Comments
Description
Transcript
わたしたち のくらしと フェアトレード
わ たしたち のくらしと 参考文献・資料 ・長尾 弥生 (2008)『フェアトレードの時代』 コープ出版 ・佐藤 寛(編集)『フェアトレードを学ぶ人のために』世界思想社 ・FLO (編集),NEWS! (編集),IFAT (編集),EFTA (編集),北澤 肯 (翻訳), フェアトレード・リソースセンター (翻訳) (2008)『これでわかるフェアトレードハンドブック―世界を幸せにするしくみ』合同出版 フェアトレ ード ・FLO Fairtrade International <http://www.fairtrade.net/>(2014/1) ・WFTO World Fair Trade Organization <http://www.wfto.com/>(2014/1) 主なフェアトレード製品の生産国 ・EFTA European Fair Trade Association <http://www.eftafairtrade.org/>(2014/1) ・フェアトレードラベルジャパン <http://www.fairtrade-jp.org/>(2014/1) ・一般社団法人わかちあいプロジェクト(国際協力NGO) <http://www.wakachiai.com/>(2014/1) ■カカオ ・Fair trade Style <http://fairtrade-net.org/>(2014/1) ■コーヒー ・フェアトレードとエコ関連情報 フェアトレード情報室にゅうす ■縫製品・麻製品 <http://blog.livedoor.jp/fwinds/archives/50557919.html>(2014/1) ■花 ・スターバックスコーヒージャパン株式会社 「フェアトレードコーヒーの日」 ■茶葉 <http://www.starbucks.co.jp/csr/ethicalsourcing/fairtrade_coffee_day.html>(2014/1) ・Asante sana 第3世界ショップ <http://www.p-alt.co.jp/asante/>(2014/2) 目次 金城学院大学生活環境学部 丸山千賀子ゼミ 製作 髙木 彩花 ・水谷 真夕 ・齋藤 楓(2014年 2月) (名古屋市「大学等への消費者啓発委託事業」) 1 フェアトレードとは? 2 2 フェアトレードの歴史 4 3 国際フェアトレード認証ラベル 5 4 フェアトレードの問題点 6 5 フェアトレードを企業の戦略にしないために 7 1 フェアトレードとは? 現 代 の日 本 で はあらゆる 商 品 が 手 に 入ります。その 商 品 の 中 には日 本 で 材 料 の 調 達 が できな いもの や、日 本 よりも 生 産 コストが 安 い 海 外 から輸 入しているもの が あります。 たとえ ば 、チョコレ ートの 原 材 料 カカオ は日 本 で 採 れ ま せ ん 。毎 日のように 飲 む コ ー ヒ ー も 豆 を 生 産しているの は 海 外 で す。衣 料 品 や 雑 貨 類 から 食 品 に 至 るまで 海 外 製 のもの が れて おり、そのど れもが 低 価 格 で 手 に 入ります。 このように 私 たちの 暮 らしは 国 際 貿 易 によって 支 えられています。 ところが 、私 たちの 暮 らし を 豊 か にしてくれ る 国 際 貿 易 が 不 公 平 な 取 引 や 発 展 途 上 国 の 劣 悪 な 労 働 環 境 を 生 み 出している 現 実 をご 存 知 でしょうか 。 国際貿易の不公平な現実 国 際 貿 易 の 不 公 平 は 、先 進 国と途 上 国との 間 に大きな 経 済 格 差 があること から生 じています。経 済 力 の ある 先 進 国 は W T O( 世 界 貿 易 機 関 )など で の 発 言 力 が あり、 「 援 助 」と引き 換 えに自 分 たちに 都 合 のよい 貿 易 ル ールを 作 って しまうことが あります。また 先 進 国 の 大 企 業 は 、原 材 料 の 価 格 を 自 分 た ち で コントロ ー ル することもできます。 このように 、経 済 基 盤 の 弱 い 途 上 国は、はじめから不 公 平な取 引を強いられ ているの で す。 たとえ ば 、カ カ オ は そ の 7 割 が 西 アフリカ のカカオ 農 園 で 生 産 されています が 、 そこで 働くの は 主 に 1 4 歳 以 下 の 子 どもたちで す。人 身 売 買 や 強 制 労 働 者 として 連 れてこられ た 子どもたちは 、チョコレ ートがどん なもの かも 知りま せ ん 。 また 、コ ー ヒ ー の 場 合 は 先 進 国 の 巨 大 企 業 がコーヒー の 価 格を調 整して莫 大な 利 益 を 得 ています が 、エ チオピアに 住 む 生 産 者 のひとりが 受け取るお金はコーヒー * 豆 1 k g あ たり85セントほど な の で す。 新しい形の貿易 このような 不 公 平 を是 正 するため 、発 展 途 上 国 で 作 ら れ た 作 物 や 製 品 を 適 正 な 価 格 で 継 続 的 に取 引することによって、生 産 者 の 持 続 的な生 活 向 上を 支える仕 組 みが 考えられました。それ がフェアトレード( 公 平 貿易 )です。 これまで 先 進 国 が 行 ってきた一 方 的な資 金 援 助には 、援 助 する側の都 合に よって左 右され 、継 続 性 に欠 けるという問 題 点がありました。また、援 助 活 動に よって途 上 国 の 人 々が 働く意 欲を失うなど、自立を阻む 原 因ともなっています。 それ に 対し 、フェアトレ ードは 、私 たち消 費 者 が 自 分 の 気 に 入 っ た 商 品 を その 生 産 コストに 見 合 った 価 格 で 購 入 することで 実 現 できる身 近 な 国 際 協 力 なのです。この 方 法なら単なる「 援 助 」ではなく、 「 対 等な立 場」で自立を継 続 *1ドル =100セント 的 にサポートすることが できます。 カカオやコーヒー のように 、す で に貿 易に 参 加している 生 産 者 にはフェア な 参 加 ができるように、農 村 部 の 人々・女 性・少 数 民 族・障 が い 者などには 生 産 活 動を通じて経 済 的 な自立 が できるように促 すの がフェアトレ ードの 趣 旨 です。 フェアトレード 運 動 は 、ヨーロッパを中 心に1 9 6 0 年 代 から本 格 的に広まり、 * 現 在 で は 数 千 店 舗 の「 第3世 界 ショップ 」が 世 界 中 に 開 か れています。日 本 でもフェアトレードに取り組 む 団 体 やフェアトレード 商 品 を扱う店 が 増えてき ています。 フェアトレード 商 品 を購 入 することで、私たち誰もが 開 発 途 上 国 の 人 々を支 える社 会 貢 献 に参 加 出 来るのです。 *フェアトレード 事 業 を行う「 第 3 世 界 ショップ 」は 、 「 飲 むなら途 上 国 のコーヒー を」 というスローガンを掲 げ て1 9 8 6 年 にスタートしました。 2 フェアトレードの歴史 フェアトレードの始まり 1 9 4 6 年 にアメリカのキリスト教 系 N G O が 、プエルトリコ人 女 性 の 創 った 刺 繍 を売 って歩 いた事 がフェアトレードのはじまりといわれています。当 時は チャリティの 要 素 が 強く、貧 困 に苦しむ 人 たちを助 けるために手 工 芸 品 を買 い 取り、自国 で 販 売 するというものでした。 1 9 6 0 年 代 には 援 助 から自立 を促 す 形 へと変 わり、現 在のようなフェアトレ ードの 形 態 になりました。交 渉 力を強 めたり、共 同で 物 資を購 入してコストを 下 げ たりするために協 同 組 合 をつくりました。また、リーダー シップ や 会 計 に ついて学 び 、自分 たちで 有 利 な貿易を行えるようにしてきました。 1 9 8 0 年 代 には 製 品 の 品 質 が 向 上しました。1 9 9 0 年 代にはフェアトレード 商 品であることが わかりやすいように、多くの 企 業 がフェアトレード・ラベルを 利 用しはじめました。このフェアトレード・ラベルによってフェアトレ ード の 認 知 度 が 高まりました。 3 国際フェアトレード認証ラベル フェアトレードで扱われる商 品は多 岐にわたります。また、それらは主に南 半 球の国々を 中心として生 産されています。 主な認証製品(出典:フェアトレードラベルジャパン webサイト) コーヒー 紅茶 カカオ製 品 スパイス・ハーブ 果物 加工果物 ワイン オイルシード 油脂果実 食品その他 切花 コットン製品 食品以外 その他 日本におけるフェアトレード 日本 では 、1 9 7 4 年 に国 際 N G O 団 体 シャプラニ ー ル が 、バングラディシュ での 戦 後 の 復 興 支 援 の 一 環として、女 性の手 工 芸 品を販 売するための生 産 協 同 組 合 をつくり、日本 国 内で 販 売したことがフェアトレードのはじまりでした。 1 9 8 6 年 にはヨーロッパのフェアトレード 商 品 を輸 入して販 売 する「 第3世 界 ショップ 」が 誕 生しました。1 9 8 0 年 代 前 半 にはフィリピンの ネグ ロス 島 の 特 産 品 である砂 糖 の 市 場 価 格 暴 落 によって 飢 饉 が おこり、その 救 済 活 動 を 行 っていた日本 の N G O が 、1 9 8 9 年 に株 式 会 社 オルター・トレード・ジャパン を設 立しました。オルター・トレード・ジャパンは、ネグロス島 の 生 産 者たちから 生 活 できる価 格 で 砂 糖 を買い 取り、販 売しました。 近 年 では 2 0 0 2 年 から大 手コーヒー チェーンが 、2 0 0 3 年 から大 手スーパー がフェアトレードのコーヒー を販 売しています。 しかし、日本 におけるフェアトレードの 認 知 度 は 、欧 米 に比べてまだまだ低い の が 現 状 です。 フェアトレード商品には、このようなマークがついているものが多くあります。 これは、国際フェアトレード・ラベル機 構( F L O )が定めた「国際フェアトレー ド認証ラベル」 と呼ばれるものです。 このラベルは、その商 品の原 料が生 産されてから、輸出入・加工・製造工程 を経て「フェアトレード認 証 製 品 」として完 成 品になるまでの全 過 程で国 際 フェアトレード・ラベル基準が守られていることを証明しています。 この基 準には経 済 的 基 準 、社会的基準、環境的基準があり、生産者や労働者 の賃金、労 働 環 境に加え、農 薬 、薬 品の規 定 、遺 伝 子組みかえの禁止などの 安 全も保 障する基 準内容となっています。 経済的基準 賃金 労働環境 環境的基準 安 全を保 証 社会的基準 4 フェアトレードの問題点 品質の問題 フェアトレード商品の価格 フェアトレード商品の値段は普通の商品に比べて高い傾向がありますが、 それには理由があります。 一般商品 フェアトレード商品 60グラム 100円前後 50グラム 315円!! 1 生産者に適正な賃金を支払うため 輸入の際に安く買いたたくのではなく、時間と手間をかけて原料や製品を生産 フェアトレード 商 品 を生 産している国 では 生 産 技 術 が 未 熟 であり、生 産 団 体 の 規 模も小さくてチェック体 制 がうまく働かないため、品 質には問 題 のある ものもあります。 品 質 基 準 が 厳しい日本 に比 べ 、途 上 国 の 品 質 基 準 で は 、な か な か 一 定 レ ベルの 商 品 が 作 れません 。縫 製 品 を作る際 なども「 平 行 」や「 直 角 」の 概 念 が ないため 、技 術 指 導も大 変 なのです。 現 地 の 経 済 状 況 や 労 働 環 境も影 響しています。2 4 時 間 い つ でも明るい 照 明 が 使える日本と違 って、停 電 があったり暗 い 照 明 のもとで 作 業 をしな け れ ば ならなかったりするため 、糸や 布 地 のシミなどに気 づ かないこともあります。 しかし品 質 が 良くないと結 果 的 には 売 れません 。フェアトレ ード は「 援 助 」 ではないので 商 品 が 正しく評 価され 売 れ ないと意 味 が ない の で す。その ため 品 質 管 理 のレベルを少しず つ 上 げ ています。 また最 初 は 発 注 通りのものしか 作 れ なかった人 たちも積 極 的 に参 加 する ようになり、商 品 デ ザインや 検 品も自分 たちでできるようになってきています。 してくれた人に適正な賃金を支払っているため、 もとの値段が高くなります。 2 時間と手間 生産規模が小さく、技術的に未熟であるため、時間と手間がかかります。 その他、 例えばオーガニックコットンを栽培する際、除草剤、化学肥料、収穫をしやすくする ための枯葉剤を使わない代わりに、害虫駆除にはテントウ虫、収穫する時は自然に 枯れるのを待つか1つ1つ手で摘み取られていることなども理由としてあげられます。 3 生産調整の難しさ 農産物の場合は天候が生産に大きく影響するため、国や業界のサポートを得な いで生産するには大きなリスクがあります。 フェアトレードでは、天災、異常気象、 価格の暴落というリスクを資金力の乏しいフェアトレード団体と消費者で負担し ないといけないため、価格が通常の製品より割高になります。 4 輸送コスト フェアトレード商品は海外から輸入しているという点で輸送コストがかかります。 さらにフェアトレード商品がまだ日本でそれほど流通していないことや、商品の性 質上からも大量輸入が出来ないため、輸入コストが割高になってしまうのです。 5 フェアトレードを企業の戦略にしないために 消費行動が社会を変える このように社 会 貢 献 に役 立 っているフェアトレードですが 、その 認 知 度 が 高 まるとともに、大 企 業 の 参 入 が 増え、 「 企 業 が けを得るためのフェアトレード」 が 出てくるようになりました。残 念ながらフェアトレード 商 品 を扱 っていることを アピールし、イメー ジアップのために利 用している企 業もあります。しかし、最 初 はイメー ジアップ の ためであっても、私たち消 費 者が 進んでフェアトレード商 品 を 購 入 するようにな れ ば 、企 業 はフェアトレード商 品をもっと仕 入 れ 、販 売する ようになるでしょう。そうな れ ば フェアトレード 本 来 の目的 は 達 成されるように なります。最 終 的にフェアトレードを普 及させるか 否 かは 消 費 者 にか かっている のです。 私 たち消 費 者 には 社 会 を変える力があります。私たちがよく考えてものやサー ビスを購 入 することこそが 大 切 なのです。安さだけを求めるのではなく、価 格 の 先 にある背 景 、そして買い 物 で 私 たちにできることを考えることが大 切なのです。