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21 乳汁排出のしくみと搾乳
乳汁排 出 の し くみ と搾乳 乳房中のほとん どの生乳は乳腺胞 と乳管内にあ り、オキシ トシンとい う乳汁降下ホルモンに よつて乳腺槽 と乳頭槽 に降下 して初めて搾乳可能にな ります。不適切な搾乳ではオキシ トシン をうまく放出で きなかった り、ア ドレナ リンが放出されてオキシ トシンの効果を打ち消 して し まうので、泌乳 の しくみを理解 して正 しい搾乳をすることが大切です。 1.生 乳 は 乳 房 の ど こ に あ る の ? 牛の乳房は4つ の独立した分房に分かれており、分房内部の構造は図1の ようになっています。 乳腺胞 は卵型 の嚢であ り、 この 内側 に生 乳 を合成 す る乳腺上皮細胞が あ ります。生乳 は乳 房 に送 られ る血 液 によって ここで連続的に合成 されてい ます。 合成 されたほ とん どの生 乳 はスポ ンジに水が貯 えられ るよ うに乳腺胞お よび手L管 内 (大 乳管 お よび小乳管)に 溜 まってお り、乳頭 槽 お よび亭L腺 槽 にある生乳 は 4分 房合わせて も2ι 弱に す ぎません。 また、左 右 の分房間には乳量差が あ りませんが、 前後では約 4対 6の 泌乳量の割 合 にな ります。 乳腺上皮細胞 図1 乳牛の乳 房の構造 と生乳生 成 (フ ィルポ ッ ト、 1992) 「生産 獣医療 シス テム 1 乳牛編 1」 よ り重引 2.平 L汁 排出の しくみを知 ろう 。 ノ (1)ォ キ シ トシ ン とは ? 前搾 りや乳頭清拭で乳頭が刺激 されると (乳 房ではあ りま せん !)、 脳下垂体後葉からオキシ トシンとい う、乳 腺胞か ら乳汁降下を促すホルモ ンが放出され ます。 オキシ トシンは血液 に乗 って乳腺組織 に運ばれ、乳 腺胞を 取 り巻 く筋上皮細胞を収縮 させ ます。 この とき乳腺胞に 貯溜 していた乳汁が押 し出されて乳腺槽 に降 りて きます。 41 オキシ トシン 図2 ォキ シ トシンの 働 き (イ メー ジ) (2)生 乳 が 搾 られ る し くみ 搾乳刺激プラス体外からの吸引力によっ て取 り出せ る生乳 (乳 腺 と小乳管 ) 搾乳 は ミルカ ー の陰圧だけで乳汁 を吸い取 つて いるよ うです が、実 は陽圧 (筋 上 皮細胞 の収縮 ) によ り乳腺胞 か ら押 し出された乳汁 を ミルカー に 乳房内 の牛乳 よつて吸い 出す ものです。オキシ トシンの働 きな しに搾乳で きるのは乳房 内の40%程 度 の乳汁で、 乳腺 と小乳管 内 にある乳汁 はオキシ トシンによっ 吸引力だ けで乳房 か ら取 り出せ る 生乳 (大 乳管 と予L房 乳槽 て押 し出され なければ搾乳 す ることがで きません (図 ) 3)。 図3 (約 40%) 乳房内の牛乳と牛乳排出の しくみ (大 島原図) DAIRYMAN臨 時増刊号 「次代は ミルクJよ り重引 図 4、 5は 乳頭刺激の有無 による血漿オキシ トシン濃度および搾乳速度の変化 の違 いを示 し ています。乳頭 に対 して適切な刺激が あると、オキシ トシ ン放出は刺激から 1∼ 2分 後 にピー クに達 し、 4∼ 5分 後 には終了します。乳頭刺激を省略す るとオキシ トシンの放 出は遅れ、 ピ ーク濃度が低 くな ります。図 5か らは、乳頭刺激を行 うと、行わない場合 よ りも搾乳開始 1∼ 2分 の搾乳速度 (1分 間当た りの搾乳量)力 S明 らかに速 くな り、搾 り終わ りも早 くなることが 分か ります。以上のことか ら、適切な乳頭刺激を与 え、オキシ トシン放 出に合わせて搾乳を行 うと、搾乳効率が高 まって短 時間で搾 り終 えることがで きるので乳頭へ の負担が少な くなると 考 えられ ます (過 搾乳等による乳頭へ の負担は牛が搾乳を嫌がるひ とつの要因です !)。 また、乳頭刺激からミルカー装着 までの時間が長 くなると搾乳 時間が伸びるとい う報告や乳 頭刺激を適切 に行 うことで 日乳量が 1.3kg増 加するとい う報告 もあ ります。 オキシ トシン放 出の受容体は乳頭 にあ り、搾乳刺激 として は乳頭へ の刺激が もつとも効果的 です。 搾 乳 速 度 つ 100 75 50 25 0 テイー ト ′カップ装着 分︶ U 血漿 オキ シト シ ン ︵ μン 記 ︶ 125 12345510 テイー トカップ装着後 の時間 図4 3 搾乳終了後 (分 ) 搾手し 刺激の有無による血漿オキシ トシン濃度の変化 MOMONGAN,V,G &SCHM:DTlG.H.(1970) 4 搾 手し 時 間 図5 5 (分 ) 搾乳刺激の有無による搾乳速度の変化 SAGi,R. ら (1980) (3)搾 乳作業 はゆ った り落 ち着 い て ヒステ リックな大声や棒でたた くことなどによって搾乳時に 乳牛が興奮 した り、不適切 な搾乳方法 などによって痛みを感 じ た りす ると副腎皮質よ り血 中にア ドレナ リンが放出され ます。 ア ドレナ リンはオキシ トシンの働 きを抑 え、乳汁降下を妨げる ので 「乳があがった」状態にな り、残乳が多 くな ります。 一度ア ドレナ リンが放出されると、その効果は20分 程度持続 す るので、搾乳 し直す には20分 安静 に してか ら乳頭刺激でオキ シ トシン放出を促 し、はじめか ら搾乳手順を行います。 してはだめつ〃 21 乳汁排出の しくみと搾乳 42