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系統事故時の故障点電流直流分 減衰時定数計算手法の開発
電中研報告 電 力 輸 送 03−038 系統事故時の故障点電流直流分 減衰時定数計算手法の開発 背 景 電力系統に短絡・地絡等の事故が生じると大きな故障電流が流れるが、ここには 交流成分の他に過渡的な直流成分が含まれ、一般には複数の時定数を持つ複合モー ドの形で減衰していく。故障電流の直流分は遮断器の能力を左右するほか、故障電 流検出用の CT 鉄心を磁気飽和させ 2 次側電流に誤差を生む原因となるため、詳細 解析が重要である。 故障電流直流分は、従来は X-R 分離法やインピーダンス法、4 パラメータ法等の、 減衰時定数を直接求める手法で計算されてきたが、十分な精度ではなかった。詳細 な計算については EMTP 等の過渡現象解析手法により実施されているが、通常の故 障電流解析データのみを用いて高精度に解析できる手法が望まれていた。 目 的 実効値解析(T 法*1)用の入力データを用いて故障電流の直流分のみを効率的に解 析し、系統各部の減衰波形を精度よく求めるとともに、同波形から減衰時定数を近 似する手法を開発する。 主な成果 1.故障電流の直流分解析において通常問題となる、三相短絡および一線地絡の各 故障に対して、減衰波形を精度よく算出できる手法を開発した。その特徴は以 下のとおり: 1)同期機の事故電流の直流分をシミュレーションによって解析する手法を系 統解析へ拡張適用することで、精度向上、計算時間の短縮化を達成した。 2)直流分が最大となるケースのみを効率的に実行できる。 3)数値安定性が良くローカル LC 共振等の不要な影響を受けない。 2.簡易系統において従来の各種手法と比較したところ、T 法用のデータを用いて いるにもかかわらず、EMTP 解析と合致する結果が得られることを確認した(図 1)。また、開発手法は実規模系統でも実用的な時間で計算できる(表1)。 3. 「背景」に述べた CT 鉄心磁気飽和による 2 次側電流計測誤差防止のため、一次 時定数τや過渡係数 K*2 による過渡特性の検討が行われているが、これらの計 算では、直流分を従来単一の指数関数で近似してきた。本研究では、さらなる 解析精度向上のため、複数の指数関数の重ね合わせによって直流分を近似可能 とした(図2)。また、任意個数の重ね合わせで表現された場合の K の計算式 を提案し、手法の妥当性を数値例で検証した(図3)。 *1 *2 T 法:当所既開発の短絡容量解析プログラム 過渡係数 K:CT の主磁束が通常動作時の何倍かを表す係数(電気学会技術報告(II 部)第 227 号「計器用 変成器(保護継電器用)における最近の技術的諸問題」) 100MVA 200MVA 270kV 100km 250MVA pf=90% Xd"=13% X/R=50 直流分(初期値で規格化) 1.2 X-R 分離法 1 EMTP と提案法(重なっている) 0.8 「精密計算」(下記の注を参照) 0.6 0.4 4パラメータ法 0.2 インピーダンス法 0 0 (a) 簡易系統 0.05 0.1 0.15 故障発生からの経過時間(秒) 0.2 (b) 提案法や従来法、EMTP からの直流分抽出結果等の比較 (注)図中「精密計算」:電気協同研究「電力系統における短絡電流計算法」第 20 巻第 6 号,昭和 39 年 図1 提案する波形解析手法の有効性 2.5 系統規模と計算時間 (使用 CPU:Pentium III 500MHz) 母線数 線路数 5 2 27 32 466 328 *)1 秒以内で終了 行列の次元 6 59 735 計算時間実測 −* 9秒 211 秒 数値シミュレーションの結果と時定数2個 での近似結果(ほとんど重なっている) 2 故障電流(pu) 表1 1.5 単一時定数での近似結果 1 0.5 0 0 単一時定数で近似した波形(太線) 0.05 0.1 0.15 時定数2個で近似した波形(細線) 時間(秒) 0.2 時定数2個の近似で は直流分が速く減衰 する実態を反映した 正しい波形となる (a) 1 次側電流の直流分近似が波形に与える影響 図3 研究報告 T03049 1次(2次換算)・2次電流(A) 120 100 80 60 40 20 0 -20 0 -40 -60 -80 単一時定数では CT 飽和により 2 次電 流が 1 次電流と異 なる波形となって しまう 1次(2次換算)・2次電流(A) 1次電流(2次換算)(A) 図2 0.05 0.1 時間(秒) 120 CT1次側電流(2次側換算):濃い太線 100 80 60 40 20 0 0.05 0.1 0.15 0.2 -20 0 -40 -60 CT2次側電流:薄い太線 -80 時間(秒) 120 CT1次側電流(2次側換算):濃い細線 100 80 60 40 20 0 0.05 0.1 0.15 0.2 -20 0 -40 -60 CT2次側電流:薄い細線 -80 時間(秒) (b) 2 次側電流に生じる誤差の違い キーワード:短絡電流,過渡直流分,減衰時定数 関連研究報告書 担当者 熊野 連 絡 先 (財)電力中央研究所 狛江研究所 事務部 研究管理担当 Tel. 03-3480-2111(代) E-mail : [email protected] [非売品・不許複製] c (狛江研究所・電力システム部) 財団法人電力中央研究所 0.2 減衰時定数近似の一例 複数の時定数を含む場合の過渡係数算出法の有効性 照久 0.15