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コンサルテーション症例検討 (女性生殖器領域)

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コンサルテーション症例検討 (女性生殖器領域)
症例 1
画像診断コンサルテーション推進合同説明会
第2部 平成24年度がん研究開発費女屋班研究報告会
コンサルテーション症例検討
(女性生殖器領域)
筑波大学 医学医療系 放射線医学
田中優美子
39歳 女性
• 主訴
• 1ヶ月間の便通障害(下痢/便秘)
• 現病歴
• 上記主訴で近医受診、骨盤内腫瘤・卵巣腫瘍疑いにて
診断依頼施設の産婦人科へ紹介された。
• 既往歴 特記すべき異常なし。
• 婦人科病歴 1回経妊 帝切出産
• 月経困難症なし。07年膣スメア異常なし。 • 最終月経は検査の14日前∼
• 身体所見
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Axial T2WI
• 内診上腫瘤は可動性に乏しい。
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Axial T1WI
Sagittal T2WI
Axial FST1WI
CEFST1WI
Dept. Axial
of Radiology,
University of Tsukuba
Coronal T2WI
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
診断依頼詳細
• 施設画像診断名
•
(1)直腸膣中隔内膜症病変
(2)頚管漿膜下筋腫核・腺筋腫
質問点
1) 由来はどう判断したらよいでしょうか。
直腸膣中隔か頚管背側か、あるいは卵巣なのでしょうか?
2) 上記鑑別診断は適切でしょうか、他に考えるべき疾患
はありますか。
3) 腫瘤内部構造は積極的に悪性を疑う構造といえるで
しょうか。
4) 両側卵巣の低信号結節が気になりますが正常卵巣と判
断して良いでしょうか。
Sagittal T2WI
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
コンサルタントの意見
左卵巣原発漿液性乳頭状腺癌 IIIc 期 • 鑑別診断として骨盤底の卵巣外子宮内膜症由来の腺
癌(卵巣癌取扱い規約で IIIc 期相当)。
• 既に播種しているので生検による被膜破綻をおそれ
る必要はないので、ダグラス窩 刺による腫瘍の針
生検にて卵巣型の腺癌であることが確認できれば卵
巣癌として治療を開始して良いと考えます。
Axial T2WI
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Normal-sized
ovary carcinoma syndrome
• 定義
•
•
腹膜腔内のびまん性(播種性)転移
卵巣は正常径、漿膜面に顆粒状変化があっても良い
• 4つの組織型が混在
•
•
•
•
Normal-sized
ovary carcinoma syndrome
• 定義
•
•
• 4つの組織型が混在
性腺外ミュラー管腫瘍
原発不明の転移性腫瘍
卵巣癌
•
•
性腺外ミュラー管腫瘍
原発不明の転移性腫瘍
卵巣癌
Feuer GA. Obstet Gynecol 1989;73:786–92
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
卵巣腫瘍の発生母地としての腹膜
-Secondary Müllerian System-
Müller 管は胎生6週に腹膜上皮の嵌入により発生
性腺外Müller管組織
•
腹膜腔内のびまん性(播種性)転移
卵巣は正常径、漿膜面に顆粒状変化があっても良い
• 4つの組織型が混在
•
•
•
•
腹膜中皮腫
Feuer GA. Obstet Gynecol 1989;73:786–92
Normal-sized
ovary carcinoma syndrome
• 定義
卵巣は正常径、漿膜面に顆粒状変化があっても良い
•
•
•
•
腹膜中皮腫
腹膜腔内のびまん性(播種性)転移
•広間膜内に好発、傍卵巣嚢胞の発生母地の一つ
•副卵管
•Müller管由来の上皮細胞を有する異所性組織
•卵管 endosalpingiosis
腹膜中皮腫
➡漿液性腫瘍(Most common)
性腺外ミュラー管腫瘍
原発不明の転移性腫瘍
• Müller管遺残
漿液性乳頭状腺癌
卵巣癌
Feuer GA. Obstet Gynecol 1989;73:786–92
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
=Extraovarian serous surface papillary carcinoma
•子宮体部 endometriosis
•
➡類内膜腫瘍・明細胞腫瘍
子宮頚部 endocervicosis
➡粘液性腫瘍
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
卵巣腫瘍の発生母地としての腹膜
-Secondary Müllerian System-
Müller 管は胎生6週に腹膜上皮の嵌入により発生
性腺外Müller管組織
•
• Müller管遺残
•広間膜内に好発、傍卵巣嚢胞の発生母地の一つ
•副卵管
•Müller管由来の上皮細胞を有する異所性組織
•卵管 endosalpingiosis
➡漿液性腫瘍(Most common)
•
=Extraovarian serous surface papillary carcinoma
子宮体部 endometriosis
•
➡類内膜腫瘍・明細胞腫瘍
子宮頚部 endocervicosis
➡粘液性腫瘍
フォローアップ情報
病理診断:漿液性腺癌
• コンサルトの結果を踏まえ急いでCT検査を施行。
S状結腸壁をはじめ、腹腔内に石灰化を伴う腫瘤が
•
•
多発し、両側卵巣にも腫瘤形成を認めた。大腸内視
鏡にてS状結腸病巣を生検し、漿液性腺癌と診断さ
れ総合的に卵巣由来と判断した。
大学病院へ転院し化学療法を施行したが奏功せずホ
スピスへ転院した
臨床経過は思わしくなかったが初回MRI画像の診断
としてコンサルトが非常に有用であった。
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
依頼施設より後日送られたCT
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Take Home Points
• 卵巣漿液性腺癌
• 原発巣より播種の方が大きいことが少なくない
• 消化器など他臓器癌の転移を否定することが重要
卵巣の大きさ,
形態は?
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
卵巣外,
腹腔内に腫瘤は?
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
症例 2
前医で施行の検査
43歳 女性
• 主訴:肛門痛
• 現病歴
• 2ヶ月前頃より主訴出現.近医の大腸内視鏡でRaに潰
瘍を伴う隆起性病変を認めたが,生検で悪性腫瘍検出
•
せず.
前医CT,MRIの所見で子宮頸部悪性腺腫の直腸浸潤と
診断を疑われたが,子宮頸部組織診でも悪性腫瘍検出
せず.
• 血液生化学データ:
• Hb 10.8mg/dl,その他異常値なし.
CA19-9は正常値.その
• 腫瘍マーカー;AFP, CEA,
他は未検.
Sagittal T2WI
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
前医で施行の検査
Colon Fiber
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Sagittal T2WI
Sagittal DWI
Sagittal T1WI
Axial CEFST1WI
Axial DWI
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Sagittal CEFST1WI
依頼施設での再検
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
診断依頼詳細
• 施設画像診断名:直腸癌の子宮頚部浸潤
• 質問点
1) 画像的に直腸粘液癌・子宮頸部浸潤で問題ないか?
2) 前医診断の悪性腺腫びしては浸潤傾向が強すぎると思
うが悪性腺腫及び他の婦人科系悪性腫瘍の可能性は?
3) 子宮内膜の肥厚は軽減しているので正常粘膜と考える
が、造影 T1WI で内部構造があり、内膜ポリープなど
も考えられる。上記腫瘍との関係は(原発巣の可能
性)は?
Axial T2WI
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
画像所見
• 病変の局在
• 直腸膣中隔→骨盤底の腹膜外腔→直腸粘膜下
• → 子宮頚部筋層 →子宮内膜腔(?)
• 病変の性状
• 脂肪織内や管腔臓器の内腔
•
微小な嚢胞を多数内包するT2WIで高信号の腫瘤
•
T2WIで低信号の充実性腫瘤
• 子宮や直腸の筋層内
Coronal T2WI
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
• 拡散制限は強くない
• FDG-PET でも強い集積はない
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
画像所見
• 病変の局在
• 直腸膣中隔→骨盤底の腹膜外腔→直腸粘膜下
• → 子宮頚部筋層 →子宮内膜腔(?)
• 病変の性状
• 脂肪織内や管腔臓器の内腔
•
•
微小な嚢胞を多数内包するT2WIで高信号の腫瘤
単純性子宮内膜増殖症や子宮内膜ポリープに類似
• 子宮や直腸の筋層内
•
•
•
•
T2WIで低信号の充実性腫瘤
子宮腺筋症に類似
拡散制限は強くない
FDG-PET でも強い集積はない
腺筋症/腺線維腫/腺肉腫
• 病理組織学的共通性
• +間質の非腫瘍性増生
単純性子宮内膜増殖症
•
子宮内膜ポリープ
•
子宮腺筋症
•
• 子宮内膜腺(の単純性増殖)+間質の良性腫瘍性増生
子宮腺筋腫
•
• +間質の悪性腫瘍性増生
子宮腺肉腫
•
• 画像所見
• 子宮内膜腔を占拠する大小の嚢胞を多数含む腫瘤
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
腺筋症/腺線維腫/腺肉腫
• 病理組織学的共通性
• +間質の非腫瘍性増生
単純性子宮内膜増殖症
•
子宮内膜ポリープ
•
子宮腺筋症
•
• 子宮内膜腺(の単純性増殖)+間質の良性腫瘍性増生
子宮腺筋腫
•
• +間質の悪性腫瘍性増生
子宮腺肉腫
•
• 画像所見
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
コンサルタントの意見
直腸膣中隔由来の性腺外腺肉腫
• 病変は直腸膣中隔の深部内膜症で、これに腫瘍を合
併しているか否かの問題。
• 腫瘤の性状から鑑別診断として腺肉腫、腺線維腫、
polypoid endometriosis が挙がる。
• 内膜腔を充満する病変は内膜ポリープにしては充実
性増殖が目立つので腺筋腫と考えるが、上記病変と
の連続性も疑わしい。
• 子宮内膜腔を占拠する大小の嚢胞を多数含む腫瘤
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Polypoid Endometriosis (1)
-定義Parker RL. Am J Surg Pathol 2004;28:285
• 歴史
•
Mostoufizadeh & Scully が稀な内膜症として提唱
• 定義
•
卵巣もしくは卵巣外子宮内膜症の漿膜面もしくは粘膜面
からポリープ状、腫瘍様に突出する構造
• 病理組織所見
•
•
•
良性、時に異型を伴う内膜腺様の上皮が良性内膜間質様
の間質を伴って増生
上皮・間質とも増殖期内膜に類似し、内膜腺は単純性増
殖症や嚢胞性萎縮、種々の化生を示すことがある
間質細胞は異型を示さない(腺肉腫との鑑別点)
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Polypoid Endometriosis (3)
-画像所見1994 Siegelman SE, et. al.
•
AJR 1994;163:357
Solid pelvic masses caused by endometriosis
Deep endometriosis + polypoid endometriosis
Douglas 窩、直腸・膀胱の漿膜面
1-5cm の T2WI で低信号の腫瘤, T1WI で点状高信号域
•
•
•
2006 Kraft JK, Clin Radiol 2006;61:198
•
はじめて polypoid end. としてMR 所見報告
内膜症性嚢胞の壁に発生したポリープ状の腫瘤
T1WI で低信号、T2WI で中間信号で乳頭状の形態
Tamoxifen との関連を詳述
•
•
•
2007 Onbas •
Nodular endometriosis
14例。臍内膜症や深部内膜症も混在
診断における DCE の有用性に重点
•
•
•
Abdom Imaging. 2007;32:451
正所性内膜と同様の Time intensity curve
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
Polypoid Endometriosis (2)
-臨床像-
• 罹患年齢
Parker RL. Am J Surg Pathol 2004;28:285
• 23-78歳(平均52.5歳)、60%は50歳以上
• 多くの症例でホルモン製剤投与中
• 罹患領域
• 卵巣、卵管、子宮漿膜面、膣漿膜面、子宮・膣傍組織、
大腸、腸間膜、大網、膀胱、尿管、後腹膜、
• 複数箇所の病変が稀でない
• 症状
• Mass effect によるものや不正出血が主
• 月経困難症や下腹部痛・腰痛,不妊は少ない
• 予後
• 外科的切除後、ほぼ全例が生存
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
性腺外子宮内膜症由来の腫瘍
• 局在
• 消化管:結腸、虫垂
• 泌尿器:膀胱、尿管
• その他:Douglas 窩、直腸膣中隔、鼠径部、胸腹壁
• 組織型
• 腺癌(特に類内膜腺癌、明細胞腺癌)
• 低悪性度内膜間質肉腫、腺肉腫
• Unoppsosed estrogen* との密接な関係
• Tamoxifen (乳癌術後)
• Estrogen 補充療法 (HRT)
•
*Prolonged estrogen stimulation without the balancing presence of progesterone
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
74歳,乳癌術後
乳癌再発予防薬
5年生存率↑
異時多発癌↓
•
•
•
内因性Estrogen ↓
子宮内膜
estrogen
antagonist
estrogen
agonist
Sagittal T2WI
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
まとめ
-コンサルタントを経験して-
• ひとり読影は思わぬ陥穽に陥ることがある
• 主病巣以外の副所見に診断の
•
•
•
播種・転移の方が大きな卵巣癌
(症例1)
転移性卵巣腫瘍
エストロゲン産生腫瘍による子宮の形態変化
• 診療科横断的な疾患群
• 他臓器に主病巣のある疾患(症例2)
•
•
子宮内膜症
腹膜偽粘液腫(原発巣の多くは虫垂)
• 多臓器を冒す疾患
•
•
病理診断:子宮内膜症
polypoid endometriosis の可
• 性腺外腺肉腫と
能性を示して患者と話し合ったところ、悪性腫瘍の
Tamoxifen
(non-steroidal antiestrogen)
内因性Estrogen ↑
フォローアップ情報
神経皮膚症候群など遺伝子異常
IgG4 related sclerosing disease など造血器疾患
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
確定診断がつけば切除との方針となる。
CT ガイド下生検の結果、病理診断は「子宮内膜症
の間質反応に矛盾しない」。
2ヶ月後の画像検査で変化なし。患者希望により転
医。
コンサルテーションにより治療方針の決定がスムー
ズに行われ,積極的に組織診まで行うことができ
た。
Dept. of Radiology, University of Tsukuba
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