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2014-2 - 東京工業大学
授業料不徴収協定に基づく派遣交換留学終了報告書 留学プログラム名 派遣交換留学 所属(本学) イノベーションマネジメント研究科 現在の学年 修士 2 年 留学先国 スイス 留学期間 2014 年 9 月 1 日~ 2015 年 8 月 31 日 技術経営専攻 留学先大学 スイス連邦工科大学 チューリッヒ校 1 留学先大学の概略 ○ E A 大学名はスイス連邦工科大学チューリッヒ校です。英語名は Swiss Federal Institute of Technology Zurich で、通常省略して ETH(ドイツ語読みでエーテーハー、英語読みでイーティーエイチ) Zurich と呼 びます。私が所属した学科は Department of Mathematics(D-MATH)です。名前のとおり大学はチューリ ッヒにあり、私が所属した数学科のある建物はチューリッヒの中心街を一望できる場所に建っています。 この大学は世界的にも有名な大学で、THE – World University Ranking, Times Higher Education によりま すと、2015 年時点で世界第9位に位置付けています。卒業生の中には物理学者の Albert Einstein や数 学者の John von Neumann などがおり、教授では数学者の Hermann Weyl などが ETH で教鞭をとってい たそうです。 2 留学前の準備 ○ A E A 私が留学の準備を始めたのはスイスに出発するちょうど1年と3か月前で、その頃はちょうど大学院入 試への準備が始まる6月頃だったと思います。私の場合、留学をしたいという意識は(目的は出発直前 時点とは違ったのですが)もともとあり、友人の中にもすでに派遣交換留学を計画していた人がいたので、 留学に関する情報はある程度持っていました。留学の必要性や滞在期間、留学先の大学の選択につい ては、大学院入試で希望していた研究室の教授に相談していました。留学中の目標は研究に必要な知 識の習熟と修論の下準備でしたが、もともとはそうではなく、留学を計画し始めた段階での目的は異文 化交流や語学(英語)の習得でした。目的を変えたきっかけは教授のアドバイスだったので、指導教員に 相談することは私にとって非常に重要だったと思います。ETH に留学することに決定した主な理由も教 授の推薦です。また、ETH の教授を紹介していただいたので、留学中はその方の指導を受けることがで きました。 留学を意識し始めたのは1年と3か月前ですが、今思い返すともう少し早く準備をしていれば余裕が持 てたかもしれません。留学の必要条件には TOEFL のスコアの合格基準が設定されていたのですが、当 時の私は留学可能なほど英語が得意ではなく、最終的に書類に記入した点数も TOEFL ITP のスコアで 文字通りギリギリのライン(ちょうど合格ラインの点数)でした。英語があまり得意ではないけど留学した いという方には、辛いかもしれませんが英語だけはなるべく勉強しておくことをお勧めします。ちなみに、 チューリッヒでは多くの人が英語を話せる上、大学院の講義も基本的にすべて英語なので、ドイツ語が 話せなくて困ることはあまりありませんでした。 留学期間は1年でした。研究科の必修単位との関係もあり、私は修士課程をあらかじめ3年間のものと して見積もっていました。そのため、留学中は自分のペースで勉強することができたと思います。 次に入国の手続きについてですが、私が応募した段階では日本―スイス間のビザは不要で、入国・滞 在に関する手続きはすべて入国後に行いました。したがって入国時に提示したものは大学の acceptance letter とパスポートだけだったと思います。acceptance letter に関しては留学前に ETH の交 換留学課(student exchange office)から e メールで受けることになるでしょう。入国審査のときはその二 つをしっかり提示する必要があります(私の場合は入国審査のときになぜか別室に連れて行かれました。 原因は覚えていませんが、おそらく acceptance letter をしっかり見せなかったからだと思います)。 住居については、留学生のための寮を斡旋している WOKO という組織を通じて見つけました。詳しい案 内は大学から送られてくると思います。チューリッヒでは学生が住めるような安い住居を探すのがとても 大変なので、1年間留学したいと思っている方には WOKO に半年ではなく1年での契約をお願いすること をお勧めします。もし半年でしか契約できなかった場合、次の住居はなるべく早い段階から WOKO に依 頼することが大切です。面倒だとは思いますが、先延ばしにすればするほど見つかりにくくなると思いま す。 3 留学中の勉学・研究 ○ E A A 私の場合、もともと数学科出身ではないので、数学科の純粋数学の講義を取るということ自体難しかっ たということもありますが、私が受けたどの講義も難しかったです。 試験が難しかった理由は主に3つありました。一つは試験が筆記ではなく口頭であるということです。 私は数学科の講義しか受けていなかったので、ここでは数学科の口頭試験の方式に沿って説明しようと 思います。基本的に単位が多い(具体的には8,10,12単位などの)講義の試験は口頭で行われます。 テストが行われる状況としては、教授と受験生が机を挟んで向かい合って座り、横に採点官(TA)が座り ます。使用が許される言語はもちろん日本語ではなく英語です。単位数が多い講義の試験時間は基本 的に30分です。用意されているものは、教授の裁量に依るところが多く、講義ノートの持ち込みが許さ れ、あらかじめ質問リストが公開されるものもあれば、何のヒントもなしにテストが行われるものもありま す。私はこの両パターンを経験しましたが、いずれにせよ口頭で学術的な説明を論理的に正しく述べな ければいけなかったので非常に苦労しました。私は、こういった口頭試験の対策として、受講した講義の 内容そのものを自分自身が理解できるために勉強することも大切ですが、自分よりもむしろ他人が理解 できるように説明をする練習をすることも重要だと感じました。 4 留学中に行った勉強・研究以外の活動 ○ E A A 私は留学中常に勉強と研究の準備で忙しかったので、インターンシップやボランティアなどはしません でした。 旅行についても他の日本人留学生と比べるとあまりせず、するときはたいてい友達から誘われていま した。主にスイス国内を旅行することが多かったです。一番思い出が強く残っている場所はローザンヌで す。ここは世界遺産となっているワイン畑があることで有名で、私は日本人の友達数名と一緒に畑をハ イキングしながらワインを飲みました。天候に恵まれていたおかげで景色がとても綺麗だったのを覚えて います。 5 留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード ○ E A A 私の場合、自分自身の成長を実感するというよりも、その前に自分の性格や特徴を改めて知ることが できたという印象の方が強く残っています。留学中はもちろん留学生と交流する機会が必然的に多くな るので、相手の文化と自分の文化を比べる機会も多かったのですが、その比較を通じて、相手の性格を 理解するとともに自分がどういう人間なのかを改めて知り、実感しました。 6 留学費用 ○ A E A 留学期間が1年ということもあり、航空券は片道毎に購入しました。日本からスイスへの往路はシンガ ポール航空、スイスから日本への復路はカタール航空を使いました。往路は約11万円、復路は約7万 円かかりました。特にカタール航空は値段に対してサービスがとても充実しており、コストパフォーマンス が非常に良かった印象です。唯一辛かった点は乗り換えの際に7時間程待たなければいけなかったこと です。空港の治安は非常に良かったのですが、緊張していたせいもあり、あまり寝ることができず、日本 に着いたときは疲れ切っていた思い出があります。 スイスでの生活費ですが、寮の家賃が約6万円(スイスフランでは約500フラン)、食費が約4万円でし た。なお、ここでは1スイスフランあたり120円として計算しました。光熱費などは家賃にすべて含まれて いました。寮から大学もしくはチューリッヒ市街地までの行き来の距離については、バスとトラムを乗りつ いだ場合、時間で測って大体 30 分です。物理学科や建築学科のあるキャンパス(Honggerberg)まではも っと近いと思います(私はそこで講義を受けたことがないので、所要時間はわかりません)。チューリッヒ でアパートを探す場合、家賃が500フランのものはまず見つからないと思うので、そういう意味では非常 に良い場所だったと思います。 食費については、私の場合、朝から夜までずっと大学にいることが多かったので、ほとんどの食事は Mensa と呼ばれる学食でとりました。ただ、値段は ETH の Mensa よりもメインキャンパスのすぐ隣にある チューリッヒ大学の Mensa の方が安く、さらにおいしいとの評判だったので、私はそこでよく食べていまし た。一番安いメニューで 5.4 フラン(約 650 円)、アジア系のメニューなどについては 7 フラン(840 円)でし た。メニューは基本的に肉、パスタ、野菜、スペシャル、アジアの5種類が用意されていて、それぞれメニ ューが日ごとに変わります。 正直な感想としては、メニュー数、おいしさ、値段どの点でも東工大の学食に劣っていると感じました。 日によってはグリンピースの山盛りに肉とフライドポテトがセットとなったメニューなどが出され、毎日学食 を利用していた私にとっては大変つらかった印象です。 土曜日と日曜日は学食が開いていないので、寮で食事を作りました。スイスは物価が非常に高いので、 日本人の友達とドイツまで買い出しに行って食材を購入したのを覚えています。また、日曜日にはチュー リッヒ駅以外のスーパーは閉まるので、土曜日に食材を用意しなければならず、苦労しました。 保険についてですが、スイスでは健康保険に加入することが義務付けられているため、加入義務が免 除されない留学生は全員保険に加入し、最も安いプランで少なくとも 10 万円支払うことになります。私は 東工大が推奨していた東京海上日動の保険に入っていたため、免除申請を通すことができました。留学 の出発前の段階では「スイスの場合、東工大の推奨する旅行保険では免除申請をすることはできず、そ れとは別にスイスが指定する保険に入らなければいけない」というような説明を受けましたが、免除申請 が通ったため、私は結局スイスの保険には加入しませんでした。国の保険局から送らてくる手紙はほぼ すべてドイツ語で書かれており、読むことができなかったので、私はドイツ人の友人に手紙を読んでもら いながら免除申請を行いました。具体的な免除までの手続きは ETH が説明してくれますし、大学のホー ムページにも手順が載っています。 7 留学先での住居 ○ E A A 2 で説明しましたので、ここでは寮での生活について触れたいと思います。 一連の手続きについては ○ 私が住んでいた寮は6階建てで、各階に約13室あります。基本的に各部屋に1人ずつ割り当てられま すが、中には夫婦で一部屋に住んでいる留学生もいました。バス・トイレは共用で、大体4人ごとにバス とトイレがひとつずつ割り当てられました。キッチンはフラットにひとつずつです。私が住んだ寮は比較的 新しく、キッチンの設備や広さも十分だったのでそういった点では充実していました。 8 留学先での語学状況 ○ E A 2 、○ 3 に書きました。 ○ 9 単位認定、在学期間 ○ E A 単位認定に関しては、私の研究科ではそもそもほかの必修単位が多いため、実際には単位申請をす る必要はありません。また、未履修の必修単位が多く、さらに就職活動もしなければいけないため、在学 期間は1年間延長しました。 ⑩就職活動 在学期間を延長したので、帰国後は修士一年の学生と同じスケジュールで就職活動をしています。夏 のインターンシップには参加できなかったため、冬のインターンシップから就活をスタートする予定です。 また他の日本人留学生の中には、ボストンキャリアフォーラムなどの就活イベントなどに参加している 人もいました。 ⑫留学を希望する後輩へのアドバイス もともと私は一人で海外に出た経験はなく、海外旅行も私が小学校低学年のころに家族と一緒に行っ た程度でした。それ以前に、そもそも私はあまり旅行が好きではありませんでした。それでも留学をした かったのは、長期間海外で暮らすことが今後の人生において貴重な経験になるはずだという考えがあっ たからで、留学を終えた今でも実際にそう感じています。留学の準備はたしかに大変ですし、ある程度の 覚悟も必要になってくると思いますが、もし少しでも留学したいという気持ちがあれば、ぜひ積極的に挑 戦してほしいと思います。