...

一括ダウンロード(PDF:3.2MB)

by user

on
Category: Documents
17

views

Report

Comments

Transcript

一括ダウンロード(PDF:3.2MB)
THE ASSOCIATION FOR REAL ESTATE SECURITIZATION
エイリス
不動産証券化を共に推進する情報誌
如庵は内部もまた美しい。掲載
写真は、にじり口をはいって頭を
上げたときに、まずとびこんでく
る光景である。向かって左が床、
右が織田有楽創案の竹を詰め打ち
にした有楽窓、その下に張られて
いるのが古暦。床柱はなぐり柱、
有楽自身が手斧を握ったかどうか
は不明だが、その手斧跡には戦国
乱世を生き抜いた武人の魂魄が宿
っているようだ。刀傷を連想させ
るなぐり柱を最も重要な床柱にし
た最初の人物は誰れなのか。定説
はない。茶の湯を好んだ戦国武将
は少なくないが、その茶室はほとんど消滅しており、唯一のこったのが国宝・如庵だ。
したがって証明不可能なことなのだが、手斧でなぐった柱を考案し、それを床柱にした
最初の男は有楽に相違ないと、私は信じている。戦国時代を生きた武将でなければ想像
だにできないアイデアであり、わびさびから導かれた美学ではなく、ましてや、職人が
思いつくことではない。晩年の有楽が如庵を建てたのは元和四年(1618)
、徳川家康が
没した翌年のこと。宿敵去って、すべて夢の跡。そんな思いで、いくさの日々を想い出
しつつ、手斧を振り下ろし、もののふたちを弔ったのではないか。腰張り紙に古暦を使
った意味も、そう思うと納得できる。往時茫々。茶室はおもに人を接待するところでは
あるが、有楽という人物を想像していると、この人はしばしば茶室に独居して瞑想にふ
けっていたことだろう。いまは亡き武人たちを招いて、往時をしのびつつ自服する有楽。
私はかねて茶室を瞑想室ないしは書斎の一種と考えたらどうかと思っている。そもそも
極小の空間に自分を閉じ込めるという発想は宗教的修行に発している。寝て一畳、立っ
て半畳と禅は教える。カトリック修行僧の瞑想室も極小の空間だし、儒者の書斎もまた
極小なのである。訪う客がいなくても、有楽がそこに坐ると、幽明境を異にした客たち
が次々に現われたことだろう。
(井尻 千男:拓殖大学教授)
茶室・如庵(日本/愛知)
提供●名古屋鉄道株式会社
May-June. 2003
1
SPECIAL
REPORT
●座談会 J-REIT運用会社8社に聞く
●フランス版REIT「SIIC」について②
進化するJ-REIT∼上場から現在、そして未来を展望する∼
3
●J-REIT市場創設2周年を迎えて その2
■日本ビルファンド投資法人
23
広岡 裕児氏(パシフィカ総合研究主宰・研究員)
27
井出 保夫氏
日本ビルファンドマネジメント(株)
(井出不動産金融研究所 不動産金融アナリスト)
代表取締役社長 西山 晃一氏
●J-REIT View
■ジャパンリアルエステイト投資法人
ジャパン リアルエステイト アセット マネジメント(株)
∼東急リアル・エステート投資法人、グローバル・
企画部長 山中 拓郎氏
ワン不動産投資法人が加わって∼
31
■日本リテールファンド投資法人
三菱商事・ユービーエス・リアルティ(株)
SEMINER
代表取締役社長 廣本 裕一氏
●2003年問題とオフィスマーケットの今後
■オリックス不動産投資法人
35
前沢 威夫氏
オリックス・アセットマネジメント(株)
(株式会社 生駒データサービスシステム 取締役主席研究員)
代表取締役会長 古川 浩氏
●オフィス大量供給の影響とそこから学ぶべきもの
■日本プライムリアルティ投資法人
41
坂本 雅昭氏
(株)東京リアルティ・インベストメント・マネジメント
(株式会社 住信基礎研究所研究部 副主任研究員)
代表取締役社長 萩原 稔弘氏
■プレミア投資法人
REPORT
プレミア・リート・アドバイザーズ(株)
執行役員総合企画部長 安武 文宏氏
●教育プログラムへのマイルストーン 第3回
47
INFORMATION
49
■東急リアル・エステート投資法人
東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント(株)
代表取締役執行役員社長 堀江 正博氏
J-REIT New Comer
■グローバル・ワン不動産投資法人
グローバル・アライアンス・リアルティ(株)
●グローバル・アラインス・リアルティ株式会社
52
執行役員投信運用本部長 森下 照久氏
●「開発型証券化ガイドブック」の概要
16
国土交通省総合政策局 不動産業課不動産投資市場整備室
表紙文 井尻 千男●いじり・かずお
拓殖大学教授/日本文化研究所所長/元日本経済新聞編集局文化部編集委員
1938年山梨県生まれ。立教大学卒業後、日本経済新聞社入社。編集委員として文化論を中心に広く社会論評を手
がける。97年 4 月より拓殖大学教授。『消費文化の幻想』『劇的なる精神 福田恆存』『言葉を玩んで国を喪う』
『自画像としての都市』
『保守を忘れた自民政治』など著書多数。
蒲色(かばいろ/ディープオレンジ)
蒲(がま)の穂の色から来た色名で、樺色(かばいろ)とも書く。樺色は桜の
樹皮の茶がかった色から来ている。英名ではバーントオレンジ(burnt
orange)の名がある。
2
ARES SPECIAL
座談会 J-REIT運用会社8社に聞く
進化するJ-REIT
∼上場から現在、そして未来を展望する∼
■ 5年1
0月2
0日
■ 日 時:平成1
日 時:平成1
5年1
0月2
0日
■
■ 場 所:霞ヶ関
場 所:霞ヶ関 三井倶楽部
三井倶楽部
■ ■ 参 加 者 出 席 者:(順不同)
日本ビルファンド投資法人
日本ビルファンド投資法人
日本ビルファンドマネジメント
(株)
日本ビルファンドマネジメント(株)
代表取締役社長 西山
代表取締役社長 西山 晃一氏
晃一氏
ジャパンリアルエステイト投資法人
ジャパンリアルエステイト投資法人
ジャパン
(株)
ジャパン リアルエステイト
リアルエステイト アセット
アセット マネジメント
マネジメント(株)
企画部長 山中
企画部長 山中 拓郎氏
拓郎氏
日本リテールファンド投資法人
日本リテールファンド投資法人
三菱商事・ユービーエス・リアルティ
三菱商事・ユービーエス・リアルティ(株)
(株)
代表取締役社長 廣本
代表取締役社長 廣本 裕一氏
裕一氏
オリックス不動産投資法人
オリックス不動産投資法人
オリックス・アセットマネジメント
(株)
オリックス・アセットマネジメント(株)
代表取締役会長 古川 浩氏
代表取締役会長 古川 浩氏
日本プライムリアルティ投資法人
日本プライムリアルティ投資法人
(株)
(株)東京リアルティ・インベストメント・マネジメント
東京リアルティ・インベストメント・マネジメント
代表取締役社長 萩原
代表取締役社長 萩原 稔弘氏
稔弘氏
プレミア投資法人
プレミア投資法人
プレミア・リート・アドバイザーズ
(株)
プレミア・リート・アドバイザーズ(株)
執行役員総合企画部長 安武
執行役員総合企画部長 安武 文宏氏
文宏氏
東急リアル・エステート投資法人
東急リアル・エステート投資法人
東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント
(株)
東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント(株)
代表取締役執行役員社長 堀江
代表取締役執行役員社長 堀江 正博氏
正博氏
グローバル・ワン不動産投資法人
グローバル・ワン不動産投資法人
グローバル・アライアンス・リアルティ
(株)
グローバル・アライアンス・リアルティ(株)
執行役員投信運用本部長 森下
執行役員投信運用本部長 森下 照久氏
照久氏
<司 会>
<司 会>
不動産証券化協会 専務理事・事務局長 巻島
不動産証券化協会 専務理事・事務局長 巻島 一郎
一郎
November-December. 2003
3
●J-REIT各社の現状
な強みがあると考えています。
―本日は、お忙しいなかをお集まりいた
ジャパンリアルエステイト(山中氏):
だきありがとうございます。まずは、ファ
当社は、2 年前の2001年 9 月10日、日本で
ンドの自己紹介を兼ねて現状の規模や運営
最初にできた上場J-REITです。三菱地所、
状況、またファンドの特徴等をお聞かせく
東京海上火災、第一生命が設立母体であり、
ださい。
今はさらに三井物産が運用会社の株主とし
て参加しており、企業グループを超えて組
成されています。
日本ビルファンド
(西山氏)
:
当社は三井不
私どもの特徴としては、オフィスビルに
動産・住友生命を
特化しており、資産規模は上場時点で20物
中心に、三井・住
件930億円だったものが、その後、順調に成
友系の金融機関
長し、現在は34物件2,100億円にも達してい
を設立母体とし
ます。また、J-REITとしては、初めて格付
ています。オフ
けを取得しており、その格付けは、世界最
ィスビルへの投
高です。
資に特化してお
運営については、一言で言えば、皆さま
り、上場して 2
にお約束した以上に確実に成長してきてい
年になります。
ます。資産規模も先ほど申し上げたとおり、
資産規模を申しますと、契約済みで未引渡
この 2 年間ですでに倍以上となっており、
しの物件も含めますと、32棟で約3,000億円
しかもこの間、稼働率はおおむね94%台を
となっています。
維持しております。つまり、質を維持向上
この 2 年間、第 4 期決算を迎えるまでに、
させつつ成長してきているわけで、上場以
いろいろと貴重な経験をしてきました。一
来増収増益を続けてきています。結果、投
例をあげますと「2003年問題」の影響も体験
資口価格も上場以降あまり発行価格以下に
しています。例えば、芝NBFタワーは 1 棟
落ちることなく、順調で、これは、私共が
ほとんどが空室になりました。三田シティ
投資家の信頼に応えてきた一つの証とし
ビル(現・住友電設ビル)も同様です。これ
て、高い評価をいただいていると思ってお
はまさに今年起こった出来事ですが、おか
ります。
げさまで両物件とも、すぐに新しいテナン
日本リテールファンド(廣本氏):
トを確保することができました。
私どもを一言で言いますと、日本で唯一
これは、三井不動産の管理運営力と営業
最大の商業施設に特化したREITです。わか
力、物件取得能力と、われわれのファンド
りやすさを第一の売りとしていて、週末であ
マネージャー会社としての経験と資質をう
ってもオフィスビル等と違って、実際に物件
まくコラボレーションすることができたか
の中に入って客の入りなど見ていただくこと
らだと思います。この点に、私どもの大き
ができます。
また、見た目の良い物件に絞って投資す
4
座談会 J-REIT運用会社8社に聞く
るというのも特徴です(笑)
。半分冗談で言
場直後の物件は25物件921億8,000万円でし
っていたのですが、これは結構重要でして、
た。現時点では、32物件1,396億円という状
物件の映りは非常に大事であると近頃とく
況です。平成15年 7 月に増資をして、現在
に感じています。もちろん内側もそうで、照
出資総額が891億円です。現在の時価総額は
明の当て方を少し変えて見せるだけでイメ
1,100億円を超えています。1,000億円を超え
ージが変わり、投資家の印象もガラリと変
たという意味では、ひとつステージが変わ
わるということがようやくわかってきまし
ったかなと感じています。
た。
オフィスと商業施設の複合型ファンドで、
昨年の 3 月に 4 物件、400億円強で上場し
内訳はオフィスが28棟、商業施設が 4 棟で
て、現在では11物件、1,190億円という資産
す。運営の方針は、オフィスと商業をおお
規模です。普通の事業会社ではなかなかあ
むね 8 対 2 、東京と地方を 6 対 4 の投資の割
り得ないような急速な成長をしているとい
合でいこうと考えています。基本的には全
う意味では、たいへんエキサイティングで、
国の繁華性の高い拠点都市への投資です。
楽しませていただいています。
オリックス不動産(古川氏):
私どもの特徴は、リスク分散に配慮した
オフィスと商業施設で投資する複合型ファ
当社はオリックスを設立母体とし、オフ
ンドであること、もう一点は投資口価格を
ィスビルや商業施設、住宅・ホテル等幅広
一口20万円と小口化して、個人の投資家に
い用途の不動産を運用対象としています。
配慮した点です。
2002年 6 月12日に 4 番目のREITとして上
プレミア(安武氏):
場し、この 9 月には投資口の追加発行を行
平成14年 9 月
い、資産規模は、現在1,415億円となってい
10日に 6 番目のJ-
ます。先発 2 社も上場後 2 年、私どもも 1
REITとして上場
年数カ月ですから、これからやるべきこと
し、460億円、11
がたくさんあります。そういう意味ではま
物件で運用をス
だ道半ばという認識なのですが、これまで
タートしました。
のところ、何とか無事に 3 回の決算を終え、
平成16年 3 月末
ひとまず満足いただける水準の配当を実現
日には、20物件、
できたのではないかと自負しております。
670億円強という
今後につきましても、マーケットの信頼を
規模に成長する予定です。特徴としまして
裏切ることなく、まずは安定した配当と資
は、衣食住の「住」にフォーカスしている点
産価値を持ち、投資家の皆さんに評価され
で、投資対象をレジデンスとオフィスとし
る投資口価格をめざしていきたいと考えて
ています。また、東京・神奈川・埼玉・千葉
います。
の 1 都 3 県のなかでも、東京都心部の経済
日本プライムリアルティ(萩原氏):
動向の影響を受けやすいエリアを「東京経
平成13年 9 月14日に投資法人として設立
し、平成14年 6 月14日に上場しました。上
済圏」と呼称し、ここに特化した投資を行
っております。
November-December. 2003
5
運用会社はケン・コーポレーションと三井
トラストフィナンシャルグループのJVです。
ります。
現時点で取得している物件は、東京で 2
なかでもケン・コーポレーションは、皆様ご
物件、名古屋で 1 物件、あわせて 3 物件で
存知のように高級レジデンスに強みを持っ
ございますが、いずれもクオリティーの高
た会社で、これらスポンサーの各々の強み
い大型オフィスビルです。資産規模総額は
を存分に活かして社会貢献をしていこうと
約400億円です。明治生命、東京三菱銀行、
いうのが事業理念です。
三菱信託銀行、日本GMACCM、近畿日本
東急リアル・エステート
(堀江氏)
:
鉄道をスポンサーに、各社の不動産投資お
平成15年9月10日に、2 周回遅れで上場し
てようやく走り出したところです。
規模は11物件、803億円で、投資方針は首
都圏 1 都 3 県を中心とするエリアに限定し、
よび金融のノウハウを結集して運用いたし
ます。まだ上場したばかり、物件も購入し
たばかりですので、現在は追加物件の取得
に取り組んでいるところです。
オフィスと商業が 6 対 4 の比率で、しかも
東京都心と東急沿線地区に85%以上を投資
●J-REIT各社の自己評価
していく方針です。
―ありがとうございます。続きまして、
運用会社は、東急電鉄 6 割、東急不動産 4
現状の市場における自己評価について、
割のジョイントベンチャーです。一時オー
100点満点で採点した場合の点数をお聞か
ストラリアのレンドリースコーポレーショ
せください。あわせて、これから上場して
ンとJVを作って、J-REITに進出しようと目
こられる皆さんに対して、ご意見やアドバ
論んでいたのですが、平成14年 8 月に東急
イス等をいただければと思います。
グループだけで取り組むことを決め、今日
に至っております。
そういうわけで、特徴は東急グループと
まず自己評価ですが、上場以降どうにか
のコラボレーションを前面に押し出したフ
公募価格を上回っていますので、まぁまぁ
ァンドである点です。J-REITは、これまで
の合格点。点数にすれば65点というところ
利益相反という部分についてフォーカスを
でしょうか。減点要因につきましては、い
受けていましたので、私どもはそのテーマ
かんせん資産規模が小さい点を自覚してお
に真っ向から取り組み、結果として、少し
ります。
ハードルの高いガバナンスストラクチャー
6
グローバル・ワン不動産(森下氏):
それから投資家の満足度という点では、
を構築しました。この点にも特徴があるか
それなりに満足していただけるようになっ
と思います。
たかと思います。私自身はずっと不動産の
グローバル・ワン不動産
(森下氏)
:
売買をやってきましたので、不動産は売り
当社は本年の 9 月25日に、8 番目のJ-REIT
たい時に売りたい金額でなかなか売れない
として上場いたしました。東京・名古屋・大
ということがわかります。でも、J-REITの
阪の三大都市圏および政令指定都市を主体
投資口であれば必要とする金額分だけを株
として、オフィスビルに投資する予定でお
式と同様に証券市場で売れるわけですから、
座談会 J-REIT運用会社8社に聞く
やはりこれは画期的なスキームだと思いま
それから、これは経営理念とも絡みます
す。ただ全国の機関投資家の皆さんとお話
が、東急の存在価値とは何か、世の中が東
しさせていただいた時に、投資口数の絶対
急に対して期待することは何かと考えた場
数が少ないと言われましたので、その点を
合、やはりそれはお客様に新しい価値観を
改善できるよう努めたいと思います。
提供することであると考えています。私ど
後に続く皆さんへ一言申しますと、J-
もはもともとマルチプロダクト、つまり複
REIT市場の拡大スピードは非常に増してき
数のJ-REITを運営したいという考えを持っ
ています。私自身は、3 年後には現在の 1 兆
ておりますので、東急REITの成功の暁には
円から 3 兆円程度の規模になるかと思って
別のアセットタイプのJ-REITを提案したい
います。それに伴い物件の種類も、ホテル
と考えています。
やゴルフ場など多種多様なREITが出てきて
もうひとつは、やはり国内外のエクイテ
も良いと思います。これは歓迎すべきこと
ィを日本の不動産に呼び込むという政策目
だと思います。いろいろなREITが参加して
的を、私どもも個社として実現させるべく
くるわけですから、確かにハードルも必要
努力していきたいと思っております。
です。しかし、多種多様な不動産を運用で
続く方へのアドバイスとしては、私ども
きるプロに市場に加わっていただくことは、
もまだ上場したばかりですので、大層なこ
J-REIT市場がバラエティに富んだものにな
とは申し上げられませんが、ガバナンスに
る。東証市場にもいろんな企業が入ってい
ついては投信法の枠組みのなかで、しっか
るのと同じです。このようになればJ-REIT
り機能し得るものを用意するべきでしょう。
市場もますます発展すると思いますので、
プレミア(安武氏):
ぜひ参画していただきたいと思います。
東急リアル・エステート(堀江氏):
私どもは、評価の基準の 1 つとして、ま
ずは上場時の公募価格を下回らないことで
現状の市場に
あると考えています。他社の場合、IPO時
おける自己評価
の公募価格を30∼40%上回っているところ
ですが、まず何
もありますが、私どもはまだそこに至って
をもって100点と
いません。この現状からしますと、相対的
するかという尺
な評価は、自ずから低くなるかと考えます。
度から申し上げ
今般、追加発行の準備をしていて思ったの
ますと、市場と
ですが、IPOというのはある程度勢いで流
のコミュニケー
れ込めるけれど、POはそうはいきません
ションがきっち
(笑)
。POは、ストラテジーとトラックレコ
り取れた状態を
ードのせめぎ合いで、ごまかしのきかない
100点とした場合に、私どもは50点も行って
部分があります。POが成功に終わるか否か
いないと思っております。投資家に対して
が 2 つ目の判断基準だと考えると、今、ま
もっと私どものメッセージを出していかな
さに中間テストを受けようとしている心境
くてはならないと思っています。
です。赤点がつくかもしれないし、合格点
November-December. 2003
7
をいただけるかもしれない。そういう観点
から50∼70点の半ばぐらいかと自己評価せ
一方で、これからの課題としては、まだ
格付が取れていないということで、その辺
ざるを得ません。
今後上場をお考えになっている会社への
メッセージですが、REITに対してこうある
べしと周りから言われていた部分のハード
りの今後の対応に期待していただきたいと
思います。
これから上場される皆さんには、まず、
ルが、先行された各社の努力の結果、少し
投資法人の性格や運用スタイルを明確にさ
ずつ下がってきているように思います。例
れること。もうひとつは、J-REIT市場にお
えば、開発型の案件でも、竣工までに間が
ける情報開示や透明性の確保に対して、マ
あるものを買うこと自体いかがなものかと
ーケットの評価がされつつある状況ですの
言われていたのが、最近ではそのような買
で、その辺りのことをぜひ踏襲していただ
い方についてマーケットの理解をある程度
きたいですね。やはり、情報開示が後退す
得られるようになってきました。まさに各
るようですと市場全体に影響すると思いま
社がマーケットに正対し、ガバナンスに注
すので、お願いしたいと思います。
力してきた証だと思いますので、現在、参
日本ビルファンド(西山氏):
画をお考えの会社は、真摯な取組姿勢で、
私どもについて言うと、65∼70点という
恐れることなく出てきていただきたいと思
ところでしょうか。理由は、やはりその後
います。
の規模拡大について、若干低迷していると
日本プライムリアルティ(萩原氏):
いう反省がありますので。ただし、J-REIT
自己評価は70
市場全体の評価とすれば75点ぐらいはでき
∼80点かと思い
たのではないでしょうか。上場当初、J-
ます。上場から
REITは 1 年で相当なところまで行くだろう
1 年 4 カ月経ちま
という高い期待を担っていたわけですが、
すが、その間に
われわれの力不足でそこまでは浸透しませ
約 5 割強の資産
んでした。しかし、これだけ上場会社が増
規模の拡大がで
え、認知度は確実に高まっていると思いま
きたこと、その
す。また、各投資法人も堅実に決算を発表
物件取得が外部
して、予想分配金以下になったところはど
案件を中心にし
こもないわけです。その辺りが評価され始
た取得だった点がプラス評価です。もう 1
8
しました。
めたと思います。
点は、一口が23万7,160円と公募価格よりも
実際に、機関投資家からはある程度の評
高いところで増資ができたことです。それ
価を得てきたという実感があります。今日
から、上場来投資口価格が終値ベースで公
もある証券会社を訪問してきたのですが、
募価格の20万円を下回ったのも 1 日だけだ
昨年と比べると営業マンからの質問の質も
ったというのは、価格が比較的安定的に推
格段に上がっていますし、少なくともJ-
移しているという意味でプラスに評価いた
REITの仕組みの説明をしなくてもよくなっ
座談会 J-REIT運用会社8社に聞く
た。ただ、証券マンがいろいろな商品のな
称性で商売をしてきた部分があると思いま
かでJ-REITをとくに薦めてくれるかという
す。しかし、J-REITは金融商品です。そう
と、この辺りはまだまだですね。また、個
いう意味では襟を正して、透明性を維持し
人投資家に浸透させていくには大きな課題
て、取り組まれるのが一番よいのではない
ですので、全体で取り組むべきテーマだと
かと思います。やはり、そこが原点なので
考えています。
はないでしょうか。頭を切り替える必要が
それから後続のJ-REITに対して言わせて
あるのだと思います。
いただきますと、外からは見えないかもし
ただ、ライバルが増える、ライバルができ
れませんが、どの投資法人も社内のガバナ
るということは非常にうれしいことなので、
ンスに膨大なエネルギーを注いで取り組ん
どんどん出てきていただきたいと思います。
でいることをご理解いただきたい。とくに
日本リテールファンド(廣本氏):
利益相反の体制については、しっかりとし
市場における
た内部体制の下できちんと取り組んでいる。
自己評価は、冷
ですから、後に続こうという皆さんには、
静に判断します
まず内部でそのような問題にきちんと対応
と80点といった
できる体制を整備することがポイントだと
ところでしょう
言いたいです。
か。理由として
ジャパンリアルエステイト(山中氏):
は、3 つのグッド
自己採点に関していえば、私どもが決め
ることというより、投資家さんが決めるも
のだと思っています。
ポイントを上げ
たいと思います。
まず、投資家
そこで、ご質問の主旨は、上場してから
がどれだけリターンを得られたのか。この
の 2 年間を振り返ってどうだったかという
観点でいえば、上場以来40∼50%のトータ
ことでしょうから、この観点からお話しし
ルリターンをご提供していることになり、
ます。上場以降、物件取得、格付けの取得、
価格についても30%弱のプレミアムをつけ
2 回の増資を体験してきましたが、私ども
ていただいている。そういった市場の客観
は常に将来を見通して、一つひとつステッ
的評価という観点では良かったと考えてい
プを踏んで、これに取り組んできました。
ます。
そして、そういった活動と業績が投資家に
次に、長い歴史を持つ不動産業界に、商
トラックレコードとして認識されてきてい
業施設REITという新しいものを受け入れて
るという実感を持っています。これが私ど
もらえるのかというチャレンジをしたわけ
もの自己評価です。
ですが、それなりに受け入れてもらえたの
新しくマーケットに来られる皆さんへの
ではないかと思います。
アドバイスですが、とくに私のように不動
三つ目には、運用会社としては、かなり
産会社出身の方に申し上げたいのは、不動
理想的なプロ集団を作れたのではないかと
産というのはどちらかというと情報の非対
自負しています。この業界には優秀な人材
November-December. 2003
9
がたくさんいて、その人達の力を使わせて
この業界のストラクチャー自体はわりとわか
いただくと同時に、活躍の場を提供できた
りやすく、入りやすい印象があるのではない
という意味で、小さい事業体ではあります
かと思います。しかし、実際にはガバナンス
が良い動きができたと思います。
面に細心の注意を払わなければなりません
100点と言えないのは、周辺への波及効果
し、また、そのための内部体制も必要です。
というのが思ったほどでもなかった点です。
先発の方たちが積み上げてきたマーケット
つまり、PM業界や証券市場などへの広がり
に、われわれも参加させてもらっているな
や育成という意味では、まだ足りないと感
かで、これから新たに参入される方たちも、
じています。それから、私どもは格付をま
スタートしたばかりのREIT市場を共に大き
だ取得していませんので、その辺りを課題
く育てていっていただきたいですね。
にしていきたいと考えています。
後に続こうという皆さんへは、やはり説
●J-REIT各社の課題と今後
明責任(アカウンタビリティー)が最も重要
―最後に、ファンドの課題と今後の抱負
な要素ですので、それを放棄する、或いは
をお聞かせください。あわせて、行政当局
逃げる方には参加していただきたくないと
への要望をお聞かせください。
いうのが本音です。それから、今日ここに
お集まりの皆さんは、たいへんなご苦労を
されて現在の市場を作ってきたわけで、そ
10
日本プライムリアルティ(萩原氏):
抱負としては、今後の成長ストーリーと
の間には根拠のない批判もたくさんあった。
して、2004年12月に2,000億円、2006年の12
上場した場合には、そういうこともあるこ
月に3,000億円という資産規模の拡大を目指
とは忘れないでいただきたいですね。
しております。年間500億円程度の増加です。
オリックス不動産(古川氏):
安定性、収益性の向上をねらって、実現の
将来の上昇余
確度を高いものにしていきたいと考えてい
地を期待してい
ます。そのポイントとしては、優良物件の
ただくという意
取得、それから可能な限りの高い分配金を
味で、採点は60
実現したい。現状の稼働率は92%台ですが、
∼70点ですね。
これを引き上げていきます。それから、バ
一つひとつの項
リューアップ不動産戦略の達成を目指しま
目を取り上げて、
す。低い稼働率を引き上げることで分配へ
シビアに経営的
の寄与を目指していきます。
な見方をしてい
先般、当社は初めて物件の売却をしたわ
きますと、当社
けですが、これについては今後も多面的に
はまだまだ、改善余地・成長可能性に富ん
進めていきたいと思います。物件取得につ
でいると思います。
いては、開発リスクはとらない方針ですが、
これから上場をお考えの皆さんへは、わ
スポンサー関連の開発案件への早めの対応
れわれも上場してまだ 1 年数カ月ですが、
と言いますか、こういう情報に対して私ど
座談会 J-REIT運用会社8社に聞く
もも積極的に関与して推進していきたいと
ますが、現在、上場J-REITのなかでレジデ
考えております。また、できるだけ早期に
ンスを投資対象としているところは私ども
格付を取得して、投資法人債の発行もにら
だけですので、比較的競争のないなかで物
んでいきたいと考えています。
件を取得していくことができます。さらに、
要望としては、やはり税務上の宥恕規定
分譲マンションの需給バランスが崩れつつ
を設けていただきたいと思います。会計と
あり、ディベロッパーサイドから一般分譲
税務の乖離が生じないように気をつけては
案件の方向転換の申し出なども数多く出て
いますが、例えば、修繕費として処理した
きていますので、私どもにとっては、物件
ものを後日の税務調査で資本的支出と判断
を選別しながら取得できる好機にあると感
されてしまうこと等を想定すると、何らか
じています。なんとかそのような好条件を
の手当が必要かと思います。
活かして、資産規模の目標を達成したいと
その他には、会計士協会への要望という
考えております。また、レジデンスは開発
ことになろうかと思いますが、資産の売却
期間が比較的短いので、出物だけではなく
損益の開示区分等について結論を出してい
未竣工の開発型物件にも取り組み、計画的
ただければと思います。営業損益内のグロ
な資産の取得を行っていくことで、目標達
ス表示かネット表示かあるいは、特別損益
成を担保していきたいと考えています。
項目とするのか議論はありますが、個人も
制度上の問題については、まさにARES
含めた投資家にとってわかりやすい開示が
に委ねざるを得ない部分が多くあるわけで
できるようになると良いと思います。
すが、どうしても優先出資証券の投資の問
プレミア(安武氏):
題は避けて通れないと思います。私どもが
目標値も含めて、われわれの成長戦略を
それを活用する機会があるかどうかは別に
申しますと、2004年 3 月末時点で670億円、
して、マーケットとしてこれは必須、しか
ここから2005年 4 月末まで、現時点からカ
も至近で直面する課題であると考えます。
ウントすると 1 年半かけて1,000億円までを
東急リアル・エステート(堀江氏):
ひとつの目標として打ち出しています。
レジデンスを投資対象としていますので、
数値目標については報道していただいて
いるとおりですので、あえて今日は触れま
オフィスと比べると 1 棟あたりの価格が小
せん。今後の抱負としましては、セカンド
さくならざるを得ません。そのため、なか
POを成功してこそIPOの成功だというの
なか1,000億円というのは高い目標だと思い
が、私どもがREITを手掛けるうえでの当
November-December. 2003
11
初からの考え方です。IPO時点での総資産
ています。金融的な商品とは違って、短期
の規模が目標規模より若干小さかったとい
的な利回りを見るというより、物件の質を
うこともあり、その辺を積み上げながら 2
皆さんに見ていただきたい。ですから年度
回目のPOをしっかり成功させたいと考えて
ごとに目標を決めるというようなノルマ的
います。
目標は決められません。
それから制度上の要望ですが、不動産の
もうひとつ、内部成長の点では、取得物
所有者の方の買い替え特例の対象資産にJ-
件についてはテナントの満足度を得られる
REITを入れていただきますと、都市部の不
ように、ライフサイクルコストを意識して
動産の権利関係を少しでも整理するのに何
コスト削減と適正化に取り組みたいと考え
らかの形で役に立つのではないかと考えて
ます。それから、マーケットについては、減
います。日本の商業不動産が流動化、ある
損会計、連結決算の徹底、企業のリストラ
いは投資対象になりにくいというのは、権
等により優良不動産も出てくると思います。
利関係が非常に複雑なことも一因であると
われわれは配当実績を地道に積み上げるこ
思います。その対策がうまくやれるような
とで、これらの企業から信頼をしていただ
形で進めば、われわれにとってもプラスで
くことにより、そうした物件情報を得られ
すし、日本経済にもプラスになるのではな
ればと思います。そのためにも、今は地道な
いかと思っております。もし、検討に値す
積み上げが大切だと思っています。
るような内容でしたら、ぜひとも研究して
いただきたいと思います。
行の窓口や、難しいかと思いますが、不動
グローバル・ワン不動産(森下氏):
産会社の窓口でも売っていただけるように
私どもは上場
なればいいかと思います。昔から財産三分
したばかりです
法として株式、債券、不動産と言われてき
ので、課題等は
ましたが、そのうちの不動産の部分がREIT
まだ見えていま
に変わるといいですね。そういう意味での
せんが、
「フォ
啓蒙ができればいいと思います。
ー・ザ・インベス
オリックス不動産(古川氏):
タ ー 」と い う 経
今後の抱負としましては、資産規模とし
営方針に則って、
ては2004年末までに2,000億円をめざしてい
投資家の利益を
きたいと考えています。
最優先にするこ
とを主眼に考えております。
12
それから将来への希望としましては、銀
当社の場合は、さまざまな用途の不動産
に投資しており、また物件の数が多いので、
抱負としましては、5 年以内に2,000億円
その評価が難しいというお話しをよく聞き
をめざしたいと考えています。私どもは 3
ます。ただし、1 年数カ月の運用実績を踏
物件で上場しましたが、それなりに評価を
まえ、最近では、運用能力についての評価
得られましたので、今後もクオリティーを
も良い意味で変わりつつあるように思いま
大事にした新規投資をしていきたいと考え
す。今後も、確実にトラックレコードを積
座談会 J-REIT運用会社8社に聞く
み重ねることにより、マーケットの信頼を
限などはなるべく緩和していただきたいで
勝ち得ていきたいと思っています。
すね。実質保有している対象物が同じであ
行政への要望は、やはり時間がかかりま
れば、その手段、形態はどうでもよいので
す。ですから今、ARESの進めていただい
はないかと。破綻から再生という大きな道
ているものを引き続き進めていただきたい
筋で、制度上の形式論がネックになるとい
と思います。
うことは避けたい。
日本リテールファンド(廣本氏):
それから、日割り配当をやらせていただ
今後の抱負としては、上場後 3 年以内に
けるようにお願いしたいですね。これは商
2,000億円、5 年以内に4,000億円を成長目標
法の解釈上の問題ですから、金融庁に柔軟
としています。現在1年半のところで1,300
な対応をお願いしたいと思います。
億円弱まで来ていますので、このペースな
ジャパンリアルエステイト(山中氏):
らば多少前倒しで達成できると思います。
課題というか
もう一つは内部成長。やはり購入した物件
目標としまして
をいかに成長させていくかが重要です。商
は、2006年3月末
業施設ですので、お客様にたくさん来てい
までに3,000億円
ただけるようテナントの入れ替えや売上連
を資産規模の目
動賃料といったいわゆるグロース型の形
標としています。
で、賃料収入を増やしていきたいと考えて
これはクオリテ
います。
ィーの観点から、
現在、この実例とするべく、福岡で第 3
安定的に分配し、
セクターの案件をあえて購入して、リニュ
成長していくた
ーアルをするという事業に取り組んでいま
めにはやはり一定規模が必要だということ
す。こういう再生モデルのグロース型物件
で出てきた数字です。その達成のためにも、
の運用成果次第では、J-REITに新しい機能
1 年間で500億円の新規取得という目標を掲
を加えることができるのではないでしょう
げております。
か。最近では、産業再生機構や民間の再生
それからREITが生まれた意義は、昔はお
ファンドといったところとのコンタクトも
金持ちしかできなかった、あるいは歴史の
増えています。私どもが直接、破綻企業の
古い会社しかできなかった不動産賃貸事業
スポンサーになるということはあり得ませ
の個人への開放ですから、個人への啓蒙も
んが、破綻企業が保有する不動産の受け皿
必要と考えます。また、不動産賃貸事業の
にはなり得る。かつ、そこに出口としての
特性、すなわち長い目で見ないと結果がわ
保有者であると同時に、物件の再生を実績
かりませんので、長い目を持った投資家に
として出せれば、J-REITの社会に対して貢
認知を深めていただきたいと思っており、
献できる役割がさらに拡がってくるのでは
この観点で投資家の啓蒙に取り組みたいと
ないかと思います。
思います。
そういう観点からも、優先出資の保有制
行政当局への要望としましては、J-REIT
November-December. 2003
13
上場しているJ-REIT の一覧(2003年11月13日現在)
① 投資口価格
銘柄名
(法人名)
運用会社
設立母体
上場日
決算月
保有
物件数
主な
運用対象
② 15,367円(2003年6月期) 29棟
オフィス
ビル
② 1口あたり分配実績(決算期)
③ 資産規模
① 683,000円
6月
日本ビルファンド
三井不動産、 2001年
日本ビルファンド
/
投資法人
住友生命保険 9月10日
マネジメント(株)
12月
など
③ 307,688百万円
① 654,000円
ジャパンリアル
エステイト
投資法人
日本リテール
ファンド
投資法人
ジャパンリアル
三菱地所、東京 2001年
エステイト
海上火災保険、 9月10日
アセット
第一生命保険
マネジメント(株)
など
三菱商事・
ユービーエス・
リアルティ
(株)
三菱商事、 2002年
3月12日
UBS
3月
/
9月
② 15,117円(2003年9月期) 32棟
オフィス
ビル
③ 209,581百万円
2月
/
8月
① 647,000円
② 15,095円(2003年8月期) 11棟
商業
施設
③ 126,378百万円
① 503,000円
オリックス・
オリックス不動産
2002年
オリックス
アセット
投資法人
6月12日
マネジメント(株)
2月
/
8月
② 15,246円(2003年8月期) 46棟
③ 141,517百万円
オフィス
ビル、
商業施設
等
① 263,000円
東京建物、
6月
日本プライム (株)東京リアルティ・
大成建設、 2002年
/
リアルティ
インベストメント・
安田生命 6月14日
12月
投資法人
マネジメント
保険など
プレミア
投資法人
ケン・コーポ
レーション、
4月
中央三井信
2002年
プレミア・リート・
/
託銀行グル
9月10日 10月
アドバイザーズ(株)
ープなど 30棟
オフィス
ビル、
商業施設
等
② 19,910円(2003年4月期) 13棟
オフィス
ビル、
レジデン
ス
② 6,873円(2003年6月期)
③ 144,989百万円
① 513,000円
③ 55,751百万円
東急リアル・
エステイト
投資法人
東急リアル・
東京急行電 2003年
エステート・
インベストメント・ 鉄、東急不 9月10日
マネジメント(株) 動産 1月
/
7月
① 527,000円
②− 11棟
③ 80,300百万円
グローバル・ワン
不動産
投資法人
グローバル・
アライアンス・
リアルティ
(株)
明治生命、東
京三菱、三菱
2003年
信託、近畿日
9月25日
本鉄道、日本
GMACCM オフィス
ビル、
商業施設
等
① 515,000円
3月
/
9月
②− 3棟
オフィス
ビル
③ 39,753百万円
(注)1年換算の配当利回りは、直近の分配実績に基づき、決算期末日の投資口価格終値より算出。
1口あたり分配実績、資産規模、保有物件数のデータは、直近の有価証券報告書、決算短信、目論見書等に基づいてARES作成。
14
座談会 J-REIT運用会社8社に聞く
の存続を危うくするような制度はなるべく
導管性要件緩和のうち、優先出資証券への
早く改正していただきたいというのが本音
50%未満の出資規制の撤廃はぜひとも取っ
です。
ていただきたいと思います。加えて、SPC
ひとつは、流通税、登録免許税の問題が
法ではない、いわゆるYKTK法式の匿名組
あります。ジャパンリアルエステイト投資
合の部分を50%以上取れるようにしていた
法人では物件取得の際は、上場以降現物不
だきたいと思います。
動産を買ってきています。なぜかと言いま
日本ビルファンド(西山氏):
すと、最終的には信託銀行の受託者責任と
まず、具体的な資産規模目標で言うと、
運用会社の受託者責任がせめぎあうからで
2006年 3 月末までに5,000億円が目標です。
す。登免税減免の延長が通らないと、信託
ただ、おそらく皆さんも拡大という目標を
受益権による売買に完全にコスト負けして
お持ちでしょうから、それを全部足すとい
しまいます。私どもとしても投資家のお金
くらになるんだろうと(笑)
。そして、果た
を預かっている以上、譲れなくなって信託
してそんなに物件があるのかという素朴な
受益権での取得に動いていく可能性がある
疑問も持っています。
事となってしまいます。そうなると、先ほ
ですから、私どもとしては、資産規模目
どご説明したとおり本質的な面で大変なこ
標という数値的な目標と同時に、物件取得
とになりますので、流通税は何としても取
方法の多様化を図っていきたいと思います。
っていただきたいと思います。
開発案件もそうですし、三井不動産とのコ
もうひとつは、投資法人の導管性要件を
ラボレーションもそうです。その他いろい
満たす分配金の計算式が、上限が会計上の
ろな物件取得の方法を探っていきたい。例
利益で下限が税務所得の90%という、税務
えば、東急リアル・エステートの物件など
と会計が全く不一致のなかで決まっている
はまさにそうだと思いますが、J-REITによ
ところがあります。このままでは非常に不
って市場に出てきた物件ですよね。そうい
安定なので、ぜひ宥恕規定を入れるという
う不動産会社が持っている「眠っている物
ことと、判定式の整理をしていただきたい。
件」のようなものを加えていければと考え
それから投資法人が保有物件を売買した
ています。
場合の譲渡損益についてですが、本来はそ
要望については、やはり宥恕規定に関す
の物件が保有されていた期間の投資主全員
る制度的な手当てが必要だと思います。何
に帰属するべきですが、損益の認識はある
か問題が起きてからでは遅い。たいへん難
一時点なので、一期だけの投資主に帰属す
しいのはわかるんですが、これはセーフテ
る可能性が出てくることになるのですよね。
ィガードという意味からも優先順位を上げ
アメリカではそもそも譲渡益自体は90%ル
て要望していただきたい。
ール外のところでも判断できるそうですか
ら、そういったことも必要なのではないか
と思います。
―本日は、たいへん有意義なお話しをいた
だき、ありがとうございました。
最後に、今後の私どもの成長のためにも、
November-December. 2003
15
「開発型証券化ガイドブック」の概要
国土交通省総合政策局不動産業課不動産投資市場整備室
1.はじめに
2.ガイドブックの目的
不動産証券化については、従来は既存稼
ガイドブックは、開発型証券化の一層の
動不動産が証券化の主な対象でしたが、開
普及を目的とし、その概要を説明するとと
発事業においても、資金調達にかかるリス
もに、具体的なケーススタディを紹介する
ク分散など資金調達源の多様化のニーズな
ことで、実際の手続きおよびその際の留意
どから、証券化を活用した事例(いわゆる
点をわかりやすく説明するもので、主に開
「開発型証券化」
)が普及しつつあります。
しかしながら、不動産証券化は関係者が
発型証券化を経験されていない開発事業者
の方々等にご理解いただくことを前提とし
多岐にわたり、プロセスも複雑であること、
とりわけ開発型証券化は、開発事業自体の
図表1 既存物件の証券化と
開発型証券化のイメージ
進行と併行して進められること、手続きが
既存物件の証券化スキーム
煩雑であること、事業が抱えるリスクが多
様であることなどから、その活用は必ずし
ビークル
不動産市場
も容易ではありません。また、新規に取り
実物
不動産
組む際に、全体のプロセスについての情報
も十分に開示されていない状況にあります。
不
動
産
価
値
=
このため、今後、マニュアルの整備等によ
資本市場
デ
ッ
ト
デット
ファイナンス
エ
ク
イ
テ
ィ
エクイティ
ファイナンス
り開発型証券化の一層の普及を図っていく
ことが重要であり、わが国の政策課題であ
開発型証券化のスキーム
る都市再生の実現にも資するものです。
このようなことから、国土交通省では、
ビークル
不動産市場
(社)不動産証券化協会への委託調査として、
開発型証券化の普及を目指して、分譲マン
ション事業をモデルケースとした「開発型
証券化ガイドブック」を作成することとし
ました。
16
?
将
来
の
不
動
産
価
値
=
資本市場
デ
ッ
ト
デット
ファイナンス
エ
ク
イ
テ
ィ
エクイティ
ファイナンス
「開発型証券化ガイドブック」の概要
ております。
3.開発型証券化のメリットと
デメリット
(2)デメリット
①追加コスト
証券化にあたっての、投資ビークル設立
費用や証券化にかかる手数料、格付取得に
必要な手数料等の追加コストが必要となり
(1)メリット
①資金調達
ます。
②事業スキームの硬直化
開発型証券化の活用によれば、開発事業
コーポレートファイナンスの場合は、資
者から切り離された開発事業のみを対象と
金需要と調達の対応関係が明確でないため
した資金調達を行うことになります。この
にその運用に柔軟性があり、事業スキーム
ため、開発事業者の財務体質や資金調達上
等を柔軟に変更することも可能ですが、証
の制約に影響を受けることなく、主に開発
券化の場合はプロジェクト単位での資金調
事業のリスクにより資金調達を行うことが
達となりますので、当初計画した事業スキ
可能となります。
ームを変更することが困難となるか、また
は変更のための費用が追加で発生し、投資
②オフバランス
効率の低下を招く懸念があります。
開発事業者は、一定の会計条件を満たす
ことで、開発事業を営むビークルを開発事
業者のバランスシートから切り離すことが
4.ガイドブックにおけるモデルケー
スの解説
可能となります。
ガイドブックでは、仮想のモデルケース
③開発リスク負担の限定
開発事業者は、ビークルが債務者となる
を用いて、開発型証券化により資金調達を
行う場合の検討のポイントや手続きを解説
ノンリコースファイナンスを活用した資金
しております(具体的な内容については、
調達を行うことで、その開発事業がデフォ
ガイドブックをご参照ください)
。
ルトした場合であっても、ビークルに対し
モデルケースでは、ビークルとして特定
て自らが出資した部分のみのリスク負担に
社債を発行することができる特定目的会社
限定されることとなります。
を用い、開発型証券化としては実例も存在
し、かつ事業スキームも比較的単純な新規
④投資効率の向上
の分譲マンション開発を取り上げています。
プロジェクトの利回りよりも低コストで
あるマンション開発事業者が、新規の開発
のノンリコースファイナンスを活用するこ
を行うために土地の仕入れを行おうとする
とにより、出資部分の利回りが向上し、投
段階から、開発型証券化により資金を調達
資効率を高めることができます。
してマンションを建設し、最終的に分譲代
November-December. 2003
17
金により調達資金を返済し、配当により当
かつ、マーケットニーズから見て妥当なも
該案件の実質的なスポンサーとしての開発
のとします。
利益を確定させる段階まで、順を追って解
以下が開発計画の概要です。
説しています。
i)建物概要
(1)想定するモデルケース
・所 在 地:東京都渋谷区鉢山町近辺
想定するモデルケースについては、開発
・交 通:東急東横線「代官山」駅より
事業者は以前からマンション分譲事業を
徒歩10分程度
手掛けており、これまでの開発・分譲実
・構 造:鉄筋コンクリート造/7 階、
績も好調であるものとします。また、財務
地下 1 階建て
状況についても特段の問題はないものとし
・敷 地 面 積:2,100㎡(635坪)
ます。
・建 築 面 積:1,150㎡(348坪)
事業用地についても、比較的安定した収
・施工床面積:8,300㎡(2,511坪)
益を見込めるマンション用地を想定し、土
・法定床面積:7,800㎡(2,360坪)
壌汚染、権利関係等の問題は特段ないもの
・容積対象床面積:4,700㎡(1,422坪)
とします。開発計画も投資家が納得でき、
・専 有 面 積:4,500㎡(1,361坪)
図表2 開発事業のスケジュール
事業スケジュール
1カ月目
土地売買仮契約
ファイナンススケジュール
TMK設立
2カ月目
3カ月目
4カ月目
土地売買契約、測量、設計(5カ月)
業務開始届出、優先出資払込
5カ月目
土地引渡し
ブリッジローン実行
6カ月目
7カ月目
8カ月目
建築確認取得
9カ月目
工事着工(15カ月)、販売準備(3カ月)
社債発行・ブリッジローン返済
10カ月目
11カ月目
12カ月目
販売開始(12カ月)
13カ月目
14カ月目
15カ月目
16カ月目
17カ月目
18カ月目
19カ月目
20カ月目
21カ月目
22カ月目
23カ月目
竣工・販売修了、引渡し
社債償還
24カ月目
18
25カ月目
TMK清算、優先出資配当
26カ月目
償還延長期限
「開発型証券化ガイドブック」の概要
図表3 事業計画
A 売上
Ⅰ.
分譲事業収入
Ⅱ.
その他収入
B 原価
5,
308,
875千円
100.0%
5,
308,
875千円
3,
900千円 税込み単価:
3,
995千円
100.0% 坪単価:
0千円
0.0%
4,
363,
147千円
82.2%
1,
947,
971千円
36.7%
①土地購入費
1,
890,
000千円
35.6% m2単価:
900千円 (参考)路線価:
919千円
②仲介手数料
56,
700千円
③土壌調査費
0千円
Ⅰ.
土地取得費
④測量費
1,
271千円
Ⅱ.
設計・工事費
1,
841,
562千円
①解体工事費
0千円
②造成工事費
0千円
③建築工事費
1,
769,
625千円
1.1% ①の3.
0%
0.0% 売主側で実施済と想定
0.0% 坪単価:
2千円
34.7%
0.0% 更地引渡しと想定
0.0% 坪単価:
0千円 ③に含む
33.3% 坪単価:
750千円 対法床(施工坪:
705千円)
④設計費
61,
937千円
1.2% ③の3.
5%
⑤近隣対策費
10,
000千円
0.2% 一式
⑥公共負担金
0千円
0.0% 一式
⑦許認可取得費
0千円
0.0% 一式(④に含む)
462,
710千円
8.7%
①モデルルーム費
106,
178千円
2.0% 売上の2.
0%
②広告宣伝費
159,
266千円
3.0% 売上の3.
0%
③販売委託費
159,
266千円
3.0% 売上の3.
0%
④販売諸経費
38,
000千円
0.7% 戸単価:
1,
000千円
31,
271千円
0.6%
Ⅲ.
販売宣伝費
Ⅳ.
公租公課
0千円
0.0% 税率:
3.
0%
②登録免許税
10,
131千円
0.2% 税率:
0.
6%
③固定資産税
12,
507千円
0.2% 税率:
1.
4% 期間:
20カ月
④都市計画税
5,
360千円
0.1% 税率:
0.
3% 期間:
20カ月
⑤印紙税
2,
220千円
0.0% 土地売買契約および工事請負契約
⑥建物不動産取得税
1,
052千円
0.0%
79,
633千円
1.5%
①不動産取得税
Ⅴ.
その他
①予備費
79,
633千円
C 総利益(ファイナンス前)
945,
728千円
D ファイナンス関連コスト
163,
261千円
3.1%
106,
253千円
2.0%
Ⅱ.
TMK関連費用
17,
400千円
0.3%
Ⅲ.
その他費用
39,
608千円
Ⅰ.
建中金利等
E 総利益(ファイナンス後)
F 控除対象外消費税
G 法人税等
①法人税
H 総利益(税引後)
782,
467千円
1.5% 売上の1.
5%
17.8% AーB
0.7%
14.7% CーD
27,
549千円
0.5%
3,
244千円
0.1%
3,
244千円
0.1%
751,
674千円
14.2%
・住 戸 数:38戸
工後 3 カ月から竣工までの12カ月で全戸の
・住 戸 面 積:118㎡/戸
売却を完了するものとします。
ii)販売計画(図表 2、3 参照)
(2)証券化の各段階ごとの解説
モデルケースにおける分譲単価は、周辺
想定したモデルケースを前提として、ガ
相場を考慮して、坪単価3,900千円であるも
イドブックでは、以下のような証券化の各
のとします。着工後販売準備を開始し、着
段階ごとに詳細な解説を行っています。
November-December. 2003
19
図表4 ストラクチャー図
基金拠出(300万円)
地 主
設立
中間法人
土地売却
特定出資
(10万円)
開発委託契約
販売代理契約
社員2人
特定社債
適格機関投資家
TMK
デベロッパー
優先出資
バックアップ販売代理人
売買契約
金融機関等
PM契約
マンション買手
デベロッパー
ブリ
ッジ
ロー
ン
建設請負契約
資産管理会社
ゼネコン
履行保証保険契約
保険会社
図表5 証券化スケジュール
開発事業の流れ
証券化の流れ
証券化対象の特定
証券化ストラクチャー検討・決定
TMK設立
土地売買仮契約
資産流動化計画作成
優先出資
払込
各種
契約締結
業務開始届出・審査
デューディリ調査設計
資産対応証券の募集等
取扱業務届出
特定資産取得
ブリッジローン実行
確認申請・取得
工事着工
格付準備
社債発行準備
格付取得・社債発行
ブリッジローン返済
販売活動
利払い等の対応
決算・会計監査
工事完工
20
特定資産引渡
利払い・償還
売却等資金回収
清算・優先出資配当
「開発型証券化ガイドブック」の概要
図表6 キャッシュフローモデル
土地
土地
設定 TMK
スケジュール
着工
売買
値
販売
竣工
清算
引渡し
設立
契約
月
分譲収入
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
0
5,
309
仮受消費税
0
0
0
0
0
0
0
0
0
129
129
129
0
3
還付消費税
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
438
0 5,
計
5,
309
309
0 5,
0
3
441
0 5,
収入合計
5,
438
土地購入費
1,
890
仲介手数料
57
57
土壌調査費
0
0
0
測量費
1
1
1
解体工事費
0
0
0
造成工事費
0
0
0
建築工事費
1,
770
設計費
62
近隣対策費
10
公共負担金
0
許認可取得費
0
1,
890
701
189 1,
57
0
0
62
21
21
21
1,
770
885
442
442
10
10
0
0
0
0
0
106
71
35
モデルルーム費
106
広告宣伝費
159
販売委託費
159
13
13
13
13
13
13
13
13
13
13
13
13
159
販売諸経費
38
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
38
159
10
10
10
20
20
30
59
0
0
0
登録免許税
10
10
10
固定資産税
13
2
2
2
2
2
2
2
13
都市計画税
5
1
1
1
1
1
1
1
5
印紙税
2
不動産取得税(建物)
1
不動産取得税(土地)
80
4
4
ファイナンス関連コスト
163
43
3
予備費
建中金利等
106
TMK関連費用
17
3
その他費用
40
40
4
4
4
4
3
47
0
0
6
4
4
4
4
4
3
26
1
0
0
27
4
4
4
4
3
0
6
1
2
24
1
2
1
1
80
4
4
3
24
8
3
163
24
8
0
106
3
17
3
2
1
4
1
4
24
3
3
0
4
47
3
0
仮払消費税
2
1
1
2
1
2
45
0
0
40
0
127
納付消費税
0
33
33
法人税等
1
2
3
支出合計
4,
526
支出累計
収支(ファイナンス前)
911
収支累計(ファイナンス前)
優先出資
1,
642
特定社債
2,
394
ブリッジローン
26
7
69
4
127
24
47
48
510
21
32
24
35
46
34
959
0
689
40 4,
0
731
321 1,
0
0
0
689
650 4,
650 4,
691 4,
656 3,
611 3,
576 3,
552 3,
520 3,
498 3,
989 3,
941 2,
894 2,
870 2,
743 2,
739 2,
670 2,
092 2,
085 2,
078 2,
052 2,
321 2,
0
0
731 −26
0 −321−1,
0
0
688
653−3,
608−3,
573−3,
549−3,
517−3,
495−3,
986−3,
941−2,
894−2,
870−2,
743−2,
739−2,
670−2,
092−2,
085−2,
078−2,
052−2,
0 −321−2,
−7
−7 −578 −69
479
−4 −127 −24 −47 −44 −510 −21 −32 −24 −35 −46 −34 4,
791
0 −40
791
752
752
−2,
394 −752
1,
642
2,
394
600
0
0
0
642
0 1,
収支(ファイナンス後)
0
0
131 −26
321−1,
0 1,
−7
収支累計(ファイナンス後)=現預金残高
0
0
321
0 1,
164
157
190
−2,
394
0
394
0−2,
394 −752
0−2,
0
−600
600
600
4,
636
578
0
0
ファイナンス合計
7
0
794
0 1,
0
216 −69
−7 1,
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
085
−4 −127 −24 −47 −44 −510 −21 −32 −24 −35 −46 −34 2,
051
095 1,
142 1,
166 1,
293 1,
297 1,
366 1,
150 1,
541
520
488
464
429
383
433
0−2,
433
433 2,
348 2,
0
0
November-December. 2003
21
なお、ストラクチャー図、証券化スケジ
ュール、CF(キャシュフロー)モデルにつ
②住宅性能保証制度
③建設事業者等の負担範囲
いては、図表 4、5、6 のとおりとなってい
ます。
5.おわりに
i)証券化検討段階
①証券化の目的の明確化
②証券化ストラクチャーの検討
以上が「開発型証券化ガイドブック」の概
③証券化スケジュール
要ですが、紙面の関係上、最小限の内容し
④デューディリジェンスの実施
か記載することができませんでした。今後
⑤リスクの分析と対策の検討
は、開発型証券化の事例等を盛り込んだ出
⑥格付取得の準備
版物を作成するなど、(社)不動産証券化協
⑦CF(キャッシュフロー)モデルの作成 会と連携して広く普及・啓発活動を展開し
⑧必要なプレーヤー
ていきたいと考えております。
最後になりましたが、
「開発型証券化ガイ
ii)資金調達段階
ドブック」の作成のための研究会メンバー
①中間法人設立
として、伊藤哲哉(アンダーソン・毛利法
②特定目的会社設立
律事務所弁護士)
、高木宏(税理士法人中央
③各種契約作成・締結
青山金融部シニアマネージャー公認会計
④特定目的会社業務開始
士)
、牧野吉克(東海東京証券(株)金融商品
⑤資金調達実行
開発部長)
、瀬戸川智弘(東海東京証券(株)
⑥土地代金決済・登記
金融商品開発部アシスタントマネージャ
ー)
、南和文((株)東京カンテイ常務取締役)
、
iii)建設段階
荘司秀行((株)日本格付研究所ストラクチ
①特定目的会社の管理
ャード・ファイナンス部シニア・アナリス
②工事進捗状況の管理
ト)
、辻野美穂子((株)日本格付研究所スト
③竣工と引渡
ラクチャード・ファイナンス部アナリス
ト)
、また、事務局メンバーとして、巻島一
iv)分譲と返済・配当段階
郎(社団法人不動産証券化協会専務理事事
①売買契約
務局長)
、青柳宏一(社団法人不動産証券化
②引渡
協会事務局次長業務部長)
、朝日真(PWCA
③償還・返済
ディレクター)
、加藤徹也(PWCAマネジャ
④特定目的会社の解散と清算
ー)、片山竜(PWCAマネジャー)
(敬称略、
順不同)の御参加を頂きました。末筆ではご
v)アフターサービス段階
①瑕疵担保責任
22
ざいますが、各位に感謝の意を表する次第
です。
ARES REPORT
フランス版REIT
' ' d'investissements
「SIIC(les societes
'
immobiliers cotees)」について②
活動である場合のみ対象となる。ショッピ
ング・モールの駐車場はモール所有会社の
子会社が経営している場合も含めてその範
囲に入る。
パシフィカ総合研究
(PSK)主宰・研究員
広岡 裕児
●不動産のリース販売は、
リース残高が当該
SIICの資産の50%未満である場合に限り課
税対象となる付帯事業として認められる。
前号で報告したフランス版REIT、SIIC
●不動産転売、不動産販売 、建売はその事
(上場不動産投資会社)について、その後の
業に使用する資産がSIIC総資産の20%未満
動きをお伝えしたい。
である場合に限り課税対象となる付帯事業
として認められる注1。
■■ 税務通達
●直接または間接に過半数の株式を保有あ
9 月25日待望の税務通達が出た。
るいは事実上の決定権を持つ人格(法人・自
SIICは、新しい会社制度の創設ではなく、
然人)の間や同一人格の支配下にあると見
既存の不動産賃貸を目的とする上場会社が
なされる人格間での不動産取引の譲渡益は
賃貸収益の85%、譲渡益の50%を配当する
非課税対象外。
ことを条件に当該収益の法人税(会社利益
●SIICを選択した子会社の配当収入や非選
税)を免除するという税務優遇措置であり、
択の子会社の不動産収益分の配当収入は
この通達によって具体的な諸点が明らかに
100%配当しなければならない。
なった。
●非課税対象事業の損益はすべて通算する。
●SIICは外国の市場にも上場可能。
その結果税務上欠損となった場合には一般税
●SIICは直接または間接的に海外で一部あ
務規則と同条件でむこう 5 年間繰越できる。
るいは全部の活動をすることができる。そ
●課税対象事業の損益は、非課税事業損益
の場合、フランスで課税対象になる活動の
に影響を及ぼさず、非課税事業に関係する
みが優遇措置の対象となる。
分配義務にも影響しない。
●非課税の対象は建物(土地付)であって、
●分配義務の尊重は賃貸・売却・子会社配当
用益権など付属する権利は対象外。他人所
の三種の収入ごとにではなく全体として捉
有の土地の建物は、土地賃借人が賃借契約
えられる。もし分配義務が一つでも満足さ
期間中ずっと建物を所有する場合には対象
れない場合は、会社全体の非課税について
となる。
見直しが行われる。
●駐車場はその管理が建物賃貸に付属する
●配当義務は三種の収入にそれぞれの法定
November-December. 2003
23
率を掛けた額の合計で、非課税事業全体の
各社のExit Tax(不動産含み益に対する
税務上の損益内に限定された会計上の損益
16.5%の課税)の総額は 14億3,625万ユーロ
を上限とする注 2 。
となった。本税は 4 年間の分納で、毎年12
・税務上の損益とは非課税事業全体の損
月15日が納付期限だが、2003年度は予算で
益を通算したもので、収入ごとの合計が
見積もられた 4 億ユーロを上回る。
これを越える場合超過分は配当できない。
来年の選択予定会社を加えれば、当初予
・会計上の損益とは当期損益から繰越
測されていた15億ユーロを越えることはま
損・法定準備金を差引き、繰越益を加算
ちがいない。
したもので、収入ごとの合計がこれを越え
る場合超過分は翌期以降に繰り越される。
なお、Exit Tax算出のため行った再評価
の会計処理については、国家会計審議会の決
●租税条約がない場合、非居住者は配当に
定により次の 2 つの方法が認められている。
対して25%の所得税が源泉徴収される。
①税務上の再評価をSIICの資産価値とはせ
ず、Exit Taxは損益計算書に計上する。
■■ SIIC誕生
②再評価をSIICの資産価格とする。その場
9 月30日、本年度の上場不動産会社の
合、不動産の再評価による差額は税引後
SIIC選択届出が締め切られ、次の 9 社がこ
で評価差額とする。不動産売却の際には
の新しいステイタスを選択した(カッコ内
引当金に振り替えることによって配当を
はExit Tax税額)
。
可能とする。Exit Taxを損益計算書には
1.AFFINE
2.KLEPIERRE
(1,050万ユーロ)
( 1 億3,000万ユーロ)
3.SOCIETE FONCIERE LYONNAISE
株価は各社がSIIC選択を決めたこの 3 カ
月でいずれも上がっている。しかし、2002年
( 1 億300万ユーロ)
11月のSIIC制度の発表時のような急騰はな
(6,550万ユーロ)
い(図表 1 参照)
。CAC 40指標も同様の推移
5.UNIBAIL
( 3 億8,200万ユーロ)
をしており、特別好調というわけではない
6.GECINA
( 5 億7,320万ユーロ)
(図表 2 参照)
。だが、不動産株は他のセクタ
4.SOPHIA
7.SILIC
(9,920万ユーロ)
ーの株が好調
8.EMGP
(3,500万ユーロ)
な時には逆傾
9.FONCIERE DES REGIONS(3,785万ユーロ)
向を示すこと
AFFINE
45.80−48.50
ががよくあ
KLEPIERRE
43.95−47.80
SOCIETE FONCIERE
LYONNAISE
30.00−31.02
SOPHIA
31.37−38.86
UNIBAIL
64.75−67.40
101.00−109.40
前号のインタビューで、FSIF代表幹事ケ
図表1 7月17日∼10月17日(ユーロ)
ルベルグ氏がリストアップした 8 社に加えて、
り、この堅
FONCIERE DES REGIONS社が選択した。
調自体がSIIC
一 方 、 BAIL INVESTISSEMENTと
の将来への
GECINA
FONCIERE DES PIMONTSは見送ったが、
マ ーケット
SILIC
この 2 社もBAIL ST. HONORE社とともに
の信頼の証
EMGP
と言えるであ
FONCIERE DES
REGIONS
次の期限である2004年 4 月30日までには選
択する予定である。
24
計上せず、償却として処理する。
ろう。
※CAC40
44.50−48.50
300.10−308.90
169.30−189.00
3139.38−3379.44
図表2 IEIF 仏フォンシエール指標CAC40 (除配当Base 100 28/12/01)
140,00
IEIF フランス不動産会社指標
さらにSOPHIAを買収すること
によって、資産そのものと同時
120,00
に経営陣のノウハウも手に入れ
100,00
80,00
CAC 40
60,00
この買収でフォンシエール・
40,00
リヨネ社は、資産総額52億ユー
20,00
ロ(94%がパリと首都圏で70%
8
/0
2
2
/0
/0
2
1
2 2 2
2
/0 0 /0
/0
3 4/ 5
1
0
0
0
/0
/
/
/
8 8 8
8
2 2 2
2
2
/1
8
28
/0
28 6/
/0 02
28 7/
/0 02
28 8/
/0 02
28 9/
/1 02
28 0/
/1 02
28 1/
/1 02
28 2/
/0 02
28 1/
/0 03
28 2/
/0 03
28 3/
/0 03
28 4/
/0 03
28 5/
/0 03
28 6/
/0 03
28 7/
/0 03
8/
03
0,00
2
て近代化に拍車をかける。
■■ 業界の動き
9 月 3 0 日、 S I I C 選 択 9 社 の 内 の 1 社 、
以上が事務所)となり、フラン
ス第 3 の不動産会社となるが、
債務比率を減らし新しい不動産
の集中化をするために、2005年末までにホ
SOCIETE FONCIERE LYONNAISE(フォ
テルや倉庫、住宅といった戦略的でない物
ンシエール・リヨネ社)が同様のSOPHIAを
件と賃料が上限に達し、上昇の見込みのな
友好的公開買付または交換で取得すると発
いパリ中心地の高級物件などを中心に17億
表した。
ユーロ程度の売却をする予定である。
SOPHIAは、旧SICOMI(不動産リース販
ちなみにフォンシエール・リヨネ社は「リ
売会社)数社の合併吸収により、1999年に
ヨネーズ」の名のように、もともとクレデ
創 設 さ れ 、 ソ シ エ テ・ジ ェ ネ ラ ル 銀 行
ィ・リヨネ銀行の不動産会社だったが、も
(27.40 %)とAGF保険(27.01%)が唯一の
はや株主名簿にその名はない。
5 %以上保有の株主だが、この両者とも持
一方、フランスに多くの資産を持つ英国
株すべてを売却あるいは交換する。商業物件
のHAMMERSONやオランダのCORIOもSIIC
専門で資産の入居率97%、パリ市場の
の設立の意向を示している。
SBF120指標銘柄に な っ て い る 優 良 会 社
HAMMERSONについては現状では非常
で、2002年度には 2 億9,100万ユーロの投
に短期間で不動産売買をしているので、税
資、36の建物を売却、4,180万ユーロのキャ
務当局がマルシャン・ド・ビアン活動とみな
ピタルゲインを実現した。この実績が示すよ
して課税する可能性が指摘されている。し
うにダイナミックに資産入れ替えを行って
かし、SIICになれば当然戦略も変えるだろう
いる。
し、非課税で申告して税務署が見直したと
一方、フォンシエール・リヨネ社は、1879
年に創設された会社で、まさにケルベルグ
氏の言葉を借りれば「眠れる美女」が目を覚
しても納税すればよいのであって、それを理
由にSIIC資格剥奪ということにはならない。
このほか、
ソロス系のAWONが、SOCIETE
ましているところである。所有物件には、
FONCIERE DE TOUR EIFFEL(エッフェ
時価が簿価の10倍になっているような古い
ル塔不動産会社)に買収をかけている。同社
物件がかなりあったが、これらの税務処理
は別にエッフェル塔の所有者ではなく、休
がExit Taxによって通常譲渡の半分以下で
眠会社だが、上場不動産会社であることを
済んでしまったわけで処分が可能になった。
利用してSIICに仕立てる模様である。
November-December. 2003
25
■■ おわりに
10月 1 日、FSIFとパリ株式市場のプロモ
減らす。ただし、銀行と同じで国際的な集
中は少ないと思われる。
ートをするパリ・ユーロプラスの共催で記
○今は会計基準の問題があるが、同じく今
者会見が行われたが、なかでもFSIF理事長
から 5 年後ぐらいで不動産会社のヨーロッ
デュモルチエ氏の話が示唆に富んでいたの
パでの税制の統一が考えられる。
で紹介したい。
○不動産株は特別な資産である。普通の株
* * *
式と不動産株を同じものだと見なすことは
やめなければならない。アメリカでもオラン
注1 フランスでは短期売買はマルシャン・ド・ビ
アン(資産商人)という賃貸用不動産所有
ダでも 4 、5 年前から別々に考えている。
とは別の業務と見なされる(登記税の繰り
○不動産会社は反サイクルである。ファイ
延べなどマルシャン・ド・ビアン向けの税
ナンス市場が不振の時に買われる。REITが
立証しているように株価のヴォラティリテ
制優遇もある)
。
注2 例
賃貸益を<200>、売却益を<20>子会
ィが少ない。
社からの配当を<20>、当期の会計上の損
○不動産会社の経営者には毎年純キャッシ
益が<160>と仮定する税務上の損益は、
ュフローを改善するという目標がはっきり
している。そのためには売買のリスクと賃
<200+20+20=240>。
収入ごとの配当義務は、賃貸益が<200×
85%=170>、売却益が<20×50%=10>、
貸のリスクを細かく検討しなけれならない
子会社からの配当が<20×100%=20>とな
し、いやがうえにもそうせざるを得ない。
り、合計は<170+10+20=200>。
また、入居率は最低でも90%だから賃貸リ
スクは10∼15%に限定されている。これも
収入ごとの配当義務合計<200>は、税務
上の損益<240>以下だから、義務配当額
は<200>。しかし、会計上の損益が
安定の要因である。
<160>だから、それ以上は配当できない。
○不動産会社は透明性がある。他のヴィー
翌期の配当額は、賃貸益が<170×160/
クルにはしばしば非常に不透明なものがあ
る。利益相反も第三者向けの管理手数料に
よる減額もない。また外部の独立した当局
(COB:株式市場取引委員会)の監督がある
ので、資産再評価と社会的環境的リスクの
200=136>、売却益が<10×160/200=
8>、子会社からの配当が<20×160/200=
16>となり、合計は<136+8+16=160>。
会計上の損益の状態で可能であれば、
翌々期に翌期分の配当の他に残高を(合計
40)配当する。
※税務通達記載の例を若干修正。
評価を定期的に行わざるを得ない。
○不動産市場においては長期投資家のスタ
ンスをとっているので不動産のヴォラティ
リティを減らす。しかも不動産に対して投
機ではなく産業としてアプローチをする。
○むこう 5 年で、さらに不動産会社は集中
化が進むであろう。大型化によって資産の
多様化ができ、株価と賃貸収入のリスクを
26
ひろおか・ゆうじ
●1954年神奈川県川崎市生まれ。大阪外国語大学仏語
科卒業後、パリ第三大学に留学。現在パリ在住。パシフィ
カ総合研究(PSK)主宰・研究員、コンサルタント、ジャー
ナリスト。著書に「プライベートバンキング」
(総合法令)
「一
等国の皇族」
(中央公論新社)ほか。訳書「フランスの土
地政策」
(共訳、住宅新報社)
ARES REPORT
J-REIT市場創設2周年を
迎えて その2
― それでも制度上の課題は残されたまま ―
井出不動産金融研究所 不動産金融アナリスト
井出 保夫
前号で指摘したように、J-REITは誕生から2年を経て、金融、不動産両市場におけるプレ
ゼンスを徐々に向上させることに成功した。今年9月に上場した最新の2つの投資法人(東急
リアル・エステートおよびグローバル・ワン不動産)を加えた全8銘柄の時価総額は7,620
億円(2003年10月末時点)に達し、上場不動産セクターの20%強を占めるに至っている。
しかし、市場での成長戦略では一定の成功を収めたJ-REITも、一方でスタート当時から懸
案とされてきたさまざまな制度上の課題(特に税法上の課題)については、ほとんど解消され
ないまま2年が経過してしまった感がある。J-REITが本格的な不動産金融商品として、市場
でのプレゼンスを高めつつあるのは何よりだが、投資商品としての根本的な欠陥が残されたま
までは、市場の真の信任は得られまい。本稿ではこの点に着目して、J-REIT創設からの2年
間を振り返ってみたい。
■■ 放置されたままの課題
(1)不動産をJ-REITに譲渡した場合の譲渡
益課税の繰り延べ
これはいわゆる日本版UP-REIT(アップ
があるのかについて当局は懐疑的である。
③米国REITにおいても、REITのコーポレ
ートガバナンスにUP-REITが悪影響を与
えているとの指摘があり、投資家間の不
リート)を創設してほしいとの要望だが、
公平感が高まりつつある。
一向に実現に向けての動きが見られない。
現行の日本の税制をベースに考えるので
その理由としては次の 2 点が考えられる。
あれば、なるべくUP-REITという用語を使
①現時点でJ-REITに拠出される物件のほと
わずに、例えばJ-REITに不動産を現物出資
んどが譲渡益の見込めない(取得価格が高
し、その代替資産としてJ-REITの投資口を
い)損切り物件であり、スポンサーを含め
取得した場合には、旧不動産所有者は投資
た物件の売り手サイドに譲渡益課税を繰り
口相当額を圧縮記帳でき、不動産の簿価を
延べしたいというニーズがほとんどない。
そのまま投資口に引き継ぐことができると
②UP-REITはあくまで米国のパートナーシ
いった、かつての事業用資産の買替特例の
ップ税制に基づく特例であり、日本の税
ような単純でわかりやすい制度を導入する
制にはこれをカバーできる制度が存在し
必要がある。
ない。もしもUP-REITをそのまま導入し
※なおUP-REITの仕組みは複雑なため、
ようとすれば、複雑なパートナーシップ
次号以降に十分な誌面を確保したうえで解
税制を新たに導入する必要があるが、J-
説したい。
REITのためだけに新税制を導入する意義
(2)J-REITの税務処理に関する宥恕規定
November-December. 2003
27
(セーフ・ハーバールール)の導入
投資法人の導管体要件(投資法人が配当
金算入要件を満たすことができず、②の税
を損金算入できる要件)の 1 つである支払
務上の所得130に対してもろに法人税が課税
配当要件の判定式において、税務調査にお
されることになる。J-REITでは、資本的支
ける否認金額に対しては、その税務調査が
出と修繕費の認定に関する解釈や、新たに
行われた事業年度に係わる金銭の分配を追
導入される減損会計次第では、この程度の
加的に行うことによって不足分の分配を行
差異が発生するケースは十分に考えられる。
えば、投資法人への課税が免れる規定(こ
<ケース 2 >
れを宥恕規定もしくはセーフ・ハーバール
上記の状況で、仮に会計上の利益を越え
ールと呼ぶ)を、米国REITに倣って認めて
て金銭の分配を行ったとすると、導管体要
ほしいとの要望が出されているが、一向に
件を満たすためには、会計上の利益をはる
導入される気配がない。宥恕規定は税の透
かに上回り、税務上の所得をもはるかに超
明性(タックス・トランスパレンシー)を高
える大幅な金銭の分配を行わねばならない。
め、非課税ビークルとしてのJ-REITの地位
なぜならば、利益を超える金銭の分配を行
を安定させるためには欠かせないルールだ
った場合の支払配当要件の判定式は、金銭
が、官民ともに税務処理の実務経験が乏し
の分配の額>(総所得金額+利益超過分配
いなかで、ずっと後回しにされたまま放置
金額)×90%となっており、利益超過分配
されているとの印象が強い。
額が左辺および右辺にも加算されるため、
(3)導管体要件である「支払配当の額>税務
支払配当要件をクリアするためには、会計
上の所得×90%」を「金銭の分配の額>
上の利益の100と、会計上の利益を上回る
税務上の所得×90%」に修正するべき
171の多額の利益超過分配、すなわち合計
現行の支払配当損金算入要件の判定式は、
271という多額の金銭の分配を行う必要があ
①支払配当の額(金銭の分配額のうち会計
る か ら で あ る 。 金 銭 の 分 配 の 額( 1 0 0 +
上の利益の分配からなる金額)>②税務上
171)>(130+171)×90%=270.9
の所得×90%となっているが、①は会計上
<ケース 3 >
の概念、②は税務上の概念であるために、
現行の支払配当損金算入要件を次のよう
会計上と税務上の制度的取り扱いの差異に
に修正することで、常識はずれの多額な利
より、この要件が満たされない場合が頻発
益超過分配金を支払う必要がなくなる。
する可能性がある。
※不動産・金融環境改革懇談会の試算では
次のようなケースが考えられ、最悪の場合
(ケース 2 )は会計上の利益の1.7倍を超える
利益超過分配金を支払わなければならない
支払配当の額ではなく、金銭の分配の
額>税務上の所得×90%
これにより、18の利益超過分配を行えば、
上記要件をクリアできることになる。
金銭の分配の額118(100+18)
>130×90%
ことになる。
「支払配当の額」から「金銭の分配の額」に
<ケース 1 >
変更することにより、わざわざ支払配当損
①の会計上の利益が100、②の税務上の所
28
得が130の場合、100<130×90%となり、損
金算入要件を満たすためだけに271もの分配
をする必要はなくなり、18の分配を行うだ
の投資意欲をそぐものである。したがって、
けで同要件はクリアされることになる。
この問題を解決するために、投資法人から
<ケース 4 >
の金銭の分配はすべて配当であるとの取り
仮に支払配当損金算入要件がクリアでき
たとしても、損金に算入できる額はあくま
でも金銭の分配額のうち利益の配当等から
なる部分の額であり、上記の例では税務上
扱いにするべきである。
■■ 改善された課題
(1)配当・譲渡益課税の軽減
配当課税については、金額にかかわらず
損金として認められるのは100だけなので、
所得税・住民税合計で税率20%の源泉徴収と
30については課税されてしまうことになる。
なり、申告も不要となった(平成15年 4 月 1
そこで投資法人の損金算入できる金額を
日から同20年 3 月末までは税率10%に軽
「金銭の分配額」、すなわち「投資法人の配
減)
。また、譲渡課税については、平成15年 1
当は金銭の分配額とし、減資とは異なる」
月 1 日から同19年12月末までは保有期間に
ということにすれば、投資法人は金銭の分
かかわらず、税率は10%に軽減され、特定口
配額まで損金算入できるので、会計上の利
座を使った申告不要の新制度が導入された。
益にかかわらず課税所得を全額分配すれば
(2)不動産流通課税の軽減とその制約要件
課税所得全額損金算入が可能となる。
(4)TMKの優先出資証券やTK出資への投資
規制の解除
の撤廃
登録免許税は土地建物とも評価額×0.6%
(平成16年 3 月末まで)
、不動産取得税は土地
導管体要件である「他の法人の発行済株式
が評価額× 1 / 2 × 1 /3 × 3 %、建物が評価
総数または出資金額の50%以上を有すること
額× 1 /3 ×3 %(平成17年 3 月末まで)に軽
ができない」の解釈を修正し、
「特定目的会社
減された。また、不動産取得税の軽減を受け
(TMK)の優先出資証券や匿名組合(TK)の
るための要件として、1 / 2 実物不動産要件や
出資持分は適用除外」とするべきである。
(5)出資の払い戻しを受けた投資家への課
税の簡素化
面積要件等があったが、これらも撤廃された。
(3)銀行の勘定区分変更により、売却益が
業務純益に計上されることになった
投資法人において会計上の利益を超える
全銀協の通達により、銀行保有のJ-REIT
金銭の分配を受けた際は、株式会社等によ
の勘定区分は投資信託扱いとなり、その売
る出資の払い戻しと同様に、投資家は譲渡
却損益は国債等債券売却損益に計上される
損益の算定を行う必要がある。投資法人か
ことになった。これにより、銀行にとって
らの出資の払い戻し、すなわち会計上の利
J-REITの売却損益は特別損益ではなく、本
益を超える利益超過分配額は、株式会社等
業の損益と同じ営業純益に計上することが
における減資とは性格を異にするものであ
可能になった。
るにもかかわらず、投資家は利益を超える
金銭の分配を受ける都度各々みなし譲渡損
(4)J-REITのファンド・オブ・ファンズが解
禁された
益を計算し、確定申告が必要になるなどの
投信協会が自主ルールを改正して、日米
取り扱いは複雑かつ不合理であり、投資家
REITを上場株とほぼ同じ扱いにしたこと
November-December. 2003
29
で、投資信託が日米のREITに上限なく投資
REIT中心とはいえ、それ以外の国のREIT
できるようになった。従前は日米REITとも
もポートフォリオに組み入れたFOFsが組成
日本では投資信託の一種としてカテゴリー
され、国内個人投資家向けに販売される傾
分けされていたため、1 銘柄につき 5 %以上
向が続いている。こうした外国籍REITの情
組み入れられないとの上限規制があったが、
報公開やその市場分析、個別銘柄の投資分
改正後はREITに特化して投資する投資信
析に死角はないのか。
託、いわゆるファンド・オブ・ファンズ
(FOFs)の組成が可能になった。
たのか
もっとも、REITのFOFsは100%禁止され
REITを中心的な投資対象とする一部の
てきたわけではない。投信協会の自主ルー
FOFsは、国内の銀行窓口でも販売されるよ
ルでは、
「その受益証券を特定の投資信託の
うになったが、かねてから総合規制改革会
受託者に取得させることを目的とするもの
議(議長:宮内義彦オリックスCEO)が主張
であって、当該投資信託の受託者と当該投
してきたJ-REITの銀行窓販はこのFOFsの
資信託受益証券を取得するその他の特定の
解禁によって代替されてしまうのか。同会
投資信託の受託者が同一であり、かつ当該
議が同時に提言したETF(株価指数連動型
投資信託受益証券を取得するその他の特定
上場投信)についてはいち早く銀行窓販が
の投資信託の投資信託約款においてその旨
認められているが。
が規定されているもの」は組成可能ではあ
もしそうだとすれば、現在考案されてい
った。つまり、マザーベビー型のFOFsは最
るREITのFOFsは、販売手数料や信託報酬
初から解禁されてはいたのだが、マザーべ
の面で個人投資家にとって割高感は否めな
ビー型の運用の自由度はかなり低いため、
い。銀行顧客がJ-REIT投資をリーズナブル
それを組成しようという運用会社は現れな
なコストでできる商品はないものか。長期
かったのである。
の投資に耐えられる銀行顧客層を取り込ん
※マザーベビー型ファンドとは、投資家が
でいくことが、今後のJ-REITの個人投資家
購入した投資信託(ベビーファンド)が、原
対策には欠かせないと思うのだが。
則、市場から直接、有価証券を買い付けて
※参考資料「日本版REITの改正要望書」
運用することをせず、別に設定した投資信
平成15年 6 月不動産・金融環境改革懇談会 発行
託(マザーファンド、親ファンドともいう)
の受益証券を組み入れ、実際の運用は親フ
ァンドで合同運用するというもの。
■■ 新たな課題
(1)外国REITに関する投資分析に甘さはな
いか
投信協会の自主ルール改正後は、外国の
証券市場に上場するREITであればすべて
FOFsの対象になり得るとの解釈から、米国
30
(2)銀行の窓口販売解禁はその後どうなっ
いで・やすお
●1962年東京生まれ、
85年早稲田大学商学部卒業後、秀和、
オリックス、シンクタンク等を経て不動産金融アナリストと
して独立。1999年に井出不動産金融研究所を設立し、主に
不動産会社や金融機関向けの証券化コンサルティングや
実務者向けの不動産証券化スクールの運営、不動産金融
レポート発行等による情報提供を手がけている。主な著書
として、
『「証券化」がよく分かる』(文春新書)
『REITのし
くみ』
『証券化のしくみ』
(以上日本実業出版社)
『不動産
金融ビジネスのしくみ』
『不動産は金融ビジネスだ』
(以上
フォレスト出版)等がある。
『井出保夫の不動産証券化スク
ール』を随時開校中。 http://www.hi-ho.ne.jp/idex/
ARES REPORT
J-REIT View
∼東急リアル・エステート投資法人、
グローバル・ワン不動産投資法人が加わって∼
2003年 9 月、待ち望まれていた2銘柄が東
らすれば、総合的なファンドに投資するも
京証券取引所に上場した。東急リアル・エス
よし、複数の銘柄を組み合わせてREITのポ
テート投資法人(銘柄コード:8957/上場時
ートフォリオを作るもよし、その自由度は
価総額:519億円)と、同じくグローバル・ワ
高い。
ン不動産投資法人(銘柄コード:8958/上場
片やJ-REITが登場して からの2 年間に国
時価総額:245億円)である。この 2 銘柄の
内の代表的企業集団がオリジネーターとし
上場により、J-REIT全体での時価総額は
てオフィス特化型や複数プロパティータイ
7,600億円程度へと拡大し、最近の大幅な株
プからなる総合型の商品を提供してきた。
価回復を受けた東証 1 部不動産セクターの
地域分散やプロパティータイプ分散が効い
時価総額との比較感においても、その市場
た、REITとしての総合力を提供する形態で
規模は順調に拡大していると言えよう。
ある。これは新しい金融商品であるREITが
REITの先進国アメリカでは03年10月末現
在で172銘柄が上場し、その時価総額は20兆
市場に認知されるのに重要な役割を果たし
てきたと言える。
円を越えている。オフィス特化、商業特化
それでは、今後期待されるREITの発展形
からヘルスケアやモーゲージREITまで多様
態はどのようなものだろうか。総合型ファ
な投資対象が揃っていて、投資家の立場か
ンドの重要性はもちろん変わらないが、一
図表1 J-REIT時価総額の推移と東証1部不動産業時価総額との比較
(2001年9月10日∼2003年10月30日)
30.
0%
8,
000
6,
000
20.
0%
︵
億 4,
000
円
︶
10.
0%
2,
000
0.
0%
0
2001/9/10
2002/3/11
J-REIT時価総額
2002/8/30
2003/3/3
2003/8/22
東証1部不動産業時価総額に対するJ-REIT時価総額の割合
(備考)J-REIT時価総額は、J-REIT既上場銘柄の時価総額を合計して算出。
November-December. 2003
31
図表2 上場J-REIT銘柄一覧
日本ビル
名 称
ファンド
投資法人
ジャパンリアル
日本リテール
エステイト
投資法人
オリックス
日本プライム
プレミア
東急リアル・
ファンド
不動産
リアルティ
投資法人
エステート
投資法人
投資法人
略称
NBF
JRE
JRF
特色
オフィスビル
オフィスビル
商業施設運用型
運用型
運用型
JPR
OJR
首都圏特化型
(運用資産は
(都心5区中心)
所在地
投資法人
総合型)
全国分散型
(運用資産は
投資法人
PIC
首都圏特化型
(運用資産は
グローバル・ワン
不動産
投資法人
東急RE
GO
首都圏特化型
オフィスビル
(運用資産は
オフィスビル・
商業施設)
住居の複合型) 商業施設)
東京都中央区
東京都港区
東京都渋谷区
西麻布一丁目
南平台町
飯田橋二丁目
2番7号
2番17号
7番5号
東京都中央区
東京都千代田区
東京都千代田区
東京都港区浜松
八重洲二丁目
丸の内三丁目
紀尾井町三丁目
町二丁目4番1号 八重洲一丁目
7番2号
3番1号
4番3号泉館紀尾
9番9号
オフィスビル・
運用型
オフィス・
(3大都市圏)
東京都千代田区
井町ビルディング
設立年月日
2001年3月16日 2001年5月11日 2001年9月14日 2001年9月10日 2001年9月14日 2002年5月2日
上場年月日
2001年9月10日 2001年9月10日 2002年3月12日 2002年6月12日 2002年6月14日 2002年9月10日 2003年9月10日 2003年9月25日
決算期
6月末、
12月末
3月末、
9月末
2月末、
8月末
2月末、
8月末
6月末、
12月末
4月末、
10月末
1月末、
7月末
3月末、
9月末
資産規模
307,
688百万円
200,
022百万円
45,
012百万円
120,
985百万円
144,
989百万円
55,
751百万円
80,
300百万円
39,
753百万円
保有物件数
29棟
30棟
4棟
40棟
30棟
13棟
11棟
3棟
テナント数
446社
359社
5社(重複分1社
222社
324社
282社
90社
33社
兼松ビル、神南
ランディック第2 世田谷ビジネス
2003年6月20日 2003年4月16日
含む)
主要物件
JFEビルディン
渋谷クロスタワ
大阪心斎橋ビル、 クロスゲート、
グ、芝NBFタワ
ー、三菱総合研
仙台中山ショッ
ー、新宿三井ビ
究所ビルヂング、 ピングセンター、 ビル、キャロット
ルディング二号
名古屋広小路ビ
館 ルヂング
エスパ川崎
ランディック赤坂 一丁目ビル、
MS芝浦ビル
スフィアタワー
新橋ビル、かな
スクエア、
天王洲、近鉄大
がわサイエンス
QFRONT
森ビル、近鉄新
パークR&D棟、 (キューフロント)、 名古屋ビル
タワー
ランディック
東急鷺沼ビル
新橋ビル
運用会社の
三井不動産(株)、 三菱地所(株)、
主要株主
住友生命保険(相) 東京海上火災保 ユービーエス・
三菱商事(株)、
オリックス(株)
東京建物(株)、
(株)ケン・コー
安田生命保険(相)、 ポレーション、
東京急行電鉄(株)、 日本ジーエムエーシー
東急不動産(株)
・コマーシャル・
険(株)、第一生命 エイ・ジー
大成建設(株)、
保険(相)、三井物
安田不動産(株)、 グ(株)、中央三井
近畿日本鉄道(株)、
産(株)
(株)損害保険
アセットマネジ
明治生命保険(相)、
ジャパン
メント(株)、
(株)東京三菱銀行、
三井住友海上
三菱信託銀行(株)
日興ビルディン
モーゲージ(株)、
火災保険(株)
(備考) 資産規模、テナント数は、原則として直近決算期末時の状況を表す。保有物件数及び主要物件は有価証券報告書等公表資料による。
ただし、東急リアル・エステート投資法人及びグローバル・ワン不動産投資法人は、有価証券報告書を公表していないため、上場時の数値を示す。
資産規模については物件取得価格としている。
主要物件は、取得価格の上位3物件を示す。
方で、さらに特色のあるREITが登場するこ
や貸し出しで預金金利分の運用をしてくれ
とも同時に期待されている。
ていた。90年代になって自己責任の時代が
始まると、株や不動産の下落により、リタ
32
日本における年金運用の歴史をひも解い
ーンの背後にあるリスクに着目するように
てみると、80年代までは生保の一般勘定や
なった。その結果、リスクをしっかりと判
信託銀行のバランス型年金特金に全額投資
断できる投資家は資産配分(アセットアロ
をしていれば事足りた時代であった。生
ケーション)のリスクを自分で取り、その先
保・信託側で株や債券、不動産に分散投資
のアセットクラスごとの運用を専門家に任
していたのである。個人投資家も同様で、
せるようになった。年金ではバランス型運用
銀行預金に預けていれば、銀行が株や債券
から特化型運用へと移行し、個人も貯蓄者
す。表参道を原宿方面に少し戻りブランド
から投資家へと変身せざるを得なくなった。
ビルとオープンカフェを越えた右手に商業
特色のあるJ-REIT、それにはさまざまな
形態が想像できる。ミドルリスクミドルリ
物件「TOKYU REIT表参道スクエア(仮称)
」
ターンといわれるREITの世界で、今はまだ
がある。そこから歩いて 5 分、青山通りか
上場がないが、相対的にリスク度合いが低
ら骨董通りに左折し、日本リテールファン
い住宅系ファンドに惹かれる投資家がいる
ドが保有する南青山2002ビルを越えたとこ
かもしれない。
(一般的に住宅の賃料はオフ
ろに「レキシントン青山」が現れる。渋谷に
ィスより安定的だといわれる)
。一方で、あ
向けて歩くこと15分、ジャパンリアルエス
る社が保有するショッピングモールへ行っ
テイトが保有する渋谷クロスタワーを背後
てその雰囲気が好きになってリスクはやや
に、ハチ公前からは当ファンドの看板物件、
「QFRONT」が巨大な広告塔のように渋谷駅
高くなるかもしれないが、グロース型(賃
料売上連動)のリテールファンドに投資し
を見下ろす。渋谷マークシティーを抜け、
たいと思うかもしれない。また、複数資産
セルリアンタワー東急ホテルを越えたとこ
型の運用が行いたければ、特化型のファン
ろに二つのオフィス物件が控える。
「東急桜
ドを組み合わせて保有することも可能にな
丘町ビル」そして「東急南平台町ビル」だ。
る。プロパティータイプばかりでなく、地
東急リアル・エステート投資法人の大き
域特化の可能性もある。
(グローバルな不動
な特徴は、今後も成長が期待できる東京都
産市場で捕えるとJ-REIT自体地域特化型と
心 5 区地域と東急線沿線地域に所在する競
言えるかもしれないが)
。
争力のある物件に集中し、ファンドの成長
を確保していくことである。オフィスビル
と商業施設を投資対象とする、という意味
次に新規上場 2 銘柄を簡単に紹介する。
では複数資産に当てはまるが、一方で、こ
■■ 東急リアル・エステート投資法人
れまでになかった「東急線沿線地域」という
コンセプトは新しいものであり、市場がそ
まず、代表的な物件から見てみよう。地
れをどう評価していくかが興味深い。
下鉄銀座線表参道駅を降りて、周辺を見回
図表3 US-REITとJ-REITの比較
US−REIT(03年10月末)
時価総額注
銘柄数
J−REIT(03年10月末)
%
時価総額注
銘柄数
%
オフィス
37
61,
286
27%
3
3,
813
50%
商 業
35
58,
953
26%
1
979
13%
住 居
24
37,
737
17%
−
−
−
複数資産
18
18,
279
8%
4
2,
812
37%
リゾート
15
9,
378
4%
−
−
−
ヘルスケア
13
12,
270
5%
−
−
−
モーゲージ
20
13,
318
6%
−
−
−
倉 庫
3
7,
832
3%
−
−
−
その他
7
8,
411
4%
−
−
−
合 計
172
227,
463
100%
8
7,
604
100%
(出所) NAREITおよびARESウェブサイト
(注) 単位:億円、
1ドル110円換算
November-December. 2003
33
上場時に投資法人が発行する目論見書に
規模400億円)ことはもちろんであるが、
も「東急沿線地域の成長要因」が 8 ページに
「近・新・大」に代表される物件のクオリテ
亘って解説されており、地域の持つ特徴が、
ィーを重視している。特にそのなかでも物
次のグラフを用いて簡便に説明されている。
件の新しさについては強いこだわりを持っ
(1)人口・世帯数の成長
ている。当初保有する 3 つの物件(オフィ
(2)相対的に高い所得水準
ス特化型)の築年数は10年余りであり、他
(3)小売事業者における販売力
のJ-REITに比べても新しい。また、投資方
(4)東急線の旅客人員の増加
針として、延床面積2,000坪以上・基準階床
(5)渋谷駅の利用者の増加
面積200坪以上・物件価格25億円以上の大型
(6)渋谷区における小売業界の伸び
物件を中心に取得していく予定である。
(7)渋谷区のオフィス空室率
運用に当たっては、長期に亘って幅広い
今後も、J-REITの新規上場は続く。すで
投資家の付託に応え、継続的な資金調達と
に野村不動産系の「野村不動産オフィスフ
これに伴う物件取得を行い、わが国の資本
ァンド投資法人」が12月 4 日、年度内には
市場および不動産市場の活性化に寄与して
総合型ファンドが 2 社、住居特化ファンド 1
いくよう努めるとしている。資産規模とし
社が上場する見込みである。これらが上場
ては、3∼5 年後に2,000億円程度をめざすと
すると時価総額合計は 1 兆円を超えてくる
している。
ものと考えられる。上場銘柄数が増加する
なかで投資家サイドの選択眼は一段と厳し
■■ グローバル・ワン不動産投資法人
東京モノレール線の天王洲アイル駅続き
ァンズの解禁で、証券投信のファンドマネ
に、グローバル・ワン投資法人の主要物件
ジャーが不動産投信のファンドを選別する
「スフィアタワー天王洲」がある。東京臨海
局面がやってきた。すでに上場各社間でパ
高速鉄道りんかい線の開通、そしてその埼
フォーマンス格差は現れ始めている。投資
京線乗り入れと千葉、埼玉方面からのアク
法人の特徴ばかりでなく、投資法人の運用
セスが大幅に好転した地区だ。
会社が持つ能力が問われる時期はそう遠く
本投資法人の大きな特徴は、外部成長を
追及する(1 年後には倍増程度、上場時資産
J-REITの“現在”がわかる!
J-REIT View をご活用ください。
Click!
(ご利用の手順)
①http://www.ares.or.jp/
にアクセス
②トップペ ージの「 J - R E I T
View」をクリック
③「J-REIT View」をご覧い
ただけます。
34
いものとなるだろう。ファンド・オブ・フ
ない未来である。
(事務局・羽田野浩伸)
ARESウェブサイトでは、J-REIT市場の概況や各上場投資法人の
詳細を紹介した<J-REIT View>をご覧いただけます。時価総額、
売買高、売買回転率、投資口価格の推移など、最新のデータをもと
に、
情報を毎週更新しております。ぜひ、
ご活用ください。
<J-REIT View のコンテンツ>
●J-REIT市場の概況(東証REIT指数の推移と主要指標の
比較/J-REIT時価総額の推移/J-REITの売買代金/
売買代金回転率の推移/J-REIT保有資産のプロパティ
タイプ別構成比/J-REIT全体の稼働率の推移)
・上場J-REIT銘柄の紹介
・上場J-REIT銘柄別決算情報の一覧
・上場J-REIT銘柄別投資口価格および時価総額など
第6回実務研修会
平成15年9月3日
中央大学駿河台記念館370号室
2003年問題と
オフィスマーケットの今後
∼2003年問題のとらえ方②∼
株式会社 生駒データサービスシステム
取締役主席研究員
前沢 威夫
今回は、2003年問題と言われるものが賃貸オフィスマーケットにとってどのようなもので、今後の
マーケットに影響を与え続けるものなのかについて、過去からのさまざまなデータの推移についても
確認しながら検証していきたい。
1.東京23区の賃貸オフィスマーケットの現状
まず、2003年問題といえば必ず取り沙汰
されるのがオフィスビルの大量供給という
現象だが、実際に供給量が2003年は突出し
ていることがわかる(図 1 参照)
。
しかし、本当に問題なのは供給されるビ
ルの質であり、延床面積 1 万坪を超える大
規模ビルが大量に供給されることである。
図1 東京23区規模別新規供給量の推移
350,
000
坪
ル期と比較すると決して多くなく、1 棟あ
たりのビル規模が格段に大きくなっている
300,
000
1万坪以上
58,
469
250,
000
200,
000
のが特徴と言える。この違いによって、大
1万坪未満
きな面積を使用する大企業が本社ごとそっ
150,
000
100,
000
50,
000
供給量そのものでは2003年の供給量はバブ
260,
399
58,
471
41,
131
くり移転するといったことが簡単に行われ
48,
671
35,
345
76,
900
89,
248
78,
112
2000
2001
2002
129,
635
0
2003
2004 (年)
る環境が整ったことが過去との相違点であ
る。事実1999年以降の延床面積別新規需要
November-December. 2003
35
量(各期間における稼働床面積の増減の推
していることがよくわかる。このように
移)の推移を見ると(図 2 参照)延床面積 3
2002年と比較すると大型ビルを中心として
千坪以上のカテゴリーにおいて需要が突出
需要は大幅に増加しているにもかかわらず、
して増加しており、大型ビルが需要を吸引
空室率の推移を見ると2003年に入り空室率
の上昇ペースは加速している(図 3 参照)。
特に大規模ビルの供給の中心である都心部
図2 東京23区規模別新規需要量の推移
200,
000
(坪)
150,
000
の中心である主要 5 区(千代田、中央、港、
500坪未満
500∼3,000坪
3,000坪以上
新宿、渋谷)においてその傾向が顕著であ
る。したがって、大規模ビルの供給によっ
100,
000
て刺激された需要サイドは昨年と比較する
50,
000
と大きく需要を伸ばしているにもかかわら
0
ず、供給のペースがそれを上回っていると
−50,
000
(年)
9999990000000001010101020202020303
ⅡⅢⅣ ⅠⅡⅢⅣⅠ ⅡⅢⅣⅠⅡⅢ ⅣⅠⅡ
いうのが現状である。
では、なぜこれほど需要は急速に回復し
ているのだろうか。これは、需給ギャップ
の拡大懸念から賃料水準が調整されたこと
による部分が大きいと考えられる。図4の東
図3 東京23区空室率推移
京23区の規模別募集賃料推移を見ると、と
7(%)
7.
1%
東京23区
主要5区
周辺18区
6
7.
0%
くに延床 3 千坪以上のビルにおいて2000年
6.
4%
までに90%点および75%点の低下が顕著で
あり、高額賃料設定のビルが急激に減少し
ていることがわかる。また、2001年以降は
4
25%点の低下が顕著であり、大型ビルと中
3
99999999000000000101010102020202030303(年)
ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ
型ビルの賃料格差は縮小傾向にある。この
グラフは募集賃料の推移であることから、
実際の成約に至る賃料水準においてはさら
に調整幅は大きいことが考えられる。この
賃料調整によって、テナントの賃料負担力
図4 東京23区規模別募集賃料推移
(円)
50,000
500坪未満
500∼3,000坪
に見合った移転が可能になったことが需要
3,000坪以上
90%点
75%点
50%点
25%点
10%点
40,000
30,000
を喚起したと考えられる。
需給ギャップの拡大懸念による賃料調整
が最も顕著に進んだと思われるセグメント
としてAクラスビルがあげられる(Aクラ
20,000
スビル基準は図 5 参照)
。Aクラスビルの床
10,000
0
36
面積は、何と1999年から2003年の 6 月まで
1997
1998
1999
2000
2001
2002(年)
で1.9倍に増加している(図 6 参照)
。いかに
大規模ビルに対するニーズが強いとはいっ
同様に募集賃料水準についても低下率は
ても、4 年間で 2 倍近い稼働床面積を確保す
2004年を底として徐々に縮小するものの、5
るのは、マーケット自体の需要増加に限り
年間で見ると14%程度の低下の可能性を残
がある近年では大変なことである。この結
していると考えられる(図 9 参照)
。
果、Aクラスビル間でのテナント誘致競争
の激化が進み、他のセグメント以上に賃料
調整が進んだと言える。結果的には、徐々
にではあるがテナントは築年数の新しいビ
図6 Aクラスビル貸室総面積推移
(坪)
1,
000,
000
(%)
200
貸室総面積
増加率
ルへとシフトしていることがわかる(図 7
800,
000
180
参照)
。
600,
000
160
400,
000
140
200,
000
120
2.東京23区における需給バランスの予測
前述までの動向を踏まえて今後の東京23
0
区の需給動向を予測すると、空室率は2003
100
999999990000000001010101020202020303(年)
ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡ
年の大量供給の影響もあり、2003年後半か
ら2004年にかけてその空室率水準はピーク
を迎え、7 %後半までは上昇する可能性が
高い(図 8 参照)
。予測値は各年12月時点の
図7 Aクラスビル空室保有割合推移
(%)
100
空室率を予測しているため、2004年の 3 ∼ 9
月移転にピークを迎える可能性もある。そ
築10年以上
築5年未満
築5∼10年
平均
91%
82%
80
71%
の後、徐々に空室率は低下し、2007年には
60
2002年並みの水準にまで戻ると考えられる。
40
51%
20
図5 Aクラスビル対象基準
●地 域
:主要5区(千代田区・中央区・港区・新宿区
0
(年)
999999990000000001010101020202020303
ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡ
・渋谷区)を中心とするオフィス街として
の成熟度の高い地域、または将来性の高
い地域(品川区等)
●延床面積 :概ね10,
000坪以上
●フロア面積 :200坪以上(貸床面積&有効面積)
●竣工年
:築21年未満のビル
●天井高
:2.
6m以上
●空 調
:1フロア以下の単位で調整が可能なもの
●床配線
:3WAY、
フリーアクセス採用のもの
図8 東京23区需給バランス予測
(坪)
400,
000
空室率
(%)
12
10
7.
60%
8
200,
000
6
100,
000
4
2
●2003年6月時点で、対象ビルは82棟
新規需要量
300,
000
●電気容量 :30VA/m
●入退出時間:24時間可能なもの
新規供給量
0
2
0
−100,
000
9192939495969798990001020304050607(年)
November-December. 2003
37
3.2003年問題の影響と今後のマーケット
図9 東京23区募集実質賃料変動率予測
(円/坪)
40,
000
(%)
実質賃料
20
実質賃料変動率
の変化について
35,
000
15
直接的な影響としては、賃貸オフィスマ
30,
000
10
ーケットにおけるビル規模の差異による賃
25,
000
5
20,
000
0
15,
000
−5
こと(図10参照)
、その結果、ビル規模の差
10,
000
−10
異によるテナントの住み分けを強いていた
5,
000
−15
−20
0
9192939495969798990001020304050607(年)
料格差が縮小し、賃料の平準化を促進した
垣根が低くなり、テナントの流動性が高ま
ったことの 2 点があげられる。
また、前述の 2 点のうち後者がいわゆる
ビルの玉突き移転となって現れていると言
える。しかし、大規模ビルの賃料調整に伴
図10 東京23区規模別募集賃料推移
(円/坪)
40,
000
37,
530
35,
000
30,
000
500坪未満
1,
000∼3,
000坪
うテナント流動化による玉突き移転は、す
500∼1,
000坪
3,
000坪以上
約7,
000円
べての規模のビルに影響するわけではなく、
マーケットに与える影響は限定的である
30,
190
約6,
000円
25,
000
24,
910
20,
000
18,
790
(図11参照)。延床面積で 2 ∼ 3 千坪に満た
約5,
000円
21,
790
16,
860
13,
920
15,
000
12,
490
10,
000
93949596 97989900010202 02020303(年)
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ
ないビルでは大規模ビルに吸引されるよう
なテナント層を抱えていないため、影響は
ほとんどない。実際、2003年に入ってから
は延床面積500坪未満のビルの空室率は上昇
していない。
ただし、小規模ビルマーケットが堅調か
図11 大規模ビル供給による移転構造
空室を抱えた
新築大型ビル
大型ビル
(新築)
大型ビル
(築10年以上・立地が悪い)
1フロア
500坪
1フロア
300坪
延床面積 3,000∼1万坪未満ビル
(築10年以上・設備古い)
1フロア
500坪
38
1フロア
400坪
1フロア
100∼200坪
というと必ずしもそうとは言えない。1998
的であったものが、供給の行われ方や交通
年を100とする指数でワンフロアの規模別に
インフラの拡充のされ方等によって、新た
成約面積のトレンドをみるとフロア規模が
な企業を吸引したり、企業があるエリアか
大きいほど成約面積指数の増加率は高く、
ら流出し続けるといった事態も想定される。
規模が小さいほどその増加率は低い(図12
そうなると地域間格差も広がり、オフィス
参照)
。したがって、小規模ビルマーケット
マーケットとしての立地の序列も変化して
ではテナント移転が規模の大きなビルとの
くる可能性が高い。
比較においては決して多くなっていないこ
とを示している。つまり、小規模ビルマー
4.東京における都市再生
ケットは2003年問題に関係なく、テナント
東京における都市再生緊急整備地域の指
誘致が難しい環境に置かれているのは数年
定は、都心部が中心で、すでに大規模オフ
前から変わらないということである。
ィスビルの開発が予定されていた地域が多
ここまでで、2003年問題を表面的に捉え
く指定されている。すでに述べたように大
ると直接的にはすべてのビルに影響を与え
規模ビルは需要吸引力が極めて高く、これ
ているわけではなく、影響は限定的との見
方になる。しかし、最初に述べたように過
去において見られなかった大企業の本社移
転が簡単に惹起されるようなマーケット環
境が継続的に提供され、賃料水準的にもテ
ナントの賃料負担力に沿う水準が維持され
図12 オフィス移転の規模別動向
(坪)
200
100坪未満
180
200∼300坪
300坪以上
160
142
130
125
112
140
ると想定すると、過去においてオフィスマ
120
ーケットとしての立地評価がきわめて硬直
100
図13 業務集積変化のイメージ図
100∼200坪
98年=100とした指数
80
1998
1999
2000
2001
2002 (年)
バブル期まで
く
・広
外へ
現在∼今後
都市再生緊急整備地域を軸として
再 生緊急整備 地域 を 軸 として
中へ・高く
この傾向は東京だけでなく、
地方中核都市も同様
November-December. 2003
39
らが都心中心に今後も継続的に供給される
かし、実施に際して少なくないコストをか
ことを前提とすると、東京の業務エリアは
ける必要があり、ビルオーナーが資金調達
水平拡大局面から垂直拡大局面へと移行す
に苦慮して実施に至らないケースが非常に
る可能性が高い(図13参照)
。当然、需要伸
多いのが現状であると思われる。したがっ
長率に限界がある現在のマーケットにおい
て、中小規模ビルのマーケットを再生・活
ては、一極集中の続く東京といえども中心
性化するには、投資家のリスクマネーを取
部ではテナント誘致競争のいっそうの激化
り込んでいくことが必要になると思われる。
や、周辺部では需要流出と業務エリアとし
この場合、ギブアップしたオーナーのビル
ての淘汰の可能性が惹起される。そのよう
を廉価で購入して追加投資を行うことによ
ななかで東京の都市再生を現実的なものと
って再生し、市場に再度供給するといった
するためには、マーケットにおいて棟数的
手法がとられるケースも多い。しかし、こ
には60%以上を占める小規模ビル(ここで
れではマーケット全体を活性化するには至
は延床面積500坪未満を想定、図14参照)を
らないため、中小ビル群に国や自治体が一
どのように再生、延命、または淘汰させて
定のリスクを担保する前提でリスクマネー
いくかが大きな課題といえる。
を資金供給する仕組みを組成することが望
ましい。個々のビルオーナーで対応可能な
5.中小ビルマーケットをどうするか
手法には限界があり、資金調達能力にも限
中小ビルマーケット全体の競争力を高め
界がある以上、都市再生という視点におい
るためには、各々のビルが効果的なリニュ
て都市のあり方や街の活性化に責任を有し、
ーアルを行う、コストセーブを徹底して賃
もっと大きな視野で中小ビルの活性化を必
料面での競争力を高める、立地によっては
要とする国や自治体が積極的に関与するこ
コンバージョンを行うことによって新たな
とも必要な時代になってきたと言えるので
需要を吸引する等の方法が考えられる。し
はないだろうか。
図14 中小ビルの実態
6.終わりに
このように考えると、2003年問題と言われ
中小が支える構造は不動産
業界も他の業界と同じである
ている現象は、短期的には直接的にすべての
ビルに影響を与えるような問題ではないと
考えられる反面、長期的な視野に立つと、大
延床面積比率 15% 12%
21%
52%
規模開発が供給の主流になることによって
平面的に広がってきたオフィス立地が変化
65%
棟数比率
18%
13%
5%
し、中小規模ビルのマーケットでの位置付け
や必要とされる立地自体も変化させるため、
0%
20%
40%
60%
80%
500坪未満
500∼1,
000坪
1,
000∼3,
000坪
3,
000坪以上
100%
(出所)
(株)パスコ〔PDM〕により作成
40
東京都心部における都市としてのあり方自
体も見直すべき時期に来ていることを端的
に示す現象であったと言えるかもしれない。
第7回実務研修会
平成15年10月23日
中央大学駿河台記念館520号室
オフィス大量供給の影響と
そこから学ぶべきもの
∼2003年問題のとらえ方③∼
株式会社 住信基礎研究所研究部
副主任研究員
坂本 雅昭
1.オフィス大量供給の影響
(1)2003年と1994年大量供給の違い
やその関連会社の移転を引き起こし、さら
に自社ビルを構えた企業は当面は移転しな
1994頃のオフィス供給は、バブル経済期
いであろうから、03年の供給は新たな企業
の計画によるいわば経済循環を背景とする
集積地の形成につながる。導入される機能
が、2003年の供給は、旧国鉄用地の再開発
は複合的であり、多様な人々が来訪して話
や長時間かけて進められてきた再開発が同
題性があるため、ビルやエリアのブランド
時期に竣工したという、いわば特殊事情の
イメージの形成につながりやすい。このよ
重なりによるものである。さらに03年の供
うなことから、2003年のオフィス供給は当
給につながる2000年、01年の着工量は過去
面のオフィスエリアの構図を決定付ける機
最大であった90年代前半と比べて年平均で
会となる。
1 / 2 程度である。そのため、本来的にはマ
(2)大量供給時のマーケットメカニズム
ーケットの悪化は一時的なものであり、影
大幅に需要を喚起しない状況下において
響は小さくなるはずだが、景気低迷が長引
オフィスが大量に供給されれば、マーケッ
きオフィス需要が回復しないことにより、
ト全体の「①空室率が上昇」し、ビルオーナ
問題が深刻化していると考えられる。
ーは対抗策を講じるため「②賃料が下落」す
また、03年頃の供給は94年頃と比べて大
る。賃料が下がれば「③テナントが移転」し、
規模ビルが主体であり、所有形態では自社
それが減少を伴う移転であれば、再び「①
ビルが多く含まれている。そのため大企業
空室率が上昇」につながることになる。さ
November-December. 2003
41
らに、03年のオフィス供給は大規模ビルが
(3)オフィス移転の動向
主体であり、大企業にとってはオフィスの
ここでは企業の移転ニーズに関する調査※1
集約効果が見込めるため、仮に「②賃料が
や過去の移転実績に関する調査※2から、玉
下落」しなくとも、
「③テナントが移転」が
突き移転の姿を検討してみたい。まず移転
促進されることとなる。
ニーズであるが、02年 9 月当時、移転等を
このような基本メカニズムのなかで、現
決定、検討中、検討が必要のいずれかの状
在地点を確認してみたい。まず「①空室率
況にある企業は、入居ビルの規模にかかわ
が上昇」であるが、03年の都心 5 区オフィ
らず 5 ∼ 7 割に及んでいる。特に入居ビル
スビル供給のうち、3 月供給が約 4 割を占め
の規模が大きい企業ほど、移転等を決定し
ていることから、都心 5 区の空室率は 6 ∼ 8
ている割合が大きい。そしてビル規模にか
月頃にピークを迎えており、他の主要都市
かわらず、企業の 6 ∼ 7 割が大規模ビルに
も同様である。
「②賃料が下落」については
興味を持っている。
進行中である。一時期と比べれば安定して
次に過去10年の近新大ビルへの移転実績
きているものの、新築オフィスビルが賃料
であるが、エリアで見てみると、第 1 層目
を下げているため、マーケット全体が回復
移転では、都心 6 区へ移転する企業のほと
基調に入るまでにはまだ時間を要すると考
んどは都心 6 区からの移転であるが、第 2
えられる。
「③テナントが移転」については、
層目移転(第 1 層目移転で発生した空室へ
供給のピークが過ぎたことにより 1 次移転
の移転)では、都心 6 区外からの移転が 1 割
は収まりつつあるが、今後 2 次、3 次移転が
以上存在する。規模については、都心の大
本格化するものと考えられる。
規模ビル(延床面積30,000㎡以上)に移転し
図1 テナント企業が移転する前の入居ビルの規模
第1層目移転前
(棟数集計、n=308)
3,000m2
未満
5.5%
30,000m2
以上
48.7%
3,000m2
∼5,000m2
未満
5.5%
第2層目移転前
(棟数集計、n=39)
3,000m2
5,000m2
∼10,000m2
未満
14.0%
10,000m2
∼20,000m2
未満
16.9%
20,000m2
∼30,000m2
未満
9.4%
未満
2.6%
3,000m2
∼5,000m2
未満
7.7%
5,000m2
∼10,000m2
未満
12.8%
10,000m2
∼20,000m2
未満
15.4%
30,000m2
以上
51.3%
20000m2
∼30000m2
未満
10.3%
(出所)オフィス移転動向調査(国土交通省都市・地域整備局、
20033
. )
(注)第1層目移転とは近新大ビルへの移転を指し、第2層目移転とは第1層目移転によって生じた空室への移転を指す
42
てくる企業の約半数は大規模ビルからの移
での影響としては、 1 次移転の影響は都心
転であり、延床面積5,000㎡未満のビルから
内で収まるものの、玉突き移転が進むにつ
の移転は 1 割程度しか存在しない。この傾
れて、徐々に都心の外側に影響が及ぶと予
向は 第1 層目移転、第2 層目移転で同様であ
想される。
(4)マーケット動向
る(図 1 参照)
。
これらの結果から、潜在ニーズを含めた
それでは実際のマーケットはどのように
企業の移転ニーズは、ビル規模にかかわら
なっているのだろうか。エリアとしては、
ず大きいため、賃料条件次第ではビル規模
都心 5 区で最も供給量の多い港区で最も空
を超えて広く移転の影響が及ぶ可能性を秘
室率が上昇し、最も供給量の少ない渋谷区
めており、まずは大規模ビルの大規模テナ
で空室率の上昇は小幅に収まっている ※3。
ントから移転ニーズが徐々に顕在化してい
しかし、港区は他区からの吸引力があり、
くと予想される。ただし過去の実績では、
一方で渋谷区は転出傾向が強い※4ため、時
近新大ビルへ移転してくる企業の約半数は
間が経つにつれ空室率格差は縮小または逆
大規模ビルからの移転であるため、03年の
転すると予想される。新宿区は移転に占め
大規模ビル供給が短期的に中小型ビルにま
る区内移転の割合が 1 / 4 程度しかなく、
で影響を及ぼすとは考えづらい。エリア面
都心 3 区への転出傾向が強いが、一方で逆
図2 規模別オフィスビルの空室率の推移(都心5区)
10.00
1年ごと
3ヵ月ごと
9.00
8.00
空
7.00
室
6.00
率
︵
%
︶
5.00
4.00
小型ビル
3.00
中型ビル
2.00
大型ビル
Aクラスビル
1.00
0.00
97/12
98/12 99/12 00/12
01/12
02/03 02/06 02/09 02/12
03/03 03/06 03/09
(出所)小型、中型、大型ビルは三鬼商事データ、
Aクラスビルは生駒シービー・リチャードエリスのデータをもとに住信基礎研究所作成
(注)小型ビル:都心5区、基準階面積50坪未満
中型ビル:都心5区、基準階面積50坪以上100坪未満
大型ビル:都心5区、基準階面積100坪以上
Aクラスビル:都心5区の主なオフィスエリア、延床面積10000坪以上、
フロア面積200坪以上、昭和57年以降竣工、その他設備が
ハイスペック
November-December. 2003
43
に都心 3 区やその他区部、区部外からの転
が改善に転じているにもかかわらず、中型
入も多い。これは西新宿に既存大規模ビル
ビルのみが上昇を続けている。このような
が多く、新規大規模ビルの供給が続く都心
空室率の推移を見る限り、玉突き移転の影
3 区に対し不利な立場にあるものの、近新
響は一部中型ビルにまで及び始めていると
大のうち新よりも近と大を重視する企業
考えられる。前述のとおり、過去10年の移
(主に成長過程にあり合理性を追求する企
転実績からすれば、このような事態は考え
業)から支持され、転出と転入のバランス
づらいわけだが、03年 3 月に4,800円程度あ
が保たれているものと推測される。
った大型ビルと中型ビルの賃料格差が 9 月
次に規模であるが、かつては規模が大き
には4,000円程度まで縮小しているため、こ
いビルほど空室率が低いというのが常識で
のような状況に及んだと推測される(図 3
あったが、01年中頃からAクラスビルと大
参照)
。ただし、中型ビルの空室率上昇がす
型ビルの空室率が上昇し、02年12月頃には
べて玉突き移転によるものと考えるのは早
中型ビルや小型ビルと同程度の水準となっ
計である。日銀短観の業況判断DIを見ても
た(図 2 参照)。その後もAクラスビルと大
わかるように、大企業の業況は着実に改善
型ビルの空室率は上昇を続けているが、こ
しつつあるが、中堅企業や中小企業の業況
の頃から中型ビルの空室率の上昇傾向が顕
は依然として厳しい状況にある。このよう
著になり始めた。そして03年 6 ∼ 9 月にか
な企業規模による業況の違いが、ビル規模
けては、Aクラスビルと大型ビルの空室率
による空室率推移の違いにも影響を与えて
図3 規模別オフィスビルの募集賃料の推移(都心5区)
22,000
1年ごと
3ヵ月ごと
21,000
賃料格差は
半年で約800円/坪
縮小
20,000
募
集
19,000
賃 18,000
料
︵
円 17,000
/
坪
︶ 16,000
5,655円
4,911円
5,233円
4,815円
4,031円
15,000
14,000
13,000
12,000
97/12 98/12 99/12 00/12 01/12 02/03 02/06 02/09 02/12 03/03 03/06 03/09
小型ビル
(注)出所やビル規模の定義については、図2と同様
44
中型ビル
大型ビル
いるものと考えられる。
管理を目的とするのに対し、PMはテナント
管理によるキャッシュフローの最大化が目
2.2003年問題に何を学ぶか
(1)オフィス大量供給のメリット・デメリット
的であって、ハードの管理はその手段の 1
つである点が異なる。そのため、PMには実
2003年問題は、空室率が上昇し賃料が下
行力に加えて企画提案力が問われることに
落するために、ビルオーナーサイドとして
なる。PMを実施しているJ-REITでは、す
のデメリットばかりがクローズアップされ
でにその効果が見られる。01年 9 月のJ-
がちであるが、視点を広げればメリットも
REITオフィス稼働率(地方物件含む)は都
少なくない。テナント企業からすれば割安
心 5 区平均オフィス稼働率と同程度であっ
で良質なオフィスビルに入居することが可
たが、03年 7 月にはJ-REITが都心 5 区平均
能であり、長い企業経営のなかでも最適な
よりも 3 %以上高い稼働率となった※5。こ
企業立地を選択できる貴重な機会である。
れはJ-REITの物件自体の強さも影響してい
オフィスマーケットから見れば、目の肥え
るのであろうが、PMの貢献も相当に大きい
たテナント企業がビルおよびビルサービス
と考えられる。
の質の向上を促すことが期待される。そし
エリアマネジメントについては、大丸有
て質の高いビルのオーナーや管理会社から
地区においてNPO法人大丸有エリアマネジ
すれば、優勝劣敗を明確にできる機会でも
メント協会の取り組みがスタートしている
ある。また、これまで経済的なアプローチ
が、アメリカではすでに本格的に取り組ま
からほとんど実践されてこなかった建築物
れている。その 1 つにニューヨークのタイ
の用途転換・再生という概念が、オフィス
ムズスクエアBID(以下、TS-BIDと呼ぶ)
ビルのコンバージョンをきっかけに広く普
がある※6。BIDは特別税の徴収権を持つ準行
及することも期待される。
政的なNPOである。90年代初め、当該地区
(2)2 つのマネジメントの重要性
は犯罪の多発等により企業の転出と観光客
2003年問題は、現象としては大規模オフ
の減少が著しく、再生不能と言われるほど
ィスビルの大量供給と長引く景気の低迷に
荒廃していた。そのようななか、地区の不
よりオフィスマーケットが悪化することを
動産所有者の賛成を得て設立されたTS-BID
指すが、本質的に重要なことは、企業が業
は、行政サービスの上乗せサービスとして、
績回復・向上に貢献できるオフィスビルを
地区のパトロール、歩道の舗装や標識の改
厳しく選別・評価する風潮が拡大したとい
善、ライトアップ、ゾーニング法に係る違
うことではないだろうか。これに対応して
法行為の監視、ビジターズセンターの設置、
いく方法としては、
「ビル単体としての対応」
年末カウントダウンイベントの開催等を行
と「ビルの複合体としての対応」が考えられ 、
い、地区の再生に取り組んできている。TS-
前者が「プロパティマネジメント(以下、
BIDの活動資金は不動産所有者から徴収さ
PMと呼ぶ)
」、後者が「エリアマネジメント」
れており、商業不動産の場合は課税評価額
であると位置付けられる。
の0.3%、住 宅 不 動 産 の 場 合 は 年 1 $が徴
PMについては、従来のビル管理がハード
収される。商業不動産所有者からの徴収額
November-December. 2003
45
図4 タイムズスクエアBID地区の商業不動産の空室率・平均賃料
30.0
60.00
50.00
48.16
25.0
45.70
20.2
平
均
賃
料
40.00
20.0
36.16
33.21
30.00
$ feet2
︵
15.5
29.66
14.3
28.81
27.96
27.03 26.24
12.7
11.0
15.0
空
室
率
︵
%
︶
/
20.00
10.0
8.2
︶
6.1
10.00
5.0
3.2
2.5
0.0
0.00
92
93
TS-BID平均賃料
94
95
96
97
98
99
TS-BID空室率
ロサンゼルス平均賃料
00
ロサンゼルス空室率
(出所)Times Square BID Annual Report、CB Richard Ellisのデータをもとに住信基礎研究所作成
は、平均して 1 件あたり約15,000$であり、
こなかったエリアマネジメント。2003年問
決して安い金額とは言えない。しかし、TS-
題を契機にその意義を改めて見直す必要が
BIDの設立以降、街の安全性や美観が回復
あるのではないだろうか。
し、来街者が増加した結果、不動産価値が
※1 2003年問題を控えたオフィスの利用動向等に関す
るアンケート調査(2002.10)調査対象は都心 6 区
向上している。TS-BIDの商業不動産の空室
の延床面積3,000㎡以上のビルに入居する企業、
有効回答数248
率は92年の20.2%から2000年には2.5%へ改
善し、賃料は92年の33.2$/feet 2 から、
局、2003. 3 )調査対象ビルは近新大ビル92棟
2000年には48.2$/feet 2 に上昇している(図
(1990∼2002.10竣工、延床 3 万㎡以上、主に都心
4 参照)
。このようにTS-BIDでは不動産所有
6 区)
、調査対象テナントは2002.10時点に上記オ
フィスビルに入居しているテナント企業
者が決して少なくない負担をしているが、
※3 三鬼商事のデータによる
それ以上の利益を得ることに成功している。
※4 日経不動産マーケット情報2003. 4
この事例は州法に定められる特別税徴収権
を持つNPOによる取り組みであり、日本に
おいてそのまま適用することはできないが、
会費という形で同様の取り組みを行うこと
は不可能ではない。問題は、どの程度危機
感を持って取り組むかである。これまでに
事例が紹介されても真剣に受け入れられて
46
※2 オフィス移転動向調査(国土交通省都市・地域整備
※5
JREITオフィス稼働率は投資信託協会のデータ、
都心 5 区平均オフィス稼働率は三鬼商事のデータ
による
※6 BIDとはBusiness Improvement Districtの略。TSBIDに関する参考文献は以下のとおり
Times Square BID Annual Report 、海外の中心市
街地活性化(日本政策投資銀行編著、2000. 7 )、
米国における中心市街地再開発の現状(財団法人
自治体国際化協会、2001. 6 )
、ジュリアーニ市政
下のニューヨーク(東京都知事本部、2001. 7 )
ARES REPORT
教育プログラムへの
マイルストーン
第3回
ARESでは今年度、「教育プログラム政策検討委員会」(委員長:大村 敬一/早稲田大学教
授)および「教育プログラム検討ワーキンググループ」を発足しARESの教育プログラムの内
容や方法について具体の検討・作業を進めている。具体の検討・作業にヒントを得るべく、不
動産投資・証券化で先進国アメリカの教育プログラムのなかから、今号ではCRI(Chartered
Realty Investor)プログラムを取り上げてみたい。
■■ 1.Chartered Realty Investor
(以下CRI)とは
投資を主とする実務家、Associate
Membersは弁護士など関連ビジネスの実務
CRIは、商業用不動産投資の専門家とし
家、Affiliate Membersは学者などCRIプロ
ての称号(Professional Designation)である。
グラムの開発をサポートする個人である。
一定の要件を満たし、試験に合格した個人
“Society”
は、商業用不動産投資における専
を、商業用不動産投資業界のリーダーとな
門家としての基準を確立・維持することを目
るのに必要な専門性、経験と理解、さらに
的に、具体的にはCRIプログラムを開発す
倫理を備えた専門家として認定し、称号を
る業界あげての取り組みを組織化し、試験
付与する。2003年に第一号の称号取得者が
の開発と実施、称号の付与、CRI取得者の
出 よ う と い う 新 た な 民 間 資 格( 称 号 )、
地位向上のためのサポートを行う。
Certificationプログラムである。
■■ 3.C e r t i f i c a t i o n プ ロ グ ラ ム の
■■ 2.実施主体
必要性
プログラムの実施主体は、独立非営利団
90年以降、CMBS市場をはじめパブリッ
体のChartered Realty Investor Society
クの商業用不動産投資&ファイナンス市場
(以下、
“Society”)である。スポンサーは
は急速に発展・拡大した。それに伴い、年
Appraisal Institute、Commercial Mortgage
金基金や投資信託等、新たな投資家が商業
Securities Association、Life Mortgage And
用不動産投資市場に参入し投資家保護の必
Real Estate Officers Council、Mortgage
要性が高まった。
“Society”は、商業用不動
Bankers Association of Americaおよび商業
産投資を組成し運営する実務家について、
用不動産投資に関連する企業や個人である。
あらゆる投資家が判断のよりどころとでき
“Society”は 4 つの会員制度からなる。
るような能力と専門性、さらに倫理行動の
Chartered MembersはCRIの称号を取得し
水準を業界全体で維持し高めるためには、
た個人、Regular Membersは商業用不動産
Certificationプログラムを通じて専門家とし
November-December. 2003
47
ての水準を明確にし能力やスキルの向上手
計と税務、IT、資本市場、経済学、調査
段を確立することが必須であるとうたって
と多岐にわたる。
いる。
●第2ステップ(2001年∼2003年)
試験の開発。実務家と試験の専門会社
■■ 4.カリキュラム
カリキュラムは自学自習である。アメリ
カですでに商業用不動産投資に関し大学、
職業団体等で教育の歴史があることから、
CRIプログラムは、これらの組織の教育イ
による二つの委員会が知識体系をベース
とした試験の開発と妥当性のチェックを
行った。
●第3ステップ(2002年)
受験資格の整備。不動産に関する一定
ンフラ(コースワーク、書籍、定期刊行物、
の専門的実務経験、学士以上の学歴、不動
等)を活用し、スタディガイドと試験のカ
産専門家 3 名の推薦と一定の表明が受験
リキュラムを提供する。
資格・称号取得の要件として求められる。
試験はレベル 1 とレベル 2 からなる。レ
ベル1は不動産投資取引に必要なスキルを中
●第4ステップ(2002年∼2003年)
受験者用ハンドブックの開発。ハンド
心とし、①財産権、②税と会計、③法律、
ブックはスタディガイドも兼ね、試験の
④不動産分析と評価、⑤モーゲージローン
内容と参照すべき文献などを掲載する。
の審査、⑥不動産デューデリジェンスの 6
●最終ステップ(2002年∼2003年)
分野からなる。レベル 2 は不動産投資会社
試験実施のための諸整備。
の経営および資本市場における不動産投資
“Society”は、プログラムが実務に直
に必要なスキルを中心とする。
結し、タイムリーなものとして継続する
よう定期的に知識体系や試験の見直しを
■■ 5.プログラム構築プロセス
行うとのことである。(出所:CRIのホー
●第1ステップ(2000年∼2001年)
ムページ http://www.crisociety.org/)
専門業務の分析とBOKの構築。実務家
と試験の専門会社による委員会が商業用
<コメント>
CRIプログラムの自学自習のカリキュラ
不動産投資に関わる業務内容を分析し、
ムは、商業用不動産投資の教育インフラが
専門家として必要なBody of Knowledge
整っているアメリカならではのカリキュラ
(知識体系)を構築。知識体系は、専門家
ムといえるが、プログラム構築プロセス、
としての倫理行動、開発と都市計画、建
知識体系の内容等ARES教育プログラムで
設とエンジニアリング、商業建築、プロ
も参考にできる点があろう。
パティマネジメント、環境とデューデリ
(事務局・松井陽子)
ジェンス、商業用不動産の仲介とサービ
ス、オリジネーションとモーゲージファ
教育/研修関連ミニ情報(不動産証券化関連講座の紹介)
イナンス、証券化とREITs、サービサー
みずほ総合研究所 (http://mizuho-ri.co.jp)
業務、鑑定と評価、投資分析とマネジメ
ント、不動産と証券関連法、財産権、会
48
不動産流動化がわかる講座
学習期間3カ月の通信添削。一定の成績を修めたものに修了
証発行。不動産流動化の初歩的知識を学習。
I
N
F
O
R
M
A
T
I
O
N
会員社入会のお知らせ(順不同・敬称略)
第5回理事会(平成15年9月9日)において、正会員3社、賛助会員2社の入会が承認さ
れた。これにより9月9日現在の当協会の会員数は正会員63社、賛助会員79社、計142社
となる。
<正会員(賛助会員から正会員への会員種別変更)>
■株式会社
三友システムアプレイザル
代表者:代表取締役
井上 明義
所在地:
東京都新宿区四谷4−7
■ジャパン リアルエステイト
アセット マネジメント株式会社代
代表者:代表取締役社長
梯 良一
所在地:
東京都千代田区丸の内3−3−1
■日本ビルファンド
マネジメント株式会社
代表者:代表取締役社長
西山 晃一
所在地:
東京都中央区八重洲2−7−2
<賛助会員)>
■伊藤見富法律事務所
(特定共同事業モリソン・フォースター外国法事務
弁護士事務所)
代表者:弁護士
見富 冬男
所在地:
東京都千代田区丸の内1−1−3
■株式会社リサ・パートナーズ
代表者:代表取締役
井無田 敦
所在地:
東京都千代田区麹町4−8
協会代表者交代(敬称略)
<正会員>
■興和不動産株式会社
(10月1日付)
就任:取締役社長
渡邉 雄司 退任:取締役会長
松本 善臣 理事会 ■第5回/平成15年9月9日
当日議決された審議・承認事項は下記のとおり。
1.入会等細則の改定について
入会規則第2条第1号第3項の基準を具体化する
ため、入会等細則を改定する件を 異議なく承認。
2.会員の入会について
現在の賛助会員から改めて正会員に変更して入会
したい旨申込のあった3法人ならびに新規に賛助会
員として入会申込のあった2団体の入会を異議なく
承認。当協会の会員数は正会員63社、賛助会員7
9社、計142社となった。
運営委員会 ■第4回/平成15年9月3日
当日議決された審議・承認事項は下記のとおり。
1.入会等細則の改定について
2.会員の入会について
3.不 動 産 特 定 共 同 事 業 法 改 正 へ の 対 応 に つ い て
不動産特定共同事業法の改正に向けての今後の取
り組み方を異議なく承認した。主な報告事項は以
下のとおり。
①.平成16年度税制改正要望の現状について
②.不動産取引価格情報に関するパブリックコメン
トについて
③.定期借家権に関する要望書の自民党提出について
なお、下記のとおり委員の交代があった(敬称
略)
。
●みずほ証券株式会社
新:徳岡 国見(常務執行役員)
旧:小松 義秀(常務執行役員)
November-December. 2003
49
I
N
F
O
R
M
企画委員会(正副委員長会議)
A
T
I
O
N
■第4回/平成15年9月8日
検討事項は、教育プログラムの進め方について
制度委員会 ■第2回/平成15年9月19日
以下のとおり講演を行った。
1.講 師:四釜 宏吏氏(新日本監査法人金融サービ
ス部金融ソリューション・グループ シニアマネ
ージャー)
2.テーマ:「UPREITについて」∼日本版UPREIT税
制の導入に向けての考察∼
3.主な内容:
①UPREIT導入にあたっての背景・現状分析 ②(米国)UPREIT型の仕組み ③直接型の仕組み(不動産を株式に転換する方法)
4.質疑・応答
市場動向委員会 以下のとおり講演を行った。
■第2回/平成15年9月4日
「企業の不動産戦略に資するジョーンズラングラサ
ールの機能と実績」
講師:浜岡洋一郎氏(ジョーンズラングラサール株
式会社 代表取締役)
■第3回/平成15年10月8日
「地方都市における不動産証券化の実例と実務∼特
に資産流動化法を用いた2億円 から30億円の不動
産証券化∼」
講師:岩崎 淳史氏(ネットライセンス株式会社 代
表取締役社長)
■第4回/平成15年11月5日
「ダヴィンチ・アドバイザーズの企業戦略」
講師:金子 修氏(株式会社ダヴィンチ・アドバイ
ザーズ 社長&CEO)
なお、委員の交代があった(敬称略)
。
●伊藤忠商事株式会社
新:木造 信之(建設部長)
旧:高村 俊哉(建設部建設第一課)
広報委員会 ■第4回/平成15年9月12日
当日の議事は以下のとおり。
1.平成16年度広報事業計画について
①平成16年度広報関連活動計画の考え方の枠組み
について
②平成15年度広報関連事業スケジュール
③平成16年度広報関連事業スケジュール(案)
2.平成15年度下期の広報活動について
①実務研修会の実施報告、今後の予定について
②FPフェアへの出展について
③ARES協会リーフレットの作成について
資産流動化法手引き研究会 ■第2回/平成15年9月10日
当日の議事は以下のとおり。
1.第1回研究会の議事録確認
2.第1回研究会(定款)質問事項への解説
①特定目的会社の定款への営業年度記載について
②公告のインターネット活用について
3.資産流動化計画の解説
田村座長から、資産流動化法を活用した不動産の
証券化のなかでの資産流動化計画 の位置付け、資
産流動化計画に関し過去の取扱経験からの留意事
項等の話の後、資産流動化計画の標準的なものを
基に、記載事項に沿って「計画期間に関する事項」
および「優先出資の発行等に関する事項」を解説。
その後、質疑・応答があった。
■第3回/平成15年10月9日
当日の議事は以下のとおり。
1.第2回研究会(資産流動化計画)質問事項への解説
①仮清算について
②公告について
2.資産流動化計画の解説
田村座長から、資産流動化計画の標準的なものを
基に、記載事項に沿って「特定社債の発行等に関
する事項」、「特定短期社債の発行等に関する事
項」、「特定約束手形の発行等に関する事項」、「特
定目的借入れに関する事項」、「特定資産に関する
事項」等と社債要項について解説。その後、質
疑・応答があった。
3.実務上の留意事項・問題点の解説
田中弁護士から資産流動化法を活用した不動産証
券化における留意事項等の解説があった。
不動産証券化税制研究会 ■第3回/平成15年9月25日
メンバーからの報告と意見交換が行われた(敬称略)
。
「アメリカにおけるREIT spin-offsと日本法への示唆」
50
報告者:岩崎政明(横浜国立大学教授)
I
N
F
O
R
<要旨>
REIT spin-offsは、親会社が保有不動産を子会社に移
転し(I.R.C.§351により譲渡 所得は繰延べ)
、子会社
が株式を親会社の株主へ分配するとともに(I.R.C. §
368,355によりみなし配当所得は非課税)、子会社が
REITに組織変更するスキームである。これまで、spinoffs 要件とREIT 要件の二つの規制によりREIT spinoffsを 実行することは税務上不可能であったが、200
1年のルーリング(Rev. Rul. 2001-29 C.B.1348)
により可能となった。REIT spin-offsは法人段階での
M
A
T
I
O
N
節税と株主段階の増税とが発生するため、業界ごとに
純節税額を考慮した戦略が立てられている。わが国に
おける租税法上の取り扱いもspin-offs 要件とREIT 要
件の二つの規制が考えられる。REIT 要件については、
REIT自体が不動産関連サービス業を行えるかといった
問題がある。spin-offs 要件については、一定の要件の
下で企業組織の 変更と認められる場合には、課税の繰
延べが認められている。子会社株式の分配については
配当課税が行われるが、配当課税が軽減されているた
め、トータルの節税額は大きくなるであろう。
日本不動産学会平成15年度(第10回)業績賞受賞
不動産証券化協会が発行する『不動産証券化ハンドブック』が日本不動産学会の平成
15年度業績賞を受賞しました。この業績賞は、新機軸を打ち出した不動産関連事業や
制度の創設などの幅広い事業のなかから、特に優秀な事業を表彰するものです。本年
度は本件の他、六本木ヒルズ開発など合計4つの事業が受賞しました。表彰式は10月
25日(土)午後2時より明海大学で行われ、日本不動産学会の熊田禎宣会長より当協
会巻島専務理事に表彰状、表彰盾の目録が授与されました。学会発表の業績賞受賞理
由は以下の通りです。
受賞理由
わが国の不動産証券化市場の発展、それを通じた実物不動産投資市場の発展につながる流れのなか
で、社団法人不動産証券化協会は主導的な役割を果たしてきた。不動産証券化に関する「基本解説
書」、「統計集」、「制度便覧」、「用語集」としての機能を有する『不動産証券化ハンドブック』は、
この分野において最も頻繁に参照、引用される文献の一つであり、不動産証券化市場への参加を目
指す企業や個人に幅広く利用されているだけでなく、当該分野に関心を持つ研究者や学生にも欠 か
せない基本的資料としての地位を得ている。この資料を1993年という早い時 期から毎年継続して
発行し、内容を改善するとともに、一般への普及に努めてきたことは、同協会が不動産証券化に果
たしてきた貢献の一端を示すものであり、極めて高く評価されるものである。
「FPフェアー2003」に出展
大阪国際会議場「グランキューブ大阪」で、10月11
日・12日に開催された FPフェアにARESがブース出
展しました。北海道から沖縄まで全国から約2、800
名のFPが参加し、各教育セッションは立ち見も出る
盛況で、ブース展示会場も熱心なFPの人々で大いに
賑わいました。今回、事務局員5名が参加し、ARES
のリーフレット配布、ハンドブックなどの展示販売の
ほか、熱心なFPの方々の質問や相談にお答えするな
ど、不動産証券化、特に J-REITの理解促進に努めて
きました。直接お話しをして、FPの方々の不動産証
券化 への関心の高さを肌で感じることができました
が、まだまだPRが足りていない面も 痛感いたしまし
た。今回のフェア参加を期に、FPの方々への情報発
信やセミナー等での交流を効果的に深めてゆくことが
できればと思います。この機会に、大阪にあるJ-REIT
の保有ビルも数棟見学することができました。写真は
JREの御堂筋ダイワビルですが、大阪では新しいビル
の建設も着々と進んでおり、 今後J-REITに組み入れ
られる物件も相当増えてくるものと感じました。
(事務局 綿貫隆二)
実務研修会のご案内
第9回実務研修会「最近のPFIの動向」
講師:片山 竜氏(プライスウォーターハウスクーパ
ース・フィナンシャル・ア ドバイザリー・サー
ビス株式会社 マネージャー)
日時:平成15年12月4日(木)
13時30分∼15時30分
会場:中央大学駿河台記念館370号室
担当:綿貫、七沢
第10回実務研修会
「欧米における不動産会社の
ファンド・ビジネスへの取り組みについて」
講師:坂口 英治氏(モルガン・スタンレー証券会社
投資銀行本部不動産投資銀行部
エグゼクティブディレクター)
日時:平成16年2月5日(木)
13時30分∼15時30分
会場:中央大学駿河台記念館370号室
担当:綿貫、七沢
November-December. 2003
51
J-REIT New Comer
8番目のJ-REIT銘柄 登場!
グローバル・アライアンス・
リアルティ株式会社
代表取締役社長
山内 正教
2.利益相反の排除
本投資法人は、運用会社のスポンサーである明治
生命、東京三菱銀行、三菱信託銀行、近畿日本鉄道、
日本ジーエムエーシー・コマーシャル・モーゲージ
(以下「日本GMACCM」)各社の不動産投資ノウハウ
弊社が運用致しますグローバル・ワン不動産投資
を結集して運用されておりますが、その一方で、不動
法人(以下、「本投資法人」)は、9月25日に東京証
産の価値、キャッシュフローに依拠したREITの商品
券取引所に上場しました。関係者の皆様には深謝申
性に鑑み運用会社のスポンサーと、本投資法人の投資
し上げます。
家との利益相反の排除を図りました。
運用会社の経営陣は、代表取締役社長(明治生命
本投資法人は、運用会社設立以前より他のREITに
出身)を除き、各スポンサーから1名就任し、運用会
はない特色を打ち出すべく、鋭意検討を進めて参り
社への出資比率では明治生命グループ、三菱東京フィ
ました。その特色につきまして以下に述べさせてい
ナンシャルグループ、近畿日本鉄道グループ、日本
ただきます。
GMACCMが各14.9%と対等の立場とすることで、
相互牽制を働かせる仕組みを構築できたと自負して
1.クオリティを重視「近、新、大」のオフィスビル
本投資法人は、運用資産の着実な成長と安定した収
益の確保を目指すべく、3大都市圏(東京、名古屋、
おります。また、プロパティ・マネージャーや不動産
仲介会社についても、投資家の利益を最優先し、特定
の企業に固執しない方針です。
大阪)および政令指定都市を主体として各マーケッ
トにおける第一級のオフィスビルのみに投資する方
最後に、本投資法人は投資家、関係者の皆様にタイ
ムリーな情報を提供させていただくため、上場日にホ
針です。
取得済みの3物件は、いずれも最寄駅より徒歩5
分圏内(「近」)、築年数が10年未満(「新」)で、1
ームページ(http://www.go-reit.co.jp/)を開設し
ました。一度ご高覧いただきますと幸甚です。
棟あたりの平均賃貸面積
は約5,200坪(「大」)と、
クオリティの高い大型オ
フィスビルです。今回、3
物件、資産規模総額400
億円でスタートした背景
には、量より質を重視し、
投資対象を絞り込んだ結
果であると自負しており
ます。資産規模について
は、1年以内に倍増を目指
す所存です。
編
集
後
記
スフィアタワー天王洲
近鉄大森ビル
“わかりやすく”をスローガンに創刊した「ARES」は今回で6号、1周年を迎える
ことができました。これまで多くの方から貴重なご意見やご感想、激励のお言葉も
頂戴しました。当編集後記に関しては「刺激に欠く」などのご指摘もありましたが、
そのほかにも改善する点はまだまだあります。皆様のご期待に添えるよう充実した
「ARES」を目指してまいります。来年もご支援のほどよろしくお願いします。
(七沢)
近鉄新名古屋ビル
会報「ARES」第6号 平成15年11月28日発行
編集発行 社団法人不動産証券化協会
〒107-0052
東京都港区赤坂 1-9-20 第16興和ビル南館4階
TEL:03-3505-8001
FAX:03-3505-8007
URL:http://www.ares.or.jp
Fly UP