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厚生労働大臣賞(PDF形式:210KB)
厚生労働大臣賞 世界初の再生医療等製品「ハートシート」の誕生を支えた産学官連携 重症心不全に対する再生医療製品-自己筋芽細胞シート 「ハートシート®」-の開発に係る産学官連携 ≪受賞者≫ ○国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 教授 ○国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 特任教授 ○テルモ株式会社 執行役員 澤 芳樹 宮川 繁 鮫島 正 ◇概要 ・重症心不全に対し、心臓移植や人工心臓治療に代わる心筋再生治療法を開発した。NEDOプロジェクトとし て、自己骨格筋由来筋芽細胞シートによる心筋再生治療法をテルモ社と共同で開発し、2007年にFirst in Humanとして補助人工心臓装着下の心臓移植待機患者に治療し、人工心臓からの離脱に成功した。 ・臨床研究で50名の重症心不全患者に本治療を行い、心機能・ 臨床症状・生命予後改善を明らかにした。 ・テルモ社への技術移転のもと、多施設企業治験が実施された。 テルモ社が薬事申請を行い、初の再生医療等製品、世界初の 心筋再生治療製品として、2015年9月に条件及び期限付き承 認をうけ、ヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハートシート」の 保険償還が承認され保険診療下での治療が開始された。 ◇連携の特徴・工夫 ・大阪大学の研究チームに「一つ屋根の下」的にテルモ社研 究員が参加し、NEDO・文部科学省(橋渡し研究事業)・厚生 労働省科学研究費の支援のもとに産学官連携で開発された。 ・大学では困難なGLPレベルの安全性試験や戦略的知財確 保をテルモ社が担当し、新しい薬機法での製造品質管理、 治験にスムーズに結び付け早期の商品化が実現できた。 ・非臨床試験から治験の申請までアカデミアが参加し、適切な プロトコルや評価方法についての議論が反映された。 産学官連携で実現した薬事承認 大阪大学で基礎・臨床研究が、テルモ社で多施 設企業治験が行われた。萌芽的段階から科研 費、NEDOプロジェクト、厚労科研の支援を受け、 早期承認制度を活用して薬事承認を受けた ◇連携の効果(連携によって可能になったこと) ・従来心臓移植や補助人工心臓等の置換型医療でしか治療で きなかった重症心不全に対し、心筋再生医療を世界で初めて 確立した。 ・リスクが少なく有効性の高い自己幹細胞製品の製造基盤技 術、細胞シート作成等の再生医療技術を確立した。 ・成人よりさらに移植を受けにくい小児重症心不全に対しても 適用を広げる研究を開始している。 自己骨格筋由来筋芽細胞シート 患者の筋肉から筋芽細胞を採取・培養し、 細胞シートを形成し、心臓に移植する。国 内・国外の患者の移植治療に成功 ◇社会・技術・市場等への貢献 ・高額な心臓移植や人工心臓などの重症心不全治療を避けうるため、国民医療費の削減が期待される。 ・自己細胞による再生医療品として安全性が高く、日本発世界初の技術として世界へのアウトバウンド展開 普及が期待される。世界中で急増する重症心不全患者に対して、本治療は医療イノベーション推進につな がり、世界への多大な貢献が期待される。すでに海外からの患者も受け入れて治療に成功しており、国際 医療貢献を果たすとともに、インバウンドの先駆けとなっている。 <用語解説> ※重症心不全 : 心筋梗塞などによって心臓が全身に血液を送り出すポンプ機能を果たせなくなった状態。最終的には薬剤が効かず人工心臓や心臓 移植しか治療手段がないため、莫大な治療費がかかる。 ※骨格筋芽細胞 : 筋肉細胞の由来となる細胞。この細胞が多数融合して筋細胞となる。細胞保護や血管新生を促す複数の生理活性物質(サイトカイ ン)を産生・分泌する。