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日本と世界の食料安全保障(PDF)

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日本と世界の食料安全保障(PDF)
日本と世界の食料安全保障
外務省経済局経済安全保障課
平成28年5月
目次
1
食料安全保障(Food Security)
2
日本における総合的な食料安全保障
3
世界の食料情勢
4
穀物等の国際価格の動向
5
世界と日本の食料需給をとりまく状況(穀物・油糧種子)
6
世界と日本の食料需給をとりまく状況(肉類)
7
日本の食料安全保障のための外交的取組
8
世界の食料生産の促進
9
安定的な農産物市場及び貿易システムの形成
10 脆弱な人々に対する支援・セーフティーネット
11 【参考】食料安全保障に関する主な国際機関への貢献
12 【参考】主な国際フォーラム(G8(7),G20,APEC等)における最近の議論
食料安全保障(Food Security)
食料安全保障は,すべての人が,いかなる時にも,活動的で健康的な生活に必要な
食生活上のニーズと嗜好を満たすために,十分で安全かつ栄養ある食料を,物理的にも
経済的にも入手可能であるときに達成される。
“Food security exists when all people, at all times, have physical and economic access
to sufficient, safe and nutritious food to meet their dietary needs and food
preferences for an active and healthy life.” - World Food Summit, Plan of Action
世界食料サミット
(1996年:国連食糧農業機関(FAO))
【食料安全保障の4要素】
Food Availability(供給面): 適切な品質の食料が十分に供給されているか?
Food Access(アクセス面):
Utilization(利用面):
栄養ある食料を入手するための合法的,政治的,経済的,
社会的な権利を持ちうるか?
安全で栄養価の高い食料を摂取できるか?
Stability(安定面):
いつ何時でも適切な食料を入手できる安定性があるか?
出典:2006 FAO Policy Brief
3
日本における総合的な食料安全保障
食料安全保障とは
食料は人間の生命の維持に欠くことができないものであるだけでなく,健康で充実した生活の基礎として重要
なものです。したがって,国民に対して,食料の安定供給を確保することは,国の基本的な責務です。
このため,平成11年7月に公布・施行された「食料・農業・農村基本法」においては,国内の農業生産
の増大を図ることを基本とし,これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせ,食料の安定的な供給を確
保することとしています。また,凶作や輸入の途絶等の不測の事態が生じた場合にも,国民が最低限
度必要とする食料の供給を確保しなくてはなりません。
世界的な人口増加等による食料需要の増大,気候変動による生産減少など,国内外の様々な要因に
よって食料供給に影響を及ぼす可能性があり,食料の安定供給に対する国民の不安も高まっています。
このため,不測の事態に備え,日頃からそうした要因の影響等を分析,評価するとともに,不測の事
態が生じた場合の具体的な対応手順の整備等を進めておくことが重要です。こうした取組を通じて,総
合的な食料安全保障の確立を図っていきます。
同法においては,不測時における食料安全保障に関する規定を設け,不測時において国が必要な施策を
講ずることを明らかにしています。
食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)(抜粋)
(食料の安定供給の確保)
第2条 食料は,人間の生命の維持に欠くことができないものであり,かつ,健康で充実した生活の基礎として重要なものである
ことにかんがみ,将来にわたって,良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。
2 国民に対する食料の安定的な供給については,世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ,
国内の農業生産の増大を図ることを基本とし,これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。
4 国民が最低限度必要とする食料は,凶作,輸入の途絶等の不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ迫
し,又はひっ迫するおそれがある場合においても,国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生じないよ
う,供給の確保が図られなければならない。
(不測時における食料安全保障)
第19条 国は,第2条第4項に規定する場合において,国民が最低限度必要とする食料の供給を確保するため必要があると
認めるときは,食料の増産,流通の制限その他必要な施策を講ずるものとする。
出所:農林水産省「食料・農業・農村基本計画」を基に作成
4
世界の食料情勢
●中長期的に世界の食料需給のひっ迫及び国際価格の高水準での推移が見込まれる。
世界の人口は,2050年には約97億人となり,特に南アジア・サブサハラ
などの途上諸国を中心に大幅増加することが予想されている。
(億人)
100
世界の穀物生産量は,単収の向上を主因に増加することが
予想されるが,穀物需要も増加し,中長期的には期末在庫率
が低下することが予想される。
中南米
80
北米
サブサハラ
60
中東,北アフリカ
出典:農林水産政策研究所 「世界の食料需給の動向と中長期的な見通し」(平成28年3月)
40
サブサハラ
南アジア
20
東アジア,大洋州
0
1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050
(出典:World Bank)
人口増加に伴い,世界の穀物消費量も増加することが予想される。
さらに,一人当たりの肉類消費量が増加し,飼料用の穀物消費量も
食用を上回るペースで増加すると予想されている。
期末在庫率は農林水産政策研究所のデータをもとに外務省が算出
穀物価格は,2008年頃の相場高騰の前のレベルには戻らず,
中長期に高値を維持することが予想されている。
穀物及び大豆の国際価格見通し
出典:農林水産政策研究所 「世界の食料需給の動向と中長期的な見通し」
(平成28年3月)
出典:農林水産政策研究所 「世界の食料需給の動向と中長期的な見通し」(平成28年3月)
穀物等の国際価格の動向
●2007~09年に穀物を含む食料価格が乱高下。その後,小麦等の豊作もあり相場は下落。
●2011~12年に米国の産地での高温・乾燥により相場が再度上昇。その後は過去最大レベルの生産量により
相場は下落したが,2007年より前の相場レベルに比べ,大幅に高いレベルを維持している。
●2016年は主要穀物等の潤沢な期末在庫が見込まれるが,相場は天候悪化に対して引き続き敏感に反応して
おり,4月から南米産地の天候不良により,大豆相場は再度上昇傾向にある。
資料:農林水産省 穀物等の国際価格の動向
6
世界と日本の食料需給をとりまく状況(穀物・油糧種子)
● 日本の穀物・油糧種子の輸入先は米国,カナダ,ブラジル,豪州に集中している。
小麦
とうもろこし
大豆
アルゼンチン 1%
その他 4%
中国 1%
ウクライナ 3%
日
本
の
輸
入
状
況
豪州 16%
カナダ 11%
ブラジル 16%
2015年
2015年
輸入量
輸入量
553万トン
2015年
ブラジル 16%
1,471万トン
米国 51%
輸入量
324万トン
米国 80%
米国 72%
カナダ 29%
出所:財務省貿易統計(2015年)より作成
その他 11%
その他 32%
生産
2015/16年
その他 24%
アルゼンチン
3%
(見込み)
734百万トン
中国 18%
米国 8%
EU 6%
米国 36%
インド 2%
中国 4%
2015/16年
米国 34%
2015/16年
アルゼンチン
18%
(見込み)
969百万トン
(見込み)
316百万トン
ブラジル 8%
ロシア 8%
中国 23%
インド 12%
その他 11%
その他 29%
EU 20%
米国 36%
ロシア 4%
ブラジル 31%
その他 5%
カナダ 3%
パラグアイ 4%
ブラジル 31%
アルゼンチン 18%
輸出
世
界
の
生
産
・
輸
出
状
況
EU 22%
ウクライナ
13%
2015/16年
(見込み)
167百万トン
ロシア 15%
2015/16年
2015/16年
(見込み)
(見込み)
121百万トン
133百万トン
米国 34%
アルゼンチン
15%
豪州 10%
カナダ 13%
米国 13%
ブラジル 21%
出所:農林水産省 海外食料需給レポート(Monthly Report) 2016年5月より作成
7
世界と日本の食料需給をとりまく状況(肉類)
● 日本の肉類の輸入先も米国,カナダ,ブラジル,豪州に集中している。
牛肉
日
本
の
輸
入
状
況
豚肉
メキシコ 2% カナダ 2%
NZ 3%
鶏肉
米国 4%
その他 14%
タイ 17%
豪州 59%
2015年
米国 33%
49万5千トン
2015年
2015年
メキシコ 9%
輸入量
輸入量
輸入量
52万9千トン
79万1千トン
(注)鶏肉調整品
除く
スペイン 9%
米国 33%
フィリピン 1%
ブラジル 77%
デンマーク 14%
カナダ 21%
出所:財務省貿易統計(2015年)より作成
その他 14%
米国 19%
その他 33%
ブラジル 3%
生産
2015年
5,839万トン
米国 20%
中国 50%
2015年
2015年
生産量
生産量
1億1,032万トン
8,871万トン
米国 10%
生産量
ブラジル 16%
インド 7%
EU 13%
インド 19%
その他 26%
その他 7%
中国 3%
ブラジル 9%
その他 13%
EU 33%
カナダ 17%
955万トン
ブラジル 37%
中国 4%
タイ 6%
2015年
輸出量
ブラジル 15%
EU 12%
2015年
中国 15%
インド 4%
EU 21%
中国 12%
輸出
世
界
の
生
産
・
輸
出
状
況
その他 34%
ロシア 2%
輸出量
2015年
輸出量
721万トン
EU 12%
NZ 7%
1,027万トン
豪州 19%
米国 11%
米国 31%
ブラジル 18%
米国 28%
出所:USDA Livestock and Poultry: World Markets and Trade April 2016より作成
8
日本の食料安全保障のための外交的取組
世界の状況
日本の状況
【背景】
食料供給のうち,カロリーベースで6割,
生産額ベースで4割を海外に依存
農地の減少,農業人口の高齢化等の生産拡大に向けた
課題
世界人口の増加
新興国の経済発展による食生活の変化
バイオエネルギー生産の増加
気候変動,異常気象の頻発
輸出余力のある国は限定的
食料価格の不安定性の拡大,農産品の金融商品化
【外交的取組】
• 投資促進
世界の食料生産の促進
責任ある農業投資の推進に向けて,世界食料安全保障委員会(CFS)が策定した「農業及び
フードシステムにおける責任ある投資のための原則」の推進,FAO・世界銀行等の調査研究の支援,
官民連携によるフードバリューチェーン構築に向けた二国間対話や官民ミッションの開催 等
• 農業・農村開発,研究開発・ 技術普及の推進
アフリカにおける稲作振興(CARD) 等
• 気候変動への対応等
干ばつ等の自然災害の予防・早期警戒システム構築 等
安定的な農産物市場及び
貿易システムの形成
• 自由貿易体制の維持・強化に向けた取組,市場機能に対する監視
WTOの下での輸出制限の原則禁止,経済連携協定における輸出制限に関する規律の強化,
価格動向のフォロー(農業市場情報システム(AMIS)等),価格変動への対策 等
• 食料援助
脆弱な人々に対する支援・
セーフティネット
穀物等の供与 等
• 栄養支援
栄養指導,栄養補助食品の供与 等
• 社会的セーフティーネット構築支援
最貧困層に対する生活手段付与 等
緊急事態や食料危機
に備えた体制づくり
※G7伊勢志摩サミットにおいては,2015年の
独エルマウ・サミットで掲げられた「2030年までに
5億人を飢餓・栄養不良から救出する」との
目標に向け,「食料安全保障と栄養に関する
G7行動ビジョン」を策定。
• 国際的な協力枠組
ASEAN+3 緊急米備蓄(APTERR),G20の迅速対応フォーラム(RRF)
(※国内体制整備としては,緊急事態食料安全保障指針がある)
(注)FAO:国連食糧農業機関
9
世界の食料生産の促進
1 責任ある農業投資
●日本が2009年7月のG8ラクイラ・サミットの機会に「責任ある農業投資」というコンセプトを提案。
●本コンセプトは,投資受入国の政府,小農を含めた現地の人々,投資家という三者の利益の調和及び最大化を目指すも
のであり,日本のイニシアティブのもと,4国際機関(FAO,IFAD,UNCTAD,世界銀行)が「責任ある農業投資原則(the
Principles for Responsible Agricultural Investment : PRAI)」を策定した。
●2013年に,日本は,第5回アフリカ開発会議(TICADV),APECの開催に絡めて,上記4国際機関の取組の紹介や投資に
関する意見交換を中心としたセミナーを開催(TICADは4国際機関が主催,APECは日本・インドネシアが共催)。
●2012年から,FAO,IFAD,WFPの共同開催による世界食料安全保障委員会(CFS)において「農業及びフードシステムにお
ける責任ある投資のための原則(the Principles for Responsible Investment in Agriculture and Food Systems)」として
協議が進められ,2014年10月のCFS総会にて同原則が採択された。
2 アフリカ稲作振興のための共同体
CARD: Coalition for African Rice Development
●2008年5月,第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)で立ち上げを表明。稲作振興に関心のあるアフリカのコメ生産国と連携し,
二国間ドナー,アフリカ地域機関国際機関,国際NGOが参加する協議グループ。
●サブサハラ・アフリカのコメ生産量を,2018年までの10年間で,14百万トンから28百万トンに倍増することを目標としており,
2014年時点で25百万トン(達成率:74%)への増産を達成。 (数値:riceforafrica.net)
●日本は,CARD参加国の国別稲作振興戦略(NRDS)の作成を支援し,各参加者がNRDSに基づき各国で事業を実施中。
3 小規模園芸農民組織強化計画プロジェクト
SHEP :Smallholder Horticulture Empowerment Project
●2006年からケニアにて3か年実施された技術協力プロジェクト,SHEP(Smallholder Horticulture Empowerment Project)
では,122グループ2,000人以上の小規模園芸農家に対し,研修や農家による現地市場調査等を通じた農民組織強化,
栽培技術,農村道整備に係る指導を実践し,約2倍の所得増加を達成。
●上記SHEPで生まれた取組,SHEPアプローチは第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)において,同アプ
ローチのアフリカ諸国での広域展開を表明。
現在,研修を起点とした技術支援をアフリカ各国において推進,2015年度末時点で20か国に展開中。
10
安定的な農産物市場及び貿易システムの形成
農業市場情報システム(AMIS: Agricultural Market Information System)
●食料価格乱高下への対応策として,2011年6月G20農業大臣会合(パリ)にて立ち上げ決定。
●G20各国,主要輸出入国,企業や国際機関が,タイムリーで正確,かつ透明性のある農業・食料市場の情報(生産量や
価格等)を共有する。
●目的は以下の4つ。
1 農業市場情報,分析,予測を国家及び世界レベルで向上
2 必要に応じ,構造的問題点を含めた異常な国際市場の状況の報告及びそれら市場状況に対する世界的な早期
警戒能力の強化
3 政策情報の収集・分析,対話と対応,国際的な政策協調の促進
4 参加国のデータ収集能力の構築
●迅速対応フォーラム(RRF: Rapid Response Forum)
AMISにおける枠組の一つ。AMIS参加国の高級実務者で構成。政策協調や共通戦略の策定を奨励するため,異常な
市場状況への対応について早期の議論を促進する枠組。
国際穀物理事会(IGC:International Grains Council)
●穀物貿易に係る国際協力を促進するための「穀物貿易規約」の運用機関として,1995年に国際小麦
理事会を改組する形で設立。
●事務局はロンドン,事務局長は北原悦男氏(農水省出身)
任期:1期目2006.2~2011.1,2期目2011.2~2016.1。現在,2期目の延長中で,任期は2017年1月末。
●穀物貿易に係る国際協力の促進,国際穀物市場の安定への寄与,穀物貿易に係る情報交換の場の提供を行う。
11
脆弱な人々に対する支援・セーフティーネット
パレスチナ
・市場指向型農業のための農業普
及改善プロジェクト
イラク
・クルド地域園芸技術の改善・
普及(栽培条件や市場ニーズに
適応した栽培技術の普及)
ボスニア・ヘルツェゴビナ
・農村開発を通じた民族間の信頼
醸成
タジキスタン
・バッタ管理対策改善計画(FAO連携)
農作物への被害を及ボスバッタの駆除及び
大量発生防止のための調査・分析
バングラ
・村落住民の意向を反映した小規模水
資源開発
カンボジア
・淡水養殖改善・普及プロジェクト(種苗
生産農家の育成)
ミャンマー
・複合的な農業分野・地域開発支援
(政策支援・人材育成,基盤整備,農
業普及,畜水産等)
ブラジル
・(成果)日伯セラード農業開発
1974年にセラードの開発支援を表明,そ
の後2001年まで協力事業を実施。これ
により,一大穀倉地帯を作り上げ,大豆
を始め,様々な農作物の生産が拡大し
た。
フィリピン
・ムスリム・ミンダナオ自治地域の稲作中
心営農技術普及プロジェクト
サブサハラ・アフリカ
・アフリカ稲作振興のた
めの共同体(CARDイニ
シアティブ)
アフリカ各国
・市場指向型農業(SHEP)ア
プローチの推進
ザンビア
・干ばつ等に苦しむ小規模農
民のため灌漑整備や稲作技術
普及を通じて支援。
スーダン
・平和の定着に向けた生計向上
支援プロジェクト(避難民支援)
東ティモール
・マナツト県灌漑稲作プロジェクト
タンザニア
・灌漑農業技術普及支援体制
強化計画(タンライス)
インドネシア
・(成果)息の長い支援で「コメ自給」を実現
(1970年:1,930万トン→2008年:6,025万ト
ンと生産量は3倍以上)
モザンビーク
・アフリカ熱帯サバンナ農業開発
プログラム(ProSAVANA)
スリランカ
・トリンコマリー住民参加型農業農村復興
開発計画
12
食料安全保障に関する主な国際機関への貢献
参考
国際連合世界食糧計画(WFP)
国連唯一の食料支援機関で,世界最大の人道支援機関。
日本は,2015年の拠出額は第6位。緊急食料支援のみならず,復興支援でも協働。
具体的には,フード・フォー・ワークや学校給食事業を通じ,各国の農業生産力を強化。
「前進のための食料購入(P4P:Purchase for Progress)」との連携を通じ,小規模農家の収入を向上。
※P4P:小規模農家の収入向上を目的に,作物を適正価格で買い取り食料支援に用いたり,ポストハーベストの能力強化支援等を行うもの。
国際連合食糧農業機関(FAO)
194ヵ国とEUが加盟する国連専門機関で,国際基準・規範の策定,情報収集・提供,政策提言,討議の場の提供,開発
援助を行う。
日本は,分担金拠出額で第2位,また理事国として組織の運営に積極的に関与している。
FAOとの連携による無償資金協力として,ミャンマーやアフガニスタン等における農村開発等のプログラムを支援。
FAO,IFAD,WFPの共同開催による世界食料安全保障委員会(CFS)では,2014年10月に「農業及びフードシステムにお
ける責任ある投資のための原則」を採択。
国際農業開発基金(IFAD)
173ヵ国が加盟する国連専門機関で,途上国に対する譲許性の高い貸付及び無償資金供与により,農業開発を推進。
日本は,IFAD設立以来の理事国メンバーであり,昨年12月の第10次増資協議において,5,700万ドルの支援を表明。
我が国とIFADとの連携強化のため,2010年にJICAとIFAD間でMOUを締結。CARDイニシアティブを中心に,コメに関する「バ
リューチェーン強化」,「各国政府の能力強化」,「南南協力推進」等の分野での連携事業を実施。
近年,IFADは生産者を含む官民連携(4Ps:public-private-producer partnerships)にも力を入れており,我が国企業との
意見交換等も実施。
国際農業研究協議グループ(CGIAR)
2009年のCGIAR改革を踏まえ,研究コンソーシアム(15の研究センターを代表)と基金理事会(42のドナー国政府),175の
研究機関,5基金,11の国際/地域機関,82の民間部門等が拠出)で構成され,世界規模で開発目的の農業研究を推
進する唯一の専門機関。
日本は,基金理事会のアジア先進国代表の理事国として,CGIARの取組を支援。
各研究センターに約30名の邦人が理事や研究者として参画。代表的な研究成果であるアジアの緑の革命の契機となる品
種開発やアフリカのネリカ稲の開発には日本も大きく貢献してきたほか,近年は我が国企業との連携も進展。
13
主な国際フォーラム(G7/G8,G20,APEC等)における最近の議論
参考
2007-2008年にかけての価格高騰・食料不安の発生以降,日本は国際社会と協調し,取組を進めている。
2008年 G8洞爺湖サミット(日本主催)
「農業・食料安全保障に関するグローバル・パートナーシップ」の構築を進めることに合意。
G
7
/
G
8
2009年 G8ラクイラ・サミット
3年間で220億ドルの農業分野での資金動員を誓約,農業投資の促進等について議論。
2012年 G8キャンプ・デービッド・サミット
「食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンス」を採択。
2015年 G7エルマウ・サミット
「食料安全保障及び栄養に関するより広範な開発アプローチ」を採択。
2016年 G7伊勢志摩サミット(日本主催)
前年の独エルマウ・サミットで掲げられた「2030年までに開発途上国の5億人を飢餓・栄養不良から救出する」との目標に向け,「食料安全
保障と栄養に関するG7行動ビジョン」を採択。
2010年 ソウル・サミット
食料安全保障を含めた「開発に関する複数年行動計画」を採択。
G
2
0
2011年 カンヌ・サミット/農業大臣会合(パリ・フランス)
持続可能な農業生産と生産性の向上及び市場透明性向上の取組等を含む「食料価格乱高下及び農業に関する行動計画」を採択。
2014年 ブリスベン・サミット
G20が長期的に統合された持続可能なフードシステムの取組を行うための基盤となる「食料安全保障・栄養フレームワーク」を採択。
2015年 アンタルヤ・サミット/農業大臣会合(イスタンブール・トルコ)
「G20食料安全保障・栄養フレームワークの実施計画」,農業大臣会合コミュニケ,「食料安全保障と持続可能なフードシステムに係るG20
行動計画」を採択。
2016年 農業大臣会合(西安・中国)
持続可能な開発,農業イノベーションを推進する農業大臣会合コミュニケを採択。
A
P
E
C
2010年 第1回食料安全保障担当大臣会合(新潟・日本)
持続可能な農業の発展と投資,貿易及び市場の円滑化について議論。「APEC食料安全保障に関する新潟宣言」及び「APEC食料安全
保障行動計画」を採択。
2012年 第2回食料安全保障担当大臣会合(カザン・ロシア)
新潟宣言を再確認。農業生産の増大と生産性の向上,貿易円滑化と食料市場の発展等について議論。「APEC食料安全保障に関する
カザン宣言」を採択。
2014年 第3回食料安全保障担当大臣会合(北京・中国)
農業生産性の向上及び食料生産の強化,食品ロス削減に向けた取組,地域協力の強化について議論。「APEC食料安全保障に関する
北京宣言」を採択。
14
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