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新会社法とM&A
∼制度調査部情報∼ 新会社法とM&A 2005 年 7 月 6 日全7頁 制度調査部 吉川 満 堀内 勇世 横山 淳 新会社法と新たな企業経営① 【要約】 ①対価の柔軟化を通じた、三角合併・株式交換 ②取得条項付株式、取得条項付新株予約権を用いたポイズン・ピル ③今秋の臨時国会で導入予定の事業結合規制法 ○6 月 29 日、新生会社法典が成立した。 「商法第 2 編 会社編」 、「有限会社法」、「商法特例法」の三法を全面的に見直した上で、一つに まとめたわけだから、内容ははとても一口で言いあらわせるものではない。 ○会社法のポイントの一つとしてしばしば M&A 関連規定(防衛策を含む)が挙げられるが、これで あれば一応の説明ができる。そこで本稿では、 Ⅰ 対価の柔軟化とM&A ・・・・平成 19 年(他部分は平成 18 年)4∼6 月頃施行 Ⅱ 会社法とポイズン・ピル ・・・・前三者は現行法の下でも導入可能 ・・・・後三者は会社法の下で導入可能 Ⅲ 事業結合規制法 ・・・・平成 17 年秋の臨時国会で導入可能 の三章に分けて説明を試みた。 ○本稿は講演会用の資料として使えるよう、フリップの形で作った。 目 次 Ⅰ 対価の柔軟化とM&A 三角合併 現行の外⇒内の株式交換① 現行の外⇒内の株式交換② 改正後の外⇒内の株式交換 改正後の外⇒内の三角合併 キャッシュ・アウト・マージャー Ⅱ 会社法とポイズン・ピル 事前警告型ポイズン・ピル(ライツ・プラン) (第一類型) 事前警告型ポイズン・ピル(直接型)(第二類型) 事前警告型ポイズン・ピル(SPC型)(第三類型) 取得条項付新株予約権を利用したポイズン・ピル①(強制株式転換) 取得条項付新株予約権を利用したポイズン・ピル②(買収者からの強制取得) 取得条項付種類株式を利用したポイズン・ピルの例 Ⅲ 事業結合規制法 事業結合規制法の概要 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型① 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型② 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型③ 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型と採用州① 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型と採用州② 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型と採用州③ このレポートは、投資の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を意図するものではありません。投資の決定はご自身の判断と責任でなさ れますようお願い申し上げます。記載された意見や予測等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更され ることがあります。内容に関する一切の権利は大和総研にあります。事前の了承なく複製または転送等を行わないようお願いします。 (2/7) Ⅰ 対価の柔軟化とM&A 三角合併(対価が親会社株式のとき) < 現在> 対価 はA社 の株式 のみ 株主 X 株主 X α社 α社 株主 Y 株主 Y A社 B社 合 併後の A社 (存 続) (消 滅) ( A社+ B社) < 改正後 > 対 価に親 会社株 式等も可 能に (そ こで対 価を α社株 式とす ると) 株 主XとY 株 主X α社 α社 株 主Y A社 B社 合 併後の A社 (存続) ( 消滅) ( A社+ B社) 現行の外⇒内の株式交換①(直接の株式交換) 海外 国内 株主X 株主イ 解 釈 上 、不 可 能 との 説 が 有 力 A社 甲社 株式交換 ・仮に、可能としても、適用法や管轄裁判所など、外国法との調整や国際私法上の難問があり、 リーガル・リスクを回避することは困難 現行の外⇒内の株式交換②(子会社を利用した株式交換) 海外 国内 株主X 海外 株主イ 株主イ A社 A社 100% 子会社 株主X 国内 株式交換 A ジ ャ パン社 A ジ ャ パン社 100% 子 会 社 甲社 甲社 ・現行法でも可能 ・ただし、Aジャパン社は、A社の 100%子会社でなくなる。 (3/7) 改正後の外⇒内の株式交換(子会社が親会社株式を対価に株式交換) 海外 国内 株主X 株主イ 国内 株主X 株主イ A社 A社 100% 子会社 海外 株式交換 A ジ ャ パン社 A ジ ャ パン社 100% 子 会 社 100% 子 会 社 甲社 甲社 ・対価の柔軟化で、A社株式を使った株式交換可能 ・Aジャパン社は、A社の 100%子会社を維持。 改正後の外⇒内の三角合併(子会社が親会社株式を対価に合併) 海外 国内 株主X 株主イ 国内 株主X 株主イ A社 A社 100% 子 会 社 合併 100% 子会社 海外 A ジ ャ パン社 甲社 新 A ジャパ ン社 (甲 社 を合併) ・対価の柔軟化で、A社株式を使った合併(三角合併)可能 ・新Aジャパン社は、A社の 100%子会社。 キャッシュ・アウト・マージャー(対価が現金のとき) <現在> 対価はA社の株式のみ 株主X 株主Y 株主XとY A社 B社 合併後の (存続) (消滅) A社 <改正後> 対価に現金等も可能に (そこで対価を現金とすると) 株主X 株主Y 株主Xだけ A社 B社 合併後の (存続) (消滅) A社 (4/7) 会社法とポイズン・ピル 事前警告型ポイズン・ピル(ライツプラン)(第一類型) 買収者登場時のすべての株主。 買収者 ただし、買収者は権利行使できない。 ⑥株式発行 ・ ① ⑤権利行使 事前警告 ④新株予約権付与 無償 譲渡制限 ③交渉決裂 ②買収者登場 ( ) Ⅱ 発行会社 (注)国税庁資料をもとに大和総研作成 事前警告型ポイズン・ピル(直接型)(第二類型) 受益者 買収者 買収者登場時のすべての株主。 ⑥権利行使 ただし、買収者は権利行使できない。 ④交渉決裂 ③買収者登場 ⑦株式交付 ⑤受益者として の 確 定 ・付 与 (譲 渡制限) 発行会社 ①信託契約 信託銀行 ② 新 株 予 約 権 発 行 (信 託 ・譲 渡 制 限 ) 受託者 委託者 (注)国税庁資料をもとに大和総研作成 事前警告型ポイズン・ピル(SPC 型)(第三類型) 受益者 買収者 買収者登場時のすべての株主。 ⑥権利行使 ただし、買収者は権利行使できない。 ⑤受益者としての確定(譲渡) 信託銀行 <新株予約権の消却可能> SPC ①新株予約権発行 (信託・譲渡制限) (注)国税庁資料をもとに大和総研作成 委託者 発行会社 ②新株予約権の 管理信託設定 受託者 ④交渉決裂 ③買収者登場 ⑦株式交付 (5/7) 取得条項付新株予約権を利用したポイズン・ピル①(強制株式転換) 買収者 買収者登場時の株主。 信託銀行、 SPCなど ①平時に取得条項付 新株予約権を発行 ⑥新株予約権強制取得 の対価として、株式を 交付 ③交渉決裂 ②買収者登場 ④受益者の確定・ 新株予約権付与 ⑤取得条項に基づ いて新 株予約権を 強制取得 ただし、買収者は権利行使できない。 発行会社 ¾ 取得条項により、株主の権利行使・手続がなくても強制的に株式を交付する。 ¾ 買収者は権利行使不可とすることにより、買収者の持分を希薄化できる。 ¾ 新株予約権と株式の随伴性を確保するため、この例では信託型ポイズン・ピルを前提 にしている。 (注)国税庁資料をもとに大和総研作成 取得条項付新株予約権を利用したポイズン・ピル②(買収者からの強制取得) 買収者 買収者登場時の株主。 ①平時に取得条項付 新株予約権を発行 ⑥新株予約権の強 制 取得の対価として 、 株式を交付 信託銀行、 SPCなど ⑤取 得条 項に基づ い て新株予約権を強 制 取得 ⑥新株予約権の強 制取得の対価 は、 無償・金銭など、 株式以外のもの ③交渉決裂 ⑤取得条項に基づ いて新株予約権を 強制取得 ②買収者登場 ④受益者の確定・ 新株予約権付与 発行会社 ¾ 取得条項により、買収者以外の株主には強制的に株式を交付。 ¾ 買収者の手に渡った新株予約権も強制的に取得するが、対価としての株式は交付しない。 ¾ 新株予約権と株式の随伴性を確保するため、この例では信託型ポイズン・ピルを前提にし ている。 (出所)大和総研作成 取得条項付種類株式を利用したポイズン・ピルの例 買収者 全ての株主 ⑥買収者以外の株 主には影響なし。 ①予め普通株式 を取得条項付種 類株式に交換し ておく︵下記参 照︶ ③交渉決裂 ④取得条項に 基づいて取得 条項付株式︵ 議決権あり︶ を強制取得 ②買収者登場 買収者登場時の買収 者以外の株主。 発行会社 【普通株式を取得条項付種類株式に交換する手順の例】 ① 定款変更により取得条項付種類株式の発行を可能とする(会社法108) ② 普通株式に全部取得条項を付ける(会社法111②) ③ 全部取得条項が付いた(旧)普通株式を全部取得して、代わりに取得条 項付種類株式を交付する(会社法171) ④ 全部取得した普通株式を消却する (出所)大和総研作成 (6/7) Ⅲ 事業結合規制法 事業結合規制法の概要 ①取得者が対象企業の株式の一定比率以上を取得した場合には、当該株式取得について、もしくは 取得者による対象企業の買収・合併について利害関係のない取締役からなる取締役会の承認がな い限り、一定期間、取得者による対象企業の取得・合併を禁止するという内容。 ②一定期間としては、5年もしくは3年と定められる例が多い。 ③NY証券取引所上場企業、あるいはフォーチュン大企業 500 社リスト採用企業の約半数が本社を 置いているデラウェア州のほか、ニューヨーク州もモラトリアム法を採用している。 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型① 主たる類型 内容 公正価格法 (F a ir P r ic e S ta tu te s ) ¾ 同 法 の 対 象 と す る 企 業 買 取 ・合 併 に お い て 、 株 主 に 対 し て 支 払 わ れ る 対 価 が 同 法 の 定 め る 一 定 の 「公 正 価 格 」基 準 を 充 た さ な い 場 合 に は 、 当 該 買 取 ・合 併 に つ いて株主の特別多数の承認を必要とする内容 。 ¾ 「二 段 階 買 取 」の 規 制 が 主 目 的 。 ¾ 特 別 多 数 と し て は 80% を 要 求 す る 場 合 が 多 い が 、 95% を要求する例もある。 公正価格での株 式買取請求権法 (F a ir P r ic e P u t S ta tu te s ) ¾取得者が対象企業の株式の一定比率以上を取得し た 場 合 に 、残 りの 株 主 が そ の 保 有 株 式 に つ い て法 定 の 公 正 価 格 で 買 い 取 るよう、取 得 者 に 対 して 請 求 す る 権利を付与する内容。 (出所)大和総研作成 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型② 主たる類型 内容 支配株式取得法 (C o n tro l S h a re A c q u is it io n S ta tu te s ) (略 称 : C S A ) ¾ 取 得 者 が 対 象 企 業 の 株 式 の 一 定 比 率 以 上 を取 得 した 場 合 に は 、対 象 企 業 の 残 りの 株 主 の 過 半 数 が 取 得 者 に 議 決 権 を与 え ることに 同 意 しな い 限 り、そ の 株 式 に 伴 う議 決 権 の 取 得 が 認 め られ ない とい う内 容 。 ¾ イ ン デ ィ ア ナ 州 の C SAに つ い て は 、 1987年 4月 21日 の 「 C T S 対 タ ゙イ ナ ミ ッ ク ス ・ コ ー ホ ゚レ ー シ ョ ン ・ オ フ ゙・ ア メ リ カ 事 件 ( 通 称 『C TS事 件 』)」に 関 す る 連 邦 最 高 裁 判 法 が 合 法 性 を 確 認 (出所)大和総研作成 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型③ 主 た る類 型 内 容 事 業 結 合 規 制 法 ( B u s in e s s C o m b in a t io n S ta tu te s ) ¾ 取 得 者 が 対 象 企 業 の 株 式 の 一 定 比 率 以 上 を取 得 した 場 合 に は 、当 該 株 式 取 得 に つ い て 、も しくは 取 得 者 に よ る 対 象 企 業 の 買 取 ・合 併 に つ い て 利 害 関 係 の な い 取 締 役 か らな る取 締 役 会 の 承 認 が な い 限 り、一 定 期 間 、取 得 者 に よ る 対 象 企 業 の 取 得 ・合 併 を 禁 止 す る と い う 内 容 。 も し くは モ ラトリア ム 法 ( M o r a t o r iu m S ta tu te s ) (出所)大和総研作成 ¾ 一 定 期 間 と し て は 、 5年 も し くは 3年 と 定 め ら れ る 例 が 多 い 。 ¾ NY証 券 取 引 所 上 場 企 業 、あ る い は フォー チ ュン 大 企 業 500社 リ ス ト採 用 企 業 の 約 半 数 が 本 社 を 置 い て い る デ ラウ エ ア 州 の ほ か 、ニ ュー ヨー ク州 も事 業 結 合 規 制 法 (モ ラ ト リ ア ム 法 )を 採 用 し て い る 。 (7/7) 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型と採用州① 主たる類型 内容 公正価格法 (F a ir P ric e S ta tu te s ) コネ チ カット州 、フロ リダ 州 、ジ ョー ジ ア 州 、 イリノイ 州 、ル イ ジ ア ナ 州 、メリー ラン ド州 、 ミ シ シ ッ ピ ー 州 、 ノ ー ス ・カ ロ ラ イ ナ 州 、 ペ ン シ ル バ ニ ア 州 、バ ー ジ ニ ア 州 、ワ シ ントン州 、 ウ ィス コン シ ン 州 公正価格での株 式買取請求権法 (F a ir P ric e P u t S ta tu te s ) メイン 州 、ペ ン シ ル バ ニ ア 州 (出所)大和総研作成 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型と採用州② 主たる類型 支配株式取得法 (C o n tro l S h a re A c q u is it io n S ta tu te s ) (略 称 : C S A ) 内容 ア リゾ ナ 州 、フロ リダ 州 、ハ ワ イ州 、ア イダ ホ 州 、 カン ザ ス 州 、ル イジ ア ナ 州 、メリー ラン ド州 、 マ サ チ ュー セ ッツ 州 、ミシ ガ ン 州 、ミネ ソタ州 、 ミズ ー リ州 、ネ ブ ラス カ 州 、ネ バ ダ 州 、 ノ ー ス ・カ ロ ラ イ ナ 州 、 オ ハ イ オ 州 、 オ ク ラ ホ マ 州 、 オ レ ゴ ン 州 、 サ ウ ス ・カ ロ ラ イ ナ 州 、 テ ネ シ ー 州 、 ユ タ州 、バ ー ジ ニ ア 州 (出所)大和総研作成 買収を規制する主要な第二・第三世代米国州法の類型と採用州③ 主たる類型 内容 事業結合規制法 (Business Com bination Statutes) ア リ ゾ ナ 州 、コ ネ チ カ ッ ト 州 、デ ラ ウ ェ ア 州 、 ジ ョー ジ ア 州 、 ア イ ダ ホ 州 、 イ リ ノ イ 州 、 イ ン デ ィア ナ 州 、カ ン ザ ス 州 、 ケ ン タ ッ キ ー 州 、 メ イ ン 州 、メ リ ー ラ ン ド 州 、マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 州 、 ミ シ ガ ン 州 、ミ ネ ソ タ 州 、 ミ ズ ー リ 州 、 ネ ブ ラス カ州 、ニ ュー ジ ャー ジ ー 州 、 ニ ュ ー ヨ ー ク 州 、ペ ン シ ル バ ニ ア 州 、 サ ウ ス ・カ ロ ラ イ ナ 州 、 テ ネ シ ー 州 、バ ー ジ ニ ア 州 、 ワ シ ン ト ン 州 、 ウ ィス コ ン シ ン 州 、 ワ イ オ ミ ン グ 州 も し くは モ ラトリア ム 法 (M oratorium Statutes) (出所)大和総研作成