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大崎市食育推進計画(改訂版) [594KB pdfファイル]
大崎市食育推進計画 (改訂版) 平成24年8月 大 崎 市 目 第1章 次 計画策定の基本的な考え方 1 趣旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 計画の位置付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 3 計画期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 4 計画の効果的な推進と評価・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 5 大崎市における食をめぐる現状と課題・・・・・・・・・・・・ 3 第2章 食育推進の目標と数値目標 1 食育の基本目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 2 食育推進の数値目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 第3章 重点施策の展開 1 バランスのとれた食生活の実践・・・・・・・・・・・・・・・11 2 大崎市の「食」と「農」の構築・・・・・・・・・・・・・・・・・12 3 ネットワークの構築と各種団体との連携・・・・・・・・・・・12 第4章 ライフステージに応じた食育の取組 1 乳幼児期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 2 学童期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 3 思春期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 4 青壮年期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 5 高齢期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 第1章 計画策定の基本的な考え方 1 旨 趣 「食育」とは 生きる上での基本であり,知育,徳育及び体育の基礎となるべきものであって, 様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し,健全な 食生活を実践することができる人間を育てること。(食育基本法) とされています。 食は,生きる上での基本であり健康の源です。 食は,人間らしい生活や生き方をはぐくみ,生きる力や意欲を生み出し,人と人 のつながりをつくる上で大きな役割を果たしてきました。 我が国の社会経済構造が大きく変化していく中で,ライフスタイルや価値観の多 様化に伴い,食生活やそれを取り巻く環境が急激に変化し,栄養の偏りや食習慣の 乱れ,さらには生活習慣病の増加など,食をめぐる現状は危機的な状況にあると言 われています。 食育の取り組みは,これまで国や地方公共団体,民間団体等がそれぞれ実施して きましたが,依然として危機的な状況の解決につながらないことから,国では,平 成17年7月に「食育基本法」を施行し,平成18年3月には食育に関する施策を総 合的かつ計画的に推進することを目的に「食育推進基本計画」を決定し実施してき ました。さらに実践的に食育を推進するため,平成23年4月には平成23年度か ら平成27年度までの5年間を期間とする「第2次食育推進基本計画」を決定いた しました。 本市でも,これまで,食育に関する取り組みを実施してまいりました。今後,食 育を着実かつ実効性のある取り組みとしていくためには,行政や関係団体,家庭, 学校・幼稚園・保育所及び地域等でそれぞれ推進してきた取り組みを,互いに補完 し,連携を強化することにより,点から線,線から面への取り組みに転換していく ことが必要です。 また,農業が基幹産業である本市においては,地産地消(※注1)の推進を通じ て「食と農の関係」を構築することが地域農業への理解を深めるとともに食育推進 にもつながります。 こうした状況を踏まえ,本市は地域特性を生かした食育の取り組みを総合的かつ 計画的に推進するため,「大崎市食育推進計画」を平成20年3月に策定し取り組ん 1 できました。今後,さらに充実した食育を実践するために,今回,数値目標の検証, 評価等を行い見直しを行いました。 2 計画の位置付け 本計画は,食育基本法第 18 条第 1 項に基づく市町村食育推進計画として位置 付けます。 本市として食育に関する基本的な事項について定めるものであり,本市における 関連計画等との整合性を保つものとします。 3 計画期間 計画期間は,平成20年度から平成 28年度まで(平成23年度に一部を見直し) とします。 4 計画の効果的な推進と評価 本計画は,家庭を中心にした食育を推進します。家庭を中心に学校・幼稚園・保 育所,地域及び行政等が連携して取り組むことが重要です。このため,これらの関 係機関や団体等との連携の機会づくりやネットワークの構築を進め,家庭を取り巻 く地域社会における食育の推進を図ります。 平成23年度において,本計画をより実効性のあるものとするために,計画の達 成状況について,各関連する計画における評価指標やアンケート調査等で現状を把 握し,「大崎市食育推進ネットワーク会議」において評価指標の見直しを行いました。 なお,今後も必要に応じて適切な見直しを行いながら食育の推進を図ります。 なお,福島第1原子力発電所の事故に伴う放射性物質の食品への影響の対応につ いても見直しを行いました。 注1:地産地消とは? 地域で生産された農林水産物を,その地域内で消費する取り組みです。食料自給 率の向上にもつながるものです。 2 5 本市における食をめぐる現状と課題 (1)食生活の変化 平成18年3月に国で決定した「食育推進基本計画」によると,我が国の食をめ ぐる現状は,生活様式の多様化や社会情勢の変化により食の大切さに対する意識が 希薄になる一方,食に関する情報がはんらんし,正しい情報を適切に選別すること が困難な状況も見受けられ,健全な食生活が失われつつあります。国では,平成1 8年度から5年間にわたり,都道府県,市町村,関係機関・団体等の多様な主体と ともに食育を推進してきました。その結果,食育は着実に推進されていますが,生 活習慣の乱れからくる糖尿病等の生活習慣病有病者の増加など,食をめぐる諸課題 への対応の必要性は増しているとしています。今後の食育の推進に当たっては,単 なる周知にとどまらず,国民が生涯にわたって間断なく食育を推進する「生涯食育 社会」の構築を目指すとともに,食をめぐる諸課題の解決に資するように食育を推 進していくことが必要とし,平成23年4月に第2次食育推進基本計画を決定しま した。 本市においても,その状況と大差はなく,食習慣の乱れや栄養の偏りなど,多く の問題点が挙げられます。本市のアンケート調査結果から, 「食欲がない」 「食べる 時間がない」などの理由による朝食の欠食(※注2)が,改善傾向にあるとはいえ, 引き続き小学生・中学生及びその保護者に見受けられます。また,朝食の野菜不足 も引き続き深刻な状況です。「はやね・はやおき・あさごはん」運動(※注3)を 推進することにより,生活リズムを改善し,バランスのとれた朝食を食べる習慣を 身に付けることが必要です。また,朝食の孤食(※注4)の状況からは,食生活の 変化が単に栄養摂取を妨げているだけではなく,食卓のもう1つの目的である家族 のコミュニケーションも妨げていることが考えられます。 こ う よ う 家族で楽しく食事をすることは, 「食育」に対する意識の高揚の面でも重要です。 と 注 2:欠食とは? 食事を摂らないこと。 注 3:「はやね・はやおき・あさごはん」運動とは? 学力の向上を図り,知(学力)・徳(心) ・体(健康)の調和のとれた元気な児童生徒 を育成するため,学校においては, 「学力向上推進プログラム」に基づく目標達成に向 けた取り組みを展開することとし,家庭や地域においては, 「はやね・はやおき・あさ ごはん」といった基本的な生活習慣の定着を推奨することを広く呼びかけていく運動 です。 注 4:孤食とは? 家族と暮らしていても団らんせず,親や子どもがそれぞれ違う時間に一人ひとり食事 と を摂ること。 3 (2)食事バランスへの意識 国の「国民健康・栄養調査」の結果では,平成19年以降の朝食の欠食,脂質の とりすぎ,野菜不足が指摘され続けています。また,肥満傾向や若い女性の過度の そ う し ん 痩身志向などの割合も増加しており,将来,生活習慣病(※注5)や骨そしょう症 (※注6)などに結びつく危険性が指摘されています。 平成23年度に実施した本市のアンケート調査結果では,朝食の欠食率が平成1 9年度の調査と比較し減少傾向にあります。しかし,ごはん,パン,めん類などの 主食を食べる割合は増加していますが,魚や肉,卵,大豆製品などを使った主菜や 野菜を多く使った副菜,みそ汁などの汁物を組み合わせた栄養バランスのとれた食 事をしている割合は減少しています。特に副菜を食べない割合が高く,野菜不足が 懸念される状況は改善されていません。これは,子どもの野菜嫌いと野菜料理に手 間がかかることが原因の1つと考えられます。 野菜を食べることの必要性を理解し,栄養バランスのとれた食事の習慣を身に 付けることが大切です。 (3)食を通じた感謝の心 食は,農林水産業のみならず製造業やサービス業など様々な分野の多くの人々 によって支えられています。さらに,日常生活の中で大きな割合を占めています。 また,「食べる」という行為は,米や野菜,家畜・魚などの生きている命をいた だくことで自らの命をつないでいるということです。 しかしながら,生活の利便性が増す中で,生産現場と消費者の距離は遠くなり, 商品としての「食」しか見えない状況となっています。 このような「食べる」という行為に至るまでの多くのかかわりと「食べる」こ との意味を理解するとともに,食を支えている多くの人々と食品に対する『いた だきます』『ごちそうさま』『ありがとう』という感謝の心の醸成を図っていくこ とが必要です。 注 5:生活習慣病とは? 食習慣・運動習慣・喫煙・飲酒などの普段の生活習慣が,発症や進行に深く 関わっている病気のこと。代表的なものに高血圧・糖尿病・肥満などがあり ます。 注 6:骨そしょう症とは? 骨の量が減り続け,骨の構造が変化して骨がスカスカになり,ちょっとした 転倒などで骨折をおこしやすくなる病気のこと。 4 (4)環境に配慮した食のあり方 食は生きる上での基本であり健康の源です。 食と農林水産業等は密接な関係にあります。さらに,農林水産業等は環境と密接 な関係にあり,環境の悪化は,健康の源である食に大きな影響を及ぼす重要な問題 であることから,環境を守ることは,自らの食を守ることにつながります。 また,家庭等における食べ残しや食品の廃棄の増加は「もったいない」の気持ち あか が希薄になった証しで,食や環境保全に対する意識の醸成には,家庭や学校,地域 及び行政等が一体となった取り組みが必要です。 環境問題を考えることは,本市の基幹産業である農業を市民の身近な問題として とらえるためのよい機会となります。 (5)放射性物質の食品への影響についての対策 福島第1原子力発電所の事故に伴う放射性物質の食品への影響について,不安が 広がっていることから,放射能測定結果の公表を推進するとともに,食品の安全性 を確保する対策に取り組む必要があります。 5 第2章 1 食育推進の目標と数値目標 食育の基本目標 家庭,学校・幼稚園・保育所,地域及び行政等がともに支えあい,市民一人ひと りが,豊かな本市の食を通し,生涯にわたって心身ともに健全で豊かな生活を送れ るよう,次の基本目標を掲げます。 市民一人ひとりが,食を生きる上での基本としてとらえ, 健全な食生活を目指します。 米どころ大崎市においては,米を中心とした地場産の農産物や畜産 物,水産物等の様々な食材を使った栄養バランスの優れた「日本型食 生活」 (※注7)を推奨し,健康で豊かな生活を目指します。 大崎市の豊富な食材の理解と食文化の継承を通して 豊かな心をはぐくみます。 大崎市は豊かな自然と食材に恵まれているとともに,生産現場 が身近にあり,また,豊かな食材を活用した郷土料理や伝統食な どの食文化があることから,様々な体験等を通して,豊かな人間 形成に寄与する「食育」を進めます。 注7:「日本型食生活」とは? 日本の気候風土に適した米(ごはん)を中心に,魚や肉,野菜,海草,豆腐など の多彩なおかずを組み合わせて食べる食生活のことです。栄養バランスが優れて いるだけではなく,食料自給率の向上や各地の古くからの貴重な食文化の継承に もつながるものです。 6 2 食育推進の数値目標 (1)朝食について ①3歳児(対象:大崎市3歳児) 項 目 (単位:%) 当初現況値 欠食率 目 標 値 実 績 値 H23年度 H22年度 1.1 0.6 1.2 目 標 値 H28年度 0.5 平成18年度・平成22年度大崎市3歳児健診より ②5歳児(対象:大崎市立幼稚園・保育所年長児) 項 目 目 当初現況値 標 値 H23年度 (単位:%) 実 績 値 H23年度 目 標 値 H28年度 欠食率 2.4 2.2 1.6 1.0 孤食率 4.9 4.0 4.1 4.0 主食を食べている率 96.6 97.0 95.7 97.0 主菜を食べている率 79.3 82.0 70.7 82.0 副菜を食べている率 45.8 50.0 39.9 50.0 汁物を食べている率 85.6 88.0 78.0 88.0 平成 19 年度・平成23年度大崎市教育委員会食生活についてのアンケートより ③小・中学生(対象:大崎市立小学 5 年生・中学 2 年生) 項 目 目 当初現況値 標 値 H23年度 (単位:%) 実 績 値 H23年度 小 3.5 目 標 値 H28年度 3.0 学 生 中 学 生 欠食率 5.1 4.0 孤食率 15.2 13.0 14.9 13.0 主食を食べている率 94.6 96.0 94.1 96.0 主菜を食べている率 75.7 78.0 63.7 78.0 副菜を食べている率 57.3 62.0 49.2 62.0 汁物を食べている率 82.1 85.0 72.7 85.0 欠食率 6.4 5.0 孤食率 30.9 28.0 32.8 28.0 主食を食べている率 94.3 95.0 92.3 95.0 主菜を食べている率 70.8 73.0 65.0 73.0 副菜を食べている率 54.8 57.0 46.9 57.0 汁物を食べている率 76.1 80.0 64.3 80.0 5.0 4.5 平成 19 年度・平成23年度大崎市教育委員会食生活についてのアンケートより 7 ④成人(対象:前頁①の保護者) 項 目 欠食率 (単位:%) 目 当初現況値 8.3 標 値 実 績 値 目 標 値 H23年度 H22年度 H28年度 7.0 2.8 2.5 平成18年度・平成22年度大崎市3歳児健診より ⑤成人(対象:前頁②③の保護者) 項 目 (単位:%) 目 当初現況値 標 値 H23年度 実 績 値 目 標 値 H23年度 H28年度 4.6 3.7 6.6 3.7 主食を食べている率 94.1 94.5 92.2 94.5 主菜を食べている率 83.8 85.0 72.3 85.0 副菜を食べている率 61.7 63.0 50.0 63.0 汁物を食べている率 84.5 86.0 72.5 86.0 欠食率 平成 19 年度・平成23年度大崎市教育委員会食生活についてのアンケートより (2)普段の食事で気を付けていること (対象:大崎市立幼稚園・保育所年長児・小学5年生・中学 2 年生の保護者) (単位:%) 項 目 栄養のバランスに 気を付けている 3度の食事を 食べるようにしている 野菜を多く 取り入れるようにしている 好き嫌いなく 食べさせるようにしている 昔ながらの伝統食を取り入 れるようにしている 目 当初現況値 標 値 H23年度 実 績 値 目 標 値 H23年度 H28年度 59.9 65.0 71.5 75.0 79.6 85.0 89.4 90.0 72.5 80.0 74.5 80.0 58.7 65.0 69.7 70.0 13.8 20.0 10.8 20.0 平成 19 年度・平成23年度大崎市教育委員会食生活についてのアンケートより 8 (3)肥満者の割合 項 (単位:%) 目 目 当初現況値 標 値 H23年度 実 績 値 H22年度 目 標 値 H28年度 20~60歳代男性 35.3 33.0 33.4 33.0 40~60歳代女性 29.2 27.0 25.2 25.0 平成18年度・平成22年度大崎市基本健診より (4)食生活改善推進員活動状況 項 集 目 会 対話・訪問 (単位:上段 回,下段 人) 目 当初現況値 標 値 H23年度 実 績 値 H22年度 目 標 値 H28年度 回 数 2,419 増 加 1,863 増 加 人 数 22,761 増 加 24,410 増 加 回 数 9,326 増 加 11,209 増 加 人 数 36,754 増 加 38,686 増 加 平成18年度・平成22年度宮城県ヘルスメイト推進員手帳集計表より (5)学校給食の地場産野菜等の利用品目数の割合 項 目 目 当初現況値 市内産 (単位:%) 標 値 H23年度 16.31 19.0 実 績 値 H22年度 目 標 値 H28年度 増 22.40 加 宮城県学校給食実施状況調査(平成 18 年度・平成22年度調査)より (6)農産物直売所数 項 (単位:箇所) 目 直売所(固定店舗,対面販 売方式)の数 目 当初現況値 標 値 H23年度 19 実 績 値 H22年度 21 目 標 値 H28年度 26 26 平成18年度・平成22年度宮城県アグリビジネス関連施設調査より (7)エコファーマー(※注8)認定者数 項 目 エコファーマー認定者数 (単位:人) 目 当初現況値 標 値 H23年度 379 1,200 実 績 値 H22年度 1,372 目 標 値 H28年度 増 加 平成18年度・平成22年度大崎市環境保全型農業推進方針より 9 (8)食事バランスガイド(※注9)を知っている人の割合 対 象 者 目 当初現況値 標 値 H23年度 (単位:%) 実 績 値 目 標 値 H23年度 H28年度 小学5年生 45.7 55.0 20.3 55.0 中学2年生 30.8 45.0 13.3 45.0 45.1 55.0 43.87 55.0 保護者 (5才児・小5・中2) 平成19年度・平成23年度年度大崎市教育委員会食生活についてアンケートより 注8:エコファーマーとは? 堆肥などによる土づくりや,化学肥料及び化学農薬の使用量の削減などの「持続 性の高い農業生産方式」について導入計画を策定し,県知事の認定を受けた農業 者です。 注9:食事バランスガイドとは? 1日の食事で「何を」 「どれだけ」食べたらよいかなど,分かりやすくコマ型の イラストで示したもので,1日にとる料理の組み合せとおおよその量を主食,副 菜,主菜,牛乳・乳製品,果物の5つの料理区分で表しています。 (平成 17 年 6 月に厚生労働省と農林水産省が策定しました。) ※コマの適量は,性別や年齢,活動量によって違います。 詳しくは,厚生労働省ホームページなどを参照下さい。 http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/ 10 第3章 重点施策の展開 ひ よ く 本市は,水と緑に恵まれた広大で肥沃な大崎耕土を有し,ササニシキやひとめぼれ の発祥の地であるとともに,米どころとして全国に知られています。また,東西の長 さが80キロメートルという地形は,それぞれの風土に適した作物の生産が盛んで, 豊富な食材を四季折々に楽しむことができる,まさに「食材王国みやぎ」を代表する 地域です。 また,食材の生産現場が身近にあることから,生産者と消費者の顔が見える関係づ くりや生産者と地域が一体となった食育を推進するのに適した地域でもあります。 このことから,食育推進の2つの基本目標を実現するために,次の3つの施策を重 点項目として推進します。 1 バランスのとれた食生活の実践 乳幼児期など早い時期から正しい食生活を確立していくことが大切です。 野菜を取り入れた栄養バランスの良い食事の習慣を身に付け,みんなで楽しく食 と 事を摂ることや食べものを大切にする心を育てます。 (1)規則正しい食生活 ・生活リズムの向上を図る・・・「はやね・はやおき・あさごはん」運動の展開 (2)栄養バランスの良い食事 ・栄養に関する知識の習得 ・食を選択する能力の習得・・・「食事バランスガイド」等の普及推進 ・食事づくりを通した技術の習得 ・米を中心とした「日本型食生活」の実践 (3)楽しく食べる環境 ・家族や友人と一緒に食事をする ・食事マナーを身に付ける ・地域の食文化を知り,継承していく ・料理づくりを通して食を楽しむ (4)食への感謝の心を育てる ・食べものを大切にする心を育てる ・生産から消費までの食にかかわるすべての人に対する感謝の心を育む ・食を取り巻く自然などの環境について学ぶ 11 2 本市の「食」と「農」の構築 市内での地産地消を推進するとともに農業体験や地域活動等を通して「食」と 「農」の関係を学び,地域農業への理解を深めることが食への関心を高めます。 また,環境に配慮した農業の推進,食の安全・安心に対する理解の啓発を図りま す。 (1)地産地消の推進 ・地場農産物の利用促進 ・学校給食における地場農産物の利用拡大 ・農産物直売所等への支援 ・地場農産物の情報の発信 (2)農業体験 ・教育ファーム(※注10)への支援 ・学童農園の活用 ・市民農園の利用拡大 ・農業体験に関する情報の発信 (3)食の安全安心 ・環境に配慮した農業の推進 ・食料自給率,フードマイレージ(※注11),環境負荷(※注12)等の問 題意識の啓発 ・食品の安全性に関する意識の啓発 ・食品の放射能測定結果の公表 い (4)地域特性を活かした取り組み ・各地域における食文化の継承 ・給食における伝統食等へのメニュー化の促進 ・「食」を通した世代間交流の促進 ・グリーンツーリズム等の推進及び支援 3 ネットワークの構築と各種団体との連携 食育への理解を深めるためには,家庭,学校,幼稚園,保育所,地域,生産者及 び行政等が連携して取り組むことが重要です。 また,これらの関係機関・団体でネットワークを構築し連携を図りながら,次世 代へつながる様々な学習・体験活動の取り組みを推進します。 12 (1)食育推進ネットワークの構築 ・市全体のネットワークの構築 ・地域ネットワークの構築 ・食育コーディネーターの育成及び支援 (2)各種団体との連携 ・食生活改善推進員,保健推進員の育成及び支援 ・地域栄養士会や食育を実践する団体等との連携 ・PTAや保護者会等との連携 第4章 ライフステージに応じた食育の取り組み 食育の取り組みは,市民一人ひとりの年代や健康状態,生活様式などに応じて取 り組んでいくことが大切です。 このため,本計画では次の5つのライフステージに区分し,それぞれの特徴に応 じた取り組みの方向性と内容を示し,関係者が連携して推進することとします。 注10:教育ファームとは? 本計画で言う教育ファームとは,自然の恩恵や食にかかわる人々の様々な活 動への理解を深めることなどを目的として,農林漁業者等が一連の農作業等 の体験の機会を提供する取り組みのことです。一連の農作業等の体験とは, 農林漁業者など実際に業を営んでいる者による指導を受けて,同一人物が同 一作物について2つ以上の作業を年間2日間以上の期間行うものとしていま す。 注11:フードマイレージとは? 食料の輸入が環境に与える負荷を数値化したもので,輸送量に輸送距離を乗 じて得た数値(t・km)です。フードマイレージが大きいほど二酸化炭素 の排出等による環境に与える負荷も大きくなります。農林水産省の2001 年の試算によると日本は約9,000億t・kmであり他国に比べて特段に 高くなっています。 注12:環境負荷とは? 人が環境に与える負担のこと。単独では環境への悪影響を及ぼさないが,集 積することで悪影響を及ぼすものも含む。環境基本法では,環境への負荷を 「人の活動により,環境に加えられる影響であって,環境保全上の支障原因 となるおそれのあるものを言う。」としている。 13 1 乳幼児期:おおむね0~5歳 ~食習慣の基本を身に付ける時期~ 乳幼児期は,一生のうちで最も著しく成長するとともに,栄養,健康,味覚,社 会性,しつけなど様々な面で食生活の基礎をつくるとても重要な時期と言えます。 赤ちゃんが産まれてから満1歳になるまでの期間を乳児期,その後の就学までの 期間を幼児期と呼びます。 乳児期は,授乳から離乳食,そして幼児食へと移行する時期です。栄養摂取とい う目的以外にも母乳を介して免疫力を高めたり,家族とのふれあいによる精神的な 安定や安心感,親子の信頼感等を身に付けていく時期でもあります。 乳幼児期は,生涯のうちで最も成長が著しい時期ですが,消化機能が未完成な上, 偏食や小食になりがちな時期でもあります。 この時期には,個人差を考慮しながら,生活リズムを整え望ましい食習慣の基礎 を身に付けることが求められます。 (1)家庭での取り組み ・授乳時の親子のふれあいや家族で食卓を囲み,楽しく食事をするよう努めま す。 ・「はやね・はやおき・あさごはん」を実行するとともに,規則正しい食事を 心がけます。 ・栄養バランスのとれた食事を心がけます。 ・手洗いや歯みがき,あいさつなどの習慣を身に付けます。 ・いろいろな食べものを味わうことにより味覚の基礎を養います。 (2)保育所・幼稚園での取り組み ・食べものへの興味と関心を引き出します。 ・マナーを守り楽しく食事をします。 ・手洗いや歯みがき等が習慣化するよう支援します。 ・農作物の栽培と収穫を通した食事体験に取り組みます。 ・食に関する知識と食育の重要性を保護者に伝えます。 ・給食における地産地消の推進に取り組みます。 ・給食食材の放射能測定結果を公表します。 (3)地域での取り組み ・地域における行事食や伝統食を伝えます。 ・食生活改善推進員等との連携により「食」の楽しさと重要性を伝えます。 ・農業体験等を通じ世代を超えた交流に取り組みます。 ・給食などに地域の食材を提供します。 14 (4)市の取り組み ・食育推進の取り組みが円滑に行えるよう関係団体の連携を支援します。 ・生活リズムを整えることの重要性を伝えます。 ・給食における地産地消の推進に取り組みます。 ・米を中心とした「日本型食生活」を推奨します。 ・食品の放射能測定結果を公表します。 2 学童期:おおむね6~12歳 ~食を大切にする心をはぐくむ時期~ 一般的に小学校に通う6歳から 12歳までの期間を学童期と言います。 この時期は,歯が乳歯から永久歯へ生えかわり,骨は太さや硬さを増し,筋肉も 発達する時期であるとともに将来の食習慣の形成に大きな影響を及ぼす時期であ つちか ることから,健やかに生きるための基礎を培う食育が重要です。 また,食の重要性や農業との関連性を理解し食生活の基礎を学ぶ時期でもあり, 欠食や偏食,特に野菜不足を改善する取り組みが必要です。 (1)家庭での取り組み ・「はやね・はやおき・あさごはん」を実行するとともに規則正しい食事を心 がけます。 ・食事づくりや買い物を手伝います。 ・「ながら食い(注13)」や「ばっかり食い(注14)」等をしない食事マナ ーの習得に努めます。 と ・歯みがきや間食の摂りかたを工夫し,健康な歯を保つよう努めます。 ・家族で食卓を囲み楽しく食事をするよう心がけます。 ・栄養バランスのとれた食事を心がけます。 (2)学校での取り組み ・食に関する知識を学ばせ,正しい食を選択する力を養います。 ・調理学習を通して食への関心を引き出します。 注13:ながら食いとは? テレビを見ながら,新聞を読みながら,メールをしながらなど,食事時間に他の ことを同時に行うことで,食事に集中せず無意識に食事をとることを言います。 注14:ばっかり食いとは? ご飯だけ全部食べてから,サラダだけ全部食べるといった料理を一皿ずつ全量食 べていくことを言います。 15 ・大豆などの地域特産物の栽培の体験を通して,食と農の関係を考え感謝の心 を養います。 ・PTA等との連携により食に関する知識と食育の重要性を伝えます。 ・学校給食における地産地消の推進に取り組みます。 ・給食食材の放射能測定結果を公表します。 (3)地域での取り組み ・地域における行事食や伝統食を伝えます。 ・食生活改善推進員等との連携により「食」の楽しさと重要性を伝えます。 ・農業体験等を通し世代を超えた交流に取り組みます。 ・学校給食に地場産食材を提供します。 (4)市の取り組み ・食育推進の取り組みが円滑に行えるよう関係団体の連携を支援します。 ・教育ファームや料理教室など食にかかわる取り組みを支援します。 ・学校給食地場産食材の提供に取り組みます。 ・米を中心とした「日本型食生活」を推奨します。 ・食品の放射能測定結果を公表します。 3 思春期:おおむね13~18歳 ~食の実践を始める時期~ 第二次性徴(注15)が現れ,精神的にも大きな変化が現れる 13歳から 18歳 までが思春期です。 身体の機能,特に生殖・生理機能が成人としてほぼ完成する時期です。この時期 の栄養の不足や偏りなどは,将来の健康に大きな影響を与えます。 また,自我意識が強くなり自分の考えで行動するようになる時期でもあり,義務 教育が終了すると外食の機会が増加し,就寝時間が遅くなるなど生活リズムが不規 則になりがちで,孤食の回数も多くなります。 そ う し ん 過度の痩身 や肥満といった問題で健全な発育を妨げる危険性が高まるのもこの 時期です。このような中で,栄養バランスを考え適切な食品を選択できるように栄 養知識や調理技術などを身に付けておく必要があります。 (1)家庭での取り組み ・「はやね・はやおき・あさごはん」を実行するとともに規則正しい食事を 心がけます。 ・調理や買物を通して食を実践する力を身に付けます。 ・食の安全安心に注意を払い食品表示に関する知識を習得します。 16 ・家族で食卓を囲み楽しく食事をするよう心がけます。 ・栄養バランスのとれた食事を心がけます。 (2)学校での取り組み ・食に関する知識を学ばせ,正しい食を選択する力を養います。 ・自立に向け適切な食生活を実現する実践力を育成します。 ・食にかかわる環境問題や食料自給率など様々な問題についての意識を高めま す。 ・PTA等との連携により食に関する知識と食育の重要性を伝えます。 ・学校給食における地産地消の推進に取り組みます。 ・給食食材の放射能測定結果を公表します。 (3)地域での取り組み ・農業体験により地域農業を理解する取り組みを推進します。 ・地域における行事食や伝統食を伝えます。 ・食生活改善推進員等との連携により実践力を養います。 ・学校給食に地場産食材を提供します。 (4)市の取り組み ・食育推進の取り組みが円滑に行えるよう関係団体の連携を支援します。 ・教育ファームや料理教室など食にかかわる取り組みを支援します。 ・学校給食における地産地消の推進に取り組みます。 ・米を中心とした「日本型食生活」を推奨します。 ・食品の放射能測定結果を公表します。 注15:第二次性徴とは? 第一次性徴とは,生まれてすぐ分かる男女の性器に見られる特徴を言います。 それに対して第二次性徴とは,思春期になって現れる性器以外の体の各部分 に見られる男女の特徴のことを言います。 17 4 青年期・壮年期:おおむね19~64歳 ~自らが健康的な食生活を実践し,次世代に伝える時期~ 一般に,19歳から39歳までが青年期,40歳から64歳までが壮年期と言わ れます。人生の中で生活の大きな変化を経験し,精神的にも経済的にも自立し,社 会の中核としての役割が求められる時期が青年期・壮年期です。 働き盛りとも言えるこの年代は,一人一人が食の大切さを自覚し,健全な食生活 を実践することが大切です。しかし,国の調査報告によると青年期には朝食の欠食 率が高く見られます。また,壮年期で肥満者の割合が3割以上となっています。こ れらが体調不良や生活習慣病等の要因の1つとなっています。 各人の活動量に見合った食事を心がけ,塩分や脂質・アルコールなどの過剰摂取, 早食いや食べ過ぎに注意するなど,正しい食習慣を身に付けることは疾病の予防や 健康の維持へとつながります。 また,家庭や地域における「食育」の実践者として,次世代へ食文化を継承し食 の重要性を伝える役割が求められます。 (1)家庭での取り組み ・自分の食生活を見直し,栄養バランスのとれた食事を心がけます。 ・家族で食卓を囲み楽しく食事をするように心がけます。 ・歯と口腔の健康を維持できるよう努めます。 ・家庭料理や行事食などに関する知識や技術を次世代に継承します。 ・食の安全安心に注意を払い食品表示に関する知識を習得します。 (2)地域での取り組み ・食育に興味・関心を持つ人が増加するよう様々な行事などを行います。 ・地産地消に取り組むとともに,地域の食文化を継承します。 ・食生活改善推進員等との連携により個人の健康状態に即した食生活の実践 に取り組みます。 (3)市の取り組み ・食育推進の取り組みが円滑に行えるよう関係団体の連携を支援します。 ・食生活と疾病の関連を周知し,正しい食習慣を推奨します。 ・地産地消の推進に取り組みます。 ・米を中心とした「日本型食生活」を推奨します。 ・食品の放射能測定結果を公表します。 18 5 高齢期:おおむね65歳~ ~いつまでも元気に暮らすために,食生活を見直す時期~ 高齢期は,退職や子どもの自立など,ライフスタイルも変化する時期です。また そ し ゃ く え ん げ 健康面では,高齢になるにつれて咀嚼・嚥下機能(注16),胃液の分泌など栄養 摂取にかかわる機能が低下し,これまでの食生活を維持することが難しくなる時期 でもあります。 このため,一人ひとりの健康状態に合わせた調理方法による栄養バランスの良い 食事を楽しみ,無理のない適度な運動を行うなど,自分の健康管理に努めることが 老化防止につながります。また,この時期は,一人暮らしや家族との生活リズムの 違いにより孤食になりがちです。日常生活の中で「つくる・食べる・集う」を楽し みながら,望ましい食習慣を維持し健全で豊かな生活を目指します。 つちか い さらに,これまで培った豊富な知識と経験を家庭や地域社会で活かし,次世代に 継承する役割が期待されます。 (1)家庭での取り組み ・望ましい食習慣を維持し栄養バランスのとれた食事を心がけます。 ・身体機能の低下を考慮した調理を心がけます。 ・歯と口腔の健康を維持できるよう努めます。 ・家族や友人・知人と食卓を囲み楽しく食事をするように心がけます。 (2)地域での取り組み ・地産地消に取り組むとともに,地域の食文化を継承します。 ・地域コミュニケーションの推進により食育を次世代へつなげます。 ・孤食になりがちな高齢者の食生活を見守ります。 (3)市の取り組み ・食育推進の取り組みが円滑に行えるよう関係団体の連携を支援します。 ・食生活と疾病の関連を周知し,正しい食習慣を推奨します。 ・身体機能に合わせた調理方法や食事内容を周知します。 ・地域コミュニティの推進により「楽しい食卓」の提供を支援します。 ・米を中心とした「日本型食生活」を推奨します。 ・食品の放射能測定結果を公表します。 そしゃく えんげ 注16:咀嚼・嚥下機能とは? 食べ物をよくかみくだくこと・飲み込む力。 19