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Interview
国際的に高まる「保育の質」への関心
── 長期的な縦断研究の成果を背景に──
●
秋田喜代美[東京大学大学院教育学研究科教授]
追跡調査する縦断研究の成果が発表され、
「見えない教育方法」と
あきた きよみ
●
呼ばれてきた乳幼児期の保育・教育の質に関する
東京大学大学院教育学研究科教授。
国際的な議論ができるようになってきた。
専攻は発達心理学、教育心理学、教師教育。
何をもって保育の質とするのか、その測定や評価はどうあるべきか。
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。
博士(教育学)
。
OECD(経済協力開発機構)Starting strong network の会議に
立教大学文学部助教授等を経て現職。
主な著書に『知をそだてる保育』
(ひかりのくに)
、
参加してきた秋田喜代美先生に話をうかがった。
『今に生きる保育者論』
(共著、みらい)
、
キーワード=保育の質、見えない教育方法、第三者評価
『授業研究と談話分析』
(放送大学教育振興会)など。
国際的な議論の俎上に
PISA をはじめさまざまな教育調査を実施している OECD
が問われていることです。
もちろん、韓国や日本のような少子高齢化が問題となって
いる国では、
「子どもたちには、より良い質の保育・教育を」
に特別設置委員会が二つ設けられています。一つはいじめ問
といった社会的ニーズがいっそう強く、そうした国独自の課
題、そしてもう一つが乳幼児の保育・教育問題です。2008
題も背景にはあります。
年で二つの特別設置委員会は期間が切り替わったのですが、
また、学校教育の枠組み全体として考えれば、乳幼児期か
乳幼児の保育・教育問題はさらに3年間継続と決まりまし
らそれ以降の就学段階へと教育目標及び教育課程が一貫して
た。それだけ重要性が高い問題と国際的に認識されているわ
つながることが望ましいとする観点からも、義務教育段階に
けです。
比べてこれまであまり検討されてこなかった乳幼児期の保
国際経済について協議する OECD のような機関が乳幼児の
育・教育に改めて注目が集まっている、といえるでしょう。
保育・教育問題に強い関心を寄せる背景には、主に三つのグ
以上は国家や社会のマクロなレベルで乳幼児の保育・教育
ローバルな動向があると考えられます。
が国際的に議論されている理由ですが、私たち研究者や実践
第一に、乳幼児期の保育・教育への公的投資が社会的・経
者がなぜ取り組んでいるかといえば、もちろん子どもの日々
済的に極めて有効な政策手段であることが、子どもの発達を
の幸せと育ちのためにほかなりません。マクロなレベルのこ
長期にわたって追跡調査する縦断研究で実証的に示されてき
とではなく、目の前の子どもの今を生きる笑顔を見たい、子
たこと。
どもたち自身が幸せだと感じられる乳幼児期を生き、将来の
第二に、男女共同参画社会への手だてとして母親の就労が
幸せにつながってほしい、そんな願いがすべてに優先します。
重要であり、母親が働けるためには、子どもを預ける保育
所・幼稚園の質が問われること。
第三に、これはいうまでもありませんが、第二次世界大戦
単純には定義できない
2009
乳幼児期の保育・教育が
『幼児期に育つ「科学する心」
』
(共著、小学館)
、
NO.16
ア
メリカやイギリスをはじめ、諸外国で子どもの発達を長期にわたり
「保育の質」をどう保障するか
後間もなく世界的に広まった保育所・幼稚園での保育・教育
乳幼児の保育・教育に関する国際的な議論において、目下
が、OECD 参加国では概ね定着し、各国で多様な施設が生ま
のキーワードは「保育の質」の保障です。乳幼児の保育・教
れており、そこで改めて乳幼児期の保育・教育の質とは何か、
育の質とは何か、そしてそれをどう保障していくのか。
13
国際的に高まる「保育の質」への関心
Interview
図表[1]諸外国における就学前教育・保育の所管官庁
イギリス
ニュージーランド
ノルウェー
スウェーデン
フランス
ベルギー
アイルランド
ハンガリー
イタリア
チェコ
ポルトガル
オランダ
カナダ
オーストラリア
デンマーク
フィンランド
オーストリア
ドイツ
アメリカ
韓国
日本
0
1
2
3
4
そもそも「質」とは相対的・多元的な概念です。何をもっ
て「質」というのか、政治・経済・社会・文化すべての次元
5
6
7
(歳)
教育所管の幼稚園等のサービス
社会福祉、健康、家族サービスとして
の保育所、家庭保育等のサービス
福祉と教育のサービスが混在
※ドイツは州ごとに異なる
義務教育
*池本美香「乳幼児期の子どもにかかわる制度
を再構築する」
日本総研『Business & Economic Review』
2007年12月
発想が強く、就学準備というより市民としての子どもの主体
性、権利の保障が重視されるわけです。
を含み込んでいるので、単純に定義することはできません。
各国はそれぞれ理念をもってカリキュラムを作成していま
大枠の政策レベルでいえば、OECD の報告書によると、保
す。アジアでも韓国・台湾が最近、相次いで保育所・幼稚園
育所・幼稚園といった制度や施設の規模・面積といった「保
のカリキュラムを改定しました。韓国では、子どもの創造性
育制度」
、実践の内容や方法、用具・教材などを含めた「カリ
や自律性を育てる狙いが重視されたカリキュラムが組まれて
キュラム」
、そして養成教育や研修体制も関係した「保育者の
います。台湾では幼保一元化のカリキュラムをつくっていま
資質」の大きな三つの柱を立てて、各国は質の向上を目指し
すが、
「仁、仁愛」を育てるという教育目標が掲げられていま
ています。
す。台湾で「日本の教育理念は何ですか」と聞かれましたが、
08 年 11 月の OECD 会議でも、質の向上について何をすべ
きかが議論されました。09 年 5 月の会議では、保育者の資質
「生きる力」かなあ……と、曖昧な概念なので少し説明に困っ
てしまいました。
向上は個人の問題だけではなく、労働力人口への政策、職場
制度的な質の保障に関しては、北欧やイギリスなど就学前
環境や組織の問題、という各国共通の関心事をベースに議論
教育として保育所も幼稚園も一括して教育担当の所轄官庁が
する予定です。
監督している国もありますが、ヨーロッパでは概ね年齢によ
それぞれの国が政策として何を優先的に打ち出すかは、ど
って分け、乳児期では社会福祉関係の所轄官庁、それ以上の
のような価値を乳幼児期の保育・教育において最も育てるべ
年齢は教育関係の所轄官庁が監督しています(図表 1)
。一方
きものと志向するかによって異なり、それがカリキュラムに
でアジアの韓国・台湾・日本などは二元的に保育所と幼稚園
反映されます。各国の自己報告と OECD 専門家のレビューに
が混在してきましたが、台湾は一元化の方向にあるし日本で
基づき 06 年にとりまとめられた報告書では、世界の保育カリ
も「認定こども園」ができました。乳幼児期の保育・教育の
キュラムの伝統を大きく二つのモデルに分類しています。就
一般的な質については国際的な議論の俎上に乗りますが、質
学準備の指導に重点を置く英米型と、子どもの主体性と権利
を保障するための望ましい所管については各国それぞれ制度
を保障する北欧型です。これは要するに乳幼児保育、教育の
が異なるので、議論しにくい側面があります。
伝統に基づく社会的理念の表れと考えられます。英米のよう
14
な自由競争の市場型理念に重きを置く国では、就学後に極端
90 年代からアメリカ・イギリスで出始めた
な格差を広げないためにも就学へとスムーズに移行できるよ
長期にわたる追跡調査の研究結果が示唆すること
うな乳幼児期の保育・教育が社会的に要請されます。北欧の
乳幼児の「保育・教育の質」とは何か、それをどのように
ような社会福祉の手厚い国では、社会全体で子どもを育てる
測定し、評価し、指標をつくるのかを議論する際に難しいの
特集 幼児期の教育・保育を展望する
図表[2]誰が主導した活動であるかの比率
図表[3]挑戦的課題でのやりとりの質の相違
(%)
(%)
60
子ども
主導
50
教師が
主導した
活動
40
70
子どもが
中心
60
子どもが
中心に
教師がつなぎ
発展させる
50
40
30
教師が
中心
30
20
20
10
0
10
良い園
最優秀園
0
良い園
最優秀園
*Siraj-Blatchford,I. and Sylva,K.(2004).“Researching pedagogy in English pre-schools.”
British Educational Research Journal,30(5), P.722を基に作成。
*Siraj-Blatchford,I. and Sylva,K.(2004).“Researching pedagogy in English pre-schools.”
British Educational Research Journal,30(5), P.723を基に作成。
は、幼児教育が「見えない教育方法」だからです。小学校以
好き勝手に遊ばせていればいいわけでもないし、教師がすべ
上であれば、PISA のような国際学力テストによってある程
て指導すればいいというものでもない。
度、教育の成果は測定できます。ところが乳幼児に対して個
もう一つ面白いのは課題活動の質です。優れた園ほど、毎
別テストで教育の成果を問うわけにはいきません。乳幼児の
日同じような遊びをしているように見えても、挑戦的課題、
保育・教育という営みは、暮らしの中での遊びという総合的
子どもたちが自分の能力をフルに発揮しないとできない創意
な活動を通じた方法を中核にし、子どもの発達の個人差に応
工夫のある活動を、巧みに組み込んでいます。また、挑戦的
じて指導しているため、測定方法・評価内容・評価指標を第
な課題での遊びの中で子ども同士の意見を保育者がつなぐ
三者に対して可視化しにくいのです。
(Sustained Shared Thinking)やりとりが、最優秀園に多い
したがって、どのような質の保育・教育であれば効果があ
のです(図表 3)
。このあたりは言語でのやりとりを重視する
るのかを明らかにするには、1人の子どもの発達を長期にわ
イギリスらしい報告であると同時に、協働的な遊びの質を考
たって追跡調査する縦断研究の手法が必要になります。
えるのに役立つでしょう。
そうした研究報告が 90 年代から 00 年代にかけアメリカや
いずれにせよ、従来は制度的な側面の「構造の質」しか議
イギリスを中心に出始めました。例えばアメリカでは、経済
論できなかったのに対して、教育のプロセスがどう成果に結
的に恵まれない子どもに対して「ヘッドスタート」等の早期
びつくかという縦断研究によって、
「過程の質」を議論できる
介入プログラムを受けた子どもが、そうでない子どもに比べ
ようになってきたことが新しい傾向といえるでしょう。
て、概ねその後の就学段階での成績が優秀で、成人し就労し
またイギリスでは、幼児教育の施設形態や保育時間の長さで
豊かさに着目した「保育の質」の自己評価
はなく、高い質が保障されていると評価された園に通った子
そうした「過程の質」をどのように測定し、評価するのか。
どもほど、その後の知的発達レベルが優れている、といった
これには第三者評価と自己評価があります。とりわけ私が注
研究報告が出されています。
目しているのは、ベルギーのリューベン大学ラーバーズ教授
では、どのような保育をしたらその効果が出るのか。私が
が考案した「経験に基づく教育」の哲学による保育の質の自
興味深いと思ったのはイギリスのオックスフォード大学シル
己評価尺度です。これまで保育の質の尺度は、英米中心に施
ヴァ教授らが出した研究報告の一例です(図表 2)
。それによ
設や用具、教材など環境整備の度合い、その後の就学期にお
ると、第三者評価でトップの評価の最優秀園は、保育者が主
ける成果、チェックリストによる子どもの行動観察、先生と
導する活動の割合よりも、子どもが主導する活動の割合のほ
のやりとりなどからクラスの雰囲気を見る、といった方法で
うが高いが、実は両方とも大切で、その二つのバランスのと
考えられていました。
れていることが良質の保育ではないか、と示されています。
しかし「経験に基づく教育」の評価尺度はそれらとは異な
2009
「今ここに生きている」子どもの心の
NO.16
たときの年収も高いといった効果研究が報告されています。
15
国際的に高まる「保育の質」への関心
Interview
悪しの指導が来るもの」といったイメージで捉えられがちで
す。それに日本の場合、保育所、幼稚園での非常勤比率は高
く、さらに多くは途中で退職するため、小中高の教師のよう
に定年まで勤め上げる人はわずかです。若手の多い職場だけ
に自己評価により改善しつつ資質向上も図る方が馴染むので
はないかと考えられます。現に、保育所の自己評価ガイドラ
インは作成中ですし、幼稚園の自己評価と説明責任は法的に
義務づけられました。
個人的な省察にとどまらず
相互に良い点を評価し補い合う
自己評価は個人的な省察にとどまりません。保育者同士の
相互評価を起点とした自己評価論を導入すべきです。相互の
信頼の下で、互いに他者の良い点を認め合って、自分の足り
ない点を補っていく。すると元気が出てくるし自分の課題も
落ち着いて考えられる。個々の保育の実践と、組織としての
園の在り方を、そのような形で相互に自己評価しながら、焦
点を絞って課題を解決する。それが保育者の資質向上、園の
組織運営の改善につながる可能性が高いと思うのです。
大江健三郎氏が、作家の仕事は言葉を「磨く」ことだと述
べています。毎年同じ教材を同じ学年に教える教育の仕事も
また、
「磨き」―エラボレーションではないでしょうか。保
り、一人ひとりの子どもの主体的経験から見ていく方法です。
育も似たところがあります。そこで「エラボレーション、オ
つまり、そこでいう「保育の質」とは、外部から見て一様に
ーケストレーション、コラボレーション」が保育者の資質向
善し悪しを判断できる性質のものではありません。なぜなら、
上には必要、とあるところで書いたら、シンポジウムでご一
貧しい地域もあれば恵まれた地域もあり、施設が置かれた条
緒した同僚の佐藤学先生に「その順番が肝心だね」と補足い
件は多様に異なるからです。したがって、子どもがそこで活
ただきました。
動にどれだけ夢中になれているか、また情緒的に安心して過
つまり、まず自分を磨き(エラボレーション)
、お互いに響
ごせているかといった、
「今ここに生きている」子どもの心の
き合い(オーケストレーション)
、そして連携しつつ(コラボ
豊かさを保育の質として自己評価します。この考え方はヨー
レーション)資質向上を目指そう、という発想ではうまくい
ロッパをはじめ、20 か国ですでに導入され、実際に良い変化
かない、と。それは高度な「職人モデル」であり、普通の人
が見られたというデータも出ていますし、この尺度そのもの
にとっては、自己省察によって自分を磨き資質を高めた上で、
が園内研修の実践に基づいてつくられたものです。
それを互いに見せ合いながら集団としての資質を高めるなど
日本では、02 年から保育所の第三者評価が始まりました。
これは少子化対策や待機児童解消を目的とした規制緩和によ
いけない。それだと、最も優秀な人にみんなで追いつけとい
って「保育の市場化」が進み、保育環境の劣悪化が懸念され
う話になってしまう。その通りだと思いました。
る中で、保育の質を保障する試みの一つです。
16
というプロセスは困難をともない、息苦しくてとてもついて
そうではなく、まず「みんな楽しみながら熱心にやってる
しかし、ともすれば第三者評価の導入は、保育者にとって
なあ」という雰囲気の中で響き合い、互いに信頼を寄せて連
「やらされるもの」
、自分たちの思いとは別に「外部から善し
携する中から、相互に補いながら自分を磨いていく。意欲の
特集 幼児期の教育・保育を展望する
図表[4]
「叩くこともしつけ上必要」と考える親と年収の関係
図表[5]子育てで困った時の相談相手 (%)
収入階層
55
50
自分の 隣近所の
母親 お母さん
夫
(%)
保育所 保健師
200 万円未満
71.9
3.1
15.6
34.4
6.3
∼ 400 万円未満
67.3
22.1
47.8
7.5
1.8
35
∼ 600 万円未満
64.1
22.2
51.3
8.8
1.9
30
∼ 800 万円未満
63.5
25.0
54.9
13.1
1.6
800 万円以上
63.3
20.2
55.9
17.0
2.7
45
40
25
200万円 ∼400万円 ∼600万円 ∼800万円
未満
未満
未満
未満
800万円
以上
*鈴木佐喜子「格差が拡大する中での親の生活・労働実態と子育て」
保育研究所編『保育の研究』No.22,2008年3月
*鈴木佐喜子「格差が拡大する中での親の生活・労働実態と子育て」
保育研究所編『保育の研究』No.22,2008年3月
ある職場であればやる気も出ます。そのほうが保育の楽しさ
08 年 11 月の OECD 会議でカナダが報告していたのは、コ
を実感でき、自信をもって取り組めるようになる。うまくい
ミュニティレベルで乳幼児の保育・教育を考える発想です。
っている組織とはたいてい、こうした「同僚性」が高いもの
保育所・幼稚園やケアセンターをはじめ子どもを支えるどん
です。幼児は園庭を自由に行き来し、もともと保育者はチー
な機関がその地域にあるのか、子育て支援の面でも医療保健
ムで動くので、クラス単位で個別に授業をする小学校以降よ
や文化的活動の面でも、子どもたちの幸せを満たす公的空間
りも、こうした発想を取り入れやすいのではないかと考えら
が保障されているかどうかを、地域単位、コミュニティ単位
れます。
で見ていく。日本でもこうした発想を取り入れるべきかもし
れません。
としての保育所・幼稚園を目指して
論ですが、地域の保育所や幼稚園を子ども、保護者、保育者
先に述べたアメリカやイギリスの縦断研究で、優れた幼児
にとってのソーシャル・キャピタル(社会関係資本)として捉
教育プログラムを受けた子どもとそうでない子どもの差が経
える考え方です。資本といってもお金ではありません。信頼関
年的にきれいに出ているのは、裏を返せば、それだけ恵まれ
係や、情報の共有によるサポートの環の形成です。地域の大
た子どもと恵まれない子どもの格差が大きいことを意味しま
人がどれだけ相互に信頼関係を築き、乳幼児期の子どもと親
す。経済的に恵まれない層に投資をすれば、当然その効果は
への支援をして、就学期へと豊かに移行できる環境をつくれ
大きく出る。
るか。それには保育所・幼稚園と小学校の連携も必要です。
日本はこれまで、少なくとも表面的には格差が少ないこと
特定の個人に焦点を当て、この子の能力が足りないから小
になっていました。しかし昨今は格差が顕在化し、OECD25
学校へ上がる前に準備をしなければといった診断治療型の発
か国中の相対貧困率でも第4位です(08 年)
。白梅学園大学
想ではなくて、たとえそうした子どもであったとしても、小
の鈴木佐喜子先生の論文によると、親の年収と子育ての問題
学校で困らないようにするためにはどのような環境にしたら
には相関関係があり、経済的に恵まれない層ほど抱えている
よいか、周囲の大人たちが支援するネットワークを築くこと
問題が多く、相談相手が限られていることが明らかにされて
によって、その子も親も幸せになれる。地域全体でそのよう
います(図表 4、図表 5)
。こういう時代になると、これまで
な支援体制を整える実践、教育施策、経済施策が、一般的な
述べてきたような一般的な保育の質の向上も大切ですが、も
保育の質の向上にも増して、教育格差の拡大に歯止めをかけ
う一方で、経済的に恵まれない子どもたちが通う保育所や幼
るためにも急務と考えます。
稚園で、親に対する子育て支援がきちんとできているのか、
少なくとも園にいる間は子どもが情緒的に安定して過ごせて
いるのか、といった検証が必要です。
2009
そこで重要なのが、これも 08 年 3 月の OECD 会議で出た議
NO.16
地域のソーシャル・キャピタル
Reference
● Siraj-Blatchford,I and Sylva,K.(2004)
.“Researching pedagogy in English pre-schools”.
British Educational Research Journal,30(5)
, PP.713-730
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