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羽田空港WEATHER TOPICS第17号発行
羽田空港 WEATHER TOPICS 定期号 通巻 第 17 号 2012 年(平成 24 年) 2 月 29 日 発行 東京航空地方気象台 尾流雲について 1.尾流雲(Virga)とは 表1 尾流雲とは、積雲などの雲の底から、地上 層 名称 に向けて線状やベール状に尾を引いたよう 上 巻雲 に見えるもので、雲から落下した雨粒や氷粒、層 巻積雲 巻層雲 雪片(以下、降水粒子)でできています。 尾流雲を形作る降水粒子は、落下しながら 地上に達する前に蒸発等によって消散して 高積雲 中 しまいますが、地上に達すれば降水として観 層 高層雲 乱層雲 測されます。(降水が飛行場周辺で観測され た場合は、視界内降水として観測します。) 雲の種類は、大きく 10 種類に分類され、 現れる高さが異なります(表 1)。尾流雲は、 層積雲 雲から雨粒・氷粒や雪が落下しやすい巻積雲、下 層雲 層 積雲 高積雲、高層雲、乱層雲、層積雲、積雲、積 積乱雲 乱雲など、雲の高さにかかわらず観測されま す。 10 種の雲形の名称と良く現れる高さ 略号 よく現れる高さと説明 CI 極地方 3~8km CC 温帯地方 5~13km CS 熱帯地方 6~18km 極地方 2~4km 温帯地方 2~7km AC 熱帯地方 2~8km AS AS:普通中層に見られが、上層まで NS 広がっていることが多い NS:普通中層に見られが、上層及び 下層に広がっていることが多い 極地方 地面付近~2km SC 温帯地方 地面付近~2km ST 熱帯地方 地面付近~2km CU CU、CB:雲底は普通下層にあるが、 CB 雲頂は中、上層まで達しているこ とが多い 2.尾流雲の発生と観測について 尾流雲は、降水をもたらす雲の下方に、降水粒子がすぐに蒸発してしまうような乾燥し た空気があるときに見られます。 積乱雲(CB)、塔状積雲(TCU)の下では、ウィンドシアーやダウンバーストが発生す る場合がありますが、尾流雲(VIRGA)の雲底でも降水の蒸発によって冷やされた空気に 伴って下降気流やダウンバーストが発生することがあります。また、尾流雲が「く」の字 に折れ曲がって見える所は、風向や風速が変化していることを示しており、その高度付近 ではウィンドシアーの可能性があると推測することができます。 このように尾流雲は、当該飛行場に離着陸する航空機の安全運航に影響を及ぼす気象現 象の存在を示唆しています。このため、航空気象観測では、運航計画や安全運航に重要で ある特殊な形状の雲注として、特別に観測することとしており、尾流雲(VIRGA) (下層雲 に伴うもの)を確認した場合には、観測を行い①存在位置(観測場所からの方位及び距離) ②移動方向(8 方位で表す)の通報を行っています。 注 尾流雲のほかに、積乱雲(CB) 、搭状積雲(TCU)があります。 3.羽田空港で観測された尾流雲 2011 年 1 月 26 日昼過ぎから関東山地で発生した対流雲が、尾流雲(第 1 図)を伴いな がら都内を東南東に進み、夕方から羽田空港上空を通過しました。ドップラーライダーで は 16 時 16 分から 17 時 13 分(以下時刻は日本時間)にかけて、マイクロバーストアラー トやウィンドシアーアラートの情報文が連続的に発表され、16 時過ぎから 17 時頃にかけ て、空港の直上でマイクロバーストが発生しました。このため、16 時 25 分頃から 17 時 05 分 頃にかけて着陸できない状態となり、多数の空中待機やダイバート機が発生し、航 空管制、航空交通に大きな影響をおよぼしました。 1 月 26 日は、上層の気圧の谷の接近・通過により 下層寒気移流が強まり、夕方には北西風が強まる予 想でした。アメダスの解析図(第 2 図)では、15 時 には明瞭なシアーラインが、関東北部と関東の南に あり、関東平野は弱風域となっていました。 また、東京都内には、不明瞭ながら対流雲から吹 き出す北風と南風(海風)とのシアーラインが解析 できます。16 時には対流雲の南下により気温が低下 し、周囲に向かって冷気外出流の風が吹きだし、対 流雲の南側の羽田空港付近でシアーラインが明瞭と なりました。この対流雲は 17 時にかけて南東進して 空港を通過し空港の東側にぬけ、次第に激しい現象 も収まりました。 第 1 図 羽田空港で観測された尾流雲 (2011 年 1 月 26 日 16 時 35 分撮影) 6℃ w 7℃ 7℃ c 7℃ 7℃ 7℃ c 8℃ 8℃ 9℃ 8℃ 7℃ 7℃ :1m/s :等温線 :地上シアーライン c 矢羽: :2m/s 矢羽: :3m/s :1m/s c 6℃ 8℃ 9℃ 10℃ 26日0600UTC 5℃ 6℃ 8℃ 8℃ 矢羽: w 8℃ 9℃ 8℃ c 10℃ 7℃ 7℃ 26日0600UTC 26日0700UTC 26日0800UTC 矢羽: :1m/s :2m/s :2m/s :3m/s:3m/s :対流雲の領域 :等温線 :等温線 :地上シアーライン (アメダス不照域) :地上シアーライン :1m/s :等温線 :対流雲の領域 :対流雲の領域 :地上シアーライン (アメダス不照域) (アメダス不照域) :2m/s :3m/s :対流雲の領域 (アメダス不照域) 第 2 図 アメダス時系列解析図 左から、26 日 15 時、16 時、17 時の解析図 ※ 0740UTCまで 東京レーダー休止 羽田空港における尾流雲は寒候期に多く観測され、尾流雲が発生して空港付近を通過す る場合には、マイクロバーストや風向の急変、風速の急激 発 行 東京航空地方気象台 な強まりなどの激しい現象を伴うことがあり、航空機にと 〒144-0041 って注意が必要な現象です。 東京都大田区 (東京航空地方気象台予報課) 羽田空港3-3-1 官署名 東京航空地方気象台 日/要素 平均気圧 飛行場 海面 現地 ×0.1hPa ×0.1hPa 航空気象観測月表 地点略号 RJTT 平均 気温 最高 最低 ×0.1℃ ×0.1℃ ×0.1℃ % % 最大風速 風向 風速 36 方位 kt 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 10181 10082 10110 10047 10139 10192 10230 10255 10201 10189 10122 10205 10123 10127 10135 10159 10180 10219 10224 10192 10172 10100 10071 10121 10087 10146 10165 10178 10170 10167 10165 10192 10094 10121 10059 10150 10203 10242 10267 10213 10200 10134 10216 10134 10139 10147 10171 10192 10231 10236 10203 10184 10112 10083 10133 10098 10157 10177 10190 10182 10179 10177 64 65 71 57 52 61 62 62 62 70 58 39 56 54 44 45 50 56 66 37 37 57 52 30 37 34 33 29 35 40 38 87 111 104 101 95 83 88 92 88 103 104 64 100 77 65 57 68 87 95 63 44 81 87 56 78 64 76 57 64 60 75 32 33 46 15 0 30 37 25 32 40 22 14 -9 31 23 28 31 19 34 29 31 35 5 11 -8 3 -18 -5 17 15 -7 51 50 35 45 35 42 40 35 52 59 59 39 51 41 47 46 50 55 60 85 83 83 83 58 63 49 53 46 37 34 46 43 29 21 33 17 28 24 25 40 37 35 26 38 30 39 38 36 42 48 67 71 71 59 32 32 25 28 31 21 26 34 340 340 340 320 350 350 10 340 360 350 350 360 330 350 360 20 30 340 40 10 360 340 80 340 360 350 350 350 330 330 350 上旬 中旬 下旬 月 極値 起日 10163 10169 10140 10157 10174 10180 10152 10168 63 51 38 50 95 78 68 80 111 2 29 22 7 19 -18 27 44 53 58 52 日最低 <0.0 5 日平均 <0.0 0 気温 日数 ℃ 日最高 日最低 日平均 <0.0 >=25.0 >=25.0 0 0 0 相対湿度 平均 最小 17 5 特 記 事 項 >=5 0 >=10 0 >=20 0 >=50 0 29 29 360 320 340 330 330 350 360 340 10 350 350 340 330 350 360 350 20 340 40 350 320 330 80 340 20 360 360 350 350 360 360 350 ×0.1㎜ 降水量 最大 1時間 ×0.1㎜ 13 35 26 34 29 25 29 24 13 19 32 33 27 27 22 22 20 13 28 33 28 22 28 24 28 28 22 26 38 28 23 0 0 0 0 50 70 35 80 5 0 0 - 0 0 0 0 10 25 15 30 5 0 0 - 38 29 0 50 190 240 80 23 合計 最大風速階級別日数 kt 日最高 >=25.0 0 >=20 19 >=40 0 >=50 0 >=0.0 11 >=200 0 視程継続時間 分 m m m <5000 <3200 <1600 450 160 29 m <1600 0 m <800 0 >=100 0 >=30 0 最大 10分間 ×0.1㎜ 降雪の 深さの 合計 ㎝ 積雪の 深さ 09h ㎝ 0 0 0 0 5 5 5 10 5 0 0 - 0 0 0 0 0 - - 大気現象 0 0 0 30 23 10 23 - 日降水量階級別日数 ㎜ 日最高 >=30.0 0 日最深積雪階級別日数 ㎝ >=0 0 330 10 26 20 24 20 19 22 18 11 13 24 26 20 21 18 17 16 10 21 24 21 18 23 18 21 21 16 21 29 21 20 最大瞬間風速 風向 風速 36 方位 kt 2012 年 01 月 >=1.0 4 >=5.0 3 RVR継続時間 分 m m <600 <400 0 0 降雪の深さの日合計階級別日数 ㎝ >=10.0 0 >=30.0 0 >=50.0 0 >=70.0 0 m <200 0 m <100 0 ft <1500 1965 ft <1000 988 >=100.0 0 >=0 5 >=5 0 >=10 0 最低雲高継続時間 分 ft ft ft <500 <300 <200 108 0 0 ft <100 0 >=20 0 >=50 0 >=100 0 大気現象出現日数 雷 1 霧 0 雪 6