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9月号(PDF/926KB)
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9 月号 ■NOTICIAS■ 国際協力機構アルゼンチン駐在員事務所 ■NOTICIAS■
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今号の INDEX
01 プロジェクト便り
「日・亜パートナーシッププログラム(PPJA)第 9 回計画委員会の開催」
山本フアン・カルロス 次長
02 ボランティア便り
「鉄鋼生産技術支援」
石川勝 シニア海外ボランティア
03 日系社会便り
「ウチナーンチュネットワークをつなげるために」
池田紘子 日系社会青年ボランティア
04 アルゼンチン文化 コーナー
「アルゼンチンにおける日本文化」
山本フアン・カルロス 次長
05 安全対策コラム
「アルゼンチン(特にブエノスアイレス)のタクシー事情」
小野由美 企画調査員
06 人事往来
「着任・帰任挨拶」
07 最近の動向
JICA日程
01 プロジェクト便り
『日・亜パートナーシッププログラム(PPJA)第 9 回計画委員会の開催』
山本フアン・カルロス
次長
日本政府は、途上国政府との間で合意された他の途上国・地域の開発努力を共同で支援するための総
合的枠組みとして、12カ国とパートナーシッププログラムを締結しています。アルゼンチンは、メキシ
コ、ブラジル、チリとともに、中南米地域における締結国の1つであり、今年は、PPJAにかかる合意文
書を両国外相が署名して10周年を迎える年です。
去る 8 月 18 日、当事務所会議室にて、日・亜パート
ナーシッププログラム(PPJA)第 9 回計画委員会が開催
されました。会議には、LEVI 局長を始めとするア国外
務省国際協力局関係者、日本大使館関係者、JICA 関係
者、ラプラタ大学獣医学部、国立農牧技術院(INTA)
、
国立工業技術院(INTI)
、国立公園局等、第三国研修実
施機関関係者 31 名が参加し、PPJA の昨年度の事業実績
のレビュー、今年度の事業計画の確認を行うとともに、
PPJA の今後の方針、第三国研修の質の向上に向けた意
見交換、地域別研修「南南協力での研修実施能力強化」
の参加者による成果発表などが行われました。
LEVI 局長は、開会の挨拶にて、
「日本は、アルゼンチンが実施する三角協力の初代のパートナーであ
り、また、ペルーで実施した『家畜衛生強化プロジェクト(2003~2006)
」が南南協力・三角協力のグ
ッド・プラクティスの事例として国際的に認められていることなどにより、日本の協力を高く評価し、
過去 JICA の協力によって実施した『PCM モデレーター育成プロジェクト」を通じて培われた能力が、南
南協力・三角協力事業の質の向上に役立っており、アフリカのアンゴラを含め、多くの国で PCM ワーク
ショップを開催することができた」など、JICA による三角協力やドナー化支援の有効性について強調さ
れました。
他方、野口所長は、「南南協力・三角協力実施に関す
るパイオニアである JICA として、特に最近、南南協力・
三角協力が国際協力の重要な形態として認められるよ
うになったこと、また、南南協力に関する制度枠組みの
改善、情報整備の充実、評価・モニタリングに関する能
力向上等に関する域内の取り組みが活発化しているこ
とは、非常に喜ばしいことである」と主張しました。ま
た、昨年終了したラプラタ大学獣医学部と共同実施した
「広域協力を通じた南米南部家畜衛生改善のための人
材育成プロジェクト」が、他の4プロジェクトとともに
2011 年の JICA 理事長表彰を受賞したことも報告されま
した。
他方、日本大使館の馬場書記官は、両国関係の緊密化が引き続き継続していることを強調され、また、
「日本外務省は今年度の国際協力重点方針を発表し、対中南米では引き続き「パートナーシップ・プロ
グラムの推進」が謳われ、引き続き PPJA を重視していく方針が確認されたことは喜ばしい」と主張し
ました。
2010 年度においては、第三国研修を 4 件実施し、56 名の研修員を受け入れ、また、共同プロジェク
ト 2 件を実施し、第三国専門家を 20 名派遣し、研修員
を 9 名受け入れました。このほか、個別第三国専門家
を 2 名派遣しました。
2011 年度においては、第三国研修を 5 件、共同プロ
ジェクトを 1 件実施することになっております。
また、本会議においては主に下記事項について確
認・合意されました。
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JICA は、昨年度、ハイチに特化して実施した第三国
研修「貧困人口向け食糧安全保障プロジェクト」を
特設コースとして位置づけ、当初合意したとおり、
中南米諸国向け第三国研修を 5 年間実施することとし、第 5 回目を 2013 年に実施する。
ア国外務省と JICA は、共同プロジェクトの実施において、域内で最も開発水準が低いハイチ等、及
び、アルゼンチン政府が南南協力にて優先しているパラグアイとボリビアへの協力を優先する。
アルゼンチンで実施する第三国研修にアフリカ諸国(アンゴラ、モザンビーク)からの参加者の受
入を通じ、これら諸国に対する南南協力・三角協力開始の意義について確認。
ア国外務省は、今年度より、アルゼンチンで実施する第三国研修にかかる航空賃を全額負担するこ
とを約束。
ア国外務省は、今年より、第三国研修終了後にもニーズがある場合、域内各国向けにアルゼンチン
国内で独自の予算で実施する研修コースを実施機関とともに開始することを確認。
2011 年は、PPJA 締結 10 周年であることから、10 年間の成果を取り纏め、広報誌を作成するととも
に、セミナーで発表し、幅広く広報を実施。
また、ア国南南協力・三角協力基金(FO-AR)の、BORIOSI 調整官によるア国政府による南南協力・
三角協力に関する最近の動向に関する発表があり、その要点は以下の通りです。
 過去数年間に亘り、550~600 件(人数単位)実施してきた。2010 年には、2009 年の国際金融危機の
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影響を受け、実施件数は約 500 件程度に減ったが、今後は、550~600 件実施する。
FO-AR 事業を開始した当初は、対象国として中米諸国を優先していたが、現時点では、南米統合(メ
ルコスール、ウナスール等)を念頭に置き、隣接国であるパラグアイとボリビアを最優先国とする。
南米以外では、外交的な観点から、ハイチ、英語圏カリブ諸国を優先しており、また、アジア、ア
フリカ諸国への協力も開始する。
FO-AR の優先分野は、行政・ガバナンス、人権、持続的開発分野の 3 本柱とする。
案件の規模については、これまでは、単発の個別案件が中心であったが、インパクトの拡大を目指
し、最低 2 年間のプロジェクト型(年間平均 5 人の専門家の派遣、或いは、研修員の受入を伴う)
の案件を実施する。
FO-AR の広報に力を入れており、ロゴ・マークや名称(水平協力基金→南南協力・三角協力基金)の
変更、ホームページのデザインの更新等を進める。
更に、出席者間で行われた意見・情報交換を通じ、以下の点について、情報共有されました。

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
第三国研修「レンジャー育成(2005~2009)
」に引き続き、現在、
「中南米地域自然保護官育成(2010
~2012)
」を実施中であることから、域内関連機関とのネットワークが強化され、メキシコ、ブラジ
ル、コロンビアから南南協力が要請され、FO-AR プロジェクトとして実施する予定。
第三国研修「貧困人口向け食糧安全保障プロジェクト」への参加により、エクアドルからの要請が
あり、FO-AR 案件として実施する。
昨年終了した第三国研修「Aster データを利用した
リモートセンシングトレーニング(2006~2010)
」
に関連し、参加者を通じてエクアドルとキューバか
らの協力要請があり、FO-AR プロジェクトとして実
施することとなった。また、ベネズエラ、ボリビア
からも要請が上がった。
地域別研修「南南協力での研修実施能力強化」への
参加者(2 名)による成果発表が行われました。2009
年度と 2010 年度のコースに参加した INTA の HIDALGO
より、1)サンフアン市にアクティブ・ラーニング・セ
ンターを立ち上げ、2011 年 10 月に活動を開始する予定である、2)昨年実施したハイチ人向け第三国研
修「貧困人口向け食糧安全保障プロジェクト」にモニタリング・評価のコンポーネントを導入し、研修
内容を充実した、3)今年実施する第三国研修「貧困人口向け食糧安全保障プロジェクト」には研修で
学んだアクティブ・ラーニングのコンポーネントも取り入れる、4)シニア海外ボランティア(2 名)の
指導により、実施している PRO HUERTA 事業に発芽効率の向上、灌漑の効率化、コンポスト共同製造等
が実現でき、キャパシティ・ビルディングに役立てた、5)国内で実施している PRO HUERTA 事業にもモ
ニタリング・評価のコンポーネントを導入した、との報告がありました。また、両名は、第三国研修関
係者全員が共有できるよう、第三国研修の質の改善に向けた提言を含む報告書を作成すること約束しま
した。
本会議を通じ、ア国政府による南南協力・三角協力への積極的な取り組みについて再確認でき、また、
各関係者にとって貴重な情報が共有できた、有益な会議であったと確信しております。
02 ボランティア便り
『鉄鋼生産技術支援』
石川 勝 シニア海外ボランティア(職種:製鋼)
サン・ニコラスのアルゼンチン鉄鋼協会(Instituto Argentino de Siderurgia 以下 IAS)に 2010 年 4
月から赴任中です。IAS は 40 年程前に主要製鉄会社の要望と海軍工廠(軍の工場)の指導で設立された
鉄鋼開発研究所です。その後、軍が手を引き民間の NPO・NGO 組織となりました。事業内容は鉄鋼周辺
の金属・非金属・排ガス・排水の機器及び化学分析と各種鉄鋼製造のプロセス開発です。つまり鉄鋼と
その周辺の物質分析及び鉄鋼の造り方を研究しています。
私のミッションは鉄鋼製造技術開発に寄与するための日
本技術の移入支援です。赴任前に青年海外協力隊員と一緒
に訓練を受けましたが、青年はもとよりシニアボランティ
アからも鉄鋼や製鋼の文言や意味について多くの質問を
受け、会社での新卒者への対応と同じく興味が持たれる様
に説明を繰り返しました。日本刀、鉄橋、鉄瓶などの鉄の
在る暮らしは馴染みが無くなったのでしょうか?約 50 年
前に建設された東京タワー(H:333m)と建設中のスカイ
ツリー(H:634m)を比較すると、後者には周辺環境への
配慮から脚部の平面積を最小にする為の新デザイン(足元
は三角形で上に行くにしたがって円形になる)と高張力鋼
の多用という点で大きな差があります。東京タワーの使用鋼材重量が 4.000 トンに対して、スカイツリ
ーは 8 倍の 32.000 トンもの鋼材が使用されています。この様に“鉄が文化を支える”との信念で 41 年
間“一意専心”を座右の銘にしてきました。この間 1972 年からの韓国を始めとする技術支援を含め海
外で 10 年前後仕事をし、今回初めてスペイン語圏での業務です。
鉄は古くはヒッタイトの鉄器文化から人類の歴史に深く関与してきました。この基調は古今東西変わ
らず、第二次世界大戦後に復興を目指した日本は 1970 年代前半に 2 大強国米国・ソ連に鉄鋼の総生産
量で迫り、世界シェア 17.1%と先進国に対峙、その 20 年後 1994 年に GDP で世界比 17.9%とピークを
迎えました。21 世紀に入り、BRICS を始めとする発展途上国
の経済発展の結果、日本のシェアは減尐しています。また、
近年成長の著しい中国は、広大な領土と 14 億人を超える人口
増加に因るインフラの拡大等から、20 世紀末に鉄鋼総生産量
で世界一となりました。更に天文学的な鉄鋼生産量増加を記
録しながら、昨年は GDP で世界第 2 位となっています。古代
から親しまれた鉄鋼の特性は今も進化を続けています。40 年
前の最強靭鋼はピアノ線で靭性(じんせい:粘り強さのこと)
1500MPa 程度でしたが、最近では自動車タイアのスチールコ
ード類等で 3000MPa を遥かに超え、4000MPa に及ぶ強靭鋼が
実用化されています。これは一般鉄鋼材の 10 倍にもなる靭性
です。自動車の車体もアルミや樹脂類への代替が何度も試みられて来ましたが、高強度と高加工性の共
存する次世代材の実用化が進む鉄鋼が主流を譲りません。即ち鉄鋼の性質は変化を続け、鉄鋼材料が“よ
り薄くより軽く”なっています。激しく離着陸する戦闘機に代表される航空機脚材等の重要保安部品で
も唯一の素材です。この様な製品分野で、日本は半世紀に亘り世界をリードしてきました。更に工場立
地を原料、製品が大量且つ低廉に輸送可能な臨海部(君津、大分、千葉、福山等)に集約し、世界トッ
プレベルの生産技術を確立、原材料やエネルギーの殆どを海外調達しながら激しい企業間競争を繰り返
し高い国際競争力を維持しています。一方中南米地域の鉄鋼生産は一部主要国に限られていますが成長
著しいメキシコ、ブラジルを含め全体で日本の半分、世界の 5%程度です。
アルゼンチンは製鉄生産量に限れば世界比 0.4%強の中
進国です。アルゼンチン建国と同様に歴史が浅く、1990 年
に民営化され、薄板品種専業の一社が国内市場を独占し創
立 50 周年を迎えています。国営製鉄時代には技術的にも特
殊な鉄道用レールも生産しており、当時の技術レベルは高
かったと想像されます。ブラジル奥地コルムバの良品位鉄
鉱石を世界第四位の大河パラナを利用、パラグアイを縦断
し消費地に近い河沿いロサリオ、サン・ニコラス、カンパ
ーナ各市に輸送して鉄鋼製品化しています。パラナ河沿い
の製鉄所は、河を媒体とした世界に類を見ない 4 万頓級の
輸送船舶が運用可能で、巨大船が往く光景はおとぎの国を
観る様です。各工場はいずれも広大な敷地に立地していま
す。
鉄鋼業創設時の中心的企業ソミッサの経営トップは、海軍要人が歴代就任し運営に当ってきました。
サン・ニコラスを河沿いに横断、市中心部から旧国営製鉄所が位置するラマージョに至る大通りは、ソ
ミッサ創立の将軍サビオの名前で呼ばれています。製鉄業に従事する技術職員は選ばれた人材で、主要
な製造ライン担当者は英国、米国(シェフィールド、カネギーメロン、マックマスター大学等)の留学
経験も持ち、近年の情報化を助けとして高い技術知識を保有している人材がいます。韓国が工業化の道
を辿った当初に似ています。
(1970 年代前半に日本、米国、ドイツに留学経験のある技術者にも会いま
した。)配属先 IAS は周辺の鉄鋼会社から技術調査、技術開発を受託しています。
IAS のプロセス開発部職員は鉄鋼会社からの中途入社もいますが、地元サン・ニコラス周辺出身者で
且つ国立工業大学(Universidad Tecnológica Nacional 以下 UTN)の卒業生が多くを占めています。職
員 10 名の半数が IAS の奨学金を享けるか、IAS に勤務しながら履修した卒業生です。更に半数近くが
UTN で教鞭を執っており、サン・ニコラス UTN と IAS
は密接な関係にあります。職員が UTN 助教授として教
鞭を執り、優秀な学生を新入職員として採用し、採用
された職員が経験を重ねて UTN で教鞭を執るようで
す。以上の循環から職員の素養は非常に優秀です。今
後更に IAS 職員と鉄鋼会社職員が交互に移動し合いな
がらキャリアパスを積み重ね資質を磨いて欲しいと
思います。
しかし民営化実施は 20 年前の事であり、鉄鋼会社、
IAS 共々ラインマネージャー及び幹部は国営時代入社の 40 歳以上の人材が占め、これらの年代は民間企
業経験が皆無で熾烈な競争意識が希薄です。
“会社の運営や将来方向は政府の意向で決まる”
“自動車用
鋼板は品質及び生産難易度が高く販売有利品種では無い” 等の発言が打ち合わせの席上でもなされま
した。更にハイパーインフレ時“契約後製品納入まで何度か価格改訂が繰り返された”とある会社から
製品を購入していた企業経営者が話していました。契約後に価格が一方的に改訂されるのは、日本では
考えられません。
IAS は若手主体でもあり、30 年以上前の日本でのベビーブームとマイカーブームに似ています。30 歳
代では出産と運転免許・自動車取得の話題が中心です。自動車生産は年率 30%程度の高い成長率を維持
しています。自動車産業は欧米、日系等の外国資本で占められ、車体製造に必要な鋼板は品質難易度が
高い理由で輸入品が多く使われています。国内材は一般的な鋼板規格は満たしていますが、車体製造用
材料に関してはワールドクラスの技術を未だ持っていません。薄板独占の企業でも自動車用材料はこれ
からの商品で、高機能自動車材の製品化が企画され、必要な技術開発及び製造ラインの新設、改善、改
造も検討中であり、当 SV にも技術協力が要請されています。
アルゼンチン国内動向とは別に、鉄鋼国際企業は多国間で統合を繰返し、多国籍企業として尐数化し
ています。多国籍企業化した企業集団がグループ内
企業を見た時、アルゼンチンの鉄鋼会社に市場の競
合原理に対応できる競争力があるのか、更に巨大集
団化したグループ企業の中で投資を優先し得る環境
にあるのか、今後の成長への分岐点だと思われます。
政治目的から一部独占的国内企業を保護した事で、
鉄鋼産業だけではありませんが、激化する国際競争
から取り残された感があります。
中長期的な展望にたって、自分達が近未来に必要
とするものを生産し、弛まなく国民総生産を増加さ
せるような世論誘導が期待されます。地理的環境及び人材の潜在的能力は周囲の競合地域に対して十分
に優位性が高く、長期的な視点での積極的投融資が望まれます。政府の民間企業への異常な関与や政府
に近い既得権益集団のエゴを封印し、マナウス等の関税特区ほどではなくとも、国際資本が進出し易い
環境を創り出すべきだと思います。日本も未曽有の大震災後不退転の意志をもって復興に立ち上がる事
が求められています。優秀な実務層を活用しつつ、政府がリーダーシップを発揮し国を導く機能を果た
すことが求められている点は、日本もアルゼンチンも同じです。
03 日系社会便り
『ウチナーンチュネットワークをつなげるために』
池田紘子 日系社会青年ボランティア(コルドバ、エイサー指導)
アルゼンチンにおける日系人口は約 35,000 人から
40,000 人と言われていますが、その 7 割が沖縄県系人で
す。沖縄県は日本でも有数の移民県であり、南米を始め、
北米や世界各国に約 40 万人の県系人が住んでいると言わ
れています。
その世界の「ウチナーンチュ」
(沖縄の人)が 5 年に 1
度沖縄県に集うイベントがあります。その名も「世界の
ウチナーンチュ大会」
。今年 10 月に第 5 回が開催されま
す。
この世界のウチナーンチュ大会の呼びかけをするため
に、8 月 24 日(水)から 26 日(金)まで、沖縄県から「南
「世界エイサー
米キャラバン隊」がアルゼンチンを訪れました。説明会 「世界のウチナーンチュ大会」
大会」のちらし
で放映された前大会のVTRでは、文字通り、世界から
集まったウチナーンチュが思い思いの表現でパレードを
する様子や、琉球舞踊やエイサーのステージ、ウチナーネットワークを利用してビジネスを展開させる
ためのシンポジウムの様子などが映っていました。満面の笑みでイベントに参加する人たちの姿から
は、全身で沖縄を満喫しているのが伝わってきました。
このウチナーンチュ大会の魅力を、
「来たらわかる!」
と熱弁していたキャラバン隊でしたが、参加者の表情
はまさにそれを物語っていました。
こうした沖縄との架け橋として欠かせない存在が、
在亜沖縄県人連合会(COA)です。今年は COA 創立 60
周年であり、25 日(木)に記念式典が行われました。
キャラバン隊含め、このために沖縄県議会議員や市町
村代表者が 40 名以上来亜した他、アルゼンチン国内は
もちろん、ペルー、ボリビアからも関係者が会場に駆
けつけました。COA の新垣定二会長は、沢山の方々の支
COA 60 周年式典で仲井眞県知事からの祝辞を
援があってこれまで活動ができてこられたことに謝辞
代読する上原副知事。
を述べられ、今後の抱負や、次世代へのネットワーク
継承の大切さを強調しておられました。世界のウチナーンチュ大会への参加者も続々と集まって来てい
る報告があり、沖縄から元気なエネルギーをもらい、沖縄県人社会の発展の糧としたいと述べられまし
た。
さて、ここから私の専門分野です。本大会に合わせて沖
縄で開催される、初めてのイベントがあります。
「世界エイ
サー大会」です。これは前年度開催した「全国エイサー大
会」を拡大・リニューアルして行われるもので、今年はブ
ラジルやロサンゼルスからの出演が決まっています。この
大会のために、『島唄』でよく知られている THE BOOM の宮
沢和史さんが『シンカヌチャー』を作曲し、コンテストの
課題曲として提供されました。
「シンカヌチャー」は、沖縄
の方言で「仲間たち」という意味です。歌詞に「島(沖縄)
につながって生まれた私達が踊れば、そこはうちなー(沖
縄)なんだ」という言葉があり、次世代のウチナーンチュ、 祝賀会で青年たちと「ミルクムナリ」を踊る
沖縄を愛する人たちのつながりを作っていこうという気持 沖縄キャラバン隊
ちが込められています。三線のリズムと宮沢さんの歌声は、
胸にスーッと入ってきて心地よく、そしてエネルギーを感じる一曲です。世界エイサー大会オフィシャ
ルサイトから視聴できるので、是非聴いてみてください。
http://www.eisa-okinawa.com/outline/theme-music.html
私はコルドバで日系人、アルゼンチン人の青年たちとエイサーをしていますが、エイサーを通してア
ルゼンチンと沖縄をつなげられるよう、メンバーと一緒にこの曲で振付を考えようと思います。「大切
なのは人とのつながり」今回来亜された上原副知事が何度も仰っていたことです。目指せ!来年の世界
エイサー大会出演!!アルゼンチンと沖縄の架け橋に。ヒーヤーサーサー!ハーイーヤー!
04 アルゼンチン文化コーナー
『アルゼンチンにおける日本文化』
山本フアン・カルロス 次長
日本の漫画、アニメ、ゲームは、世界市場に浸透し、すごい人気を世界中で得ていることから、これ
らが「世界に誇れる日本文化」であるか、或いは、これらが「日
本に帰属する文化的アイデンティティ」を構築するものかなど、
多くの議論を惹起していますが、現時点で日本を代表する文化で
あることは否定できないかと思われます。
アルゼンチンにおいても、日本の漫画、アニメ、ゲームのフア
ンは多く、また、これらの影響により、伝統文化(生け花、茶道、
書道、舞踊)日本語、最近普及している和太鼓、エイサー等への
興味も高まっており、日本語の学習者や日本武道愛好者(柔道、
空手、合気道、剣道)も増えております。また、この現象に並行
して、寿司を中心とする日本食ブームも確認され、ブエノスアイレス市内に存在する日本食レストラン
店舗数は、かつて多く存在していた中華料理店を大幅に上回っています。
しかし、アルゼンチンの場合、日本文化に対する関心が、近年高まっていることは間違いありません
が、今に始まったことではなく、上流階級や知識人を中心に、
19 世紀末から、日本文化に対する関心は高いものでした。ア
ルゼンチン人の目はヨーロッパに向いているとよく言われま
すが、日本文化に対する興味もあり、それは 19 世紀末のフラ
ンスを中心としたヨーロッパで見られた「ジャポニスム」
(日
本趣味・日本心酔のことを示す)と、100 年以上の歴史を有す
る日本人移民の影響によるものです。
また、20世紀の初め、日露戦争の際、アルゼンチン政府が
イタリアの造船所に建造発注していた装甲巡洋艦「リバダビ
ア」と「モレノ」を日本に売却して、それぞれ「日進」、「春日」と
命名され、旗艦「三笠」の指揮下に入り、日本海海戦で戦功を挙げたことはよく知られているとおりであ
り、両国海軍の交流は、文化交流にも貢献しています。日本側に、両装甲巡洋艦を引き渡す際のアルゼ
ンチン側代表であったドメック・ガルシア海軍大佐は、その後、日本海海戦において
観戦武官として「日進」に陪乗した後も日本に残り、膨大な報告書を本国に提出してお
ります。ドメック・ガルシア大佐は、1932~38年、海軍大臣となり、退役後は、アル
ゼンチン日本文化協会の会長として、国際文化振興会のブエノスアイレス代表を務め、
文学を中心に日本文化の普及に積極的に取り組まれた榛葉贇雄氏(シンヤ・ヨシオ)
とともに、当時の日本文化の普及に大きく貢献された人物です。このようなことから、
当時より、日本文学の広範な受容が行われ、現在、アルゼンチン俳句の創造という新
しい段階にまで至っております。
1906 年、ア国練習艦サルミエント号が、日露戦争直後の日本を訪問した際には、大
歓迎を受け、その一環として同艦上で行われた柔道のデモンストレーションは、艦長
に大きなインパクトを与え、ア国海軍でも柔道を学びたいとのことになり、急遽、柔
道の指導者を募集し、ア国における初代の柔道指導者(緒方先生)が同艦にて渡アし、
柔道の指導を開始しています。
20 世紀の初めは、アルゼンチンが最も豊かな時代でもあったことから、様々なルー
トで、日本から、多くの日本画、浮世絵、屏風、焼き物、着物、日本刀等がアルゼン
チン人の手に渡っており、最近まで、これらが骨董屋で見られました。
フランスにおいて最も有名な日本人画家である藤田嗣治(1886~1968 年)が、1932 年、ブエノスア
イレスで開催した個展は大きな賞賛で迎えられ、6 万人が個展に訪れ、1 万人がサインのために列に並
んだと言われており、また、ブエノスアイレスに滞在し、作品も残したこ
とから、アルゼンチンでもよく知られております。
1936 年には、著名な小説家・詩人であり、当時、日本ペンクラブの会長
であった島崎藤村が、国際ペンクラブ第 14 回大会に参加するため、画家の
有島生馬とブエノスアイレスに来られ、その機会にブエノスアイレス大学
哲学部で行った講演は、全国紙ラナシオン紙より、大きく取り上げられて
おります。
現在では、当地の書店で、村上春樹の「1Q84」(Book 1、2)と吉本ばな
なの「デッドエンドの思い出」が販売されており、過去にも両作者の多くの作品が翻訳されていること
から、最も知られている日本人現代小説家となっております。中高年層の知識
人の間では、三島由紀夫、川端康成などが良く知られており、書店では、未だ
に、これらの作品が多く見られます。
日本映画については、黒澤明監督の作品がカルト映画として熱狂的ファン・
グループにより、長年にわたって支持されている他、最近では監督として北野
武が最も評価されています。
こうして、
「オタク」、
「コスプレ」等のタームを、当地の日本文化ファンが理
解するようになっている現在に到るまでには、100 年以上の歴史があり、また、
日本文化普及における日本人移住者・日系人の貢献は大きいものがあります。
05 安全対策コラム
『アルゼンチン(特にブエノスアイレス)のタクシー事情』
小野 企画調査員
タクシーの台数は世界1,2を争うブエノスアイレスで比較的安全で便利な交通手段とされています
が、最近は巧妙な手口で客を騙す運転手が急増しています。その代表的なものとして、①おつりを偽札
で支払う②運転手が客に親しげに話しかけ、土地勘のない旅行者だと分かると目的地まで遠回りする③
高額紙幣(100 ペソまたは 50 ペソ)を手渡した際に、一瞬のうちに偽の 100 ペソ札にすり替えて、
「これ
は偽札だ!」と戻してくる事例、或いは 20 ペソ札や 10 ペソ札にすり替え、客に対して間違いを告げ、
客が疑いながらも自分の間違いだと思い込まされてしまう事例等があります。
このような悪質な手口に騙されないためには、ラジオタクシー(車の屋根に会社名入りのプレート有
り)またはレミス(ハイヤー)を利用し、小額紙幣で支払うようにすることでしょう。
06 人事往来
元ボランティア調整員 佐藤睦美
8 月末をもちまして、2 年間の任期を終了しました。皆様のご指導のおかげで、特に
問題なく任期を過ごすことができました。
在任中は大変お世話になりました。皆様のますますのご活躍をお祈りしております。
企画調査員(ボランティア)
小野由美
8 月 16 日に佐藤調整員の後任として着任しました小野由美と申します。これまでの
ボランティア調整員の職名が企画調査員(ボランティア)に変わりましたが、主業
務はボランティア支援です。ボランティアの皆さんが健康で安全に業務できるよう
にサポートしたいと思います。また、研修事業や日系社会支援事業等とボランティ
ア事業との連携も進めて行ければと思っていますのでどうぞよろしく
お願いし
ます。
インターン
和氣未奈
今年 8 月 23 日から 12 月上旬まで、インターンとして研修させて頂きます和気と
申します。現在京都大学大学院で環境経済学を専攻しており、アルゼンチンでの
開発と自然環境の関係や環境国際協力について知見を得、修士論文を構想するこ
とを目的にしています。2008 年に早稲田大学のスタディツアーで一度訪問した
ことがきっかけで今回受け入れて頂き、大変ありがたく思っております。日本と
はまったく違う文化や習慣を体感し、鍛えられる毎日です。至らない点ばかりで
すが、環境の変化に甘んじず有意義な研修となるようがんばりますので、ご指導
の程よろしくお願いいたします。
07 最近の動向
9 月 5 日~7 日: 中南米部南米課入倉ジュニア専門員(アルゼンチン担当)の出張
9 月 13 日~17 日:債権管理部調査団
9 月 15 日:和田 SV(環境プロジェクト運営)の単行本「プラスチックのリサイクル」の出版記念講
演会の開催(日本大使館広報文化センター)
9 月 27 日: シニア海外ボランティア 11 名帰国
平成 23 年 9 月-105 号
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