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「The Specialists」平成26年10月発行分
The Specialists 東邦大学医療センター大橋病院 眼科 准教授 石田 恭子 緑内障治療 ―中途失明を防ぐために― 本邦における失明の第一原因は緑内障です。40歳以上では20人に1人が緑内障に罹患しています。 中途失明を防ぐために、緑内障の早期発見、薬物、レーザー、手術治療を専門に行っています。 ………… 1 緑内障とは 緑内障は、眼圧*上昇や神経の脆弱性などを原因として発症す る進行性の視神経萎縮と対応する視野障害を特徴とする疾患 で、十分な治療がなされなければ失明に至る可能性のある疾患 です。40歳以上の日本人の5%が緑内障に罹患しているとされ ますが、多くの場合は進行が遅く、また末期に至るまで中心視 力が保たれるため、発見が遅れることが多く、本邦における失 明原因の第1位となっています。 [*眼圧とは:角膜、虹彩、水晶体などの中間透光体を栄養する透明な血液 類似成分(房水)が眼内で作られ、線維柱帯から排出されますが、この房 水が作り出す眼内圧を眼圧と呼びます] 2 緑内障の早期発見 通常の検診では、眼圧測定による異常高値や眼底写真撮影によ る視神経の形態異常(萎縮)を医師が読影して緑内障の有無を 判定します。当科ではそれに加え、光干渉断層撮影装置を用い、 緑内障視神経萎縮の本体である神経節細胞層をミクロンの単位 で測定し、機能異常(視野異常)が出現する前の極早期に、緑 内障を診断することが可能です。神経節細胞は再生しないため、 できるだけ早期に発見し治療することで中途失明を防ぐことが 可能です。 3 緑内障治療 緑内障視神経障害進行の最大のリスクファクターは眼圧であ り、眼圧を十分下降することで、視神経症の進行を停止または 緩徐にできることを証明し、報告しています(文献1、2)。 治療には薬物、レーザー、手術療法があり、患者様にとって最 も侵襲の少ない点眼治療から開始し、必要な症例には、選択的 レーザー線維柱帯形成術を行います。 4 選択的レーザー線維柱帯形成術 (Selective laser trabeculoplasty; SLT) にリモデリングすることで、房水の排出を促進し眼圧下降を図 る治療法で、従来のアルゴンレーザーを用いた線維柱帯形成術 の約60分の1程度のエネルギー量で、同等の効果が得られてお ります。 5 緑内障手術治療 薬物やレーザー治療に反応せず進行する症例に対しては、手術 療法を選択します。当科では、患者様の緑内障病型、病期、眼 症状、生活習慣などを考慮し、隅角癒着解離術、線維柱帯切開 術、線維柱帯切除術、EX-PRESS併用濾過手術(文献3)、緑 内障インプラント手術(文献4) 、毛様体破壊術など(文献5)、 種々のタイプの緑内障手術治療を行うことができます。 6 緑内障白内障合併例に対する治療 緑内障白内障合併例に対する、緑内障白内障の同時手術や、緑 内障手術既往眼に対する白内障手術も施行しており、失明回避 だけでなく、質の高い視機能の保持を目指しています。 文献 1. Aoyama A, Ishida K, Sawada A, Yamamoto T. Target intraocular pressure for stability of visual field loss progression in normal-tension glaucoma. Jpn J Ophthalmol. 2010;54(2):117-23. 2. Komori S, Ishida K, Yamamoto T. Results of long-term monitoring of normal-tension glaucoma patients receiving medical therapy: results of an 18-year follow-up. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2014 [Epub ahead of print] 3. Maris PJ Jr, Ishida K, Netland PA. Comparison of trabeculectomy with Ex-PRESS miniature glaucoma device implanted under scleral flap. J Glaucoma. 2007;16(1):14-9. 4. Ishida K, Mandal AK, Netland PA. Glaucoma drainage implants in pediatric patients. Ophthalmol Clin North Am. 2005;18(3):431-42, vii. Review. 5. Ishida K. Update on results and complications of cyclophotocoagulation. Curr Opin Ophthalmol. 2013;24(2):102-10. SLTは、房水流出の主経路に存在する線維柱帯の色素細胞のみ に選択的にレーザーを照射し、より房水流出抵抗の少ない組織 診療のご予約は・ ・ ・ 病診連携室あてに「診察・検査FAX予約申込書」をお送り下さい。 病診連携室連絡先 病診連携室直通 TEL:03-3481-7385 FAX:03-3468-6191 外来診療日: 〔初診〕金曜日午前 〔再診〕火曜日午前・午後 東邦大学 医療センター 大橋病院 Toho Univercity Ohashi Medical Center 〒153-8515 東京都目黒区大橋2-17-6 電話 03-3468-1251 http://www.ohashi_med.toho-u.ac.jp/ 携帯用サイト http://www.ohashi_med.toho-u.ac.jp/m/ The Specialists 東邦大学医療センター大橋病院 整形外科 望月 雄大 医師 当院スポーツ整形外科では、スポーツ障害・外傷(ケガ)を中心に治療しています。スポーツ愛好家か らトップアスリートまで幅広く診察を行っており、競技レベルや種目などを考慮し、患者様と相談しな がら治療方針を決定しています。 ………… スポーツ選手は、日常生活のレベルでは不十分で、全身の機能 やパフォーマンスの向上が不可欠です。スポーツ選手には、手術 を行わない治療(保存的治療)が最優先です。保存的治療を行っ ても治療が困難な場合や、大きな怪我によって保存的治療が困難 と判断した場合にのみ手術療法を行います。当科での手術は関節 鏡を使ったものが殆どです。 今回は膝関節のスポーツ外傷でも多い、 前十字靱帯損傷と半月板損傷について紹 介いたします。 前十字靭帯損傷 前十字靭帯(ACL)とは 大腿骨の後方から脛骨の前方にあり、大 腿骨に対して脛骨が前方に移動したり、回 旋したりすることを制御しており膝関節の 当院での関節鏡システム 安定性を担っています。 受傷機転 スポーツ外傷の中でも頻度が高く、特にサッカー、バスケットボ ール、バレーボール、柔道、スキーなどでよく起こります。ジャ ンプの着地やターン・カッティング動作中に膝を内に捻ることで 生じ、膝が抜けた感じがします。 手術適応 まれに前十字靭帯が損傷していても装具を装着しスポーツ復帰可 能な場合があります。 しかし ・いつ膝崩れを起こすか分からない不安感 (apprehension) が強い ・頻繁に膝崩れを生じスポーツパフォーマンスが落ちてしまう ・ 今まで通りスポーツを行いたい、またスポーツ復帰をしたい という場合に前十字靭帯を再建します。 手術までの流れ 受傷後は疼痛や炎症により膝の可動域や筋力が十分でない事が多 いため、術前にリハビリを行います。機能が回復し患者様と十分 に相談した上で復帰時期などを考慮して手術を決定しています。 手術手順 1. 採腱 当院では通常、ハムストリングを ・2カ所の小さ 用い再建術を行っております。 な切開から関節 鏡を挿入し手術 半腱様筋腱が十分な長さ採取でき を行います。 た場合、薄筋腱は用いません。 ・脛骨内側の3 またスポーツの競技特性にあわせ cmの傷から腱を てBTBを用いています。 採取します。 2. 再建靭帯作成 採取した腱を2分割し、それぞれ2重折りにして腱を作成します。 3. 骨孔作成 ACL再建術には1重束再建法と2重束再建法があります。 正常なACLは前内側束(AMB) 、後外側束(PLB)の2つの束で できています。そのため元々のACLにより近似させるため、大腿 骨と脛骨に2つずつ骨孔を作成し再建します(解剖学的2重束再 診療のご予約は・ ・ ・ 病診連携室あてに「診察・検査FAX予約申込書」をお送り下さい。 病診連携室連絡先 病診連携室直通 TEL:03-3481-7385 FAX:03-3468-6191 建法) 。 また、大腿骨側の骨孔作成にもいくつかの方法があります。 ・経脛骨法 脛骨の骨孔を利用して大腿骨側の骨孔を作成する方法です。 ・経ポータル法(in-side out 法) 膝の皮膚切開部(ポータル)を利用して大腿骨骨孔を作成する方 法です。 ・out-side in法 特殊なガイドを利用し、外側から大腿骨に 骨孔を作成する方法です。 それぞれ利点・欠点などがありますが、大 腿骨骨孔を独立して阻害される事なく至 適な位置に作成できるため当院ではoutside in法を用いて手術を行っています。 4. 再建靭帯固定 作成した骨孔にそれぞれAM束とPL束を 通して一定の張力で固定します。 後療法、リハビリ 術後1wから部分荷重を開始します。約1 ヶ月で松葉杖なく全荷重歩行が可能となり ます。その後も術後期間や状態に合わせリ ハビリを行います。 術後約4∼5ヶ月で筋力測定装置を用い 評価を行います。 筋力評価を行い健側の8割程度の筋力が 再建後ACL あれば術後6ヶ月以降に競技復帰を開始します。リハビリの詳細 内容に関しては当科HPをご覧ください。 半月板損傷 半月板とは 大腿骨と脛骨の間にあり膝への荷重を分散させるクッションの役 割があり、膝の屈伸でスムーズな動きを助ける三日月型の軟骨組 織です。半月板損傷により正常機能が失われると2次的な軟骨損 傷や変形性膝関節症が進行する可能性があります。 半月板損傷の原因 スポーツなどにより膝を捻ったり衝撃が加わったりする事で受傷 する場合と、加齢により変性断裂する場合があります。 前十字靭帯損傷に合併する場合も多いです。 治療 保存療法と手術療法があります。 保存療法では内服やヒアルロン酸注射を行います。 保存療法に抵抗する場合には手術療法を行います。 スポーツを行っている場合には可能な限り半月板縫合術を行うよ うにしています。 損傷形態や損傷部位に応じ、out-side in法・in-side out法・allinside法を用いて縫合しています。 外来診療日:火曜日・木曜日午後 東邦大学 医療センター 大橋病院 Toho Univercity Ohashi Medical Center 〒153-8515 東京都目黒区大橋2-17-6 電話 03-3468-1251 http://www.ohashi_med.toho-u.ac.jp/ 携帯用サイト http://www.ohashi_med.toho-u.ac.jp/m/