...

サーバーの機能とその利用

by user

on
Category: Documents
19

views

Report

Comments

Transcript

サーバーの機能とその利用
サーバーの機能とその利用
サーバー機能の変化と今後の展開
サーバーとは、正確にはサーバーコンピューターといい、データの保管や印刷の指示と言った特定の
機能に特化したコンピューターである。複数のコンピューターをネットワーク化したシステムを効率的、安
定的に運用するためには欠かすことができない重要な機器である。しかし、ユーザーが直接操作するこ
とが少なくなかなかその重要性が理解されない。また、サーバーコンピューターは比較的高価だ。本レ
ポートでは、そもそもなぜサーバーが必要なのか、なぜ高価か、といった疑問から、サーバー機能の変
化と今後の展開について紹介する。
図1 コンピューターシステムの変化
1970年
メインフレーム
企業の基幹業務などに使
われる大型の汎用コンピ
ューターを指す。ホストコ
ンピューターとも言い、端
末などを組合せシステム
を構成する。
分散システムとオープン
システム
日本では「分散システム」
を幅広く「オープンシステ
ム」とよぶ場合が多い。
国際的には、「オープンシ
ステム」は仕様、ソースコ
ードなどが公開されてい
る Unix 系などのシステム
に限定して用いる。
1980年
1990年
2010年
2000年
・集中型の処理形態
メインフレーム型
オフィスコンピュータ
・安価で高性能なPCの普及
ピア ツー ピア型
〔サーバー機能の新たな展開〕
・分散型の処理形態
クライアント・サーバー型
シンクライアント
サーバー仮想化
ブレードサーバー
〔メインフレーム中心〕
〔サーバーの普及〕
メインフレームの時代
コンピューターシステムは、1970 年代までは
クラウドコンピューティング
パーソナルコンピューター(PC)に
よる分散処理
メインフレーム(または汎用機)による定型業務
その後、パーソナルコンピューター(PC)が
サーバーコンピューター
(Server)
構造や搭載される基本
ソフトウエア(OS)等の組
合せにより種別される。
Windows サーバーと UNIX
サーバーが代表的。用途
によりメインフレームをサ
ーバーとして利用すること
もある。また、簡易なシス
テムでは一般用PCでも
十分な場合がある。
の集中処理型が中心だった。業務はホストとな
登場し、その機能の向上と低価格化が進んだ。
るメインフレーム上で集中的に行われ、端末の
この結果、1980 年代後半から 90 年代にかけて、
機器は処理能力を持たず、メインフレームへの
処理能力の高いPCを複数配置し、業務処理を
入出力の表示や、印刷するものに過ぎなかった。
行う時代へと移り変わった。1 台の大きなコンピ
ユーザーはコンピューターの知識が無くてもシ
ューターで行っていた処理を複数の比較的小さ
ステムが提供するサービスを利用できた。このメ
なコンピューターに分散することで、従来のコス
インフレーム型は、大規模なシステムであるた
トを大幅に削減し、また複数の非定型の業務を
サーバー用基本ソフトウ
エア(OS)
クライアントPC向けOSと
比べ次の共通した特徴が
ある。
○利用者ごとの権限設定
ができる。
○複数の利用者の同時
アクセスができる。
○連続使用を前提に高い
安定性がある。
め、システムの変更や改修等に多額な費用が
効率的に行うことも可能となった。
必要となり、短期間に容易な拡張や機能追加な
どができないといった問題があった。
PCのネットワーク化
- ピアツーピア型ネットワーク
図2 メインフレーム型
メインフレーム
各企業においてPCの導入が進み、1 台、ま
た 1 台と徐々に台数が増えていくことで、ごく自
然にそれぞれのPCを相互に結んだピアツーピ
ア型のネットワークが構築された。
端末
(表示や印刷のみ)
JBT Report Vol.10 1
しかし、このネットワークでは1台のコンピュー
サーバーの規格
従来の「ラックマウント型
サーバー」には、1 ユニッ
トが幅19 インチ、高さ 1.75
インチ(奥行きは任意)の
規格がある。
ブレードサーバーにはこ
うした規格が無く、メーカ
ー各社独自の専用のシャ
ーシを用い小型化を実現
した。従来の薄型サーバ
ーの約7-8倍の高密度
化を可能にした製品もあ
る。各社間の互換性は無
い。
ターに接続されたプリンターを他のPCで利用し
ファイルを共有することができ、他のユーザー
ようとした場合や、データを参照しようとしても、
にファイルを転送するなどの手間が省力化され
相手のPCの電源が起動していない、あるいは、
る。また情報へのアクセスの制限やバックアップ
そのPCにトラブルが発生すると利用できなくな
が容易になる。
るといった問題が起きていた。
■データベースサーバー
データベースとしてデータを集約し共有して
図3 ピア ツー ピア型
利用する機能。ファイルサーバーと同様、セキ
ュリティ管理などが容易になる。
■プリントサーバー
プリンター
サーバーのメンテナンス・
障害対策
通常次のような運用・保
守が行われる。
○サーバーの稼働状況
の監視とその記録
○セキュリティソフトのバ
ージョンアップ、追加プ
ログラム(パッチ)等に
よるセキュリティ強化
○定期的なバックアップと
その確認等による障害
時の速やかな復旧
○障害発生時の原因究
明、復旧と事後の対策
○サーバーへの追加プロ
グラム等設定内容の
追加、変更とその記録
これらの多くは遠隔リモ
ート操作でも可能。
プリンターの管理に特化したサーバー。ネット
ワーク上の他のPCの電源状態やPCトラブルに
PC
サーバーコンピューターの登場
影響せずに印刷できる環境を提供する。
■通信サーバー(メール、Webサーバー等)
- 集中管理の再評価
そこで、これらの問題を回避するため、特定の
役割を集中的に担当するいわば「専用PC」とし
てのサーバーコンピューター(「サーバー」)が
外部のネットワークとの接続機能を持ったサ
ーバー。通信サーバーを経由することで、通信
記録の管理やウイルス防御などが容易になる。
登場した。利用者の操作するクライアントPCと
の役割を分けることで業務の効率化を図った。
これが現在主流となっているクライアント・サー
バー型システムである。クライアント・サーバー
ハードディスク(HDD)の
冗長化
データを複数のハードデ
ィスクに分散して記録させ
る。これにより、処理速度
や 耐障害性を改善さ せ
る。
型は、新しいシステムを導入するためには、そ
データのバックアップ
バックアップはその目的
に よ り 様々 な 方法が あ
る。一般企業向けのサー
バーでは磁気テープを利
用した補助記録装置(「ス
トリーマ」)により、日次、
週単位でバックアップする
ことが多い。
コストであることから、急速に普及した。
の機能を持ったソフトウエアを組み込んだサー
バーを増設すれば良く、拡張性が極めて高い。
メインフレーム型に比べ、構築が迅速・容易・低
サーバーコンピューターは高価
- 信頼性と運用の効率性
サーバーは、複数のクライアントPCに常時か
つ同時に、安定したサービスを提供することが
必要だ。このため、サーバーについては高い信
頼性が不可欠であり、またシステムを安定稼働
させるために定期的なメンテナンスや障害対策
等が求められる。この高い信頼性を確保するた
めハードディスクの冗長化や電源の二重化、デ
図4 クライアント・サーバー型
ータのバックアップ機能等をもたせることが多い。
ファイルサーバー
このため一般のPCに比較して高価になる。
プリンターサーバー
システムを取り巻く新たな展開
プリンター
クライアント・サーバー型システムは、拡張性
クライアントPC
が高いことが特徴だ。しかし、これが裏目となり、
このサーバーの代表的な機能は次のとおり。
■ファイルサーバー
ファイルを保管する機能。各々のユーザーが
各種機能を提供するサーバーが乱立しはじめ
た。サーバーが増え続け、管理コストが増加し
情報セキュリティ上の問題も多くなってきた。
こうした状況を受けて、ブレードサーバーなど
JBT Report Vol.10 2
によりシステムを物理的に集約する、あるいは
ーの平均的なCPU利用率は 10-15%程度とい
仮想化によるサーバー統合といった最新技術を
った推計がある(サン・マイクロシステムズ社資
もった製品が登場し始めた。
料)。このようにサーバーのメモリやHDD等に
余裕があったとしても複数のアプリケーションソ
ブレードサーバー (Blade server)
図5 ブレードサーバーの構成
出典:@IT 第 6 回 ブレードサーバー
図6 ブレード台数シェア
(ノークリサーチ社調べ)
フトを搭載できなかった。
増加し た サ ー バ ー を 集
これに対し、かつてメインフレームで利用され
約・統合し、省スペース化を
ていた「仮想化」技術を発展、応用し、1台のサ
図るためブレードサーバー
ーバーに複数のOS、アプリケーションソフトが
を導入する企業が増えてい
利用できる仮想化ソフトウエアが登場した。これ
る。ブレードサーバーは、複
によりサーバーの稼働率を 7~8 割程度まで向
数のサーバーの電源や冷
上させることも可能になった。また、従来であれ
却装置を共通化し、シャー
ば古いシステムを最新のサーバー上で利用す
シ自体に配線を組み込む等
るには移行のための改修が必要だったが、仮
の工夫により、刃(ブレード)
想化ソフトウエアを利用すればそのまま新しい
のように薄型化した。
サーバー上で動かすこともできる。
一方、ブレードサーバー
仮想化の方法にはいくつかあるが、サーバー
には 200V電源が必要、排
を物理的に分割したかのようにみなして利用す
熱処理とそれによる騒音、拡
る方法が代表的である。
張性の阻害といった課題が
あった。最近、100V 対応モ
図7 仮想化(Virtualization)の概念
従来のサーバー群 4台
デルの登場や、風切り音を
AP
AP
AP
AP
ない水冷式の製品が登場し、
OS
OS
OS
OS
現在、こうした課題の多くが
HW
HW
HW
HW
低減させたファン、騒音の少
仮想化ソフトウエアの信
頼性
仮想化環境を導入したサ
ーバーにハード障害が生
じるとそこに搭載されてい
る複数のソフトウエアに
影響し従来以上に影響が
大きくなる。このため、サ
ーバーの多重化などの対
応が求められる。
仮想化ソフトウエアの導
入コスト
現在のシステムが問題な
く稼動している企業にとっ
ては仮想化のメリットは少
ない。サーバーの増設対
応、あるいは現在のシス
テムのサポート切れ対策
などに有効だ。
#2
サーバー
#3
#4
AP
AP
AP
AP
OS
OS
OS
OS
AP:アプリケーション
ソフト
OS:基本ソフト
HW:ハードウエア
仮想化ソフトウエア
HW
解決しつつある。一定数以上のサーバーを導
入する場合には効果的だ。
ブレードサーバー市場の国内シェア(図6)を
見ると 2008 年度の台数シェアでは日本HPが首
位を保ち、2007 年度の 29.4%から 35.9%と大幅
にシェアを伸ばし、1 位を 5 四半期連続で保っ
ている。次いでIBMのシェアが 24%と高い。
仮想化(Virtualization)
サーバー乱立の原因の一つが、サーバー1
台には1つのOS、1つのアプリケーションソフト
しか組み込めないといった制約である。サーバ
JBT Report Vol.10 3
仮想化技術の環境
#1
サーバー #1~4
仮想化ホストサーバー 1台
仮想化ソフトウエアについては当初その信頼
性、導入コスト、運用に対する不慣れなどの懸
念があったが、この 2-3 年導入実績も蓄積され、
技術の成熟とともに普及が進んできている。
この「仮想化」技術と前述の「ブレードサーバ
ー」とが一体化して、これまでの「分散型処理シ
ステム」が再度「ブレードサーバーによる集中処
理というメインフレーム化」の傾向を見せてい
る。
セキュリティの向上
シンクライアントPCであ
ればPCにデータが保存
されていないためデータ
の持出しが難しい。またP
Cの盗難、紛失の際でも
情報漏洩が生じない。従
来のように多数のPCに
セキュリィティ対策を行う
ことに比較してメリットが
大きい。
ターネット等のネットワークを介して外部の専門
シンクライアント(Thin client)PC
業者からシステムサービスの提供を受け、その
- サーバー機能の増大
料金を支払う。「ITの所有」から「ITの利用」へ
企業に高性能なパソコンが多数普及するにつ
れて、一般社員が使うクライアントPCに関し、ア
の転換と言われる。
こうしたサービスとしてASPサービス、SaaS、
プリケーションソフトのインストールやバージョン
HaaSなどに加え最近ではクラウドコンピューテ
アップなどの運用が複雑化した。加えて、セキュ
ィングシステム(「クラウドシステム」)が話題にな
クラウドコンピューティン
グシステム
類似の機能は古くからあ
るが、2006 年グーグルが
命名し以降この呼称が普
及。コンピューターシステ
ムを図示する際に、ネット
ワークを「雲」(Cloud)で図
示したことが語源の由来
とされる。一般向けのイン
ターネット経由サービスを
「パブリッククラウド」、企
業内システムを「プライベ
ートクラウド」と言う。
リティ対策も難しくなり、クライアントPCの運用・
っている。前者のサービスはソフトウエアなど一
管理コストが無視できない問題となってきた。
部のサービスに限られていた。クラウドシステム
ASP( Application Service
Provider)サービス
インターネット等を通じて
業務アプリケーションソフ
ト 等 を 提供 す る 事 業者
(ASP)の行うサービス。
SaaS (Software as a
Service)
上記 ASP サービスと同
義。SaaS 事業者は ASP
になる。
HaaS (Hardware as a
Service)
インターネット等を通じて
CPU、記憶機能などハー
ドウェア機能を提供する
サービス。
セールス・フォースドットコ
ム(Salesforce.com)
1999 年に米国で設立。顧
客管理ソフトウエアを中心
にSaaS事業を本格化した
最初の企業とされる。日
本でも同社のサービスを
利用してエコポイントシス
テムを短期に、安価に構
築し話題になった。
このため、クライアントPCには、ハードディス
はソフトウエアの提供に加え、データ処理、保存
クや記憶装置を持たせず、表示や入力など最
など幅広い業務処理サービスが提供される。共
低限の機能のみを持った低価格な専用のコン
通化されたサービスを複数の顧客が利用する
ピューター(シンクライアントPC)を配備し、管理
ため安価、システム導入スピードが速いといっ
負担を軽減させる。一方、従来のクライアントPC
たメリットがある。利用者のサーバーなどの設備
にあったアプリケーションソフト、データ等をサ
負担も軽い。アマゾンはじめグーグル、セール
ーバーで一元管理する。各々のユーザーはサ
ス・フォースドットコムのほかマイクロソフト、ヒュ
ーバーにアクセスし、そこで業務処理等を行う。
ーレットパッカード、IBMなどが積極的だ。
これにより、運用・管理コストの削減を図る。セキ
しかし、基幹業務を依存するには、処理性能、
ュリティも向上する。これは、従来のメインフレ
システム変更の自由度、障害発生リスク、セキュ
ーム型で利用していたホストコンピューターと端
リティへの懸念などが指摘されている。
末の関係と類似している。
シンクライアントの方式にはいくつかあるが、
ここまでサーバーの役割を中心にシステムの
まだ方式が確立されていない。現状、シンクライ
動向について紹介した。目的や用途によっては
アント方式を導入するには、サーバー能力やネ
必ずしも高価なサーバーは必要ない。重要なこ
ットワーク機能の大幅強化などが不可欠で、そ
とは、新しい技術動向を適確に理解し、目的を
の導入コストが高額になる。数百台以上といっ
明確にして長期的に利用可能である最適なシ
た規模で無ければ費用対効果が得られにくい。
ステムを選択することだ。
クラウドコンピューティングシステ
ムへ
- サーバー機能のアウトソーシング
最近までシステム利用の中心は、自社の管理
下にサーバーを設置し運用する方式だった。イ
ンターネット環境の高速化により、自社で高機
【お問合せ先】
(株)日本ブレインウエアトラスト(略称:JBT)
〒101-0047
東京都千代田区内神田 2-15-9 内神田 282 ビル
Tel
: 03-5295-0571 Fax : 03-5295-0860
E-mail: [email protected]
[ホームページ] http://www.jbt.co.jp/
[インフラ担当責任者] 大根田、久坂
能なサーバーシステムを持たずサーバー機能
をアウトソーシングする事例が増えてきた。イン
JBT Report Vol.10 4
2009.10
Fly UP