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ISO 11452シリーズの概要 前編: ECE R10.05 に関係する

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ISO 11452シリーズの概要 前編: ECE R10.05 に関係する
e-OHTAMA, LTD.
ISO 11452 シリーズの概要
前編: ECE R10.05 に関係する規格
株式会社 e・オータマ 業務グループ 佐藤智典
2016 年 8 月 26 日
目次
1
はじめに
1
はじめに
1
現代の自動車は、様々な目的のための、多数の電
2
ECE Regulation No. 10
1
子回路を含むようになっている。電子回路は電磁干
3
ISO 11452 シリーズ
2
渉に伴う誤動作を生じ得るし 、自動車で用いられて
4
試験法
4.1 共通事項 (ISO 11452-1:2005) . . . . .
4.1.1 変調 . . . . . . . . . . . . . .
4.1.2 ド ウェル・タイム . . . . . . .
4.1.3 周波数掃引ステップ . . . . . .
4.1.4 合否判定 . . . . . . . . . . . .
4.1.5 FPSC . . . . . . . . . . . . .
4.1.6 電源のインピーダンスの管理 .
4.1.7 DUT の接地 . . . . . . . . . .
4.2 ISO 11452-2:2004 (ALSE) . . . . . .
4.3 ISO 11452-3:2001 (TEM セル ) . . . .
4.4 ISO 11452-4:2005 (BCI) . . . . . . .
4.5 ISO 11452-5:2002 (ストリップライン )
いる電子回路の誤動作は、その機能や誤動作の症状
.
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.
3
3
3
3
4
4
4
5
5
5
6
7
9
試験での合格と現実の問題の防止
5.1 試験方法による結果の変動 . . . . . . . . . . .
5.1.1 試験法 . . . . . . . . . . . . . . . . .
5.1.2 DUT の配置 . . . . . . . . . . . . . .
5.1.3 DUT の接地 . . . . . . . . . . . . . .
5.1.4 ロード ・シミュレータのインピーダンス
5.2 試験レベル . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5.3 温度の影響 . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5.4 DUT の経年変化 . . . . . . . . . . . . . . .
5.5 安全関連機能と機能安全 . . . . . . . . . . . .
9
10
10
10
10
10
11
11
12
12
6
BCI 法 (置換法) での妨害レベルの変動
6.1 電流注入プローブの位置の影響 . . . . . . . .
6.2 ロード ・シミュレータのインピーダンスの影響
6.3 ハーネス長の影響 . . . . . . . . . . . . . . .
6.4 DUT の接地ワイヤの影響 . . . . . . . . . . .
12
12
13
13
14
Regulation No. 10[1][9] を取り上げ、それに含まれ
るイミュニティ評価の一部について説明する。
7
参考資料
14
2
5
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.
に応じて、ちょっとした問題から大事故までに至る、
様々な影響をもたらし得る。一方、携帯電話やその
他の無線デバイスの普及に代表されるように、電波
の利用は拡大し続けており、これは電磁干渉の発生
の機会を増大させている。従って、問題の防止のた
め、そのような電子コンポーネントが電磁妨害への
高い耐性 ( イミュニティ) を持つことが重要となっ
ている。
コンポーネントを供給する上での最低限のイミュ
ニティ要求や試験法は、国際的あるいは国家的な基
準、業界団体規格、自動車メーカー (OEM) 規格な
どで規定され得る。メーカー規格 (例えば Ford の
FMC1278[3] のような) などでより多くの試験やよ
り厳し い要求が適用されることも少なくないもの
の、ここでは国際連合が発行した規則である ECE
ECE Regulation No. 10
ECE Regulation No. 10 (ECE R10)[1][9] は 、車
両等の相互承認に関する国際的な協定 (1958 年協
定) に基づいて国際連合が発行した、路上での使用
が意図された車両やそのような車両への取り付けが
意図されたデバイスの EMC に関する規則である。
名前に ECE (UNECE; 国際連合欧州経済委員会)
が含まれているものの、ECE R10 で定められてい
る技術的要求事項は、欧州以外の複数の国でも受け
1
e-OHTAMA, LTD.
入れられている。ECE R10 については、規則その
もの
[1]
やその解説
[9]
– ISO 7637-2:2004+A1:2008 — Electrical
transient conduction along supply lines
を参照していただきたい。
ECE R10 の現時点での最新版は Revision 5 (ECE
R10.05) であり、これは、イミュニティ評価に関連
して、以下の国際規格を参照している:
only (電源線だけに沿う過渡電気伝導)
• IEC 61000-4 — Electromagnetic Compatibility (EMC) – Testing and measurement tech-
• ISO 11451 — Road vehicles – Vehicle test
methods for electrical disturbances by narrow-
niques (電磁両立性 (EMC) — 試験及び 測定
技術)
band radiated electromagnetic energy (路上走
行車 — 狭帯域放射電磁エネルギーによる電気
– IEC 61000-4-4:2004 —- Electrical fast
transients/burst immunity test (電気的
ファスト・トランジェント /バースト・イ
的妨害に対する車両試験法)
ミュニティ試験)
– ISO 11451-1:2005+A1:2008 — General
and definitions (一般原則及び用語)
– IEC 61000-4-5:2005 — Surge immunity
test (サージ・イミュニティ試験)
– ISO 11451-2:2005 — Off-vehicle radiation source (車両外放射源)
本稿では、これらの試験法のうち、ISO 11452 シ
– ISO 11451-4:1995 — Bulk current injection (BCI) (バルク電流注入 (BCI))
リーズに焦点を当てる。なお、ECE R10 は「コン
ポーネント 」という用語を特別な意味で用いている
が 、ここではそれを一般的な意味 (ECE R10 での
• ISO 11452 — Road vehicles – Component test
「 ESA 」に相当する) で用いる。
methods for electrical disturbances by narrowband radiated electromagnetic energy (路上走
行車 — 狭帯域放射電磁エネルギーによる電気
3
的妨害に対するコンポーネント試験法)
ISO 11452 シリーズ
ISO 11452 シリーズ [2] は、自動車用の電子コン
ポーネントの放射電磁エネルギー (電波、磁界など )
に対するイミュニティの評価の方法を定めた国際規
– ISO 11452-1:2005+A1:2008 — General
and definitions (一般原則及び用語)
– ISO 11452-2:2004 — Absorber-lined
shielded enclosure (吸収材に裏打ちされ
たシールド ルーム)
格である。これは、上記の ECE R10.05 での試験法
の一部として採用されている他、自動車メーカー規
格などでの試験法のベースとしても用いられている。
– ISO 11452-3:2001 — Transverse electro-
表 1 に 、ISO 11452 シリーズの現時点での最新
magnetic mode (TEM) cell (ト ラン ス
バース電磁モード (TEM) セル )
版、及び ECE R10.05 で参照されている版の、規格
– ISO 11452-4:2005+cor1:2009 — Bulk
current injection (BCI) (バルク電流注入
稿では、これらのうち、表 1 で太字で示した、ECE
番号、表題、及び適用可能な周波数範囲を示す。本
R10.05 で参照されている試験法について述べる。
ISO 11452 シリーズのその他の試験法については、
後編で述べる。
(BCI))
– ISO 11452-5:2002 — Stripline (ストリッ
プライン )
なお、正確な情報は、規格そのもの [2] を参照し
ていただきたい。
• ISO 7637 — Road vehicles – Electrical disturbance from conduction and coupling (路上走
行車 — 伝導と結合からの電磁妨害)
– ISO 7637-1:2002+A1:2008 — Definitions
and general considerations (定義及び一般
考察)
2
e-OHTAMA, LTD.
表 1: ISO 11452 シリーズ
規格
表題
周波数範囲
ISO 11452-1:2005
+ A1:2008
General principles and terminology
(一般原則及び用語)
—
ISO 11452-2:2004
Absorber-lined shielded enclosure
(吸収材に裏打ちされたシールド ルーム)
80 MHz∼18 GHz
ISO 11452-3:2001
Transverse electromagnetic mode (TEM) cell
(トランスバース電磁モード (TEM) セル )
0.01 MHz∼200 MHz
ISO 11452-4:2005
(+ cor1:2009)
Bulk current injection (BCI)
(バルク電流注入 (BCI))
1 MHz∼400 MHz
ISO 11452-4:2011
Harness excitation methods
(ハーネス励磁法)
1 MHz∼3 GHz
ISO 11452-5:2002
Stripline
(ストリップライン )
0.01 MHz∼400 MHz
ISO 11452-7:2003
+ A1:2013
Direct radio frequency (RF) power injection
(無線周波 (RF) 電力の直接注入)
0.25 MHz∼500 MHz
ISO 11452-8:2015
Immunity to magnetic fields
(磁界に対するイミュニティ)
DC, 15 Hz∼150 kHz
ISO 11452-9:2012
Portable transmitters
(可搬型送信器)
26 MHz∼5.85 GHz
ISO 11452-10:2009
Immunity to conducted disturbances in the extended audio
frequency range
(拡張オーディオ周波数範囲における伝導妨害へのイミュニティ)
15 Hz∼250 kHz
ISO 11452-11:2010
Reverberation chamber
(リバブレーション・チャンバー)
∼18 GHz
試験法
4
4.1
4.1.1
共通事項 (ISO 11452-1:2005)
変調
ISO 11452-1 では以下の変調が規定されており、
ECE R10.05 では 、800 MHz 以下では振幅変調、
800 MHz 以上ではパルス変調での試験が指定され
ている:
図 2: 変調 (ISO 11452-1:2005[2] より転載)
• 連続波 (CW): 一定振幅の、単一周波数の高周波
する。この時間 (ド ウェル・タイム、滞在時間) の
• 振幅変調 (AM): AM 放送のような音声周波で
振幅変調された送信を模擬する、変調周波数
1 kHz 、変調度 80% の振幅変調
最小値は ISO 11452-1 では 1 秒以上と規定されて
いるが、実際の時間は、それぞれの周波数の妨害に
対する DUT (被試験装置) の応答を確実に確認で
きるように、DUT の特性や動作条件に応じて決め
• パルス変調 (PM): GSM の TDMA (時分割多元
接続) の送信と似た、ton 577 µs 、周期 4 600 µs
(デューティー 1/8) の間欠的な出力
る必要がある。
DUT が間欠的に動く機能を持つ場合 (例えば、通
信やセンサの読み込みを 30 秒毎に行なう、など ) や
反応に遅れがある場合 (例えば 、センサ入力が時定
数 10 秒のフィルタに通されている、など ) には、ド
4.1.2 ド ウェル・タイム
ウェル・タイムをかなり長くすることが必要となる
試験に際しては、それぞれの周波数の妨害をある
かも知れない。これは試験時間を長くするので、特
時間づつ印加し 、DUT (被試験装置) の挙動を確認
3
e-OHTAMA, LTD.
R10.05 での要求範囲
ISO 11452-2:2004
ISO 11452-3:2001
ISO 11452-4:2005
ISO 11452-4:2011
ISO 11452-5:2002
ISO 11452-7:2003
ISO 11452-8:2007
ISO 11452-8:2015
ISO 11452-9:2012
ISO 11452-10:2009
0
10
100
1k
10k
100k
1M
10M
100M
1G
10G
図 1: ISO 11452 シリーズの各試験法の周波数範囲
に予備試験の段階では、動作周期を短くし 、あるい
の機能や用途、そしてメーカーや納入先の判断など
は応答時間を短くした試験用のサンプルを用意する
に依存する。一般には、安全に関係する機能につい
ことが助けとなるかも知れない。
てはどの試験レベルでも危険側の誤動作は認められ
ないであろうが、高い試験レベルでの安全側の誤動
4.1.3
作は認められるかも知れない。また、安全に関係し
周波数掃引ステップ
ない機能については、機能の劣化や、場合によって
試験に際しては、必要な周波数範囲内で周波数を
は喪失さえ認められるかも知れない。
変えながら、それぞれの周波数の妨害を印加する。
ECE R10 の場合、本稿で述べる範囲の試験でイ
周波数の変え方には一定の周波数間隔で上げていく
ミュニティ評価の対象となるのは「 イミュニティ関
方法 (リニア・ステップ ) と一定の比率で上げていく
連機能」(ECE R10.05[1][9] 参照) のみであり、妨害
方法 (対数ステップ ) があり、ISO 11452-1 では最大
の印加中やその後にイミュニティ関連機能の劣化が
のステップ幅は表 2 の通りとなる。
なければ 、合格と判断できる。
試験に際しては、評価が必要な機能、動作条件、
表 2: 周波数掃引ステップ
具体的な判定基準などを事前に同定し 、例えば監視
周波数帯
リニア・ステップ
対数ステップ
MHz
MHz
%
機器、信号源、試験用プログラムなどが必要であれ
0.01∼0.1
0.01
10
ばその準備を行なうべきである。安全に関係する機
0.1∼1
1∼10
0.1
1
10
10
能については、特に慎重な検討と準備が必要である。
10∼200
200∼400
400∼1 000
5
10
20
5
5
2
4.1.5
1 000∼18 000
40
2
FPSC
ISO 11452-1:2005 は 、イミュニティ評価に関連
して、試験信号と方法、functional status classification 、及び試験厳しさレベルから成る、FPSC (functional performance status classification) と呼ばれ
る枠組みを定めている。†1
4.1.4
合否判定
どの機能までが、どの判定基準に適合しなければ
†1 ISO 7637-2:2004 にも同様のものが含まれているが、failure
mode severity classification と呼ばれている。
ならないかは、適用する規格、そのコンポーネント
4
e-OHTAMA, LTD.
Functional status classification はデバイスやシ
ステムの妨害に対する反応の区分の枠組みで、次の
50
45
40
| Z | (ohms)
ようになっている:
• クラス A: 妨害の印加中とその後、デバイスやシ
ステムのすべての機能が設計通りに動作する。
35
30
25
20
15
• クラス B: 妨害の印加中、デバイスやシステム
のすべての機能が設計通りに動作する。だが 、
10
5
0
0.1
その 1 つ以上が規定された許容幅を超えても良
1
10
100
Frequency (MHz)
い。妨害が止められた後、すべての機能は自動
図 3: 5 µH/50 Ω AN のインピーダンス (理論値)
的に通常の限界内に戻る。メモリ機能はクラス
A のままでなければならない。
• クラス C: 妨害の印加中、デバイスやシステム
4.1.7
の 1 つ以上の機能が設計通りに動作しないが 、
DUT の接地
電源のマイナス側 (リターン 、グランド ) の接続
妨害が止められた後、すべての機能は自動的に
をどのようにするかは、実車での接続の方法から決
通常の限界内に戻る。
定する。
• クラス D: 妨害の印加中、デバイスやシステム
の 1 つ以上の機能が設計通りに動作せず、妨害
体に落とす場合のように 、実車で 200 mm 以下の
が止められ、デバイスやシステムが単純な「オ
ワイヤで接続することを意図している場合には、プ
ペレータ/使用」アクションによってリセット
ラス側の電源のみを AN を介して給電し 、マイナ
されるまで、通常の限界内に戻らない。
ス側の線はグランド ・プレーンに落とす。
マイナス側の線をそのコンポーネントの近くで車
マイナス側の線をプラス側と同様に離れた場所か
• クラス E: 妨害の印加中とその後、デバイスや
システムの 1 つ以上の機能が設計通りに動作せ
らワイヤで引く場合のように 、実車で 200 mm よ
りも長いワイヤで接続することを意図している場合
ず、デバイスやシステムの修理か交換なしでは
には、プラス側と同様、マイナス側も AN を介して
正しい動作に戻らない。
接続する。
だが、ECE R10.05 では、本稿で述べる範囲の試験
コンポーネントのボディをグランド・プレーンに
についてはこの表現は用いられていない。
接続するかど うかも、実車で車体に接続されるかど
うかから決定する。但し 、これらの規格では、コン
4.1.6
ポーネントの金属のケースが実車でシャーシに直接
電源のインピーダンスの管理
ボルト止めされるような場合であっても、コンポー
一部の試験を除き、電源のインピーダンスの管理
ネントは 50 mm の高さの絶縁台の上に置き、グラ
のため、所定の電圧を維持できる低インピーダンス
ンド・プレーンにワイヤで接地することが原則となっ
の電源から、AN (artificial network) †2を介して給
ている。
電する。
ISO 11452 シリーズの規格での試験で 12 V や
24 V などの直流電源に使用する AN は 5 µH/50 Ω
4.2
AN と呼ばれるもので、図 3 に示すようなインピー
ISO 11452-2:2004 (ALSE)
この 試験は 電波暗室 (absorber-lined shielded
ダンス特性を持つ。
enclosure; ALSE) 内で送信アンテナから電磁界を
放射して DUT (被試験装置) とハーネスをその電磁
界に曝すもので、最も素直な方法と言えるだろう。
だが 、この実施のためには電波暗室 (反射の低減
†2
のために内面に電波吸収体を取り付けたシールド ・
LISN (line impedance stabilization network) とも呼ば
ルーム) が不可欠であり、また高レベルの電磁界を
れる
5
e-OHTAMA, LTD.
得るためには強力な高周波電力増幅器が必要となる
ため、比較的高コストなものとなる。また、低い周
波数では充分な強度の電磁界の発生や結合を行なう
ことが難しくなるため、この方法での試験は、ある
程度高い周波数範囲に限られている。
T
DU
電界強度 (試験レベル ) は、DUT がない状態で、
0
20
アンテナの正面、アンテナから 1 m の距離 (ハーネ
1000
00
15
スの位置) で、電界プローブを用いて校正する。
100
100
試験に際して、DUT は高さ 90 cm の机の上のグ
50
ランド・プレーンの上の 50 mm の絶縁性の台の上
900
に置き、グランド・プレーンの前縁と平行な部分が
1.5 m の長さとなるように配置したハーネスを介し
てロード・シミュレータ (対向器) に接続する。送信
アンテナは、ハーネスから 1 m 離し 、1 GHz 以下
図 5: ISO 11452-2 試験セットアップ (≥ 1 GHz)
の試験ではハーネスの中央、1 GHz 以上の試験で
は DUT に向けて置き、ハーネスと DUT の双方に
電磁界を照射する (図 4, 図 5)。
ECE R10 には、REESS 充電モード †3での試験の
セットアップについての特別な規定も含まれている
(図 6)。
ÿ ÿ
ÿÿÿ
ÿÿÿÿ
ÿÿÿÿ
DU
T
02
s
es
ÿ
T
DU
0
20
00
15
1000
ÿ
ÿ
ÿÿ
ÿ
ÿ
ha
0
0
+1
0
10
0 -0 +
10 100 -0 0
10
1
10
00
2
15
LV
50 5
00
2
ÿ
1
図 6: ISO 11452-2 試験セットアップ (ECE R10.05,
REESS 充電モード ; ≤ 1 GHz)
900
100
100
50
ÿ
ÿ
ÿÿ
ÿ ÿÿÿ
ÿ
ÿ
ÿÿ
ÿÿ
ÿ
ÿ
HV
ch
4.3
ISO 11452-3:2001 (TEM セル )
この試験では 、DUT は 、TEM セル内に発生さ
せられた TEM 波†4に曝される。
図 4: ISO 11452-2 試験セットアップ (≤ 1 GHz)
この試験で用いられる TEM セルはそれ自身が
シールド されていることから、本稿で述べる他の試
験法と異なり、基本的には電波暗室やシールド・ルー
ムを必要としない。†5この試験法は低い周波数から
†4 transverse electromagnetic wave (横電磁界波)。電磁界
が進行方向と直角の方向の成分のみから成る波。
†5 但し 、DUT を外部の対向器と接続するワイヤが充分にフィ
ルタされていない場合には電磁界の過剰な漏洩が生じ る可能性
があるため、その懸念がある場合はシールド・ルーム内で使用し
た方が安全であろう。
†3 REESS 充電モード とは、電気自動車やプラグ イン・ハイ
ブ リッド 自動車の動力用バッテリを外部からの給電で充電する
状態のこと。
6
ÿ
100
rn
er
arg
C
/D
AC
20
ÿ ÿ
ÿÿÿ
ÿ
ÿ
ÿ
ÿ
ÿ
e-OHTAMA, LTD.
使用可能であり、また比較的小さい電力で高い電界
強度を得ることができる。だが、標準的な 200 MHz
までで使用可能なセルの高さは約 0.6 m で、DUT
の高さはセルの高さの 1/6 までに制限されるため、
b
大きな DUT の試験には適さない。
試験に際しては、セルの片側の同軸コネクタに電
DUT
50
力増幅器から高周波電力が注入され、セル内を伝搬
した後、反対側のコネクタに取り付けられた終端器
W
で吸収される (図 7)。セル内の電界強度は、セルに
L
注入された正味電力 (net power) 、あるいはセルか
図 9: ISO 11452-3 — DUT とハーネスの配置 — DUT
のみへの照射
ら出て終端器に向かう電力から、計算によって求め
られる。
基本的に、セル内には TEM 波のみが発生するも
のと想定されているが、セルの寸法から決まる高次
モード のカットオフ周波数よりも高い周波数の電力
がセルに注入された場合、セル内に高次モード の電
磁界が発生し 、試験に悪影響を与える可能性がある。
b
この問題の防止のため、この規格では、試験周波数
DUT
の上限をセルの寸法から決まるカットオフ周波数以
b/6
下に制限するとともに、電力増幅器とセルのあいだ
W
にカットオフ周波数の 1.5 倍以上で 60 dB 以上の
L
減衰を持つ高域遮断フィルタを入れるようになって
図 10: ISO 11452-3 — DUT とハーネスの配置 — DUT
とハーネスへの照射
いる。
DUT のみを電磁界に曝す場合、DUT はセルの
中央付近、セルの底面から 50 mm の高さに置き、
ハーネスはシールドしてセル底面に沿って引く (図
また、DUT が良くシールド されている場合、高い
9)。ハーネスも電磁界に曝す場合、DUT はセルの
中央付近、セルの底面からセルの高さの 1/6 の高
さに置き、ハーネスはセル側面下端に付けられたコ
周波数においてもハーネスの影響が支配的となるこ
とがある。このような状況では、ハーネスに妨害を
ネクタ・パネルに向けて斜めに引く (図 10)。
えると考えられる。
注入することで DUT のイミュニティの評価を行な
BCI 法†6では、高周波の妨害を電流注入プローブ
(BCI プローブ ) を用いてハーネスに注入すること
で、DUT のイミュニティを評価する。この試験で
は電磁界を空間に放射することは意図されていない
ものの、試験に際しては相当の電磁界が放射される
ため、試験はシールド・ルーム内で行なうことが原
則となる。
図 8: TEM セルの例 (写真は Teseq 社提供)
注入する妨害の強度は、置換法か電力制限付き閉
ループ法のいずれかの方法で設定する:
• 置換法:
4.4
あらかじめ、電流注入プローブを校正治具に取
ISO 11452-4:2005 (BCI)
り付けた状態で、各周波数で所望の電流を発生
DUT が小さい場合、低い周波数の電磁妨害は、主
†6 BCI は bulk current injection の略で、bulk current は
ハーネス上のコモン・モード 電流の総量のこと。
にハーネスを介して DUT に入り込む傾向がある。
7
e-OHTAMA, LTD.
ÿÿÿÿ
ÿÿÿÿÿÿ
ÿÿÿÿÿ ÿ ÿÿÿ
LPF ÿÿÿÿÿÿ RFR
ÿ ÿÿÿÿÿÿÿÿÿÿÿÿ ÿ ÿÿÿÿÿ
60 dB ÿÿÿ6 ÿÿ
ÿÿ
ÿ
ÿ ÿ
ÿÿÿÿ
ÿÿ
ÿ
ÿ
DUT
Rÿ ÿÿÿ
ÿÿÿÿÿÿÿÿ
L LPF
図 7: ISO 11452-3 試験構成 (正味電力での制御)
させるために電流注入プローブに印加する必要
が試験レベルに達するまで、電流注入プローブ
がある進行波電力を求めておく。
に印加する電力を増加させる。
試験に際しては、図 11 に示すように、DUT を
但し 、通常、電流注入プローブに印加する電力
グランド・プレーンの上の 50 mm の絶縁性の
は、事前に校正治具上で求められた電力の 4 倍
台の上に置いて 1 m のハーネスを介してロー
までに制限される。
ド・シミュレータに接続し 、ハーネスの所定の
位置に取り付けた電流注入プローブに、あらか
ÿ
ÿÿ
ÿÿ
ÿ
ÿ
じめ求められた、所望の妨害を発生させるため
T
DU
+10
に必要な進行波電力を印加する。
dc
50 -0
電流注入プ ローブ は 、DUT から 150 mm 、
450 mm 、及び 750 mm の位置に取り付けて
試験を行なう。但し 、ECE R10 では 150 mm
00
10
の位置での試験のみが要求されている。
ÿÿÿÿÿÿÿÿ
dc: 150, 450, d 電流注入プローブと DUT のあいだに電流モニ
900
9
タ用のプローブを入れることもあるが、その場
合も、測定された電流を出力の制御に用いるこ
図 11: ISO 11452-4 試験セットアップ (置換法)
とはない。
ECE R10 には 、REESS 充電モード での試験
のセットアップについての特別な規定も含まれ
ÿÿ
ÿÿ ÿ
ÿÿÿÿÿ
ている (図 13)。
DU
T
50 -0
+10
• 電力制限付き閉ループ法:
ÿ
この場合も、あらかじめ、電流注入プローブを
校正治具に取り付けた状態で、各周波数で所望
50
0
90
00
10
の電流を発生させるために電流注入プローブに
印加する必要がある進行波電力を求めておく。
ÿÿÿÿÿÿÿÿ
9
900
試験に際しては、図 12 に示すように、DUT を
ÿÿÿÿÿÿÿÿ
グランド・プレーンの上の 50 mm の絶縁性の
図 12: ISO 11452-4 試験セットアップ (電力制限付き閉
ループ法)
台の上に置いて 1 m のハーネスを介してロー
ド・シミュレータに接続し 、ハーネスの所定の
位置に電流注入プローブと電流測定プローブを
取り付け、電流測定プローブで測定された電流
ISO 11452-4 ではこれらの 2 つの方法の使い分け
8
e-OHTAMA, LTD.
ÿ
ÿÿ
ÿÿ
ÿÿ
er
C
/D
AC
HV
ÿ
ÿ
ÿ
ÿ
ÿ
ÿÿ
ÿ
ÿ
ÿ
ÿÿ
ÿÿ
ÿ
ÿ
ÿÿ
ÿ
ÿ
ÿ
ÿÿ
ch
arg
10
ÿÿ
ÿ ÿ
ÿÿ
4.5
ÿ
ÿÿ
ÿÿ
ÿÿ
T
DU
ÿ
s
es
rn
ha
10
ÿ
ÿ
この試験法は、DUT を妨害に曝すために用いる
こともできるものの、主にハーネスへの妨害の注入
dc
00
+10
00
+1
0 -0
0
ÿ
00
+3
ÿÿ
ÿ
のために用いられている。この試験で用いられるス
00 -0
ÿ
17
LV
ÿ
ISO 11452-5:2002 (スト リップラ
イン )
ト リップラインは上述の TEM セルと異なりシー
ÿÿÿÿÿÿÿ
dc: 150 mm
ルド されておらず、周辺にも電磁界が放射されるた
50 5
め、シールド ・ルームが必要となる。
この規格では 50 Ω と 90 Ω のストリップライン
が規定されてるが、図 14 、及び図 15 では、50 Ω ス
図 13: ISO 11452-4 試験セットアップ (REESS 充電モー
ド)
トリップラインを例として示している。
試験に際しては、ストリップラインの片側のコネ
クタに電力増幅器から高周波電力が注入され、スト
リップライン内を伝搬した後、反対側の終端器で吸
は述べられていないが 、例えば ECE R10 や Ford
FMC1278 で置換法の使用が指定されているよう
に、これを参照する規則や規格ではいずれかの方法
収される。ストリップライン内の電界強度は、スト
の使用が指定されることが多い。
て求めるか、あるいは電界プローブを用いた校正を
[3]
リップラインに入力された正味電力から計算によっ
行なう。
そのような指定がない場合、少なくとも低い周波
数範囲においては、
妨害をハーネスに印加する場合、アクティブ導体
• DUT (及びロード・シミュレータ) のグランド・
の下、グランド・プレーンから 50 mm の高さにハー
プレーンに対するインピーダンスが低い場合、
ネスを 1 m 以上引き、DUT 自身はその外側に置く
置換法では指定された試験レベルよりもかなり
大きい電流が流れるが、電力制限付き閉ループ
(図 14)。
電磁界を DUT に直接印加したい場合には、DUT
法では実際にハーネスを流れる電流 (電流測定
をアクティブ導体の下に置く。だが、この方法での
プローブの位置で観測される電流) が指定され
試験では、DUT の大きさはアクティブ導体の高さ
た値を超えないように調整される
の 1/3 (50 mm) までの小型のものに制限される。
• DUT が接地されていない場合のように、DUT
のグランド・プレーンに対するインピーダンス
00
43
00
25
が高い場合、いずれの方法でも実際にハーネス
0
20
0
+2 0
-
に流れる電流は設定された試験レベルに達しな
0
20
いであろうが、電力制限付き閉ループ法での試
50
DUT
験は試験レベルを 2 倍としての置換法での試験
740
150
と似た状況となり、置換法を用いた場合よりも
1500
設定された試験レベルに近い電流が流れる
図 14: ISO 11452-5 試験セットアップ
ことも考慮し 、電力制限付き閉ループ法の方が適切
であればそちらを、さもなくば置換法を選択すれば
良いだろう。最終的にどちらの方法での評価が行な
われるかがわからない状況で予備試験を行なおうと
5
している場合のように、いずれの方法よりも有意に
甘くならないような形での評価を行ないたい場合、
試験での合格と現実の問題の防
止
試験レベルを 2 倍 (ばらつきなどに対する余裕を取
試験に合格させることだけが目的となり勝ちであ
りたいのであればそれ以上) としての置換法での試
るものの、最終的には、実際に使用された時に問題
験を考える価値もあるかも知れない。
9
e-OHTAMA, LTD.
などで特に要求がない限り、ハーネスを素直に配置
できるような、あるいは DUT の正面をアンテナに
向けた配置のみで試験すれば良いと考えるかも知れ
ない。だが 、特に高い周波数においては、DUT の
どの面をアンテナに向けるかによって結果が有意に
変わる可能性がある。
ISO 11452-3 (TEM セル ) では、コネクタ・パネ
ルへの接続の都合上、DUT の置き方の自由度は下
がるものの、この場合も DUT の置き方によって結
図 15: ストリップラインの例 (写真は Teseq 社提供)
果が有意に変わる可能性がある。
を起こすリスクが低いことが目標となろう。だが 、
ECE R10 などで定められたイミュニティ要求は必
ずしも実際の使用状況で起こり得る最も厳しい状況
ISO 11452-4 (BCI) や ISO 11452-5 (ストリップラ
イン ) でのハーネスへの注入の場合でも、特に DUT
が良くシールド されていない場合、DUT のどの面
を下に向けるかによって結果が変わる可能性がある。
を模擬するものではないし 、試験の方法などの違い
5.1.3
によって大きく異なった結果が得られることも珍し
くない。このため、EMC 試験に合格した装置が 、
実際の使用に際して電磁妨害に伴う問題を起こすと
DUT の接地
ISO 11452 シリーズでは、DUT の筐体の接地に
関しては、一般に、それが実車で接地されないので
いう状況も起こり得る。
あれば接地しないように述べられているだけで、そ
そのような問題の防止のためには、単に規格に従っ
れ以上の詳細な規定はない。試験の結果は筐体の接
て最小限の試験を行なうだけではなく、実際の使用
地の有無によって大きく異なる可能性があるが、ど
状況を考え、そのイミュニティをできる限り適切に
ちらが厳しくなるかの予測は簡単ではない。
評価できるように試験を行なうことが望ましい。
また、DUT の筐体や 0 V (グランド ) をグラン
ド・プレーンにワイヤで接続する場合、そのワイヤ
5.1
がかなりのインダクタンスを、従って高い周波数で
試験方法による結果の変動
はかなり高いインピーダンスを持ち、その線の長さ
5.1.1
試験法
や配置が結果に影響を与える可能性がある。そのイ
上で述べた 4 つの試験法は基本的には同じ現象を
ンダクタンスが共振 (例えば DUT とグランド ・プ
模擬しようとしているものであり、ECE R10.05 の
レーンとのあいだの静電容量との並列共振) に関係
場合、試験法を任意に組み合わせて 20 MHz∼2 GHz
している時には、§6.4 でもう少し詳しく述べるよう
の周波数範囲をカバーすれば良いものとなっている。
に、さらに複雑な状況が引き起こされ得る。
だが 、実際には、DUT への影響は試験法によっ
て大きく異なり得る。例えば 、ISO 11451-4 (BCI)
5.1.4
ロード ・シミュレータのインピーダンス
は 400 MHz まで (ISO 11452-4:2011 の TWC 法
良くシールド されていないなどの場合、特に高い周
ISO 11452 シリーズでは、一般に、ロード・シミュ
レータ (対向器) の金属の筐体はグランド ・プレー
ンに接続し 、それへの電源は擬似電源回路網 (AN)
波数で、この試験法では DUT のイミュニティを適
を介して接続する。
では 3 GHz まで ) の周波数帯で適用可能であるが、
ケーブルが良くフィルタされているが DUT 本体が
一見、これはロード・シミュレータを DUT 側か
切に評価できなくなる可能性が高まる。
ら見たインピーダンスを低く抑えるように見えるか
も知れないが、例えば、ロード・シミュレータ内の回
5.1.2
DUT の配置
路が筐体に接続されていない場合や、高インピーダ
ンスの入出力回路が用いられている場合などには、
ISO 11452-2 (ALSE) では DUT のどの面をアン
DUT 側の端子のインピーダンスは高い状態のまま
テナに向けるかは述べられておらず、メーカー規格
10
e-OHTAMA, LTD.
となり得る。ロード・シミュレータ内の回路やその
先の機器への妨害の影響を低減するためにフィルタ
やフェライト・コアを付けた場合、それもこのイン
ピーダンスに影響を与える。
ロード・シミュレータの DUT 側の端子が電源入
力と接続されている、あるいはロード・シミュレー
タなしで AN を直接接続した場合でも、AN のイン
ピーダンスは 100 MHz 以下についてのみ規定され
ているため、高い周波数でのインピーダンスは不明
図 16: 近接試験用アンテナの例 (写真は Schwarzbeck 社
提供)
のままとなる。
ロード・シミュレータのインピーダンスはどの試
験法でも影響を与え得るが、BCI 法の場合が最もわ
も高い周波数の無線デバイスが身近なところでも用
かりやすく、これについては §6.2 で述べる。
いられるようになっており、その拡大は今後も続く
ことが予期される。古い自動車の中で新しい無線デ
5.2
バイスを使う、あるいは古い自動車が新しい無線設
試験レベル
備の近くを走行するような状況は普通に考えられる
ECE R10.05[1][9] は、
「 イミュニティ関連機能」を
であろうから、どこまでを試験するかは別として、
持つコンポーネントに対するイミュニティ要求レベ
より高い周波数の妨害に対するイミュニティへの配
ルを、そのコンポーネントの使用環境やリスクの程
慮も必要となり得る。
度とは無関係に定めている。
例えば ECE R10.05 の ALSE 法でのイミュニティ
5.3
要求レベルは 30 V/m であり、これは住商業環境向
けの一般的な製品で要求されることが多い 3 V/m
温度の影響
一般に 、EMC 試験は常温でのみ行なわれるが 、
よりもかなり高い。しかし 、強力な放送設備やレー
実際の使用に際してはかなり広い温度範囲 (例えば 、
ダ ーは 、通常は地上への過度の照射を抑えるよう
−20∼+65 ◦ C 、−40∼+150 ◦ C など ) で所望の性能
に配慮されている筈ではあるものの、自動車を強い
を発揮することが期待されることが多い。
電磁界に曝し 、影響を与える可能性がある (例えば
電子部品の特性は温度の影響を受けるため、常温
[8] の #356 、#394 、#758 、また Ford FMC1278[3]
RI 114 を参照)。また、携帯電話やその他の無線デ
での試験で問題ないと判断されたコンポーネントが、
低温や高温の環境で実際に EMC 問題を起こす可能
バイスが車内や車両付近で使用された場合を考える
と、粗い推定†7で、1 W の送信機から 20 cm 程度、
性もある。
例えば 、アルミ電解コンデンサのインピーダンス
10 W の送信機からならば 70 cm 程度で 30 V/m
[10]
を超え得る。従って、誤動作に伴うリスクが高い場
は低温では著しく増大し
、これは EMC の有意
合には特に、このイミュニティ・レベルは充分なも
な悪化を招く可能性がある。半導体、抵抗、電解コ
のとは言い難いだろう。
ンデンサ以外のコンデンサなどの特性も、それほど
劇的ではないものの、温度の影響を受ける。
無線デバイスが近傍で使用される可能性がある場
合、その要求は ECE R10.05 には含まれていないも
実際に極限温度で EMC 試験を行なうことは実際
のの、その影響の評価のために、例えば ISO 11452-9
的でなく、通常はそれを行なうように要求されるこ
(後編でもう少し詳しく述べる) や Ford FMC1278[3]
RI 115 で述べられているような近接試験法を用い
とはないものの、温度やその他の環境条件が EMC
にどのような影響を与えそうかを検討することが 、
ることができる。
場合によってはその影響を実際に評価することが必
また、ECE R10.05 はイミュニティ要求を 2 GHz
要となるかも知れない。
までの周波数について定めているが、既にこれより
√
E ' 7 P /d による。但し 、放射源の近傍での電磁界の強
度はこのような単純な計算に従うとは限らない。
†7
11
e-OHTAMA, LTD.
5.4
EMC についてのガ イド [6][7] が IET †8から発行さ
れており、これは自動車用のコンポーネントに関連
しても有用となり得る。
DUT の経年変化
通常、EMC 試験は、健全な、ご く少数の (しば
しば 1 台だけの) サンプルを用いて行なわれる。実
際に出荷される製品がその試験されたサンプルと同
程度の EMC 性能を持つかど うかという議論もある
BCI 法 (置換法) での妨害レベ
ルの変動
6
ものの、出荷された後での経年変化の考慮も重要と
なり得る。
コンポーネントが新品の状態では高いイミュニ
6.1
ティ・レベルを持っていたとしても、実際に自動車
電流注入プローブの位置の影響
に取り付けられた後、激しい温度変化、水分や汚染
図 18 は、1 m のハーネス (単一のワイヤ) のロー
物質、振動/衝撃、電気的サージなどに曝されなが
ド ・シミュレータ側を短絡状態とした時に 、50 Ω
ら使用されるあいだに、例えばシールド やグランド
で終端された DUT 側で観測された妨害レベル (校
の接続の悪化 (図 17) 、コンデンサの容量減少、防
正治具でのレベルに対する相対値) を示す。注入プ
護素子の劣化などに伴い、実際に問題を生じるとこ
ローブは、DUT 側から 15 cm 、45 cm 、及び 75 cm
ろまでイミュニティが低下することがあり得る。
の位置に置いた。
この 15 cm の時のカーブを見ると 75 MHz 付近
このような問題の防止のためには、経年変化によ
る問題を起こしにくいように設計することに加え、
(そしてその 3 倍と 5 倍) の妨害レベルが著し く低
耐環境性試験や加速寿命試験の後のサンプルでの
くなっているが、これは注入プローブとロード・シ
EMC 試験を行なうことを考える価値があるかも知
れない。
ミュレータのあいだのハーネスの電気的長さが λ/4
(そして 3/4 λ 、5/4 λ) となって高インピーダンス
を生じ 、妨害の注入を妨げているところである。妨
害が極度に入りにくくなる周波数は注入プローブの
位置によって変化し 、3 箇所での最大値を見れば 、
意図したレベル (0 dB) をかなり下回ってはいる部
分はあるものの、全周波数範囲である程度のレベル
を得られている。注入プローブの位置を変えて試験
図 17: 塩化カルシウムの存在下で腐食した銅のスプリン
グ・フィンガー (上) とアルミニウムのケース (下)
を繰り返すことが明示的に要求されていなかったと
しても、注入プローブの位置を変えて試験を繰り返
すことは、この特性の試験結果への悪影響を低減す
るために有用である。
5.5
安全関連機能と機能安全
ハーネス: 1m ロード・シミュレータ側: 短絡 DUT側: 50Ω
安全に関係するコンポーネントの場合、その安全
妨害レベル (dB)
関連機能の誤動作、特に危険をもたらし得る誤動作
の発生の可能性を低く抑えることが非常に重要と
なる。イミュニティ試験で妨害への耐性を確認する
ことは役に立つが、それだけで充分であるとは言え
ない。
この種の電気/電子システムには機能安全の枠組
みの適用が求められるようになっており、ベースと
周波数 (Hz)
なる機能安全規格として IEC 61508[4] が 、そして
図 18: 電流注入プローブの位置の影響
自動車産業向けの規格として ISO 26262[5] が発行
されている。機能安全の枠組みの中での EMC の
扱いはまだ発展中であるものの、機能安全のための
†8 The Institution of Engineering and Technology. イギ
リスを中心とする工学系の学会。
12
e-OHTAMA, LTD.
6.2
ロード・シミュレータのインピーダン
スの影響
ある程度以上の周波数でのインピーダンスを下げる
ことができる。ISO 11452-1:2015[2] では 、デジタ
ル入出力については 1 nF のコンデンサの使用が示
図 19 は、1 m のハーネス (単一のワイヤ) のロー
されており、これは 1 MHz で 160 Ω 、20 MHz で
ド・シミュレータ側の状態を変化させた時の、50 Ω
は 8 Ω 程度のインピーダンスを与える。20 MHz
で終端された DUT 側で観測された妨害レベルを
では 0.1 nF でも 80 Ω 程度のインピーダンスが得
示す。ここで妨害レベルとして示したものは、注入
られ、高い周波数範囲の試験ではこの程度の容量の
プローブの位置を 15 cm 、45 cm 、75 cm とした時
コンデンサでも相当の効果を期待できる。高い周波
の最大値の、校正治具でのレベルに対する相対値で
数においてはこれをグランド・プレーンに接続する
ある。
ワイヤの影響も無視できなくなるため、ロード・シ
ハーネスのロード・シミュレータ側を開放とした
ミュレータの筐体の金属面がグランド・プレーンに
時には低い周波数でのレベルが極度に低くなってい
直接接触するようにし 、その筐体に上記のコンデン
るが、これは低い周波数の妨害を DUT に注入する
サを最短のリード で接続すると良いだろう。
ためには妨害電流がロード・シミュレータを通って
流れなければならないためであり、ロード・シミュ
短絡
レータの DUT 側の端子のグランド・プレーンに対
50Ω
妨害レベル (dB)
するインピーダンスが高い時に実際に生じ得ること
である。逆に、ハーネスのロード・シミュレータ側
をグランド・プレーンに短絡した時には、低い周波
数でのレベルは高めとなっている。
ハーネスのロード・シミュレータ側を 50 Ω で終端
50Ω + チョーク・コイル
した時は、ハーネスが波長に対して充分に短くなる
開放
低い周波数でのレベルは意図した通りとなっている
周波数 (Hz)
が、50 Ω の終端はこの測定でテスト・ハーネスとし
図 19: ロード ・シミュレータのインピーダンスの影響
て用いたワイヤの特性インピーダンス (直径 1 mm
で 300 Ω 、直径 5 mm で 200 Ω 程度と推定される)
よりもかなり低いことから、高い周波数でのカーブ
は短絡の時と幾分似たものとなっている。ロード ・
シミュレータ側にチョーク・コイルを追加した時、中
6.3
程の周波数での大きな低下が見られたが 、これは、
例えばロード・シミュレータが妨害の影響を受ける
ハーネス長の影響
図 20 に示すように、ハーネス長も妨害の注入に大
きな影響を与えるので、規格で規定されたハーネス
のを防ご うとしてチョーク・コイル (フェライト・
長を厳守するとともに、ハーネスの端を適切なロー
コア) を取り付けている時に実際に生じるかも知れ
ド ・シミュレータ (あるいはその代わりとなる RF
ないことである。
境界) に接続し 、その位置でインピーダンスを管理
BCI 試験で低い周波数の妨害を適切に印加する
するようにすべきである。
ためにはロード・シミュレータ側のインピーダンス
ロード・シミュレータの先に計測器などを接続す
を低く保つことが非常に重要である。そのインピー
ることは珍しくないが 、その場合もロード・シミュ
ダンスが高い状態で試験を行なった場合、妨害が意
レータの位置でインピーダンスを管理する必要があ
図したように印加されていたならば検出できていた
り、ロード・シミュレータの位置に単なる中継ボッ
筈の、そして実際の使用時に大きな問題を引き起こ
クスのようなものを置いてはならない。ロード・シ
すかも知れない、潜在的なイミュニティ問題を見落
ミュレータの位置でインピーダンスが適切に管理さ
とすことになるかも知れない。
れていない場合、その先に接続されたケーブルや装
必要な場合、ロード・シミュレータの DUT 側の
置も妨害の注入に直接影響を与え、試験の結果に予
各端子とその金属の筐体とのあいだにコンデンサを
付け、筐体をグランド・プレーンに直接接続すれば 、
13
期できない変動をもたらすことが予期される。
e-OHTAMA, LTD.
の誘電率によって変動するので、これらの条件の違
!"#$%&'()*+,-#$./&
.01$
いによって共振周波数が変化し 、一部の周波数での
試験結果の大きな変動を引き起こす可能性がある。
3
(+10dB)
1
(0dB)
妨害レベル
45cm
0.1
(-20dB)
図 20: ハーネス長の影響
0.01
1M
100M
10M
400M
周波数 (Hz)
図 21: DUT の接地ワイヤの影響
6.4
DUT の接地ワイヤの影響
図 21 は、DUT 側の 50 Ω の終端がグランド・プ
レーンではなく DUT の金属の筐体とのあいだに接
7
続され、その筐体が接地ワイヤでグランド・プレー
ンに接続されている状態を考え 、BCI 法で妨害を
印加した際に DUT に注入される電流 (あるいは 、
ハーネスの DUT 端と DUT の筐体のあいだに誘起
する電圧) を推定した結果を示す。ここでは、接地
ワイヤとして長さ 15 cm 程度の細いワイヤが用いら
参考資料
[1] ECE Regulation No. 10 Revision 5, Uniform provisions concerning the approval
of vehicles with regard to electromagnetic compatibility, United Nations, 2014,
http://www.unece.org/trans/main/welcwp29.html
[2] ISO 11452 series, Road vehicles – Component
test methods for electrical disturbances by narrowband radiated electromagnetic energy
れた場合を想定してそのインダクタンスを 150 nH
と、また比較的小さい DUT を想定して DUT の金
属の筐体とグランド・プレーンとのあいだの静電容
• ISO 11452-1:2005, General and definitions,
ISO, 2005
量を 10 pF と仮定した。また、ロード・シミュレー
タ側は先の例と同様にグランド・プレーンに短絡さ
• ISO 11452-2:2004, Absorber-lined shielded
enclosure, ISO 2004
れているものとし 、ハーネスの特性インピーダンス
と電気的長さは前に示した実測結果に合わせるよう
• ISO 11452-3:2001, Transverse electromagnetic mode (TEM) cell, ISO, 2001
に設定した。
ここで、注入プローブの位置と無関係に現れる著
• ISO 11452-4:2005, Bulk current injection
(BCI), ISO, 2005
しいデ ィップが 130 MHz 近傍に見られるが 、ここ
は 150 nH と 10 pF が並列共振して高インピーダン
• ISO 11452-5:2002, Stripline, ISO, 2002
スを生じているところである。実際の試験でこのよ
• ISO 11452-1:2015, General and definitions,
ISO, 2015
うな状況となった場合、DUT が接地されているに
もかかわらず、一部の周波数で DUT のグランド ・
[3] FMC1278, Electromagnetic Compatibility Specification For Electrical/Electronic Components
and Subsystems, Ford Motor Company, 2015,
http://www.fordemc.com/docs/requirements.htm
プレーンに対するインピーダンスが高くなり、妨害
電流の流入が妨げられることになる。
また、接地ワイヤのインダクタンスは接地ワイヤ
の寸法や配置によって変動し 、DUT とグランド・プ
[4] IEC 61508 series, Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safetyrelated systems
レーンのあいだのキャパシタンスは DUT のグラン
ド・プレーンに対する置き方やそのあいだの絶縁材
14
e-OHTAMA, LTD.
[5] ISO 26262 series, Road vehicles — Functional
safety
[6] Overview of techniques and measures related to
EMC for Functional Safety, IET, 2013,
http://www.theiet.org/factfiles/emc/
[7] 機能安全のための EMC の達成のための最初の
実際的なテクニック, Keith Armstrong, 佐藤 訳,
2013,
http://t-sato.in.coocan.jp/emcj/
[8] バナナの皮, EMC Journal, 佐藤 訳, 2006–2013,
http://t-sato.in.coocan.jp/banana/
[9] ECE Regulation No. 10.05 の概要, 株式会社 e・
オータマ, 2014–2015,
http://www.emc-ohtama.jp/emc/reference.html
[10] アルミ電解コンデンサテクニカルノート , ニチ
コン株式会社, 2008–2015,
http://www.nichicon.co.jp/lib/aluminum.pdf
c 2014–2016
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免責条項 — 当社ならびに著者は、この文書の情報に関して
細心の注意を払っておりますが 、その正確性、有用性、完全
性、その利用に起因する損害等に関し 、一切の責任を負いま
せん。
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