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ナノテク報告書 2006B - SPring-8

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ナノテク報告書 2006B - SPring-8
SSPH18-71
2006B1638
BL11XU
GaAsSb 系バッファ層を導入した自己形成 InAs 量子ドットの
時間分解 X 線回折測定
Time-resolved X-ray diffraction measurements of self-assembled InAs
quantum dots on GaAsSb buffer layer
山口浩一 a、 海津利行 b、 高橋正光 b、 菅藤 徹 a、 築地伸和 a、 外村慎一 a、 水木純一郎
b
Koichi Yamaguchia, Toshiyuki Kaizub, Masamitu Takahashib, Toru Kantoa, Nobukazu Tsukijia,
Shinishi Tonomuraa, and Jun ichiro Mizukib
電気通信大学 a、 日本原子力研究開発機構
a
b
The University of Electro-Communications, b JAEA
BL11XU に 設 置 さ れ た 分 子 線 エ ピ タ キ シ (MBE) 回 折 計 を 用 い、GaAs(001) 面 上 へ の GaAsSb
層 の 形 成 過 程 の そ の 場 X 線 回 折 測 定 を 行 っ た。c-(4x4) GaAs(001) 面 上 へ Sb4 (+As4) フ ラ ッ ク ス
を 照 射 し た 表 面 に つ い て X 線 Crystal Truncation Rod (CTR) 散 乱 測 定 を 行 い、GaAsSbs 層 の Sb
組 成 を 評 価 し た 結 果、 表 面 1 ∼ 2 層 目 の Sb 組 成 が あ る 一 定 の 値 に な っ た 後、Sb 供 給 量 が 多
く な る に つ れ て、 内 部 で の Sb 原 子 と As 原 子 の 置 換 が 進 行 す る こ と が 分 か っ た。 こ の GaSb/
GaAsSb 層 の 形 成 過 程 は そ の 後 の InAs 量 子 ド ッ ト の 高 密 度 形 成 の 考 察 に お い て 重 要 な 知 見 で
ある。
The formation process of the GaAsSb layer on the GaAs(001) surface was studied by using a surface X-ray
diffractometer connected with molecular beam epitaxy (MBE), which was placed at the synchrotron radiation
beamline 11XU at SPring-8. The Sb4 (or Sb4 and As4) -irradiated c-(4x4) GaAs(001) surfaces were analyzed
by a X-ray Crystal Truncation Rod (CTR) scattering measurements. As the Sb irradiation time increased, Sb
content in 1st and 2nd GaAsSb surface layers increased and then saturated. For more Sb irradiation, it was
found that Sb atoms are incorporated below 3rd GaAsSb surface layer. These results will give some important
information for considerations about the formation mechanism of high-density InAs quantum-dots on the Sbirradiated GaAs surface.
背景と研究目的
おける超高速通信や従来の量子井戸レーザに
半 導 体 量 子 ド ッ ト 構 造 は、 零 次 元 電 子 系 の
比べて低閾値電流、 温度無依存性での動作が
特性を持つと期待され、 現在量子ドットを用
実 現 さ れ つ つ あ る が、 零 次 元 電 子 の 効 果 を
い た 光 通 信・量 子 情 報 処 理 デ バ イ ス、 低 消 費
実 現 し、 更 な る 高 性 能 化 を 図 る た め に は 量
電力デバイスの開発が試みられている。 例え
子 ド ッ ト の 精 密 な 作 製 制 御、 特 に 高 均 一 ( 量
ば量子ドットレーザーでは、 光通信波長帯に
子 準 位 の 不 均 一 幅 10 ∼ 15 meV)・ 高 密 度 ( 面
− 36 −
密 度 1×1011cm-2 以 上 ) 量 子 ド ッ ト を 良 質 な 結
成後、試料を 300℃にクエンチし、試料をロッ
晶性で形成することが重要である。 量子ドッ
キ ン グ し て (00L) 方 向 に 沿 っ た X 線 Crystal
トの作製方法としては、 ストランスキー・ク
Truncation Rod (CTR) 散乱強度分布を測定した。
ラ ス タ ノ フ (SK) 成 長 モ ー ド を 利 用 し た 自
入 射 X 線 の エ ネ ル ギ ー は 10 keV、 入 射 角 度
己形成法が広く用いられてきたが、 量子ドッ
は 0 ∼ 25°である。
トの高密度化と高均一化を同時に実現するこ
と は 困 難 で あ っ た。 そ こ で 我 々 は、GaAs 層
結果および考察
上 へ の InAs 量 子 ド ッ ト の 自 己 形 成 に お い て
Fig.1 に (a) Sb のみ 30 秒、(b)120 秒照射した
GaAsSb 歪 バ ッ フ ァ 層 を 導 入 し た 手 法 を 新 た
試 料 お よ び (c) Sb と As を 同 時 に 30 秒 照 射 し
に 提 案 し、GaAs 層 上 へ 直 接 形 成 し た 場 合 に
た 試 料 の X 線 CTR 散 乱 強 度 分 布 と 電 子 密 度
比 べ て 約 3 倍 の 密 度 と な る 1×1011cm-2 の 高 密
分布の計算によるフィッティングの結果をそ
度 InAs 量 子 ド ッ ト の 形 成、 さ ら に 結 晶 欠 陥
れ ぞ れ 示 す。L < 2 の 領 域 に お い て (a)、(b)
を有するコアレッセントドットの抑制を実
では L= 1、1.8 付近にそれぞれ極小値を持つ
現 し た [1]。 こ れ ら の 詳 細 な メ カ ニ ズ ム の 理
解 お よ び 高 密 度 InAs 量 子 ド ッ ト の 形 成 制 御
の た め に は、 下 地 の GaAsSb 歪 バ ッ フ ァ 層 や
InAs 2 次 元 層 の Sb 組 成 に つ い て の 定 量 的 な
情報が不可欠である。
本 研 究 で は、c-(4x4) GaAs 層 表 面 に 形 成 し
た GaAsSb 歪 バ ッ フ ァ 層 に つ い て そ の 場 X 線
回 折 に よ る Sb 組 成 の 定 量 的 な 解 析 を 行 い、
高 密 度 InAs 量 子 ド ッ ト を 形 成 す る た め の テ
ン プ レ ー ト と な る GaAsSb 歪 バ ッ フ ァ 層 の 構
造の解明を目指す。
実験
実 験 は BL11XU に 設 置 さ れ て い る 分 子 線
エ ピ タ キ シ (MBE) 装 置 と X 線 回 折 計 が 結 合
し た MBE 回 折 計 を 用 い て 行 っ た [2]。 エ ピ レ
デ ィ ー GaAs(001) 基 板 上 に GaAs バ ッ フ ァ 層
を 成 長 し た 後、c-(4x4) GaAs 表 面 に Sb4 分 子
の み を 照 射 す る 方 法 と Sb4 分 子 と As4 分 子 を
同 時 に 照 射 す る 方 法 で GaAsSb 歪 バ ッ フ ァ 層
を そ れ ぞ れ 形 成 し た。 成 長 条 件 は 基 板 温 度
480 ℃、Sb 圧 1.5 × 10-5 Pa、As 圧 4 × 10-4 Pa、
照 射 時 間 は 0 ∼ 240 秒 で あ る。GaAsSb 層 形
− 37 −
Fig. 1 CTR spectra for Sb (or Sb and As)
irradiated c-(4x4) GaAs(001) surfaces
(a) Sb 30s (b) Sb 120s (c)Sb and As 30s
プ ロ フ ァ イ ル で あ る の に 対 し、(c) で は L=1.8
層目、2 層目の Sb 組成はほぼ一定の値となっ
付近まで単調に強度が減少するプロファイ
て い る が、4 層 目 以 下 の Sb 組 成 は 照 射 時 間
ル が 得 ら れ た。Fig. 2 に は フ ィ ッ テ ィ ン グ に
が長くなるにつれて増大することが分かっ
用いた構造モデルを示す。 表面 2 層を被覆率
た。 こ れ ら の 結 果 か ら、GaAsSb 層 の 形 成 過
1 以 下 の Sb 層、3 層 目 以 下 を 1 ML の Ga 層
程 と し て、Sb 組 成 が あ る 一 定 の 値 に な っ た
と Sb+As を 交 互 に 配 置 し た 構 造 で あ り、 こ
後 は、Sb 供 給 量 が 多 く な る に つ れ て、 結 晶
の 構 造 モ デ ル に よ る 計 算 結 果 は Fig. 1 の 実 験
内部での Sb 原子と As 原子の置換が進行する
データと非常によく一致することが分かっ
ものと考えられ。
た。 このフィッティングにより評価した全試
料の Sb 組成を Table. 1 に示す。
本 研 究 で は 高 密 度 InAs 量 子 ド ッ ト を 形 成
す る た め の テ ン プ レ ー ト 構 造 で あ る GaAsSb
Sb と As を 同 時 に 照 射 し た 試 料 は Sb の み
層 の Sb 組 成 を 始 め て 定 量 的 に 示 し、 高 密 度
照 射 し た 試 料 に 比 べ て、4 層 目 以 下 の Sb 組
量子ドットの形成制御において重要な知見を
成が低くなる傾向が見られる。 特に、試料 (c)
得ることができた。
で は 6 層 目 と 8 層 目 の Sb 組 成 が 0 と な っ て
お り、 他 の 試 料 に 比 べ て Sb 組 成 が 顕 著 に 減
今後の課題
少 し て い る。 そ の 他 の 試 料 で は、Sb 組 成 は
GaAsSb/GaAs(001) 層 上 に さ ら に InAs 量 子
表 面 か ら 8 層 目 の 膜 厚 ま で 分 布 し て お り、1
ド ッ ト を 形 成 し た 場 合 に つ い て、GaAsSb 層
か ら の Sb 表 面 偏 析 に よ る wetting 層 の Sb 組
成 変 化 を 解 析 す る こ と が 必 要 で あ り、 こ れ
に よ り 高 密 度 InAs 量 子 ド ッ ト の 形 成 や コ ア
レッセントドットの抑制のメカニズムの詳細
を解明することができるものと期待される。
参考文献
[1] K. Yamaguchi and T. Kanto, J. Cryst. Growth 275
(2005) e2269.
Fig. 2 Structure model
[2] M. Takahasi, Y. Yoneda, H. Inoue, N. Yamamoto
and J. MIzuki, Jpn. J. Appl. Phys. 41 (2002) 6247.
キーワード
・ストランスキー・クラスタノフ (SK) 成長法
基板の持つ原子配列にそって薄膜結晶が成長
する成長様式の 1 つで、 成長初期には平坦な
2 次 元 成 長 が 起 こ り、 そ の 後 成 長 膜 厚 が あ る
臨界値を超えると 3 次元的な島成長に変化す
Table. 1 Sb composition
る成長モード
− 38 −
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