...

落書き風レンダリング技法 共感できる描画表現

by user

on
Category: Documents
17

views

Report

Comments

Transcript

落書き風レンダリング技法 共感できる描画表現
落書き風レンダリング技法
共感できる描画表現
藤木 淳
FUJIKI Jun
九州大学大学院芸術工学府
富松 潔
TOMIMATSU Kiyoshi
九州大学大学院芸術工学研究院
Abstruct : Scrible is one of drawing methods to give a simpathy to
us, because it is the action when we were children, and we might be
adult. We propose a CG rendering technique to render like scribble.
We pay attention to the feeling of powerful and warmth of a
scribble-like image so that it has the following two features. One is
a stroke that is roundness and be likely to turn right up. Two is a
shadowing technique to pile up the stroke. An algorithm based on
this two features create a scribble-like image. This algorithm has
some processes. First, it gets image-buffers to be resolved by near
contrast. Next, it calculates points to create a stroke by the imagebuffers. Finally, we get a scribble-like image by strokes
interpolated the points by bezier curves to each image-buffer.
Key word : Scrrible, Simpathy, Non Photo Realistic Rendering
1.はじめに
本研究は共感を与える描画表現として、与えられた2D,
3Dデータから"落書き調"イメージを生成する手法の確立を
目的としている。落書きの描画法には決まり事はなく人それ
ぞれのスタイルを持つ。そもそも落書きは本来描くべくして
描くものではないが、しかし、だからこそ時間にとらわれず
自由に伸び伸びとした線がそこに描かれる。ここで目的とす
る描画法は勢いあるストロークを持ちラフな印象を与えつつ
も温かみのあるイメージを生成できるものである。そこで、
次のような特徴を有する落書きスタイルを想定した。
・全体的に比較的長い勢いのある丸みのある一連のストロー
クで、右斜め上下に方向に陰影付ける。
・明度の低い(暗い)ところほど線を重ね掛ける回数を多く
することで線の勢いを殺さず塗りつぶし効果を得る。
ここでは、上記2点の特徴を持ちアルゴリズム化した落書き
描画技法を提案する。今回はまず3Dよりも開発コストの掛
からない2Dイメージからの手法を対象とし、より多くの情
報を含む3Dへの適応の足がかりとする。
2.背景
共感できるデザイン表現は優れたインタフェースとなりう
図1. 入力画像(上)と閾値毎に分解された
明度イメージバッファ(中・下)
る(文献[1])。そのことは描画法にも適用される。さらに、
共感を与えるにより効果を持つ描画スタイルとして"落書き
文献[2]が挙げられる。ここで氏の提案する技法はスプライ
風"があげられるのではないかと考えた。それは我々が何気
ンによる補間を用いられておりラフな印象を与えるが、その
なくやる行為、もしくは子供の頃によくやった行為、つまり
技法の詳細は明らかにされていない。それに対し、本技法で
自分が体験した行為だからである。そのことを踏まえ、共感
はベジェ曲線を用い独自の手法を適用することでより丸みを
できる表現の1手法として、落書き風にレンダリングできる
帯びた温かい印象を持つストロークが可能となっている。そ
描画手法の提案と開発を行った。
して、ここにおいて手順を明らかにした落書き調レンダリン
グの1手法の提案を行う。
3.関連研究
2D,3Dデータから写実的ではないイメージを生成する
4.落書き風レンダリング技法
手法はノンフォトリアリスティックレンダリングと呼ばれて
以下では本技法落書き風レンダリングの手順を解説する。
おり、2Dイメージからイメージの生成を試みる技法、3D
①ソースとなるイメージ画像から各明度の閾値毎に2値化し
データからの技法、インタラクティブにリアルタイムに生成
たイメージバッファ(明度イメージバッファ)を作成する
していく技法等いくつかの分類がなされている。さらに、そ
(図1)。ここでは黒い領域は閾値以下を示し、白い領域は
の中でもシーンの中のモデルの輪郭線に着目したもの、表面
閾値未満を示している。
材質に着目したもの、両者を含めたもの等、技法の着眼点も
②それぞれの明度イメージバッファに黒い領域を覆う斜めス
多岐に渡っている(参考文献[2][3][4][5][6][7][8])。
トロークを発生させ、このストロークの各端点を保存する。
ここで、本技法は2Dイメージからの生成、表面材質に着目
③上記の端点を基にベジェ曲線を引く(図2)。このベジェ
したものと分類され、これにもっとも関連する研究としては
曲線は次のような原理により生成していく。図3のP1、P2、
図2.明度イメージバッファ(左)とストロークの端点
から生成されたベジェ曲線(右)
P2
V1
V'1
P'2
P1
新しく生成された
ベジェ曲線
P3
V'1
P'3
図3.ベジェ曲線の生成
図4.最終出力画像
P3は、バッファから取り出した連続する3つの点を示してい
図5.オリジナル画像(左)と落書き風
レンダリングにより出力した画像(右)
7.参考文献
る。P1からP2に向かう方向ベクトルV1と直行する任意の長
[1] Norman,D.A.[野島久雄訳] ,1990:誰のためのデザ
さの方向ベクトルV'1を算出し、P2、P3からV'1方向に新た
イン?, 新曜社
に点P'2、P'3を生成する。P2、P'2、P'3、P3をパラメー
[2] Ian Mackinnon, 2002, Exploiting Screen
タとするベジェ曲線を生成し、これをバッファ内の頂点すべ
Space, In ACM SIGGRAPH 2002, p181
てに順々に適用させていくことで滑らかに接続された一連の
[3] Aaron Hertsmann, 1998, Painterly Rendering
ベジェ曲線を得ることができる(図2右)。また、V'1の長
with Curved Brush Strokes of Multiple Sized,
さを長くすればするほど丸みの帯びた線になる。
In ACM SIGGRAPH 98, pp453-460
④上記の手順で得られた各明度イメージバッファのベジェ曲
[4] Robert D. Klnis, 2002, WYSIWYG NPR:
線を合成することで最終的な出力イメージを得る(図4)。
Drawing Strokes Directly on 3D Models, In ACM
また、ベジェ曲線を得る過程で、端点の数が少ない、ある
SIGGRAPH 2002, pp755-762
いは、各端点間の距離が短い場合にベジェ曲線の描画をしな
[5] Kyoko Murakami, 2003, Polygon-based
いことで、最終出力画像に不自然な線を除去し違和感のない
Pastel-like Rendering for Animation, In ACM
落書き画像を得ることが可能となる。
SIGGRAPH 2003 DVD ROM
5.評価
of Pencil Drawing Using LIC, In ACM SIGGRAPH
図5にオリジナルのイメージ画像と本技法を適用させた出
2002, pp149
[6] Mao Xiaoyang, 2002, Automatic Generation
力結果を示す。本技法から望むべき丸みの帯びた長い勢いの
[7] Robert D. Kalnins, 2003, Coherent Stylized
ある一連のストロークによる落書き風イメージを生成するこ
Silhouettes, In ACM SIGGRAPH 2003, pp856-861
とができた。しかし、明度イメージバッファの黒の領域が狭
[8] Jason L. Mitchell, 2002, Real-Time Image-
いところと広いところでは全体として見た場合の濃度差が生
Space Outlining for Non-Photorealistic
じるといった問題も見られている。
Rendering, In ACM SIGGRAPH 2002, pp239
6.まとめ
本研究では線の流れ特性に着目したモデルによる落書き描
画手法の提案を行った。本技法により、望むべきストローク
を持つ落書き風イメージの生成が可能となったが、いくつの
問題点も見られた。
今後の展望として以下のようなものがあげられる。
・濃度のばらつきを改善する。
・鉛筆やチョーク等の材質感を適用する。
・3Dへ応用する。例えばマテリアルの違いにより落書きパ
ターンを変更する、形状からストロークを算出する等、3D
の利点を活かした描画法を検討したい。
・動画像へ応用する。
Fly UP