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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System
熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
マウス胚性幹細胞の神経分化段階における核内制御機構
Author(s)
青戸, 隆博
Citation
Issue date
2007-03-27
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/8221
Right
熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
マウス胚性幹細胞の神経分化段階における核内制御機構
Author(s)
青戸, 隆博
Citation
Issue date
2007-03-27
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/8221
Right
学位論文
Doctor'SIhesis
マウス胚性幹細胞の神経分化段階における核内制御機構
(NuclearreorganizationmneuraldiffermtiationofmouseembryonicstemceUs)
青戸隆博
TakahiroAoto
熊本大学大学院医学教育部博士課程生体医科学専攻器官制御学
指導教授
中尾光善教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程生体医科学専攻器官制御学
2007年3月
1
学位論文
Doctor'SThesis
●●
論文題名
マウス胚性幹細胞の神経分化段階における核内制御機構
(Nuclearreorganizationinneuraldifferentiationofmouse
embryonicstemceUs)
青戸隆博
●●
著者名
T白kahiroAoto
指導教官名
審査委員名
熊本大学大学院医学教育部博士課程生体医科学専攻器官制御学
中尾光善教授
細胞識別学
担当教授
西中村隆一
脳神経外科学
担当教授
倉津純一
神経発生学
担当教授
大久保博晶
神経分化学
担当教授
田中英明
2007年3月
2
目次
L要旨
2.参考論文
3.謝辞
4.略語一覧
5.研究の背景と目的
5-1.細胞分化における細胞核の変化
5-2.核構造、クロマチン制御とDNAメチル化によるエピジェエネテイクス
5-3.0ct3/4遺伝子座の特徴
5-4.本研究の目的
6.実験方法
6-1細胞培養および分化系
6-2.細胞の分画法、ウエスタンプロット法および使用した抗体
6-3.半定量的RILPCRおよび使用したプライマー
6-4.クロマチン免疫沈降法、リアルタイムPCRおよび使用したプライマー
6-5.バイサルファイト反応によるDNAメチル化解析および使用したプライマー
6-6.間接免疫染色蛍光
6.7.Immuno・FISH(DNA/RNA)
6-aイメージ解析
7.実験結果
7-1.ESCを用いた高効率な神経分化法の確立と評価
7と2.細胞分化におけるクロモセンターの配置転換および細胞核のサイズの変化
7と3.細胞分化におけるクロモセンターの配置転換
7-4.分化時におけるクロモセンター領域のヒストンコード
7-5.HP1の発現量および局在の変化
7-6.ユークロマチン領域のヒストンコード
7-7.転写ファクトリーの分化動態
7-8.マウス17番染色体上のMHCOcB狸遺伝子領域の特性と進化における保存
79.RILPCRとGeneSorterpro厚amによる遺伝子発現解析
7-10.クロマチン免疫沈降法によるOCB/4とT℃F19遺伝子プロモーター領域に雨
7-10.クロマチン免疫沈降法によるOCB/4とT℃F19遺伝子プロモーター領域に結合する
t7vms因子の解析
7-11.Immuno-FISH法によるMHC-OcB/4遺伝子領域とへテロクロマチン領域との相互
作用
7L121mmuno-FISH法によるMHC-OcB/4遺伝子領域とPMLボディとの相互作用
7-13.ESCでのPMLボディの内部コンポーネントおよび転写阻害剤による変化
7と14.Chnウオーキング法によるMHC-Oc遇陛遺伝子領域のヒストンアセチル化とリン
酸化の動態
7,5.Chrウオーキング法によるMHC-Oct3鰹遺伝子領域のヒストンH3K4のメチル化動
態
7と16.Chnウオーキング法によるMHCOcl3樫遺伝子領域のヒストンH3K9とH3K27の
メチル化動態
界17.バイサルフアイト法によるMHCOc凪/4遺伝子領域のDNAメチノレ化の動態
結語
C
O●(卯叩)
()()、》シ一句Ⅱ(
考察
参考文献
●
4
1.要旨
【目的】細胞分化は、内在性のプログラムを通して、幹細胞および前駆細胞が特定の系譜に変化
することである。このエピジェネテイックな機構には、DNAメチル化やクロマチンの修飾およ
び核内櫛造体などが関わることが示唆されている。初期胚に由来する胚性幹細胞(ES細胞)は
未分化性の維持、自己複製能および全ての胚組織を形成できる全分化能を有している。また神経
幹細胞を含む組織幹細胞は自己複製能と限られた種類の異なる細胞に分化できる多分化能をも
ち、最終分化した細胞群を産出する。細胞の分化過程におけるエピジェネテイックな制御と遺伝
子発現の関連性を明らかにするために、マウスES細胞の神経分化において、(i)クロモセンタ
ーやPML、ボディなどの機能的な核内サプドメインの動態、(ii)選択的に不活性化されるOct3/4
遺伝子を含む主要組織適合抗原遺伝子群(MHC-Oct3/4)領域のクロマチンの修飾変動について
解析し、DNAメチル化、クロマチンそして核構造の3つの階層的なエピジェネテイック制御と
発生・分化プロセスにおける遺伝子発現調節との関係を検討した。
【方法】マウスPA6フイーダー細胞との共培養を用いて、マウスES細胞を神経前駆細胞、ニュ
ーロンに均一に分化する系を確立した。EB3株[Oct3/4+/ires-bsd-pA]はES細胞マーカーである
Oct3/4遺伝子プロモーター下でプラストシジンS(BlaS)耐性を狸得するために、UFおよびBlaS
添加培地でES細胞を純化した。46C株[Soxl+/gfp-irEs-pac-pA]は神経前駆細胞マーカーである
Soxl遺伝子プロモーター下でビューロマイシン(Puro)耐性を狸得するために、bFGFおよび
Puro添加培地で神経前駆細胞を純化した。神経前駆細胞をアスコルピン酸およびAraC添加培
地でニューロンに最終分化した。この3つの分化段階を用いて、1細胞レベルの免疫染色法を用
いた核内構造、生化学的手法およびクロマチン免疫沈降法を用いたMHC-Oct3/4週伝子領域の
クロマチン修飾等を解析した。
【結果】核内のへテロクロマチンが集額するクロモセンターは、ES細胞の神経前駆細胞への分
化で多数小型に分散し、ニューロンでは核中央部に再集合した大きなドット状構造を呈した。ま
た、へテロクロマチンを構成するヒストンの修飾状態やへテロクロマチンタンパク質HP1の発
現が分化過程で大きく変化した。FISH法および核内構造体に対する免疫染色法を組み合わせて
Oct3/4遺伝子座と核内構造との位置関係を鯛ぺると、ES細胞でOct3/4遺伝子座はPMLボディ
に特異的に近接しているが、神経前駆細胞で離れて位置することが判明し、最終分化したニュー
ロンではPMLボディそのものがほぼ消失した。MHC-Oct3/4遺伝子領域のクロマチン免疫沈降
法を用いた解析から、可塑性を維持した神経前駆細胞においては、Oct3/4遺伝子は転写不活性
であるが、DNAメチル化等の不可逆的な修飾は受けずに、ヒストンの脱アセチル化とH3の4
番目のリジンの脱メチル化を受けていた。他方、ニューロンでは転写不活性なOCB/4遺伝子は
DNAのメチル化やヒストンH3の27番目のリジンのトリメチル化、そしてユークロマチン領域
に再配置されたIT1による修飾を受けていた。
【考察】マウスES細胞、神経前駆細胞、ニューロンへの分化過程において、クロモセンターや
PMLボディ等の核内構造およびMHC-Oct3/4遺伝子領域のヒストン修飾とDNAメチル化が動
的に調節されていた。クロマチン修飾機構によるエビジェネテイックな制御が遺伝子発現の調節
とともに、ES細胞および神経前駆細胞の分化能の可塑性と関連する可能性が示唆された。
【結論】マウスES細胞の神経分化段階における遺伝子発現制御とクロマチン修飾、そして核内
構造で構成されるエピジェネテイクス制御機構が時空間的に協働することが明らかになった。
5
2.参考文献
参考論文
①関連論文1編1冊
LTakahiroAoto,NorikoSaitoh,Takayalchimura,HitoshiNiwa,MitsuyoshiNakao、
NuclearandchromatinreorganizationmtheMHC-Oct3/41ocusatdevelopmental
phasesofembryonicstemcelldifferentiation・
DeU.BjoI、298:354-367,2006.
②その他の論文5編5冊
LTakayalchimura,SugikoWatanabe,YasuoSakamoto,TakahiroAoto,NaoyukiFUjita
andMitsuyoshiNakao、
TranscriptionalRepressionandHeterochromatinFormationbyMBD1andMCAF/AM
FamilyProteins.
〕、BjoI・CID”、280:13928-13935,2005.
2.ShuTBuruzoe,Kolshihara,YasuhiroUchimura,SugikoWatanabe,YOkoSekita,TakahiroAoto,
HisatoSaitoh,YasuhitoYUasa,HitoshiNiwa,MichioKawasUji,HideoBaba,andMitsuyoshi
Nakao
lnhibiUonofDNAbmdingofSox2bytheSUMOconjugation
Biocl8e『仏Biophys・RBS・CO加沈"".(inpress).
3.青戸隆博,中尾光善
「エピジェネティクスとリプログラミングオーバーピュール
蛋白質核酸酵素増刊号,512024-202Z2006.
4.青戸隆博,市村隆也,坂本快郎,南建,中尾光善
「個体発生におけるメチル化DNA結合タンパク質の役割」,
実験医学23:2107-2114,2005.
5.斉藤典子,青戸隆博,丁秀鎮,中尾光善
「細胞核、クロマチンのダイナミクスル
蛋白質核酸酵素51:302-309,2005
3.謝辞
熊本大学発生医学研究センター器官制御分野の中尾光善教授には、本研究の全体的な御
指導を頂きました。4年間にわたり研究を推進する上での成長を期待して頂き、励ましと
助言を頂いたことを大変感謝しています。同教室の斉藤典子助手には、本研究を行うにあ
たり直接に御指導頂きました。実験、論文発表および学会発表について多数の御指導を下
さいました。エピジェネテイック/核構造研究の第一人者である中尾先生と斉藤先生のご両
名より直接御指導頂いた事は大変に貴重な経験でありここに感鮒いたします。また、同教
室の皆様に深く感謝いたします。優れた教室員の方々と接することで多くのことを学ぶ機
会を得られたことに感謝いたします。理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの丹
羽仁史博士、理化学研究所バイオリソースセンター阿部訓也博士、ケンブリッジ大学
AustinSmith博士、熊本大学医学部市村隆也博士にはES細胞やプラスミド、BAC、抗体な
ど多くの研究材料を供与いただきこの場でお礼を申し上げます。文部科学省21世紀COE
プログラム「細胞系譜制御研究教育ユニットの構築」には支援を受け、研究に専念するこ
とができ大変感謝致しております。
7
4.略語
ATP;adenosine5'一triphosphate
BAC;bacterialartificialchromosome
BSA;bovineserumalbumme
cDNA;comp1ementaryDNA
CM-LIF:ConditionMediumderivedLIF
DABCO;1,4-diazabicyclo[2.2.2Ioctane
DAPI;diamidino-2-phenylindole
DIG;digoxigenin
DTEdithiothreitol
Dnmt;DNAmethylatransferase
EDTA;ethylenediammetetraaceticacid
EGC;embryonicgermcell
EGTA;ethyleneglycoltetraaceticacid
ECFP;enhancedgreennuorescentprotem
ESC;embryonicstemcell
EST;expressedsequencetag
EtBr;ethidiumbromide
FBS;fetalbovineserum
FITC;fluoresceinisothiocyanate
GFAP:G1ialFibriaryAcidicProtein
HAT;Histoneacetyltransferase
HDACHistonedeacetylase
HEPES;N-2-hydroxyethylpiperazine-N'-2-ethanesulfonicacid
HMT;Histonemethyltransferase
HP1;Heterochromatinproteinl
lPTG;isopropyl-1-thioD-galactopyranoside
KO-ESnmvl;knockoutESMediumMixuture
KO-DMEMknockoutDMEM
KSR;knockoutserumrep1acement
LIF;leukemiainhibitoryfactor
MHCmajorhistocompatibilitycluster
NEAA;non-essentialaminoacid
NPCneuralprecursorcell
PAGE;polyacrylamideelectrophoresis
8
PIPES;piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonicacid)
PBSjphosphatebufferedsalme
PCR;polymerasechainreaction
PIC;Preinitiationcompelx
PML;PromyelocyticLeukemia
PMN;post-mitoticneuron
SDIA;stromalcellderivedinducingactivity
SDS;sodiumdodecylsulfate
Tris;tris(hydroxymethyl)aminomethane
TuJ1:a-typenIbeta-tublin
9
5.研究の背景と目的
5-1.細胞分化における細胞核の変化
われわれヒトやマウスを構成する約200種類の細胞は全てひとつの受精卵から始まる
一連の発生過程において増殖や分化をへることによって生み出されていく。幹細胞から分
化細胞を作り出す過程とは遺伝子発現を変化させ、その状態を次世代の細胞へと受け継が
せるエビジェネテイックなプログラムとみなすことができる。これらエピジェネティック
なプログラムを特徴づける法則性を解き明かすことは細胞分化の本質を考える上で極め
て重要な情報を与えてくれるはずである(FrancasteletaL,2000)。ゲノムワイドな遺伝子発
現プロファイリングの解析から、マウスのES細胞(ESqおよびNSC(神経幹細胞Neural
stemceU)などにおいては、ゲノム中にコードされる全遺伝子の総数の40~60%程度つまり
12,000から16,000種類の転写産物mRNAが発現していることが報告されている。それに
対して多くの分化細胞などは10~20%、すなわち2,500から5,000種類程度のmRNAしか
発現していない(AbeytaetaL,2004)。これらのことから考えると幹細胞とは分化細胞に比
ぺて基本的に転写活性が非常に高い細胞であると考えられる。実際に転写活性の高い遺伝
子プロモーターにしばしば認められるヒストンH3のアセチル化修飾は細胞内の総量が未
分化な幹細胞ほど高く、分化と共に顕著に減少していくことが報告されている(Kimuraet
aL,2004;LeeetaL,2004)。このような観点から、幹細胞からの分化とは転写活性なクロマ
チン構造を、転写不活性なクロマチン構造へと徐々に変化させるプロセスとも考えられる
(Gassereta1.,2002)。また電子顕微鏡による解析からもニワトリの成熟赤血球ではその前
駆細胞に比べて明らかに電子密度が高く転写不活性なへテロクロマチン領域が増加して
おり、核全体も凝縮のためかサイズが小さくなっているということがわかっている
(FrancasteletaL,2004)。
5-2.核構造、クロマチン制御とDNAメチル化によるエピジエネテイクス
形態学的観察によって古くから知られているように、クロマチン構造は間期において二
つの構造に区分することが可能である。ひとつは転写活性の高いユークロマチンであり他
方は逆に転写活性の低いヘテロクロマチンであり、これらの構造は細胞分裂を経て娘細胞
に安定に受け継がれていく(図1)。近年、クロマチンの高次構造がDNAやヒストンの翻
訳後修飾様式と密接な関連性があるという「ヒストンコード仮説」が提唱され非常に注目
されている(IenuwemandAms,2001)。ユークロマチン領域ではヒストンH3およびH4
のN末端の複数のリジン残基がHAr(HistoneaceIyltransfErase)と呼ばれる一連の酵素群
によって高頻度でアセチル化(Ac-)されており、逆にヘテロクロマチン領域では
HDAC(HistonedeaceIylase)により低いレベルに保たれている。さらにmvTT(Histone
methyltransfbrase)の作用によってヒストンのリジン残基はメチル化(Me-)修飾を受ける
のであるが、この場合はリジン残基の位置によってヒストンコードとしての意味が異なり、
さらに同一のリジンに対してモノ(Me1)、ダイ(Me2)、トリ(Me3)という3種類の異なる修
10
一ンが異なる。またX染色体の不活性化などにみられるような多くの遺伝子の不活
性化においては、分化とともに数百kbPにわたりこれら修飾パターンの変化が起き
る。しかし発生分化でもっとも頻繁に見られるような数kbPレベルで1遺伝子座の
みが遺伝子発現の変化を受ける場合にどのようなクロマチン構造の変化が起こるか
は不明であった。また細胞核は特定の核内機能に関与する因子が集積する機能サブ
ドメインを構築するが、これらが初期胚のような遺伝子発現が急速に変化する場面
でどのように変化するかも不明である。
17
、
6.実験方法
6-1.細胞培養および分化系
COS-7細胞およびPA6細胞はDMEM/F12Ham培地(Sigma)に10%FBS(Bio-whittaker社)
および抗生物質(ペニシンおよびストレプトマイシン)を加え37度5%CO2培養器にて継代
培養した。マウスES細胞(ESC)はEB3細胞[OCB/4蛾'窟も衝ulPAIと46C細胞[Soxr化gかi'酒…PA]を
用いた。両者共に129マウス胚から砿立され、なおかつフイーダー細胞非依存性のクロー
ンであるE14tg2a由来であるため遺伝的背景は基本的に同一である。培養法は、0.1%ゼラ
チン(ICN)でコーティングしたディッシュ上でKO-ESMM培地37度5%CO2培養器にて継
代培養した。KO-ESMM培地の組成はKO-DMEM(Gibco)、0.3%FBS(Hydone)、15%KSR
(Gibco)、2mMglutamine(Sigma)、IxNEAA(Gibco)、O1mM2-mercaptoethanol(Wako)
およびCMIⅡ7である。CMLIFはCOS-7細胞にL正(Leukemiainhibitoryfactor)を発現さ
せるために、pCAGGSLIFプラスミドをFugene6qRoche)を用いてトランスフェクションし
4日間培養した後、培養上清を回収し遠心し、さらに0.221」mのフィルター処理をしてから
保存した。その後CM-I工の力価の検査のため低密度でES細胞を7日間培養後、アルカリ
フォスファターゼ試験により95%以上のコロニーでアルカリフォスファターゼ陽性が認め
られるロットのみを使用した。また血清も同様な手法でEB3および46Cともにロットチェ
ックしたもののみを用いた。全ての実験においてESCは継代数7回以内のものを使用した。
EB3細胞[Oct3/4……PAIは5ILg/mLのブラストサイジンS(Funakoshi)存在下で培菱するこ
とでL正存在下でも培養中に散発的に分化してしまう細胞集団を除去した(NicholsetaL,
1998;Niwa.,2002)。SDIA法に用いるためにPA6細胞はコンフルエントまで培養した後4%
parafOrmaldehydeを含むPBSで20分間室温で固定し、PBSで3回洗い、使用するまで4
度にて保存した(Kawasakieta1.,2000)。神経分化させるためにEB3と46C細胞はlxlO3
ceU/Cm2の密度で固定したPA6細胞の上にまき、KO-ESMMから0.3%FBSおよびCMLm
を除去した分化用培地にて6~14日ほど培養した。神経系の細胞を均一に入手するために、
SDIA開始6日後の46C細胞をPOly-L-ornithine(Sigma)およびFibrocectin(Sigma)でコーテ
ィングしたディッシュ上にまきなおし、N2B27培地(50%、MEM/F12(Gibco)、50%
NeurObasalmedium(Gibco)、25ILg/mLinsulin(Sigma)、1001↓g/mLapo-transfbrrm(Sigma)、
6,8/mLprogesterone(Sigma)、16Ⅱg/mLputrescine(Sigma)、5.2,9/mLSodium
Selemte(Sigma)、IxB27(Gibco)、0.1%BSA(Gibco)、2mMG1utamine(Sigma))に201JLg/mL
FGF2(Gibco)を添加しさらに6日間培護した。神経前駆細胞(NPC)を得るために、SDIA開
始8日目から12日目までの間0.5119/mLビューロマイシン(Sigma)を加えてSoxl陽性細胞
を選択した。最終分化したPMN(posトmitoticneuron)を得るために、SDIA開始6日目か
ら200IlML-ascorbate(Sigma)を加え続け、さらに9日目から1UMAraC(Sigma)を3日間ほ
ど添加した(図13)。
18
6-2.細胞の分画法、ウエスタンプロット法および使用した抗体
細胞のTCL(TbtalceUlysabe)を得るために、培養細胞(1~2xlO6ceUs)に直接lxSDS
Laemmlibuffer(2%SDS、10%Sucrose、ql25MTrsi-HqpH6、8,0.002%Bromophenol
blue)を加えさらに超音波処理した。可溶性の細胞質を分画するためには1x107個の細胞あ
たり3001LLのNB5buffer(03%NP40,5mMMgq2、60mMxロ、l5mMNaCl、l5mM
Tris-HClpH7、4,1mMDTr、ABSF、PepstatinAおよびTiEichostatinA)を加え5分間氷
上でインキュベートし6008,3分間遠心し上清を回収した。次に沈殿にchromatin
isolationbuffbr(10mMPIPES-KOHpH6、8,10mMEDndL、ABSF、PepstatinAおよび
TrichostatinA)を加え氷上で30分間インキュベートし20008,10分間遠心後、上清を回収
し最後に沈殿にlxSDSLaemmlibufferを加え超音波処理しクロマチン結合分画を得た
(Remboutsikaeta1.,1999)。これらのサンプルをそれぞれ1/27,1/9,1/3に希釈し、さら
に最終濃度l0mMDTrを加え95度で5分間煮沸したものをSDSポリアクリルアミドゲル
にて泳動し、その後ニトロセノレロースメンブレン(ECLAmersham)に150mA、1時間(低分
子量タンパク質)または1.52時間(高分子堂タンパク質)の条件下で転写した。分離転写後
のメンプレンは10%スキムミノレク/PBSにて室温2時間ブロッキングし、各種1次抗体(抗
体のリストは下記に記す)を1~3%BSA/0.03~03%TWeen20/PBSにて4度で一晩反応させた。
0.3~1.0%TWen20/PBSにて5分、3回洗浄して、1次抗体に適応するぺルオキシダーゼ標識
2次抗体(Amersham)を0.03~0.3%TWeen20/PBSにて希釈し反応させた。0.3-10%
TWelu20/PBSにて5分3回洗浄してからWestemUghting化学発光検出システム(PErkin
E1mer)にて目的のタンパク質を検出させた。
●使用した抗体、会社、カタログナンバーおよびロット
(2xbranch)Rabbitanti-H3K27Mel(UpstateBiotechCatalogue#07-448,Lot#24439)
(2xbranch)Rabbitanti-H3K27Me2(UPstateBiotech、Catalogue#07凸452Lot#24461)
(2xbranch)Rabbitanti-H3K27Me3(UpstateBiotechCatalogue#07-449,Lot#24440)
(2xbranch)Rabbitanti-H3K9Mel(UpstateBiotechCatalogue#07-450,Lot#24441)
(2xbranch)Rabbitanti-H3K9Me2(UpstateBiotechCatalogue#07割41,Lot#24445)
(2xbranch)Rabbitanti-H3K9Me3(UpstateBiotech、Catalo8nle#07-442,Lot#24446)
(Lineartype)Rabbitanti-H3K9Me2(UpstateBiotechCatalogUe#07-521,Lot#24651)
(Lmeartype)Rabbitanti-H3K9Me3(UpstateBiotech・Catalogue#07-523,Lot#27759)
Goatanti-LaminB1(C-20)(SantaCruz、CatalogUe#Sc-6216,Lot#K2403)
Rabbitanti-HP1u,pandY(J、BioLChem.(2005)280:13928-13935)
Mouseanti-H3S10Phos(cloneRR202)(UpstateBiotech、CatalogUe#05-598,Lot#26436)
Mouseanti-Nestin(cloneRat-401)(HybridomaBankattheUniversilylowa)
Mouseanti-PML(clone36L104)(UpstateBiotech・Catalogue#05-718,Lot#24520)
Mouseanti-RNAポリメラーゼーⅡ(cloneCTD4H8)(UpstateBiotechCatalogUe#05-623,
Lot#29634)
19
Mouseanti-SSEA1(cloneMC480)(HybridomaBankattheUniversitylowa)
Mouseamti-TUJ1(cloneSDL3D10)(SigmaCatalogUe#TL8660,Lot#073K4835)
Mouseanti-p-tubulin(cloneTUB2、1)(SigmaCatalogUe#TL4026,Lot#024K4862)
Rabbitanti-CBP(A-22)(SanatCruz、CatalogUe#sG369,Lot#HO904)
Rabbitanti-GFAP(Sigma・Catalogue#G-9269,Lot#113K4808)
Rabbitanti-H3(AbcamCatalogue#abl791,Lot#69098)
Rabbitanti-H3K4MeI(AbcamCatalogue#ab8895,Lot#66724)
Rabbitanti-H3K4Me2(AbcamCatalogUe#ab7766,Lot#44020)
Rabbitanti-H3K4Me3(AbcamCatalogUe#ab8580,Lot#51545)
Rabbitanti-H3K9/14Ac(UpstateBiotech・Catalogue#06-599,Lot#29505)
Rabbitanti-H4K5/8/12/16Ac(UpstateBiotechCatalogue#06-866,Lot#26393)
Rabbitanti-p300(N-15)(SantaCruz・Catalogue#sc-584Lot#K140)
Rabbitanti-SP1(PEP-2)(SantaCruz・Catalogue#Sc-59,Lot#K1502)
Rabbit-antiOct3/4(H-138)(SantaCruzCatalogue#Sc-9081,Lot#G232)
6-3.半定量的RILPCRおよび使用したプライマー
全RNAを2~3xlO‘の細胞あたりlmLのISOGEN(NipponGene)を加え抽出した。cDNA
合成は全RNA5ugをDNasel(promega)にて処理することで混在するゲノムDNAを分解し
てからoUg←dTおよびSuperscriptm(Invitrogen)を用いて逆転写させ合成した。合成した
cDNAを用いて25~35サイクルの間で直線的な増幅範囲内でのみ、サーマルサイクラーに
より増幅させた後、l0xLoadingbuffer(10mMEDnA、50%G1yceml、0.01%Bromophenol
blue)を1/10volume加えてから2~3%アガロースゲル/0.5xTBEに流して、100V15~30分ほ
ど泳動し、EtBr染色し35511mUVで可視化することで検出した。
使用したプライマーおよびPCR産物の大きさ
(FはForwardプライマー、RはReverseプライマーを表す)
βLACfi〃PCR産物=460bp
RGGcccAGAGcAAGAGAGGn8KrCC
R:ACGCACGAIT1℃CCTcICAGC
RexZPCR産物=488bp
F:GT℃AGArnAGcccCGAGACTc
R:GCACCAGAAAArGTCGCTrnAG
E7m2PCR産物p399bp
HT亡CAAGGGAACGACACAAGT℃
R:T℃CT亡TGTGCTCT℃CAITIcIC
ENIPCR産物=563bp
RT℃AAGACICAC1℃ACAGCAACCCC
R:TCA八1℃TCCAC1℃GGAGGArlC
20
、
HmBZPCR産物=466bp
RGTCAGAACCCAGCACTCICAC
R:GAAGTIT℃GGAAAGTcr1℃GAC
MyoDPCR産物=121bp
HCCGCCTCAGCAAACTGAAICA
R:cAGACCITCGArGmAGcGGAr
T7BmPCR産物=835bp
RA1℃CCAAAGAAAGAAACGAC
R:AGAGGCTGTAGAACAICAIT
CUI〕に2PCR産物=511bp
F:GGACGTGAGCArGnK1℃Cn8LGCr
R:CHCGCT1℃CTハGGGACI℃CT℃
CKI7PCR産物毛69bp
F8CCICCTCCAGAr1℃ACAAIC
R8CITGCT℃AAGAACCAGTCT1℃
H2QZOPCR産物=g0bp
RT℃ACACAr1℃CICAIC1℃CrG
R8TCCcc1℃CITTT℃mCcrGTG
OCB煙PCR産物ロ500bp
F:GAGAmKICcAAパ1℃GGAGAcc
RTDAACCCCAAAGCT亡CACGTT
7℃F19PCR産物己220bp
F:ACGTCITCCI℃GTIT1℃CAI℃
R:T℃AGAAGTCCAr1℃CCTCICC
Hと「PCR産物=86bp
RAGCAGGAAArCI汎CGGGCAAG
R8T℃GTI℃AGCCICCT亡TITCTC
6-4.クロマチン免疫沈降法、リアルタイムPCRおよび使用したプライマー
細胞培養液中に最終濃度1%になるようにFormaldehvde溶液を直接加貞
細胞培養液中に最終濃度1%になるようにFormaldehyde溶液を直接加えて25-37度で
10~30分間、クロスリンクし細胞を回収後、PBSで2回洗浄し、SDS-lysisbuffer(1%SDS、
10,MEDTA、50mMTris-HqpH8.O、ABSF、PEpstatinAおよびTSA)を加え氷上で10
分間インキュベー卜してから超音波処理によりゲノムDNAの長さを500~1000bpになるよ
うに調製した。次に細胞破砕液を12,0009で10分間遠心し可溶イヒクロマチンの上清を回収
した。可溶化クロマチンをDUutionbu碇r(0.01%SDS、1.1%TritonX100、L2mMEDTZA、
16.7mMTris-HClpH80、l67mMNaC1、ABSF、PepstatmAおよびTrichostatinA)にて
1/10に希釈しSDS濃度を薄めてから、1/10volumeのサンプルを、putとして保存した。非
特異的結合を抑えるためにProtemAbeads/BSA/SalmonspermDNAを加え4度で2時間イ
ンキュベートしてから12,0009で1分間遠心しpre-clearされたサンプルにコントロール
21
IgGを含む各種一次抗体を加え4度で一晩反応させた。翌日proteinAbeads/BSA/Salmon
spermDNAを加え4度で2時間反応させてからbeadsを11頂番にLow-saltbuffcr(0.1%
SDS、1%IritonX100、2,MEDTA、20mMTris-HC1pH8.O、150mMNaq)にて1
回、High-saltbuffbr(0.1%SDS、1%TritonX100、2,MEDTA、20mMTris-HC1
pH80、500mMNaC1)にて1巡回、Liqwashbuffer(1%NP40、1%DOC、1mMEDTyk、
l0mMTris-HC1pH8、0,250mMLiCl)にて1回、TE(10mMTrisHClpH8.O、lmMEDTA)
にて3回ずつ洗浄した。E1utionbuffer(l00mMNaHCO3、1%SDS、l0mMDTr)にて
beadsからタンパク質DNA複合体を分離し、最終濃度250,MになるようNaC1を加え65
度6時間インキュベートしてクロスリンクを外してからprotemaseK処理しタンパク質を
分解し、さらにRNaseを加えRNAも分解した。最終的に得られたDNAをフェノール抽
出およびエタノール沈殿により精製してからPCRのテンプレートとした。定量的に解析す
るためABIprism7700(ABI)およびPremixEXTb1q(Takara)を用いてSYBRGrCen法による
リアルタイムPCRを行った。検量線は1/1000~1/10に希釈したinputDNAを用いて作成し
た。
使用したプライマーおよびPCR産物の大きさ
LH2Q10プライマーPCR産物=l56bp
RGAAGACCTCGArGGGArGTG
R;CTGGGn4AAGGCA1℃T℃CTG
2.-30kbpPCR産物=248bp
UP80:F:CTGACCAICGATGGHI℃CITI亡
UP-30:R:CCAGC1℃CCnohCACAACTTGTIC
a-15kbpPCR産物=28元p
F:GT℃CACAGTACCnAAGGAAGT℃
R:CCCACITCCICThAnAAGAGT℃
4.-10kbpPCR産物=163bp
HC1℃CGT亡ITGACTcAGAICrIC
R:GGGTICACACCnK1℃CTGGAG
5.-5.6kbpPCR産物=l58bp
RGCTIcGGATGCTCT1℃T℃ACA
R:AAGCTCGCAAGGTc1℃CT℃T℃
6.-3.6kbpPCR産物=200bp
F2CT℃TGAGGAGGTGGCICAAC
R:GGT℃八1℃TGCAGTnACArCGAC
7.-3.2kbpPCR産物=194bp
F:mKrcAcITccAAcGCCCAAG
R:AACTTCCCACAAACCACC1℃
8.2.7kbpPCR産物=179bp
RGGGArn2LAAGCCArGAGTTGG
22
R:GGGTrCccTAcAnヘGccTnAGArG
9.2kbpPCR産物=170bp
F:GGAACICGGTCTGGGGAGGTrCmヘ
R:AGCAGArnヘAGGAAGGGCmAGGACGAGAG
10.-1.5kbpPCR産物=l94bp
F:TCTCCnK1℃T℃ThGCTGTGTGmAGG
R:GGGTGT℃TCT1℃ATGGnAGT亡r1℃A
11.-1.OkbpPCR産物=200bp
RGnAAIcGGA1℃CICAGACTcG
RCAAAGACAGAGCC1℃AGATGG
12.-0.5kbpPCR産物=l44bp
F:ACGCAGAGCCAGCACrlc1℃
R:CCAGT窓rlT℃AGCCCA1℃T℃C
13.プロモーターPCR産物=g5bp
F:GGArlCGGGAGGGAGAGGTCAAACCGT
R:T℃GAAGCTnAGCCAGGT1℃GAGGA1℃CAC
14.+1.5kbpPCR産物=200bp
F:C1℃ACA1℃TndLAATGGCcCTnAA1℃
R:ACACCICAArGCCAITTCAA1℃
15.OcWI1cfl9intergemcreglonPCR産物=l71bp
F:ACTrCGGAGCAGCCjKICn8LG
R:GCAGCGA1℃GAIh8LGACTGGA
16.T℃F1,プロモーターPCR産物=144bp
RCTCT℃CGCCACITCT℃AITC
R:AGCICcAITT℃TCCCnACCG
6-5.バイサルフアイト反応によるDNAメチル化解析および使用したプライマー
ケノムDNAの抽出にはDNAextractionbuHbr(l00mMThds・HC1pH8、8,5mMEDIYk、
ゲノムDNAの抽出にはDNAextractionbu錐r(l00mMThds・HC1pH8、8,5m
0.2%SDS、200mMNaC1、100118/mLprotemaselO中で0.5x106個の細胞を37度で一
晩インキュベー卜してからフェノール抽出、フェノールクロロホルム抽出、クロロホルム
抽出の順番で行い、さらにエタノール沈殿を行い精製した。2ugのDNAをBamH1で37
度一晩切断してから再び精製し、5OILの水に溶かし、1/10量の3MNaOHを添加し42度
で30分間アルカリ処理を行った。次にl0mMHydroqumone(Sigma)を添加しさらに尿素
/バイサルフアイト溶液00H5.0)を加え55度、遮光しながら一晩バイサルファイト反応を行
った。WizardBpincolomn(Promega)を用いて脱塩したサンプルに、NaOHを加えること
で脱スルホン化し、フェノール抽出およびエタノール沈殿法でDNAを精製しPCRのテン
プレートに用いた。PCR反応はAmplinLqGold(PEbioBystems)を用いて行い、増幅効率
の低いサンプル(、0.4,6,13のプライマーセットを用いた場合)についてはさらに一次増幅
産物のl/50量を用いてnested-PCRを行った。これらにより得られたPCR産物はゲルか
23
ら精製しpGEM-easyvector(Promega)に、クローニングし、n.coliDH5cLにtransfbrm
させた。それぞれのサンプルについて最低15個ずつコロニーを選出しプラスミドを抽出し
てABI310シーケンサー(ABIPriBm)によりシーケンスを解析した。99.5%以上の非CpG
配列部位のC(シトシン)がU(ウラシル)に正しくバイサルファイト反応により変換されてい
るサンプルのみを、本解析でのCpGメチル化の解析に使用した。
使用したプライマー、PCR産物の大きさ、およびPCR産物中に含まれるCpGの数
(括弧内はバイサルファイト処理前の配列)
LH2Q10products-283bpCpG=19
HTTnAGGGTrGAGG
R8CACT℃ACCn4CCTAAATCThAA1℃
(CCCAGGGCTGAGGACICCCCAICT℃cc)
(CAC1℃ACCT℃CCT℃GGT℃T℃GGT℃)
2.Oct480kbpPCR産物=202bpCpG-3
F:
RnkTnoLA1℃、AC
GThAGA1℃TIAG
、AC(T℃TTT1℃AAAAAndLCArlCCAAGA1℃CcAG)
ArCA(T℃T1℃GTm℃CTGGTC1℃AGGAAGTCArcA)
3.Oct420kbpPCR産物=215bPCpG=4
F:TITGTrlmGT℃T℃GAArnKITITT(CTI℃TTI℃AGTCTcGAA1℃ACTTCC)
R:AC1℃TcAccAAArCcAcTrlmT℃T八A(GCT℃T℃AccAGGT℃cAcTrl℃TTcTGG)
4.Oct4-10kbp(nested)
一次PCR産物=307bp
1/2F:TAArAmAAAG
(cAACAnAAAAGCAAAAC
1R:
)
CnAAAAACAAAAACnAAA
(CmmGGGAAGGCTAAAGGCAAAAGCmAA)
二次PCR産物=299bpCpG=2
2R:AAAACTyLAAAACAAAAACTyAAAAAA
(AAGGCT晩AAGGCAAAAGCTYkAAGGGG)
5.Oct4-55kbpPCR産物=256bpCpG=4
F:八mヘGThKIT℃AAAG八nAAAGAnAAAnKr(AcmGTハcT℃AAAGACAAAGACAAACAC)
R:CmCCCTT℃T℃AC1℃CACAmAA1℃(CTCCCCTTC1℃ACTCCACAICGGTC)
6.Oct4-4kbp(nested)
一次PCR産物=289bp
1F:AAGGAAITnKrGTnoLGTIAGAGAAArMIT(AAGGAArCImCCCAGccAGAGAAACn8LCC)
1R:AACmAAmAICAArndLAAmAAcTcAc(GAcT℃GGTcA1℃AGTmAA1℃GAC1℃AC)
2次PCR産物=224bpCpG=4
2F:TrrlTmGAAIynTICGArlT℃GGA(CcITCCAGAACArCTGGArlTGGGA)
2R:AAAACACmAAACTハAAACAAAAAA(AGGACACmGACIAGAGCAGGGAA)
7.Oct48kbpPCR産物=268bpCpG-4
F:TTITTTnK1℃TT℃GTGGArmKrlTIT(CCTTTT℃AICT1℃ArGC1℃GTcGACCA1℃TCT)
R:AICACccTCTIcTAAIWrcmAAAndLcTm(GTCACcCTCT1℃T℃GTCT℃TGAAGndLCrlA)
8.Oct4-Z5kbpPCR産物=l75bpCpG=2
F:T℃AGmdLAIAGGTITGTrGTITnKrrlTIA(TCAGCcAAcAGGTcTGCICTCCCATcTCCA)
R:AACTrnAcAACCAAATmACCCmAAc(GGCITrGCAACCAGGTnAGCCCTAAGC)
24
9.Oct4DEPCR産物=28gbpCpG=5
F:TCTrlAGGTrmACAGGT1℃GTTTT(TGTCT八GGCCrmGAGGC1℃GcccT)
R:CAT1℃ArndmoLAAACAAmcQmkArlハAr(CAT1℃AITCTGGAACAGTCCCAndLGTndLGT)
10.Oct4-L5kbpPCR産物=289bpCpC=4
F:AGGAGGGGAITITnKImm℃T℃TI、(AGGAGGGGACIT℃CACACパ1℃TcCnkr)
R:ACAAAArlCTAAAccnAAACCCAAC(ACAGAGTT℃TCAGCCTCGCCCCAG)
11.Oct4PEPCR産物=l97bpCpG=4
F:GGAITITnヘGATICGGTrnヘGAAAArnKr(GGArcc1℃AGACT℃GGCCCAGAAAACCAC)
R:CCI℃AAAAACAAAACCTCAAAmAAにCTCAAAGACAGAGCCTCAGATGGA〉
12.Oct4-O5kbp
PCR産物=295bpCpG=4
F:TmrnヘAITICGAnAAnKIハAGAICGAAnMT℃mcCAACCTCGACAACACAAGATGGAAnA)
R:crcnAAAAAACCmAAACArCCArmAAnA(CTCICGAGAGCCn4AAACAICcAITCAArG)
13.Oct4PP(nested)
一次PCR産物=309bp
lF:Trl八AGGmGGGGTCAGAGGAIT(CCCAAGGCAGGGGTCAGAGGACC)
1R:AAICTAAAACCAAAnKrcCAACCAndkA(AGT℃T℃AAGCCAGCTCT℃CAGCCArGG)
2次PCR産物=265bpCpG=10
2F:AAAIcAAGGTTTTTTCGGGTIT(AAA1℃AAGGCCTCCIcGGGT℃q
2R:CCAAAIm℃CAACC八nAAAAAA(CCAGGTCT亡CAGCQdKICGGGAA)
14.Oct4intronPCR産物=221bpCpG=8
F:mGTnAGmKrlTICGAGndLAGT℃mAGndLA(CAGCCAGCAcTcTGGAGcAAGTCndLA)
RmoLCIT℃ATIAAAAACC
(TGcTT℃ATndLAGGGCCAITIハAGArGT℃AG)
15.OCW1℃F1gmtergenicregionPCR産物=mlbpCpG=4
F:AAAITTIAGGT℃AITITmAAAmGG(AAAccccAGGTGA1℃rlCAAAACAGG)
R:AAAAC1℃cc
(AGAACTCCCAGAGTcACAAGAGG)
16.TCF19プロモーターreglonPCR産物=210bpCpG=13
F:GGTTGTITIm八GTTTTmTTTITIT(GGCTCCTcIACAGCTCCArlTC1℃CC)
R:ArnAcACCCAITnoLCT℃nKrnoLACC(GTI℃CAcCCAITTGCT℃TmT℃GCC)
6-6.間接免疫染色蛍光
培養細胞をゼラチンコートしたカバーグラス上にr3xlO5の密度でまき一晩培養してか
らPBSで一回洗い、4%pamfbrmaldehydeを含むPBSにて室温で10分間固定した。
0.2~05%IYitonX100を含むPBSを用いて氷上で5分間処理して細胞膜と核膜を透過処理
した。PBSで3回洗浄後05~3.0%BSAを含むPBSで15分間室温でブロッキングした。
一次抗体を02%BSAを含むPBSにて希釈して室温で1時間、もしくは4度で一晩反応さ
せた。0.2%BSAを含むPBSで洗浄後、1次抗体に適応する蛍光色素⑱ITC、Alexa488、
Cy3など)で標識された2次抗体で反応させた。0.1Ⅱg/mLDAPIでDNAを染色しながら
PBSで3回洗浄後、カバーグラスを、DABCOを用いてマウントした。
25
6-7.Immuno・FISH(DNA/RNA)
カバーグラス上に培養した細胞をCSKbuffer(l00mMNaCL300mMSucrose、
3mMMgC12、10mMPIPES-KOHpH68)で一回洗浄し、0.5%IritonX100を加えた
CSKbuf化rで4度、2~5分間反応させることで細胞質RNAを含む可溶性成分を除去した。
4%parafbrmaldehydeを含むPBSにて室温で10分間、細胞を固定した。Immuno・FISH
の際は免疫染色を行ってから4%parafbrmaldehydeを含むPBSにて室温で蛍光色素を固
定してFISHを行った。プロープは、DNA・FISHにはjdHU-Oc2a1`領域を含むBACを用
い、RNA-FISHにはESCから抽出したgenomicDNAをテンプレートにOcda'43遺伝子の
Exonl-intronl領域を増幅し、pB1ueScriptllのEcoRIHincllサイトにサブクローニング
したプラスミドをプローブとして使用した。
プライマーは以下の通り
F:CGGAATTCTGGGCCIYkGTCCCCOAAGTrG(下線部はEcoRIsite)
R:GACGTCGAOCAAmGAACGGOAGGGGCAC(下線部はHincllsite)
プローブの作成はBACまたはプラスミドそれぞれ1149ずつNicklranslationkit(Roche)
を使用し200~500bpの長さに切断しbiotinもしくはDIGを付加したプロープとした。
DNA-FISHの場合のみ2xSSQ70%fOrmamide、75~85度で30秒~10分間細胞を熱処理する
ことでゲノムDNAを1本鎖にしてからハイブリダイゼーシヨンさせた。細胞を70~995%
エタノールで徐々に脱水し、プローブ100,9を含むハイプリダイゼーシヨンbuHer(50%
formamide/2xSSC/10%dextransulfate/Oユ%BSA/yeastIRNA/CotmDNA)を用いてプロー
ブと1本鎖のゲノムDNAもしくはRNAを37度で1晩ハイプリダイゼーシヨンさせ、
2xSSC/50%fOrmamide、2xSSC1xSSCの順で5分ずつ洗浄してから、蛍光色素を付加し
たAvidinもしくは抗DIG抗体をdetectionbuffbr(4xSSC/O/、1%BSA/0.1%TWeen20)で反応
させ検出した。
6-8.イメージ解析
全ての画像の取得と編集はO1ympus社の蛍光顕微鏡IX71で観察し、得られた蛍光像は
LummaviBionsoftwareven221qOIitanico.)を用いて行われた。1細胞での細胞核の像は、
Z軸上に沿って0.5~1.O1Lmの間隔で30~60枚ほどから構成されるスタックを
Nearest・neighborアルゴリズム(cutoH=09、、=2)を用いてデコンボリューション処理を
行ってから解析に用いた。
26
泡.細胞分化におけるグローバルなヒストンコードの変化
近年のゲノムワイドな遺伝子発現解析より、幹細胞からの分化とは転写抑制な環境とし
てのヘテロクロマチン構造を増大させていく過程ではないか、ということが指摘され始め
ている(Gassen2002;AbeytaetaL,2004)。最近の研究により、さまざまなヒストンの修飾
の中で、主に転写活性と相関するのがヒストンH3の9番目および14番目の、ジン残基
のアセチル化(H3K9/14Ac)や、ヒストンH3の4番目のリジン残基のメチル化(H3K4Me)
などであり逆に、転写不活性と相関するのがヒストンH3の9番目や27番目のリジン残
基のメチル化(H3K9MeorH3K27Me)など、ヒストンの修飾パターンと転写との関係性が
判明しつつある(JenuwemandAms,2001;Peterseta1.,2003)。まずはじめに、グローバル
なクロマチン構造のESC分化時における動態を見るために複数のヒストン修飾特異的な
抗体を用いてウエスタンプロットを行った。なおヒストンのリジン残基のメチル(Me)
化には、モノ(Mel)、ダイOVIe2)、トリOⅦe3)の3種類のパターンが存在するためこれらを
区別できる抗体を用い、さらに半定量的に検出するために希釈系列を作成して比較した。
まずESC、NPC、PMNのそれぞれの細胞をSDSで細胞ごと可溶化し(TbtalceUlysates)、
SDSポリアクリルアミドゲルに供した。結果、H3のアセチル化およびメチル化につい
ては調べた中の、どの修飾パターン(H3Ac、H3K9Me3、H3K4Mel-3、H3K9Me1-3、
H3K27Mel-3)についてもほとんど変化は認められなかった。しかし、ヒストンは必ずしも
クロマチンに取り込まれているとは限らず細胞質や核質中に存在しクロマチンに弱く結
合している画分も存在するため、上記の結果は必ずしも分化時のクマチンの動態を必ずし
も反映していないことが予想した。そこで細胞を分画調製し、クロマチンに比較的強固に
結合している画分(chromatinboundfraction)のみで同様にヒストンの修飾パターンを解
析すると異なる結果が得られた(図14および図15)。転写不活性なへテロクロマチン領
域を示すマークであるH3K9およびH3K27のトリメチル化が、ESCからの分化過程にお
いて劇的に増加することが判明した。この結果は分化の過程においてヒストンの各修飾の
量的調節は行われていないが、へテロクロマチン領域における修飾特異的なヒストンの取
り込みなどは積極的に変化していることを示している。
33
ノレ。
マウスMHC領域は、マウスゲノム中でもっとも遺伝子密度が高い領域であるため、
MHC-OcB姪領域とPMLボディとの位置関係をPMLの特異的抗体を用いてimmuno-FISH
法で調べたところ、おおよそ46%の細胞で有意にPMLボディの近傍にMHC-Ocf3姪遺伝
子領域は存在した(10%が共局在し36%が211m以内の距離)(図28A)。同時にZ軸に沿って
集めた画像群を3次元に再構築させてから平面上に投影させると2つのMHC-Oct3姪アレ
ルの両方がESCの核内でそれぞれPMLボディ近傍に存在しているが、NPCでは離れてい
た(図28B)。MHC-OcB煙遺伝子領域がPMLボディ近傍に存在するものの、この割合が
必ずしも100%ではないことは、確率論的に核内での局在は決定しているものにすぎず転写
とは必ずしも関係がない可能性も考えられうる。そこでOcf3煙のexonl-mtronl部分をプ
ローブにimmuno-FISH(RNA)法を行ったところ、両アレノレ上の転写産物由来の二つのシグ
ナルは共にPMLボディ近傍に存在し、この割合はすべての細胞のうちで約35~40%程度で
ありDNA-FISHの結果とほぼ近い割合であった。ゆえにOct3狸遺伝子はPMLボディ近傍
に局在化している際に活発に転写されていることを示唆し、さらに興味深いことにPMLボ
ディ内部にはRNAのシグナルは全く検出されなかったことから、PMLボディ内部では転
写は起きておらず、PMLボディ近傍の領域が転写の場であることが示唆された。
重要なことに遺伝子座とPMLボディの距離はNPCにおいて明らかに離れる傾向にあ
る。PMLボディとMHC-Oct3煙遺伝子座の間の距離が2llm以内の細胞数はESCでは36%
だがNPCでは12%と約1/3に減少していた。さらにPMNではPMLボディそのものが消
失している。また他の核内の構造体であるCajalボディ、核小体、Sam68ボディ、傍核
小体ボディなとMHC-O6B/4遺伝子領域との相互作用をimmuno-FISH法にて解析したが有
意な会合などは認められなかったことからPMLボディはこれらの核内構造体の中で特異
的にMHC-Ocl3煙領域近傍に存在していることが明らかとなった。
48
H3およびH4のアセチル化は転写活性と相関するが、それ以外の遺伝子間の領域やコー
ド領域についてはほとんどよくわかっていない。ヒストンH3とヒストンH4のアセチル
化状態をDNA鎖に沿って調べたところESCでのOCB狸遺伝子のプロモーター付近はH3
とH4の両方が高アセチル化状態にあったがそのコード領域はH3のみが高アセチル化状
態でありH4は逆に低アセチル化状態であった(図30)。T℃F19とHb7の間にはきわめて
GC-richである典型的なCpGislandが存在し、この領域はH3のみが高アセチル化であ
ったが、mRNAの検出できないH2Q10遺伝子の近傍はH3およびH4ともに低アセチル
化であった。また、RやSINE/B2反復配列付近はH3およびH4ともに低アセチル化に
保たれていた。ESCを分化させるとNPC、PMNともにOCB/4のプロモーター領域のみ
が著しくH3の脱アセチル化を受け、Oct3樫のコード領域やT℃P19とHbrの間のCpG
island、あるいトランスポゾン周辺の領域などはほとんど変化が認められなかった。これ
らの結果は分化時において、それぞれの遺伝子発現の変化に応じてプロモーター領域の数
kbpのみが限局的に制御されていることを意味する。そしてヒストンH3S10のリン酸化
は一般的には分裂期における染色体凝縮と関連することが知られているが間期において
も一部の遺伝子のプロモーターにおいて転写活性化と相関することが知られている。その
ためChnウオーキング法で解析したところアセチル化とよく似たパターンでOCB/4の
プロモーター付近にピークが認められた。しかし転写活性の高いT℃P19やHbrのプロモ
ーター領域には認められないことからこの領域においてはOCB/4プロモーターに特異的
に修飾を受けていると考えられる。さらにOct3煙プロモーターでのH3S10リン酸化は
分化すると失われることから、分化における転写抑制と共に脱リン酸化も起きていること
を意味する。
51
図34:ESC分化時における核構造全体の変化およびZlnlCOct3/4遺伝子領域における局
所的なエビジェネテイックなマークの変化のモデル
(上段)グローバルな核構造の変化:クロモセンター(●)とPMLボディ(○)のどちらの
核構造もESCからNPCに分化する過程でサイズが小さくなり数が増大し、同時に細胞核は
肥大化する。しかしPMNへの最終分化時にはクロモセンターは集積し1,2個程度の巨大
な点状の構造物へと変化する。一方PMLボディはPMNではほとんど認められなくなる。
このときPMNの細胞核のサイズは小さくなる。ESC特異的にMHC-Oct3姪遺伝子領域(★)
がPMLボディ周辺に局在化しており、このとき周辺部位にはHATであるp300などのよ
うなクロマチン修飾に関与する因子が転写活性依存的に集積している。
(下段)MHCOc凪陛遺伝子領域におけるローカルなエピジェネテイックなマークの変化:
OCB煙遺伝子近傍のヌクレオソームをESC(オレンジ)、NPC(ピンク)、PMN(黄)で表し
ている。ESCからNPCヘのの過程でOCB/4遺伝子の周辺数kbp特異的に転写活性化に関
与するヒストンのアセチル化やH3K4のメチル化などが消去される。ただしH3K4Me2のみ
はNPCでもESCとほとんど変わらない。PMNへの最終分化の過程で転写抑制に関与する
H3K27のメチル化やDNAのメチル化およびImyの結合が起きる。
最近のいくつかの報告によればヘテロクロマチンの形成はES細胞から分化した細胞を作
り出す上で必須であることが報告されている(LeeetaL,2004)。また体細胞との細胞融合時
にES細胞が内在性に有しているその初期化能は、体細胞のグローバルなユークロマチン化
を促進する(Kimuraeta1.,2004)。つまりユークロマチンとへテロクロマチンという両方のク
ロマチン構造の制御は共に幹細胞の維持と分化において重要な役割を果たしている。転写
不活性なクロモセンターが最終分化したPMNで巨大なfOciへと統合されるのに類似した現
象が1Vb/oblastからMyotubeへの最終分化の段階でも起こることが最近報告された(Breroet
aL,2005)。これらは組織の違いによらず、細胞が分化する上で共通の仕組みが核内には存在
していることを強く示唆するものである。それに加えて今回ESCからNPCへの分化過程
においては、クロモセンターが分散しサイズの小さな多くのfbciへとなることはヘテロク
ロマチンの形成は複数の制御機構が分化段階ごとに存在し機能していることを意味する。
Hsiehらの最近の報告では成体海馬由来の神経幹細胞をi7zUifmで分化させると、グリ
ア系列の細胞(アストロサイトとオリゴデンドロサイト)ではグローバルなヒストンの脱ア
セチル化が起こる一方で、ニューロンへ分化させたときはアセチル化のレベルは維持された
ままであり、さらにIrichostatinAやValproicacidなどの脱アセチル化阻害剤を添加すると
ニューロンへの分化が著しく促進されることがわかっている(HsiehetaL,2004)。今回の研
究でもESCからNPCPMNへと分化させたときにヒストンのアセチル化が維持されてい
たことから、初期胚および成体において、幹細胞からニューロンへ分化させた時の共通した
機構のようである。しかし核を分画したところクロマチンに強く結合している画分では
57
H3K9Me3とH3K27Me3の著しい増大を認めたことから、分化におけるグローバルなレベル
でのクロマチンの変化はニューロンへの分化でもやはり起きていることを意味する。クロ
モセンターはESCとNPCにおいH3K9Me3、H3K27Mel、HP1などが豊富に存在していた
がPMNではH3K27MelとIr1は欠いていた。これらは細胞の種類によって同じヒストン
の修飾様式であっても転写などにたいして異なる意味を持つか、あるいは細胞分裂を繰り返
す幹細胞や前駆細胞に対して非分裂細胞であるニューロンなどではヘテロクロマチン/クロ
モセンターの維持機構がHP1非依存性に行われている複数の可能性が考えられうる。興味
深い点としてニワトリでは成体でも有核型の赤血球を有し、血液前駆細胞からの分化成熟と
共にHP1の発現は消失してしまう一方で、MENTと呼ばれる別のクロマチン結合因子が最
終分化時に特異的に発現するようになり、へテロクロマチンの凝縮に関わっていることが報
告されている(GrigoryevetaL,1993;Gilberteta1.,2003)。PMNではHP1がユークロマチ
ン領域に分散していたという本研究の結果はOCB姪プロモーター部分にHP1Yが結合して
いた事実と共に考えた場合、分化した細胞では1mはヘテロクロマチンでなく、むしろユ
ークロマチン領域内での局所的な転写抑制に積極的に機能している可能性を強く示唆する。
MHC-OcB姪遺伝子領域がESC特異的にPMLボディ近傍に局在化する一方で、OCB/4
が転写不活性化なNPCとPMNではPMLボディから明らかに離れていた。さらにHAr
とHDACの両者がESCではPMLボディ周辺部位に集積しており、転写阻害剤を用いた実
験からわかるように、これらクロマチンの修飾酵素はRNAポリメラーゼⅡ依存性の転写
活性と相関してPMLボディ近傍に存在する。これらの事実はPMLボディの周辺部分にお
いてのOCB煙の転写状態は活性化と不活性化の両者が常に動的に均衡した状態であること
が考えられる。丹羽らの実験から人工的にOCB狸の発現レベルを調節した場合において、
わずか50%の転写量の増減でさえESCの未分化状態は維持できなくなってしまうことがわ
かっている(Niwaeta1.,2000)。このような狭い範囲内での転写量の調節には転写活性化だ
けでなく、活性化と抑制化の両者のバランスを常に流動的に調節することによってのみ保た
れうるものと考えられる。さらにESCから神経分化の過程でPMLボディの数の減少、サ
イズの縮小が見られることはこの構造体が分化時における転写調節機構の変化に関与して
いることを示唆する。
過去に考えられていたような遺伝子がその領域近傍のクロマチンが大規模に凝縮させ、
ヘテロクロマチン様の構造を作ることで不活性化状態を長期にわたり安定に維持するとい
う概念は、最近のゲノムワイドな解析で明らかにされたようにクロマチンの凝縮度はその
クロマチン領域での転写活性とは相関せず、むしろ遺伝子密度の高さと強く相関するという
知見から修正を求められつつある(GUbertetaL,2004)。本研究で明らかになったように遺
伝子密度の高い領域に存在するOCB/4遺伝子座において、H3K27Me3のような不活性化の
マークがプロモーター領域1kbp以内、すなわちヌクレオソーム数個分でのみ起こる事実は
凝縮されたクロマチン構造を経ないでユークロマチン領域での長期の不活性化は行われう
る可能性を示すものであり前述のゲノムワイドの解析とも矛盾しないDOC田陛遺伝子の転
58
写制御およびそれに関与するクロマチン関連の分子機構が生物学的にいかに重要であるか
については既に多くの報告例が存在する。核移植による体細胞クローンの成功率はOCB狸
の再活性化率に依存し、さらにOCB/4の再発現時にはDNAの脱メチル化がおきており、
これらにはクロマチンリモデリング因子であるSWI/SNF複合体の活性が必要とされている
ことなどである(BoianietaL,2002;Hansiseta1.,2004;SimonssonandGurdon,2004)。
NPCにおいてOcf3狸は発現していないにもかかわらずH3K4Me2という転写活性な領域
特有のマークがESCと同レベルで維持されており、PMNへ分化してはじめてDNAのメチ
ル化やH3K27Me3およびHP1Yの結合などが引き起こされる。このことはH3K4Me2が転写
不活性なOCB蛭遺伝子座においてさらなる抑制性のクロマチン構造形成を防いでいる可能
性を示唆している。転写不活性な領域におけるH3K4Me2の存在は赤芽球でのβLgI0bi"遺伝
子座においても報告されている(SclmeideretaL,2004)。DNAのメチル化は現在まで脱メチ
ル化酵素が発見されていないことからも明らかなように、もっとも長期にわたり安定な抑
制機構であると考えられる。Oct3煙遺伝子座におけるDNAメチル化が多能性を有する幹
細胞であるNPCでは認められず、最終分化したPMNでのみ、認められることはOCB/4遺
伝子座が細胞の分化のステージを経て可塑性を徐々に失うごとに、エピジェネテイックな
修飾機構もまた徐々に不可逆的なものへと変化していく性質を有していることになる。興
味深いことに成体由来の神経幹細胞(NeuralstemceU)は培養条件によってOCB狸陽性の
ESC様の細胞へとmUiZjoで戻れることが示されている一方で、最終分化したPMNは核移
植の成功率が生体内のあらゆる細胞の中で最も低いことが知られており、本研究における
OCB樫遺伝子座の結果はこのような細胞の持つ可塑性の分子基盤としてのエピジェネティ
ックな修飾機構の重要性を反映しているものと思われる(qarkeetaL,2001;YamazakietaL,
2001)。
分化時における遺伝子座の核内動態を解析した例は、イムノグロブリンクラスターや
Th2サイトカインクラスターなどの遺伝子クラスターとよばれる領域を主な対象としてお
り、これらの領域では数個~数十個の遺伝子が協調的な制御を受け、転写不活性な状態な
ときにはクロモセンターや核膜などのようなヘテロクロマチン領域の近傍に遺伝子座が局
在化していることが過去に報告されている(BrownetaL,l99ZFrancasteletaL,2000;Kosak
etaL,2002)。しかしながら遺伝子密度の高い領域に存在するOCB/4遺伝子座では転写不活
性な状態のときでもクロモセンターや核膜などの近傍にはいなかった。最終分化時におい
てOCB/4遺伝子座に起きた変化はDNAメチル化、ポリコーム遺伝子群によって修飾、認
識されるH3K27Me3の両方共にプロモーターのきわめて狭い領域にのみ見られた。同様に
ハエのUbX遺伝子座でもH3K27Me3およびボリコーム遺伝子群の結合領域はプロモーター
のきわめて限局された領域でのみ認められている(CaoetaL,2002)。これらのことからポリ
コーム遺伝子群は、周辺部位のクロマチン構造に影響せずに標的遺伝子のみを安定な抑制
状態にすることができる能力を有していることになる。さらにHP1サブフアミリーの中で
も、ImYは基本転写因子であるTyAFn130と相互作用しその活性を阻害することが報告され
59
ている(VassalloandTmese,2002)。FRAP(FluorescnecerecoveIyafterphotObleaching)によ
り分子の細胞内での移動速度を解析するとHP1およびポリコーム遺伝子群の両方共にm
DiDoではきわめて早い速度でクロマチンヘの結合と乖離を繰り返していることが明らかに
されており安定したクロマチン構造という古典的概念とは大きく隔たりがある(Cheutinet
aL,2003;FiczetaL,2005)。これらはユークロマチン領域でのHP1やボリコーム遺伝子によ
るクロマチン構造の変化はきわめて動的なものであり、その転写抑制は必ずしも凝縮され
た安定なクロマチン構造の形成に依存するものではないことを意味している。またPMLボ
ディとMHC-Oct3催との間の関連性は転写活性化もまた動的なバランスによって成立して
いることを示唆している。遺伝子密度の高いMHCOcl3煙領域での限局された領域での
DNAのメチル化やヒストンの修飾などは、OCB/4遺伝子ひとつのみを発生を通して安定か
つ動的な抑制状態を作り出すメカニズムの本質的な分子基盤であるものと考えられる。
9.結語:
本研究では、エピジェネテイックな分子メカニズムが遺伝子発現そのものよりも、
むしろ細胞の可塑性と深く関与する可能性をOCB樫遺伝子座をモデルとして示した。具体
的には可塑性が失われた分化度の高いニューロンではES細胞特異的な遺伝子でメチル化や
ヒストンのメチル化の消失などより高次的かつ複合的な抑制制御を受けるのに対し、ある
程度の分化の可塑性を維持した神経幹細胞ではより簡素なシステムにより抑制がなされる
点である。このように、細胞は抑制された遺伝子のエピジェネテイックな状態に差異を作
り出すことで再活性の頻度を調節しているのかもしれない。実際、神経幹細胞はニューロ
ンよりもはるかに核移植によるクローンマウス作出の成功率が高いことが知られており、
今回の知見は再生医学の分子基盤の理解に結びつく可能性を秘めている。興味深いことに
最近、クロモセンターの配置転換は血液系や筋肉系の細胞でも同様のパターン変化を示す
ことが国外のグループから相次いで報告されており、細胞系譜あるいは胚葉を超えた、普
遍的な分化の共通則を見出せる可能性が今後期待される(BaxteretaL,2004;BreroetaL,
2005)。本研究ではこれまで初期胚における細胞の確保などの技術的な問題からアプローチ
が難しかった発生学やエビジェネテイクスの研究分野と、本来これとは独立して展開され
てきた核構造に関する研究分野とを、融合させたことにも大きな意義がある。核内構造が
発生・分化の側面においても重要な役割を果たしており、その再編成機構がエピジェネテ
ィクス制御と高次に結びつくという新規概念を提示した。
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