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メディアフォーラム速報 - COPD情報サイト GOLD
12月3日(水)17時より、東京・丸の内にて開催された 「メディアフォーラム2008」 GOLD日本委員会委員長・福地 義之助氏 世界COPDデー推進日本大会 メディアフォーラム2008が、2008年12月3日、東京・丸の内で開催された。 司会を務めたGOLD日本委員会委員長の福地義之助氏は、 「肺年齢を知ることからはじめよう、 いきいきシニア ライフ∼かかりつけ医は40代からの肺機能測定を!∼」という今年のテーマに寄せて、 「COPDは多くの人が 罹患する可能性がありながら自覚症状に乏しく、スパイロ検査をしなければ診断が成立しない病気。また、肺 だけではなくCOPDは全身の疾患にも関連している。予防や治療は可能なので、ぜひ肺の機能に関心を持って、 肺年齢の検査を実施・受診してほしい」と訴えた。 その上で、喫煙者の肺では異常な炎症反応が進行するとともに、テロメアが短くなって細胞の老化が進んで いること、長寿タンパク質の発現が減少していることなど、最近のCOPD発症と老化に関連する研究を紹介し 「COPDを考えることはシニアの健康を考えることと同じ」とした。さらに、COPD患者や健康高齢者に対する 食事療法や運動療法の研究の進展にも触れ、 「COPDの研究や啓発活動を通じてシニア世代の健康増進に 寄与していきたい」と強調した。 COPDの発症が高齢者に多い理由として、喫煙履歴の蓄積だけ ではなく、老化の遺伝子的な影響を示唆するエビデンスが最近 増加している。つまり、COPDを考えることは、単なる一疾患に 対するだけでなく、広く一般市民の健康生活やアンチエイジング に寄与することと考えられ、それが今年の講演テーマの背景と なっている。今年から日本呼吸器学会が提唱している新しい 指標「肺年齢」を軸に、 シニアの全身の健康を考えた「メディア フォーラム2008」の講演内容についてレポートする。 「肺年齢」で早期発見 肺の病気COPD 相澤 久道氏(久留米大学医学部 内科学講座 呼吸器・神経・膠原病内科部門 教授) 相澤氏は、 ガス交換を担う肺の臓器としての特徴から、肺は全身の健康を反映する鏡 であることを述べ、 しかしながら、肺の健康への世の中の関心は非常に低いことを指摘 した。 「血圧やコレステロールの正常値を知っている人は多いが、肺機能を気にする人 はほとんどいない。未だスパイロメトリーの普及が進んでいないことが問題である」とした。 その上で、 日本呼吸器学会が2008年から普及を進めている「肺年齢」という新たな 指標の意義について解説した。肺年齢は、性別、身長、 そしてスパイロメトリーで得られる 1 を基に、標準回帰式の逆算式にて算出する。 「肺機能を年齢に置き 1秒量FEV(L) 換えることによって、例えば図1の場合、 あなたは1秒量が正常値より500mL低い、 では なく、 あなたの肺年齢は実年齢より21歳も高い、 と伝えることができ、 より理解と実感を 得られやすい」とそのメリットを強調した。 実際にスパイロメトリーで肺機能検査を行った症例を肺年齢に換算してみると、喫煙 者の肺年齢は実年齢より5∼7歳高く、呼吸器疾患がある場合その重症度が増すほど 差が大きくなった(図2)。実年齢と肺年齢に20歳以上の差があれば異常を見つける 指標になり得ると考えられる。さらに、COPD患者の肺年齢が、効果的な治療によって 若返るとのデータも得られており、患者に治療効果を実感させることができる。 「近い将来、家庭用簡易機器の発売も予定されていることから、肺年齢チェックの普及 で、COPDの早期発見だけでなく、普段から肺の健康に関心を持つ人の増加を期待 したい」と相澤氏は結んだ。 日本の一般生活者の肺機能と肺年齢 ∼世界COPDデー COPDチェックイベントデータの解析∼ 植木 純氏(順天堂大学医療看護学部 専門基礎内科学 教授) 植木氏は、2003∼2007年の5回にわたり、世界COPDデー推進日本大会の一環として 一般市民を対象に実施したCOPDチェックイベントのデータ解析結果を報告した。これ は2008年11月に開かれた第13回アジア太平洋呼吸器学会学術集会(APSR)にて 発表したものである。 2003年の東京を皮切りに、京都、福岡、札幌と主に大都市の街頭にて一般歩行者に スパイロメトリーと問診票の記入を実施。解析対象となった2,972例のデータから、気流 制限を有する人の割合は8.0%、40歳以上では11.0%であった(図1)。これは日本の COPD疫学調査NICE Study(気流制限10.9% / COPD 8.6%) とほぼ同等であった。 4都市での地域差は特に見られなかった。喫煙歴別には、非喫煙者が4.7%、現在喫煙者 が9.6%、過去喫煙者が11.8%と、喫煙歴のある人で気流制限の頻度が有意に高かった。 18歳以上の2,950例について肺年齢を算出し実年齢との比較を行ったところ (図2)、 喫煙歴のある人は肺機能障害がなくても肺年齢が実年齢より8歳高かった。気流制限 のある人を重症度別に見ると、重症度が高いほど年齢差は大きくなった。これは、外来 患者のデータで肺年齢を算出した相澤氏の結果と同様である。また、ROC解析により 気流制限検出の目安となる年齢差を検討したところ、肺年齢・実年齢差20歳以上が、 気流制限検出の指標となることが示唆された。 「NICE Studyと同様に40歳以上の10人に1人に気流制限を示す肺機能障害が認め られ、COPDの頻度は高いものと推測される。40歳以上で喫煙歴のある人には、肺年齢 チェックの積極的な活用を」と植木氏は述べた。 喫煙とシニアの健康(1) 喫煙が招く COPDと全身の病気 三嶋 理晃氏(京都大学大学院医学研究科 呼吸器内科学 教授) 三嶋氏は、 さまざまな全身疾患への喫煙の影響について紹介した。全身のがん(図1)、 脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患、胃潰瘍やクローン病などの消化器疾患、骨そ しょう症や糖尿病などの内分泌代謝疾患の発病リスクが、喫煙により高くなる。妊娠中 の喫煙は、胎盤の血流を変化させ、有害物質を蓄積して、早産、低出生体重児、口唇 裂などの先天性異常のリスクを大きく高める。 呼吸器疾患への影響は非常に大きい。常に日本人の死亡原因の上位に位置する肺 がんは、喫煙の寄与が男性90%、女性60%で、重喫煙者ほどリスクが高い。IPF(特発 性肺線維症)の発症率は喫煙によって2.5倍になり、 さらにひとたび罹患すれば肺がん の発症率を25倍に上げる。喫煙は、気管支喘息患者の吸入ステロイド反応性を減弱 させ、 アレルギー性鼻炎患者の喘息発症リスクを高める。COPDの原因の90%は喫煙 によるものである。COPDの場合、喫煙開始から発症まで20∼30年かかるため(図2)、 日本では今後もしばらくCOPD患者数が増加すると考えられる。 受動喫煙の危険性にも留意すべきである。副流煙は低温度で燃焼するため主流煙より 有害物質の濃度が高い。受動喫煙で心筋梗塞の相対危険度は21%上昇、肺がんの 相対危険度は24%上昇、小児の場合喘息発症の危険性が上昇、COPDの危険因子 になるとの発表がなされている。 「喫煙は明らかに万病の元であり、全身の健康を脅かすものであることを、 われわれは 強くアピールしていくべきであろう」と三嶋氏は締めくくった。 喫煙とシニアの健康(2) 禁煙で守ろう、肺の健康 西村 正治氏(北海道大学大学院医学研究科 呼吸器内科学分野 教授) 喫煙が肺年齢を高め、全身の健康にも大きな影響を及ぼすとの発表を受けて、西村氏は禁 煙の重要性と禁煙治療の最近の進歩について紹介した。禁煙が肺機能に与える影響に ついて約4,000人を対象に調査した 「Lung Health Study」 によると、 禁煙を継続すれば1年の うちに肺機能が回復するが再喫煙で再び低下する (図1) 。禁煙すればよいことをわかって いながら、 タバコをやめられない背景にはニコチン依存症がある。WHOではタバコの使用を 「精 神作用物質による精神及び行動の障害」 と分類し、 ニコチン依存症を病気として認めている。 日本の禁煙治療は、2006年4月に「ニコチン依存症管理料」が新設されたことで大きく変 わった。対象患者の条件は、 「タバコ依存症スクリーナー( 」TDS) でニコチン依存症と診断され、 ブリンクマン指数 (=1日の喫煙本数×喫煙年数) が200以上、 直ちに禁煙することを希望し 所定の禁煙治療プログラムへの参加に同意しているなどである。治療施設は、禁煙治療の 経験を有する医師や専任の看護職員がいる、喫煙状況をチェックする呼気一酸化炭素濃 度測定器を備えている、医療機関の構内が禁煙であるなどの条件を満たす必要がある。禁 煙治療に用いられる薬は、薬局でも入手できるようになったニコチンガムやニコチンパッチに 加え、2008年には全く新しい概念の経口薬が使用可能になっている。この薬剤はこれまで のニコチン代替療法とは異なり、 ニコチン受容体に結合することによりニコチン作用を遮断 して喫煙による満足感を減らす一方で、 ドパミンを遊離して離脱症状やタバコに対する切望 感を軽減する。調査では7割近い禁煙成功率となっており、 高い有用性が期待される (図2) 。 「あらゆる死因に関する全死亡リスクと比べても、 喫煙によるリスクは圧倒的に高い。多くの人 が禁煙に成功することが望まれる」 と西村氏は禁煙治療における医療者の役割を強調した。 世界COPDデー2008の活動について COPDの世界的な研究・教育組織であるGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)は、毎年 11月中の1日を「世界COPDデー」と定め、医学会、専門医、患者団体などとの協力の下、 さまざまな社会啓発活動を推進して いる。2008年は11月19日が世界COPDデー。″ Breathless not Helpless(息切れをあきらめないで)″をグローバル テーマに、世界各国でさまざまな活動が展開された。 日本では、順天堂大学医学部呼吸器内科客員教授の福地義之助氏が委員長を務めるGOLD日本委員会が中心となり、 「肺年齢 を知ることからはじめよう、 いきいきシニアライフ∼かかりつけ医は40代からの肺機能測定を!∼」をテーマに3つの活動を実施 した。まず、 ホームページ(www.gold-jac.jp/)による一般市民および医療関係者への情報提供の充実を図った。次に、昨年 までの5年間にわたり同活動の一環として実施してきたCOPDチェックイベントのデータを解析し、日本の一般生活者の肺機能 と肺年齢に関する調査結果として学会発表した。3番目に、報道関係者向けイベント「世界COPDデー推進日本大会 メディア フォーラム2008」を、12月3日に東京で開催した。 世界COPDデー2008の活動 「肺年齢を知ることからはじめよう、いきいきシニアライフ」 ∼かかりつけ医は40代からの肺機能測定を!∼ qホームページによる一般市民および医療関係者への情報提供(www.gold-jac.jp/) w日本の一般生活者の肺機能と肺年齢に関する調査結果の学会発表 2003∼2007年に実施した世界COPDデースパイロチェックイベントで得られた約3,000人のデータを解析。APSRで発表 eメディアフォーラム2008の開催 GOLD日本委員会ホームページ 一般向けコンテンツ ¡肺年齢の解説と、スパイロ検査の動画説明 ¡COPDの疾病解説 ¡世界COPDデーおよび過去の活動について ¡COPD関連統計データ 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