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岩間剛一 木村彌一 - コスモエネルギーホールディングス株式会社
シーズ・メイル対談 Dialogue 和光大学経済経営学部教授 コスモ石油株式会社代表取締役社長 岩間 剛一氏 木村 彌一 Kouichi Iwama Yaichi Kimura 成長分野に経営資源をシフトし 収益力を強化することで 企業価値を向上させていきます 今回は、資源エネルギー関連の専門家としてテレビの経済番組や専門誌などでご活躍されて いる和光大学の岩間剛一教授をお招きして、国内外のエネルギー事情やコスモ石油の経営環 境、今後の成長戦略などについて、当社木村彌一社長と意見交換をしていただきました。 生産を阻害するような要因にな り、ヘッジファンドなどの投資マ っている面もあります。 ネーが金融商品から原油先物市 木村s世界的に見た石油製品の 場に大きく流入してきたことが影 木村sエネルギー関連の専門家 需給バランスについて中長期の 響を与えていると思います。 として、現在の原油価格の高騰 見通しはいかがですか。 木村s国内の石油市場について の背景などについて、先生はど 岩間s現在は中国やインドなど 先生の見解はいかがですか。 のようにお考えですか。 の経済が急成長しており約30億 岩間s日本は人口減少社会に入 岩間s原油の高騰について、最 人の人間が石油を利用するよう り、市場全体が縮小するのに 初の契機となったのは2003年 になり、石油消費量が大きく伸 伴い石油製品の販売も減少し のイラク戦争かと思います。当 びる要因となっています。しか ています。現在の豊かさを次世 時1バレル約30ドルであったニ し、原油の在庫水準という面で 代に繋ぐため、今は大きな分岐 ューヨークの原油先物市場が今 見ますと10年前とさほど変わっ 点に当たります。そのなかで経 年1月に100ドルを超えるなど ておらず、需給面で大きなひっ 済の基盤を支えている石油会社 高止まりが続いています。開戦 迫はありません。現在の原油価 の果たすべき役割は大きいと思 から5年が経ちますがイラク国 格の高騰を牽引している大きな います。 内の治安は依然として不安定 要因のひとつは、ニューヨークの で、中東地域の政情不安は続い 原油先物市場です。サブプライ ています。また、産油国自身の ムローンという米国の信用力の IPICとの提携による 事業展開 資源ナショナリズムも高まり、 低い個人向け住宅ローン問題に 岩間s原油価格の上昇により中 石油資源を国有化するなど原油 より、金融市場に不安感が高ま 東産油国が豊かになり、政府系 高騰する原油市場の 動向について シーズ・メイル対談 と い う も の に 大 き く 貢 献 す る と 思 い ま す 。 今 回 の 提 携 は 、 国 の エ ネ ル ギ ー の 安 全 保 障 ア ラ ブ 首 長 国 連 邦 は 非 常 に 重 要 な 国 。 資 源 小 国 で あ る 日 本 に と っ て Dialogue ファンドも積極的に海外に投資 資家にとっても嬉しいことです しています。コスモ石油も産油 ね。ところで、共同で進めてい 国のファンドからの出資を受け く事業とは、どのような案件があ られましたが、この目的などに るのでしょうか。 ついて教えてください。 木村sIPIC の国際的なネット 木村sアブダビ首長国政府が ワークと潤沢な資金に当社の経 100%出資しているエネルギー関 営資源を組み合わせることで、 連の投資会社IPIC に当社の第 既存の事業展開に加え、成長分 三者割当増資を受けてもらいま 野での新たな共同事業の展開を した。これは、当社最大の原油 計画しています。石油化学事業 ※ 調達国であるアラブ首長国連邦 を含めた製油所の更なる高度化 (UAE)と強固なパートナーシ を進めることや、米国西海岸を ップを築いていくことで、長期 含めた環太平洋市場での石油製 的な安定供給体制の確立を図る 品販売事業の拡大、アブダビ首 と共に、製油所の高度化や海外 長国以外での原油開発事業の強 販売、石油開発事業、新規事業 化なども図りたいと考えていま などを共同で推進していくこと す。またALA事業などの新規事 で競争力・収益力を強化してい 業や、LPG 事業などの拡大も くことを目的としています。また、 検討中です。更にIPIC が既に 安定的な財務基盤の強化にも 提携している海外企業との連携 繋がります。 も視野に入れています。 岩間s資源小国である日本にと と私は考えています。今回の提 供給体制の高度化 海外販売(輸出)の拡大 携は、コスモ石油にとっての原 岩間s国内の需要構造が変わっ 油の安定的な調達に留まらず、 日 ていく中で、どのような対応を 本全体にとっても、エネルギーの お考えですか。 安全保障というものに大きく貢 木村sまず、国内の製油所の高 献すると思います。また増資に 度化のための投資を行っていま よって自己資本比率が向上し、 す。現在、国内の石油市場は産 財務基盤が強化されたことは投 業構造の大きな変化に伴い、ガ ってUAEは非常に重要な国だ ●岩間剛一氏プロフィール 東京大学法学部卒業、東京銀行 (現三菱東京UFJ銀行)入行。東 京大学工学部非常勤講師などを 経て、2003年から和光大学経済 経営学部教授。主な著書に「『ガ ソリン』本当の値段」 (アスキー 新書)など多数。 ソリンや軽油・灯油といった白 ますが、確かに米国の製油所は、 油の需要が高くなっていまし 装置構成も軽質原油用の精製施 て、産業用の重油の需要が減少 設が中心ですので、中東地域で しています。その需要の変化に 増産があっても精製できませ 合わせて、精製段階でより多く ん。中東の重質原油が精製でき、 の白油を作る装置構成にする必 環境規制にも対応できる日本の 要があります。堺製油所に約 製油所は大きく貢献できると思 1,000億円を投資し、重質油分 います。 解装置群を建設中で2010年か 木村s現在、米国西海岸で貯蔵 らの稼動を目指しています。これ タンクの確保や国内の出荷桟橋 により、割安な重質原油を原料 などの増強を進めています。現 に白油を増産することで精製マ 状で年間約150万キロリットル ージンの改善を図っていきます。 の輸出量を、2010年頃には年 岩間s堺製油所から増産される 間400万キロリットル程度まで 石油製品の将来的な販路はどの 拡大していく計画です。 ようにお考えですか。 向になると予想していますが、 原油開発の 拡大施策について 海外に目を向けると石油事業は 岩間s日本は資源小国で、石油 有望な成長産業です。アジア、 や天然ガスのほとんどを輸入に オセアニア、米国といった環太 頼っていますので、エネルギー 平洋地域では、石油需要が大き 資源の安定確保は、国策として く高まっています。それらの地 大切です。ただ、輸入だけに頼る 域の中で環境規制が厳しい地域 のではなく、油田の自主開発を に当社の高品質の石油製品の輸 推進することで、エネルギーセ 出を強化することで販路を拡大 キュリティを担保していくこと していきます。今は米国西海岸 も重要です。コスモ石油も長年 地域へカーブ軽油※の卸売りも 原油開発に取り組まれています 始めています。 が、現在の状況はいかがですか。 岩間s今後中東で増産される原 木村s当社は中東のアブダビ首 油は重質油が中心と言われてい 長国で子会社のアブダビ石油 木村s国内の石油市場は縮小傾 ビ ジ ネ ス に 繋 が る と 考 え て い ま す 。 強 固 な 信 頼 関 係 が 築 か れ 、 長 期 的 な 深 く 理 解 し 合 う こ と か ら コスモ石油株式会社 代表取締役社長 木村 彌一 互 い の 国 の 文 化 を シーズ・メイル対談 Dialogue (株)が40年に亘り、原油生産 深く理解し合うことから信頼関 緩やかに縮小していく状況で企 を続けています。持分法適用会 係が築かれ、長期的なビジネス 業として成長していくには、上 社の合同石油開発(株)も当地 に繋がると考えています。 流の原油開発部門の拡大と石 で生産をしています。また、カ 岩間s新しい鉱区での原油開発 油製品の海外販売という2つ タールでは2006年から子会社 にも取り組まれていますね。 の取り組みは、収益力を高め のカタール石油開発(株)が原 木村s中東地域では、カタール る上でも重要な施策となって 油生産を開始し、現在は日量約 政府と子会社のコスモエネルギ います。 5,000バレルの生産量となって ー開発(株)が新たにブロック います。近く10,000バレルま 3鉱区の探鉱生産分与契約を で増産する予定ですが、2010 結びました。また、豪州地域で SS販売における 競争力強化 年には更に3,000バレルの追加 も10年以上に亘り探鉱活動を続 岩間sコスモ石油のCMをよく 増産も計画しています。 けていまして、1月に新たに北 見聞きしますが、SS(サービ 岩間s湾岸諸国の方たちは日本 西沖チモール海域で探鉱開発プ ス・ステーション)における取 人に対する尊敬の念を強く持っ ロジェクトに参加しました。 り組みはいかがですか。 ています。天然資源がほとんど 岩間s現在、輸入している原油 木村s当社は「ココロも満タン ない日本が人材を活用すること 量のどの程度を自主生産されて に」というキャッチフレーズを で高度成長を続けてきたことを いますか。 長年使っていまして、お客様の 高く評価しています。ただ、そ 木村s足元では6 %弱ですが、 認知度はかなり高くなっていま のなかにも石油会社など産業界 これを10%程度まで高めてい す。これからは、これを具体的 の方たちとの文化交流も大きく く計画です。国内の石油需要が な形として提供していきたいと 寄与していると思います。 いうことで、昨年から“ココロも 木村s当社も産油国との文化交 満タンに”宣言。というキャン 流は長年続けてきました。技術 ペーンを全国のコスモSSで始 者の交流だけでなく、日本の伝 めました。宣言した以上は、それ 統文化の紹介や留学生の受け入 に応えるサービスをキッチリと れなどを行ってきました。昨今、 提供して、お客様に満足してい 中東での日本文化の高まりもあ ただくと同時にSSで働くスタ り、UAE の公立小学校に日本 ッフの方にも生き生きと充実し 語の先生を派遣し、日本語教育 て働ける環境を作っていただく プログラムの提供支援も始めま ことが大切だと考えています。 した。やはり互いの国の文化を 岩間s最近、セルフSSが増え ていると思いますが、その辺の 木村s石油とは違う分野です 取り組みはいかがですか。 が、動植物のヘモグロビンやク 木村s最初にセルフを始めた頃 ロロフィルの原料となるアミノ は、日本の風土には馴染まない 酸の一種でALAという活性物質 のではという思いもありました を、環境にやさしく安価で大量 が、実際に取り組んでみますと に生産できる技術を開発しまし お客様のニーズが大変高いこと た。現在は植物の成長促進剤と が分かりました。2007年12月 して農作物の肥料や塩性の強い 末での当社のセルフSS は855 沙漠の緑化事業などに応用して 件で全体の約2割を占め全国平 組みはどうですか。 います。 均を大きく上回っています。 木村s当社は独自のコスモ・ 岩間sそれは、世界に貢献でき 岩間s給油をセルフにしてしま ザ・カードを発行していますが、 る事業になりそうですね。 うと、整備などの車周りのサー イオングループと提携して新た 木村sALAを活用した農業技 ビスはどうなるのですか。 にコスモ・ザ・カード・オーパスも 術を通じて、持続可能な地 木村sもちろん、セルフSSで 並行して発行しています。カー 球環境の実現に向けた食糧 もカーケアサービスは提供して ドの有効枚数は2007年12月末 の増産、バイオマスエネル います。整備や車検、オイル交 時点で298 万枚を越えました。 ギーの利用など将来的に幅 換、タイヤなどのカーケア設備 もちろんポイントも付きますの 広い分野で貢献できればと を持つ大型のキーステーション でお客様に大変喜ばれていま 思っていますし、医薬の分 SSと周辺の中小SSをネットワ す。とくにセルフSSでカード 野での応用も期待されてい ーク化することで、お客様がど 決済するお客様は6割近くあり、 るところです。 のSSに来店されても同じ品質 稼働率が高いのが特長です。 岩間s景気に停滞感が出てきた のカーケアサービスが受けられ 日本経済の中で、将来に向けて 様々なビジョンを計画し、実践 岩間s最近の消費者はポイント 新規事業の 取り組みについて が付くカード決済を好んで使っ 岩間s石油事業以外の新規事業 益々の発展を期待しています。 ていますが、コスモ石油の取り は、いかがですか。 る体制を整えています。 用 語 解 説 されているコスモ石油に今後 ●IPIC ●カーブ軽油 International Petroleum Investment Company。 アブダビ首長国政府が100%出資しているエネル ギー関連の投資会社。当社の第三者割当増資を引 き受け、増資後約20%の当社株式を所有。 米国カリフォルニア州大気資源局(California Air Resources Board)に規定された環境規制 をクリアした軽油。当社の軽油生産技術はこ の規格をクリアしています。