Comments
Description
Transcript
高品質InAsN混晶薄膜の有機金属気相成長特性
The Murata Science Foundation 高品質InAsN混晶薄膜の有機金属気相成長特性 MOVPE growth properties of high quality InAsN films A84109 派遣先 第14回 有機金属気相成長国際会議(フランス、メッツ) 期 間 平成20年5月31日~平成20年6月7日(8日間) 申請者 東京大学 新領域創成科学研究科 客員共同研究員 窪 谷 茂 幸 会議であった。会議の初日、オーガナイザー、 海外における研究活動状況 メッツ市長の挨拶に続き、Georgia Institute of 海外における研究活動報告 TechnologyのR. Dupuis教授から、先日亡くな 2008年6月1日から6日までフランスのメッ られたH.M. Manasevit氏の本分野における功 ツ(Metz)で開催された、第14回 有機金属 績の紹介、そしてM a n a s e v i t賞の創設が報告 気相成長国際会議(International Conference された。Manasevit氏は、1963年のサファイア on Metal Organic Vapor Phase Epitaxy XIV : 基板上へのSiのエピタキシャル成長、1968年 ICMOVPE-XIV)において、口頭発表を行っ のGaAsのエピタキシャル成長をMOVPE法を た。このICMOVPEという会議は、1981年か 用いて初めて報告し、その後もM O V P E成長 ら1年おきに開催されている有機金属原料を用 技術の発展に貢献した研究者である。そして いた結晶成長に関する会議であり、一昨年は この追悼講演のあとプレナリー講演、招待講 日本の宮崎市で開かれ、今回の第14回はフラ 演、口頭発表と続き会議は幕を開けた。 ンスのメッツで開催された。メッツは現在フ 口頭、ポスターを含め研究発表で扱われて ランスの一都市であるが、昔ドイツ領であっ いる材料は、GaN、AlGaN、InGaNなどのIII たこともあり、建物の建築様式もパリなどと 族窒化物半導体(134件)や、III-V化合物半 は異なった二つの文化が融合した独特な様式 導体(85件)、II-VI化合物半導体(21件)と であり、趣のある街であった。また、気温は 多岐にわたり、各材料系におけるトピックと 日本とほぼ同じであったが、高緯度に位置す してはMOVPE法で作製した光デバイス・電子 るためか本会議が開催された6月は、夜9時に デバイスの光学的・電気的評価や、量子ドッ なっても外はまだ明るく、会議後に街へ出て トやナノロッドなどの成長・評価、そして、 も日本の夕暮れ程度の明るさで非常に不思議 結晶成長の国際会議ということもあり薄膜や な感覚だった。今回の会議にはヨーロッパ ヘテロ構造のM O V P E成長・構造評価・新規 (ドイツ82人、フランス39人、イギリス20人) 、 成長技術に関する発表も多くあり、結晶成長 日本(57人)、アメリカ(42人)を中心に合 の基礎技術からデバイスまで幅広い領域で研 計335名の研究者が25カ国から集い、プレナ 究発表が行われた。 リー講演3件、招待講演14件、口頭発表70件、 私は、希薄窒素添加I I I - V化合物半導体の ポスター発表156件と合計243件の研究が報告 セッションにおいて「MOVPE Growth of high され、活発な議論がされ非常に盛り上がった quality InAsN films」というタイトルで口頭 ─ 669 ─ Annual Report No.22 2008 発表を行った。以下が概要である。本研究発 精度に見積もることが可能になったため、こ 表で扱っているInAsNは、近年注目されてい れを用いて窒素の取り込み機構について詳細 るIII-V化合物半導体のV族原子の一部分をN に解析し、I n A s Nの場合A sが窒素の取り込 原子に置き換えた希薄窒化物混晶半導体の一 みを阻害していることを明らかにし、また、 つである。このGaAsNなどに代表される希薄 GaAsNと比べるとInAsNでは、約5倍窒素が 窒化物半導体は、バンドギャップエネルギー 取り込まれにくいことを報告した。また発表 のN濃度依存性が、両終端物質の間で線形に の最後には、キャリアガス種がNの取り込み 変化するのではなく、低エネルギー側に大き 機構に与える影響についての詳細な実験結果、 く湾曲する「巨大バンドギャップボウイング」 解析結果を示し、水素キャリアガスだけでは という特徴をもつため、光学デバイスへの応 なく窒素キャリアガスを導入した方がNの固 用が期待されている物質である。しかしなが 相への取り込みが促進されることを報告した。 ら、窒素の平衡固溶度が低い「窒素の非混和 今回、ICMOVPE-XIVという歴史ある結晶 性」のため作製することが困難である。我々 成長の国際会議への海外渡航の援助をしてく は窒素原料に低温での熱分解効率が大きいジ ださりありがとうございました。 メチルヒドラジン(DMHy)及びAs原料にター この派遣の研究成果等を発表した シャリーブチルアルシン(TBAs)を用いるこ とで低温でのMOVPE成長を実現し、InAs基 板上にInAsNを成長し、成長条件を詳細に検 討することで高分解能X線回折ロッキングカー ブのFWHMが約20arcsecと、従来の約1/20の F W H MのN濃度2.5%までの高品質I n A s N薄 膜を得ることに成功した。この配向性の向上 によって、窒素濃度の高精度な見積もりに必 須である歪みを逆格子マッピング測定から高 著書、論文、報告書の書名・講演題目 講演題目、ICMOVPE XIV Abstract 集 We-B2.4 MOVPE growth properties of high quality InAsN films S.Kuboya, Q.T. Thieu, H. Kato, F. Nakajima, R. Katayama, K. Onabe Journal of Crystal Growth(Proceeding集) MOVPE growth properties of high quality InAsN films ─ 670 ─