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ジャングルジム

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ジャングルジム
15
第3章
遊具による事故
3-1.遊具による事故の概況
厚生労働省による児童福祉施設等に設置された遊具で発生した事故調べ
(2001 目 10 月 29 日)より、遊具別の事故件数を表3-1に示す。この調査の対
象は、児童福祉法に規定する児童福祉施設等で、調査期間は平成 8 年度∼12 年
度の各年度である。すべり台、鉄棒・登り棒、雲梯による事故が多い。遊具別
事故内容を表3-2に示す。
表3-1.遊具別の事故件数(単位:件)
すべ
り台
鉄
棒・
登り
棒
雲梯
76
100
103
104
131
41
66
81
92
121
合計
401
構成比(%)
19.7
年度(平
成)
8
9
10
11
12
ぶら
んこ
ジャ
ング
ルジ
ム
箱型
ぶら
んこ
総合
遊具
トラ
ンポ
リン
跳び
箱・
平均
台
太鼓
橋
積み
木
その
他
38
43
49
67
85
40
42
54
49
54
28
31
25
41
43
20
29
35
34
28
11
16
21
31
28
9
18
20
26
28
6
7
13
20
22
5
8
10
9
17
3
6
6
4
6
63
79
91
127
153
340
445
508
604
716
282
239
168
146
107
101
68
68
49
25
513
2167
15.3
10.8
9.1
6.4
5.6
4.1
3.9
2.6
1.9
1
19.6
100
計
表3-2.遊具別の事故内容
滑り台
鉄棒・登り棒鉄
雲梯
ブランコ
ジャングルジム
箱型ブランコ
太鼓橋
トランポリン
跳び箱・平均台
積み木
滑り台や階段の途中から転落。頭を下にして滑り降り地面と衝突。
滑り台を逆方向から駆け上りバランスを崩して転落。
棒や登り棒にぶら下がっていて手が離れ落下
雲梯にぶら下がっていて落下、雲梯の上に昇っていて転落
ブランコからの転落・落下。動いているブランコから飛び降りて転倒。
他の子どもが遊んでいるブランコと衝突。
ジャングルジムの上から飛び降り転倒し、足を骨折。
ジャングルジムにぶら下がっていて落下し、足を骨折。
箱ブランコの外でブランコをこいでいたが、ブランコの勢いに付いていけなくなり転倒し、ブラ
ンコの踏み板と地面に頭や足挟まれる。
動いている箱ブランコから飛び降りようとして転倒し、踏み板と地面の間に挟まれる。箱ブラ
ンコと支柱の間に足を挟まれる
太鼓橋にぶら下がっていて落下。太鼓橋の上から転落。
トランポリンでジャンプしていて床に落下したり外枠に強打。
跳び箱から転落。平均台から落下。平均台を運んでいて足に落とす。
大型積み木に乗っていて、足を踏み外し又は積み木が崩れて落下。
事故の原因を表3-3に示す。また、原因別の事故内容を表3-4に示す。
16
転落・落下が過半数(57%)を占める。
表3-5に年齢別事故件数を、表3-6に性別の事故件数を示す。4∼6 歳で
事故発生件数が最も多く、男子の方が女子よりも事故件数が多い。
表3-3.事故の原因(単位:件数)
年度(平成)
8
9
10
11
12
転落・落下
転倒
衝突
飛び降り
挟む
その他
計
182
258
288
323
427
43
51
64
96
92
47
59
62
95
72
44
43
56
54
75
14
19
20
19
20
10
15
18
17
30
340
445
508
604
716
合計
1,478
346
335
272
92
90
2,613
構成比(%)
56.6
13.2
12.8
10.4
3.5
3.4
100.0
表3-4.原因別の事故内容
転落・落下
転倒
衝突
飛び降り
挟む
滑り台の途中や滑り台の上り階段の途中、ジャングルジムの上等から転がり落ちる。
ブランコの上から誤って転落。鉄棒、登り棒、雲梯などにぶら下がっていて、手が離れ
落下。
遊具に乗っていてバランスを崩す、マットに足を引っかけ転倒など
動いている遊具と衝突・接触したり床や地面に強打
ブランコ、鉄棒、登り棒、雲梯から自らの意志で飛び降りたが、着地に失敗。
箱ブランコの踏み板と地面の間、遊具と支柱の間、遊具の固定部分等に挟まれる。
表3-5.年齢別の事故件数(単位:件)
年度(平成) 1∼3 歳 4∼6 歳 7 歳以上 合計
8
9
10
11
12
93
90
115
137
149
234
325
363
422
505
13
30
30
45
62
340
445
508
604
716
合計
584
1,849
180 2,613
構成比(%)
22.3
70.8
6.9 100.0
表3-6.性別の事故件数(単位:件)
17
年度(平成) 男子
8
9
10
11
12
合計
構成比(%)
214
283
326
372
453
女子 合計
126
162
182
232
263
340
445
508
604
716
1,648
965 2,613
63.1
36.9 100.0
2002 年 3 月の国土交通省による「都市公園における遊具の安全確保に関す
る指針」の策定、2002 年 10 月の事業者団体による「遊具の安全に関する基準(案)」
の発表を受けて、国民生活センターは危害情報システムによせられた遊具の事
故情報を分析した。1997 年度∼2002 年度に国民生活センターによせられた遊具
に関する事故情報は 1,799 件であった。うち 1,788 件は危害情報収集協力病院
から、11 件は消費生活センターからである。
表3-7に年齢別性別の事故件数を示す。表3-8に危害部位別の危害内容
を示す。頭部のけがが最も多い。
表3-9に性別遊具別危害件数を、表3-10に遊具別危害内容を、表311に遊具別危害を受けた子供の平均年齢を示す。
表3-7.年齢別性別の事故件数
年齢
男
女 合計
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 以上
20 以上
4
63
110
113
152
106
120
94
101
67
115
18
3
47
86
66
74
88
93
74
62
49
63
25
表3-8.危害部位別にみた上位危害内容
7
110
196
179
226
194
213
168
163
116
178
43
18
1位
2位
部位
危害内容
件数
%
頭部
擦過傷・挫傷・打撲傷
1,121
84.7
刺し傷・切り傷
腕・手
骨折
176
68.8
脚部
擦過傷・挫傷・打撲傷
58
体幹
擦過傷・挫傷・打撲傷
88
3位
危害内容
件数
%
危害内容
140
10.6
骨折
擦過傷・挫傷・打撲傷
50
19.5
52.7
骨折
28
25.5
81.5
内臓損傷
9
8.3
件数
%
合計
39
2.9
1,323
脱臼・捻挫
17
6.6
256
脱臼・捻挫
14
12.7
110
6
5.6
108
骨折
表3-9.危害情報からみた性別遊具別危害
遊具全体
件数
(1)すべり台
%
件数
(2)ブランコ
%
件数
(3)鉄棒
%
件数
(4)ジャングルジム
%
件数
その他
%
件数
男
1,065
59.1
318
63.1
262
52.9
127
57.5
118
64.8
女
732
40.7
186
36.9
232
46.9
94
42.5
64
35.2
不明
2
0.1
0
0.0
1
0.2
0
0.0
0
0.0
合計
1799
100.0
504
100.0
495
100.0
221
100.0
182
100.0
397
表3-10.危害情報からみた遊具別危害内容
1位
遊具全体
内容
擦過傷・挫傷・打撲
件数
1,320
%
73.4
(1)すべり台
内容
擦過傷・挫傷・打撲
件数
399
%
79.2
(2)ブランコ
内容
擦過傷・挫傷・打撲
件数
382
%
77.2
(3)鉄棒
内容
擦過傷・挫傷・打撲
件数
162
%
73.3
(4)ジャングルジム
内容
擦過傷・挫傷・打撲
件数
126
%
69.2
2位
3位
4位
刺し傷・切り傷
151
8.4
脱臼・捻挫
249
13.8
脱臼・捻挫
55
10.9
刺し傷・切り傷
30
6.0
骨折
脱臼・捻挫
骨折
骨折
刺し傷・切り傷
52
10.5
骨折
内臓損傷
41
2.3
9
0.5
頭蓋内損傷
9
1.8
46
9.3
4
0.8
その他
6
1.2
刺し傷・切り傷
10
4.5
脱臼・捻挫
41
18.6
刺し傷・切り傷
17
9.3
脱臼・捻挫
27
14.8
骨折
5位
4
0.8
内臓損傷
5
2.3
2
0.9
その他
8
4.4
1
0.5
箱ブランコでけがをした子供や死亡した子供の家族が裁判を起こす例があ
る。しかしながら、事故をおこした子供は事故の状況を覚えておらず、子供の
証言は信頼性が低いとされ、子供の遊び方が適切でなかったということで片付
けられがちである。屋外遊具の場合は、製造は経済産業省、設置は国土交通省
19
の管轄であり、責任の所在がはっきりしないことが問題かもしれない。
文献
国民生活センター、2003 年 8 月 6 日公表「危害情報からみた屋外遊具の事故」
箱ぶらんこ裁判を考える会編、2004:危ない箱ブランコはかたづけて。原告は
9歳。現代書館。
20
3-2.遊具の安全に関する標準
(1)欧州の規格
遊び場の安全にかかわるヨーロッパで最初の規格は、1978 年に制定された
ドイツの DIN 7926 である。英国でも 1986 年に BS 5696 が制定された。これら
の規格は国内で改訂を経た後、1998 年に欧州 19 ヶ国統一の欧州規格 EN 1176-1
∼1176-7、EN 1177 となった。これに伴い、国内規格は廃止になっている。
EN 1177 は、オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンラン
ド、フランス、ドイツ、ギリシア、アイスランド、アイルランド、イタリア、
ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スエーデン、
スイス、イギリスの 19 カ国に共通、EN 1176 はこれらに加えてハンガリー、マ
ルタ、スロバキアの 22 カ国に共通である。以下、これらの内容の概略を紹介す
る。
EN1176-1: 1998 Playground equipment. General safety requirements and test methods
意図された、あるいは十分予測可能な使い方で遊具を使用したときに、子
供が予期する事ができなかった危険 (hazard) から子供を守るために、遊具の安全
に関する一般的要求事項を定めている。防火、化学物質、設計など対象は多岐
にわたる。設計で人体寸法に関連する事項としては、手すりの高さ、ガードレ
ールの高さ、柵の高さ、支持具の握りの直径、支持具の握り断面の最大幅、動
く遊具の地面からのクリアランスなどがある。また、はさまれ防止のための試
験物体を定義しており、頭部、首、足、手の指、衣服のはさみこみがおきない
ように隙間や凹部の形状を試験する方法を記述している。
付録 F では人体各部位について、はさまれによる事故に陥りやすい状況を
まとめている。遊具のサイズやすき間については固い材料でできた開口部の大
きさ広さ(筒の径、格子の幅など)、柔らかい材料でできた開口部の大きさ(鎖
の環の径など)、板と板の隙間の広さ、V 字形状、突き出し部、遊具が動いたと
きの場合の6項目に、人体を身体全体、頭と首(頭からはさまれる場合)、頭
と首(足の方からはさまれる場合)、手と腕、すねや足、指、衣服、髪の毛の
8項目に分けている。
EN 1176-2:1998 Playground equipment. Additional specific safety requirements and test
methods for swings
21
ぶらんこに特有の、安全に対する要求事項と試験方法について述べている。
人体寸法に関するものとしては、地面からのクリアランス、1点支持式ぶらん
この支柱などからのクリアランスがある。このほか、落下可能範囲の計算法な
どや、試験方法が記述されている。
EN 1176-3:1998 Playground equipment. Additional specific safety requirements and test
methods for slides
すべりだいに特有の安全に対する要求事項と試験方法について述べている。
EN 1176-4:1998 Playground equipment. Additional specific safety requirements and test
methods for runways
ロープウェイ(水平に張り渡されたロープにそって、滑車からつり下がっ
たロープないしシートにのって、重力の力で滑走する遊具)に特有の安全に対
する要求事項と試験方法について述べている。
EN 1176-5:1999 Playground equipment. Additional specific safety requirements and test
methods for carousels
回転台特有の安全に対する要求事項と試験方法について述べている。
EN 1176-6:1998 Playground equipment. Additional specific safety requirements and test
methods for rocking equipment
シーソー特有の安全に対する要求事項と試験方法について述べている。
EN 1176-7:1997 Playground equipment. Guidance on installation, inspection,
maintenance and operation
遊具の設置、検査、維持、操作に関する指針を述べている。
EN 1177: 1998 Impact absorbing playground surfacing − Safety requirements and test
methods
遊具から落下したときに頭部が受ける衝撃力が Head Injury Criterion
(HIC) tolerance level 1000 未満であれば、頭部のけがが致死的ではないこと
をもとに、遊具の下の地表面が十分な衝撃減衰力をもつよう、その要求事項と
22
試験方法を記述している。試験では、地表面材料に対し、規定した方法で頭部
を模擬した試験物体をいろいろな高さから落下させたときの加速度を計測する。
HIC は、計測した加速度と衝撃の開始から終了までの時間とから算出する。落下
させた高さとそのときの HIC の関係から、
HIC が 1000 のときの落下高さを求め、
これを critical fall height とする。
(2)米国の規格
米国では、100 年以上の歴史を持つ規格作成組織である ASTM International
(ASTM は American Society for Testing and Materials の略。1898 年設立)が、遊
具に関する規格を作成している。ASTM International による規格には以下のよう
なものがある。
F1487-01e1 Standard Consumer Safety Performance Specification for Playground
Equipment for Public Use
US Consumer Product Safety Commissionによると、1999年に米国の救急病院
では遊具に関連した事故によるけがで156,000人を治療した。このうち3/4が落下
によるけがであり、この他にぶらんこなど動く遊具による衝撃、突出部や鋭い
縁によるけがやはさまれによるものがある。死亡事故の原因には落下、衣服な
どがからんだ、ロープにひっかかった、頭部がはさまれた、こわれた遊具によ
る衝撃、動いているぶらんこによる衝撃がある。この規格の目的は、生死にか
かわったり身体障害をもたらようなすけがを減らすことである。このために、
公共の場に設置される様々な屋外遊具の安全と性能の基準を示す。2歳の5パー
センタイルから12歳の95パーセンタイルまでの範囲の子供を対象とする。様々
な遊具の安全性に関する要求仕様が記載されている。付録には、要求を満足し
ているか調べるための体幹部用、頭部用Probe、試験用のテンプレートとその使
い方、突出部評価用ゲージとその使い方などが、図示されている。
F1148-03 Standard Consumer Safety Performance Specification for Home Playground
Equipment
18ヶ月以上10歳までの子供が家庭で使う、様々なタイプの遊具に関する安
全に関する要求事項を示す。年齢によって事故(hazard)の性質や、これに対抗
する精神的、身体的な能力が異なるため、対象とする子供の年齢によって要求
23
事項が異なる。これらの要求事項を満たす製品を判定するための方法が記載さ
れている。安全性の内容は、一般要求事項としては材料、化学物質、塗料、と
がった先端や鋭い縁など、管の端、2つの部品の関節部、V字形の部分の角度な
どをふくむ。ぶらんこ、すべり台、組み立て式ぶらんこ、回転木馬、手でつか
む部品、構造、突出部、縄、はしご・階段・手すりについて、個別の要求事項
が示されている。付録1として試験方法が記述されている。また、付録2には
要求仕様の根拠と、
「鋭い縁」
、
「鋭い先端」などの具体的な定義や引用文献が述
べられている。付録2の要約には、要求仕様は、可能な限り、信頼のおける人
体寸法データに基づいていると述べられている。
F2223-04 Standard Guide for ASTM Standards on Playground Surfacing
公園などの所有者等が、屋外遊具の下、あるいは周辺の地表面材料を選択
し、特定するための指針を示す。地表面の設計、設置、維持管理に関連する要
求事項が述べてあり、詳細について参照すべきASTMの基準が示されている。
F1292-04 Standard Specification for Impact Attenuation of Surfacing Materials within
the Use Zone of Playground Equipment
US Consumer Product Safety Commission の2001年の調査などから、遊具に関
連した子供の事故で、遊具からの落下がけがの大きな原因になっており、頭部
への衝撃が死亡の最大の原因となっていることがわかっている。遊具等の周辺
の地表面に適切な材料を用いることで、落下に関連した生死にかかわるけがを
減らすことができる。
この規格の目的は、地表面材料の衝撃低減性能を評価、比較するための信
頼のおける方法を定めることにより、子供が遊具から落下することによる頭部
の障害の頻度と重症度を低減することである。遊具周辺の領域の地表面材料の
衝撃低減に関する最低限の要求事項と、衝撃低減性能の試験方法を示している。
子供の頭部の地表面に対する衝撃を模擬した実験方法を使って、衝撃により生
じる最大加速度(g-max)として衝撃を定量化する。障害の程度は、衝撃の強さ
と頭部への障害の関連についての文献から得た経験的な衝撃の強さの測度であ
るHead Injury Criterion (HIC)を用いる。地表面材料の衝撃低減性能への要求仕様
としては、g-maxスコアが200gを、HCIスコアが1000を超えないことと定めてい
る。
24
F1951-99 Standard Specification for Determination of Accessibility of Surface Systems
Under and Around Playground Equipment
運動機能障害をもつ子供や大人が、車いすなどを使って遊具のそばに行け
るように、遊具周辺の地表面の性能と、その試験方法を定めている。性能は、
評価対象となる材料を用いた地表面上で、車いすにのった人が一定のやり方で
直進するとき、あるいは90度曲がるときの仕事量で評価する。計測結果が、勾
配が1:14の、固くなめらかな面を直進するとき、あるいは90度回転するときの
平均仕事量よりも小さくなくてはならない。
(3)日本
日本には屋外遊具に関する工業規格はない。国土交通省が2002年3月に「都
市公園における安全確保に関する指針」を発行、(社)日本公園施設業協会が、
上記ガイドラインに準じた「遊具の安全に関する基準(案)JPFA-
S2002」を
2002年10月に発行した。しかし、この基準(案)は日本公園施設業協会の会員
用に作成されたものであり、広く普及しているわけではなく、入手方法もはっ
きりしない。
(社)日本公園施設業協会のウェブページから問い合わせメールを
出したが、回答は無かった。
(社)日本公園施設業協会による「遊具の安全に関する基準(案)
」は、EN
1176-1∼7、EN 1177、ASTM F1487を参考にしている。3歳から12歳までの子供を
対象にした公共の遊び場や広場の遊具を対象としている。遊びにおける危険性
をリスクとハザードに分け、ハザード(子供が予測できず、どのように対処す
ればよいか半断できない危険性)を除去することにより、生命の危険や重度の
障害をもたらす重大事故を防止することを目的としている。内容は引用された
欧米の規格に似ており、安全領域、落下高さ、遊具の設計、遊具の構造と強度、
遊具の材料、遊具の製造・施行・維持管理、点検、修繕などの項目がある。欧
米規格との大きな違いの1つは、万一落下したときの安全性確保のための、地
表面の性能についての記述はないことである。もう1つは、欧米規格には試験
方法が記載されているが、この部分がないことである。さらに、付属参考資料
として子供の人体寸法が引用されているが、このうち3歳と6歳のデータは計測
年がかなり古い。
プレイセイフティネットワークの代表者、山本恵梨氏によると、『日本で
は遊具設置場所に衝撃緩衝材がほとんど用いられていない。米国では資格(注)
25
をもった検査員が定期的に遊具の点検を行っている。人体寸法ニーズについて
は、欧米の規格はすべての人種を対象としているので、日本人データを規格に
反映する必要はないと思うが、規格に規定された寸法値について、その値がど
この寸法によってどのような理由で定められたかを明記しておくことが重要と
考える。日本でも、2002年から国土交通省のガイドラインや遊具協会の基準(案)
が作られ、安全規格が整備され始めているが、役所でもその存在が知られてい
ないのが現状である』。
(注)
:米国Consumer Product Safety Commissionの認定資格であるNational
Playground Safety Inspector
文献
プレイセイフティーネットワークのページ:
http://www.google.com/search?client=safari&rls=ja-jp&q=プレイセイフティー
ネットワーク&ie=UTF-8&oe=UTF-8
ASTM Internationalのページ:
http://www.astm.org/cgi-bin/SoftCart.exe/index.shtml?E+mystore
British Standardのページ:
http://bsonline.techindex.co.uk/BSI2/Dir1/sitepage.asp?LS=&PgID=0000&LR=&
LD=&Src=&Dest=&Last=&SessID=5HCU52TQT4M78P418UFEFXP77CKGDS
57&MSCSID=&ErrID=&SessStat=&Parent=&Child=&PCount=0&LogStat=&U
RLData=
26
3-3.まとめ
遊具による事故原因で最も多いのが転落・落下である(56.6%、表3-3)。
これに飛び降りを加えると、落ちることによる事故は67%を占める。部位別に
みると、頭部が最も多く、74%となる(表3-8)。欧米の遊具に関する規格に
は、特に頭部への衝撃による重篤な結果を回避することを目的とした、遊具の
下あるいは周辺の地表面の衝撃低減性能に関する独立した規格がある。上記の
ような事故の現状をみると、仮に落下したとしても重大な事故にならないよう
に、地表面を整備するのは合理的といえよう。一方、落下や衝突については、
落下防止の手すりや柵の高さを除くと、人体寸法よりも衝撃が重要である。
人体寸法がより関係するのは、挟み込みによる事故であろう。挟み込みに
よる事故は、件数としては多くない(表3-3)。しかし、EN 1176-1に規定され
ているようなクリアランスを確保するだけでも、重篤な結果をもたらす事故は
低減できるであろう。すでに欧米で規格が制定されていることから、具体的に
どのような人体寸法が遊具の設計や設置において重要かに関する情報は入手可
能であろう。一方、仮に日本人の子供が同年齢の欧米人の子供よりも小さいと
しても、規格制定においては安全率を考慮するであろうから、日本人のデータ
がなければ安全基準を作ることはできないとはいえない。しかし、日本人のデ
ータがあるならば、欧米の基準で十分であるかどうかを検討することができる
であろう。
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