...

東京 23 区の分譲マンション市場分析

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

東京 23 区の分譲マンション市場分析
平成 20 年度
社会工学類都市計画専攻
卒業研究中間発表会
2008/12/03
東京 23 区の分譲マンション
分譲マンション市場分析
マンション市場分析
発表者:桑原光太郎
指導教官:堤盛人
1.背景と
背景と目的
近年に限らず週刊誌では不動産に関する記事が頻
またマクロ的な視点,すなわち時系列的な分析を
繁に掲載される.話題エリアの価格分析などを行っ
行った研究が少ないことも特徴として挙げられる.
ている記事も多いが,その評価方法は平均などの単
純集計データによる初歩的な統計分析にとどまり,
主観的な論評が多くなっている.
2.研究の
研究の目的
マクロ・ミクロ両面から分析を行うことを目的と
また不動産価格評価に関する研究も多いが,その
大多数は地価に関する分析である.
する.
①GIS データを活用して,空間的概念を考慮した
その最も大きな理由として,情報の入手しやすさ
よりミクロ的な分析(空間ヘドニックアプローチ)
が挙げられる.公示地価は1年に1回,国土交通省
を行う.
が鑑定を行った結果を一般に公表しているため、入
②時空間への価格波及メカニズムを考慮した分析へ
手が容易である.
拡張する
対してマンション価格に関する研究は地価に比べ
て圧倒的に少なく,不動産学会や土木学会において
③ミクロ分析の成果をふまえながらマクロ経済学的
な分析を行う.
は皆無である.
住宅土地経済にはマンション価格を対象とした研
究が比較的多く,この 15 年間のマンション価格研
究をまとめた表を以下に示す.
3.使用データ
使用データの
データの概要
マーケット・リサーチ・センター(MRC)社より
提供された首都圏版分譲マンションデータを使用す
る.
表-1 マンションを対象とした研究(住宅土地経済)
使用データ
分析視点
ミクロ
伊藤隆敏(1993)
賃料
○
中神康博(1995)
中古
○
中村良平(1998)
新築・中古
○
大守隆(2002)
中古
○
中村良平・森田学(2003)
新築
齋藤良太(2005)
新築
○
水永政志・小滝一彦(2007)
中古
○
新築・中古
○
賃料
○
原野啓・清水千弘・
唐渡広志・中川雅之(2007)
沓澤隆司・水谷徳子・
山鹿久木・大竹文雄(2007)
マクロ
調査地域は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・
茨城県の一部(つくば市,土浦市)となっている.
調査期間は 1993 年 1 月~2008 年 6 月,データ数は
物件数で 35,347 物件,住戸数にして 1,190,721 住戸
である.
○
○
表から読み取れる通り,ミクロ的な視点の研究が
ほとんどであるが,これらは古典的なヘドニックア
プローチを分析手法としており,空間的な相互作用
や波及は考慮されていない.
図-1 全物件データを GIS にプロット
MRC のデータ収集方法は新聞,住宅情報誌,会
価格により,三方面共通に 1993 年以降一貫して価
報誌,HP,ネット等の広告媒体から分譲物件の売
格が下落していること,3方面の県庁所在地である
り出し情報を入手→その物件の販売スケジュールに
中心部は,それ以外の地域より価格が高いことなど
合わせて,販売センター,モデルルームに訪問し,
がある.
資料(パンフレット,図面集,価格表)を入手,そ
この研究における課題として,関数形に関する問
の場で売れ行き(どの部屋番号の住戸が売れている
題に対して不十分な分析であったこと,空間的自己
か)をチェックする,といったもので,対象範囲の
相関を考慮しなかったことがあげられている.これ
全取引に対して 85~90%のカバー率であると認識さ
らの問題に対応して本研究の位置づけとすることも
れている.
できる.
しかし最も差異を見出すべき点は,藤澤・隅田
表-2 東京 23 区平均単価の基本等計量
最小値 標準偏差
(2001)が 2000 年までのデータしか使えなかったと
平均
最大値
標本数
1993
98
212
58
23
218
1994
87
206
46
19
521
1995
76
146
45
15
637
1996
78
150
45
17
679
ころにある.
図-2 分譲戸数と平均価格の地域別推移
120000
100000
1997
80
167
45
19
699
1998
76
173
44
17
793
1999
72
172
39
17
1137
2000
69
186
37
18
1203
2001
68
232
34
20
1097
2002
68
198
39
20
1229
2003
70
255
37
21
1471
2004
69
202
36
19
1418
80000
千葉
埼玉
神奈川
都下
23区
千葉
埼玉
神奈川
都下
23区
6500
6000
5500
5000
60000
4500
40000
4000
2005
69
182
39
20
1069
2006
73
212
37
23
779
2007
85
346
38
33
652
90
337
37
34
303
2008
(半期)
20000
3500
0
3000
1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
図-2から 2005 年から全地域において平均価格
が上昇に転じていることが明らかにわかる.
ここで新たな目的として,
目的④東京 23 区の新築分譲マンション価格市場を
あきらかにする.
4.同社の
同社のデータを
データを用いた先行研究
いた先行研究
藤澤・隅田(2001)は,同社の分譲マンションデー
タ(1993 年 1 月~2000 年 12 月)を用いた研究を行っ
ている.この研究では東京・新宿に向かう千葉・埼
玉・神奈川方面の3方面ごと,及び沿線ごとに分譲
マンション価格のヘドニック価格モデルを推定し,
物件の属性・立地からの価格に対する影響,価格指
数の作成を行っている.
この研究から得られた知見として,品質調整済み
5.研究の
研究の方針
(1)ミクロ視点
ミクロ視点からの
視点からの分析
からの分析
空間的概念を考慮するため,空間ヘドニックアプ
ローチを用いた分析を行う.
また,本研究で用いる MRC データは時系列デー
タでもあるため,その特性を活かし,時間による影
響と空間による影響の双方を考慮した時空間分析を
行う.時空間の影響を考慮したモデルとしては Pace
etal.(2001) の 提 案 し た spatio-temporal linear
4)中村良平・森田学(2003):
『新規マンションの供給
model(STLM)があるので,これを用いた分析を行う.
価格変化における期待の効果』,
「季刊住宅土地経済
2003 年冬季号」
,pp.26-34
(2)マクロ視点
マクロ視点からの
視点からの分析
からの分析
マクロ的な視点からの先行研究は背景であげたよ
うに大守(2002)と中村・森田(2003)がある.
中村・森田(2003)は,景気指標への期待が新規マ
ンションの供給量変化にいかに影響を及ぼしている
かを考察した野心的な論文であるが,
「期待」の定式
化に改善の余地がある.
大守(2002)は、品質調整した価格の動向を見ると
いう着眼点は本研究と同じであるが,用いられてい
る手法は古典的なヘドニックアプローチであり,ま
た他の指標との比較における考察も十分でないとの
批評がなされている(住宅土地経済エディタノート).
マンション以外の不動産価格をマクロ的な視点で
考察した研究として山村(1996)がある.
この研究では,公示地価を用いて,1975 年以降の
地価変動と株価・住宅ローン金利などの社会経済変
動との相関を見ている.しかし,比較の際に用いら
れる価格は年ごとに単純に平均をとったものであり,
時空間の概念は考慮されていない.
本研究ではミクロな時空間分析によって推定され
た価格を用いることを前提に,山村(1996)の手法を
踏襲するものとする.
参考文献
1)藤澤美恵子・隅田和人(2001):
『東京大都市圏にお
ける新築マンション価格のヘドニック分析』,
「2001
年度第 36 回日本都市計画学会学術研究論文集」,
pp.943-948
2) Pace,R.Kelley,barry,Ronald,Gilley,Otis
W.Sirmans,
C.F.(2000) :『A method for spatial-temporal
forecasti
ng with an application to real estate prices』,
「International Journal of
Forecasting16」,pp.229-246
3)大守隆(2002):
『東京圏マンション流通価格指数』,
「季刊住宅土地経済 2002 年秋季号」
,pp.29-35
5)山村能郎(1996):
『首都圏における地価変動に関す
る実証的研究』
,東京工業大学院博士論文
・Regression kriging を用いたマンション分譲価格内挿図(平成 5 年~20 年,東京 23 区)
40
100
300
平均単価 (万円/m2)
Fly UP