Comments
Description
Transcript
足白癬(PDF:1.6MB)
私が体験した疾患とその病理 足白癬 1.診断名 足白癬(水虫) 2.診療機関名 皮膚科 3.罹患時期 平成9年8月頃(妊娠4か月目) 4.症状 (1)一般的症状、特徴的症状 (1)趾間型~ 足指の間の 皮膚がふや けたように白 く濁る。 (②)小水疱型~ 土踏まずや足 の縁などに小 水疱が多発す る。 (3)角質増殖型~ 足裏のかかと が厚くなり、 時にひび割れ する。 (②)自覚症状 (③)直接症状 左足の裏、土踏まずに直径8ミリ の水疱ができていた。 5.検査の種類と目的 (1)真菌検査は、ハサミ、 メス、ピンセットなどで 病変部を少量とり、苛 性カリ(KOH)液で角層 を溶かして、顕微鏡で 菌を見つける。 1~2分で結果がわか る。 (2)Sabouraud(サブロー)ブドウ糖寒天培地で培 養すると原因菌を決めることができ、病気の臨 床的特徴や治療経過を把握することができる。 (③)皮膚科医がルーペで、直接水疱を見て、 判断する。 6、初診時の予後判定 足白癬小水疱型、菌の寄生部位の表皮の入 れ替わる期間の間病巣部の抗真菌薬の濃度 を保てば治療できる。 足白癬は、軽症で最低3か月、 重症例では、1~2年かかる。 7、手当て・治療など (1)抗真菌薬の外用、または内服を用いる。 (2)経口薬は、大部分の爪および頭皮の感染、難 治性の皮膚感染、長期にわたる外用薬による治療 を好まないか、継続できない患者に用いる。 (③)朝、晩、2回外用抗真菌剤(フロリー ドDクリーム)をぬる。 8、疫学的背景 ○通称「水虫」と呼ばれる足白癬は、白癬菌患 者の半数以上を占める最も多い病型。 ○専門医の調査によると水虫患者は、日本人 の5人に1人、推定で2500万人に上回る。 9、疾患の法的背景 ○なし 10、疾患の病理学的分類 ○足白癬小水疱型は、炎症の浸出性炎にあたる。 11、病因の病理学的考察 (1)病因の分類上の位置 白癬は、真菌の一種である皮膚糸状菌が、皮膚 に寄生して生じるものである。 真核生物 原生生物(単細胞) 酵母(単細胞) 菌類(真菌) 糸状菌(多細胞) 動物(多細胞) 白癬菌 11(2)、病因の性質 白癬菌(水虫)は、人間や 動物など、皮膚の角質層 を、住処とするカビ(皮膚 糸状菌)の一種で、角質 の成分であるケラチンと いう蛋白質を栄養源にし、 人間のアカが落ちるほと んどの場所に生息してい るので、私たちの周りの いたる所に存在する。 11(3)、病変部の解剖と生理 表皮の厚さは、平均約2ミリ。構 成する細胞の95%は、表皮ケ ラチノサイト(角化細胞)である。 この表皮ケラチノサイトは、 表皮の最下層で分裂し、成熟す るに伴い上の層へ移行していく。 深部から4層に分類される。真 皮→表皮基底膜→基底層→有 棘層→顆粒層→角質層と配列 する。白癬は、浅在性真菌症と いわれ、寄生部位が表皮に限 局する。真皮以下は,深在性真 菌症という。 11(4)、組織・細胞のミクロのレベル における傷害の状況 皮膚の中では常に新しい細胞が生まれ、それが、皮膚 表面のほうへ押し上げられていく。固いタンパク質から なる角質層を作り、アカとなる。白癬菌は、えさとなる角 質層にのみ侵入し、その下に生きている細胞層には入 りこめない。角質層には生 きた細胞がいないので、異 物や侵入者を攻撃する免疫 機構も働かない。白癬菌は 菌糸を伸ばし、活発に角質 を食べて繁殖する。 しかし、菌糸が広がるにつれて、菌が持つ酵素や老廃 物が角質層の下の生きた細胞を刺激する。 すると、体の免疫が活発に働き始めて、はびこえる菌 糸を攻撃する。 炎症反応が起きて、かゆくなり、小さな水疱・ただれな どおなじみの水虫の症状が起きる。 11(5)全身への影響 11(5)全身への影響の関係 ○水虫を放置すると・・・ ①爪白癬(爪の水虫)→ 爪は、皮膚の角質が固く 分厚く変化したもの。足白 癬を放置すると爪にも感 染を起こし爪白癬を生じ る。固い爪の中までは、 塗り薬(外用剤)が十分浸 透しないので、内服を用 いた治療を行う。 ②頭部白癬(しらくも)→頭 髪、ひげなどの硬毛に寄 生して生じる。10歳以下 の小児がほとんど。最近、 格闘家の間でトンズランス 感染症が増加している。症 状は、病巣部の毛が容易 に抜ける。 ③股部白癬(いんきんた むし)→陰股に生じた白癬。 股の付け根に辺縁の盛り 上がったリング状の紅斑 ができる。 ④体部白癬(ぜにたむし) →頭・陰股部・手のひら・足 の裏を除く、生毛部(産毛 の生えている皮膚)に生じ た白癬。小型の類円形紅 斑が生じ、辺縁は、やや盛 り上がった丘疹ができリン グの形になり、強い痒みを 伴う。猫が原因のときもあ る。 ⑤二次細菌感染 足白癬になると、皮膚のバリアが弱くなるので、二次的な細 菌感染になりやすい。趾間型足白癬の合併症。指の股の部 分のジクジクとした滲出液の量が増え、足の甲からスネに かけて赤く腫れて痛みを伴うようになる。 それ以上悪化し、脚の付け根のリンパ腺が腫れたり、熱が 出て体がだるくなったりする状態を「蜂窩織炎」という。 二次細菌感染を生じた場合には、水虫の治療よりも細菌感 染の治療を優先する。できるだけ脚の安静を保ちながら、 抗生物質の点滴または内服を行う。重症の場合には入院 による治療が必要になる場合がある。糖尿病などの基礎疾 患のある人は重症化しやすいので、特にこうなる前に水虫 を治しておくことが必要である。 12、東洋医学的考察 ・妊娠中は、気を大量に消費するので、全身の気が足 りなくなる。この気が不足する状態を気病という。 その一つである「衛気」は、全身にくまなく分布し、体表 面を保護して、邪気の侵入を防ぐ防衛作用をしている。 その衛気が不足したこと。つまり、正気が弱くなったた め、邪気(白癬菌)が侵入し病気(水虫)になったと考 えられる。 妊娠した時の体の状態は、気病であり、気・血・津 液・精(正気)のバランスがくずれていることが多い ・気の減少により、推動作用が弱くなると「血」や「津液」が、体内 をめぐらずに停滞する。 ・妊娠による血の不足も重なり、貧血や足のひきつり(肝血)も 現れた。 →これは肝の病症に関係している。 ・津液のめぐりが悪いので、足のむくみ(浮腫)もあった。 →これは脾の病症に関係している。 ・水虫の皮膚症状や、 (脾が吸収した水分が津液で) 津液の循環には、肺の働きが 大きい。→これは肺の病症に 関係している。 よって、妊娠中は病気になりやすい。 (正気が弱く、外邪が簡単に侵入する) そのために、気のめぐりが悪ければ、内臓(とくに肝・ 脾・肺)の働きを整える。 血の流れが滞っているなら、血液をきれいにする。 津液が滞っているなら、全身の水分代謝をよくする など、気・血・津液・精のバランスが正常になるように 治療する。 13、一番伝えたいこと (1)「水虫≠足がかゆい」、とは、限らない。 痒みを伴わなかったり、小さな水疱だったり、 皮膚がカサカサと剥けた状態のものがある。 また、水虫と間違われやすい病気もある。 *異汗性湿疹、掌ショ膿疱症、踵のひび割れ、 接触性皮膚炎(かぶれ) (2)「水虫になってしまったかも・・」と感じたら、 きちんと皮膚科を受診する。 悪化するだけでなく、治療を長引かせることになる。 水虫になってしまったら・・・治療薬で治すことはもちろん (3)足を清潔にし、高温多湿をさける。 温度15℃以上、湿度70%以上は、危険! (4)家族への感染予防 感染源として可能性が高い共有するスリッパ サンダル、浴場の足拭きマットを頻回に取り換え 滅菌する。(家族とは別に使用する) 14、参考文献、ホームページ ・ ・ ・ ・ ・ ・ あたらしい皮膚科学、北海道大学医学部皮膚科 財団法人 日本皮膚科学会 メルクマニュアル あおよこ皮膚科クリニック アカデミアジャパン、水虫のすべて 白癬・com クラスの評価 4,6 ・簡潔で見やすいレポートで、説明もわかり やすかった。 ・よくまとめられていて、わかりやすかったです。 足だけでなく、全身に感染することもわかりました。 ・ 図が多く、とてもわかりやすかったです。 パワーポイントもとても見やすかった。 ・ 水虫の種類につて、もっと掘り下げてほしかった。