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2009年4 25 、肥薩線全線開通100周年を記念し て、『SL 吉』の復活運
【ページ公開⽇:2009年6⽉5⽇】 ・こちらのページに掲載している写真は全てイメージです。現地へ来訪される時期や、当⽇の天候等によって景観は異なります。 ・掲載の事実考証(料⾦、開催期間等含む)については公開⽇時点の情報となりますのでその後、変更されている可能性があります。あらかじめご了承くださ い。 2009年4⽉25⽇、肥薩線全線開通100周年を記念し て、『SL⼈吉』の復活運⾏が始まった。改装され、 豪華で⼼地よくなった列⾞が⾛るのは、⼈吉駅から 熊本駅の区間。2009年11⽉29⽇までの間中、⾦・ ⼟・⽇曜、祝⽇、夏休みの期間(⽕曜⽇を除く)、1 ⽇1往復運⾏する。 『SL⼈吉』の復活は、実は今回で⼆度⽬となる。 1922年に⻑崎県・浦上機関庫に配置された『58654 号機(SL⼈吉牽引蒸気機関⾞』は、九州各地で50年 余り活躍した後、引退。1988年には⼀度⽬の復活を 遂げるが、2005年8⽉、⽼朽化によりついに⼆度⽬ の引退を迎える。しかし、多くの鉄道ファンや⼈ 吉・球磨地区の⽅々から熱意ある訴えなどにより、 今回の復活が決定したという。鉄道ファンならずと も、⼀度は乗ってみたい列⾞である。 ⼈吉駅から⼋代駅までの区間は、通称『川線』と呼 ばれる絶景⾞窓の路線。⽇本三急流のひとつ、球磨 川沿いを⾛る。⾞窓を通して、また時間があれば途 中下⾞して、ノスタルジックな情景に癒されてみた い。 球磨川が市内の中⼼部を流れる⼈吉市。⼈吉市は、 鎌倉初期から明治に⾄る700年余り球磨地⽅を統治 した相良家の城下町。周辺には、『相良家の居住 跡』、『⼈吉城跡』、国宝に指定(2009年6⽉現 在)された『⻘井阿蘇神社』など、往時を偲ばせる 観光名所が多々ある。 ⼈吉は温泉地としても有名で、市内には20数軒も の公衆温泉がある。地元の⼈々と触れ合いながらの 湯浴みは、宿の温泉浴とは⼀味違った味わいがあ る。なかでも、500年も前に相良家の城主が⼊浴し たと伝えられる『⼈吉温泉』は、美⼈の湯としても 有名だ。 時間に余裕があるなら、奇岩怪⽯を⾒ながら四⼗⼋瀬を下る『球磨川下り』を楽しむのも⼀興。⼈吉城跡の対岸、⼈ 吉発船場から球磨村渡までの『清流コース』と、球磨村渡発船場から球泉洞下までの『急流コース』が楽しめる。 ⼈吉駅周辺を散策したら、いよいよ出発。『川線』の旅の始まりだ。 出発点は、昔懐かしい駅弁の⽴ち売りで有名な⼈吉 駅。栗の形をした弁当箱に詰められた『栗めし』や、 球磨川産の鮎を使った『鮎すし』など、⼈吉名産の⾷ 材を⽣かした弁当が販売されている。今回の復活運⾏ を記念して作られた新駅弁も気になるところだ。 『SL⼈吉』牽引蒸気機関⾞58654号機に連結する客⾞ は、SLの持つ近代遺産としての価値を活かしつつも、 時代の変化に合わせた『快適性』を追求。1号⾞には上 品な⽩⽊、メープルウッドをふんだんに使った展望ラ ウンジが設けられ、上り(⼈吉発熊本⾏)ではパノラ マ・ビューが楽しめる。2号⾞には沿線の特産品やドリ ンク、オリジナルグッズを販売するビュッフェが、3号 ⾞には⾼級感あふれるローズウッドに包まれたサロン 展望室が設けられるなど、⾞両ごとに趣向を凝らした 演出が施されている。 ⼒強い蒸気、昔懐かしい汽笛の⾳を響かせながら、 『SL⼈吉』は熊本駅に向け出発。列⾞は球磨川に沿っ て、開業当時の姿のまま残されたトンネルや橋梁をひ た⾛る。悠々と⽔を湛える鏡のような⽔⾯、奇岩怪⽯ に囲まれた急流など、変化に富む球磨川の表情は、⾒ る⼈を飽きさせない。 ⽩⽯駅などの明治時代から残る⽊造駅舎も⾒どころのひとつ。また『川線』沿線には、懐かしい⽇本の原⾵景が今な お残っている。⼀勝地駅の近くには、⽇本棚⽥百選の⼀つ『松⾕棚⽥』があることでも知られている。時間があれ ば、ぜひ⾜を運んでみたい。 瀬⼾⽯駅を過ぎると、真っ⾚な『第1球磨川橋梁』(⻑さ 205.28m)が⾒えてくる。この橋の鉄⾻部は、1906年、 ニューヨークで製造されたという。那良⼝〜渡間でも、⽶国製 の『第2球磨川橋梁』を渡る。 肥薩線は『近代化産業遺産』(経済産業省)に認定されてお り、『球磨川第1橋梁』や『球磨川第2橋梁』、『⽩⽯駅』な ど、⽣きた鉄道遺産を⾞窓から眺めることができる。南九州の 交通を⼀気に近代化した肥薩線の歴史的鉄道施設からは、明治 時代から連綿と続いた⼈々の⻑年の努⼒と願いが伝わってくる ようだ。鉄道ファンのみならず、全国各地から多くの観光客が 訪れるのも頷ける。 『川線』の絶景⾞窓、古き良き明治時代の⾯影を⾊濃く残す鉄 道遺産……。肥薩線の旅は、⼈と⾃然と鉄道の関わりを堪能す ることができる旅だ。『SL⼈吉』が復活した今こそ、ぜひ肥薩 線の魅⼒を味わってみたい。 (取材・撮影協⼒:九州旅客鉄道株式会社、球磨地区振興局)