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著作権とセキュリティに配慮 トラフィック制御の研究にも着手

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著作権とセキュリティに配慮 トラフィック制御の研究にも着手
 P2P(peer to peer)はIP電話やイン
スタント・メッセンジャ,掲示板など,
☞様々なアプリケーションで利用され
ている。中でもこの方式の潜在能力を
十分に生かせると有望視されているの
が,映像,音楽やソフトウエアなどを
配布するコンテンツ配信システムだ。
アプリケーション開発ベンダー,ISPな
商用コンテンツ配信で進化するP2P
著作権とセキュリティに配慮
トラフィック制御の研究にも着手
映像配信などを中心に,P2P技術を採り入れたコンテンツ配信システム
が増えてきた。上手く利用すれば低コストでサービスを実現できそうだ。
インターネット接続事業者(ISP)と協調し,ネットワーク構造に合わせて
P2Pトラフィックを制御する仕組みも検討されつつある。
で
処理
分散 を効率化
メリッ
メリット
ト1
配信
配信コスト削減
どが参加する「☞P2Pネットワーク実
験協議会」でも,コンテンツ配信シス
テムを中心に,P2Pを有効利用するた
めの実験を行っている。
商用化に当たって従来の課題を解消
メリッ
メリット
ト2
耐障害性,
冗長性に富む
近年,商用のコンテンツ配信での利
メリッ
メリット
ト3
高スケーラビリティ
用を前提としたP2Pシステムが多数☞
登場している。これら,商用P2Pシス
テムのメリットは大きく分けて三つあ
る。従来のコンテンツ配信に比べてコ
ストが安く,耐障害性や冗長性に富
み,スケーラビリティが高い点だ。
商用P2P コンテンツ
配信システム
そもそも,P2Pにはネットワークを構
成するノードや流通コンテンツを管理
するのが難しいといった課題があっ
た。このため,システムを開発する各
ベンダーは商用化に当たって,実装に
著作権侵害や
不正コンテンツ流通対策
トラフィック制御対策
様々な工夫を施している。並行して,
機能追加や実装の改善で対応
今後の課題。
インターネット接続事業者
(ISP)
と協調して技術的解決を目指す
P2Pトラフィックがインターネット・バ
ックボーンに与える影響を軽減するた
めの研究が始まりつつある。
P2Pには多様な形態があり,一概に
38 NIKKEI COMMUNICATIONS 2008.11.15
図1 P2Pを利用した商用配信システムの実装例 ウタゴエの「UG Live/Ocean Grid」のライブ・ストリーミング・システム実装例。データ・センター
にあるサーバー側ノードと,専用ソフトをインストールしたクライアント側ノード(エンド・ユーザーのパソコン)を組み合わせた構成。ストリーミングのデ
ータはノードのメモリー上に展開され,ハード・ディスクには残らない。図では省いたが,Windows Media DRMの実装も可能だ。
UG Liveノード
(クライアント側)
UG Liveノード
(サーバー側)
他のノードからの
データ
…
エンコー ストリー
ディング・ ミング・
サーバー サーバー
パソコン上のメモリー
…
…
データ・センター
クライアント側の
ノードには専用ソ
フトをインストー
ルしておく
Play
約1分程度
のバッファ
…
他のノードに
④ デ ータは 一 定
時間バッファし
てから再生。映
像が安定する
リレーする
コンテンツの流れ
制御の流れ
①新しいノードがネ
ットワークに参加
する際は,
一度サ
ーバーに接続
②近隣ノードの
情報をもらう
③近隣ノードに接続。
データを受け取る
定義するのは難しい。ここではP2Pを
ステムには負荷が集中するサーバーに
「同じ能力を持つ対等なノード同士が
高いスペックが要求される。サーバー
対等にやり取りする仕組み」
,P2Pシス
が機能停止した場合は,システムの動
テムを「システムの中で特権的な能力
きが止まってしまう。
を持つ特定のサーバーを経由せず,対
等なノード間で直接通信する場面があ
サーバー負荷を9 割以上削減
るシステム」とそれぞれ定義する。
商用化に対応したP2Pシステムを利
P2Pでは各ノードが必要に応じてサ
用すると,配信事業者側のコストを大
ーバー,クライアント両方の役割を果
幅に下げられる。まず,特定ノードに
たす。その一例として,P2Pを利用し
処理が集中しないため,データ・セン
たライブ・ストリーミング・システム
ター内の機器や回線容量を節約でき
「UG Live/Ocean Grid」
(ウタゴエ)を
る。映像のライブ・ストリーミング配信
見てみよう(図1)
。同システムは,配
の場合,ウタゴエの実績ではコンテン
信サーバー側に複数のP2Pノードを用
ツ配信サーバーの負荷を従来の91∼
意してコンテンツ配信を分散処理し,
93%,T Vバンクの例では96%程度ま
さらにエンド・ユーザーのパソコンの
で☞減らせたという(図2右)
。
P2Pクライアント・ソフトが配信機能の
一部のP2Pノードが停止しても,ほ
一部を担っている。
かのノードが代わって処理を担う。シ
従来のクライアント- サーバー(以
ステムはすぐには停止しないため,
「運
下,C/S)型のシステムが,各クライア
用・保守のコストを下げられる可能性
ントの要求をサーバー側でまとめて受
がある」
(T Vバンク システム統括部の
け付けて処理していたのとは対照的だ
村上邦晴シニアプロダクトマネージャ
(次ページの図2左)
。このためC/Sシ
ー)
。
データはメモリー上に展開され,
ハード・ディスクには保存されない
本文中☞の付いた用語を解説
様々なアプリケーション=そのほか,P2P
の利用シーンとしてはグループウエアや
オンライン・ゲームなどがある。
P2Pネットワーク実験協議会=2007年8
月に設立。P2Pの技術的検証,実証実験,
アプリケーション開発に当たってのガイ
ドライン策定などを行う。
登場している=T Vバンクの「BBブロー
ドキャスト」
,ウタゴエの「U G L i v e /
Ocean Grid」
,グリッド・ソリューション
ズの「グリッド・デリバリー」
,
ドリームボ
ートの「S k e edCa s t」
,ハイマックスの
「F-Orc」
,ビットトレントの「BitTorrent
DNA」
,ビットメディアの「シェアキャス
ト2 プラス」
,ブラザー工業の「Einy」な
どがある。対応する配信形式はダウンロ
ード,ストリーミングなど,システムによ
って異なる。ノードの構成もツリー型,メ
ッシュ型など多様化している。
減らせたという=ただし,ライブ・ストリ
ーミングは「なるべく多くのユーザーが,
特定のコンテンツをダウンロードする」
という,P2Pのコスト削減効果が最も得
やすいシステムである。コンテンツによ
ってダウンロード数にばらつきあるシス
テムでは,これほどの効果は見込めない
可能性がある。
NIKKEI COMMUNICATIONS 2008.11.15 39
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