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沖縄県における長大飼料作物の利用(PDF:3676KB)

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沖縄県における長大飼料作物の利用(PDF:3676KB)
沖縄県における
長大飼料作物の利用
平成28年3月
自給型畜産経営飼料生産基盤構築事業
沖縄県農林水産部畜産課
目次
Ⅰ:ケーングラス・・・・・・・・・・・・・P1~5
1.特徴
2.収穫体系
3.栽培管理
4.施肥管理
5.病害虫防除
Ⅱ:飼料用トウモロコシ・・・・・・・・・・P6~7
1.特徴・品種
2.栽培・収穫体系
Ⅲ:その他長大飼料作物・・・・・・・・・・P8~9
1.ソルガム・スーダングラス
2.ネピアグラス
3.うーまく(ギニアグラス)
Ⅳ:機械収穫体系・・・・・・・・・・・・
P10~11
1.機械体系事例
2.サイレージ調製
Ⅴ:給与事例・・・・・・・・・・・・・・・P12~15
1.給与事例①(南部地区・A農場)
2.給与事例②(南部地区・B農場)
Ⅰ:ケーングラス
1.特徴
○『ケーングラス』は牛の飼料専用に開発された飼料用サトウキビ
のことです。糖度が低く、繊維分が高いため製糖用としては利用
できません。
○ケーングラスは、牧草および製糖用サトウキビと比較して高い収
量が得られます。また、長期間にわたり株出し栽培が継続できる
ため省力的に栽培できます。
5
ケーングラス
高い収量!!
製糖用サトウキビ
乾物収量(t/10a)
4
※ 種子島での事例
3
2
1
高い株出し能力!!
0
ケーングラス
製糖用サトウキビ
ローズグラス
○ケーングラスの飼料成分はローズグラスなどの暖地型牧草と比較
して、TDN(可消化養分総量)は同程度、粗タンパク質は低く、
繊維含量が多い特性があります。
飼料成分参考数値(平成27年度収量調査より)
ADF
NDF
TDN
乾物率
CP
(酸性デタージェント) (中性デタージェント)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
ケーングラス
(生草)
ローズグラス
(生草)
トランスバーラ
(生草)
20.0
52.5
5.7
45.3
75.1
23.2
48.2
8.5
40.7
72.8
26.9
56.2
10.8
38.7
70.0
※ケーングラス、ローズグラスは沖縄県中南部地区、トランスバーラは八重山地区
-1-
2.収穫体系
推奨する栽培体系(年2回収穫)
春植え
5.5ヵ月
1年目
8ヵ月
収穫
冬草
夏草(新植)
3月上旬
8月下旬~9月上旬
2年目以降
収穫
4月下旬~5月上旬
4ヵ月 収穫
8ヵ月
夏草
冬草
8月下旬~9月上旬
夏植え
収穫
4月下旬~5月上旬
9ヵ月
収穫
冬草(新植)
1年目
8月上旬
2年目以降
5月上旬
4ヵ月 収穫
8ヵ月
夏草
冬草
8月下旬~9月上旬
収穫
4月下旬~5月上旬
○梅雨の降雨を利用し、台風被害を軽減する収穫体系となっています。
夏季の干ばつ時には潅水することで収量低減を抑えることができます。
リスク
台
干
収穫時期と被植速度
収穫1ヶ月後の被植度
収穫後の気温が高い場合
収穫後の気温が低い場合
○収穫後の気温が高いと被植速度は大きくなります。
速やかに被植できると耕種的に雑草抑制できます。
-2-
越冬前の理想的な草姿
3.栽培管理
栽植密度
○栽植密度は10,000芽(2芽苗 5,000本)/10aが目安です。
栽植密度を高くすることで新植での初期生育を促進できます。
密植
初期生育が促進され、
畦間、株間の被植が早い
密植の利点
○ケーングラスは株出し栽培を長期間にわたり
継続します。このため、欠株が生じると、長
期間にわたり減収します。栽植密度を十分に
確保することが安定多収にむけて重要です。
発芽揃いが良好な圃場
培土(平均培土)
植付け時
植付け2ヵ月後
畦間 80~120cm
植溝の深さ
20~30cm
大きくなったら平均培土します。
※ 高培土は必要ありません。
畦間の中耕
○畦間を中耕することで雑草の繁茂を防ぐことができます。
-3-
4.施肥管理
(例)春植えの場合
基
肥
追
肥
基
肥
追
肥
収穫
1年目
収穫
冬草
夏草(新植)
基
肥
追
肥
2年目以降
基
肥
追
肥
収穫
収穫
冬草
夏草
○各地域の製糖用サトウキビの1作の施肥量に準じて、化学肥料を
施用して下さい(年2回収穫であるため年間投入量は2倍)。
≪沖縄本島ジャーガルでの例≫ 1作あたり施肥量
窒素:リン酸:カリ=(1年目)
19: 8: 5 kg/10a
(2年目以降)22: 9: 6 kg/10a
乳用牛スラリーを代替肥料として使えます
 植付け2ヶ月後、または株出し1ヶ月後に、追肥として
スラリーを使用できます。生のスラリー中の窒素量が
約0.3%の場合は、約4 t/10 a程度散布すれば、化学肥
料を追肥したのと同じ乾物収量が得られます。
 ジャーガルで栽培する際、スラリーを1作あたり8t/10a
以上散布すると、ケーングラスのカリウム濃度が高く
なり、牛のマグネシウムの吸収が悪くなる可能性があ
るので、まきすぎには注意しましょう。
-4-
5.雑草・病害虫防除
○収量を高めるためには、適正な栽培管理により、雑草や病害虫の
発生を抑制することが重要です。また、ケーングラスと製糖用サ
トウキビの登録農薬は異なりますので農薬の利用には注意が必要
です。
※ケーングラスは、現在、農薬適用拡大のために農薬登録申請を
実施しております。(平成28年3月現在)
適正管理を行う上でのポイント・注意
○製糖用サトウキビでは地域によって一斉防除(農薬散布)が行わ
れます。製糖用サトウキビとケーングラスの見分けがつきやすい
ように看板などの目印を立てることでケーングラスへの誤散布を
防ぐことができます(農薬が散布されたケーングラスは飼料とし
ては利用できません)。
○ケーングラスは現在、利用できる殺虫剤がありません。他の作物
へ被害が拡大するのを未然に防ぐために病害虫が大量発生した場
合は早急に刈り取る等の対処をとりましょう。
イネヨウトウの幼虫
イネヨウトウ被害
-5-
Ⅱ:飼料用トウモロコシ
1.特徴・品種
○飼料用トウモロコシは、作りやすく、栄養価が高い草種です。
特に子実収量が高く、高カロリーな粗飼料です。
レオ
品種と特性
夏皇
王夏
※参考事例:雪印種苗株式会社より情報提供
○フルシーズン型:例)スノーデント王夏 さび病に極強の耐病性品種
○晩生型:
例)スノーデント夏皇
耐倒伏性に優れる茎葉型多収品種
○早中生型:
例)スノーデント122レオ
○早生型:
例)スノーデント115ポラリス
茎葉病害に強い茎葉多収型品種
子実多収型品種
品種と特性
収量
耐倒
伏性
播種期
耐病性
スノーデント王夏
◎
◎
秋・春播
◎
スノーデント夏皇
◎
◎
春播
◎
スノーデント122レオ
◎
◎
秋・春播
◎
スノーデント115ポラリス
○
○
秋播き・春播
○
-6-
2.栽培・収穫体系
○沖縄県でのトウモロコシの播種期は、春(1-3月)と秋(10-12月)の
播種が可能ですが、台風被害を軽減するために秋播きを主体に行い
ます。また、収量を高めるために堆肥を有効に利用しましょう。
台風直後
台風通過3日後
収穫時
○台風と倒伏:トウモロコシの生育ステージによって倒伏後の回復に差があり、
出穂前での倒伏では回復する傾向が強いです(上記の写真)が、出穂後に台
風 に会うとほぼ回復しません。したがって生育ステージによっては、台風前
に収穫することも検討します。
推奨する栽培体系
10
秋
播
種
春
播
種
←
11
12
播種 →
1
2
3
4
5
6
←収穫期 →
← 播種 →
【播種方法】
畦幅;
7
8
9
75~80㎝
株間;
16~20cm
播種量;
約7,000粒/10a
収穫期
☑春播きの播種期ではサトウキビの夏植え前の圃場も利用可能
☑トウモロコシを播種する際にソルガムも同時に播種し(混播)、
トウモロコシ収穫後にソルガムの再生草を収穫することも可能
である。
-7-
Ⅲ:その他長大飼料作物
1.ソルガム・スーダングラス
○主な品種として、『高糖分ソルゴー』や『スーダングラス』などがあり
ます。温度・日長によって生育が大きく変化するため、播種期によって
出穂期の遅延や促進がみられます。
スーダングラス
高糖分ソルゴー
播種
○播種量を減らすと収量が大きく減少します。適正な量を播種することに
よって安定した収量が期待できます。また、種子が小さいため十分に耕
起、砕土することが重要です。
○播種時期:3月~8月
○播種量:ソルガム
スーダングラス
散播3.0kg/10a
散播4.0kg/10a
条播2.5kg/10a
条播3.0kg/10a
2.ネピアグラス
○ネピアグラスは、草丈が2~4mにも達する大型の草種です。主な品種とし
て『メルケロン』や『矮性ネピアグラス』などがあります。特徴として干
ばつにも強く、永続性にも優れています。
植え付け
○植え付け時期:3月~10月
○栽植密度は(2節苗 2,500~3,000本)/10a
が目安です。
-8-
矮性ネピア
3.うーまく(ギニアグラス)
○『うーまく』はギニアグラスの中でも草丈が大きく、多収かつ
永続性に優れた品種です。また、再生性にも優れ、倒伏にも強
いことから、台風などの風害に強い特徴があります。
飼料成分参考数値(平成27年度収量調査より)
乾物率 TDN
(%) (%)
うーまく
CP
(%)
ADF
NDF
(酸性デター (中性デター
ジェント)
ジェント)
(%)
(%)
うーまく
(生草)
20.0
60.0 10.5
37.4
67.1
ローズ
グラス
(生草)
23.2
48.2
40.7
72.8
8.5
※沖縄県・中南部地区
○うーまくの飼料成分は暖地型牧草と比較して、TDN(可消化
養分総量)、タンパク質は高く、繊維含量が低い特性がありま
す。また、初期生育がやや弱いので雑草防除と鎮圧を十分に行
い、草丈120~150㎝での収穫を推奨します。
汎用型収穫機での収穫時の注意
●ギニアグラス(うーまく)は、散播栽培では収穫時に
刈り残しが多くなり、収量が減少します。そのため、
汎用型収穫機を活用する場合は条播栽培を推奨します。
条播栽培にすることで刈り残しによる収量の減少を抑
えることができます。
-9-
Ⅳ:機械収穫体系
1.機械体系事例
○汎用型飼料収穫機は、刈取・細断・梱包を1台で行うことがで
きる収穫機械です。高密度で生成されたロールベールはラッピ
ングすることで良質なサイレージを製造することができます。
収穫
汎用型収穫機械
梱包
ラッピング
○長大飼料作物は台風により倒伏することがあります。倒伏した
飼料は収穫時に刈り残しが多くなり、収量の減少につながりま
す。収穫機械のアタッチメントを変更することで、刈り残しを
減らすことができます。
倒伏したケーン
グラスの収穫
マルチヘッダアタッチ
-10-
2.サイレージ調製
○長大飼料作物は青刈り給与だけでなく、サイレージ調製をして給
与することも可能です。サイレージ調製を行う際はできる限り、
高密度で密封にすることが重要です。
サイレージの栄養成分(高位生産性牧草栽培技術確立試験より)
乾物
消化率
(%)
水分含量
(%)
CP
(%)
ADF
NDF
(酸性デタージェント)
(%)
(中性デタージェント)
(%)
矮性ネピア
81.5
9.1
64.0
43.5
65.3
うーまく
71.3
6.1
73.3
高糖分ソルゴー
74.5
5.6
66.1
48.1
41.9
55.9
61.8
※(1番草・現物中)
開封後の品質
○サイレージは開封後、どんどん劣化するため、早めに利用するこ
とが望まれます。開封後3日~4日間を目安に使い切るようにしま
しょう。
サイレージの開封後のpHの推移(高位生産性牧草栽培技術確立試験より)
ケーングラス
矮性ネピア
うーまく
高糖分ソルゴー
華青葉(ソルガム)
飼料用トウモロコシ
開封時
2日目
4日目
3.8
4.0
4.4
3.8
3.7
3.8
3.6
3.7
4.6
3.7
3.6
3.7
3.9
3.7
4.5
3.8
3.8
3.8
-11-
サイレージ
(高糖分ソルゴー)
Ⅴ:給与事例
ケーングラスの給与事例 ①
○農場名:
A農場(南城市)
○対象家畜:
搾乳牛 40頭
○ケーングラスの作付面積: 182a ○調査年月:
平成28年2月
○収量: 273t/年(刈取り2回)※推定
○給与方法
◆ケーングラス(青草)を主体にケーングラス(ラップサイレージ)、チモシー(輸入乾
草)、配合飼料、おからを朝夕2回、TMRにして給与。冬場はケーングラスに代えて出
来るだけ製糖用キビ鞘頭部を集めて利用している。
◆ケーングラス(青草)と製糖用キビ鞘頭部はカッターで2cm程度に細断し、シュート
をうまく工夫して直接TMRミキサーに入れている。サイレージや配合飼料などはホイ
ルローダーのバケットを利用し、上からミキサーへ投入している。
カッターで細断してTMRミキサーへ
サイレージや配合飼料などは上から
十分撹拌してから餌槽へ
採食の様子
-12-
◆乾乳牛や育成牛へもケーングラス(青草)あるいは製糖用キビ鞘頭部を細断して
給与している。
○収穫方法等
◆ケーングラス(青草)の収穫作業は、刈払機を用いて2人一組で刈り取り、直接ダ
ンプに積み込んで農場まで運んでいる。ラップサイレージにする場合は、粗飼料生産
組合に委託している。
◆ケーングラスの刈り取り後には、農場からでるスラリーを散布し、糞尿を有効に利
用している。近くに住宅がある圃場は,主に化学肥料を利用している。
刈り取りは、2人一組で(一抱えづつ)
刈り取り後、水肥がケーングラスにかからないよう
株間に散布
○生産者コメント
◆もともと製糖用キビを栽培し青刈りで給与していたが、平成25年ごろからケーング
ラスに植え替えてきた。ケーングラスは収量がかなり多く、雑草に強いことから管理も
しやすい。何よりもケーングラスを利用することで、飼料代をかなり節減できている。
◆生産コストの面から基本は青刈り給与で考えており、ロールサイレージについて
は、通常は1日1個程度の利用にとどめている。
-13-
ケーングラスの給与事例 ②
○農場名:
B農場(南城市)
○対象家畜:
搾乳牛 75頭
○ケーングラスの作付面積: 99a
○調査年月:
平成28年2月
○収量: 53t/年(刈取り1~2回) ※推定
○給与方法
◆搾乳牛へは、ケーングラス(ラップサイレージ)を市販のTMRを給与する前に搾乳
牛1頭当たり10㎏を目安に給与。蛋白質を補うためにオカラも利用している。給餌は
1日3回に分けて行っている。
◆ケーングラスは、未開封のラップサイレージをパレットに載せ、フォークリフトでトン
ブロックの上に設置してから開封し、そこから一輪車で運んで給与している。(廃汁を
抜くため前日にラップの下部に切れ目を入れる。)
段差を利用して掻き落とすように積み込む
餌槽に横付けして給餌
ケーングラスの上にオカラを給餌
採食の様子
-14-
◆ケーングラス(ラップサイレージ)は、乾乳牛にも25㎏を目安に給与している。
○収穫方法等
◆ケーングラスの収穫(刈り取り~ラッピング)は、粗飼料生産組合に委託している。
◆現在の作付面積では、必要な量のラップサイレージが確保できないことから、不足
分を伊江村の飼料生産組合から県酪をとおして購入している。(一部はソルガムサイ
レージ)
粗飼料生産組合による収穫作業
ラップサイレージの保管状況
○生産者コメント
◆輸入粗飼料の高騰が続いており、このままでは経営の維持が厳しいと考え、ケー
ングラスの生産・利用に積極的に取り組むようになった。
◆平成26年11月からケーングラスサイレージを利用しているが、受胎成績が良く
なっていると感じている。
◆削蹄師には、全体的に蹄の状態がだいぶ良くなっていると言われた。
-15-
協力関係機関
○国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
九州沖縄農業研究センター
○営農支援課
○畜産研究センター
育種改良班
○農業研究センター
土壌環境班
○家畜保健衛生所(北部・中央)
○農業改良普及センター(北部・南部・中部・八重山・宮古)
○沖縄県酪農農業協同組合
○雪印種苗株式会社
宮崎研究農場
引用資料:ケーングラス栽培マニュアル~沖縄県版~
(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
九州沖縄農業研究センター作成)
自給型畜産経営飼料生産基盤構築事業
沖縄県における
長大飼料作物の利用
平成28年3月発行
お問い合わせ
沖縄県農林水産部畜産課
那覇市泉崎1-2-2(県庁9階)
TEL:098-866-2269
FAX:098-866-8411
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