~3時間
10分~30分
ペイロード
0.5~1 kg
1kg~数kg
騒音
ほとんど音なし
ローターの回転音あり
ホバリング
不可(直径100m程度の旋回で
位置を維持)
可
適した運用方法
高い高度を遠方まで長時間飛ば 低い高度で近くを飛ばし、狭い
し、広域で映像やデータを収集し 範囲で映像やデータを収集する
たり無線中継を行うミッション
ミッション
7
小型無人飛行機システム(Puma-AE)構成
標準搭載ジンバルカメラ
(可視光・赤外。可視光は動画・静
止画5Mピクセル。目標追跡機能
あり。C2リンクに重畳されて、リア
ルタイムでダウンリンクされる。)
飛行制御・モニタ用地上局
コントロール端末画面
8
フライト
離陸上昇中
手投げ離陸(滑走路不要)
実証実験期間中、観測された上空の最大風速は23ノット
(スペック上のPumaの耐風速は25ノット)
9
飛行経路設定・監視画面
ホームポジション
(H)
搭載カメラの指
向ポイント
(+のマーカ)
飛行位置
(黄色のマーカ)
ウェイポイント
(A,B,C,D)
着陸進入ポイント
(E)
着陸ポイント
(L)
機体の向き、高度、速度、バッテリ電圧、地上局からの
相対位置、上空の風速・風光、飛行モードなどをリアルタ
イム表示
10
搭載カメラによる取得映像の例
(500万画素、リアルタイム動画・静止画)
可視光画像
旋回飛行中もターゲッ
トを捕捉してカメラが
追尾(地上局にてタッ
チペンで操作)
場所:東北大学青葉山キャンパス(仙台)
飛行高度:対地約400m
赤外線画像(White-hot)
場所:北海道芽室町
(独)農研機構北海道農業研究センター
飛行高度:対地約150m
11
開発した小型無人機搭載用小型無線中継装置
周波数・帯域
2 GHz帯 / 8MHz
送信出力
2W
通信方式
MSK / TDMA/TDD
アンテナ
λ/4 ホイップ (水平面無指向)
中継機数
1機中継あるいは2機中継(Air-to-air)
伝送速度(無線/情報)
同期方法
6M bps / 400 kbps
サイズ(アンテナ除く)
W90 x D100 x H116 (mm)
重さ
500 g以下
通信ペイロード(NICT開発)
(重量 500g)
(2機中継, 符号化率1/2)
GPS利用
ペイロードは簡単に
入れ替え可能
通信用地上局(NICT開発)
12
これまで実証実験実績
一般空域において、合計
120回以上、70時間以上
のフライトを実施
※各実験ごとに航空法に基づく飛行許
可申請あるいは通報の手続きを実施
香川県坂出市(さぬきメディカル
ラリー・災害救助訓練)
2014年5月
北海道芽室町(農業ICT応用実験)
2014年6月
北海道大樹町(長距離通信実験等)
2013年6月、11月
東北大学青葉山(災害時中継実験、
東北大学オープンキャンパス連携実験)
2013年3月、7月、2014年7月
福島県富岡町(居住制限区域でのイノシ
シ捕捉実験)2014年10月
大利根飛行場(テレビ東京WBS取材)
2013年12月
湘南国際村(フライト訓練)
2013年3月
和歌山県白浜町(災害時中継実験・デモ、
NHKニュースウォッチ9取材)
2014年3月
13
公開実証実験(2013年3月25、26日)では、準備期間も含め、
計5日間にわたり28回、延べ12時間のフライトを実施しました。
離陸場所(不整地緩斜面)
東北大学青葉山キャンパス
あおば食堂付近より
(対地高度約400m)
14
フライト軌跡の例
青葉山キャンパス
離発着ポイント
(野球グラウンド)
新キャンパス造成地
630m
離発着ポイン
離発着ポイント
ト
(不整地緩斜面)
200m
200m
東北大学青葉山キャンパスでのフライト
(高度差による2機同時飛行@対地高度
400m))
400m
北海道芽室町でのフライト
(4点ウェイポイント飛行とサークルパターン飛行
@対地高度150m)
15
長距離中継の検証
•
•
(2013.7 仙台市)
地上局展開場所は避難所周辺を基本にして選択
無人機は青葉山キャンパス造成地上空を飛行、飛行高度は海抜750m
厚生年金病院付近
(14700名収容)
海抜高度750m
4km
93.7kbps
12km
32.6kbps
6km
七郷中学校
(8800名収容)
東北大学
片平キャンパス
(5300名収容)
無人機旋回ポイント
(東北大学青葉山キャン
パス)
10km
83.7kbpa
8km
49.2kbps
郡山中学校
(11400名収容)
通信速度はUDP伝送時の実効データ計測結
果の平均値(送出レート100kbps)
荒浜小学校
14km
太平洋
16
2014年3月 白浜町での災害時通信実験
実験内容
孤立地域との間の無人機お
よびナーブネット(NICT
開発の耐災害メッシュネッ
トワーク)経由での災害情
報発報、安否確認、および
IP電話
実験協力
白浜町役場、白浜消防本部
無人機(Puma-AE)
(旧空港上空の対地高度500mを自動旋回し、
災害時に孤立地域との間での通信確保を行う)
無人機地上局
(高さ2m程度、三脚で設置)
想定孤立地域
旧南紀白浜空港跡地
想定災害対策本部
耐災害メッシュネットワーク(ナー
ブネット)基地局(三脚設置型・
ソーラ可搬型)
スマートホン上で安否確認
等の災害通信アプリ動作
17
発動発電機
大規模災害時の適用例
白浜町役場、消防本部等
(高台)
孤立危険
地域
(渓谷沿い
の集落)
~14 km
太平洋
震源想定
方向
山岳地域
高度 200 ~ 400m
中学校
18
現用空港に隣接した空域での実験
メッシュ可搬
基地局基地局
飛行範囲
(最大対地高度500m)
1400m
航空法第99条の2第1項ただし書きに従い、大
阪航空局関西空港事務所より交付された飛行
許可書に基づき、南紀白浜空港出張所と密に
連絡を取り合いながら無人機の飛行を実施
旧南紀白浜空港
120m
南紀白浜空港
19
さぬきメディカルラリーへの参加(2014.5 坂出市讃岐五色台)
超高速インターネット衛星
「きずな(WINDS)」
電話網
インターネット網
Puma AE(海抜高度800mを飛行)
鹿島宇宙技術センター
搭載カメラ
映像および
トリアージ
データ伝送
離着陸には塩田
跡地を利用
リアルタイム
映像伝送
上空からの現場
映像を取得
車載衛星地球局
想定対策本部
災害対策本部にて現場状況
(地上映像、上空からの映
像)を一括して把握
列車事故想定現場
(海抜高度350m)
PUMA-AE搭載カメラ映像
(リアルタイム)
トリアージ現場
ICT農業への活用
無人飛行機の定期巡回
フィールドサーバ
広域に分布するログデータの収集
(+可視・赤外映像の収集)
21
野生動物分布調査への応用の基礎検証
(2014.10 福島県富岡町:居住制限区域)
小型無人飛行機
(1機旋回、ログデータを収集し、ダウンリンク)
制御リンク
(実験では5km進出)
150MHz帯
GPS位置ログ情報
線量情報等
430MHz帯
車載データ
モニタ局
実験協力:福島県鳥獣保護センター
(株)サーキットデザイン
イノシシの行動を利用した、山
林の線量分布を長期測定
人が容易に立ち入れない場所
(高線量等)での追跡が可能
地上制御局
地上制御局を中心に無人機1機で直径20km以上カバー
動物軌跡イメージ
GPS内蔵150MHz帯首輪型発信機
Puma搭載受信機
22
飛行ルート
2014.10.11
(市街地上空)
送電線
送電線
国道6号線
イノシシ位置
推定場所
(帰宅困難区域)
送電線
Puma飛行ルート
(片道約5㎞)
送電線
(居住制限区域)
富岡第一中学校グラウンドを離陸上昇中
離発着場所
(富岡第一中学校グラウンド)
常磐自動車道
福島第二原発.
23
無人航空機(UAS)を制御するための
無線周波数の動向(ITU)
 世界無線通信会議WRC-12 議題 1.3(5GHz帯の分配)
5030 MHz~5091 MHzに、新たに航空移動(R)業務
(国際標準の航空システムに限る。)を割り当て
 世界無線通信会議WRC-15 議題1.5(FSS帯の利用を検討)
決議 153 (WRC-12)により、FSS(固定衛星通信業務)
の帯域でUASの衛星CNPCリンクの使用を審議中
※これを受けて、国際民間航空機関(ICAO)でも,国際標準の航空システ
ムをターゲットに、UASの適用範囲を含め議論中。近距離で運用される産
業用ラジコンや小型マルチコプター等が含まれるかは未定。
従来の航空機や人の安全を十分に確保し、悪用されないよう、
かつ限られた資源である周波数を有効に利用し、UASが社
会・経済に役立つように普及を図り、健全な産業育成を進め
ていくための基準作りが必要。
電波資源拡大のための研究開発予算に
基づくプロジェクトの推進
無人機の制御(CNPC)リンクが切れ
るリスクとその解決策
 建物、樹木、山などによる遮蔽
 距離減衰
 他の無線等からの干渉
周波数の有効利用を考慮し、限られた送
信パワーと周波数選択の自由度を前提
複数ノード(無人機搭載局や地
上局)を連携・強調させて、電波
を制御対象まで到達させる
干渉回避のための運用条件・必
要機能を確立する
複数無人機と地上ネットワークが連携して無線制御の信頼性を向上させる例
UAS-1(中継機)
UAS-2(被制御機)
中継
無線のリンク切れへの耐性と柔軟性強化 → 5GHz帯制御リンクの無線資源
有効利用と高信頼化の実現
UAS制御端末
中継
中継
25
無人航空機システムの利用技術に関する関係機関連絡会
背景及び目的
2012年の世界無線通信会議(WRC-12)において、5030~5091MHzが
無人航空機システム(以下「UAS」という。)を制御する周波数として分配
され、現在は、2015年のWRC-15に向けて衛星からUASを制御する周波数の
分配に関しITU-Rで研究中。
一方、現在、各機関でUASの利用に関する研究や検討が実施されており、
この分野での検討が加速。
このような状況を踏まえ、UASの開発や利用機関でのニーズを把握した上
で、UASの周波数利用に関する研究開発の推進に寄与。
体制
東大、東北大、北大、JAXA、電子航法研、産総研、原研、消防研、KDDI研、
NEC、三菱電機、日立、JUAV
オブザーバ(総務省、国土交通省、経済産業省、警察庁、文科省、防衛省)
※ 座長 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻 教授 鈴木 真二
(事務局 NICT)
検討内容
スケジュール
時期
内容
・国内外の動向及び情報共有
・利用ニーズに伴う要求条件
・導入に向けた無線システムの課題
など
第1回目は10月31日に実施
第3四半期(10月~12月)
第1回連絡会
第2回連絡会
報告
第2回
運営委員会
第4四半期(1月~3月)
第3回連絡会
報告
第3回
運営委員会
報告書
とりまとめ
26
今後の展望
本システムは,各自治体の防災関連機関等が拠点ごとに運用可
能な体制をとることで,大規模災害時の迅速な通信確保や災害
監視,環境監視への応用が期待されています.
災害発生時の運用体制、平常時からの運用と設備維持の方法な
どについて、検討が必要です。
(自治体としては新潟県に導入例あり)
な
今後は,新たに割り当てが検討されている周波数を対象として、
複数の無人飛行機や地上局を同時運用することによる通信距
離・通信範囲の拡大や通信速度の高速化,無人機を安全に運航
するための電波の観点からの高信頼化と安定化,無線局同士の
電波の共存と共用,Puma-AEの活用による利用分野の拡大と無
人機の運用ノウハウの蓄積などの課題に取り組んでいきます.
27
ご清聴ありがとうございました。
28
Fly UP