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右手左手系複合線路の透過係数
法政大学大学院理工学・工学研究科紀要 Vol.56(2015 年 3 月) 法政大学 右手左手系複合線路の透過係数 TRANSMISSION COEFFICIENT OF A COMPOSITE RIGHT-AND LEFT-HANDED TRANSMISSION LINE 田中 海唯 Miyu TANAKA 指導教員 中野久松 法政大学大学院理工学研究科電気電子工学専攻修士課程 This paper explains the transmission coefficient S21 of a composite right-and left-handed transmission line (CRLH-TL). The CRLH unit cell is modeled based on the concept of a micro strip line, which is printed on a dielectric substrate. A comparison of equivalent circuit results and simulation results is presented. Key Words: CRLH-TL, transmission coefficient, metamaterial 1. まえがき 全長 p[m]の等価回路における各種パラメータ値は以下の 左手系線路特性を有するアンテナが検討されている.例 通りになる. として,メタマテリアルヘリカルアンテナなどが挙げられ る[1][2].このアンテナは反円偏波特性を有しており,周波 数の切り替えで左旋右旋両円偏波の放射が可能である.本 稿では CRLH-TL の透過係数(S21)に着目し,等価回路モデ ル及び解析モデルから透過係数を導出する. 2.CRLH-TL の等価回路モデル 1 Z j L R C L Y j C 1 R L L CR C'R p L R L'R p CL C'L / p L L L 'L / p 図 1 に CRLH-TL の等価回路モデルを示す.この回路は, 従来の右手系回路に左手系特性が組み込まれた右手左手 Z 系複合線路となっている[3].なお,回路定数を L'R[H/m], C'R[F/m] ,C'L[F・m] ,L'L[H・m]で表している.直列インピ Z LR CL CL LR ーダンス Z'及び並列アドミタンス Y'を式(1)と式(2)に示す. Y 1 Z' j L' R C' L 1 Y' j C' R L' L CR LL (1) p (2) 図1 CRLH-TL 等価回路モデル 3.CRLH-TL 等価回路モデルの透過係数計算法 I1 図 1 で示した等価回路の F パラメータは式(3)のように I2 なる. F パラメータは回路のインピーダンスとアドミタ ンスから求めることができる. Z0 Z0 V1 A B 1 ZY 2Z Z Y F 1 ZY C D Y Black Box V2 2 (3) 次に F パラメータから透過係数 S21 を求める式を導出す port2 port1 図3 ポートを接続した 2 ポート回路 る[4].図 2 に 2 ポート回路を示す.V1+,V2+はそれぞれ port1,port2 での入射電圧を示している.V1-,V2-はそれぞ れ port1,port2 での反射電圧を示している. V1 Z1I1 2 V1 [ ] S1 1 S1 2 V1+ V1− S2 1 S2 2 V2+ (8) V2 V2 V2− (9) (7)式に(8)式と(9)式を代入すると(10)式のようになる. 図2 2 ポート回路(S パラメータ) S 21 図 2 の 2 ポート回路の S 行列を式(4)に示す. V1 S11 S12 V1 V2 S 21 S 22 V2 I1 (4) (10) I2 [ ] V1 この行列を展開すると V1 S11 V1 S12 V2 2V2 V1 Z1I1 図4 A B C D V2 2 ポート回路(F パラメータ) (5) 図 4 の F 行列を式(11)に示す. V2 S21 V1 S22 V2 (6) V1 A B V2 I C D I 2 1 V2+=0 のとき S 21 V2 V1 (7) 図 3 にポートを接続したときの 2 ポート回路を示す.この (11) この行列を展開すると以下のようになる. V1 A V2 B I 2 (12) I1 C V2 D I 2 (13) ときの V1+ と V2-を式(8),(9)に示す. (12)式と(13)式を(10)式に代入して整理する. S 21 2V2 V1 Z1I1 CL CL w port1 2V2 AV2 BI 2 Z1 CV2 DI 2 port2 p 0 /2 g p0 p 2 V2 I 2 A V2 I 2 B Z1 C V2 I 2 D 図 5-1 CL 2Z 2 AZ2 B CZ1Z 2 DZ1 p 0 /2 (14) CL LL 図 5-2 よって,(14)式に(3)式の結果を代入することで透過係数を 図5 計算できる.5 章の比較では,Z1 = Z2 = 50 としている 上面図 2r v ia B 側面図 CRLH-TL の解析モデル (Z1 と Z2 はそれぞれ port1 のインピーダンス,port2 のイ ンピーダンスを示す). 以下にマイクロストリップラインの自然系特性インピー ダンス Z0 の導出式を記述する. 4.CRLH-TL の解析モデル 図 5 に CRLH-TL の解析モデルを示す.解析には CST w MICROWAVE STUDIO を使用する.推移周波数 fT は 3.0 GHz とする.セルの中心導体には金属ピンがあり,グラン ド板と金属ピンの間にリアクタンス LL が装荷されている. r B また,両端から p0/2 の位置にキャパシタンス CL がひとつ ずつ装荷されている.表 1 に各種パラメータを示す.ただ し,本解析モデルの自然系特性インピーダンスは,B,w, 図6 マイクロストリップライン r から 50Ωと算出される. 表1 各種パラメータ Symbol Value r 1.6 mm W 4.4 mm p 10 mm p0 4 mm g 1 mm r v ia 0.5 mm fT 3.0 GHz w 1 のとき B Z0 60 8B w ln eff w 4B (15) w 1 のとき B Z0 120 eff 1 w 0.44B B 2.42 1 B w w 6 (16) r 1 r 1 2 2 1 10B w (17) S21 [dB] eff 5.等価回路モデルと解析モデルの透過係数 { 図 7 に等価回路モデル及び解析モデルから求めた透過 係数の比較を示す. 1 ユニットセルだけでなく,参考と して 2~4 ユニットセル線路の結果も載せる.なお,使用 1 2 するインダクタンスとキャパシタンスの値は,文献[3]の 手法を使用して求めた表 2 の値を使用する. 図 7-3 表 2 使用したインダクタンスとキャパシタンス Value C RL 1.35 pF LR 2.29 nH CL 1.23 pF LL 2.08 nH S21 [dB] 3 Frequency [GHz] 4 5 3 ユニットセルの透過係数 { 1 2 図 7-4 図7 等価回路モデル 解析モデル 3 Frequency [GHz] 4 5 4 ユニットセルの透過係数 回路モデルと解析モデルの透過係数 6.まとめ { 1 2 図 7-1 CRLH-TL の透過係数(S21)について導出法を示し,検討 等価回路モデル を加えた.図 7 に示すとおり,等価回路モデルと解析モデ 解析モデル ルから求めた結果は同じものとなった.この結果より,左 3 Frequency [GHz] 4 5 参考文献 [1] H. Nakano, M. Tanaka, and J. Yamauchi, “Metahelical antenna using a left-handed property,” Antennas and Propagation in Wireless Communications, pp74 - 77, Torino, Italy, September 2013 [2] H. Nakano, M. Tanaka, and J. Yamauchi, “Radiation from a metahelical antenna,” International Symposium on Antenna and Propagation (ISAP), vol. 2, pp1206 - 1207, Nanjing, China, October, 2013 [3]三宅, “右左手系複合伝送線路,”法政大学大学院工学研 { 1 2 図 7-2 手系線路の透過係数(S21)の有効性が確認できた. 1 ユニットセルの透過係数 S21 [dB] 解析モデル S21 [dB] Symbol 等価回路モデル 等価回路モデル 究科紀要,vol.54,2013 年 3 月 解析モデル 3 Frequency [GHz] [4]市川“高周波回路設計のための S パラメータ詳解,”CQ 4 2 ユニットセルの透過係数 5 出版社