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大学生に借金をさせ、56万円の投資用DVDを販売していた 4事業者に

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大学生に借金をさせ、56万円の投資用DVDを販売していた 4事業者に
平成26年11月27日
生 活 文 化 局
大学生に借金をさせ、56万円の投資用DVDを販売していた
4事業者に行政処分(業務停止3か月、指示)・勧告
本日、東京都は、大学生等に投資用DVDを販売していた4事業者に対し、特定商取
引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)第8条に基づく業務一部停止命令(3
か月)並びに第7条に基づく業務改善指示及び東京都消費生活条例(以下「条例」とい
う。)第48条に基づく是正勧告を行いました。
事業者は、商品を購入した大学生(勧誘者)を使い、
「20代で稼いでいるすごい人が
いる。就活の勉強になるから話を聞かせたい。」などと言って、勧誘者の友人(大学生)
を喫茶店へ誘い出し、56万円の投資用DVDの勧誘をしていました。また、お金がな
いと断る大学生に消費者金融や学生ローンで借金をさせ、契約を締結していました。
*本件のうち3社(株式会社NINE、株式会社Regaloe、株式会社サンクチュアリ)は、消費者庁と
連携で調査を行い、同時に処分を行ったものです。
説明担当者
≪勧誘イメージ≫
喫茶店へ
消費者
勧誘者
1
フォロー担当
事業者の概要
事業者名
株式会社
NINE
株式会社
Regaloe
株式会社
サンクチュアリ
代表者名
代表取締役
伊藤 啓太
代表取締役
山中 雄介
代表取締役
出川 優太
所在地
東京都中央区
日本橋兜町
20 番 5 号
東京都千代田区
三崎町一丁目
1 番 14 号
大島ビル 4 階
東京都千代田区
三崎町一丁目
1 番 14 号
大島ビル 4 階※1
Grace
こと 坂本政宏
坂本
政宏
東京都中央区
日本橋兜町
20 番 5 号
投資用DVD(商品名「Discovery」)
(日経225先物取引 ※2 を対象とした投資方法を収録)
商品
設立
平成 23 年 9 月 29 日
平成 23 年 1 月 11 日
平成 25 年 6 月 12 日
資本金
300 万
300 万
300 万
-
835 件
743 件
521 件
213 件
特定商
取引法
業務停止命令
(3か月)
業務停止命令
(3か月)
業務停止命令
(3か月)
指示
条例
勧告
勧告
勧告
勧告
契約件数
※1
※2
※3
※4
※4
平成 23 年 1 月 1 日
登記簿上:東京都新宿区西新宿六丁目 16 番 7
日経平均株価指数を対象とした先物取引
事業者報告
【問合せ先】
平成 25 年度(事業者報告)
生活文化局消費生活部取引指導課
電話
03-5388-3074
※3
2 勧誘行為等の特徴
(1)大学・バイト先の友人・先輩が勧誘者となり、
「20代でかなり稼いでいるすごい人がいる。
就活の勉強になるから話を聞かせたい。」などと言い、勧誘目的を告げずに喫茶店に誘い出す。
(2)喫茶店に商品の説明担当者が来て、
「あるシステムを使って、(日経225)先物取引をすれ
ば、資産を増やせる。
」などと言い、年間で数千万円もの収益をあげた実績表を見せる。また、
商品購入後は、ミーティング、セミナー、イベントに参加でき、ここで育った経営者と会っ
て話せる機会もあり、人脈が作れるなどと勧誘する。
(3)お金がないと断る消費者には、消費者金融・学生ローンを勧める。借金に抵抗を示すと、
フォロー担当(勧誘者の先輩)が合流し、
「みんなお金を借りているし、投資で返していけば
いい。」
「すぐに返せる。」などと説得し、借金をして商品を購入することを決断させる。
(4)消費者金融等へは、勧誘者が同行し、現金56万円を借りさせる。その際、審査を通りや
すくするために、収入等について嘘の申告をするよう指示する。その後、喫茶店で契約担当
者が、録音しながら契約書類等を読み上げ、契約を締結する。
(5)証券会社の先物取引口座の開設には、十分な金融資産や投資経験等の条件があることを契約
時に告げないため、消費者はこれらの条件を満たしていないことを知らずに契約してしまう。
(6)クーリング・オフ期間が経過した頃、友人を紹介すれば8万円の紹介料を支払うと説明し、
勧誘方法を教え込む。消費者は、投資の資金もなく、借金の返済も抱えているため、今度は
勧誘者となって友人を誘わざるを得ない状況になる。
3
業務の一部停止命令及び指示の対象となる主な不適正な取引行為
不 適 正 な 取 引 行 為
特定商取引法の条項
「20代でかなり稼いでいるすごい人がいる。就活の勉強になるか
ら話を聞かせたい。」、「若いのに年収1千万円稼いでいる人がいる。
今度会ってみませんか。」、「すごい話をしてくれる人がいる。かなり
稼げる話だ。」、「○○さんって人と知り合って、考え方が変わった。
今度○○さんに会ってみない。」などと告げて都内の喫茶店等に呼び
出しており、勧誘に先立って、本件商品の売買契約の締結について勧
誘をする目的である旨及び本件商品の種類を明らかにしていなかっ
た。
(4事業者)
第3条
勧誘目的等不明示
日経225先物取引は高いリスクを伴うため、証券会社では、先物
取引を行うために必要な口座の開設にあたり、金融資産や株式投資経
験等の条件を定めている。これらの条件は購入者の先物取引の開始時
期に制限を与えるものであり、証券会社の定める条件を満たしていな
ければ先物取引を行うことができない。よって、これらの口座開設条
件は、先物取引を対象とした本件商品を購入するにあたり、契約締結
の判断に影響を及ぼす重要な事項である。しかしながら、これらの口
座開設条件について故意に告げていない事実があった。(4事業者)
第7条第2号
重要事項不告知
学生ローンや消費者金融等(以下「貸金業者等」という。)で借り
入れなければ、56万円の本件商品を購入できない学生等に対し、財
産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行っていた。(4事業
者)
第7条第4号
省令第7条第3号
適合性原則違反
4
業務の一部停止命令の内容
平成26年11月28日(命令の日の翌日)から平成27年2月27日までの間(3か月間)、
特定商取引法第2条第1項に規定する訪問販売に係る次の行為を停止すること。
(1)契約の締結について勧誘すること
(2)契約の申込みを受けること
(3)契約を締結すること
5
指示の内容
特定商取引法第2条第1項に規定する訪問販売に係る行為のうち、次の事項を遵守すること。
(1)勧誘に先立って、その相手方に対し、売買契約の締結について勧誘をする目的である旨及
び当該勧誘に係る商品の種類を明らかにすること。
(2)契約に関する事項であって、購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつ
き、故意に事実を告げずに勧誘をしないこと。
(3)顧客の財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘をしないこと。
6
勧告の対象となる主な不適正な取引行為
不 適 正 な 取 引 行 為
条例の根拠条項
本件商品を購入する資金がないと伝えた学生等に対し、貸金業者等
からの借入れを勧め、さらに貸金業者等へ同行したうえ、借入れに際
しては年収、職業等について虚偽の申告を教唆するなどして、執よう
に契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させていた。(4事業者)
条例第25条第1項第
4号規則第7条7号
要請のない借入強要
7
勧告の内容
商品の購入資金に関して、消費者からの要請がないにもかかわらず、貸金業者等からの借入
れその他の信用の供与を受けることを勧めて、執ように契約の締結を勧誘しないこと、又は契
約を締結させないこと。
8 今後の対応
(1)業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して特定商取引法第70条の2の規定に基づ
き2年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては
特定商取引法第74条の規定に基づき3億円以下の罰金を科する手続きを行う。
(2)指示及び勧告の内容の改善措置について、平成26年12月11日までに都知事あてに報
告させる。
(3)指示に違反した場合は、行為者に対して特定商取引法第72条の規定に基づき100万円
以下の罰金を科する手続きを、事業者に対しては特定商取引法第74条の規定に基づき10
0万円以下の罰金を科する手続きを行うほか、特定商取引法第8条の規定に基づき業務停止
命令の対象となる。
(4)勧告に従わない場合、条例第50条に基づき、その旨を公表する。
《参考》東京都内における4事業者に関する相談概要(平成 26 年 11 月 26 日現在)
平均年齢
相
談
件
数
(都内)
23年度
24年度
25年度
26年度
合計
株式会社NINE
20.7 歳
6件
22 件
71 件
65 件
164件
株式会社Regaloe
21.2 歳
17 件
35 件
76 件
25 件
153件
株式会社サンクチュアリ
20.6 歳
37 件
38 件
75件
Graceこと坂本政宏
20.8 歳
7件
4件
13件
0件
2件
消費者へのアドバイス
◆学生のみなさん、投資に関する商品を借金してまで購入する必要があるかどうかを慎重に考え
ましょう。
◆SNSで知り合った人から勧誘される事例や、商品がUSBメモリーの事例もありますのでご
注意ください。
◆紹介料欲しさに勧誘をし、友達に借金までさせた場合、自身が加害者になることを認識してく
ださい。このような行為が原因で友人関係が壊れたケースが多数みられます。
<参考>・東京都消費生活総合センター 03-3235-1155(相談専用番号)
・同様の手口に心当たりのある方は、悪質事業者通報サイトにも情報をお寄せください。
http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/tsuho/honnin-form.html
参考資料
【事例1】株式会社NINE
平成26年春、大学生甲は、サークルの先輩Aから「20代でかなり稼いでいるすごい人
がいる。Bさんといって、自分は話をして将来に対する視野が広がった。就活の勉強になる
から話を聞かせたい。」と電話があった。甲が会うことを了承すると、Aは「忙しい人だか
ら2日間空いてる日を教えてほしい。この話は2人の間だけにしてほしい。」と言った。こ
の時Aは、投資用DVDのことは何も言わなかった。
後日、甲はAと一緒に都内の喫茶店に行き、Bが来るのを待った。その間、Aは資産運用
の話を始め、「日経225先物取引というものがあって、ハイリターンが見込めるが、勝て
るのは、わずか5%の人間だ。しかし、あるシステムどおりにやればこの5%の勝者になれ
る。」と話した。1時間後、ブランド品を身に付けたBが現れた。自己紹介をして雑談にな
り、甲は大学名やバイト収入が月数万円しかないことなどを話した。その後、Bは投資の話
を始めた。「あるシステムを使って先物取引をすれば、年利100%で資産を増やせる。6
0万円が2年後120万円、5年後1,860万円になる。」と話し、そのシステムの過去1
3年間の実績データを見せた。Bが電話をしに席をはずすと、Aは表の説明をし、「この表
にあるプラスの数値の、ミニなら100倍、ラージなら1000倍の利益が稼げる。すごく
ないか。」と言った。表は2万円くらいの数値が表示され、その千倍の利益と言われた甲は、
すごい儲かるのだと驚いた。
Bは席に戻ると、株式会社NINEについて説明を始めた。NINEは一流の経済力を身
に付けるため先物取引を中心に行い、一流の知識力を身に付けるため講座やセミナーを行い、
一流の人脈を作るためイベントを行うということだった。また、外資系証券会社にヘッドハ
ンティングされた人物が考えた先物取引のシステムをDVDに収め、商品名「Discov
ery」として56万円で販売しており、NINEはその代理店と説明した。甲は、この時
初めてDVDの販売の話が目的だったことがわかり、その金額に驚いた。店を出てBと別れ
ると、Aは「今日中に決めよう。」と言うので、甲はお金がないと断った。Aは「お金がな
いのは皆同じで、学生ローンで借りている。」と言った。借金などしたことがない甲は返済
の不安を訴えた。Aは「自分も学生ローンで全額借りた。投資の儲けで3か月で返した人も
いる。システムどおりにやれば投資の儲けで借金はちゃんと返せる。明日、学生ローンを借
りに行こう。」と説得した。甲は世話になっている先輩に強く勧められ、断り切れず借りに
行くことを承諾した。
翌日、甲はAと高田馬場で待ち合わせて喫茶店へ行くと、Cを紹介された。Cは学生ロー
ンの借り方について「借りる目的は英会話スクール、アルバイトは週5でやり、月15万か
ら20万円の収入があると申告して。」と嘘の申告をするよう言った。甲は、Aに連れて行
かれ学生ローンでお金を借りた。そして一度喫茶店へ戻ってCに報告し、次に消費者金融へ
行くように言われた。Aに案内されて無人のATMへ行くと、Aは「学生だと借りられない
から社会人、給料は17万円、年収は実際より多い金額を言って。」と指示した。ようやく
56万円が用意できると、甲は、Aと一緒に東京駅近くの喫茶店に移動した。そこにDが現
れ、契約書類を出し、録音しながら読み上げた。さらに、後からEが来て、甲は3人に囲ま
れる中で契約を交わし、現金56万円を渡してDVDを受け取った。
甲は早く先物取引を始めて借金を返済したかったため、システムを教えるというFのミー
ティングに翌日から参加した。しかし、クーリング・オフ期間が過ぎた頃、Fから「友人を
紹介したら8万円を紹介料としてもらえる。」と言われ、それ以降のミーティングは勧誘の
話だけになった。組織では勧誘は当然とされ、勧誘しないとなぜやらないのかと言われて、
断れる状況はなかった。大学、高校、バイトの友人らが勧誘対象で、電話で誘い出す言い方
を何度も教え込まれた。アポイントが取れると友人の個人情報を上位者へ伝え、勧誘当日は、
友人の反応や、消費者金融の借入れの結果など、勧誘経過を報告するよう指示された。また、
勧誘・契約の個人目標を設定し、進捗状況や実績も組織に管理された。
数週間後、甲はミーティングで先物取引を行うため△△証券の口座開設の手続きを取るよ
う言われた。甲は、先物取引の口座開設条件に、学生でないこと、十分な金融資産、投資経
験等を満たす必要があることを契約前に知らされなかった。甲はこれらの条件を満たしてい
なかった。それを知っているAが、甲の代わりにスマートフォンから年収等に嘘の申告をし
ていた。
【事例2】株式会社Regaloe
平成25年夏、大学生乙は、バイト先の後輩Gから電話があり、「若いのに年収1千万円
稼いでいる人がいる。Hさんと言います。今度会ってみませんか。すごい人で会う価値あり
ます。」と言われた。乙は断ったが、数日後またGから電話があり、「自分は将来起業を考
えていて、乙さんと一緒に仕事がしたい。有意義な話が聞けるからどうしても会ってほしい。」
と何度も言うので、乙は会うことを了承した。この時、Gから投資用DVDの話はなかった。
数週間後、Gとバイト先の先輩Iの3人で都内の喫茶店に行き、Hと会った。乙は自己紹
介をし、大学名やバイト先を伝えた。Hは「レガーロという会社は経営者を育てる環境があ
る。ここで育った社長たちとの繋がりがあり、色々な経営者と会って話が聞ける。」と言っ
た。さらにHは「経営に必要なのは資金だ。日経225に興味あるかな。社長は有名な証券
会社にいた人と繋がりがあり、その人が作った投資システムを使って稼いでいる。日経22
5は投資の中でも一番学生に使いやすい。」と話し、システムの実績表というものを乙に見
せた。乙は投資の経験がないため、表を理解できなかった。Hは「レガーロに入るには、こ
のシステムが入ったDVDを買ってもらうことが条件だ。今日中に組織に入るか決めてほし
い。」と言った。
Hと別れ、3人で別の喫茶店に移動した。そこにはJという人が待っていた。Jは「DV
Dは56万円です。」と説明した。乙は驚いて「56万円も払えないです。」と言った。J
は「自分も最初は高いと思って悩んだ。しかし買って半年くらいで投資で儲かり、今は利益
を上げている。」と話した。乙は、3人から買うよう説得された。乙は買うことを承諾して
いなかったが、Iからレガーロの幹部7人に挨拶メールを送るよう言われ、仕方なくIが作
った文を送信した。乙は翌日も会おうと言われ、断れなかった。
翌日、G、I、初対面のKと高田馬場で会った。喫茶店に行くと、またDVDの購入を勧
められた。乙は「お金を用意できない。」と断ると、Kらは「自分たちもお金がなくて学生
ローンで借りた。」と言った。乙は、学生ローンは利息が高い印象があったので、「借りる
のは不安だ。」と渋った。しかし、3人は「初めてだと不安かもしれないけど、みんな借り
てるから大丈夫だ。」「早い人で3か月で借金を返している。」「もし返せなければ立て替
える。」と説得した。そして「とりあえず行こう。」と言われ、乙は学生ローンへ連れて行
かれた。乙は3人に囲まれ、前日に幹部らにメールも送っていたので断れないと諦めた。K
が「一度に50万も借りられないから何社か行く。借りる目的は大学の学費と言って。」と
嘘の申告をするよう指示した。Kは借入れの結果を逐次電話でHに報告し、指示を受けてい
た。2社目は借りられず、乙は消費者金融の無人ATMへ連れて行かれた。Kから「借りる
目的は海外旅行、正社員で年収180万円と申告して。」と、また嘘の申告をするよう指示
された。乙が現金56万円を用意できると、Kは「今日中に契約を済ませよう。」と言い、
一緒に水道橋の喫茶店に移動した。そこで乙は契約書類を渡され、Kが録音しながら読み上
げ、後からHが合流し、契約を終えた。
10日程後、乙はミーティングでLを紹介された。Lは「誰かを紹介したら、一人につき
紹介料10万円をもらえる。」と言った。乙は、自分が紹介料目的で騙されたのだと気付い
た。また、GもIも先物取引をしておらず、紹介料で稼いでいることを、この時知った。さ
らに、先物取引を始めるには証拠金が10万円も必要だとわかった。Lは「借金と証拠金の
ためには紹介ビジネスをやるしかない。」と言った。乙はLに勧誘方法を細かく教えられた。
その後、乙はセミナーに参加した。そこで契約目標や結果が発表され、講師が「夏休みに入
る学生は授業がなくて会いやすい。売り上げを伸ばすチャンスだ。」「本当に稼いでいるの
か不審に思われたら、証券会社のアプリを使い、チャートを見せて操作すれば、稼いでいる
感じが出るから信用する。」等と説明していた。
また、乙はKから先物取引を始めるため、○○証券の口座を開くように言われた。Kは、
乙のスマートフォンを使って、乙に代わりに入力送信した。Kは「口座開設の条件の壁はこ
っちで何とかする。」と話した。○○証券の先物取引口座を開設するには、数百万円以上の
金融資産や投資経験等の条件があることを乙は知らなかった。乙はDVDを買うため借金を
しており、これらの開設条件を満たしていなかった。
【事例3】株式会社サンクチュアリ
平成25年秋、大学生丙は高校時代の友人Mから「自分は今、投資で稼いでいる。」「すご
い話をしてくれる人がいる。かなり稼げる話だ。」などと連絡があった。丙はMに、どのよう
な話であるのかを聞いたが、Mは「プレゼンに来ればわかる。」と答えるだけで他には何も教
えてくれなかった。丙は、一度だけプレゼンというものを聞いてみようと思いMと会う約束
をした。
後日、新宿で待ち合わせて近くの喫茶店に行った。そこには別の友人Nがいて、間もなく
Oが現れた。Oはルーズリーフを出し、手書きで投資の説明を始めた。Oは投資の大まかな
話、組織でどんなことをやっているかなどを説明し、最後にDVDの販売や価格の話をした。
丙は日経225先物取引についての説明を受けたが、投資や株の経験や知識など全くないこ
とをOに伝えた。Oは「このDVDを使えば稼げる。負ける日もあるけど月単位で見れば勝
てる。」等と言い、MやNも「こんなに稼げるチャンスは2度とない。このシステムを使って
投資で稼ぐことは簡単だ。
」と言って丙に強く購入を勧めた。OからDVDの価格が56万円
と聞いて丙は、高額なので驚き「学生なので、そんなお金はありません。」と言って購入を断
った。しかし、Oは「56万円は高額だと思うけど、皆、学生ローンで借りて買っているし、
借金も投資の儲けで、すぐに全額返せる。」と言った。Oが途中で席を外すと、MとNはさら
に強く購入を勧めてきた。丙にとって56万円はとても高額で、借金をしたこともなく金利
等を考えると怖くて嫌だったので、購入する気は全くなかった。丙は戻ってきたOに対して
「購入は一度考えます。」と伝えた。この時、丙はOから、先物投資をする際に必要な証拠金
の額や、非常にリスクの高い取引であることなどは説明されなかった。また、先物取引の口
座を開設するには条件があり、投資経験が全く無く、資産もほとんどない場合、先物取引口
座を開設することすらできないことも説明されなかった。
丙はM、Nとともに近くのファーストフード店へ行き、投資で儲けているというMの大学
の先輩Pを紹介された。Pは丙に投資の状況を携帯電話の画面を見せながら説明し、
「投資し
た額の2倍は儲かる。」と話した。M、Nは「いつでもクーリング・オフできるから、契約し
てやめたければやめればいい。」と言って契約を勧めた。丙はこのままでは帰らせてくれない
と思い、仕方なく契約することを了承した。
翌日、丙はMと待ち合わせて消費者金融に行った。お金を借りるにあたって、Mは丙にア
ルバイトの月収を実際より多く、学生ではなくフリーター、借りる目的は楽器を買うためな
どと嘘の申告をするようメールで指示した。丙は消費者金融2社から合計56万円を借りた。
その後、丙は契約手続きをするため、Mとともに近くのファーストフード店に行き、そこで
Pと合流した。丙はM、Pとともに喫茶店へ移動し、そこでQを紹介され、契約の手続きを
行った。
契約後、丙はクーリング・オフをするために、会社やQに連絡を取ろうとしたがつながら
ず解約の手続きを進めることができなかった。Rから「友人を誘って契約に至れば一人10
万円もらえる。
」という紹介料の話を聞き、勧誘方法の説明を受けた。アドレス帳に登録され
ている名前を書き出し優先順位つけて勧誘するといった内容だった。丙はDVDを家で見た
が、内容は全くわからなかった。そのことをMに話すとMは、
「DVDを見ても内容はわから
ない。ミーティングに出て、投資の勉強を重ねていかないと投資はできない。」と言い、丙は
話が違うと思った。
【事例4】Grace
こと
坂本政宏
平成25年夏、丁は大学の友人Sから電話をもらった。Sは「Wって人と知り合って、考
え方が変わった。今度Wに会ってみない。」「Wは投資をやって稼いでいる。いろいろ経験
している人だから、すごい刺激になると思う。」と言った。このときの電話で、Sは投資用
DVDの話はしなかった。
数日後、丁はWと会うために、Sと銀座の喫茶店に行った。Wは、通常の生涯年収では、
支出に対して数千万円足りなくなると丁に説明をし、収入を増やす手段として投資があると
言った。丁は「投資をやったこともないし、分かりません。」と伝えた。
Wは、「投資をするときに心理的要因が働くと、判断が揺らぐ。実は、ある投資のシステ
ムがあって、そのシステムに従ってやると、感情に流される要因を無くして、勝ちやすくな
る。もちろんそのシステムを使えば絶対に勝てるわけではないけど、長く続けていくことで
勝ちやすくなる。実際自分もかなり稼いでいる。」と言った。Wは続けて、「先物取引とか
日経225とか分かるかな。」と丁に聞いた。丁は「聞いたこともないです。」と答えた。
するとWは、それらの説明をし始めた。説明の最後に、システムを使った実績と言いながら
紙を見せ、「下に儲かった金額が書いてある。」と言った。そしてWは、システムが入った
DVDがあり、56万円だと説明した。丁は、購入する資金もなく、また投資に興味がなか
ったので、買う気は全くなかった。しかし、いきなり断るのも失礼かと思い、「やるかどう
かは考えたいので、Sとも相談してみます。」とWに伝え、Wと別れた。
丁がSに「56万円もどうやって払った?」と聞くと、Sは、「消費者金融で借りた。」
と言った。丁が「もし消費者金融で借りて買うなら、親に話す。」と言うと、Sは「お金を
借りるって言ったら、親は絶対反対する。親に言わないほうが絶対いい。消費者金融で借り
るって抵抗あると思うけど、自分はちゃんとお金を返している。」と言った。そしてSが「自
分を誘ってくれた人が、偶然近くにいる。詳しく話をしてくれるから会ってみない。」と言
った。丁とSは、近くの喫茶店に移動し、Uと合流した。丁は、SとUから「DVDをなぜ
買わないのか。」という話ばかりされた。丁が「56万円もお金がない。」と言うと、Uは
「みんなお金を借りてるし、投資で返していけばいい。俺はグレースに入って投資をして稼
いで、半年経たずに返した。みんな返せているし、すぐに返せる。」と言った。丁は、Uの
「すぐに返した。」という発言や、Wが見せた実績表で大きい金額を儲けていたことから、
お金を借りても、投資で儲かったお金ですぐに返せば問題ないのではないかと思え、契約す
る旨をSとUに伝えた。するとSから「Wに買いますという内容のメール送って。」と指示
されたため、丁はWにメールを送った。
後日丁は、SとUと一緒に都内の喫茶店に行った。丁がお金を借りられるか審査するため
に、Sが丁の携帯を使い、二つの消費者金融の審査するサイトに丁の個人情報を打ち込んだ。
その際にSは、年収、職業等に関して、嘘の情報を打ち込んだ。丁が「嘘をついて大丈夫で
すか?」と聞くと、Uは「嘘をつかないと借りられないし、みんなやっている。」と言った。
そしてUは「審査が通ったら、消費者金融から電話がくる。電話に動揺して出ると怪しまれ
る可能性があるから、堂々と電話に出て。」と言われた。二つの消費者金融の審査が通ると、
丁はUから「○○(消費者金融)は自動音声だから、○○から行って。」と言った。丁はS
に案内され、○○の無人店舗に行き、お金を借りた。
同日、丁はSと都内の喫茶店に行き、契約をした。
契約して数日後、Uと V の勧めで、丁は証券会社の口座を開く手続きをした。手続き申請
は、V が手伝った。そのとき丁は V から、資産は300万から500万あり、先物取引の経
験があると嘘の申告をするよう指示された。
契約して数か月後、丁は投資を行うための資金が貯まらず困っていると、Wから「バイト
の稼ぎでお金を貯めるより、もっと早く貯まる方法がある。DVDを誰か一人に紹介したら、
グレースから10万円お礼に払う。」と言われた。
契約後に、投資方法を学ぶミーティングが開かれていたが、紹介ビジネスの話を聞いて以
降は、丁のミーティングでは勧誘方法の話ばかりをされた。
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