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商用規模の CCS プロジェクトのモデルサイトに対 する

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商用規模の CCS プロジェクトのモデルサイトに対 する
商用規模の CCS プロジェクトのモデルサイトに対
する潜在的リスク評価
2012 年 6 月
作成依頼者:
CCS 評価プロジェクトスポンサーグループ
作成者:
Chiara Trabucchi
Michael Donlan
Michael Huguenin
Matthew Konopka
Sarah Bolthrunis
Industrial Economics 社
2067 Massachusetts Avenue
Cambridge, MA 02140
米国
電話:617/354-0074
www.indecon.com
後援:
グローバル CCS インスティテュート
Translated by the Global CCS Institute
The executive summary of “Valuation of Potential Risks Arising from Model, Commercial-Scale CCS
Project Site” has been translated from English into Japanese for convenience. The Global CCS Institute does
not warrant the accuracy, authenticity or completeness of any content translated in the Japanese version of
the Report.
「商用規模の CCS プロジェクトのモデルサイトに対する潜在的リスク評価」は、利用者の便宜の
ために“Valuation of Potential Risks Arising from Model, Commercial-Scale CCS Project Site”のエグゼ
クティブサマリーを英語から日本語に翻訳したものです。グローバル CCS インスティテュートは
日本語版のいかなる内容についてもその正確性、信頼性又は完全性について保証しません。
Translated by the Global CCS Institute
エクゼクティブサマリー
回収貯留(CCS)に関する周知の議論は、どのようなリスクが存在するのか、そうしたリス
クがもたらす結果が財政上重大かという点に関して、主観的認識に基づく曖昧なものであった。
本文書の見解として、CCS に起因する潜在的影響の分析・評価及び CCS の財政的影響の算出によ
り、緩和を要するリスク、管理すべき資金、資金が提供される一連の状況及びこれらの資金が必
要となるタイミングの明確化が可能である。
立地条件に恵まれ、操業状態が良好な CCS プロジェクトでは CO 漏出の確率は低いものの、周
到なリスク管理としては、万が一、漏出が生じた場合の損害の修復又は補償に必要な資金の推定
が必要である。損害は、立地場所、プラント設計、燃料及び技術と相関があるため、サイト特有
の条件に基づく推定が必要である。サイト特有のデータが利用可能であれば、個々の CCS サイト
における潜在的な損害額を推定するための分析ツールが存在することとなる。
本調査の目的は、結果の統計的限界を明確にしつつ、CCS プロジェクトによる推定損害額を算
出することである。具体的には、以下が調査目的に含まれる。
• CCS プロジェクトによる推定損害額を算出するために、コンピューターによるスプレッドシ
ートモデルを構築すること。このモデルは、CCS プロジェクトに伴う多様な潜在的影響を評
価するために、損害評価の分野において一般的に認められた分析ツールを統合したものであ
る。モデルアウトプットは、結果の統計的範囲を明確にできるように設計されている。特に、
損害が不明確であるため、本調査では「最も可能性の高い」損害額(50 パーセンタイル値)
及び「上限の」損害額(95 パーセンタイル値)に焦点を当てている。
• 本モデルの概念を実証するため、このモデルを「現実的な」プロジェクトに適用すること。
可能性のある複数の選択肢の検討の結果、分析目的に沿った「現実的な」プロジェクトとし
ては、FutureGen 1.0 プロジェクトの三箇所の最終候補地が適していると判断された。本調査
では、テキサス州 Jewett サイトに限定して、推定損害額を算出する。
以下では、分析的アプローチの概要及び基礎的な仮定を含む、スプレッドシートモデルから得
られた予備的検討結果の概略を示す。
CO2
2
1.0
分析方法
分析上の厳密さを実現し、計算結果に影響を及ぼす多数の不確定要素を適切に特徴付けるため、
本調査では、「スプレッドシートモデル」によって関連付けられた複数の数式を使用し、損害額
を算出する。本モデルは、モデル事象に起因する CO 及び硫化水素(H S)の漏出の潜在的な規模、
発生確率、漏出に伴うヒトの健康及び生態系への推定影響並びにこれらの影響に対する補償又は
影響の修復にかかる概算費用を組み込んだものである。
本モデルは、発生確率及び複数の情報源からの影響値をデータに組み込むことが可能であり、
追加的な新たなサイト特有のデータが利用可能であれば汎用的な適用が可能となる。本分析は、
米国エネルギー省の FutureGen プロジェクトの一環として作成された環境影響評価及びリスク評価
に含まれる公開情報に依拠している。また、本分析は、事故の補償、天然資源に対する損害評価
及び費用便益調査のために、法制度で用いられている評価手法を利用して、ヒト及び環境に対す
る損害額を算出している。計算結果に影響を及ぼす多数の不確実性を特徴付けるため、本調査で
は広く受け入れられている確率的手法であるモンテカルロ法を適用している。具体的には、本調
査は、重要な入力変数の確率分布を推定し、モンテカルロ分析を用いて損害の確率分布を導き出
している。これらの確率分布によって、様々な損害要素に対する潜在的な損害額の統計的な範囲
が示される。
本調査の主要パラメータの概要は以下のとおりである。
• 候補サイト。テキサス州(Jewett)の米国エネルギー省の FutureGen サイト。
2
Translated by the Global CCS Institute
2
•
•
•
•
•
•
•
設備設置地点の事象。CCS 特有の事象(すなわち、CCS なしの類似プラントで発生可能性
があるものを「上回る」事象又は追加的な事象)。
パイプライン事象。2とおりのパイプラインからの漏出シナリオ:(1)「穿孔」(“holepuncture”)、(2)パイプラインの完全な破裂。
隔離サイト事象。FutureGen の分析においてモデル化された様々な放出メカニズム及び経路
(例えば、地上圧入機器の破損、圧入井からの漏出及びその他の坑井からの漏出)。
化学成分。CO 及び H S。
分析期間。100 年(圧入作業中 50 年及び圧入後(すなわち圧入作業の停止後)50 年)。
地下水及び地表水のモデル化。地下水に係る損害の推定は、直ちに利用可能なサイト特有の
情報を組み込んだバウンディング計算(bounding calculation)を反映している。地表水は、
テキサス州 Jewett サイトの近隣に存在する地表水源が限定的なため、定性的に処理される。
大気中への放出。損害額を、本分析による CO の大気中への偶発的放出に対応するカーボン
オフセットの必要購入額 (CO 1 トン当たり)とみなす。
2
2
2
2
2.0
テキサス州 Jewett サイトの
サイトの予備評価結果の
予備評価結果の概要
2.1
損害額
損害額の算定
図 1 は、テキサス州 Jewett サイトのモデル化された全事故事象に起因する汚染物質(すなわち、
及び H S)による推定損害額をまとめたものである。推定損害額は、50 年間の運用期間及び
圧入停止後の 50 年間を合わせた 100 年の期間について計算している。結果は 2010 年時点のドル
で示している。
CO2
2
図1
図 1 に示したとおり、「最も可能性の高い」(50 パーセンタイル値)推定損害総額は、約 850
万ドルである。これは、損害額が 50 パーセンタイル値を上回る又は下回る確率がいずれも 50%で
あることを意味する。「上限」(95 及び 99 パーセンタイル値)の推定損害総額は、それぞれ約
1,860 万ドル及び約 2,400 万ドルである。これは、損害額が各々の値以下となる可能性がそれぞれ
95%及び 99%であり、損害額が各々の値を上回る可能性はわずか 5%及び 1%であることを示す。
図 1 の曲線は、(モンテカルロ法による)100,000 回の試行から導き出された累積発生確率に関す
る推定損害額の範囲を示したものである。
Translated by the Global CCS Institute
CO 1 トン当たりで考えると、5,000 万トンの CO が貯蔵されると想定した場合、これらの結果
は、「最も可能性の高い」(50 パーセンタイル値)推定損害額が 0.17 ドル/トンであり、損害額が
この推定値を上回る又は下回る確率はいずれも 50%であることを示している。「上限」(95 及び
99 パーセンタイル値)は、それぞれ約 0.37 ドル/トン及び約 0.48 ドル/トンである。これは、100
年間の分析期間にわたる損害額が 0.50 ドル/トン以下となる確率が 99%で、この推定値を上回る確
率はわずか 1%であることを示す。
上記の推定損害総額及び CO 1 トン当たりの推定損害額は、立地条件に恵まれ、操業状態が良
好な、いわば「お膳立ての整った」(“platinum-plated”)サイトである、テキサス州 Jewett の
FutureGen サイトに関する利用可能なデータに基づいて推定したものであることに留意すべきであ
る。推定損害額の範囲は、サイト特有のデータに大きく左右される。したがって、良好な立地及
び操業に係る判断が、「最も可能性の高い」損害額及び「上限の」損害額の推定に重大な影響を
及ぼす。後の項では、本調査における推定損害額に関する様々な不確実性のパラメータによる影
響を精度良く評価するため、代替シナリオのモデル化を行う。
図 2 は、テキサス州 Jewett サイトにおける推定損害総額のうち、CO のみに相当する部分を示し
ている。結果は 2010 年時点のドルで示されている。この情報は、利害関係者が「純粋な」CO 隔
離流による潜在的損害の理解促進のために提示したものである。
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2
2
2
2
図2
図 2 に示すように、CO の「最も可能性の高い」(50 パーセンタイル値)推定損害総額は、約
730 万ドルである。これは、損害額が 50 パーセンタイル値の数字を上回る又は下回る確率がいず
れも 50%であることを意味する。「上限」(95 及び 99 パーセンタイル値)の総額は、それぞれ約
1,690 万ドル及び約 2,200 万ドルである。これは、100 年間の分析期間にわたる損害額が、上述の
損害額と同額又はそれを下回る可能性がそれぞれ 95%又は 99%であり、損害額が各々の値を上回
る可能性はわずか 5%又は 1%に過ぎないことを示す。図 1 と同様、図 2 の曲線は 100,000 回の試行
から導き出された累積発生確率に基づく推定損害額範囲を示したものである。
2
2.2
重要な要素
重要な要素
流の成分及び
流の成分及び毒性
及び毒性
CCS 流には CO の他に、様々な濃度の H S、メタン(CH )、一酸化炭素(CO)、硫黄酸化物
(SOx)、窒素酸化物(NOx)、水銀(Hg)及びシアン化物が含まれる。圧入流の純度によって、
CCS
2
Translated by the Global CCS Institute
2
4
事故による損害に起因する損害の深刻度が決定される。本調査の分析は、FutureGen のリスク評価
に基づいたものである。具体的には、本調査ではテキサス州 Jewett サイトを対象とし、回収ガス
の成分の 95%が CO 、0.01%が H S と想定している。
CO 及び H S によってもたらされる影響は、FutureGen リスク評価書において定量的に推定され
ており、本調査ではこれらの影響評価に基づいて推定損害額を導き出している。
回収ガスの主成分は CO ではあるが、CCS 流に存在する他の成分と比較して、CO は強力な毒
性物質ではない。端的に言うと、かなり高濃度の CO でない限り、ヒトの健康に悪影響が及ぶこ
とはない。例えば、表 1 に示すように、FutureGen のリスク評価書にある CO の健康影響のしきい
値の範囲は、10,000 ppmv(体積百万分率)(悪影響、慢性)から 70,000 ppmv(致死的影響、慢性
的)である。その一方で、CO と比較すると H S はかなり低濃度でもヒトの健康に悪影響を与え
る恐れがある。表 1 に示すように、H S のヒト健康影響のしきい値の範囲は 0.0014 ppmv(悪影響、
慢性)から 50 ppmv(致死的影響、15 分間のばく露)である。
上述の理由から、H S はヒトの健康に関する推定損害において重要な要素であるといえる。他の
条件がすべて同じだとすると、CCS 流中の H S 量が少ないほど、テキサス州 Jewett サイトにおけ
る CCS に起因するヒトの健康への推定損害は小さくなる可能性が高い。
1
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
表 1 テキサス州 Jewett サイトにおける H S 及び CO によるヒト健康影響のしきい値の概要
15 分間ばく
8 時間ばく
慢性ばく露
分間ばく露
ばく露
時間ばく露
ばく露
慢性ばく露
CO
H
S
CO
H
S
CO
HS
影響
30,000
0.51
20,000
0.33
10,000
0.0014
悪影響
30,000
27
20,000
17
50,000
0.0014
不可逆的影響
不可逆的影響
40,000
50
40,000
31
70,000
0.0014
致死的影響
致死的影響
出典:FutureGen リスク評価書(6-6、6-7 ページ及び表 3-7)
2
2
2
2
2
2
2
2
しかし、CO による損害を考慮する際には、潜在的な地下水関連損害及び温室効果ガス放出に
備えたオフセット購入の必要性が懸念される。H S の漏出によって地下水に影響が及ぶ可能性はあ
るものの、Jewett サイトでは CO が潜在的な地下水損害の要因となる可能性の方がはるかに高い。
その理由として、1) 隔離流に含まれる CO 量の方が(H S と比べて)はるかに多いこと(隔離流
の成分の 95%が CO 、0.01%が H S。)及び 2) H S の影響(例えば、悪臭の可能性、変色/着色の
問題など。)と比較した場合、地下水中に CO が含まれるとさらに深刻な影響があること(例え
ば、pH の低下、金属の溶出、総溶解固形物/硬度の増加など。)の二点が挙げられる。
大気への放出に関しては、H S は温室効果ガスではないため、温室効果ガスオフセットを購入す
る可能性はない。
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
発生確率
発生確率
他の条件がすべて同じだとすると、ある事象の発生確率(又は可能性)の低下にしたがって、
結果として生じる可能性のある損害の規模も小さくなる。このような性質を調査する際、「事象
発生確率」がある事象により生じる可能性のある損害規模の計算において重要な要素となる。表 2
は本調査で使用される様々な事象の年間確率を推定したものである。
1
U.S. Department of Energy (DOE). Final Risk Assessment Report for the FutureGen Project Environmental
Impact Statement; Contract No. DE-AT26-06NT42921. 22 December 2006; Revision 1 April 2007; Revision 2
October 2007, pg. 4-3.
回収ガス中には、CO 及び H S の他に微量の CH 、CO、SOx、NOx、水銀及びシアン化物が含まれる
可能性がある(FutureGen 最終リスク評価報告書、3-1 ページ参照)。FutureGen の報告書には、これら
の成分に関する定量的なリスク評価情報は記載されていない。
2
2
2
Translated by the Global CCS Institute
4
表 2 テキサス州 Jewett サイトにおける各漏出シナリオの事象発生確率
漏出シナリオ
漏出確率(
漏出確率(年間)
年間)
プラント事象
CO 分離機器の故障
100,000 分の 5.5(0.0055%)
パイプライン事象
パイプラインの破裂(rupture)
200 分の 1(0.5%)
パイプラインの穿孔(puncture)
100 分の 1(1.0%)
隔離サイト
隔離サイト事象
サイト事象
坑口装置の破裂
100,000 分の 6(0.006%)
CO 圧入井からの漏出
100,000 分の 3(0.003%)
その他の坑井からの漏出
100 分の 7(7.0%)
キャップロックからの急激な漏出
100 億分の 2(0.00000002%)
キャップロックからの緩慢な漏出
100,000 分の 4(0.004%)
既存の断層、誘発断層からの漏出
1 億分の 2(0.000002%)
出典:FutureGen リスク評価書、表 6-11。ただし、プラント事象を除く。プラント事象は産
業・貿易協会(industry and trade associations)提供のデータ及び情報に依拠する。
2
2
テキサス州 Jewett サイトの FutureGen リスク評価分析では、パイプライン及び隔離サイトにおけ
る事象発生確率が示されている。具体的には、パイプライン事象に関する事象発生確率について、
FutureGen はパイプライン安全室(Office of Pipeline Safety)を通じて入手可能な CO パイプライン
のデータに依拠している。隔離に関する事象発生確率は、FutureGen が分析したサイト特有のデー
タ並びに類似の天然及び工業的 CO 貯留サイトからのデータに基づいている。本調査は、これら
の推定事象発生確率に依拠している。FutureGen では、CCS 設備設置地点そのものに生じる事象の
推定発生確率について言及しておらず、その代わりに、関連する技術文書から入手した情報に基
づいている。
表 2 に示すように、最も頻度の高い有害事象は深部の石油及びガス坑井又は記録のない坑井か
らの漏出と予測され、その年間発生確率は 100 分の 7(7%)である。そのような坑井一基の年間
漏出確率は 1000 分の 1(0.1%)から 1,000,000 分の 1(0.0001%)と推定されているが、FutureGen
の分析では隔離された CO プルームの真上に位置する坑井が Jewett サイトには最高で 70 箇所存在
すると想定されている(FutureGen リスク評価書、表 6-11 参照)。以上の理由から、本調査ではこ
のようなリスクの発生確率範囲を保守的に見積もり、100 分の 7(7%)という上限値を使用する。
パイプラインの破損及び穿孔事象は、次に可能性の高い事象と考えられる(すなわち、それぞ
れの年間発生確率は 200 分の 1(0.5%)及び 100 分の 1(1.0%)。)。これらの確率は、
FutureGen リスク評価書の根拠である、1994 年から 2006 年までのパイプライン安全室のデータに
基づいている。FutureGen リスク評価書では、1994 年から 2006 年までに 31 件の CO パイプライン
事故が発生したことを確認している。本調査では、パイプライン 1 マイル当たりの事故率を算出
するためにこれらのデータを根拠としている。さらにこの事故率をテキサス州 Jewett サイトのパ
イプラインの全長、すなわち 59 マイル(約 95 km)に適用した。また、FutureGen リスク評価書が
根拠としているデータを裏付けるため、本調査では比較可能な程度の事故発生確率である、CO 、
天然ガス輸送及び有害液体パイプラインに関する 2002 年から 2009 年までのパイプライン安全室
のデータも統合している。
CCS 活動に直接的に関連する設備設置地点事象は、英国健康安全局(UK Health and Safety
Executive)によって確認された最高故障率を保守的に反映し、年間発生率を 100,000 分の 5.5 と想
定している。
2
2
2
2
2
3
3
付録 A を参照のこと。
Translated by the Global CCS Institute
ヒト健康
ヒト健康影響
健康影響の
影響の評価
本調査では、テキサス州 Jewett の CCS プロジェクトの事故に起因する、CO 及び H S によって
引き起こされる可能性のあるヒト健康影響について検討している。
本分析の目的は、テキサス州 Jewett 事業で実施される CCS に起因する CO 及び H S の漏出によ
って損害を被った一般市民(例えば、近隣住民など。)に対するテキサス州の陪審員が認め得る
損害額を予測することである。可能性のある損害には、死亡、重度又は持続的影響並びに軽度又
は一時的影響が含まれる。
米国の他州の法律も類似しているが、テキサス州法に基づくと、事例ごとの健康影響の対価に
は以下のものが含まれる。
(1)
医療費。傷害又は死亡により被った過去及び将来の医療費を含む。
(2)
生産性の損失
生産性の損失。
損失。過去及び将来の損失を含む。さらに、所得能力の低下は、諸手当(fringe
benefits)及び家事サービス(household service)の逸失利益並びに被害者が負傷又は死亡
しなかった場合に消費したはずのサービス減少分を反映する。
(3)
非経済的損失
非経済的損失。
損失。身体的苦痛及び損傷、精神的苦痛、外観の損傷、配偶者権(consortium)
の損失、助言及び相談機会の損失並びに類似の損失が含まれる。
図 3、4 及び 5 は、本調査で使用している死亡事例、通院事例(FutureGen で「不可逆的」と分
類される重度の影響に関連するもの)及び通院を伴わない事例(FutureGen で「可逆的」と分類さ
れる一時的な影響に関連するもの)の対価分布についてまとめたものである。 これらの分布は、
人身被害及び不法死亡事例、入院関連の医療費並びに逸失した生産性の推定価値に対する陪審の
裁定を記載した調査及びデータベースを確認するための文献検索結果に基づいた見解を示すもの
である。
2
2
2
2
4
図3
図 3、4 及び 5 は、Industrial Economics 社が行った複数のデータ源を用いた分析から作成した。その算
出方法に関する詳細説明は第 2 章を参照のこと。
4
Translated by the Global CCS Institute
図4
図5
環境/その他の影響の評価
その他の影響の評価
本調査では、CO 及び H S によって引き起こされる可能性のある環境影響についても検討して
いる。図 6 は、環境/その他の損害の分布をまとめたものである。これらの分布は無数の情報源か
ら取得したデータを反映しており、その中にはパイプライン安全室の 2002 年から 2009 年の CO
パイプライン事故データ、2002 年から 2005 年の 1,582 件の有害液体パイプライン事故に基づいた
公開パイプライン損傷推定モデル及び産業・貿易協会との情報交換に基づく専門家判断が含まれ
る。図 6 に要約した推定損害額は、プラント、パイプライン及び隔離サイトの事故によってもた
らされる環境/その他の損害額の代替値となる。例外は地下水損害であり、これについては本調査
で別途言及する。
2
2
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Translated by the Global CCS Institute
図6
テキサス州 Jewett 事業のプラント、パイプライン及び
事業のプラント、パイプライン及び隔離の特徴
及び隔離の特徴
テキサス州 Jewett 事業は、人口密度の低い過疎地域に位置しており、図 1 及び 2 に示すような
潜在的損害の規模を限定的なものにしている。特に、図 7、8 及び 9 に示すように、提案されてい
るプラント、パイプライン及び隔離場所の周辺地域の画像は、住居の数が比較的少ないことを示
しており、ヒトの健康へのばく露の制限につながっている。
図 7 に紫色で示すように、設備設置地点の規模は約 400 エーカー(約 162 万 m )である。プラ
ントの敷地面積はわずか 75 エーカー(約 30 万 m )と想定され、プラントの周辺に数百フィート
の空地が緩衝地帯として存在することになる。設備設置地点(案)の 0.3 マイル(0.5 km)以内に
は住宅は存在せず、その区域外の人口密度も極めて低い。利用頻度が低い一軒の小規模の教会が
発電所サイト(案)の北端から北へ約 0.3 マイル(0.5 km)の地点にある。
万一事故が起きた場合は、プラント、パイプライン及び隔離場所が過疎地域にあるという特性
により、損害の可能性が限定される。過疎地域という現在のサイト特性にもかかわらず、本調査
ではプラント、パイプライン又は隔離場所の人口統計の変化を考慮した予測を取り入れていない。
今後のシナリオ分析の一環として、さらに、スポンサーグループの意向によっては、人口増加及
び土地利用の変化といった将来予想される変化を反映するために、調査に用いた変数を調整する
ことが可能である。
図 8 は、プラント(案)及び隔離場所を結ぶ CO パイプラインの位置を示している。パイプラ
インの全長は、約 59 マイル(約 95 km)、内径は 19 インチ(約 48 cm)と想定されている。パイ
プラインは、地下 3 フィート(約 91 cm)の深さに埋設される。パイプラインの大部分は、既存の
天然ガス輸送の通行権を利用して敷設すると想定されている。
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Translated by the Global CCS Institute
図7
出典:ESRI 社及び FutureGen 報告書
図8
出典:ESRI 社、NLCD(2001)及び FutureGen 報告書
Translated by the Global CCS Institute
現在、パイプライン敷設地域の周辺はほとんど開発されていない。表 3 は、パイプラインから
以内のカバータイプ(土地利用)の出現率をまとめたものである。パイプライン周辺地域の
約 が牧草地、20%が森林、16%が低木地である。開発地域は約 8%を占めるに過ぎない。さら
に、パイプライン付近には、大きな公園、キャンプ場又はその他の娯楽/文化施設はないようであ
る。パイプラインを横切る唯一の水源として留意すべきはトリニティー川である。
100 m
30%
表 3:パイプラインから 100 m 以内の土地被覆分類
%
土地利用 面積(エーカー)
46
0.8
水域
437
8.0
開発地
372
6.8
荒野
1,078
19.8
森林
888
16.3
低木
371
6.8
草原
1,634
29.9
牧草地
630
11.5
湿地
図 9 は、テキサス州 Jewett の設備設置地点から北東に約 33 マイルの過疎地域に位置する隔離サ
イトを示す。提案されている二箇所の CCS 圧入井サイトは、テキサス州 Waco の約 60 マイル(約
96 km)東、Freestone 郡 Fairfield の約 16 マイル(約 26 km)東に位置する。三番目の提案 CCS 圧
入井サイトは、テキサス州 Palestine の約 16 マイル(約 26 km)西、Anderson 郡のテキサス州刑事
司法局(TDCJ: Texas Department of Criminal Justice)から約 5 マイル(約 8 km)東に設置予定であ
る。
現在、隔離サイト(案)は、森林及び草原であり、ごく一部が牧場として使用されている。少
数の住民が居住している。例外は、想定される CCS プルームの真上に位置する TDCJ 施設である。
FutureGen リスク評価書によると、圧入作業は個人所有の牧場(すなわち、Hill 牧場。)及び隣接
する TDCJ が管理する州所有地で実施される。さらに、FutureGen の文書では、隔離サイトについ
て、二箇所の敷地面積を合計すると約 1,550 エーカー(約 627 万 m )となる、最低三つの圧入サ
イトに対して 100%の地上権並びに採掘権及び水利権の放棄を条件とした 50 年間の借地権が提案
されたとされている(FG アライアンス、2006c)。
2
Translated by the Global CCS Institute
図9
出典:ESRI 社、NLCD(2001)及び FutureGen 報告書
地下水損害
地下水損害
潜在的な地下水損害は、必ずしもこれらに限定されないが、水利権、地下水汚染につながりか
ねない事象の発生確率、隔離流の成分、潜在的な空間的広がり、地下水汚染事象の深刻さ及び期
間、当該地域の地下水の使用用途及び使用量、適切な修復及び復元費用並びに代替飲料水源の有
無を含む複数の要素を反映している。FutureGen の分析では、テキサス州 Jewett の隔離サイトにお
ける地下水損害の可能性は低いと結論付けている。その結果として、地下水への漏出という起こ
りそうにない事象に起因する影響の潜在的な深刻さ及び規模の定量化を試みていない。
本調査は、テキサス州 Jewett サイトの CCS に起因する潜在的な地下水損害の広範な評価を目的
とした一連のバウンディング計算を含む。CCS プルームが隔離サイトの封じ込め地帯の外に移動
する場合、地下水源に対して少なくとも次の四種の悪影響が及ぶ可能性がある。
1) 飲用目的又はその他通常の有
用目的又はその他通常の有効利用
その他通常の有効利用に適さない
効利用に適さないレベルに
に適さないレベルにまで
レベルにまでの
までの帯水層の飲用部分の pH(酸
性度)の低下。
低下。どの程度まで pH が減少するかは、帯水層の母岩(aquifer matrix)中の炭酸
塩鉱物の相対量に左右される。重量比で約 1%以上の炭酸塩鉱物が含まれる場合、その緩衝
能によって、検知可能な程度の pH 変化は生じない。炭酸塩鉱物が実質的に存在しない場合、
CO の圧入域に近い場所では、約 3.5 にまで pH が低下する可能性がある。入手可能な当該
地域の地下水データによれば、帯水層の母岩中の炭酸塩鉱物が 1%を超える可能性は非常に
高いことが示唆されている。この調査結果を裏付けるために、帯水層の母岩の物理的サンプ
リング及び関連する緩衝能の室内試験が必要となる。実在する炭酸塩鉱物量のデータを利用
することで、広範囲にわたる地球化学的モデルによる平衡計算が可能になる。
2) ヒトの健康
ヒトの健康及び
の健康及び環境への影響が認められる
及び環境への影響が認められる又は
環境への影響が認められる又はその他の
又はその他の健康
その他の健康影響以外の
健康影響以外の悪影響を招く
影響以外の悪影響を招くまで
悪影響を招くまで
の H S 濃度の
濃度の上昇。吸入した場合、気体の H S は極めて有毒であるが、地下水中の H S に
ついてはさほど心配はない。現在、H S の最大許容濃度(MCL: maximum contaminant level)
の規制はなく、水への溶解濃度における H S は、ヒトの健康又は環境に対する危険はないと
みなされている。しかしながら、それでも H S は水利用に悪影響を及ぼす。具体的には、
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2
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2
濃度が 1 ppm(100 万分の 1)を超えると、不快な悪臭、金属の腐食又は変色並びに着色
の原因となる。CCS 流が漏出した場合には、本調査で使用するバウンディング計算では、地
下水中の H S の最大濃度が 5 ppm を超える可能性は低いとしている。5 ppm の濃度では、ヒ
トの健康又は環境への危険はないが、上述のとおり、異臭及び変色/着色の問題の原因とな
る可能性がある。安価な局所的処理法で H S を低減すれば、これらの影響は回避できる。
3) 地下水及び
地下水及び帯水層
及び帯水層母岩
帯水層母岩鉱物
母岩鉱物中の
鉱物中の自然
中の自然有害金属
自然有害金属の
有害金属の溶出を引き起こすほど
溶出を引き起こすほどの
を引き起こすほどの、既存の水源の化
学的性状の変化
性状の変化。
変化。公開データによると、テキサス州 Jewett の隔離サイト近隣の帯水層水には、
砒素、ベリリウム、カドミウム、鉛、マンガンなどの微量金属が検出可能な濃度で含まれて
いる。これら大半の物質の濃度は、MLC の規制値を下回っている。溶解に十分な pH 低下が
あれば、これらの金属の大部分は帯水層鉱物から水中に溶出する。しかし、これが起こるの
は、帯水層の母岩中の炭酸塩鉱物の相対存在量が帯水層の鉱物全体の約 1%以下の場合に限
る。上述のとおり、これが起こるとは考えにくいが、この仮定を検証するためには、帯水層
の母岩のサンプリング及び関連する緩衝能についての室内実験が必要となる。
4) 第二級飲料水基準を超える
第二級飲料水基準を超える又は
飲料水基準を超える又は水の通常
又は水の通常の
水の通常の利用及び
利用及び価値が低下する
及び価値が低下する濃度まで
価値が低下する濃度までの
濃度までの水中の
水中の総溶
解固形物
解固形物/硬度の増加
硬度の増加。
の増加。概念的には、帯水層水への CO の溶解は、特定の目的のための水利
用が不可能又は望ましくないレベルにまで溶解固形物の総量及び/又は硬度を上昇させるこ
とが可能である。本調査で使用するバウンディング計算によると、想定シナリオ下での溶解
固形物の最大濃度は、重炭酸カルシウムの溶解限度である約 166 g/L(166,000 ppm)の範囲
内に収まる可能性が高い。このシナリオは必ずしも健康を脅かすものではないが、水の飲用
及び最も一般的な使用に適さない状態となる。しかし、このような事故が起きたとしても、
影響は漏出 CO の移動経路周辺の極めて局所的な区域に限られると予想される。この種の影
響は、局所的な処理(水軟化のためのイオン交換)、水の混合又は代替水の供給によって緩
和することができる。
テキサス州 Jewett サイトでは、本分析で評価する 100 年以内の地下水損害は、隔離場所に設置
された石油及びガス/その他の既存の坑井からの漏出が原因となる可能性が(圧倒的に)最も高い。
表 2 に示すように、テキサス州 Jewett の隔離場所に設置されたこれらの坑井からの年間漏出確率
は 7%と推定されており、坑口装置又は圧入井からの漏出と比べて 3 桁大きい。さらに、隔離サイ
ト内の圧入井が「中心」に位置することにより、圧入井に関連する地下水への影響は(もしある
とすれば)プロジェクトスポンサーが既に水利権を取得した範囲内に留まる可能性が高く、損害
の可能性は限定的となる。一方で、石油及びガス/その他の深坑井は隔離場所全体に存在する可能
性があるため、プロジェクトスポンサーが水利権を確保していない地域付近に存在する可能性も
ある。
したがって、本調査では、隔離サイト内の「その他の坑井」における漏出シナリオの一環とし
て、潜在的な地下水損害を分析する。本調査においてモンテカルロ分析の一環として「その他の
坑井」における漏出事象が起こる場合、損害額は、漏出阻止に必要な費用並びに地下水への漏出
及び地下水の供給に対する影響に対応に必要な費用を含めて想定される。
漏出防止の費用に関して、モンテカルロモデルでは、50,000 ドルから 300,000 ドルの費用が発生
する確率を 90%とされた(各事象に対して、この範囲内から一つの費用を任意に選択)。 時折、
旧式の石油及びガス又はその他の坑井では、漏出に対処するためにはさらに複雑で高額の措置が
必要になる場合がある。本調査のモデルでは、坑井からの漏出の修繕/対処に必要な費用が
2,000,000 ドルから 3,650,000 ドルである確率を 10%とした(各事象に対して、この範囲内から一つ
の費用を任意に選択) 。
地下水への影響に起因するサイト特有の潜在的損害額をさらに詳細に評価するには、すぐには
入手不可能なテキサス州 Jewett サイトのデータが必要であり、本分析の範囲を超える。しかし、
モンテカルロ計算ではバウンディング推定を行い、一般に利用可能な情報の他、地下水損害事例
付録 A を参照。
付録 A を参照。
H2S
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2
2
2
5
6
5
6
Translated by the Global CCS Institute
の経験に基づく専門家判断も反映している。モンテカルロ試行で「その他の坑井」からの漏出事
象が起こる場合、損害額は次のとおりとされた。50,000 ドル(75%の確率)、500,000 ドル(20%
の確率)又は 5,000,000 ドル(5%の確率)。
これらの推定損害額は、様々な要因の影響を受ける。特に、「低位」推定額(50,000 ドル)で
は次に挙げるシナリオのすべてが当てはまる場合である。
• 漏出が起こるが、検知/是正措置を実行する前の地下水への漏出量が微量であり、悪影響を
及ぼすには至らない。
• 利用可能な水源を含まない地下で漏出が起こる。
• 利用可能な水源を含む地下で漏出が起こるが、影響を受けた地域一帯の水利権を CCS プロ
ジェクトの実施者が所有する。
これらのシナリオに伴う費用については、漏出を調査し、地下水源への影響の可能性がないこ
とを確認するための費用を比較的少額としている。
「中位」及び「高位」推定損害額 (それぞれ 500,000 ドル及び 5,000,000 ドル)は、プロジェク
ト実施者の管理下にない地下水源に対する潜在的又は実際の影響によって、影響に対する現実的
な対処が必要になる状況(例えば、局所的な処置、プルームの封じ込め、地下水の混合、揚水処
理、代替水の供給など)及び/又は地下水質の低下及び/又は利用可能性の低下に対し、地下水利権
の所有者に補償する状況を反映している。国内の他地域における地下水汚染事例では、本分析で
使用した金額を大幅に超過する損害額となっているが、テキサス州 Jewett の隔離場所の潜在的な
損害規模を制限するサイト特有の要因があるとするのが我々の見解である。その要因には次のよ
うなものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
• 隔離プロジェクトが進行する前に、プロジェクトスポンサーが、既存の選択肢としての隔離
地域の地下水利権の購入を行う可能性が高い。
• テキサス州 Jewett の隔離サイト周辺の地下水は、現在、商業用、工業用又はその他の目的で
使用されていない。
• 隔離サイト及びその周辺地域には、ほとんど住民がいない。
• 一般に入手可能な当該地域の地下水データによると、母岩中の炭酸塩鉱物の含有率が 1%を
超える可能性が極めて高く、pH に関連する影響の可能性を大幅に制限する自然の緩衝能が
ある。
• 発生可能性のある影響に対し、安価な局所的処理技術が直ちに利用できる。
CO2
の漏出
FutureGen のリスク評価では、多岐にわたる漏出メカニズムに対し、潜在的漏出率を推定してい
る。しかし、FutureGen の報告書ではそのような漏出時に大気放出される潜在的な CO 量の定量は
実施されていない。さらに、CO 漏出による将来的な潜在損害規模は、温室効果ガス管理レジー
ムの設計及び実施に左右される。米国におけるそのようなプログラムの実施時期及び具体的な設
計は不確かである。
このような不確実性にもかかわらず、潜在的な損害額の推定に利用できる情報源がある。例え
ば、「炭素の社会的コストに関する米国省庁間作業部会」は最近(2010 年 2 月)、「炭素の社会
的コスト」の推定を実施した。これらの推定には、気候変動に起因する正味の農業生産性、ヒト
の健康、洪水リスクの上昇による物的損害及び生態系サービスの価値の変化が含まれる。この報
告書に含まれる推定額の範囲は、4.7 ドル/トン CO から 136.2 ドル/トン CO である(2007 年時点
のドル)。このような推定額は有益なベンチマークとなるとはいえ、将来の不慮の CO 漏出に対
して事業者に支払い義務が生じる可能性のある実際の損害額との関連は依然明確ではない。
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2
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付録 1 は、米国で検討された規制シナリオに基づき、今後数十年間の CO 排出枠価格の予想を
まとめたものである。一般的に、これらの推定額は炭素の社会コストの分析で明らかにされた価
格範囲内に収まり、潜在的なオフセット費用に対して追加的な情報となる。
この評価研究では、表 4 に示す Nordhaus(2010 年)の情報に基づいたオフセット価格の一覧を
使用する。表 4 の一覧に基づく価格帯は、表に示された年度間は「直線的に」価格が変化するも
のとして、本調査の 100 年の分析期間の各年に割り当てられる。本調査におけるモンテカルロ試
行の一環として、CO が漏出する場合、その漏出が生じた年度に割り当てられている範囲内から
オフセット価格を無作為に選択する。
2
2
表 4:モンテカルロ分析で用いた CO オフセットの価格帯
低価格
高価格
年度
ドル/トン CO
ドル/トン CO
2
2
2015
2025
2035
2045
2055
2065
2075
2085
2095
2105
2115
10.28
17.46
24.12
32.21
41.85
53.15
66.30
81.40
98.49
117.43
137.95
2
21.49
38.58
61.45
95.50
144.45
201.31
273.04
321.71
253.46
197.30
193.21
出典:Nordhaus (2010)「ポストコペンハーゲンの環境における
地球温暖化の経済的側面」(“Economic aspects of global warming
in a post-Copenhagen environment”)、Proceedings of the National
Academy of Sciences、107 (26):11721-11726
「低位」及び「高位」推定価格は、Nordhaus (2010)が示した
「600 ppm 最適シナリオ」及び「2℃制限シナリオ」を反映し
ている。Nordhaus (2010 年)の最適経路では、2080 年前後に
CO 濃度が 600 ppm 弱でピークに達し、2200 年には約 500
ppm で安定している。
2
本調査のモンテカルロ分析では、炭素オフセットの単位価格に加え、漏出が起こった場合の大
気中への推定放出量が必要となる。表 5 に示すように、FutureGen 分析で提供された情報から CO
の漏出率を推測できる。しかし、FutureGen 分析では次の事項の推定は行っていない。(1)観測及び
停止が予想される漏出割合、(2) 漏出期間又は(3) 最終的に大気に到達する放出量。さらに、隔離
サイトの CO 漏出による潜在的損害は、付随する監視取組の種類、頻度及び期間に大きく左右さ
れる。
2
2
Translated by the Global CCS Institute
表 5 調査分析による FutureGen リスク評価書の表 5-8、5-41~5-46 ページ
サイト
Jewett
メカニズム
段階的かつ緩慢な放出に起因するキャップロックを通じた上方
への移動による漏出
破壊的な損傷及び急激な放出に起因するキャップロックを通じ
た上方への移動による漏出
圧力上昇(地域的な過圧)に起因する既存の断層を通じた漏出
圧力上昇(局部的な過圧)に起因して誘発断層を通じた漏出
未知の構造的又は層位的連結に起因する隔離対象外の帯水層へ
の漏出
対象域からの水平方向移動に起因する隔離対象外の帯水層への
漏出
CO 深坑井に起因する漏出、高流量
CO 深坑井に起因する漏出、低流量
石油及びガス深坑井に起因する漏出、高流量
石油及びガス深坑井に起因する漏出、低流量
未登録の深坑井に起因する漏出、高流量
未登録の深坑井に起因する漏出、低流量
事象が発生した際の年間流量
最低量
最低量(百万 最高量
最高量(百万
トン/年) トン/年)
2
2
0
4,918
NA
118
24
NA
3,526
705
2,350
79,910
28,928
11,000
200
11,000
200
11,000
200
867,845
11,000
200
11,000
200
11,000
200
研究者は潜在的な CO 漏出量限度の推定を試みてきた。例えば、Dooley 及び Wise は次のように
述べている。
石油増進回収に関連する CO 隔離を検討した、現在のところ最も包括的な調査のうちの
一つの中で、Stevens らは、油田での石油増進回収事業の期間中に「控えめに見積もって、
正味 CO 購入量の 10%が放出されると推定」している。主として炭化水素回収への CO
利用の経済性に着目した Stevens の調査の文脈から判断すると、10%という数字は、著者
が推定するこのクラスの貯留層からの漏出の上限値として解釈すべきであり、実際
Stevens 及び共著者は「実際の割合は低いだろう」と指摘している点に留意することが重
要である。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の CCS に関する特別報告書(2005)では、適切に選定
及び管理されている地質学的貯留層の場合、100 年間にわたり貯留層に CO が留まる確率は 99%
以上である可能性が極めて高いと推定している。全体的には、一般的な技術文献から入手できる
サイト特有のデータ及び情報は、潜在的な漏出量に正確な確率を割り当てるには不十分である。
それにも関わらず、本調査では推定損害額を特定するために、多くの漏出量の推定値を利用して
いる。サイト特有のデータの欠如により、本調査を裏付けるモンテカルロ分析には、以下に示す
限界推定値を使用している。
• 操業期間中(2011 年~2060 年)に圧入井から漏出した場合、モンテカルロ分析では大気へ
の CO 放出量を 0.1 トンから 16.5 トンの範囲で無作為に割り当てる。
• 2061 年から 2110 年の間に圧入井から漏出した場合、モンテカルロ分析では大気への CO 放
出量を 0.6 トンから 99 トンの範囲で無作為に割り当てる。
• 分析期間中(2011 年~2110 年)に「その他の坑井から」漏出した場合、モンテカルロ分析
では大気への CO 放出量を 99 トンから 5,400 トンの範囲で無作為に割り当てる。
2
2
2
2
7
2
8
2
2
2
7
Dooley JJ and MA Wise, 2003. Retention of CO2 in Geologic Sequestration Formations: Desirable Levels,
Economic Considerations, and the Implications for Sequestration R&D. Proceedings of the 6th International
Conference on Greenhouse Gas Control Technologies. J Gale and Y Kaya (eds).
8
付録 A 参照
Translated by the Global CCS Institute
3.0
結論及び
結論及び不確実性
及び不確実性
本調査で使用したモンテカルロ法は、CCS プロジェクトが引き起こす可能性のある将来的なリ
スクを理解し、管理するために、分析的に正確な基礎となる。このモデルをテキサス州 Jewett の
FutureGen サイトのような、「現実的に」サイトが特定されたプロジェクトに適用することにより、
CCS プロジェクトのサイトごとに、事象の発生確率とともに損害額の推定が可能であるという本
分析の考え方が立証できる。
本調査結果から改めて確認できる重要な検討事項は、サイトの位置の重要性である。具体的に
は、推定損害額は CCS 流の組成、プラントの操業体制、パイプラインの健全性及びサイト特有の
地質によって決定される。特に、このようなリスクカテゴリーにおける変化が、推定損害額に数
桁の変動をもたらす場合がある。したがって、本調査の結果は、立地条件に恵まれ、操業状態の
良好な CCS プロジェクトでは損害発生の可能性が比較的低いが、適切なサイト選定及びサイトご
との監視が不可欠であることを示唆している。
テキサス州 Jewett の CCS プロジェクトについて予想される推定損害額の算出は、本調査が、多
岐にわたり程度が様々な不確実さに関する仮定に左右されざるを得ない。具体的には、これまで
議論した推定損害額の大部分が FutureGen リスク評価書及び環境影響調査書の分析に依存しており、
両文書は大規模な公開レビュー及びコメントを受けたものである。一般的に言って、FutureGen 分
析は保守的な仮定を適用しており、修正なしで本調査に適用する場合には、損害の可能性が過大
評価されがちとなる。
本文書で一貫して説明しているように、FutureGen 分析では、CCS プロジェクトのプラント、パ
イプライン及び/又は隔離場所で一件以上の漏出が発生した際の、潜在的な財務面への影響を推定
するために必要なデータがすべて提供されるわけではない。我々は、追加情報の必要性への対処
として、可能な限り公開情報に依存し、専門家の判断及び産業・貿易関連の専門家との意見交換
により補足した。
本分析の重要な結論及び要素並びに関連する結果として、概念の検証の評価を行ったテキサス
州 Jewett サイトについて限定した見解を以下に述べる。
• 全体として、推定
全体として、推定損害総額は約
万ドル(50 パーセンタイル値
パーセンタイル値)及び 1,860 万ドル(
万ドル(95
推定損害総額は約 850 万ドル(
パーセンタイル値
パーセンタイル値)である。これらの推定額には 100 年間の分析対象期間中に発生する可能
性のあるすべての有害事象が含まれ、2010 年時点のドルで示されている。これらの推定額
は、隔離された CO 1 トン当たり約 0.17 ドル(50 パーセンタイル値)及び約 0.37 ドル(95
パーセンタイル値)と換算される(テキサス州 Jewett サイトでは 5,000 万トンの CO を隔離
予定)。
• 隔離サイト
隔離サイトにおける石油
サイトにおける石油及び
における石油及びガス
及びガス坑井
ガス坑井/その他の坑井から
その他の坑井からの潜在的な
からの潜在的な漏出
の潜在的な漏出による
漏出による損害
による損害額
損害額は、
推定損害
推定損害総額
損害総額の
総額の 95%以上を占める。テキサス州 Jewett サイトでは、石油及びガス深坑井が
数十箇所存在し、他にも古い坑井が複数存在する可能性がある。FutureGen 分析では、プラ
ント又は隔離サイトにおけるこれらの坑井からの漏出確率(年間の漏出発生確率が 100 分の
7)をその他の事象と比較して数桁高い確率としており 、これがこの潜在的損害カテゴリーの
数値が顕著であることの一因となっている。 数種類の潜在的な損害が、本損害総額に大き
く寄与している。それには、1) 漏出の停止、2) 地下水汚染への対処、3) CO 漏出に対処する
ためのオフセット購入、4) ヒトの健康被害への補償及び 5) (損害額は非常に少ないが)生
息する生物/その他の損害への対処を含む措置費用が含まれる。
• その他の種類
その他の種類の隔離サイト事象に関連
隔離サイト事象に関連する
事象に関連する損害
する損害の可能性
損害の可能性は、
の可能性は、わずかである
は、わずかである。
わずかである。地上の坑口及び
圧入井に関する事象の推定損害額は、50 パーセンタイル値及び 95 パーセンタイル値のいず
れも 0 ドルであり、発生確率が極めて低いことを反映している。すなわち、圧入井における
2
2
9
2
パイプラインの穿孔又は破裂が、2 番目に発生確率の高い漏出事象であるが(年間発生確率はそれぞ
れ 100 分の 1 及び 200 分の 1)、別項で説明した理由により、損害はかなり低額である可能性が高い。
9
Translated by the Global CCS Institute
年間漏出確率は 100,000 分の 3 であり、地上の坑口における年間漏出確率は 100,000 分の 6
である。
• 設備設置地点事象
設備設置地点事象に
事象に関連した損害の可能性は、わずかである。
関連した損害の可能性は、わずかである。設備設置地点からの漏出に関
する推定損害額は、50 パーセンタイル値及び 95 パーセンタイル値のいずれも 0 ドルであり、
発生確率が極めて低い、すなわち年間発生確率が 100,000 分の 5.5 であることを反映してい
る。
• パイプライン事象に
パイプライン事象に関連した損害
関連した損害の可能性は低い。
損害の可能性は低い。パイプラインの破裂による推定損害額は、
50 パーセンタイル値で 0 ドル、95 パーセンタイル値で約 30 万ドルである。パイプランの穿
孔事象の推定損害額は、50 パーセンタイル値で 0 ドル、95 パーセンタイル値で約 20 万ドル
である。パイプランの破裂及び穿孔の事象は 50 年の稼働期間中に発生する可能性が十分高
いものの (すなわち、年間確率がそれぞれ 200 分の 1 及び 100 分の 1)、過疎地域という立
地条件のため、ヒトの健康被害の可能性が極めて限定されると予想される。さらに、何らか
の事象が発生した場合でも、影響を受けるのは安全停止弁間の 5 マイルのパイプライン部分
で、そこに存在する比較的 CO の量は比較的少量(1,290 トン)であり、生態系/その他の損
害の可能性が制限される点も、損害額が低く推定される一因である。
• 隔離流に H S がまったく含まれない場合、推定
がまったく含まれない場合、推定損害
推定損害総額は
損害総額は約
総額は約 10%から 15%程度低くなる。
本分析では H S をヒトの健康リスクをもたらす主な要因としているが、プラント、パイプラ
イン及び隔離が過疎地域で実施されるため、潜在的なヒトの健康被害が限定され、H S の付
加的影響が最小限に抑えられている。
重要な不確実性に関し、評価対象のテキサス州 Jewett サイトに限定して以下の見解を述べる。
• CO 漏出に伴う推定
漏出に伴う推定損害
に伴う推定損害額
損害額は、極めて不確実性が高い。有害事象が発生した場合に大気中に
放出される潜在的 CO 量及びそのような放出に起因する潜在的な費用(ドル/トン CO )は
いずれも極めて不確実性が高い。不確実性分析の目的で、本調査の「基本ケース」に対する
モンテカルロモデルでは、隔離サイトの CO 漏出に関する推定損害額を約 200 万ドル(50
パーセンタイル値)及び 400 万ドル(95 パーセンタイル値)と算出している。
CO オフセット価格に関する不確実性に対処するため、モンテカルロモデルには比較的幅広
い CO 漏出単価を含んでいる。つまり、年度によるが CO 1 トンあたり約 10 ドルから 320
ドルである。現在入手可能な情報及び予測に基づけば、この範囲を超えるオフセット価格の
予想は困難である。しかし、将来も CO 排出規制が実施されず、結果として、プロジェクト
事業者に対し大気中への CO 放出に費用が発生しないことも考えられる。そのようなシナリ
オでは、CO 漏出による損害は発生しないと予想される。
漏出量の不確実性に関し、「基本ケース」のモンテカルロモデルでは、隔離サイトにおける
潜在的な漏出量を 99 トンから 5,400 トンとしている。感度分析を目的として、各隔離サイト
の漏出事象により大気中に 50,000 トンの CO が放出されると想定すると(100 トンから
5,400 トンから無作為に選択するのではなく)、「基本ケース」のモンテカルロ分析による
CO オフセット価格の想定を使用した場合の CO 漏出による推定損害額の 50 パーセンタイ
ル値及び 95 パーセンタイル値は、それぞれ約 3,660 万ドル及び約 6,770 万ドルにまで増加す
る。
• 潜在的な地下水損害
潜在的な地下水損害は不確実であるが、
損害は不確実であるが、サイト
は不確実であるが、サイト特有の要因によって
サイト特有の要因によって制限
特有の要因によって制限される。
制限される。本調査には、
テキサス州 Jewett サイトの CCS に起因する潜在的な地下水損害の広範な評価を目的とした
一連のバウンディング計算が含まれている。地下水への潜在的な影響に起因するサイト特有
の損害を詳細に評価するためには、テキサス州 Jewett サイトの直ちには入手不可能なデータ
及び本分析の範囲を超えた情報源の確保が必要になる。
それにも関わらず、入手可能な情報から、テキサス州 Jewett の隔離場所における潜在的損害
の規模を限定するサイト特有の要因がいくつか指摘されている。要因には以下が含まれるが、
これらに限定されるものではない。
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
Translated by the Global CCS Institute
2
隔離プロジェクトの進行の前に、プロジェクトスポンサーが、既存の選択肢としての隔
離地域の地下水利権の購入を行う可能性が高い。
– テキサス州 Jewett の隔離サイト周辺の地下水は、現在、商用、工業用又はその他の目的
で使用されていない。
– 隔離サイト及びその周辺地域には、ほとんど住民がいない。
– 一般に入手可能な当該地域の地下水データによると、母岩中の炭酸塩鉱物の含有率が
1%を超える可能性が極めて高く、pH に関連する影響の可能性を大幅に制限する自然の
緩衝能が備わっている。
– 発生する可能性のある影響に対し、安価な局所的処理技術が直ちに利用可能である。
上記の理由に加えて、直ちに利用可能なサイト情報及び専門家判断を考慮に入れ、モンテカ
ルロ分析では、「その他の坑井」に係る漏出事象に対する損害額を次のとおりとした。
50,000 ドル(発生確率 75%)、500,000 ドル(発生確率 20%)又は 5,000,000 ドル(発生確率
5%)。上述の理由を考慮すると、この範囲を超えた「事象ごとの」損害は予想し難い。し
かしながら、定められた各損害額の範囲に設定された確率も同様に不確かである。感度分析
を目的として、損害分布の確率を 50%(50,000 ドルの損害)、30%(500,000 ドルの損害)
及び 20%(5,000,000 ドルの損害)に変更すると、隔離サイトの地下水損害額は 130 万ドル
から 670 万ドル(50 パーセンタイル値)、790 万ドルから 2,020 万ドル(95 パーセンタイル
値)に上昇する。
FutureGen で使用する平均的な大気条件では、ヒト
で使用する平均的な大気条件では、ヒトの健康に対する影響の潜在的な「上限」
ヒトの健康に対する影響の潜在的な「上限」
が過小評価される可能性がある。
過小評価される可能性がある。モンテカルロ分析では、FutureGen のヒトの健康に対する
影響の推定値をそのまま使用しており、前述のとおり、この推定値は平均的な大気環境を反
映している。平均的な条件によって、「最も可能性の高い」影響の合理的な推測が可能であ
る一方、この方法は大気条件のサブセットによって CO プルームの高濃度化、滞空時間の長
期化及び/又は人口密度の高い地域へのプルームの移動が生じる場合、「上限の」影響を過
小評価の繋がる可能性がある。テキサス州 Jewett のプラント、パイプライン及び隔離サイト
の極度の過疎環境によって、影響の過小評価が限定的となる可能性はあるものの、
FutureGen 分析から得られる公表情報は、ヒト健康影響の潜在的な重大性を適切に定量化す
るためには不十分といえる。
モンテカルロモデルでは、
モンテカルロモデルでは、FutureGen の隔離サイト
の隔離サイト事象の
サイト事象の推定
事象の推定発生確率
推定発生確率が
発生確率が「そのまま」使用
されており
されており、
ており、FutureGen は根本的な不確実性の潜在的規模を
は根本的な不確実性の潜在的規模を定量化してい
定量化していない。
していない。FutureGen
の隔離サイト事象の推定発生確率はサイト特有のデータ、インダストリアルアナログ及びナ
チュラルアナログ並びに専門家判断の評価に基づいている。これらの推定値の根本的な不確
実性については定量化されていないが、事例によっては FutureGen が事象の発生確率範囲を
特定している場合もある(例えば、その他の坑井からの放出など。)。その場合、モンテカ
ルロモデルでは保守的に発生頻度の最大値を使用し(中間値又は最低値を使用するのではな
く)、したがって、潜在的な損害を過小評価するよりも過大評価する可能性が高くなる。
モンテカルロモデルでは FutureGen のパイプライン事象の推定
のパイプライン事象の推定発生確率
推定発生確率が
発生確率が「そのまま」使
用されており
用されており、不確実性の程度は比較的低いと予想される。
ており、不確実性の程度は比較的低いと予想される。FutureGen のパイプライン破損
頻度の推定は、パイプライン安全室が管理する膨大なパイプライン故障事故のデータベース
を基準としている。この事象の発生頻度データが存在し、また、直接的に関連することによ
り、パイプラインの事象の発生確率に係る不確実性は比較的低いレベルであるといえる。
FutureGen はプラント事象の発生確率を推定
はプラント事象の発生確率を推定しておらず、モンテカルロモデルで使用される
推定しておらず、モンテカルロモデルで使用される
推定値は、
推定値は、公表されている
は、公表されている技術文献の情報
公表されている技術文献の情報及び
技術文献の情報及び専門家
及び専門家判断に基づいている
専門家判断に基づいている。
判断に基づいている。このパラメータ
に関する不確実性は存在するものの、CO 分離目的で使用されるようなプラント機器の故障
は稀である。テキサス州 Jewett プラント周辺の人口密度が低い点を考慮すると、モンテカル
ロモデルで使用される故障の発生頻度(年間で 100,000 分の 5.5 の確率)は、潜在的な設備
設置地点の事象による損害が、テキサス州 Jewett プラントにおける「最も可能性の高い」及
–
•
2
•
•
•
2
Translated by the Global CCS Institute
び「上限の」損害額の誘因要素として無視できない程度にならない限りは、事故発生頻度は
最低でもこの 5 分の 1 程度と考えていいだろう。
Translated by the Global CCS Institute
付録 1:
:CO2 排出枠の価格予測の概要
排出枠の価格予測の概要
引用
US EPA. 2009. Analysis of the
American Clean Energy and
Security Act of 2009 H. R. 2454
in the 11th Congress. Office of
Atmospheric Programs. June 23.
http://www.epa.gov/climatechang
e/economics.pdfs/HR2454_Analy
sis.pdf
から閲覧可能。
Montgomery, D., et al., 2009.
Impact on the Economy of the
American Clean Energy and
Security Act of 2009 (H.R. 2454).
Prepared for the National Black
Chamber of Commerce
Washington, D.C., pp. 24-31.
U.S. Congressional Budget Office
(CBO). 2009. Cost Estimate –
H.R. 2454 American Clean
Energy and Security Act of 2009.
As ordered reported by the House
Committee on Energy and
Commerce. Washington, D.C.
June 5. 41pp.
CBO. 2009. Cost Estimate –
S.1733 Clean Energy Jobs and
American Power Act. As ordered
reported by the Senate Committee
on Environment and Public
Works. Washington, D.C.
December 16. 31pp.
CBO. 2008. Cost Estimate – S.
2191 America’s Climate Security
Act of 2007. As ordered reported
by the Senate Committee on
Environment and Public Works.
Washington, D.C. April 10. 24pp.
予測炭素価格(2009 年時点のドル)
シナリオ名称 2010 年 2015 年 2030 年
コアシナリオ
$13.88 $29.13
(ADAGE)
コアシナリオ
$13.72 $28.53
(IDEM)
エネルギー効率プロ
$14.17 $29.73
グラムを伴わない
出力ベースの払い戻
$13.93 $29.24
しを伴わない
標準原子力を伴う
$15.94 $33.43
エネルギー効率、出
力ベースの払い戻し
$13.91 $29.24
又は LDC 割当を伴
わない
国際的なオフセット
$25.92 $53.89
を伴わない
特許権のある最先端の MRN-NEEM 及び MS-MRT の 低価格シナリオ
$20.24 $40.47
モデル化システムに基づき、本調査は H.R.2454 の潜
在的な経済影響を分析する。本報告書は、法律が米 参照事例
$22.26 $45.53
国経済及びエネルギー市場に及ぼす可能性のある一
部の影響に関し、政策決定者及び国民の理解促進を
目的としている。本分析の一環として、著者は炭素
排出レベル及び関連費用に影響を及ぼす特定の将来 高価格シナリオ
$42.50 $86.01
的な経済的及び技術的要因について、様々な仮説を
展開した。基礎となる仮説に関する詳細情報は、
Montgomery, D., et al. (2009)を参照のこと。
下院エネルギー・商業委員会の要請により、米国議
会予算局(CBO)は H.R. 2454 の履行のために 2010 年か
ら 2019 年までの期間の価格推定を実施した。具体的
には、H.R. 2454 は、温室効果ガス 8 物質に関連する
$19.00
排出削減を意図したキャップ・アンド・トレードプ H.R. 2454
ログラムを提案する。CBO の推定によると、このプ
ログラムは 2010 年の米国の温室効果ガス排出量の約
72%(又は 7,400 施設)を対象とする。
上院環境・公共事業委員会の要請により、CBO はク
リーンエネルギー雇用及び米国発電法(Clean Energy
Jobs and American Power Act 、S.1733)実施のため、
2010 年から 2019 年までの期間の価格推定を実施し
た。具体的には、S.1733 は、温室効果ガス七物質に
関連する排出削減を意図したキャップ・アンド・ト
レードプログラムの設立を提案する。CBO の推定に
$23.00
よると、このプログラムは 2010 年の米国温室効果ガ S.1733
ス排出量の約 72%(又は 7,400 施設)を対象とする。
2014 年及び 2017 年から 2019 年までの期間を除く大
半の年では、S.1733 及び H.R. 2454 は同一の排出上限
値に従う。2014 年及び 2017 年から 2019 年の期間に
ついては、S.1733 はさらに厳格な上限値に従い、同
じ年の H.R. 2454 に定められた上限値よりも約 1%か
ら 4%低い値である。
上院環境・公共事業委員会の要請により、CBO は
2007 年アメリカ気候安全保障法(Climate Security Act
of 2007、S. 2191)実施のために 2009 年から 2018 年
までの期間の価格推定を実施した。具体的には、S.
S. 2191
$24.00 $35.00
2191 は、発電施設並びに工業生産及び輸送を伴うそ
の他の事業(約 2,000~3,000 施設)から排出される特
定の温室効果ガスの制限又は上限値の設定のための
キャップ・アンド・トレードプログラムを提案す
る。
概要
2009 年米国クリーンエネルギー及び安全保障法(the
American Clean Energy and Security Act of 2009、H.R.
2454)は、温室効果ガス排出量を 2020 年までに 2005
年基準でマイナス 17%、2050 年までに 2005 年基準で
マイナス 83%に削減する目標を掲げる経済全域のキ
ャップ・アンド・トレードプログラムを提案する。
米国環境保護庁(EPA)は下院エネルギー・商業委員会
の要請で、H.R. 2454 の分析に着手した。具体的に
は、EPA は 7 つの異なるシナリオを分析した。各シ
ナリオに対し、EPA は 2015 年から 2050 年までの炭素
価格を予測した。各シナリオに関する詳細は、US
EPA (2009)を参照のこと。
Translated by the Global CCS Institute
2050
年
$77.27
$75.69
$78.85
$77.58
$88.65
$77.55
$143.00
$111.30
$123.45
$228.68
引用
Enkvist, p., T. Nauclér, and J.
Rosander. 2007. A cost curve for
greenhouse gas reduction. The
McKinsey Quarterly. Number 1.
2007. p. 38.
MIT. 2007. The Future of
Coal:Options for a CarbonConstrained World. Cambridge,
MA. 175 pp.
予測炭素価格(2009 年時点のドル)
概要
シナリオ名称 2010 年 2015 年 2030 年
本文献は、政策決定者及びその他の利害関係者に対
$18.24
し、温室効果ガス排出削減のために利用可能な技術 550 ppm
の重要性及び価格範囲並びに地域別(北米、ヨーロ
ッパ、中国を含む)及び産業部門別(発電、製造、 450 ppm
$29.18
運輸、住宅建築及び商業施設建設、林業、農業並び
に廃棄物処理を含む)の相対的重要度に関する理解
促進を目的としている。分析は 550、450 及び 400 400 ppm
$36.47
ppm の三つの排出目標値に及ぶ。
本調査では、CO 及びその他の温室効果ガス排出に大
幅な制約が課せられる世界における石炭の役割につ
$7.00
$8.93
$18.57
いて検討している。特に本調査では、CO 回収及び隔 低価格の軌跡
離のための統合システムと組み合わせた場合の様々
な石炭燃焼性能及び費用に重点を置いている。
CO 排出価格を明らかにする上で、本調査は二つの価
格の軌跡(trajectory)を使用する。 (1) 2010 年に CO 1
トン当たり 7 ドルから始まり、その後 5%の割合で上 高価格の軌跡
$25.00 $45.02
昇する低価格の軌跡及び(2) 2015 年に CO 1 トン当た
り 25 ドルから始まり、その後毎年実質率 4%の割合
で上昇する高価格の軌跡の二種類である。
2050
年
2
2
$49.28
2
2
2
Translated by the Global CCS Institute
$98.65
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