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河川堤防安定性評価検討事例

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河川堤防安定性評価検討事例
河川堤防安定性評価検討事例
土木設計室 藤井 次郎
1. はじめに
河川堤防の安定性評価は、「中小河川における堤防点検・対策の手引き(案)」(以下「手引き」)
を参考に、当該地の特性を考慮して堤防の安全性検討に十分な地盤情報を得られるように調査
し、安定性の評価を実施した。
堤防に求められる機能は、
① 耐浸透機能(浸透に耐える機能)
② 耐浸食機能(浸食に耐える機能)
③ 耐震機能(地震に耐える機能)
の 3 項目が挙げられるが、本検討では、そのうち ① 耐浸透機能に関する安定性照査につい
て行い、安定性照査手順は「手引き」に従った。
図-1.1 浸透に対する安全性の照査の手順
2. 検討条件の整理
1) 検討断面位置の設定
詳細な安定性評価をする前段階として、堤防カルテが作成されている。堤防カルテには、
大まかな土質条件(旧河道位置等)および被災履歴、さらには背後地の状況等が整理されてい
る。
こうした既存資料を参考に、対象区間内の検討断面位置を設定する。
2) 土質調査
堤防断面方向の土質調査位置は、状況に応じて決定するが、基本的には、川表、堤防上、
川裏の 3 地点で実施される場合が多い。調査深度も堤防高の 3 倍程度を目安として、既存調
査データ等も参考に、適宜 決定する。
土質試験は、物理試験、強度試験、透水試験等を必要に応じて行う。
3) 検討断面の設定
堤防の測量横断図に、土質調査結果に基づく土層断面、各土層毎の土質定数等の設定を行
う(図-2.2 参照)。
4) 外力条件の設定
外力条件は、インプットデータとして、降雨量、河川水位モデルを設定する(図-2.1 参照)。
1mm(事前降雨)
10mm(洪水時降雨)
既往最大雨量 or 計画雨量(1/50)
の大きい方の日雨量より設定
既往の洪水実績から設定
図-2.1 照査外力の概念(降雨と河川水位波形の組合せ例)
記号
Bs1
Bs2
Ag
地層名
粘性土礫混じり砂
粘性土質砂
玉石混じり砂礫
2) 設定土質定数
1) 評価断面モデル
水系名
19
17
18
γt(kN/m )
3
単位体積重量
DL=0.00
堤防高の10倍程度
0
25
1
40
30
30
.0
1:2
d20=0.26mm
→ k=1.4×10-2(cm/sec)
備 考
図-2.2
3.3×10-2 透水試験結果
8.5×10-5 透水試験結果
1.4×10-2
物理試験
物理試験
7.2m
AS
AS
11
00
Nsw
Nsw
Nsw
Nsw
100
100 200
200
500
500
500
2.00
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
0.00
2.00
4.00
6.00
8.00
10.00
12.00
0
1
11
00
Nsw
Nsw
100
100 200
200
事 前 降 雨 1mm× 180h
平水位 3.02
100
500
500
150
時間(hr)
計画高水位
継続時間
1hr
(210.0hr , 0.0mm)
(210.0hr , 10.0mm)
200
250
(237.35hr, 3.02m)
最大水位
低下勾配
0.17m/h
300
様式-5
総 降 雨 量
180mm
降 雨 強 度
1mm/hr
総 降 雨 量
300mm
洪水時降雨
降 雨 強 度
10mm/hr
基 準 地 点 名
対 象 洪 水 数
8
計画高水位継続時間
1hr
河川水位
水 位 低 下 速 度
0.17m/hr
(外水)波形
基 本 波 形 93.60m・hr
波形面積 評価対象断面
131.90m・hr
(1K700)
事前降雨
乱した状態での力学試験用試料の採取と
土質試験(砂質土、礫質土)
乱さない状態での力学試験用試料の採取
と土質試験(粘性土)
現場透水試験
平水位 3.02 (計画河床高)
高水位継続時間
55.73h
(181.62hr, 3.02m)
安全性の詳細評価条件図
H.W.L.=7.67(設計高水位)
(209.00hr, 7.67m) (210.00hr, 7.67m)
(180.0hr , 1.0mm)
1K700
河川水の存在 調査対象断面
計 画 降 雨 10mm× 30h
(180.0hr , 10.0mm)
玉石の混入率 10~15%
計画高水位 H.W.L.=7.67
50
Wsw(kN)
Wsw(kN)
Sd.NO.4
GH=0.00m
dep=0.64m
玉石の混入率 0~10%
1:2
.0
3) 設定外力条件
Wsw(kN)
Wsw(kN)
Wsw(kN)
▽現況堤防高 8.62
Sd.NO.1
GH=0.00m
dep=3.25m
9.1m
モデル化範囲
安定性の詳細評価条件図(1K700)
Ag層
Bs2層
Bs1層
4.2m
1K700(左岸)
詳細調査対象区間 左岸:0K000~3K000 区間 NO.
粘着力 内部摩擦角 透水係数
φ(°)
k(cm/sec)
C(kN/m2)
河川名
降雨量(mm)
水位標高(m)
4.7m
3. 照査基準
安定性評価は、各種基本式を用いた 2 次元 FEM 解析により実施した。
・ 非定常浸透流解析
・ パイピングに対する安定性
・ 円弧すべり法による安定計算
その結果をもとに、表-3.1 に示す浸透に対する安定性の照査基準を照らし合わせ、安定性評
価を行う。
表-3.1 浸透に対する安全性の照査基準
項 目
すべり破壊(浸
潤破壊)に対す
る安全性
パイピング破壊
(浸潤破壊)に対
する安全性
部 位
照査基準
裏のり
Fs≧1.2×α1×α2
Fs;すべり破壊に対する安全率
α1;築堤履歴の複雑さに対する割増係数
築堤履歴が複雑な場合 α1=1.2
築堤履歴が単純な場合 α1=1.1
(新設堤防の場合
α1=1.0)
α2;基礎地盤の複雑さに対する割増係数(特殊要因の有無)
被災履歴あるいは要注意地形がある場合 α2=1.1
被災履歴あるいは要注意地形がない場合 α2=1.0
※築堤履歴の複雑な場合:築堤開始年代が古く、かつ築堤
が数度にわたり行われている場合や履歴が不明な場合
要注意地形:旧河道、落掘跡などの堤防の不安定化につ
ながる治水地形
表のり
Fs≧1.0
Fs;すべり破壊に対する安全率
被覆土
な し
i<0.5
i:裏のり尻近傍の基礎地盤の局所動水勾配の最大値
被覆土
あ り
G>W
G;被覆土層の重量
W;被覆土層基底面に作用する揚圧力
表-3.2 裏のりのすべり破壊に対する安全率の基準値 (基本値 1.2 に対する割増考慮)
被災履歴あるいは要注意
地形あり
被災履歴あるいは要注意
地形なし
築堤履歴が複雑
築堤履歴が単純
割増係数
α1=1.2
α1=1.1
α2=1.1
1.58
1.45
α2=1.0
1.44
1.32
4. 解析結果
解析結果を表-4.1 に整理する。
解析モデル図及び浸透流解析結果(流速ベクトル図)を図-4.1 及び図-4.2 に参考に示す。
解析結果より、パイピングに対して安全率を満たさない結果となった。
不安定箇所は、川裏側法尻付近で発生しており、これは、透水性のよい礫層が堤防下の浅い
深度で分布していることから、河川水位上昇時に礫層を通った浸透水が、堤防川裏側法尻部で
上向き(鉛直方向)に水が吹き上がる現象(パイピング)が発生する危険が高いことを表している。
表-4.1 解析結果一覧表
解 析 条 件
①表のり(急低下時)
すべり安全率
パイピング検討結果
②裏のり(満 水 時)
<計算時点説明図>
計算値
基準値
判 定
1.58
1.00
OK
2.35
1.45
OK
2.23
0.50
NG
備 考
② 裏のりÎ満水時
(計画高水位の終了時刻)
水位波形
① 表のりÎ急低下時
(初期水位まで低下した時刻)
図-4.1 解析地盤モデル図
図-4.2 浸透流解析結果(流速ベクトル図)
5. 今後の検討課題
今回の堤防詳細結果では、パイピングに対する対策工が必要となる結果となった。
過去に漏水実績があることからも、今回の照査結果は妥当な結果と判断できる。
よって、今後の検討課題としては、浸透に対する堤防強化対策を検討する必要がある。
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