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第2章 大都市制度改革の経緯と動向

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第2章 大都市制度改革の経緯と動向
第2章 大都市制度改革の経緯と動向
1 指定都市制度誕生までの歴史的経緯
● 大都市制度の歴史を振り返ると、東京、横浜、名古屋、京都、
大阪、神戸の6大市は戦前から都市の自治権確立をめざし、府
県からの分離・独立を基調とする特別市制運動を展開すること
となり、昭和22年 5 月の地方自治法制定時には、一旦は「特
別市制度」が創設されました。
(東京市は、昭和18年に東京府
と合体し東京都制が誕生)
● しかし、特別市制度を巡っては、5大市と5府県が激しく対
立することとなり、昭和31年6月の地方自治法の一部改正の
際に特別市条項を削除し、代わりに「大都市の特例」を創設す
ることで妥協し、当面の暫定措置として、同年9月に「指定都
市制度」が誕生しました。
● ここに日本の大都市制度は、東京都制と指定都市制度の2本
立てとなり、様々な制度的問題を抱えながらも現在に至ってい
ます。
- 18 -
(1)都市の自立権確立をめざした戦前の旧6大市運動
○
明治22年4月1日に我が国における近代的な地方行政制度である市制・
町村制が施行されましたが、東京・京都・大阪の3都市については、政治・
経済・社会・行政などあらゆる面において他の自治体を凌駕し、国家的に極
めて重要な地位を占めているとの考えから、市長を置かずに国の直轄として
その職務を府知事が行うなどの官治的な特例が設けられました。
○
この特例は、3都市の制度撤廃運動により明治31年10月に廃止されま
したが、この特例廃止運動は、大都市を国の出先機関的性格の強い府県から
独立させ、一般の市よりも自治権を強化すべきという主張を展開し、その後
の大都市制度確立運動の発端となりました。
〇
大正期に入ると、都市の発展が顕著となり、農村から都市への人口の流入
が増す中で、都市問題が大きな課題となり始めました。このため、東京市に
加えて、横浜市・名古屋市・京都市・大阪市・神戸市の5大市が府県と大都
市間における二重行政や二重監督の弊害を取り除き、府県からの分離・独立
をめざすという特別市制運動に参加するようになり、以後、昭和期にかけて
幾度となく帝国議会に特別市制に関する法律案が提案されましたが、結局、
実現に至りませんでした。
○
その後、昭和18年に、戦時下の首都に関する統制の一環として、従来の
東京府と東京市を合体し、官選の都長官がこれを統括するという「東京都制」
が実現し、大都市制度確立問題に一旦終止符が打たれました。その反面、東
京都制は、都市の自治権拡充に取り組んできた6大市側にとっては、府県の
側が市の権限を吸収して都市の仕事を兼ねるという意味で、意に反する内容
であり、残りの5大市の特別市制確立運動は戦後へと持ち越されました。
- 19 -
■大都市制度の歴史(1)
年
事
例
1878年(明11)
7月
三新法制定(郡区町村編制法、府県会規則、地方税規則)
1888年(明21)
4月
市制町村制公布
1889年(明22)
2月
大日本帝国憲法公布
3月
「市制中東京市京都市大阪市ニ特例ヲ設クルノ件」公布
4月
仙台市、横浜市、静岡市、京都市、大阪市、神戸市、
広島市、福岡市など31市に市制施行
5月
10月
東京市、市制施行
名古屋市、市制施行
1890年(明23)
5月
府県制、郡制施行
1898年(明31)
10月
東京市、京都市、大阪市の市制特例廃止
1917年(大6)
10月
大阪特別市制期成同盟会結成
第1回6大都市事務協議会(東京市)
1919年(大8)
4月
「都市計画法」
・「道路法」制定
1922年(大11)
3月
六大都市行政監督ニ関スル法律公布
11月
第1回6大都市議長会議(京都市)
1923年(大12)
1932年(昭7)
7月
臨時大都市制度調査会発足
9月
関東大震災
10月
1月
1936年(昭11)
6大都市特別市制促進協議会設置
6大都市「東京都制並5大都市特別市制実施要望理由書」
を政府に提出
1937年(昭12)
8月
1941年(昭16)
12月
1942年(昭17)
1月
地方制度調査会発足
太平洋戦争開戦
6大都市「東京都制並5大都市特別市制実施要望理由書」
を政府に提出
1943年(昭18)
6月
東京都制、東京都官制公布
※「大都市のあゆみ」(指定都市市長会)を基に作成
■戦前の大都市特例に関する主な法律
法律等
制度の概要
大正8年
「都市計画法」制定
・東京、京都、大阪、神戸、名古屋、横浜の
6大市にのみ適用
大正8年
「道路法」制定
・6大市の市長は、市内の国道・府県道の管理者
となる
大正11年「六大都市行政監督ニ関 ・6大市は、市が執行する国務事務の一部に
スル法律」制定
ついて府県知事の許認可等を不要とする
- 20 -
(2)地方自治法の制定と特別市の制度化
○
戦争の終結とともに、GHQの民主化方針の一環である「地方分権の徹底
的強化」と「地方行政の民主化」の基本線に沿い、地方制度調査会(現在の
地方制度調査会とは別機関)は昭和21年12月に、横浜市、名古屋市、京
都市、大阪市及び神戸市の5大市については府県から独立し、府県の事務と
市の事務を併せ行う特別市制度を創設すべきとの答申を提出しました。
○
政府はこの答申に基づき、昭和22年に、これまでの東京都制、道府県制、
市制・町村制等の諸規定を統合する地方自治法案に特別市制度も盛り込み、
同年3月成立、5月3日施行となり、ここに5大市の多年の念願であった特
別市制度が創設されました。
地方自治法に規定された特別市の内容
【特別市制度の趣旨】
・行財政能力が大きな大都市を府県から分離・独立させ、二重監督・二重行政を撤廃
・地方行政民主化のため、大都市を府県の監督から独立させ、その自主的地位を尊重
【特別市制度の概要】
・特別市は、人口50万人以上の市の中から法律で指定
・特別市は、特別地方公共団体と位置づけ
・特別市は、都道府県の区域外
・特別市には、市長、助役、収入役及び副収入役を置く
・特別市は、行政区を設け、区長は直接公選
・特別市は、従来法令により都道府県及び市に属する事務を処理
- 21 -
特別市制度に関する規定(地方自治法(昭和31年改正前)より抜粋)
地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)(抄) ※ 昭和31年改正前の規定
第三編 特別地方公共団体
第一章 特別市
第二百六十四条 特別市は、その公共事務並びに法律又はこれに基く政令により特別市に属
するもの及び従来法律又はこれに基く政令により都道府県及び市に属するもの(政令で特別
の定をするものを除く。)の外、その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しな
いものを処理する。
2 第二条第三項及び第六項の規定は、前項の事務にこれを準用する。
第二百六十五条 特別市は、都道府県の区域外とする。
2 特別市は、人口五十万以上の市につき、法律でこれを指定する。その指定を廃止する場合
も、また、同様とする。
3 特別市の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。但し、特別市の
区域に市町村若しくは特別区の区域又は所属未定地を編入する場合においては、関係地方
公共団体の議会の議決を経て内閣総理大臣がこれを定める。
4 法律で別に定めるものを除く外、従来地方公共団体の区域に属しなかつた地域を特別市の
区域に編入する必要があると認めるときは、内閣がこれを定める。この場合において、利害
関係があると認められる地方公共団体があるときは予めその意見を聴かなければならない。
5 第三項但書の規定による処分をしたとき、又は前項の規定による処分があつたときは、内閣
総理大臣は、直ちにその旨を告示するとともに、国の関係行政機関の長に通知しなければな
らない。第七条第七項の規定は、この場合にこれを準用する。
6 第二項の規定により特別市の指定があつたとき又は第三項但書の規定により境界の変更が
あつたときは、都道府県の境界は、自ら変更する。
7 第三項又は前項の場合において財産処分を必要とするときは、関係地方公共団体の協議に
よつてこれを定める。
8 第四項の意見又は前項の協議については、関係地方公共団体の議会の議決を経なければ
ならない。
9 第二項の法律は、第二百六十一条及び第二百六十二条の規定により、関係都道府県の選
挙人の賛否の投票に付さなければならない。
第二百六十六条 第九条の規定は特別市と市町村又は特別区との境界に関し争論がある場合
に、第九条の二の規定はその境界が判明でない場合において争論がないときにこれを準用
する。但し、政令で特別の定をすることができる。
第二百六十七条 特別市の区域内に住所を有する者は、当該特別市の住民とする。
第二百六十八条 特別市に市長及び助役を置く。但し、条例で助役を置かないことができる。
2 助役の定数は、条例でこれを定める。
3 特別市の市長は、当該特別市の事務並びに法律又はこれに基く政令によりその権限に属す
る国、他の地方公共団体その他公共団体の事務及び政令で特別の定をするものを除く外、
従来法律又はこれに基く政令により都道府県知事及び市長の権限に属する国、他の地方公
共団体その他公共団体の事務を管理し及び執行する。
第二百六十九条 特別市に収入役一人を置く。
2 特別市は、条例で副収入役を置くことができる。
3 副収入役の定数は、条例でこれを定める。
第二百七十条 特別市は、市長の権限に属する事務を分掌させるため、条例で、その区域を分
けて行政区を設け、その事務所を置くものとする。
2 特別市の市長は、区長の権限に属する事務を分掌させるため、条例で、必要な地に行政区
の支所を設けることができる。
3 行政区の事務所又は支所の位置、名称及び所管区域は、条例でこれを定めなければならな
い。
4 第四条第二項の規定は、前項の事務所又は支所の位置及び所管区域にこれを準用する。
- 22 -
第二百七十一条 行政区に区長及び区助役一人を置く。
2 区長は、その被選挙権を有する者について選挙人が投票によりこれを選挙する。
3 区助役は、特別市の事務吏員の中から特別市の市長がこれを命ずる。
4 区長は、特別市の市長の定めるところにより、区内に関する特別市の事務及び特別市の市
長の権限に属する国、他の地方公共団体その他公共団体の事務並びに法律又はこれに基く
政令によりその権限に属する国、他の地方公共団体その他公共団体の事務を管理する。
5 区助役は、区長の事務を補佐し、区長に事故があるとき、又は区長が欠けたときその職務を
代理する。
第二百七十二条 行政区に区収入役一人を置く。
2 区収入役は、特別市の事務吏員の中から特別市の市長がこれを命ずる。
3 特別市の市長、助役、収入役若しくは監査委員又は区長若しくは区助役と親子、夫婦又は兄
弟姉妹の関係にある者は、区収入役となることができない。
4 区収入役は、前項に規定する関係を生じたときは、その職を失う。
第二百七十三条 区収入役は、特別市の収入役の命を受け、特別市の出納その他の会計事務
並びに特別市の市長及び区長その他特別市の吏員並びに特別市の教育委員会、選挙管理委
員会、人事委員会、公安委員会、地方労働委員会、農業委員会、監査委員その他法令又は条
例に基く委員会又は委員及び行政区の選挙管理委員会の権限に属する国、他の地方公共団
体その他公共団体の事務に関する出納その他の会計事務を掌る。
2 特別市の市長は、収入役の事務の一部を区収入役に委任させることができる。この場合に
おいては、特別市の市長は、直ちにその旨を告示しなければならない。
3 前項に定めるものを除く外、区収入役の権限に関しては、市の収入役に関する規定を準用
する。
第二百七十四条 行政区に区出納員を置くことができる。
2 区出納員は、特別市の事務吏員の中から特別市の市長がこれを命ずる。
3 区出納員は、区収入役の命を受け、出納事務を掌る。
第二百七十五条 前四条に定める者を除く外、行政区に吏員その他の職員を置き、区長の申請
により、特別市の市長がこれを任免する。
2 前項の職員は、特別市の職員とし、その定数は、条例でこれを定める。但し、臨時又は非常
勤の職の定数については、この限りではない。
3 第一項の吏員は、区長の命を受け、事務又は技術を掌る。
4 区長は、その権限に属する事務の一部を第一項の吏員に委任し又はこれをして臨時に代理
させることができる。
第二百七十六条 行政区に選挙管理委員会を置く。
2 前項の選挙管理委員会に関しては、第二編第七章第三節中市の選挙管理委員会に関する
規定を準用する。
第二百七十七条 第十三条、第八十六条第一項、第八十八条第一項、第九十一条第一項乃至
第三項、第百四十五条、第百五十二条、第百六十条、第百六十二条乃至第百六十七条、第百
六十八条第六項及び第七項、第百六十九条乃至第百七十一条、第百八十条の四第四項、第
二百二条の二第三項、第七項及び第八項、第二百九条、第二百十八条、第二百二十一条、第
二百二十四条、第二百三十二条、第二百四十二条第一項並びに第二百六十条中市に関する
規定は、これを特別市に適用する。
第二百七十八条 この法律又はこれに基く政令に特別の定があるものを除く外、第二編中都道
府県に関する規定は、特別市にこれを適用する。
第二百七十九条 削除
第二百八十条 この法律に規定するものを除く外、特別市に関し必要な事項は、政令でこれを
定める。
- 23 -
(3)5府県側の特別市反対運動
○
地方自治法に制度化された特別市制を巡って、5大市の属する5府県が激
しい反対運動を展開しました。
○
5府県側は、
①
府県を構成している大都市と残りの市町村は密接不可分の状況
にあり、大都市が特別市として府県から分離すると、残存部だけで
は自立した行財政運営ができない。
②
法律で特別市を指定する際には、憲法第95条の規定に基づき、
5大市を含む府県民全体の過半数の同意が必要である。
と主張し、GHQを始めとする関係方面に強く働きかけました。
○
その結果、5府県側の主張に沿った形で昭和22年12月に地方自治法の
改正が行われ、「関係都道府県の全選挙人による投票」が必要とされました。
○
当時の5府県と5大市の人口割合を見ると、京都市を除き、過半数の人口
割合に達していなかったことから、横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市の4
市については事実上、特別市の指定が困難な状況となりました。
- 24 -
■大都市所在府県、5大市及びその他市町村の府県人口比較・府県税収調
(人口:昭和21年4月26日人口調査、税収:昭和20年度調定額)
区分
大阪府
人口(人)
税収入(千円)
2,976,140
54,199
大阪市
1,293,501
43%
29,832
55%
他市町村
1,682,639
57%
24,367
45%
兵庫県
神戸市
他市町村
愛知県
2,826,192
44,588
502,282
18%
10,129
23%
2,323,910
82%
34,459
77%
2,919,485
42,769
名古屋市
719,382
25%
16,678
39%
他市町村
2,200,103
75%
26,091
61%
神奈川県
横浜市
他市町村
京都府
2,019,943
30,048
706,557
35%
11,936
40%
1,313,386
65%
18,112
60%
1,621,998
27,503
京都市
914,655
56%
18,602
68%
他市町村
707,343
44%
8,921
32%
※「大都市制度史(資料編)Ⅰ」(指定都市事務局)を基に作成
- 25 -
(4)5大市と5府県の対立の激化
○
昭和22年12月には警察法及び消防組織法(昭和23年3月施行)の公
布により、自治体警察・都市消防が実現し、昭和23年には教育委員会法の
制定による教育の分権化が進みました。そして昭和24年のシャウプ勧告
(行政責任の明確化、効率化、市町村優先の3原則)に基づき、行政事務配
分のあり方等を調査検討する「地方行政調査委員会議」が設置されました。
警察法・消防組織法・教育委員会法の特徴
【警察法(昭和23年3月施行)】
・国家警察制度を改め、市町村自治体警察と国家地方警察の並存
・全ての市および人口5,000人以上の市街を有する町村に自治体警察を設置
【消防組織法(昭和23年3月施行)】
・消防責任を負うのは市町村とされ、国や都道府県は市町村消防を管理しない
【教育委員会法(昭和23年7月施行)】
・都道府県及び市町村に教育委員会を設置(公選制・合議制の行政委員会)
・都道府県及び5大市は昭和23年11月までに教育委員会の設置を義務付け
○
地方行政調査委員会議は、昭和25年12月、
「行政事務配分に関する勧告」
を行い、その中で、特に5大市について事務の配分及び監督の面で特例を認
めるべきことを勧告し、さらに、昭和26年9月の「行政事務配分に関する
第2次勧告」では、5大市の事務とすべき13項目の事務を列挙するととも
に、事務の再配分が勧告通り実施されることにより特別市制によらずとも大
都市地域における二重監督や二重行政の弊害は除去されるとの考え方が示さ
れました。
○
これらの勧告に対し、5大市側では、昭和26年10月に「特別市制理由
書」を発表し、個々の二重監督や二重行政が除去されたとしても、大都市問
題の抜本的な解決には至らないため、財源問題も含めて特別市の必要性を訴
えましたが、昭和27年2月には、5府県側が「特別市制反対理由書」を発
表するなど、両者の対立は激しく、緊迫した状態が続きました。
- 26 -
○
5大市と5府県の対立は単なる議論にとどまるものではありませんでした。
占領が終結に近づくにつれ、占領中に制定・改正された様々の法令の再検討
が始まりました。こうした中で、地方自治法の改正について、5大市側は特
別市制の実現を図るため、住民投票を「関係都道府県の選挙人の賛否の投票」
と規制する条項の削除を求め、一方、5府県側は特別市制に関係する条項そ
のものの全面削除を求め、両者の主張は真っ向から対立しました。
○
昭和27年4月の国会では、これら2つの法案が議員提案で同時に提出さ
れましたが、結局はどちらも成立せず、両者の対立は、単に関係府県の問題
だけではなく、政治問題化し、容易に決着がつく状況にはありませんでした。
折から、市町村合併が進められ府県制度のあり方も問題となり、大都市問題
に対する解決は、府県制度の抜本改正である道州制の導入とセットで行われ
るべきとの議論も出始めてきました。
■大都市制度の歴史(2)
年
1947年(昭22)
事
4月
第1回統一地方選挙
5月
日本国憲法
例
地方自治法施行(特別市制度の創設)
12月
1948年(昭23)
3月
地方自治法改正(府県民の投票)
旧警察法施行(自治体警察の誕生)
消防組織法施行(自治体消防が規定)
1949年(昭24)
7月
教育委員会法(都道府県・5大市に設置義務)
8月
日本税制使節団の報告書(GHQから日本政府への税制
改革についての勧告「シャウプ勧告」)
12月
1950年(昭25) 12月
1951年(昭26)
9月
10月
1952年(昭27)
2月
12月
地方行政調査委員会議発足
「行政事務の再配分に関する勧告」
「行政事務の再配分に関する第2次勧告」
5大市「特別市理由書」
5府県「特別市制反対理由書」
5大市「大都市制度の確立に関する意見書」を提出
※「大都市のあゆみ」(指定都市市長会)を基に作成
- 27 -
(5)第1次地方制度調査会の答申
○
特別市制をめぐる5大市と5府県の対立は、特別市制に代わる制度を構築
することで大都市問題の解決を模索する方向に進んでいきました。地方制度
の改革をどのように進めるかは、昭和27年に新設された地方制度調査会で
検討されることとなりました。
○
地方制度調査会は昭和28年10月の「地方制度の改革に関する答申」で、
大都市制度については「差し当って事務及び財源の配分により、大都市行政
の運営の合理化を図るものとすること」とし、府県機能の一部移譲と知事の
許認可権の整理を提案するものでした。
○
またこれに関連し、警察事務の配分については、
「現在の国家地方警察及び
市町村自治体警察を廃止して、府県及び大都市単位の自治体警察を設け、公
安委員会の下に置くものとすること」を、また、教育事務の配分に関しては、
「府県及び5大市の教育委員会は、現行どおり存置すること」としたうえで、
「教職員に係る行政及び財政上の責任は府県及び5大市が負うものとするこ
と」を答申しました。
地方制度の改革に関する答申(昭和28年10月)の概要
【大都市制度に関する事項】
・大都市に対する府県知事の許認可権の整理
・大都市の区域内において府県が行う補完行政は大都市の事務とする
・法令による委任事務で広域的又は統一的処理を必要とする事務以外は、大都市の事
務とする
・府県の区域内における大都市とその他の市町村間の連絡調整は府県が行う
・大都市に対する府県税の配分特例を設ける
【警察事務に関する事項】
・府県及び大都市単位の自治体警察を設け、公安委員会の下に置く
【教育事務に関する事項】
・市町村の教育委員会を廃止し、府県及び5大市の教育委員会は、現行どおり存置
・教職員は府県及び5大市の公務員とし、教職員にかかる行政及び財政上の責任は府
県及び5大市が負う
- 28 -
○
この答申に対して、5府県側は「事実上の特別市の実現」であるとして反
対したものの、5大市側は、
「府県の枠内で大都市行政の一元化、合理化を図
るもので十全のものとはいえない」としながらも、その現実性は高く評価で
きるとし、警察、義務教育、一般行政及び財政を通じ答申の線に沿った大都
市制度の「速やかなる実現」を求めました。こうして、特別市制の実施か否
かという争点が、暫定的な措置として、大都市の事務・財源配分に関する特
例を設けることで解決させる方向に徐々に移っていきました。
大都市特例反対を内容とした5府県の「答申事項に対する要望」(昭和28年10月)の要旨
○
実質的に特別市を是認するが如き結果を生ぜしめている点において絶対に容認し
難い処であるので、国会並びに政府の善処方を強く要望する。
○
警察事務の配分について、府県自治体警察と並んで大都市自治体警察を設けるこ
とについては反対である。
○
教育事務の配分についても、5大都市のみを府県と同一に取扱っているが、これ
についても反対である。
5大市の「大都市制度確立に関する要望」(昭和28年12月)の要旨
○
5大市は、特別市制の実現を求めていたので、今回の提案は、現行の府県の枠内
において大都市行政の一元化、合理化を図るものであり、制度自体としては十全の
ものとはいえない。
○
しかしながら、府県と大都市の間を調整しつつ大都市の特殊性を生かすものとし
て、その現実性の点は高く評価できる。
○
5大市も、特別市制の主張に拘らず、当面緊急の措置として答申の速やかなる実
現を要望する。
○
警察、義務教育、一般行政及び財政を通じて、答申の線に沿って、大都市制度を
速やかに確立されるよう政府の善処方を強くお願いする。
- 29 -
○
しかし、昭和29年2月国会に提案された新警察法案では、大都市警察の
廃止が打ち出され、6月には5大市警察を1年間存続させるとの修正を加え
ただけで法案は国会を通過しました。警察法案提案理由説明では「大都市警
察を府県と併立させることは、大都市とその周辺地区とを遮断し、両地区の
一体性を阻害し、警察運営の有機的活動の障害や財政的にも不経済となるた
め、府県警察に一元化する」旨、述べられました。
○
この結果、昭和23年に国家地方警察と二本立てでスタートした自治体警
察は、昭和29年7月に都道府県警察に一元化され、1年間存続された5大
市警察も昭和30年6月30日をもって廃止され、府県警察に移管されまし
た。
○
一方、地方教育行政については、
「地方教育行政の組織及び運営に関する法
律」が昭和31年6月に施行されましたが、5大市の特例は、教育長の任命
方法が府県並みであること、及び、教職員の任命権が5大市教育委員会に属
することのみであり、5府県教育委員会同様の権限と給与費負担を前提に税
源移譲を求めていた5大市にとっては極めて不十分で不満の残る結果となり
ました。
- 30 -
(6)特別市制度の廃止と指定都市制度の創設
○
昭和30年6月、政府は、事務配分による大都市特例を規定した地方自治
法改正法案を国会に提出しましたが、5府県側はこの法案に反対し、大都市
特例を規定するのであれば特別市制の条文を削除することを求め、大都市特
例の規定の新設と引き換えに特別市制の存廃という新たな争点が浮上してき
ました。
○
この地方自治法改正法案は特別市制問題以外にも、地方議会の機能を縮小
し、その活動を制限することが盛り込まれていたため、地方議会側からの強
い反対により、結局審議未了で廃案となりました。
○
昭和31年1月、政府は前年に廃案となった改正法案に比べ、議会側の権
限縮小を緩和し、大都市と府県の事務配分を中心とした地方自治法改正案要
綱をまとめました。
○
5府県側は、
「特別市」条項を削除することを条件にしたことで解決の方向
に進み、その結果、昭和31年6月に地方自治法が改正され「特別市」条項
を削除する代わりに、府県から、住民の生活に直接関わる民生・衛生部門を
中心とした16項目の事務移譲と府県の監督権の緩和等を柱とする「大都市
に関する特例」が設けられました。(33頁参照)
○
5大市側は、この特例を受けることで譲歩し、昭和31年7月、横浜市、
名古屋市、京都市、大阪市、神戸市を指定都市に指定する政令が公布され、
同年9月から施行されたことに伴い、ここに東京都制と並ぶ日本の大都市制
度の一形態である「指定都市制度」が誕生することとなりました。
- 31 -
■大都市制度の歴史(3)
年
事
例
1952年(昭27) 12月
地方制度調査会第1回総会
1953年(昭28)
1月
5大市「自治警察存置に関する陳情書」
2月
5大府県議会治安常任委員会「5大市警存続反対の陳情」
〃
全国知事会「警察制度改革に関する要望」
(都市の地方警
察を否定、都道府県警察の一本化)
〃
新警察法案提出(70万人以上の大都市に警察を併置)
3月
国会の解散により「新警察法」は廃案
10月
〃
12月
1954年(昭29)
第1次地方制度調査会答申
5大府県「答申事項に対する要望」(大都市特例反対)
5大市「大都市制度確立に関する要望」
2月
新警察法案提出(大都市警察の廃止)
5月
5大市「警察法案に対する修正の要望」
(大都市警察の恒
久化の要望)
6月
新警察法可決(5大市警察を1年間存続)
1955年(昭30)
6月
5大市警察の廃止
1956年(昭31)
6月
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」施行
改正地方自治法公布(指定都市制度の創設)
9月
大阪、名古屋、京都、横浜、神戸市が指定都市に移行
※「大都市制度史(資料編)Ⅱ」(指定都市事務局)を基に作成
■各都市の指定都市への移行の経緯
年
月
事
例
1963年(昭38)4月
北九州市が指定都市に移行
1972年(昭47)4月
札幌市、川崎市、福岡市が指定都市に移行
1980年(昭55)4月
広島市が指定都市に移行
1989年(平
元)4月
仙台市が指定都市に移行
1992年(平
4)4月
千葉市が指定都市に移行
2003年(平15)4月
さいたま市が指定都市に移行
2005年(平17)4月
静岡市が指定都市に移行
2006年(平18)4月
堺市が指定都市に移行
2007年(平19)4月
浜松市、新潟市が指定都市に移行
2009年(平21)4月
岡山市が指定都市に移行
2010年(平22)4月
相模原市が指定都市に移行
2012年(平24)4月
熊本市が指定都市に移行
- 32 -
■地方自治法の大都市特例事務
1956年
2012年
(昭和31年 指定都市制度誕生時)
(平成24年)
①
児童福祉に関する事務
①
児童福祉に関する事務
②
民生委員に関する事務
②
民生委員に関する事務
③
身体障害者の福祉に関する事務
③
身体障害者の福祉に関する事務
④
生活保護に関する事務
④
生活保護に関する事務
⑤
行旅病人及び行旅死亡人の取扱に関 ⑤
行旅病人及び行旅死亡人の取扱に関す
する事務
る事務
⑥
母子福祉資金の貸付に関する事務
⑤の2
社会福祉事業に関する事務
⑤の3
知的障害者の福祉に関する事務
⑥
母子家庭及び寡婦の福祉に関する事務
⑥の2
⑦
母子保健に関する事務
⑦の2
⑦
伝染病の予防に関する事務
⑧
寄生虫病の予防に関する事務
⑨
食品衛生に関する事務
⑩
墓地、埋葬等の規制に関する事務
⑪
興行場、旅館及び公衆浴場の営業の
老人福祉に関する事務
介護保険に関する事務
⑧
障害者の自立支援に関する事務
⑨
食品衛生に関する事務
⑩
精神保健及び精神障害者の福祉に関す
規制に関する事務
る事務
⑫
結核予防に関する事務
⑪
結核の予防に関する事務
⑬
都市計画に関する事務
⑭
土地区画整理事業に関する事務
⑫
土地区画整理事業に関する事務
⑮
屋外広告物の規制に関する事務
⑬
屋外広告物の規制に関する事務
⑯
建築基準行政の実施に関する事務
16項目
17項目
- 33 -
(7)指定都市制度の位置づけと評価
○
これまで、戦前の旧6大市運動から特別市の制度化、そして指定都市制度
誕生までの歴史的経過を概観してきましたが、指定都市制度というものは特
別市制を巡る5大市と5府県の激しい対立及び政治紛争に一応の終止符を打
つために、都道府県・市町村という2層制を維持しつつ、当面、府県との間
における二重監督・二重行政の弊害を大都市への事務配分の特例を設けるこ
とにより解決を図ろうとする「妥協の産物」であったと言うことができます。
○
実際に制度を実施してみると、大都市問題を根本的に解決し、大都市行政
を自主的かつ総合的に推進していくためには、地方自治法上特例として移譲
された事務では範囲が狭すぎ、また、大都市特有の財政需要に対応するため
の都市税源や特例として移譲された事務に要する自主財源が十分に措置され
ていない制度であることが露呈し、このため制度発足直後から現在に至るま
で、大都市制度の拡充強化を要望・提言していくこととなります。
大都市制度に関する政府統一見解
【昭和31年5月の参議院地方行政委員会における当時の太田国務大臣の答弁】
「差しあたっては、大都市の実情に即した事務配分によって大都市問題を解決したい。も
っとも、右の事務配分のみによっては、大都市問題は根本的に解決するものとは考えて
いない。いわゆる特別市問題については、さらに根本的に検討すべきものと考えている
が、これは、府県制度の根本的改革の問題とあわせて解決すべきものと考えている。」
- 34 -
戦前の特別市運動から指定都市制度創設までの主な動き
戦前
●明治21年
●明治22年
市制町村制公布
「市制中東京市京都市大阪市ニ特例ヲ設クルノ件」公布
※東京市・京都市・大阪市には市長を置かず、国直轄とする特例制度
3都市の特例廃止運動
(後の大都市制度確立運動の発端となる)
●明治31年
東京市、京都市、大阪市の市制特例廃止
6大市の特別市運動に発展
●大正11年 「六大都市行政監督ニ関スル法律」制定
※6大市は、一部の事務について府知事の許認可等を不要とする特例
●昭和18年 東京都制、東京都官制公布
戦後
●昭和22年5月
地方自治法施行(特別市制度の創設)
5府県が強硬な特別市反対運動を展開
●昭和22年12月
地方自治法改正(府県民の投票が規定)
※事実上、特別市の指定は困難
●昭和23年
旧警察法施行(自治体警察の誕生)
消防組織法施行(自治体消防が規定)
教育委員会法(都道府県・5大市に設置義務)
●昭和28年 第一次地方制度調査会答申
※大都市に事務及び財源を配分し、大都市行政の運営の合理化を図る
※府県及び大都市単位の自治体警察を設置
※府県及び5大市の教育委員会の存置
5大市と5府県の対立が激化
●昭和30年
●昭和31年
5大市警察の廃止
指定都市制度発足
- 35 -
2 第一次分権改革
●
第一次分権改革は、平成5年6月の衆参両議院の「地方分権の
推進に関する決議」以来、7年にわたって進められた改革であ
り、国と地方の関係を「上下・主従の関係」から「対等・協力
の新しい関係」に転換するなど、地方分権の「扉を開いた」改
革でした。
●
しかし、改革の具体の成果を振り返ってみると、地方分権改
革の基本理念である「国及び地方公共団体の役割分担を明確に
し、地方公共団体の自主性・自立性を高め、個性豊かで活力に
満ちた地域社会の実現を図る」という趣旨からは程遠い内容で
あり、地方税財源の充実確保等、多くの課題が先送りされるな
ど、
「未完の分権改革」にとどまりました。
(1)地方分権改革の胎動
○
明治期以来の中央集権型行政システムは、権限・財源・人間・情報を国家
に集中させ、全国画一の統一性と公平性を重視するシステムであり、我が国
の急速な近代化と経済発展に大きく貢献してきました。
○
しかし、昭和から平成の時代になり、変動する国際社会への対応や個性豊
かな地域社会の形成、高齢化社会への対応といった新たな時代の要請に対応
しきれず、中央集権型行政システムは一種の制度疲労に陥っているとの指摘
が相次ぎました。
○
こうした時代認識のもと、地方分権改革が本格的に議論を呼ぶこととなっ
たのは、平成元年 12 月の第 2 次臨時行政改革推進審議会(第 2 次行革審)
が行った「国と地方の関係等に関する答申」であったと言われています。
- 36 -
○
この答申では、
「これまでの官主導でどちらかと言えば中央集権型であった
意思形成や資源配分のパターンを個人、地域等が主体的に参加し決定してい
くものに改め、自由で幅広い選択を可能にする社会の構築を進めるべき」と
の基本認識を示すとともに、国から地方への権限移譲、都道府県連合制度の
導入、補助金の制度及び運用等の見直し、地方公共団体の改革などを提言し
ました。
○
その後、指定都市、地方六団体、政党、経済団体などから地方分権に関す
る提案が盛んに行われるようになり、国会においても本格的な地方分権のた
めの法制度改革の必要性が認識されるようになりました。
○
平成 5 年 6 月、衆参両議院は「地方分権の推進に関する決議」を全会一致
で採択し、地方分権に関する特別委員会を設置するとともに、平成 7 年 5 月
には「地方分権推進法」の成立、その後、法律に基づき設置された地方分権
推進委員会による第 5 次の勧告とこれを最大限尊重した政府による「地方分
権推進計画」の策定を経て、平成12年4月の「地方分権一括法」の施行ま
での 7 年間にわたる地方分権改革を、「第一次分権改革」と呼んでいます。
- 37 -
地方分権推進法(平成7年法律第96号)の概要
【目的】
地方分権を総合的かつ計画的に推進することを目的
【基本理念】
地方分権の推進は、国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、地方公共団
体の自主性・自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現することを基本
として行う。
【地方分権の推進に関する基本方針】
(1)国と地方公共団体との役割分担
・国は、国家としての存立にかかわる事務など国が本来果たすべき役割を重点的
に分担
・地方公共団体は、住民に身近な行政は住民に身近な地方公共団体において処理
するとの観点から地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担
う。
(2)地方分権の推進に関する国の施策
・国は、国と地方の役割分担の在り方に即して、権限移譲を推進するとともに、
国の関与、必置規制、機関委任事務、補助金等の地方自治の確立を図る観点か
ら整理合理化その他所要の措置を講ずるものとする。
(3)地方税財源の充実確保
・国は、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保を図るも
のとする。
(4)地方公共団体の行政体制の整備・確立
・地方公共団体は、地方分権の推進に応じた行政体制の整備・確立を図るものと
し、国は、必要な支援を行うものとする。
【地方分権推進計画】
政府は、地方分権推進計画を作成し、国会に報告するとともに、その要旨を公表す
る。
【地方分権推進委員会】
・総理府に「地方分権推進委員会」を設置する
・委員会は、地方分権推進計画の作成のための具体的な指針を首相に勧告する
・委員会は、地方分権推進計画に基づく施策の実施状況を監視し、その結果に基づき
首相に意見を述べる
- 38 -
(2)第一次分権改革の内容と意義
○
平成12年4月施行の「地方分権一括法」は、1 つの法律で475にのぼ
る法律を改正するとともに、これに併せて関連する政省令、告示、要綱、取
扱い規定等も幅広く見直すという、かつてない膨大なものとなりました。
○
その内容は、国と地方の役割分担の明確化、機関委任事務制度の廃止とそ
れに伴う事務区分の再構成、国と地方の間の調整ルールの創設など、明治期
以来続いた国と地方の関係を「上下・主従の関係」から「対等・協力の新し
い関係」に転換させる改革を含むものであり、様々な課題は残るとしても、
中央集権型のシステムから地方分権型のシステムに方向を切り替えたという
意味で、地方分権の「扉を開いた」画期的な改革であったといえます。
(3)第一次分権改革でめざした事項
ア.国と地方公共団体との役割分担の明確化
地方自治法において、地方公共団体の役割と国の配慮に関する規定を設け
ることにより、国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確化にする。
【国】
国は、国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統
一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本
第 一 次 分 権 改 革 で め ざ し た 事 項
的な準則に関する事務などを重点的に担う。
【地方公共団体】
1 国と地方公共団体との役割分担の明確化
地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域にお
ける行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担任する。
- 39 -
イ.機関委任事務制度の廃止及びそれに伴う事務区分の再編成
都道府県知事や市町村長を国の機関と構成して国の事務を処理させる仕組
みである機関委任事務制度を廃止し、地方公共団体の処理する事務を「自治
事務」と「法定受託事務」とに再編成する。
【地方公共団体の事務の新たな考え方】
公共事務
団体(委任)
事務等
存続する事務
機関委任事務
国の直接執行事務
自 治 事 務
法定受託事務
事務自体の廃止
【自治事務】地方公共団体の処理する事務のうち、法定受託事務を除くもの
例)・都市計画の決定 ・農業振興地域の指定
・病院、薬局の開設許可
・飲食店営業の許可
【法定受託事務】法律又はこれに基づく政令により都道府県又は市町村が処理
する事務のうち、国が本来果たすべき責務に係るものであって、国民の利便性
又は事務処理の効率性の観点から都道府県又は市町村が処理するものとして法
律又はこれに基づく政令に特に定めるもの
例)・国政選挙
・旅券の交付
・国の指定統計
・国道の管理
ウ.国の関与等の抜本的見直し
国の関与等のあり方全体を抜本的に見直し、地方自治法において、その原
則、基準、手続等について新たなルールを創設する。
【関与の基本類型】
(従前)
包括的な指揮監督権(地方自治法 150 条、151 条)
廃
止
◎新たな事務区分ごとに関与の基本類型を地方自治法に規定
◎関与はできる限り基本類型に従う
【自治事務】
○助言及び勧告
○資料の提出の要求
○協議
○是正措置要求
【法定受託事務】
○助言及び勧告
○資料の提出の要求
○協議
○同意
○許可、認可、及び承認 ○指示
○代執行
- 40 -
エ.事務・事業の拡充(権限移譲の推進)
権限移譲を積極的に推進し、国の権限を都道府県又は市町村に、また、都道
府県の権限を市町村に移譲する。
オ.必置規制の見直し
国が地方公共団体の組織や職の設置を義務付けている必置規制については、
地方公共団体の自主組織権を尊重し、行政の総合化・効率化を図る観点から、
その廃止・緩和を推進する。
カ.国庫補助負担金の整理合理化と地方税財源の充実確保
地方公共団体の自主性・自立性を高める見地から、国と地方の財政関係につ
いては、事務の実施主体が費用を負担するという原則を踏まえつつ、国庫補助
負担金の整理合理化、存続する国庫補助負担金の運用・関与の改革、地方税・
地方交付税等の地方一般財源の充実確保を図る。
キ.都道府県と市町村の新しい関係
都道府県と市町村の性格に応じた相互の役割分担を明確にし、対等・協力の
新しい関係を構築する。
ク.地方公共団体の行政体制の整備・確立
地方公共団体の自己決定権と自己責任の拡大を踏まえ、その行財政能力の
一層の向上を図るため、行政体制の積極的整備・確立を進める。
- 41 -
(4)都道府県と市町村との新たな関係(市町村優先の原則の徹底)
○
第一次分権改革では、国と地方公共団体との役割分担の明確化とともに、
都道府県と市町村との関係についても見直しが行われました。
○
都道府県と市町村との間の役割分担に関しては、市町村優先の原則の一層
の徹底を図り、両者の関係を対等・協力の関係として構築するとともに、都
道府県知事の市町村長に対する包括的な指揮監督の規定、事務委任の規程等
を削除するなどの改正が行われました。
○
また、地方自治法において、市町村は基礎的な地方公共団体として、住民
の日常生活に直結する事務処理を幅広く包括的に担任することとされ、一方、
都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、
①「広域にわたるもの」
②「市町村に関する連絡調整に関するもの」
③「事務の規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当
でないもの」
を限定的に処理することとされました。
○
このことは、地方公共団体における事務処理の主体が、法律制度的にも実
態的にも市町村が優先的に取扱われるべきことを明確にしたものであり、も
とより、③の一般の市町村が処理することが適当でないという意味で、現在
都道府県が担任している「規模又は性質事務」についても、適切に処理する
ことができる規模・能力を有する市町村にあっては、当該市町村において処
理することを妨げられるものではありません。
- 42 -
○
本市を含む指定都市は、道府県の補完を要せずに事務処理を行いうる規
模・能力を有しており、市町村優先の原則に基づく道府県と指定都市の役割
分担を考えるとき、指定都市の市域内では道府県は真に必要な広域事務及び
市町村連絡調整事務に特化し、これ以外の全ての事務を指定都市が一元的・
包括的に実施できるようにすべきです。
市町村優先の原則の徹底
【市町村の役割】
・住民の日常生活に直結する事務処理を幅広く
包括的に実施
【都道府県の役割】
・「広域事務」
・「連絡調整事務」
・「規模・性質事務」(※)に限定
【国の役割】
・国家の存立にか
かわる事務
・全国統一
事務等に
※「規模・性質事務」については、
特化
規模・能力のある市町村において
は、当該市町村が処理できる事務
(5)第一次分権改革の問題点と課題
○
平成5年6月の衆参両議院による「地方分権の推進に関する決議」以来、
7年にわたって行われた第一次分権改革について、その具体の成果を振り返
ったとき、地方分権推進法に掲げた「地方分権の推進は、国及び地方公共団
体の役割分担を明確にし、地方公共団体の自主性・自立性を高め、個性豊か
で活力に満ちた地域社会の実現を図る」という基本理念と余りに大きな隔た
りがあり、多くの課題が先送りされるなど「未完の分権改革」となりました。
- 43 -
○
とりわけ、指定都市は道府県に比肩する規模と能力を有しており、大都市
問題を主体的かつ一体的に解決していくため、道府県並みの権限とそれに見
合う税財源の確保を要望していましたが、ほとんど実現されることなく、
大変不満の残るものとなりました。
第一次分権改革の主な課題
【小規模にとどまった地方公共団体への権限移譲】
・工場の新設・増設に関する届出の受理、勧告、変更命令等(工場立地法)
・大気汚染の公表、関係行政機関の長への協力要請等(大気汚染防止法)
・騒音防止に係る関係行政機関の長への協力要請等(騒音規制法)
・悪臭防止に係る関係行政機関の長への協力要請等(悪臭防止法)
・振動防止に係る関係行政機関の長への協力要請等(振動規制法)
・埋蔵文化財包蔵地域における土木工事等の届出受理、開発を行う事業者への発掘調
査指示(埋蔵文化財保護法)
・毒物及び劇物の販売業の登録及び登録取消、回収命令、立入検査等(毒物及び劇物
取締法)
・死体保存の許可(死体解剖保存法)
・都市計画の決定(都市計画法等)
・農住組合の定める交換分合計画の認可及び同計画に係る事務(農住組合法)
※国・道府県から指定都市への権限移譲はわずか10項目
【ほとんど手付かずで終わった地方公共団体に対する国の関与】
・通達等による国の関与を大幅に緩和したものの、国の個別法令等による事務の義務
付けなどはほとんど手付かず
【ほとんどが先送りされた地方税財源の充実確保】
・次なる分権改革の焦点として先送り
- 44 -
3 三位一体の改革
○
「地方分権一括法」による一連の制度改革後、地方分権推進委員会は平成
13年6月の最終報告の中で、
「今次の分権改革は第一次分権改革と呼ぶべき
ものであって、分権改革を完遂するためには、これに続いて第2次、第3次
の分権改革を断行しなければならない」とし、次の分権改革の焦点は、地方
税財政の抜本的な改革であると位置づけました。
○
そして、その抜本改革は、税財政面から分権改革をさらに進め、自治体の
自主性・自律性を高めるために、①国から地方公共団体への補助金を大幅削
減し、②その削減分に応じて国税から地方税に税源移譲し、③税源移譲に伴
う地方公共団体間の財政力格差の拡大等に対応して地方交付税を見直すとい
う3つの改革を一体的に進めるという意味で「三位一体の改革」と呼ばれる
ようになりました。
○
この改革では、国庫補助負担金の廃止に伴い、これまで行ってきた補助金
の申請、審査、決定といった国・地方を通じた事務の大幅な軽減が図られる
とともに、地方では、権限と税源の移譲に伴い自己決定と自己責任が拡大す
ることで、創意と工夫による一層の行財政の効率化、合理化が進むこととな
り、これらの結果、国と地方のいずれにおいても、財政の健全化に大きく
寄与することが期待されました。
○
しかしながら、これまでの改革では、約3兆円規模の税源移譲はなされた
ものの、国庫補助負担金の見直しでは、単なる地方への負担転嫁に過ぎない、
児童扶養手当や義務教育費国庫負担金などの国庫負担率の引き下げばかりが
目立つ結果となり、地方の自由度を増し裁量権を拡大するという、本来の趣
旨からは程遠いものとなりました。また、地方交付税については、5兆円も
の額が削減されました。
- 45 -
三位一体の改革
地方交付税の抑制
地方への税源移譲
国庫補助負担金の改革
H16∼H18 年度の改革内容
国庫補助負担金の改革
約4.7兆円
地 方 へ の 税 源 移 譲
約
地 方 交 付 税 の 抑 制
約 △5兆円
3兆円
※「国庫補助負担金の改革」のほとんどは、国の負担率の引き下げ
によるもの
指定都市市長会緊急アピール(平成18年5月29日)より抜粋
平成 16 年度に、指定都市市長
会が主張した「廃止すべき国庫
補助負担金」7.8兆円のうち、
移譲は、わずか約1兆円。交付
金化も国の関与が残って補助金
と変わりません。
「地方交付税」は、
そもそもどういうも
のなの・・・?
まずは、未実施分と交付金化分
地方交付税は、どの地域に住む国
民も同じような行政サービスが受
けられるようにするため、国に納
められた税金のうち、一定の割合
を国から地方に交付する『地方の
固有財源』です。
その割合も、法律で定められてい
ます。
を廃止し、所要額の約4兆円を
現 状
税源移譲すべきです。
(国・地方における租税の配分状況)
国税(一般会計)
地方税(地方財政計画)
46兆円※
38兆円※
※3 兆円の税源移譲の影響を加味
4兆円の
税源移譲
地方税等
(※64.4 兆円)
国税
地方税
42兆円
国 5 対 地方 5
地
32.0%
法人税
35.8%
消費税
29.5%
たばこ税
25.0%
交付税の法定率分等
14.7兆円
方
B
通常収支
付
税
国の法定加算等
1.2兆円
不足
4.1
兆円
臨時財政対策債
18.8兆円
2.9兆円
どう変わるの?
国から画一的に補助金で交付され
るより、市民により密着した行政運
営が実現できます!
32.0%
酒税
交
A
(※83.2 兆円)
A−B
地方の税金として、直接地方に入
ると『自主財源』として、地方それ
ぞれの状況に応じて市民サービスに
使えるようになります。
所得税
地方全体の支出 地方全体の収入
国5.5 対 地方4.5
42兆円
法定率
※平成 18 年度地方財政計画より
本当は、18.8兆円必要なのに、国
と地方が4.1兆円を臨時の借入等に
より補っています。
18.8兆円を確保するには、それぞ
れの税目について、10ポイント程度
あり方の見直しの議論を、 の引上げが必要!
地方交付税を削減するな
ら、国民にとって必要な行
政サービスのあり方を見
直す必要があります。
国は是非、地方と一緒に議
論してください!
例えば所得税
32.0%⇒42.4%
※指定都市市長会は、三位一体の改革が、地方分権を実現するためには不十分なものであ
ったため、あらゆる機会を捉えて、国等へ意見を表明しています
- 46 -
4 道州制
(1)国の道州制の議論
○
道州制の導入については、かなり以前から国の地方制度調査会などで議論
されてきました。こうした状況の中、地方分権改革の推進による国から地方
への権限移譲や、市町村合併の急速な進展による都道府県の役割の減少に伴
い、道州制の導入に向けた議論が本格化しました。
○
国においては、平成16年3月に第28次地方制度調査会が設置され、
平成18年 2 月には「道州制のあり方に関する答申」が取りまとめられました。
また、政府が公表する「骨太の方針」への明記や、我が国で初めて「道州制」
の文言が入った「道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律」の制
定が行われました。さらには、内閣の道州制担当大臣の下に「道州制ビジョン
懇談会」が設置され、道州制の実現に向けて、活発な議論が行われました。
○
こうした中で、平成21年9月に発足した民主党を中心とした政権におい
ては、平成22年6月に閣議決定された地域主権戦略大綱に、
「地域主権改革
を推進する中で(中略)地域の自主的判断を尊重しながら、いわゆる「道州
制」についての検討も射程に入れていく」と示されたものの、具体的な議論
には至りませんでした。
○
平成24年12月に発足した自民党を中心とした政権においては、
「道州制
の導入の推進」を掲げ、内閣に道州制担当大臣を設置するなど、道州制の実
現に向けて、積極的な姿勢を示しています。
- 47 -
道州制のあり方に関する答申(平成18年2月28日)の骨子
1 都道府県制度について
○ 現在の都道府県制度のままで、社会経済情勢の変化に対応できるか。
一層の地方分権改革の担い手たり得るか。
① 市町村合併の進展等の影響
② 都道府県を越える広域行政課題の増加
③ 地方分権改革の確かな担い手の必要
2 広域自治体改革と道州制
○ 広域自治体改革は、①都道府県制度に関する問題への対応にとどまらず、②国のか
たちの見直しにかかわる改革として位置づけることが考えられる。
○ すなわち、広域自治体改革を通じて国と地方双方の政府を再構築し、新しい政府像※
の確立を目指すもの。このことは、国家的課題への高い問題解決能力を有する政府を
実現する方途でもある。
※ 「国の役割を本来果たすべきものに重点化して、内政は広く地方公共団体が担う
ことを基本とする」
○ こうした見地に立つならば、その具体策としては道州制の導入が適当と考えられる。
3 道州制の制度設計
(1) 検討の方向
① 地方分権を推進し、地方自治を充実強化する。
② 自立的で活力ある圏域の実現を目指す。
③ 国と地方を通じた効率的な行政システムを構築する。
(2) 基本的な制度設計
① 道州の位置づけ
・広域自治体として都道府県に代えて道州を置く。道州及び市町村の二層制。
② 道州の区域→ 次頁参照
③ 道州への移行方法
・原則として全国同時に移行。ただし、関係都道府県と国の協議により先行して移
行できる。
④ 道州の事務
・都道府県が実施している事務は大幅に市町村に移譲し、道州は広域事務を担う役
割に軸足を移す。
・現在国(特に地方支分部局)が実施している事務は、できる限り道州に移譲。
⑤ 議会・執行機関
・議決機関として議会を置く。議員は道州の住民が直接選挙。
・道州の執行機関として長を置く。長は道州の住民が直接選挙。長の多選は禁止。
⑥ 道州制の下における税財政制度
・国からの事務移譲に伴う適切な税源移譲を実施。
・偏在度の低い税目を中心とした地方税の充実などを図り、分権型社会に対応し得
る地方税体系を実現。
・税源と財政需要に応じた適切な財政調整制度を検討。
- 48 -
4 道州制の導入に関する課題
○ 道州制に関わる検討課題は広範※。また、道州の設置と都道府県の廃止は、我が国
の圏域構造を将来にわたり方向づけ、国民生活にも大きな影響。
※ 国の政治行政制度のあり方、国・地方の行政組織のあり方、国・地方を通じた行
政改革との関係など
○ 道州制の導入に関する判断は、広範な問題に関する国民的な論議の動向を踏まえて
行われるべき。
政府においては、引き続き検討を進め、論議の深まりに資するよう適切な役割を果
たしていく必要。道州制の導入への気運が高まる場合に、推進法制を整備すること
も考えられる。
○ 答申を基礎として、今後、国民的な論議が幅広く行われることを期待。
■道州の区域例(いずれも東京都を一つの道州とすることも検討)
【道州制の区域例(いずれも東京都を一つの道州とすることも検討)
】
区域例(11 道州)
区域例(9 道州)
北海道
北海道
東
近
北
北
近
畿
北関東信越
中国・四国
中
東
陸
畿
北関東
国
南関東
南関東
中
部
東
四
九
州
沖
縄
九
州
北
海
国
沖
縄
区域例(13 道州)
北海道
■参考:本市が属する道州の区域道州の区域
●東海州(愛知・岐阜・三重・静岡)
人口 15 百万人 面積 28 千 km2
●中部州(愛知・岐阜・三重・静岡・石川・富山)
人口 17 百万人 面積 35 千 km2
名古屋市 人口 2.2 百万人 面積 326km2
愛知県
人口 7.3 百万人 面積 5,162km2
北東北
北
近
中
陸
北関東
国
南関東
北九州
東
四
南九州
南東北
畿
海
国
沖
縄
- 49 -
(2)道州制下における大都市制度のあり方
○
道州制の導入は、地方自治制度の大改革であることから、本市が大都市制
度の研究を進めるにあたっては、道州制を見据えた制度設計が必要となって
きます。
○
しかしながら、第28次地方制度調査会においては、道州制下における大
都市制度のあり方について、ほとんど議論がなされておらず、
「指定都市は歴
史的に都道府県並みとされてきたが、道州制に移行すると、人口も面積も大
幅に拡大されることとなり、指定都市は道州並みといえなくなるため、あえ
て特例制度を設ける必要があるのか」という意見が出されるなど、指定都市
市長会の考え方と大きな開きが生じています。
○
このため、指定都市市長会において、平成18年1月に「道州制を見据え
た新たな大都市制度の在り方についての提言」を取りまとめ、第28次地方
制度調査会の委員等に対し、分権型社会における基礎自治体のあり方の方向
付け、新たな地方自治制度を構築していくうえでのリーディングモデルとな
る新たな大都市制度について、十分な調査審議を進めていくよう強く要請し
ました。
- 50 -
道州制における大都市制度のあり方について∼第28次地方制度調査会資料より∼
Ⅰ 問題意識
○ 道州制の導入に伴い、国の役割は真に国が果たすべきものに重点化され、国の事務
の相当部分が地方に移譲される。
国から移譲される事務及び現在の都道府県の事務は、市町村の規模・能力に応じて、
できる限り市町村に移譲されることが原則となり、道州は国から移譲される事務を主
体とした広域的な事務を中心に担うこととなる。
○
すなわち、道州制の下では、十分な規模・能力を有しない市町村を前提に都道府県
が広範な補完機能を担ってきた現在のあり方は見直され、新たな「道州と市町村の関
係」が構築される必要があると考えられる。
○
そのうち、道州制における大都市制度(道州との関係における事務配分や組織等に
関して、一般の市とは大きく異なる特例を認める制度)のあり方については、「どの
ような都市について大都市制度を設ける必要があるか」、道州が現在の都道府県に比
べて相当広く、役割も変化する中で「道州と大都市の包括関係はどうあるべきか」と
いった見地からの検討が求められる。
○
また、高い人口集積が存する大都市においても、「住民に身近な基礎自治体」とし
ての機能を果たすため、大都市内における行政主体のあり方についても検討が必要と
なる。
Ⅱ 検討の視点
1 どのような都市について大都市制度を設けるべきか
○ 合併の進展により市町村が相当の規模・能力を備えることを前提としても、さら
に大都市制度を設ける必要のある都市とはどのようなものか。
高度な人口・経済社会機能の集積といった大都市属性を有する特別な都市に限ら
れるのではないか。
① 現在の指定都市についてどう考えるのか。一定規模以上の指定都市を想定すべ
きか。
② 東京都はこうした大都市属性が特に顕著であると考えるのか。
その場合、他の大都市と同様の制度でよいか。
○
大都市制度は、現在の指定都市又は東京都(区部)の区域を単位として適用され
るべきか。
指定都市等と一体的な圏域を形成している周辺市町村を合わせた区域を大都市
と捉えて適用することは考えられるか。(この場合、現在の指定都市等及び周辺市
町村を基礎自治体と捉え、これを包括する地方公共団体を新たな広域自治体(現在
の都に相当)と位置づけることも考えられるか。)
2
道州と大都市の包括関係はどうあるべきか
道州の区域が現在の都道府県に比べ相当広域なものとなり、またその役割も広域
的なものに重点化されることを前提とすれば、大都市を含む全ての市町村は道州に
包括されることが原則と考えるべきではないか。
○
○
ただし、首都等の限られた大都市については、その区域をもって、一般の道州か
ら独立した「大都市州(仮称)」と位置づけ、大都市の事務と併せて道州の事務も
処理することも考えられるか。
- 51 -
3
道州制の下における大都市内の行政主体をどう考えるか
○ 道州制の下における大都市内の行政主体は、行政区で足りるか、法人区とするこ
とが必要か。
① 大都市の行政区画としての行政区。
② 地方公共団体たる法人区(公選の議事機関や長を置くことがあり得る。)
(指定都市等と一体的な圏域を形成している周辺市町村も合わせた区域を大都市と
捉える場合には、現在の指定都市等の区域には法人区を置きつつ、周辺市町村は
引き続き市町村とすることも考えられるか。)
○
特に「大都市州」を設ける場合、「大都市州」内の行政主体のあり方をどう考え
るか。
大都市及び道州にわたる広範な事務を処理する「大都市州」においても、住民に
身近な行政主体の充実が求められることから、法人区を置くこととすべきか。
Ⅲ
大都市制度のイメージ
○道州と大都市の関係について考え得る組合せは次のとおり。
大都市州
道
大都市州
大 都 市
大都市
現在の指定都
市等の区域
法 人 区
一般の道州か
ら独立した
「大都市州」
を置くもの
法人区
周 辺市
町 村の
区域
市
町
村
州
新たな広域
自治体
現在の指定都
市等の区域
行
政 区
or
法 人 区
周辺市
町村の
区域
法人区
市
町
村
市
町
一般の道州か 道州内に大都 道州内に大都 中規模都市
ら 独 立 し た 市を置くもの 市を置くもの
「大都市州」
を置くもの
(現 在 の 指 定 都 (現 在 の 指 定 都
市等の区域のみ) 市等に周辺市町
村を合わせた区
域に拡大)
(現 在 の 指 定 都 (現 在 の 指 定 都
市等の区域のみ) 市等に周辺市町
村を合わせた区
域に拡大)
○中核市
○東京都(区 ○東京都
○東京都(区 ○東京都
○指定都市及 ○特例市
部)
部)
○一定規模以
び周辺市町 ○その他の一定
上の指定都 ○指定都市
の規模を有す
村
市及び周辺
る市
市町村
現行制度における都市の類型
- 52 -
村
道州制を見据えた新たな大都市制度の在り方についての提言
(平成18年1月 指定都市市長会)の概要
1
事務権限
【基本的な考え方】
●
「基礎自治体優先の原則」を徹底
・「広域事務」「連絡調整事務」等、真に道州が担うべき事務以外は、すべて
一般的・網羅的に指定都市の事務とする。
●
道府県から指定都市に事務権限を移譲することによるメリット
・指定都市が区役所その他の行政資源を活用して実施することにより、住民
ニーズをより一層反映した事業展開や、住民にとってより身近な場所でよ
りきめ細かい行政サービスを提供することが可能となる。
● 道州による補完についての選択性
・道州の補完を必要とする事務は、指定都市の事務と位置づけた上で、指定都
市が道州と協議して委託し、又は道州と共同で処理することができることと
する。
【指定都市が担う事務の具体例】
◇都市計画に係るすべての許可・監督・決定(一元化)
◇一級河川・二級河川の管理(一元化) ◇一般国道の管理(一元化)
◇医療計画の策定 ◇中小企業振興対策(一元化) ◇職業訓練(能力開発等)
◇警察のうち交通規制、風俗警察、街頭犯罪等の軽犯罪などにかかるもの 等
2
事務配分に対応した税源移譲
【基本的な考え方】
● 大都市の事務権限に見合った自主財源を、地方税を基本に制度的に保障す
る税財政制度が設けられることが必要不可欠
■道州制のもとでの地方行政体制の概念図
■道州制のもとでの地方行政体制の概念図
現行の
事務配分
道州制のもとで
の事務配分
道州の事務
国の事務
道
州
市町村の事務
市町村の事務
都道府県の事務
市町村の共同処理若しくは指定都
市への委託又は道州への委託
指定都市
市町村
【ポイント】
【ポイント】
○道州が担う事務は、広域事務(市町村の共同処理等で対応できないものに限る。)や連絡調整事務などに限定する。
○それ以外の事務については「補完性の原理」
、「近接性の原理」に基づき、すべて市町村が担うことを原則とする。
○ 道州が担う事務は、広域事務(市町村の共同処理等で対応できないものに限る。
)や連絡調整事務などに限定する。
○市町村が事務処理にあたって補完を必要とするときは、市町村の共同処理や指定都市・道州に対する事務の委託を行う。
○ それ以外の事務については「補完性の原理」
、
「近接性の原理」に基づき、すべて市町村が担うことを原則とする。
○ 市町村が事務処理にあたって補完を必要とするときは、市町村の共同処理や指定都市・道州に対する事務の委託を行う。
※指定都市はそれぞれ、その圏域における役割等に差異があるため、画一的な制度ではなく、多様性に応じ
た弾力的な制度とする。
- 53 -
■第28次地方制度調査会資料をベースにした「道州と大都市との役割分担の
イメージ」について
第24回専門小委員会資料
大分類
1.
社会資
本整備
小分類
道路
事務
道路の管理
高速自動車
国道
一般国道
都道府県
市町村道
一級河川
河川
港湾
河川の管理
港湾の管理
空港の管理
(原則)
(基幹的なもの)
(広域)
(広域)
(基幹的な水 系
で複数の道州に
わたるもの)
都市計画
土地区画
整理
建築
土地改良
屋外広告
物
2.
産業・
経済
中小企業
(地域完結)
市町村のみが実施
(大都市圏域以外)
大都市が区分
市町村のみが実施
大都市が許可
市町村のみが実施
大都市が認可
市町村のみが実施
市町村のみが実施
市町村のみが実施
(地域完結)
大都市が許可
大都市が認可
大都市が実施
大都市が実施
市町村のみが実施
大都市が実施
高度化事業計
画の認定
基本計画作成、高
度化事業構想認定
道州の事務を含め
大都市が実施
事業者への指
導助言(広域)
事業者への指導助
言(地域完結)
大都市が実施
産業クラスター
計画の策定・実
施
市町村施策との連
携
道州と大都市の共
通事務
(広域)
(地域完結)
大都市が実施
市町村のみが実施
大都市が実施
市町村のみが実施
大都市が実施
(地域完結)
大都市が実施
(広域)
(広域)
道州のみが実
施
道州のみが実
施
旅行業の登録
観光振興
ホテル及び旅館の登録
- 54 -
道州が管理
(原則)
(地域完結)
市町村のみが実施
(地域完結)
市町村のみが実施
(大都市圏域)
流通(流通業務施設の整備
に関する基本方針の策定)
大都市が管理
道州又は大都市が
管理
大都市が管理
大都市が管理
大都市が管理
大都市が指定
大都市が管理
(広域)
伝統的工芸品産業の振興
(振興計画の認定)
商店街整備(商店街整備計
画の認定)
商工会議所・商工会(設立
認可、指導監督)
大都市が管理
国が管理
道州のみが実
施
道州のみが実
施
(基幹的なもの)
(広域)
基本方針の策
定
大都市が管理
大都市が管理
国のみが実施
第二種空港
大都市が管理
大都市が管理
市町村のみが実施
地域経済活性化(産業クラ
スター計画の策定・実施)
産業政策
(地域完結)
(地域完結)
市町村のみが実施
道州のみが実
施
重要港湾、
地方港湾
都市公園の管理
砂防施設の管理
下水道の管理
保安林の指定
公営住宅の管理
市街化区域と市街化調整区
域の区分
開発行為の許可
市街地再開発(組合の設立
及び個人施行の認可)
建築行為の許可
換地計画の認可
建築確認
土地改良事業
屋外広告物(許可、はり紙
の除去)
基本方針・基
本 計画 、 事業
中 心 市 街 構想等の認定
地 の 活 性 など
化
認定高度化事
業者への指
導・助言
市町村
(原則)
(広域)
第三種空港
都市公園
砂防
下水道
保安林
公営住宅
道州
(基幹的なもの)
二級河川
準用河川
特定重要港
湾
第一種空港
空港
国
大都市地域におけ
る道州と大都市の役
割分担のイメージ
原則として道州が管
理
道州が実施
大都市が実施
第24回専門小委員会資料
大分類
小分類
事務
国
農地転用の許可
農業振興
地域制度
農林水産
基本指針・計
画など
農用地等の確保
等に関する基本
指針の策定
農業振興地域
の指定
農用地の開発(開発行為の
許可)
漁業許可(指定漁業の認
可、漁業の免許)
エネルギ
ー
公正取引
3.
交通・
通信
不当景品類及び不当表示防
止
鉄道事業の許可
旅客自動
車運送事
業の許可
交通
放送・
通信
4.
雇用・
労働
労働
地域整備基本方
針の策定
地域整備計画の策
定
道州の事務を含め
大都市が実施
市町村のみが実施
大都市が実施
市町村のみが実施
大都市が実施
(市町村の区域
を超えるもの)
市町村
道州が実施
(市町村の区域を
超えないもの)
大都市が認可
国のみが実施
国が許可
国のみが実施
国が実施
市町村のみが実施
国のみが実施
道州への技術的
助言及び勧告、
資料の要求、是
正の要求
国のみが実施
大都市が許可
国が実施
事業者に対する
指導監督
道州が実施
国が許可
営業の許可
道州のみが実施
大都市が許可
運賃・料金の
認可
道州のみが実施
大都市が認可
道州のみが実施
道州が認可
道州のみが実施
道州のみが実施
道州のみが実施
道州が認可
道州が実施
道州が実施
貨物自動車運送 事業の認
可
旅客定期航路事業の認可
内航海運業者の登録
自動車の新規登録
航空管制(管制区の指定告
示、航空機の登録等)
一般放送事業者に対する認
可等
有線テレビジョン放送事業
者に対する許可等
電気通信事業の登録
電波監理(無線局開設の免
許、無線従事者の免許)
国のみが実施
国が実施
国のみが実施
国が実施
国のみが実施
国が実施
国のみが実施
国が実施
国のみが実施
国が実施
職業安定(無料職業紹介)
雇用
(地域完結)
道州
道州のみが実施
農業協同組合の設立認可
電気事業者の許可
核原料物質又は 核燃料物
質の製錬事業者の指定(申
請に関する経由事務)
高圧ガスの規制(製造、販
売・貯蔵の許可)
私的独占の禁止(行為の差
止め等)
(広域)
大都市地域におけ
る道州と大都市の役
割分担のイメージ
大都市が許可
職業能力開発
大学校等の設
置
職業能力開発
職業訓練
短期大学校等
の設置
職業能力開発
校の設置
労使紛争の解決(斡旋、調
停、仲裁)
労働基準の監督(労基法の
臨検・尋問・許可等、労基署
の監督)
(重複して実施)
(原則)
(基幹的なもの)
国が実施
道州と大都市の共
通事務
道州が実施
市町村が実施
道州のみが実施
国のみが実施
- 55 -
道州と大都市の共
通事務
大都市が実施
道州が実施
国が実施
第24回専門小委員会資料
大分類
小分類
5.
福祉・
健康
事務
国
道州
生活保護(生活保護の実
施、保護施設の設置)
市町村のみが実施
介護事業者の指
定
事業者指定
老人福祉
障害者福
祉
児童福祉
母子福祉
福祉・
健康
介護老人施設
の開設許可
養老・特養の
設置認可
福祉サービス
の実施
厚生施設
手帳の交付
相談、施 設へ
の入所
児童相談所等
福祉施設の設
置
保育所等の設
置認可
相談員の委嘱
福祉基金の貸
付
訪問指導
市町村
厚生国立施設
(基幹的なもの)
(基幹的なもの)
大都市地域におけ
る道州と大都市の役
割分担のイメージ
大都市が実施
大都市が指定
市町村のみが実施
大都市が許可
市町村のみが実施
大都市が認可
市町村の連絡調
整
市町村のみが実施
大都市が実施
厚生国立施設
(広域的なもの)
厚生相談所
(広域的なもの)
市町村のみが実施
厚生国立施設は道
州が実施
大都市が実施
市町村のみが実施
大都市が実施
(原則)
大都市が設置
市町村のみが実施
大都市が認可
市町村のみが実施
大都市が実施
市町村のみが実施
大都市が実施
市町村のみが実施
大都市が実施
公立病院
独立国立病院機
構の運営
(高度医療・広
域)
(原則)
道州と大都市の共
通事務
医療法人(医療法人の設立
許可)
広域医療法人の
設立許可
(市町村区域を
超えるもの)
(市町村区域を超え
ないもの)
大都市が許可
(市町村区域を
超えるもの)
(市町村区域を超え
ないもの)
大都市が許可
病院(病院の開設、変更等
の許可)
製造販売業
の許可
販売業の許
医薬品
可
薬局の開設
許可
麻薬(麻薬等薬物取締)
感染症
難病
国のみが実施
国が許可
市町村のみが実施
道州のみが実施
大都市が許可
国のみが実施
緊急時の道州に
対する受診の指
示
感染が疑われる
者に対する受診
勧告
国が実施
大都市が勧告
研究開発等
難病対策
道州と大都市の共
通事務
生活衛生(墓地・火葬場の経
営許可、埋葬・火葬の許可)
水道事業
民生委員
大都市が許可
(広域)
定数の決
定、推薦
協議会の区
域の設定
市町村のみが実施
大都市が許可
(地域完結)
大都市が実施
市町村のみが実施
大都市が実施
市町村のみが実施
大都市が実施
※「道州制を見据えた新たな大都市制度の在り方についての提言(平成18年1月)」
(指定都
市市長会)、
「新たな大都市制度のあり方に関する報告(平成15年8月、平成18年3月)
」
(大阪市)、
「第28次地方制度調査会提出資料」を基に作成
- 56 -
5 第二期分権改革
●
第二期分権改革は、平成18年12月の「地方分権改革推進
法」の成立以来、現在にわたって進められている改革であり、
地方分権改革推進委員会の勧告に基づき、義務付け・枠付けの
見直しや都道府県から基礎自治体への権限移譲が行われていま
す。また、
「国と地方の協議の場に関する法律」の成立により、
地方自治に影響を及ぼす国の施策の企画及び立案並びに実施に
ついて、関係各大臣と地方六団体の代表者が協議を行うことが
法制化されました。
●
本市においても、従来国が定めていた施設・公物の設置管理
基準を条例により制定するなど、分権改革に対応した取組みを
進めているところです。
●
地方分権改革推進委員会の勧告の内容が、実現に至っていな
い事項も多数残っているため、今後の国の積極的な分権改革が
期待されます。
(1)第二期分権改革の意義と動向
○
第二期分権改革は、平成18年12月の「地方分権改革推進法」の成立以
来、現在にわたって進められている改革であり、
「国及び地方公共団体が分担
すべき役割を明確にする」
「地方公共団体の自主性及び自立性を高める」を基
本理念として掲げられています。
○
主な改革の取組として、地方分権改革推進委員会の勧告に基づいた義務付
け・枠付けの見直しや都道府県から基礎自治体への権限移譲が進められてい
ます。また、
「国と地方の協議の場に関する法律」の成立により、地方自治に
影響を及ぼす国の施策の企画及び立案並びに実施について、関係各大臣と地
方六団体の代表者が協議を行うことが法制化されました。
- 57 -
第二期地方分権改革の動向
2006年(平成18年)
地方分権改革推進法の成立
2007年(平成19年)
4月
地方分権改革推進委員会が発足
2008年(平成20年)
5月
第1次勧告
12月
第2次勧告
2009年(平成21年)10月
第3次勧告
11月
第4次勧告
2009年(平成21年)11月
地域主権戦略会議を設置
2009年(平成21年)12月
地方分権改革推進計画を閣議決定
2010年(平成22年)
3月
地域主権改革関連法案を国会に提出
2010年(平成22年)
6月
地域主権戦略大綱を閣議決定
2010年(平成22年)12月
アクション・プラン∼出先機関の原則廃止に
向けて∼の閣議決定
2011年(平成23年)
4月
地域の自主性及び自立性を高めるための改革
の推進を図るための関係法律の整備に関する
法律案(第2次一括法)を国会に提出
2011年(平成23年)
5月
地域主権改革関連法が成立
2011年(平成23年)
8月
地域の自主性及び自立性を高めるための改革
の推進を図るための関係法律の整備に関する
法律(第2次一括法)が成立
2011年(平成23年)11月
義務付け・枠付けの更なる見直しを閣議決定
2012年(平成24年)
地域の自主性及び自立性を高めるための改革
の推進を図るための関係法律の整備に関する
法律案(第3次一括法)を国会に提出
3月
2012年(平成24年)11月
地域主権推進大綱を閣議決定
2013年(平成25年)
3月
地方分権改革推進本部を設置
2013年(平成25年)
3月
義務付け・枠付けの第4次見直しを閣議決定
- 58 -
(2)第二期分権改革で取り組まれている主な事項の概要
ア.地方分権改革推進法の概要
事
項
施
行
平成19年4月1日
(3年間の時限法のため平成22年3月31日に失効)
目
的
地方分権改革を総合的かつ計画的に推進する。
基本理念
内
容
地方分権改革の推進は、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実
現を図ることを基本として、次の基本理念に基づいて行う。
・ 国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にする
・ 地方公共団体の自主性及び自立性を高める
ことによって、地方公共団体が自らの判断と責任において行政を
運営することを促進する。
○
主な内容
政府は、地方分権改革の推進に関する施策の総合的かつ計画
的な推進を図るため、講ずべき必要な法制上又は財産上の措置
その他の措置を定めた「地方分権改革推進計画」を作成する。
○ 内閣府に地方分権改革推進委員会を設置する。
イ. 地方分権改革推進委員会の概要
事
項
内
容
○
所掌事務
地方分権改革の推進に関する基本的事項について調査審議
し、その結果に基づいて「地方分権改革推進計画」の作成のた
めの具体的な指針を内閣総理大臣に勧告する。
○ 地方分権改革の推進に関する重要事項について、内閣総理大
臣に意見を述べることができる。
委
(委 員 長)丹羽宇一郎 伊藤忠商事株式会社取締役会長
(委員長代理)西尾
勝
財団法人東京市政調査会理事長
井伊 雅子 一橋大学国際・公共政策大学院教授
猪瀬 直樹 作家・東京都副知事
小早川光郎 東京大学大学院法学政治学研究科教授
露木 順一 神奈川県開成町長
横尾 俊彦 佐賀県多久市長
※役職は、平成21年11月時点のもの
員
- 59 -
ウ.地方分権改革推進委員会の第1次勧告(平成20年5月28日)の概要
第1章
国と地方の役割分担の基本的な考え方
・「地方が主役の国づくり」に向けた今次分権改革の理念と課題
・国と地方の役割分担の見直し
・広域自治体と基礎自治体の役割分担(基礎自治体優先の原則)
第2章
重点行政分野の抜本的見直し
・くらしづくり分野関係(幼保一元化、教育、医療、生活保護、福祉
・まちづくり分野関係(土地利用(都市計画、農地等)、道路、河川
第3章
等)
等)
基礎自治体への権限移譲と自由度の拡大
(1)基礎自治体への権限移譲の推進
・64法律、359の事務権限を都道府県から市町村へ移譲
(2)補助対象財産の財産処分(転用、譲渡等)の弾力化
・原則、10年経過後の財産処分は、国庫納付不要かつ届出・報告制へ
・10年経過前でも、災害や市町村合併等に伴う財産処分には十分配慮
⇒勧告後、速やかに実施(約300以上の国庫補助金等が対象)
第4章
現下の重要二課題について
・道路特定財源の一般財源化
・消費者行政の一元化
第5章
第2次勧告に向けた検討課題
・国の出先機関の改革の基本方向
・法制的な仕組みの横断的な見直し(義務付け・枠付け等)
- 60 -
エ.地方分権改革推進委員会の第2次勧告(平成20年12月8日)の概要
第1章 義務付け・枠付けの見直し
1 見直しの基本的考え方
・自治行政権、自治立法権、自治財政権を有する「完全自治体」としての
「地方政府」の確立
・国の法令を「上書き」する範囲拡大を含む条例制定権の拡充
・法制的観点から、地方自治体の自主性を強化し、自由度を拡大。自らの責
任で行政を実施する仕組みの構築
2 見直しの方針
(1)義務付け・枠付けの範囲設定
(2)見直しの具体的な方針
・メルクマール(判断基準)に該当しない条項については、
①廃止(単なる奨励にとどめることを含む)
②手続、判断基準等の全部の条例委任又は条例補正(「上書き」)の許容
③手続、判断基準等の一部の条例委任又は条例補正(「上書き」)の許容
のいずれかの見直しが必要。その際、①から③の順序で見直すべき
(3)義務付け・枠付けの存置を許容する場合等のメルクマールの設定
3 メルクマール該当・非該当の判断
・10,057条項について検討し、そのうち4,076条項については
見直しを行うべきと判断
4 今後の進め方
第2章 国の出先機関の見直し
(ア)基本的考え方
・国と地方の役割分担の見直し(住民に身近な行政は地方へ)
・「二重行政」の弊害の徹底排除
・国と地方を通じた行政の簡素化・効率化
・地域住民の目の届くものとする仕組み
・地方再生、地域振興
(イ)事務・権限の見直し
・出先機関(8府省15系統)の116事項の事務・権限を見直し
(ウ)事務・権限と組織の見直しに伴う人員・財源の取扱い
・人員の移管等の取扱い ⇒円滑な実施をはかる仕組みの検討
・財源の手当ての取扱い ⇒必要な財源確保に向け、引き続き検討
(エ)組織の見直し
・事務・権限の見直しに応じ、組織について見直し
・地域との連携やガバナンスの確保の仕組み
(オ)出先機関の改革の実現に向けて
・勧告の方向に沿って、改革の実現に向けた工程表となる計画を20年度内
に策定することと、推進のための体制づくりを、政府に要請
・道路、河川の移管に係る国と都道府県との個別協議については、都道府県
から要望があった区間等も含め、早急に結論を出すよう要請
- 61 -
オ.地方分権改革推進委員会の第3次勧告(平成21年10月7日)の概要
第1章 義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大
・第2次勧告において見直し対象とされた4,076条項のうち、特に問
題のある次の3つの重点事項について具体的に講ずべき見直し措置を提
示(892条項)
①自治体の施設・公物に対する国の設置管理基準
「廃止又は条例への委任」へ見直し(142条項)
②自治体の事務に対する国の関与(協議、同意、許可・認可・承認)
「廃止又はより弱い形態の関与」へ見直し(166条項)
③計画の策定及びその手続の自治体への義務付け
「廃止又は単なる奨励(「できる」「努める」等)」へ見直し(584条項)
*上記以外についても、第2次勧告に基づき、今後、具体的に見直し措置
を講ずるように要請
第2章 地方自治関係法制の見直し
・教育委員会及び農業委員会について、必置規制を見直して選択制に
・地方自治体の財務会計制度について、透明性の向上と自己責任の拡大を
図る観点から見直すべき
第3章 国と地方の協議の場の法制化
・国と地方の双方の代表者が一堂に集まる機会をできるだけ速やかに設け、
「国と地方の協議の場の法制化」について、率直に意見を交換し、双方の
合意を目指すべき
カ.地方分権改革推進委員会の第4次勧告(平成21年11月9日)の概要
Ⅰ
当面の課題
・現下の経済情勢及び新政権の政権公約等にかんがみ、特に重要な事項に
つき勧告
1 地方交付税の総額の確保及び法定率の引上げ
2 直轄事業負担金制度の改革
3 自治体への事務・権限の移譲と必要な財源等の確保
4 国庫補助負担金の一括交付金化に関しての留意点
5 自動車関係諸税の暫定税率の見直しに際しての留意点
6 国と地方の事実上の協議の早急な開始
Ⅱ 中長期の課題
・社会的、経済的に安定した時節の課題について、今から議論を深め、準
備を整えることを強く期待
1 地方税制改革
4 地方債
2 国庫補助負担金の整理
5 財政規律の確保
3 地方交付税
- 62 -
キ.地域主権戦略会議の概要
事
項
設
置
平成21年11月17日(閣議決定)
的
地域のことは地域に住む住民が決める「地域主権」を早期に
確立する観点から、「地域主権」に資する改革に関する施策を
検討し、実施するとともに、地方分権改革推進委員会の勧告を
踏まえた施策を実施するため、内閣府に設置する。
目
内
容
議 長:内閣総理大臣
副議長:内閣府特命担当大臣(地域主権推進)
構成員:総務大臣
財務大臣
内閣官房長官
国家戦略担当大臣
内閣府特命担当大臣(行政刷新)
その他内閣総理大臣が指名する国務大臣
内閣総理大臣が指名する有識者
※平成22年10月8日時点
委
員
審議内容
【会議設置当初の有識者の委員】
<地方自治体代表>
北橋 健治 北九州市長
上田 清司 埼玉県知事
橋下
徹
大阪府知事
<有識者代表>
小早川光郎 東京大学大学院法学政治学研究科教授
北川 正恭 早稲田大学大学院公共経営研究科教授
神野 直彦 関西学院大学人間福祉学部教授
前田 正子 財団法人横浜市国際交流協会理事長
・地域主権戦略大綱の策定に向けて
・地域主権戦略大綱の工程について
・義務付け・枠付けの見直し
・基礎自治体への権限移譲
・一括交付金
・出先機関改革
※「地方分権改革推進本部の設置について」
(平成25年3月8日閣議決定)に
より廃止
- 63 -
ク.地方分権改革推進計画の閣議決定(平成21年12月15日)の概要
第1 義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大
地方分権改革推進委員会の第3次勧告で見直すべきとされた892条項
のうち、121条項について見直しする。
(主なもの)
・公営住宅の整備基準、入居収入基準を自治体の条例に委任
・道路の構造基準を自治体の条例に委任
・保育所等の児童福祉施設の基準の一部を自治体の条例に委任
第2 国と地方の協議の場の法制化
国と地方の協議の場については、法制化に向けて、地方とも連携・協議し
つつ、政府内で検討し成案を得て法案を提出する。
第3 今後の地域主権改革の推進体制
地域主権戦略会議を中心に、地域主権改革の推進に資する諸課題について
更に検討・具現化し、改革の実現に向けた工程を明らかにした上で、スピー
ド感をもって改革を実行に移す。
ケ.地域主権改革関連法案を国会に提出(平成22年3月29日)
目
的
「地方分権改革推進計画」に掲げた取組み等を具体化した2法案
を国会に提出するもの
地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律
(第1次一括法)
地方分権改革推進計画を踏まえ、関係法律の整備(42法律)
を行う。
・義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大
内容 (主な内容)
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の条例委任
公営住宅の整備基準及び収入基準の条例委任
・内閣府の所掌事務の追加
名称
1
名称 国と地方の協議の場に関する法律
(協議の対象)
次に掲げる事項のうち重要なもの
・国と地方公共団体との役割分担に関する事項
2
内容 ・地方行政、地方財政、地方税制その他地方自治に関する事項
・経済財政政策、社会保障・教育・社会資本整備に関する政策そ
の他の政策に関する事項のうち、地方自治に影響を及ぼすと考
えられるもの
※平成23年4月28日に、一括法の題目中「地域主権改革」を「地域の自主
性及び自立性を高めるための改革」に改めるなどの修正を行い、法律が成立
- 64 -
コ.地域主権戦略大綱の閣議決定(平成22年6月22日)の概要
【趣
旨】
地域主権改革の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るた
め、当面講ずべき必要な法制上の措置その他の措置を定めるほか、今後お
おむね2∼3年を見据えた改革の諸課題に関する取組方針を明らかにする
もの。
【内 容】
第1 地域主権改革の全体像
国と地方の役割分担に係る「補完性の原則」に基づき、住民により身近
な基礎自治体を重視し、基礎自治体を地域における行政の中心的な役割を
担うものと位置付ける。
第2 義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大
・地方分権改革推進委員会の第3次勧告を受けたものから、528条項の
見直しを行い、所要の一括法案等を平成23年の通常国会に提出
(主なもの)
・公園等のバリアフリー化構造基準の条例委任
・地方債の発行に係る総務大臣・知事協議の一部見直し
第3 基礎自治体への権限移譲
・地方分権改革推進委員会の第1次勧告を受けたものから、68項目25
1条項について権限移譲を行うものとし、所要の一括法案等を平成23
年の通常国会に提出
(主なもの)
・区域区分、都市再開発方針等に係る都市計画決定(都道府県→指定都市)
第4 国の出先機関の原則廃止(抜本的な改革)
・「原則廃止」の姿勢の下、ゼロベースで見直すこととし、国と地方の役
割分担の見直しに伴う事務・権限の地方自治体への移譲等を進めた上
で、それに伴う組織の廃止・整理・合理化等の結論を得る
・「地方移譲」「国に残す」などの類型整理(
「事務・権限仕分け」)を実施
・各府省は、所管する出先機関の事務・権限仕分け(「自己仕分け」)を行
ない、結果を平成22年8月末までに地域主権戦略会議に報告
・個々の出先機関の取扱方針及び工程等を明らかにする「アクション・プ
ラン(仮称)」として平成22年内目途に策定
第5 ひも付き補助金の一括交付金化
・補助金、交付金等を保険・現金給付、サービス給付、投資に整理し、地
方の自由裁量拡大に寄与するものを対象とする
・各府省の枠にとらわれず、大きいブロックごとに使途を自由化
・国の箇所付けの廃止など、国の事前関与を縮小し事後チェックを重視す
る観点で手続きを抜本的に見直し
第6
地方税財源の充実確保
第7
直轄事業負担金の廃止
第8
地方政府基本法の制定(地方自治法の抜本見直し)
第9
自治体間連携・道州制
第10 緑の分権改革の推進
- 65 -
サ.アクション・プラン∼出先機関の原則廃止に向けて∼の閣議決定(平成
22年12月28日)の概要
1 出先機関の事務・権限をブロック単位で移譲することを推進
・広域連合制度を活用するための諸課題について検討を行った上で、新た
な広域行政制度を整備
・出先機関単位で全ての事務・権限を移譲することを基本
・移譲対象機関の職員の身分取扱い等に係る所要の措置を講ずる
・移譲される事務・権限の執行に必要な財源を確保(税源移譲も検討)
・平成24年通常国会に法案提出、26年度中の事務・権限の移譲を目指
す
2 地方自治体が特に移譲を要望している事務・権限の取扱い
・直轄道路
一般国道の直轄区間の移管については、一の都道府県内で完結するも
のについては原則移管することを基本とする。
・直轄河川
一級河川の直轄区間の移管については、一の都道府県内で完結する水
系に属するものについては原則移管することを基本とする。
・公共職業安定所(ハローワーク)
希望する地方自治体において、無料職業紹介、相談業務等を地方自治
体の主導の下、一体的に実施する。
当該一体的な実施を3年程度行い、その過程でもその成果と課題を十
分検証することとし、地方自治体への権限移譲について検討する。
シ.地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律
の整備に関する法律案(第2次一括法案)を国会に提出
(平成23年4月5日)
地域主権戦略大綱を踏まえ、関係法律(188法律)の整備を行う。
○基礎自治体への権限移譲(47法律)
(主なもの)
・区域区分、都市再開発方針等に係る都市計画決定(都道府県→指定都市)
・家庭用品販売業者への立入検査(都道府県→市)
・理・美容所などの衛生措置基準の設定(都道府県→保健所設置市)
○義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大(160法律)
(主なもの)
・公立高等学校の収容定員の基準の廃止
・福祉事務所設置の知事同意協議の同意を廃止
・構造改革特別区域計画の内容の例示化等
(注)19法律が重複
※平成23年8月26日に法律が成立。
- 66 -
ス.義務付け・枠付けの更なる見直しの閣議決定(平成23年11月29日)
の概要
1.義務付け・枠付け(4,076条項)の見直しの経緯
これまで2次の見直しを実施して、「施設・公物設置管理の基準」等の
1,216条項のうち、地方分権改革推進委員会第3次勧告で許容類型に該
当せず、見直すべきとされた事項889条項のうち636条項を見直し、他
の事項と含めて666条項の見直しを行った。
・第1次見直し−地方分権改革推進計画(平成21年12月閣議決定)
⇒第1次一括法(平成23年4月成立)
・第2次見直し−地域主権戦略大綱(平成22年6月閣議決定)
⇒第2次一括法(平成23年8月成立)
2.第3次見直しの概要とその主な例
次の3分野に係る1,212条項を対象に、許容類型を設定し、それに該
当しない事項(363条項)について検討を進め、291条項について見直
しを実施。
(1)地方からの提言等に係る事項
・都道府県交通安全対策会議の知事が必要と認める者の任命
・指定居宅介護支援事業の人員・運営に関する基準の条例委任
・地域包括支援センターの基準の条例委任
・農業委員会の選挙区の基準の見直し
(2)通知・届出・報告・公示・公告等
・農用地利用規程の公告の義務の廃止
・宅地造成工事規制区域の指定の大臣への報告の義務の廃止
(公表方法について地方の裁量があると確認するもの)
・貸金業者登録簿の閲覧
(3)職員等の資格・定数等
・消防長及び消防署長の資格の条例委任
・都道府県建築士審査会の委員の定数の廃止又は条例委任
・公害健康被害認定審査会の委員の上限数の廃止
(資格について地方の裁量があると確認するもの)
・私立学校審議会の委員の資格
3.今後の取組
・法律の改正により措置すべき事項については、所要の一括法案等を平成
24年通常国会に提出する
・今後の見直しについては、地方からの地域の実情に即した具体的な提案を
受けて、個別の義務付け・枠付けの見直しを検討することにより進めるこ
ととし、具体的方法については地域主権戦略会議で検討を行う
セ.地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律
の整備に関する法律案(第3次一括法案)を国会に提出
(平成24年3月29日)
義務付け・枠付けの更なる見直しを踏まえ、関係法律(69法律)の整備を行う。
(主なもの)
・指定居宅介護支援事業の人員・運営に関する基準の条例委任
・農用地利用規程の公告の義務の廃止
・消防長及び消防署長の資格の条例委任
・高齢者部分休業の期間の上限の廃止
※平成24年11月の衆議院解散により廃案
- 67 -
ソ.地域主権推進大綱の閣議決定(平成24年11月30日)の概要
「地域主権推進大綱」の趣旨
平成22年6月に閣議決定された地域主権戦略大綱に基づくこれまでの取
り組み成果を踏まえ、地域主権改革の一層の推進を図るために策定したもの。
「地域主権推進大綱」の内容
「地域主権戦略大綱」で定めた改革の意義や理念等を踏まえ、今後おおむね
2∼3年を見据えた改革の諸課題に関する取組方針を明らかにするもの。
第1
第2
第3
第4
第5
第6
第7
第8
第9
義務付け・枠付けの見直しと条例制定権拡大
基礎自治体への権限移譲
国の出先機関の原則廃止(抜本的な改革)
ひも付き補助金の一括交付金化
地方税財源の充実確保
直轄事業負担金の廃止
地方政府基本法の制定(地方自治法の見直し)
自治体間連携等(道州制を含む)
緑の分権改革の推進(地域主権型社会を支える地域活性化の取組の推進)
タ.地方分権改革推進本部の概要
事
項
設
置
平成25年3月8日(閣議決定)
目
的
地方分権改革の推進に関する施策の総合的な策定及び実施を
推進するために設置する。
構成員
内
本部長
副本部長
本部員
容
内閣総理大臣
内閣官房長官、内閣府特命担当大臣(地方分権改革)
他の全ての国務大臣
チ.義務付け・枠付けの第4次見直しの閣議決定(平成25年3月12日)
Ⅰ 第4次見直しの概要とその主な例
(1)義務付け・枠付けの見直し
・地方青少年問題協議会の委員資格要件の廃止
・介護保険の要介護認定調査を法人に委託する際の市町村公示義務の廃止
・都市計画区域の区域区分の指定都市における義務付けの見直し
(2)都道府県から基礎自治体への権限移譲
・市街地再開発事業における事業認可権限等を指定都市に移譲
・高度管理医療機器販売業等の許可、管理医療機器販売業等の届出等の権
限を保健所設置市及び特別区に移譲
(3)その他
・建設業や福祉施設等の許認可における法律又は条例上の取消基準(欠格
要件)に暴力団を追加できるように対応
Ⅱ 今後の取組
・法律改正に係る事項については基本的に、廃案となった第3次一括法案
に盛り込まれた事項と併せ、一括法案を今国会(4月上∼中旬)に提出
する予定。
- 68 -
(3)第二期分権改革に対応した本市の取り組み
ア.義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大
○
本市においては、第1次及び第2次一括法に応じて、児童福祉施設や公営
住宅等の施設・公物の設置管理基準を定めるため、平成24年度末までに、
条例の制定又は一部改正を行いました。また、一部の条例には本市の実情を
踏まえた独自基準を規定しました。
本市が独自基準を規定した条例の例
名古屋市児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例
【独自基準の内容】
¾ なごや子ども条例に基づき、子どもの健やかな育ちを児童福祉施設において保障する
ため、なごや子ども条例の理念にのっとり運営することとする。
¾ 防犯及び事故防止の意識を高めるとともに、緊急時の安全確保を図るため、防犯及び
事故の防止に関し必要な措置を講じることとする。
¾ 本市が東海地震、東南海・南海地震の想定区域であることを踏まえ、大規模災害に備
えるため、入所施設は 3 日間の生活に必要な食料及び飲料水の備蓄を義務化、通所施
設は一時的な滞在に必要な食料及び飲料水の備蓄を努力義務化する。
¾ 帳簿の保存について明確にするため、帳簿の性質、内容等に応じて市長が定める基準
により保存することとする。
¾ 暴力団の排除を明記するため、暴力団を利することとならないようにしなければなら
ないこととする。
¾ ほふくの開始時期の判断を適切に行うことは困難であることから、入所児童の安全を
確保するため、乳児室の面積を1.65㎡以上から3.3㎡以上に拡大する。
¾ 安定的な保育環境と適切な管理運営を確保するため、屋外遊戯場に代わるべき場所を
認める条件を限定的にする。
¾ 保育の観点からは、時間の長短にかかわらず、一般の認可保育所と同様の対応が必要
と考えるため、認定保育所の職員配置基準について、一般の認可保育所と同様の基準
とする。
¾ 待機児童がいる現状を踏まえ、一般の認可保育所の入所選考との均衡を図る必要があ
るため、私立認定保育所の入所選考の際に市と協議することとする。
- 69 -
名古屋市保護施設等の設備及び運営に関する基準を定める条例
【独自基準の内容】
¾ 職員の資質の向上のために研修の機会を確保するよう規定する。
¾ 漏えいを防止するための規定を明記するため、職員による秘密の保持及び施設による
秘密保持のための必要な措置について規定する。
¾ 本市が東海地震、東南海・南海地震の想定区域であることを踏まえ、大規模災害に備
えるため、入所施設は 3 日間の生活に必要な食料及び飲料水の備蓄を義務化、通所施
設は一時的な滞在に必要な食料及び飲料水の備蓄を努力義務化する。
¾ 報酬の返還等に対応するため、保護施設等(医療保護施設を除く。)は、利用者の処
遇の状況に関する帳簿をその完結日の属する年度の翌年度から起算して 5 年間保存
しなければならないこととする。
¾ 暴力団の排除を明記するため、暴力団を利することとならないようにしなければなら
ないこととする。
道路構造の技術的基準を定める条例
【独自基準の内容】
¾ 歩行者の安全対策として、狭い道路でも状況により歩道が設置できるようにするた
め、歩道幅員について、特別の理由によりやむを得ない場合は、1.5m まで縮小でき
る規定を設ける。
- 70 -
イ.基礎自治体への権限移譲
○
第2次一括法など地域主権戦略大綱に基づく法改正によって、本市には、
愛知県から次表の権限が移譲されました。これらの権限は、一部を除いて平
成24年4月1日より移譲され、現在は本市の権限として事務が進められて
います。
■地域主権戦略大綱に基づく法改正により、愛知県から本市に権限移譲された
事務一覧
法 律 名
関係省庁
移譲された事務権限
特定非営利活動促進法
特定非営利活動法人の設立認証、定款変更の認
証、報告徴収、立入検査等
災害対策基本法
災害派遣要請を求めた旨の市町村長から防衛大
臣等への通知
消費者庁
家庭用品品質表示法
家庭用品の販売業者に対する表示等の指示、違
反業者の公表、報告徴収、立入検査等
総 務 省
地方自治法
町及び字の区域の新設等の届出、告示
老人福祉法
有料老人ホーム設置の届出受理、立入検査、改善
命令
介護保険法
指定居住サービス事業者等の指定等、報告命令、
立入検査等
障害者自立支援法
指定障害福祉サービス事業者等の指定、報告命
令、立入検査等
理容師法
理容所の衛生措置基準の設定等
興行場法
興行所の衛生措置基準の設定等
旅館業法
旅館の構造設備基準及び衛生措置基準の設定等
公衆浴場法
公衆浴場の衛生等措置基準の設定等
クリーニング業法
クリーニング業者が講ずべき措置の基準設定
毒物及び劇物取締法
毒物・劇物業務上取扱者の届出受理、廃棄物の回
収命令、立入検査等
美容師法
美容所の衛生措置基準の設定等
薬事法
薬局の開設の許可、製造販売業等の許可、薬局
開設者等からの報告徴収、立入検査等
農地法
農地等の移転移動の許可
内 閣 府
厚生労働省
農林水産省
- 71 -
関係省庁
経済産業省
法 律 名
移譲された事務権限
ガス事業法
ガス用品の販売事業者からの報告徴収、立入検
査、提出命令
電気用品安全法
電気用品の販売事業者からの報告徴収、立入検
査、提出命令
液化石油ガスの保安確保
液化石油ガス器具等の販売事業者からの報告徴
及び取引の適正化に関す
収、立入検査、提出命令
る法律
特定製品の販売事業者等からの報告徴収、立入
消費生活用製品安全法
検査、提出命令
中小小売商業振興法
商店街整備計画、店舗集団化計画、共同店舗等整
備計画等の認定等
都市計画の決定(地域地区)
都市計画の決定(都市施設)
都市計画の決定(市街地開発事業)
国土交通省
都市計画法
都市計画の決定(市街地開発事業等予定区域)
都市計画の決定(区域区分)
都市計画の決定(都市再開発方針等)
都市計画の決定(都市施設)
環 境 省
環境基本法
騒音に係る環境基準の地域類型の指定
- 72 -
ウ.国の出先機関改革
①
国の出先機関改革に係る中部圏研究会
○
国の出先機関改革に対応して、本市も構成員となっている中部圏知事会議
に、
「国の出先機関改革に係る中部圏研究会」を設置し、国の出先機関の事務・
権限の受入に関する基礎的な調査を行いました。
「国の出先機関改革に係る中部圏研究会」検討状況報告(中間とりまとめ)
(平成23年7月25日)より作成
1.
調査の対象
○
対象とした事務等は、全国知事会の「国の出先機関原則廃止プロジェクトチーム」
報告書(H22.7.15)で、地方移管すべきとされた事務等のうち、中部圏に関係する7省
11機関(*)の事務等(内部管理事務等を除く)、計 252 事務等である。
*【調査対象機関】
総合通信局(総務省)、法務局・地方法務局(法務省)、地方厚生局、都道府県労働局(厚
生労働省)、地方農政局、森林管理局、漁業調整事務所(農林水産省)、経済産業局(経
済産業省)、地方整備局、地方運輸局(国土交通省)、地方環境事務所(環境省)
2.
国の出先機関の事務等毎の整理・検証
○
調査対象とした事務等の多くは、各県・市間の広域調整を図ることにより、既存の
体制(県・市毎)での受入が可能とされた。
○
既存の体制による受入が不可能とされた事務等は、その事務の性質上、広域的かつ
一体的に行う必要があり、責任主体が明確な『法人格を有する広域連携体制』で対応
する必要、あるいは、さらなる検討が必要とされた。
○
なお、既存の体制で受入が可能とされた事務等のうち、
「広域で活動する事業者等へ
の許認可、検査・監督、行政処分」の一連の事務等については、広域事故等への迅速
な対応や責任の所在をより明確にするため「法人格を有する広域連携体制」により受
け入れるべきとの意見もあった。
- 73 -
3.国の出先機関の管轄エリアの整理・検証
○
中部圏では、他の圏域とは異なり、国の出先機関の管轄エリアが各出先機関によっ
て様々。
○
そのため、既存の体制で事務等を受け入れるに当たっての広域的調整が必要なエリ
ア、あるいは「広域連携体制」を構築していくための構成県・市のエリアは、中部圏
においては一様ではなく、統一的な枠組みでの対応は困難。
(主な事項)
○
中部 9 県 1 市全体を管轄する出先機関はない。(9 県 1 市に最も近い管轄は、地
方環境事務所で7県を管轄)
○
管轄エリアは、東海地域、北陸地域の単位を基本に、関東地域、近畿地域、信越地
域、その他地域まで多様であり、一つの枠組みでの対応は困難。
- 74 -
■中部9県1市の国の出先機関の管轄エリア
新潟 富山 石川 福井 長野 静岡 岐阜 愛知 三重 滋賀
総合通信局
法務局・地方法務局
信越
北陸
関東
甲信越
名古屋
(東京法務
局管内)
信越
(名古屋法務局管内)
東海
近畿
関東
甲信越
名古屋
(東京法務局管内)
(名古屋法務局管内)
近畿
(大阪法務
局管内)
(上段:指揮監督)
新潟 富山 石川 福井 長野 静岡 岐阜 愛知 三重 滋賀
地方厚生局
関東
信越
都道府県労働局
新潟 富山 石川 福井 長野 静岡 岐阜 愛知 三重 滋賀
東海北陸
地方農政局
森林管理局
漁業調整事務所
経済産業局
(電気事業の許認可等)
(ガス事業の許認可等)
近畿
北陸
近畿中国
新潟
境港
関東
中部
近畿
東北
中部
(北陸支局)
(北陸支局)
地方整備局
東海北陸
関東
関東 中部
関東
関東
信越
中部 関東
−
国直轄
東海
中部
−
関東
中部
中部
中部
近畿 関東
(北陸支局)
関東
(北陸支局)
北陸
近畿 関東
−
近畿
中部
近畿
中部
近畿
中部
中部
中部
北陸
北陸
関東
中部
近畿
(道路事業の一部)
中部
近畿
近畿 中部
北陸
(港湾事業)
地方環境事務所
国直轄
中部
(河川関連事業の一部)
地方運輸局
近畿中国
中部
(北陸支局)
近畿
近畿
中部
中部
関東
中部
近畿
中部 北陸
信越
北陸信越
関東
新潟
中部
富山
石川
福井
- 75 -
中部
関東
長野
静岡
近畿
中部
岐阜
愛知
近畿
三重
滋賀
②
ハローワークとの就労支援施策の一体的な実施
(アクション・プランにかかる本市提案の実施)
○
本市は、国の「アクション・プラン∼出先機関の原則廃止に向けて∼(平
成22年閣議決定)」に基づき、平成23年5月に、国へ「ハローワークとの
就労支援施策の一体的な実施について(アクション・プランにかかる名古屋
市案)」の提案を行いました。この提案に基づき、本市と厚生労働省愛知労働
局が協定を締結し、一体となって就労支援事業を進めています。
ハローワークとの就労支援施策の一体的実施について
(アクション・プランにかかる名古屋市案)
1
目
的
ハローワークの職業紹介事務について愛知労働局と本市が一体的に実施することによ
り、本市の就労支援事業の強化を行う。
2
取り組み
<ステップ1>
平成23年6月より運営を開始する「なごやジョブサポートセンター」にハローワー
クの職業紹介に係る事務について以下の措置を行い、本市の就労支援事業の強化を図
る。
①ハローワーク求人端末を配置し、国職員の派遣を受ける
②受託事業者が行う職業相談とハローワークの求人情報の活用および紹介状交付等、
職業紹介事務を一体となって実施する
<ステップ2>
区役所において、ハローワーク求人端末を配置し、また国職員の派遣を受け、就労支
援窓口を設置する。
区役所における生活保護受給者、障害者、高齢者等就職困難者に対する各種住民サー
ビスとの一体的実施により、市民サービスの窓口である区役所での市民生活支援のワン
ストップサービスの実現を図る。
- 76 -
国への提案に基づく本市の取組状況
なごやジョブサポートセンターにおける一体的就労支援事業
1
設 置 趣 旨
なごやジョブサポートセンターでの個人のニーズに合わせたきめ細
かな就労支援に加え、ハローワークの強力な職業紹介機能を備えること
で、更なる就業機会の拡大と就職率の向上を目指す。
2
開 始 時 期
平成24年2月20日
3 設置する窓口 なごやジョブサポートセンター内「職業紹介支援室」
4
支 援 体 制
ハローワーク相談員2名とセンター相談員等が一体となって支援
5
支援の流れ
名古屋市と国が一体となった支援を実施
①センター専門相談員によるキャリアカウンセリング
②カウンセリングと併せて、ハローワークの職業紹介等を希望する方に
ついて「職業紹介支援室」を案内し、ハローワーク相談員によるハロ
ーワークの求人情報の紹介状交付などを実施
区役所における一体的就労支援事業
1
開設する窓口 中村区就労支援コーナー(中村区役所内)
南区就労支援コーナー(南区役所内)
※この他、平成25年度中に全区実施を要望中
2
開 始 時 期
3
事 業 概 要
平成25年1月15日
支援対象者(生活保護受給者等であって本事業による就労支援を必
要と認める方)に対し、区役所民生子ども課における就労支援及びハロ
ーワークが行う職業相談・紹介業務を一体的に実施。
4
支 援 体 制
相談員各区3名(ハローワークに所属する非常勤職員)と区役所民生
子ども課職員が一体となって支援
5
支援の流れ
①区役所民生子ども課の職員が支援対象者と職歴の把握等事前相談を
行い、必要な方について就労支援コーナー相談員に職業相談、紹介を
依頼
②支援対象者に対し、就労支援コーナー相談員による職業相談、職業紹
介を実施
③継続的に区職員・就労支援コーナー相談員が一体となった支援を実施
(3ヶ月を目途に行う。
)
- 77 -
6 第30次地方制度調査会
(1)第30次地方制度調査会の概要
○
地方制度調査会は、地方制度に関する重要事項を調査審議するため、内閣
総理大臣の諮問に応じて、地方制度調査会設置法(昭和28年公布)に基づ
きに設置されるものであり、平成23年8月には、第30次地方制度調査会
が以下のとおり設置されました。
設置日
平成 23 年 8 月 24 日
地方自治の一層の推進を図る観点から、下記の事項について、
調査審議を求める。
諮
内
問
容
・住民の意向をより一層地方公共団体の運営に反映できるように
する見地からの議会のあり方を始めとする住民自治のあり方
・我が国の社会経済、地域社会などの変容に対応した大都市制度
のあり方
・東日本大震災を踏まえた基礎自治体の担うべき役割や行政体制
のあり方
委 員
任期:2年
委員(30名)
【学識経験者18名】
・石 原 俊 彦
関西学院大学教授
・伊 藤 正 次
首都大学東京教授
・岩 崎 美紀子
筑波大学教授
★碓 井 光 明
明治大学教授
・江 藤 俊 昭
山梨学院大学教授
・太 田 匡 彦
東京大学教授
・大 貫 公 子
行政相談委員
・大 山 礼 子
駒澤大学教授
○畔 柳 信 雄
(株)三菱東京UFJ銀行相談役
・小 林 裕 彦
弁護士
・斎 藤
誠
東京大学教授
・田 中 里 沙
(株)宣伝会議取締役編集室長
・辻
琢 也
一橋大学教授
・中 村 廣 子
新宿区中里町町会会長、新宿区町会連合会常任理事
◎西 尾
勝
(公財)後藤・安田記念東京都市研究所理事長
・林
知 更
東京大学准教授
・林
美香子
キャスター・慶應義塾大学特任教授
・林
宜 嗣
関西学院大学教授
【国会議員6名】
【地方六団体6名】
臨時委員(2名)
・中 尾
修
(財)東京財団研究員
・林
文 子
横浜市長
(◎:会長、○:副会長、★:専門小委員会委員長)
※平成25年2月27日時点
- 78 -
(2)「大都市制度のあり方」に関する議論
○
平成24年1月17日に開催された第30次地方制度調査会第3回総会か
ら、
「大都市制度のあり方」の審議が開始されました。平成24年 2 月 16 日
に行われた第7回専門小委員会には、「特別自治市」「大阪都構想」が議題と
して取り上げられ、
「特別自治市」については、指定都市市長会を代表して阿
部川崎市長が説明を行いました。
○
大都市制度のあり方の議論については、地方六団体、指定都市市長会、
特別区長会など関係団体からの意見聴取を含め、計21回の専門小委員会に
よる審議が行われた結果、平成24年12月20日に「大都市制度について
の専門小委員会中間報告」が公表されました。
○
この中間報告では、指定都市に道府県の権限を大幅に移譲して二重行政を
解消するとされたものの、従来から指定都市市長会が提案してきた「特別自
治市」の制度化は、今後の検討課題として先送りされました。
○
今後は、委員の任期である平成25年8月を目途に、最終答申がまとめら
れ、政府が具体化を進めた後に、国会への関連法案の提出が予想されます。
大都市制度についての専門小委員会中間報告(平成24年12月20日)の要旨
○二重行政の解消に向けて、指定都市が処理できる事務については、できるだけ指定
都市に移譲することによって、同種の事務を処理する主体を極力一元化する。
○「都市内分権」による住民自治を強化するため、区の役割の拡充を検討する。
○人口20万人以上であれば、保健所を設置することにより中核市となるという形で、
中核市・特例市の両制度を統合する。
○都道府県から指定都市への事務と税財源の移譲を可能な限り進め、実質的に特別市
(仮称)に近づけることを目指すこととし、特別市(仮称)という新たな大都市の
カテゴリーを創設する場合の様々な課題について、引き続き検討する。
○大都市圏域における共通した行政課題に関する連絡調整等の枠組みについて、引き
続き検討する。
- 79 -
大都市制度についての専門小委員会中間報告(平成24年12月20日)
まえがき
(中略)
第1 大都市等をめぐる現状と課題
(我が国における大都市等の位置付け)
少子高齢化が進行し、我が国が人口減少社会となったことは否定できない事実で
ある。このことを前提にして、これからの我が国のあり方を真剣に考えていくこと
が必要である。人口減少下にあっても、経済を持続可能なものとし、国民が全国で
安心して快適な暮らしを営んでいけるような国づくりが必要となっている。
このためには、国民の暮らしを支え、経済をけん引していくのにふさわしい核と
なる都市やその圏域を戦略的に形成していくことが必要である。
人口減少社会に入った我が国において、三大都市圏の人口の比重は再び高まってい
く見込みである。
三大都市圏や地方の中枢都市を核とする圏域は、経済の成熟化、グローバル化の進
展など、構造的な転換期を迎える中で、引き続き我が国の経済をけん引する役割を果
たすことが必要である。
(大都市圏の抱える課題)
大都市圏、とりわけ三大都市圏は、これまで地方圏に比べて高齢化の進行が緩や
かであったが、団塊の世代を中心に今後急速に高齢化が進行していく。これまで地
方圏がその高齢化の進行に応じて徐々に対応してきた行政課題について、大都市圏、
とりわけ三大都市圏においては今後極めて短期間のうちに対策を講じることが必要
である。また、高齢者医療、介護や生活保護などの行政需要が急増することへの対
応や、独居老人や老老介護の問題など、家族やコミュニティの機能の低下への対応
も必要になる。一方で、人口減少に歯止めを掛けるためには、出生率を回復するこ
とが必要となる。大都市圏には若い世代が比較的多いことを踏まえると、大都市圏
は少子化対策においても果たすべき役割が大きい。
大都市圏においては、人を支えるコミュニティの機能が低下し、人と人とのつな
がりが希薄化している。人々の暮らしを支える対人サービスの重要性が高まる中で、
住民の視点から公共サービスを考えていくためにも、住民自治を拡充していくこと
が重要である。
また、高度経済成長期に整備した社会資本が一斉に更新時期にきており、これま
でと同様の社会資本を維持し続けるのかどうかなど、社会資本整備のあり方の見直
しも問われている。東日本大震災を教訓として、人口・産業が集中している大都市
圏においては、大規模災害時における住民の避難のあり方、生活機能や経済機能の
維持等への対策を講じていくことも必要である。
- 80 -
さらに、三大都市圏のように通勤、通学、経済活動等の範囲が、行政区域をはるか
に超えている大都市圏においては、大都市圏域を前提とした行政サービスの提供やそ
の調整などが必要である。
(地方の中枢都市圏の抱える課題)
地方の中枢都市を核とする圏域は、三大都市圏に先行して、すでに高齢化や人口
減少といった課題に直面してきた。地域住民が快適で安心して暮らせる都市環境を
確保するとともに、三大都市圏から人の流れを作るためにも、地域を支える拠点の
構築が課題となる。
このためには、地方の中枢都市を核に、都市機能、生活機能を確保するとともに、
都市構造の集約化と都市機能のネットワーク化を図っていくことが必要になる。
(地方自治制度の改革による対応)
大都市等に関する地方自治制度としては、昭和31年に特別市制度に代えて指定
都市制度が創設された後、指定都市に準ずる規模の都市に規模能力に応じた事務移
譲を進めるため、平成6年、11年にそれぞれ中核市制度、特例市制度が創設され
た。その後、中核市については人口要件以外の要件が撤廃され、指定都市について
は合併団体に対する運用上の人口要件が一時緩和された。現在、指定都市、中核市、
特例市に指定されている市の数は、それぞれ20、41、40に増加している。
その結果、指定都市、中核市、特例市に指定されている都市も多様になり、各制
度において一律に決められる事項と各都市のそれぞれの状況に対応しなければなら
ない事項とが生じている。
また、都区制度は、昭和18年以降東京のみに適用されており、累次の改革にお
いて特別区への事務移譲等が進められてきた。
先に述べた三大都市圏や地方の中枢都市圏の抱える課題に対しては、規制等に係
る個別法の見直しや、重点的な社会資本整備など様々な対策を国として戦略的に実
施することが必要である。これと並んで、大都市等に関する地方自治制度のあり方
を議論することが必要な時期が到来している。
このような中で、新たな大都市制度や、現行の指定都市、中核市、特例市、特別
区に係る制度の見直しについて、各方面から様々な提案が行われている。
この際、大都市等における効率的・効果的な行政体制の整備や住民の意思がより
適切に行政に反映される仕組みづくりについて、地方自治制度の改革によって対応
すべき点を検証し、その解決方策を示すことが必要である。
また、このことは、明治以来の区域を継承している都道府県についての議論、ひい
ては広域自治体のあり方の議論にもつながっていくものとなる。
- 81 -
第2 現行制度の見直し
1.指定都市制度
(1)指定都市制度の現状
指定都市は、地方自治法制定時に制度上存在したが実際には適用されなかった特別
市に代わる制度として、昭和31年に創設された。以来、現在に至るまで、50年以
上にわたり制度の基本的な枠組みは変更されていない。
(効率的・効果的な行政体制の整備)
この間、指定都市と都道府県との実際の行政運営の中で、いわゆる「二重行政」の
問題が顕在化している。大都市における効率的・効果的な行政体制の整備のためには、
この「二重行政」の解消を図ることが必要である。
もとより「二重行政」は、必ずしも指定都市と都道府県の間に固有の課題ではない
が、指定都市の規模能力が高く、都道府県庁所在地であることも多いこと等から、特
に指定都市と都道府県の間で深刻化してきたものと考えられる。
「二重行政」を解消するためには、指定都市の存する区域においてはできる限り同
種の事務を処理する主体を一元化するとともに、事務処理に際しての指定都市と都道
府県との間の調整のあり方を検討することが必要である。
(住民意思の的確な反映)
指定都市においては、市役所の組織が大規模化し、そのカバーするサービスも幅広
くなるため、個々の住民との距離は遠くなる傾向にある。このため、住民に身近な行
政サービスを適切に提供することや、住民の意思を行政運営に的確に反映させること
が課題となっている。
指定都市においては、住民に身近な行政サービスを住民により近い組織において提
供することや、住民がより積極的に行政に参画しやすい仕組みを検討することが必要
である。少なくとも、指定都市のうち特に人口規模が大きい都市については、住民に
身近な行政区の役割を強化し、明確にすることについて検討することが必要である。
(2)具体的な方策
①「二重行政」の解消を図るための見直し
(事務移譲及び税財源の配分)
指定都市と都道府県との「二重行政」の解消を図るためには、まず、法定事務を中
心に、都道府県が指定都市の存する区域において処理している事務全般について検討
し、指定都市が処理できるものについては、できるだけ指定都市に移譲することによ
って、同種の事務を処理する主体を極力一元化することが必要である。
- 82 -
都道府県から指定都市に移譲する事務としては、都市計画と農地等の土地利用の分
野や、福祉、医療分野、教育等の対人サービスの分野を中心として検討すべきである。
その際、少なくとも、県費負担教職員の給与負担や、都市計画区域の整備、開発及び
保全の方針に関する都市計画決定など、既に地方分権改革推進委員会第1次勧告によ
って都道府県から指定都市等へ移譲対象とされたにもかかわらず移譲されていない
事務は移譲することを基本として検討を進めるべきである。
事務の移譲により指定都市に新たに生じる財政負担については、適切な財政措置を
講じる必要があり、県費負担教職員の給与負担等まとまった財政負担が生じる場合に
は、税源の配分(税源移譲や税交付金など)も含めて財政措置のあり方を検討すべき
である。
(指定都市と都道府県の協議会)
これまで言われてきた「二重行政」を解消するためには、このような事務の移譲及
び税財源の配分に加え、指定都市と都道府県が公式に政策を調整する場を設置するこ
とが必要である。このため、任意事務を中心に指定都市と都道府県が同種の事務を処
理する場合等に適切に連絡調整を行う協議会を設置し、協議を行うことを制度化し、
公の施設の適正配置や効率的・効果的な事務処理を図ることを検討すべきである。
協議会においては、例えば、都道府県による指定都市の区域内における公の施設の
設置や指定都市と都道府県が処理している同種の事務のうち指定都市又は都道府県
が協議を求めた事項等について協議の対象とすることを検討すべきである。また、指
定都市と都道府県が処理している同種の事務のうち協議会で定めたものについてお
互いに処理状況を報告することもこれに併せて検討すべきである。
協議会の構成員としては、指定都市と都道府県の執行機関と議会が共に参画するこ
とが協議の実効性を高める上で重要である。例えば、会長は市長又は知事とし、委員
は、市長又は知事と各議長を充てるほか、その他の議員又は職員から選任することを
検討すべきである。
協議会において、協議が調わない事項が生じた場合には、現行制度上、自治紛争処
理委員による調停を利用することが可能である。しかしながら、調停は全ての当事者
が受諾することが必要であるため、それでも解決が見込まれない場合を想定した何ら
かの新しい裁定等の仕組みを設けることを検討すべきである。
②「都市内分権」により住民自治を強化するための見直し
指定都市、とりわけ人口が非常に多い指定都市において、住民に身近な行政サービ
スについて住民により近い単位で提供する「都市内分権」により住民自治を強化する
ため、区の役割を拡充することを検討すべきである。
- 83 -
区の役割を拡充する方法としては、まず、条例で、市の事務の一部を区が専ら所管
する事務と定めることを検討すべきである。また、区長が市長から独立した人事や予
算等の権限、例えば、区の職員の任命権、歳入歳出予算のうち専ら区に関わるものに
係る市長への提案権、市長が管理する財産のうち専ら区に関わるものの管理権などを
持つこととすることを検討すべきである。
このように、区長に独自の権限を持たせる場合には、現在は一般の職員のうちから
命ずることとされている区長について、例えば副市長並みに、市長が議会の同意を得
て選任する任期4年の特別職とし、任期中の解職や再任も可能とすることを検討すべ
きである。また、区長を公選とすべきかどうかについても引き続き検討する。さらに、
区単位の行政運営を強化する方法として、区地域協議会や地域自治区等の仕組みをこ
れまで以上に活用することも検討すべきである。
なお、現在、区には区の事務所の長(区長)、区の選挙管理委員会、区会計管理者
を置くこととされているが、これに加え、現行の教育委員会制度を前提とする場合に
は、小中学校の設置管理等をできる限り区で処理できるようにする観点から、条例で、
区に教育委員会や区単位の市教育委員会の事務局を置くことを可能にすることを検
討すべきである。区の教育委員会等は、小中学校の設置管理など、必ずしも市で一体
的に処理する必要がない事務のうち条例で定めるものを処理することとすることを
検討すべきである。
以上のような新たな区の位置付けを踏まえ、区を単位とする住民自治の機能を強化
すべきである。区単位の議会の活動を推進するため、市議会内に区選出市議会議員を
構成員とし、一又は複数の区を単位とする常任委員会を置き、区長の権限に関する事
務の調査や区に係る議案、請願等の審査を行うこととすることを検討すべきである。
2.中核市・特例市制度
(中略)
3.都区制度
(中略)
第3 新たな大都市制度
1.特別区の他地域への適用
(中略)
2.特別市(仮称)
(1)特別市(仮称)を検討する意義
特別市(仮称)は、全ての都道府県、市町村の事務を処理することから、その区域
内においてはいわゆる「二重行政」が完全に解消され、今後の大都市地域における高
齢化や社会資本の老朽化に備えた効率的・効果的な行政体制の整備に資する点で大き
な意義を有する。
また、大規模な都市が日本全体の経済発展を支えるため、一元的な行政権限を獲得
し、政策選択の自由度が高まるという点にも意義がある。
- 84 -
(2)特別市(仮称)について更に検討すべき課題
一方で、特別市(仮称)については、以下のように更に検討すべき課題が存在する。
一層制の大都市制度である特別市(仮称)について、法人格を有し、公選の長、議
会を備えた区を設置して実質的に二層制とすることが必要とまでは言い切れないが、
現行の指定都市の区と同様のものを設置することでは不十分であり、少なくとも、過
去の特別市制度に公選の区長が存在していたように、何らかの住民代表機能を持つ区
が必要である。
また、特別市(仮称)は全ての都道府県、市町村の事務を処理するため、例えば警
察事務についても特別市の区域とそれ以外の区域に分割することとなるが、その場
合、組織犯罪等の広域犯罪への対応に懸念がある。
さらに、特別市(仮称)は全ての道府県税、市町村税を賦課徴収することとなるた
め、周辺自治体に対する都道府県の行政サービスの提供に影響するという懸念もあ
る。
なお、現在の全ての指定都市を特別市(仮称)制度の対象とする場合、現在47の
広域自治体が最大67に増加する可能性がある。大都市地域特別区設置法の対象区域
と同様に人口200万以上とするなど、一定以上の人口の指定都市に対象を限定する
必要がある。
(3)当面の対応
まずは、都道府県から指定都市への事務と税財源の移譲を可能な限り進め、実質的
に特別市(仮称)に近づけることを目指すこととし、特別市(仮称)という新たな大
都市のカテゴリーを創設する場合の様々な課題については、引き続き検討を進めてい
く。
3.大都市圏域の調整
三大都市圏においては、社会経済的に一体性のある圏域(例えば通勤・通学10%
圏)の広がりは、市町村のみならず都道府県の行政区域も超えているが、地方ブロッ
クほどの広がりとはなっていない。
例えば交通体系の整備や防災対策といった大都市圏域における共通した行政課題
に関する連絡調整や、そのような行政課題に関する大都市圏域全体の計画策定を行う
ための協議会等の枠組みを設けるべきかどうかについて引き続き検討する。
その際、どのような行政課題についての調整を行うべきか、九都県市首脳会議や関
西広域連合といった既存の任意の枠組みが果たしている役割との関係をどうするか
といった点についてさらに検討する。
仮に新たな枠組みを設ける場合には、大都市圏域計画の実効性を担保するための尊
重義務を構成団体に課すことや、国との調整を図るために、必要に応じて、国の関係
行政機関に対して、職員の出席及び説明並びに必要な資料の提出を求めることができ
るようにすることなどについても検討する必要がある。
- 85 -
7 大都市地域における特別区の設置に関する法律
○
大阪における大都市制度の議論を背景として、平成24年8月に、議員立
法により「大都市地域における特別区の設置に関する法律」が制定され、本
市も含む、東京都以外の人口200万人以上の区域に特別区を設置する場合
の手続きが定められました。
大都市地域における特別区の設置に関する法律の要旨
【目
的】
①都道府県の区域内において関係市町村を廃止し、特別区を設置する手続き
②都道府県と特別区の事務、税源の配分、財政調整に関する意見の申し出に係る
措置
について定めたもの。
【対
象】
指定都市及び指定都市に隣接する自治体と合わせて総人口が 200 万人以上(同
一道府県内に限る。隣接する自治体が指定都市の場合はその隣接する市町村を含
む。)
<8地域10都市>
①横浜、川崎、②大阪・堺、③名古屋、④札幌、⑤神戸、⑥京都、
⑦さいたま、⑧千葉
- 86 -
大都市地域における特別区の設置に関する法律の概要
特別区の設置の手続き
市町村
特別区の設置が可能な市町村
道府県
A市
B市
道府県
A市議会
の議決
B市議会
の議決
道府県議会
の議決
①人口 200 万人以上の指定都市
又は
②一つの指定都市及び当該指定都
市に隣接する同一同県の区域内の
一つ以上の市町村(その市町村が指
定都市である場合には、その指定都
市に隣接する同一道府県内の一つ
以上の市町村を含む。)であって、
その総人口が 200 万人以上のもの
特別区設置協議会の設置
①特別区の設置日
②特別区の名称・区域
③特別区の設置に伴う財産処分
④特別区の議会の議員定数
⑤特別区と道府県の事務分担
⑥特別区と道府県の財源配分・
財政調整
⑦職員の移管
⑧その他必要な事項
事務分担・財源配分・財政調整のうち政府が法制上の措
置その他の措置を講ずる必要があるものについて、誠実
に協議を行うとともに、速やかに協議が調うよう努める
内容の報告
総務大臣
意見
特別区設置協定書の作成
A市議会
の承認
B市議会
の承認
道府県議会
の承認
特別区設置協定書の公表
A市での
選挙人の
投票
B市での
選挙人の
投票
それぞれ
有効投票総数の
過半数の賛成
①市町村長は協定書の
内容についてわかりや
すい説明を行う
②選挙管理委員会は義
胃の意見を広報に掲載
し、選挙人に配布する。
総務大臣
市町村廃止・
A市
B市
道府県
共同
申請
※指定都市以外の市町村は、隣接する指定都市が申請
する場合でなければ申請することができない。
政府は、協定書の内容を踏まえて必要があると認めるときは、申請があった日か
ら6月を目途に必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
※「第30次地方制度調査会提出資料」(総務省)を基に作成
- 87 -
特別区設置の
処分・告示
事務分担等に関する意見の申出
一つの道府県の区域内の全ての特別区及び当該道府県は、共同して、特別区と
道府県の事務分担・税源配分・財政調整の在り方に関し、政府に対し意見を申し出
ることができる。
政府は、上記申出を受けた日から6月を目途に当該意見を踏まえた新たな措置
を講ずる必要の有無を判断し、必要があると認めるときは、当該意見の趣旨を尊重
し、速やかに必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
特別区を包括する道府県における特別区の設置に係る特例
特別区を包括する道府県において、その区域内の特別区に隣接する一の市町村の
区域の全部により特別区を設置するときも、上記の設置手続による。ただし、市町
村の区域を分割せずに一の特別区を設置するときは、上記の設置手続のうち「選挙
人の投票」は不要とする。
※「第30次地方制度調査会提出資料」(総務省)を基に作成
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8 今後の分権改革の動向
○
第二期地方分権改革については、地方分権改革推進委員会による4回の
勧告を踏まえ、国と地方の協議の場の法制化や第1次及び第2次一括法の
施行による都道府県から基礎自治体への権限移譲、義務付け・枠付けの見直し
など、一定の進展が見られました。しかしながら、勧告に掲げられたものの
法改正に至っていない項目も多く存在していることや、税財源移譲の議論が
置き去りになっているなど、不充分な改革に留まっています。
○
大都市制度のあり方については、第30次地方制度調査会が、平成25年
8月までに最終的なとりまとめを行い、内閣総理大臣に対して答申を行う
予定となっています。答申に向けて、平成24年12月20日にとりまとめ
られた「大都市制度についての専門小委員会中間報告」は、指定都市への
事務一元化の方向性が出された点や、新たな事務移譲に対し税源配分が検討
の対象となっている点などについては、評価できる内容であるものの、大都
市制度の抜本的な見直しにまでは至っていない内容に留まっています。
○
道州制については、自由民主党・公明党連立政権合意に「道州制の導入を
推進する」と明記され、平成24年12月26日に発足した安倍内閣に、
道州制担当大臣が設置されたことから、道州制の導入に向けた議論の活性化
が予想されます。
○
真の分権型社会の実現には、国・都道府県から基礎自治体への権限移譲
及び義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大を推し進めていくともに、
地方税財源の充実・確保に向けた改革を国に求めていく必要があります。
また、地方制度調査会がとりまとめる最終答申を踏まえた法改正を見据え、
権限移譲の受け皿となる体制の整備を行っていくとともに、引き続き、新たな
大都市制度の創設に向けた積極的な提案を行っていくことが必要です。
○
こうした状況を受け、指定都市市長会では、平成25年1月16日に、
地方分権改革の一層の推進を図るよう政府・与党に対して、強く要請しました。
- 89 -
今後の政権運営に対する指定都市市長会要請(平成25年1月16日)
今後の政権運営に対する指定都市市長会要請
このたび、先の衆議院議員総選挙を経て発足した安倍内閣は、地方を重視し、
地域の再生のために、多様な大都市制度の導入を検討すること、国、都道府県、
市町村の役割分担を整理し、住民に一番身近な基礎自治体の機能強化を図り、国
から地方への権限・財源等の移譲を促進することなどに取り組むこととしていま
す。
一方、現在、地方分権改革については、地方分権改革推進委員会による数次に
わたる勧告を踏まえ、第1次及び第2次一括法が施行され、基礎自治体への権限
移譲や義務付け・枠付けの見直しなどについて一定の進展が見られたものの、未
だ不十分です。
地方分権の推進による地域力の向上は、日本再生に必要不可欠であり、「基礎
自治体優先の原則」に基づき、地方が自らの判断と責任により、地域の実情に沿
った行政を行うことができるよう、総理大臣の強力なリーダーシップの下、指定
都市等の地方の意見を十分反映させながら、地方分権改革を着実に推進していた
だくよう強く要請します。
また、あわせて、指定都市市長会が従来から提案している、各地域の実情に応
じた多様な大都市制度を早期に創設することを強く期待しています。
つきましては、今後の政権運営に当たり、国から地方への権限移譲・税源移譲
等の一体的な実施など、真の分権型社会の実現に向け、地方の意見も聞いた上で、
地方分権改革に積極的に取り組んでいただくよう、次のとおり強く要請します。
平成25年1月16日
指定都市市長会
1.多様な大都市制度の実現
大都市制度に関する議論の根幹は、大幅な権限と財源の移譲による真の分権型社会の
実現にあり、指定都市は、基礎自治体優先の原則の下、住民がより良い行政サービスを
受けられるよう、それぞれの地域の実情に応じた多様な大都市制度の早期実現を求めて
きた。昨年、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」が制定されたが、指定
都市は、その規模や歴史・文化の違い、国や広域自治体との関係性、地域で果たす役割
など、異なる特性もあり、大都市が抱える諸課題を解決するためには、道州制の議論も
見守りつつ、各地域の実情に応じた大都市制度を整備することが必要である。
ついては、この法律の制定を多様な大都市制度の実現に向けた第一歩と位置づけ、引
き続き、従来から制度創設を提案している特別自治市、新潟で進めている大都市制度な
ど多様な大都市制度の早期実現を図ること。
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2.大幅な権限移譲
国はその本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政は、できる限り地方
自治体にゆだねるという理念の下、国と地方の役割分担を抜本的に見直すとともに、基
礎自治体優先の原則に基づき、基礎自治体への大幅な権限移譲を進めること。あわせて、
権限移譲に当たっては、必要な財源を税源移譲により措置すること。
また、地方自治体において自主性及び自立性が十分に発揮できるよう、法令等による
義務付け・枠付け・関与は、原則として廃止すること。
3.真の分権型社会の実現のための国・地方間の税源配分の是正等
地方の自主財源の充実・強化を図るため、消費税、所得税、法人税など複数の基幹税
からの税源移譲を行い、国・地方間の「税の配分」をまずは5:5とすること。
さらに、国と地方の新たな役割分担に応じた「税の配分」となるよう、地方税の配分割
合を高めていくこと。
また、地方公共団体間の財政力格差の是正については、地方税収間の水平調整ではな
く、地方税財源拡充の中で地方交付税等も含め一体的に行うこと。
なお、自動車取得税及び自動車重量税の見直し、地方の温暖化対策に関する財源等につ
いて検討する際には、地方の税財源確保に十分配慮すること。
4.大都市税源の充実強化
指定都市が大都市特有の財政需要や道府県に代わって行政サービスを提供する事務
配分の特例に対応し、自主的かつ自立的な行財政運営を行えるよう、国・道府県から指
定都市への大幅な税源移譲を行うこと。
5.国庫補助負担金の改革
国と地方の役割分担の見直しを行った上で、国が担うべき分野については、必要な経
費全額を国が負担するとともに、地方が担うべき分野については、国庫補助負担金を廃
止し、所要額を全額税源移譲すること。
したがって、新たな交付金制度についても、税源移譲までの経過措置とするとともに、
国の財源捻出を目的とした縮減を行うことなく、地方が必要とする総額を確保すること
とし、地方にとって自由度が高く、活用しやすい制度とすること。
6.国直轄事業負担金の廃止
国と地方の役割分担の見直しを行った上で、国が行うこととされた国直轄事業につい
ては、地方への事前協議・情報開示を徹底するとともに、地方負担を早期に廃止するこ
と。
また、現行の国直轄事業を地方へ移譲する際には、所要額を全額税源移譲すること。
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7.地方交付税の改革等
地方交付税総額については、地方の財政需要や地方税などの収入を的確に見込むとと
もに、地方は既に人員削減など国を上回る行財政改革を実施している実情を踏まえ、必
要額を確保すること。
国・地方を通じた歳出削減努力によってもなお生じる地方財源不足額の解消は、地方
交付税の法定率引上げによって対応すべきであり、臨時財政対策債は速やかに廃止する
こと。
8.社会保障と税の一体改革の推進
昨年成立した社会保障制度改革推進法に基づいて設置された「社会保障制度改革国民
会議」での検討に社会保障サービスの担い手である指定都市を含む地方の意見を十分反
映させるとともに、「国と地方の協議の場」において真摯に議論し、国民が安心して未
来を託しうる、将来にわたって持続可能な社会保障制度を早期に実現すること。
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