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日本の学校教育における合唱教育の在り方について
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 第 1 4 8号 ( 2 01 1 )3 9-4 8 日本の学校教育 における合唱教育の在 り方 について - フィンラン ドの音楽教育機 関の制度 を通 して一 虫明星砂子 日本の学校教育 における合 唱活動の活発 さを表す指標 として, NHK全 国学校音楽 コン クールへの参加校数の割合 を採用 し,都道府県 ごとの値 を比較 した｡その結果,合唱の活発 な地域 とそ うでない地域が 2極化 していることが分かった｡岡山県の合唱活動 は,その中で も非常 に低調 なグループに属す ることが分かった｡ この ような状況 を改善す るための手掛か りとして, フィンラン ドの音楽教育お よびエスポー音楽学校 の形態お よびカリキュラムを考 察 した｡その結果,生涯教育 を 目的 とした多様 な音楽教育機 関 と幅広いカリキュラムが用意 されていること,演奏家 と聴衆の両方 を育てることを 目的 としていることがわかった｡エス ポー音楽学校では,器楽の個別指導,ソルフェージュ,ア ンサ ンブルの3 つの科 目を主体 とし, 器楽教育 を重要視 している一方,合唱 をア ンサ ンブル活動の一つ として大切 に していること, 音楽教育全体の質 を高めるために,楽器 と歌唱の両方 を生徒 たちに学習 させ るカリキュラム であることが明 らかになった｡ Keywor ds:合唱,器楽, カリキュラム,バ ラ ンス, フィンラン ド Ⅰ. は じめに をみる と.授業で歌 を得意 としている児童生徒 と不 日本の学校教育 における合唱活動 を概観す る と, 危倶すべ き問題点が浮かび上がって くる｡第一 に, 合唱活動 をしている児童生徒 の割合の低 さである 得意 に している児童生徒が存在 し, 2極化 している と思われる｡ この ような状況の もとに,音楽授業が これは,合唱に対す る興味関心が薄 くなっているた いか と感 じている｡ また, この間題 は,音楽教員側 ｡ 行われる ところに問題 を生 じる素因があるのではな めに,合唱活動 に参加 しようとい う意欲が低下 して に もその責任の一端があるのではなかろうかOもし, いるためではなかろうか｡合唱活動の活発 さをみる 音楽教員が音楽授業 よ り部活動 に主眼 を置 くような 指標 として,NHK 全 国学校音楽 コンクールの参加 ことになれば,音楽授業 はバ ランスを欠いた ものに 校数 を取 り上 げ,都道府県 ごとの参加校 の割合 を比 較 したO この点に関 して, 岡山県の参加校数は極め て少な く,全国的に見て も非常 に低調 といえる｡一 方,学校教育 における吹奏楽活動 は.全国的に も活 な り,その結果,音楽や歌唱が得意でない生徒 たち 際に,児童生徒 の大半は,発声や読譜 に大 きな問題 発であることか ら,合唱活動 との関わ りを含む問題 を抱 えている｡現状では,9年間の義務教育の中で, が潜在 しているとも考 えられる｡ 音楽科 は,児童生徒 に対す る発声教育や ソルフェー 第二の問題 は,児童生徒 の歌唱に対す る好みの傾 向が変 わった ことである｡以前 は,子 どもたちは押 ジュ能力の育成 を統一的に積み重ねてい く手立てを 見失 っている と言 って よい｡そのため,教師によっ しなべて歌 うことを楽 しんでいた ように思 えるが, て,学校教育の音楽授業の内容 に大 きな偏 りがみ ら 現在の学校現場の音楽授業で行われている合唱活動 れることも事実である｡ を放置す ることになるだろう｡ また当然,生徒全体 の レベルを向上 させ ることも困難 となるだろ う｡実 岡山大学大学院教育学研究科 芸術教育学系 7 0 08 5 3 0 岡山市北区津島中 3-1-1 AboutChor alEducat i oni nSchoolEducat i onofJapan-Ont heBasi cofaSys t em ofaMusi cEduc at i onal I ns t i t ut i oni nFi nl andMa s a koMUSHI AKI De pa r t me ntorCur r i c ul um St udi e s .Mus i cEduc a t i onCour s e,Gr a dua t eSc hoolorEduc a t i on,Oka ya ma Uni ve r s i t y,31 1 1Ts us hi ma na ka , Ki t a kuOka ya ma7 0 08 53 0 - 39 - 虫明異砂子 この ような,現在の 日本の学校教育における合唱 加率か らもわかるように,福島県は全国的にみても 活動が抱 える問題 を改善するための手掛か りを求め 合唱が非常に盛んであ り. しか も音楽の レベル も高 い県 となっている｡そ して,NHK 全国学校音楽 コ ンクールや全 日本合唱連盟のコンクールで も優秀な て.筆者は2 011年に, フィンラン ドのエスポー音楽 学校で合唱の視察を行った｡そこでは,同音楽学校 に付属す る EMO 合唱団や度 々来 日してい る著名 なタビオラ合唱団等の さまざまな合唱団の練習風景 成績 を残 している｡続いて長野県は3 7. 1%と福 島県 には及 ばないが,全国的には非常 に高い参加率 と を見学することがで きた｡ フィンラン ドは,北欧の 9% なっている｡ これに対 して,参加率の平均が7. 中で も合唱が非常に盛んな国であ り,その レベルは 世界的にも高い水準 を保 っている｡ 日本の学校教育 以下の中学校が6 割存在 してお り.中学校で も横や かな 2極化 となっていることがわかる｡ における合唱活動の問題点を考察 してい くうえで, 3)高等学校について また,音楽教育の方向性 を検討するための参考事例 とな り得 ると考 える｡本稿では,主に, フィンラン どよくない｡山梨県.長野県が2 40 / 0台で 1位 , 2位 ドにおける音楽教育のシステム,合唱教育の位置付 を占めてお り, 続いて奈良県, 愛媛県の1 8% となる｡ けや器楽教育 とのバ ランス等 を考察 し, 日本におけ 小学校,中学校がそれぞれ全国の 2位. 1位 と合唱 る合唱教育に必要なものは何かを検討 したい｡ の盛んである福 島県が,高等学校 になる と6. 1% と Ⅱ.全国の合唱活動の現状 平均以下に急激に低下 している｡平均以下は,2 8 都 道府県で全体の 6割 を占めていることか ら,中学校 1.NHK全国学校音楽 コンクールの参加状況 合 唱活 動 が 各県 で どの よ うな状 況 にあ るか. NHK 合唱音楽 コンクールの参加状況 をもとに調査 する｡学校 によってはコンクールには参加せず,独 自に音楽会等を開催するなど.合唱の取組方はさま ざまであると考えられる｡ しか し, このコンクール は8 0年近い歴史があ り,合唱部や音楽部がある場合 は参加 を検討する学校が多いことか ら,合唱活動の 状況を判断する目安の一つになるのではないかと考 えた｡平成21 年度 NHK 合唱音楽 コンクールの参加 校数をもとに,都道府県ごとの参加数の割合 を出 し た ( 表 1) ｡ 1)小学校について 小学校の場合,参加校の割合の平均 が 4% と小 学校, 中学校,高等学校で比較す る と最 も低 い｡ 5. 9%, その中にあって,長野県 と福島県は,各々3 2 8. 3% と突出 している｡そ して,愛媛県1 3. 1%,宮 2% と続 く｡参加率が平均 の 4%以下の校数 崎県8. は, 4 7都道府県中3 5と全体の 4分の 3を占めてお り, 参加率が全体的に低 くなっていることがわかる｡先 ほどの長野県や福島県の参加率 と比較すると,合唱 の活発な地域 とそうでない地域の極端な 2極化がお こっているといえる｡小学校の場合,中学校や高校 の部活動のような形で活動 している学校が少ないこ とも原因 していると思われる｡近年,金管バ ン ドが 小学校で増 えつつあることを考えると,参加率の増 加 は難 しい と考えられる｡ 2) 中学校 について 小中高の中で,参加率の平均が最 も高いのは,中 学校で1 1 . 20 / .である｡注 目すべ きは,福 島県で,約 6 0%の中学校が コンクールに参加 している｡ この参 高等学校 は,参加率の平均が 6% と参加率はさほ と同様 に緩やかに 2極化 しているといえる｡ また, 高等学校の部では参加校0の県が存在 していること も,高等学校での合唱活動の低調 さを象徴 している といえよう｡ コンクールの参加校数の比較によって,全国的に 小中高校のいずれ も合唱活動が活発な地域 と低迷 し ている地域 に二極化 していることが明 らかになっ た｡全体 を通 してみると,長野県,福島県が3 4%台 と非常 に高 く,香川県,愛媛県,宮崎県が1 0%台 と 続 く｡他方,5%に満たない県が全体の大変 を占め てお り.特 に岡山県,鹿児島県,三重県.大阪府は 2%台 と非常 に落ち込んでいる｡中国地方を見ると, 中国 5県の中で合唱県 といわれている島根県は全体 で 8% となってお り,全国では第 8位にあたる｡全 体で平均が 6%の参加率が,低迷 と判断するか否か はさらに詳細 な調査が必要 と考えられるが,決 して 高い数値であるとはいえないであろう｡児童生徒の 塾通いなどの生活形態の変化,吹奏楽部の増加等に よる合唱部の減少や廃止.歌唱-の興味 ･関心の低 下などさまざまな原因が考えられるが,活動の比較 をすれば,吹奏楽部の大半が所属する全 日本吹奏楽 連盟 と合唱部の大半が所属する合唱連盟 との登録加 盟団体数で.小学校,中学校,高校,大学,職場, 一般の全国合計では吹奏楽連盟の登録加盟 団体数 が1 4 2 3 7団体 ( 2 0 0 9年1 0月) に比べて,合唱連盟 は 5 2 2 5団体 ( 2 01 0年 1月)と約 3分の 1の規模である｡ このことか らも,合唱活動 と吹奏楽活動 との関連性 が大 きい といえる 他方では,学校現場では,歌唱や合唱活動に対 し て困難を感 じている教員が多いことも事実である｡ -4 0- ｡ 日本 の学校教 育 にお ける合唱教 育の在 り方につ いて 表1 NHK全 国 学 校 音 楽 コ ン クー ル へ の 参 加 率 ( H21年度) 都道府県 名 北 海 道 青 森 手 岩 小 学校 40( 2) 2 5 1 2 形 石 川 福 山 長 岐 静 愛 三 滋 井 京 都 梨 野 阜 岡 知 重 賀 兵 庫 奈 良 和 歌 山 鳥 取 島 根 岡 山 広 島 山 徳 香 愛 口 島 川 媛 高 知 福 岡 佐 賀 長 崎 熊 本 大 分 宮 崎 鹿 児 島 沖 縄 6 8 2 3( 2) 27 高等学校 9. 9 1 3. 3 1 3. 8 3 9 7 4( 1 ) 1 2, 4 8, 0 4. 6 全体 1 4 7( 2) 5 5( 2) 43( 1 ) 6. 4 8. 9 6. 2 1 , 8 2 0( 4) 2 8. 3 △2 1 4 6( 6) 1 . 9 2 4 2. 0 2 4( 1 ) 4. 4 7 2. 8 【 4 7( 1 ) 6. 2 41( 2) 3. 2 88 2. 3 46 2. 7 46( 6) 1 5. 6 5 9. 3 △1 9. 8 1 3. 4 3. 9 ▼5 1 0. 5 1 0. 1 1 0. 8 9. 6 1 8. 6 △3 4 7 8 2 9 8 l l 5こ し 1 9 1 5 5. 9 3 0( 4) 6. 1 3 03( 42) 5. 9 4 3 2. 5 ▼5 34( 1 ) l l . 1 31 3. 9 7 9( 1 ) 5. 8 1 05( 3) ll . 6 1 83( 1 ) 8. 0 8 6 1 3. 9 ∠ ゝ 4 76( 1 5) 5. 6 3 4. 0 △2 4. 5 5. 1 . 5. 7 5. 3 7. 2 7. 0 5. 3 8. 4 4 3 4( 2) 1 42( 9) 5 7 3 0 2 3( 1 ) ll( 1 ) 1 . 7 1 . 4 1 . 9 3 5. 9 1 , 3 1. 3 3. 0 0. 5 1. 3 2. 5 3. 8 ▼4 1 6. 5 1 7. 5 △5 3 7. 1 △2 1 5. 9 6. 8 1 5. 3 7‥ l 4. 7 5. 9 5 4 l l 2 6( 1) 1 3 1 9 4 4 3 7. 9 1 3 1 0. 3 21 2 4. 4 3 3( 2) 2 4. 1 △1 2 43( 1 2) 1 . 2 ▼2 3 8 2. 1 ▼4 3 0 8. 6 1 1 6 5. 1 1 9 6. 9 1 2( 4日 2. 9 2 6( 1 ) 3. 2 6. 3 9. 1 3 4. 5 △1 5. 7 3∴ し ▼5 7. 0 2. 7 ▼3. 3. 0 3. 4 1 3( 1 ) 5( 3) 5( 1 ) 6( 2) l l 5 21 7 1 2( 1 2) ll 4 6 8( 1 ) ll 2 9 1 8 5 2 2 l l 1 2 1 . 6 2 6( 1) 2. 2 l l( 1 ) 1 . 7 6 4. 0 9( 1 ) 4. 3 1 5 1 . 2 ▼3 5 3. 6 9 2. 0 9 4, 5 1 0 5. 6 1 6 1 3. 1 ∠ ゝ 3 1 6 2. 9 6( 1 ) 1 . 4 3 0 1 . 1 ▼2 1 9( 2) 2. 2 1 6 4. 1 21 1 . 5 ll 8. 2 △4 2 4( 1 ) 1 . 8 1 0 4. 3 1 0 6. 5 9. 2 4. 2 1 3. 8 1 3. 9 2. 9 3. 2 5. 0 1 0. 4 1 8. 6 l l . 1 4. 3 7. 9 1 8. 4 7. 6 1 0. 9 7. 7 1 6. 3 3. 7 6. 1 1 7( 2) 1 0 6( 2) 3( 2) 7 6 8( 1 ) 4 4 8 8 3 9 3( I ) 3 4 3 2 2 4 7. 8 5 6( 4) 1 8. 9 △2 2 6( 4) l l . 1 1 7( 3) 9. 7 1 8( 5) 1 4. 3 3 3 6. 6 1 6 5. 9 3 8( 1 ) 4, 4 2 0 9. 5 2 6( 1 2) 1 8. 6 △3 3 5 ll . 3 7 0 6. 1 1 7( 2) 5. 4 5 0 6. 8 2 4( 3) 3. 6 2 8 4. 7 4 3 4. 7 1 9 3. 4 4 8( 1 ) 2. 0 ▼3 2 3 6. 1 2 6 3. 9l 6. 6 3. 5 7. 3 8. 0 2. 3 ▼1 3. 8 3. 2弓 6. 4 1 0. 7 △4 1 2. 3 △3 3. 7 3. 8 7. 1 4ー 0 6. 0 3. 5 1 0. 1 △5 2. 4 ▼2 5. 1 6 福 島 1 5 0( 3 6日 茨 城 l l 栃 木 8 群 馬 1 5 埼 玉 2 4 千 葉 53( 1 ) 東 京 4 4( 1 ) 神 奈 川 21 新 潟 1 5( 9) 山 中学校 3. 1 7. 1 △5 2. 9 △1 ▼4 ▼4 ▼1 ▼4 4 1 4 1 8 7 5( 2) 3 2 2 0 6 7 1 3 5( 3) 1 2 ▼1 ▼2 △4 ▼3 % は,小 数点以下 第 4位 を四捨五入 した｡ ( ) は フ リー参加校 数｡審査 の対象 にはな らないが,演奏 を披 露 で きる｡ △ は上位 での順位,▼ は下位 での順 位｡ 参加校 数の 関係 で地 区大会 を開催 してい る都 道府 県 は,以下 の とお りで あ る｡ 北 海道.青森県,福 島県,東京都 ,神奈 川, 千葉 県 埼 玉県,長野県,新 潟県,愛知 県,岐阜 県,大 阪府 , 島根 県. 6の地 区大会が行 われ,毎年 1 0 0校 以上 が参加 して い る｡続 いて,北 海道 は小 ･中で9,育 愛媛県｡福 島県 は小 ･中で 1 森県 は小 ･中で8 , その他 も主 に小 ･中で 1 -4の地 区大会が行 われてい る｡ - 4 1 - 虫明鼻砂子 H . 2 年 岡 山 表2 岡山市 ･倉敷市公立中学校の合唱部 と吹奏楽部 全国の中学校音楽教師に対 して行 われた調査によれ は 教員養成大学へ求め られる音楽科 カリキュラム 度 における必要度では, 1位が合唱の実技 ,2位が声 楽の実技 ,3位が合唱の指導法 となってお り.現場 合 喝 部 吹奏楽部 市公立中学校 ( 全39校) 4校 ( 1 0%) 33校 ( 85%) の教員か らの要望が高い ことは興味深い lo歌唱や ◎ 表 3 小学校歌唱共通教材の認知 曲 目 ○ △ 合唱指導 は, 教師自身の力量が大 きく影響す るため, 不得意 とす る教師にとってみれば敬遠 されがちな分 野 となる｡歌唱への苦手意識か ら,器楽志 向になっ 1 1 かたつむ うみ り × ｢ 35 2 7 3 1 ー 日のまる ひらいたひらいた 4 l l 1 l O 3 1 4 9 24 虫の声 かくれんぽ 夕やけこやけ 29 3 26 6 3 7 3 1 3 4 1 9 1 10 茶つみ 30 2 5 I に存在 し, 合唱部 はわずかに4 校である｡倉敷市では. 合唱部は存在 しない とい う現状がある｡NHK 全国 学校音楽 コンクールにおいて,参加率が全国で最下 1 2 ふ じ山 1 4 6 1 2 6 位である最大の理由は,学校現場 に合唱部が存在 し 4 1 とんび 1 3 2 l f t 7 1 5 3 午 4 I ( ー まきばの朝 さくらさくら もみ じ 27 8 3 0 7 3 7 3 5 24 6 20 スキーの歌 こいの ぼ り 冬げしき 3 1 4 6 3 4 1 4 5 7 2 8 l 5 2 4 21 午 6 越天楽今様 2 4 3 ふるさと 2 9 2 23 3 4 ている教員 も多数存在すると考 えられる 2 2.岡山県の合唱活動状況 岡山県 は NHK全 国学校音楽 コンクールの参加率 4 3 午 ている可能性が高い と考え られるが,表 2に見 られ 5 ｣ 旦 7 午 2 るように,吹奏楽部 と合唱部の差が非常 に大 きいこ 8 ｡ が全国で一番低かったことか ら.合唱活動が低迷 し とが,原 因の一つではないか と考える｡ 岡山市では,吹奏楽部が全体の85% にあたる33校 ないことが大 きい といえるだろう｡ 岡山県の吹奏楽 部 と合唱部のア ンバ ランスについては,憂慮すべ き 問題であると同時に,学校教育の音楽授業で合唱活 動が どの ように扱 われるべ きか とい う,音楽教育の 本質にも関わる問題 として捉 えることがで きよう｡ 子もり歌 1 9 7 8 20 では,歌唱活動 は どうであろ うか｡岡山大学の教員 養成に在籍す る学生の話 を聞 くと,彼 らが小中高で 5 午 10 2 充実 した歌唱教育 を受 けていないのではないか と感 じることが多い｡そこで,教員養成小学校 コースの 5 必修科 目 ｢ 初等音楽内容研究｣ を受講 している2 年 生38名 を対象 に,小学校の歌唱共通教材の認知度 を ｡201 1 年 5月に実 施 し,歌唱共通 調査 した ( 表 3) ンサ ンプルや リコー ダーの練習に終始 していた と述 教材24曲の 1番のみを歌い,その認知度を次の よう べているO さらに, 岡山県出身の学生の多 くは,中 な形で記述 させた｡ 学校,高等学校で,合唱活動 を経験 していない と述 ◎- よ く知っているQ習ったことがある｡ べている､ ) この現象 は,中学校の音楽専修学生 にも ○- よく知 っているが,習ったことはない｡ 同様に表れてお り,一般的に周知 されていると思わ △-知っているが,歌 えない｡ ×-知 らない｡ れる唱歌や童謡, 日本歌 曲等 に対 して , 聴いた ことが ない｣ ｢ 知 らない｣ とする学生が年 々 増 えている｡古 くか ら歌い継がれている,いわゆる 日本の愛唱歌が学校教育や家庭の中で関心 を持 たれ な くなって きているのではないか と考える｡ また, ｢ 知 らない｣とい う回答が半数以上 だった曲は了 日 の まる｣ ｢ か くれんぼ｣ ｢まきばの朝｣ ｢スキーの 冬 げ しき｣ ｢ 越 天楽今様｣の 6曲で ｢ 歌え 歌｣ ｢ 習 っていない｣ ｢ 知 らない｣ とい う回答 を ない｣ ｢ 3曲 となる｡すなわち,24曲の小学校共 合わせ ると1 通歌唱教材の うち半数以上の曲を小学校で学習 して いない学生が多数存在 していることがわかる｡歌唱 , . . , . , . , 趣味の多様化や大人数での活動 をあま り好 まない学 生の増加 などの影響 で,大学の合唱活動全体は活発 だ とはいえない｡全 日本合唱 コンクールの大学の部 の参加 団体 もかつてに比べて大幅 に減少 している2｡ この ように,平成以降に生 まれた若い世代の歌離れ, 音楽教員の歌離れ,器楽教育 とのアンバ ランスな音 教材 を歌 っていない と答えた学生の多 くは,小学校 の音楽授業で歌唱活動 はほとん ど行 わず,器楽のア - ,｢これ まで 4 2 - 日本の学校教育における合唱教育の在 り方について 楽授業,器楽偏重 の音楽教員 の増加 な どさまざまな 育てるかに主眼 を置 き,ゼロ歳児 を含 む幼少期 の家 問題点が潜在 している｡音楽が部活教 育偏重 になれ 庭教育の場か ら社会教育の場 に至 るまで,教育の実 ば,合唱好 きや吹奏楽好 きの生徒 は伸 びるが,そ う 施機 関が樹 木 の よ うに枝 を広 げてい る｡ また専 門 でない多 くの音楽嫌いの生徒 はその ままで生徒 を二 家 を 目指 した学生 に対 しては, シベ リウスア カデ 分 して しまうこととなる｡小学校 の歌唱共通教材 を ミー とい うフィンラン ドの音楽教育の最高機 関に向 知 らない学生た ちが予想以 Lに多い とい う結果 を踏 かって進んでいけるようなシステムが構築 されてい まえ, さらなる音楽科 の授業内容 の改善が求め られ る る4 ｡ そ こでは,広範囲にわたるカ リキュ ラムが用 意 されている｡ Ⅲ.フィンラン ドの音楽教育 について る 5｡ これ らは,その 目的か ら,『 は専 門的 な学習 1.音楽教育機 関の形態 がで きる教育機 関,◆ は趣味 と専 門の両方の学習が ｡ フィ ンラ ン ドの音 楽教 育各機 関の概要 を記 載 す フ ィンラン ドは,現在 ,世 界的に教育面で大 きな注 目を 浴 びている国である｡音楽教 育 もその一つであ り,北欧の 福祉 E * ] 家 と民 E主義の原則 と 旧 ソ連 とハ ンガ リーの学校 の 最高の機能を組 み合 わせ るこ とに成功 してい る 3｡大 きな 特徴 の一･ つは,音楽教育 の シ ステムが, フィンラ ン ド政府 の補 助 金 に よ り安 定 して お り,その結 果.教 師たちは熟 達 した レベルを保 ち,幅広 い 音楽分野の教育が用意 されて い る こ とで あ る｡ さ らに, フィンラン トの音楽教 育の焦 点は.子 どもの包括 的な人格 を形成す ることであ り,その ために本格 的な学校 の音楽授 業か成 し遂げ られている｡ こ れ らの考え方をベ ー スに, 人ひとりの個性や能力 に相応 しい授業内容 を持 った学校が 用意 されてお り,生徒 たちが 学習が 主体的 に音楽 に取 り組 むことを大切 に していること も興味深い｡ 音楽教育 を学校形態か ら見 ると, フィンラン ド唯一 一の 音 楽大学であるシベ リウスアカ デ ミー を頂点 に.大学,ポ リ テクニクス,音楽院.音楽学 校等が存在 し,大 きな枠組 み の中で一貫 した音楽教育の組 織が構築 されている( 岡 1) 0 一人ひとりの音楽 に対す る興 味 関心 を どの よ うに伸 ば し 図 1 フィンラン ドの音楽教育 - 43- 虫明異砂子 技術 な ども含む｡ で きる教育機関.口は一般 または生涯学習的な教育 機 関,◇ は幼児期か ら青年期の一般的な教育機関の ◆ Mus i cSc hool( 音楽学校) 4種類 に分類で きる｡ ･音楽教育の基礎 と広範囲なカリキュラム ■ Si be l i usAc a de my (シベ リウスアカデ ミー) ･専 門学校 フ ィンラ ン ド国内 に8 9 校 あ り,約5 0 0 0 0人の生 ･フィンラン ドで最高 レベルの音楽教育機関 徒 数 を持 つ ( 2 0 0 4 2 0 0 5の統 計 )｡Mus i cSc hoo一 器楽 ( 弦楽器,吹奏楽器,古楽, 指揮 の各専攻) , 楽,音楽教育,電子音楽. アー トマネー ジメン ト の後 S i bel i usAc a de my叉 は Co ns e Ⅳa t or i esへ 通 う学習者 もい る｡ 各 々の生徒 は,週 に約2 . 5時 の1 0専攻 を持 ち. 1 5 0 0名の学生 1 5 0-1 7 0名の修 士 間の個別指導 を受 けている｡一般的な音楽の基礎 学生が学んでいる｡ アカデ ミーの場合.実技 だけ 教育 は, ここで行われ,乳幼児か ら老齢者 まで, 勉強す るカリキュラムであ り,一般教養的な もの 全ての年代の人々を受け入れている｡学習者 に応 はアカデ ミーにはない｡ このため,音楽学 などの じて,最高の音楽教育が提供 される｡ ピアノ,声楽,作曲 ･音楽理論, ジャズ,民族音 講義 は.ヘル シンキ大学等の総合大学で受 けるこ □Ad ul tEduc a t i onCe nt e r s( 成人のための教育セ とになる｡ アカデ ミーに入学す る と,同時に総合 ンター)- 日本の カルチ ャーセ ンター等 にあた 大学での履修 も保障 されている｡ この仕組みは逆 ると考 えられる｡ ･音楽教育の基礎.一般的なカリキュラム の場合 も可能で,ヘルシンキ大学等 に入学 した学 生が シベ リウスアカデ ミーで実技 の授業 を受ける ･成人教育 学習 したことは経歴 にはなるが,資格 はとれな こともで きる｡授業科 目の履修単位 は,生徒が入 い｡趣味で学習す る場｡ 学試験 を受けた機関の単位 として読み替えられる｡ □ Pr i va t eTui t i on ( 民 間の レッス ン) ■ Pol yt e c hni c s(ポ リテ クニクス) ･民間の音楽学校, ･演奏家 また音楽教育者の養成 全 国に1 0大学程度あ り,2 0 0 0人の学生が学んで □ Chur c he sa ndAs s oc i a t i on (教 会組織 や協 会 ) いる｡音楽教員になるためには,大学,大学院の - 日本の社 会教育 の場 での合唱団. オーケ ス ト 6年間の課程 を経て,さらに 2年間の実習 を行い, 合計 8年 間が必要で.その後 に教員採用試験 を受 ラにあたる と考え られる｡ ･オーケス トラと合唱 ける｡教育全体の レベルは. この ような厳 しい教 ･そのほかの音楽趣味 育機関に支 え られている｡ この大学-在籍 し, シ 趣味 としての位置付 けになる｡異 なる年齢層の ベ リウスアカデ ミーへ レッスンを受けに行 くこと さまざまなグループが多 くあ り,誰 にで も開かれ ている｡ も可能である｡ ◇ Sc hool s( 一般の公立学校)- 日本の学校教育 に ■ Uni ve r s i t y( 総合大学) あたる ･音楽学等の履修 シベ リウスアカデ ミーへ学生 として受講す る資 ･一般の音楽教育機関 ･音楽専攻 格 を持つ｡た とえば,ヘルシンキ大学等で音楽史 小中学校,また高校の音楽専攻のクラス も含 む. などを履修 し,同時 にシベ リウスアカデ ミーへ行 プライベー トの実技 レッス ンも受け られる く学生 もいる｡音響学, コンピュー ター音楽,氏 族音楽 なども学ぶ ことがで きる｡ユ ヴァラスキュ ラ,オウル大学の学生は,中学校,高等学校の教 ◇ Ea r l yChi l dhoodMus i cEduc a t i ona tVa r i ous Publ i ca ndPr i va t eI ns t i t ut i on ( 公共の または個人のための早期音楽教育) 員資格 を得 ることがで きる｡ 『 Co ns e Ⅳa t or i e s( 音楽院) ･2次的な専 門教育 ･楽器練習 に入る前 専門的な勉強がで きる機関｡ フィンラン ド国内に ･幼児の音楽遊び ･乳児の音楽遊 び 生 まれてか ら小学校へ あが る までの音楽遊 び 1 3の音楽院 と 4つの専 門学校がある｡卒業資格 に は,1 2 0単位必要であ り, 3年 間で取得 で きる を 5,6人 の グルー プで行 う｡ フ ィ ンラ ン ドで は. 音 楽 教 室 や 音楽 院 に関連 した 音楽 遊 びの ア ンサ ンブル,オーケス トラ, クラシック音楽, ポ ップス. ロックとジャズ,民族音楽,軍隊の音 Pl a ys c hoolで2 5 0 0 0人の幼児が学んでいる｡ ここ シベ リウスアカデ ミーには及ばないが,音楽の ｡ では,歌 うこと,遊ぶ こと,聴 くこと,練習す る こと,楽器遊 び等様 ざまな音楽遊びが用意 されて いる｡ 楽などさまざまなコースが用意 されている｡楽器 修理,電子音楽の コースは, ピアノの調律,録音 - 44- 日本の学校教育における合唱教育の在 り方について 2.音楽教育 の カ リキュ ラムの 目的 と内容 もの認知, 感情, 運動.社 会性 を同時 に発達 させ る フ ィンラ ン ドの教育省が制定 してい る ｢ 芸術 基礎 こ とが で きる 80 (4)社 会教 育 の 中で, 市 民 が音 教育の通常 カ リキュ ラム教育計画基本事項 2 0 0 5｣ の 楽活動 をす る機 関が準備 されてい る こ とであるO 日 中には, カ リキュラムに基づ く音 楽授 業 の 目的 と内 本 にお いて も " Li f e l ong Educ a t i o n"いわゆる ｢生 涯教育｣は今 日,大 きな関心 を集めてい る｡ しか し. 容 につ いて以 下の ように記 載 されてい る 6｡ 国家 の政策 としての位置付 けが弱 いため,予算 や指 生 まれ なが らに音楽 的素 質 のあ る人,個 人的 に 導者不足 の問題 も抱 えてお り, なかなか浸透 しない 音 楽 に 関 わ る もの, 一 生 涯 の 趣 味 と して い る 現実が あ る｡ フ ィ ンラ ン ドが国の政策 として,音楽 人 々に必要 な助 け を創 り出す こ と 教育 を社 会教育 と専 門教育 に融合 させ なが ら.学習 学 習者 の個 人的 目標 を土台 と L形成 され るこ と 者 の 自発 的 な意欲 を尊重 してい る こ とで,学 習者 は 生 きる力 を与 える為 の民族音楽 文化 の保存 と, 教育機 関 を 自己選択す る ことが で きる｡この こ とは, その育 成 を広域 的 な音楽 の一般 教育 か ら学習 者 生涯教育 の一つ と して音 楽教育が 国民 に定着 してい に与 えるこ と る とい え よ う ｡ 音楽教育主催者 やその他 の芸術授業 を行 ってい る教 育機 関 と連携 す るこ と Ⅳ.エスポ ー音楽学校 の音楽教育 システム これ らの 目標 と内容か ら,生涯 にわた って,音楽 1.概要 9 に関わ ってい くため に,個 人 また は趣 味 として愛好 音楽活動 が普 及 し,演奏者 と聴衆 の双方 を育てる こ エ スポー音楽学校 ( Es pooMus i i k kiOpi s t o略称 EMO)は フ ィンラ ン ドの音 楽 教育 が確 立 され始 め 9 6 3 年 に創 設 され た｡EMO は フ ィンラ ン ドの音 た1 楽教 育機 関の Mu s i cSc hoolに該 当 し,幅広 い年代 0 0 0人 を越 える の学習者が存在 してい るO現在 は,2 とにつ なが る｡次 に,音楽授 業 の方法 は,音楽技 能 生徒 を教 育 してお り,個 々の生徒 が, カ リキ ュラム を向上 させ る カ リキ ュラムが 中心 とな り,多数の学 を選択 で きる システムが取 られてい る｡ この システ 習 カリキュラムが準備 され る｡学生 は,一つ の カ リ ムに よ り,初心 者 の学生 とよ り専 門 を学 びたい学生 キ ュラムの 目的 と内容 に沿 って構 成 され た音楽技 能 の両方が興 味 を持 て る学校 となってい るO す る一般 の人々に対 して相応 しい音 楽教 育 内容 が提 供 されてい る こ とが わか る｡社 会教育 の なかで,普 楽が人 々に身近 な芸術 であ る こ とは,幅広 い年代 に エ スポー音 楽学 校 での学 びの方針 は,学生が生涯 を深 め, さ らに次の レベ ルへ と進歩 させ る授業 カ リ キュ ラムか ら学習す る事が で きる｡ その際 に,学習 にわた って音楽 を愛 し,音楽づ くりをす るこ とをサ カ リキ ュラムが学生 の 目的 に沿 った全体 内容 となる ポー トす る こ とで あ る｡幅広 い音楽交流 に よって学 よう注意す る こ ととある｡ 能力 に応 じた カ リキ ュ ラ 生の個性 は磨 かれ, ア ンサ ンブ ルの演奏 を通 して聴 ム内容が個別 に設定 され る こ とに よって,個 々の技 く耳 を育 て る｡音 楽 は学生 の生活 を豊か にす る｡学 能が 向上 し,そ こか ら次 の多様 な カ リキュ ラム を選 生 の創造性 のあ る表現 を伸 ばす こ とは,精神 的 な成 択す る こ とが で きる｡ この ような システムが,政府 長 を助 け る こ とになる｡ の補助 に よって保 障 されてい るのであ る｡ べ る｡ (1) さまざ まの音 楽教 育機 関が 互 い に連携 2.エ スポー音 楽学校校 長- の イ ンタビュー 2 011年 4月1 3日 に エ ス ポ ー 音 楽 学 校 の Pa ul a J or da n校 長へ の イ ンタビュー を行 うこ とがで きた｡ してい るこ とであ る｡ これ に よって.学 習者 は 自己 その概 要 を質問項 目別 に記載す る の 目標 や能力 に応 じた音楽教育機 関 を選択 し,授業 1) エ スポー音楽学校 につ いて フ ィ ンラ ン ドの音楽教育 システムの特 徴 を 4点述 ｡ 科 目を 自由に履修 し,単位 や学位 を得 る こ とが で き 3 0人 の教 師 と2 2 0 0人 の生徒 が在 籍 し, こ こに は1 る｡ す な わ ち, 将 来 の夢 や 目標 , 生 き方 に合 わせ その 中で, ソ リス ト9 0 0人が個 人 レ ッス ンに通 って て,音楽教育へ の関 わ り方 を決定 で きる｡ これ まで い る｡この音楽学校 はオーケス トラを重視 してお り, 5 0 0人の音 楽 学 生 が この教 育 制 度 で 資格 を得 て に5 タビオラの シ ンフ ォニー, ジュニア ビ ッグバ ン ド, い る7｡ (2) フ ィ ンラ ン ド政府 が 全 て の音 楽 教 育 ジャズの オーケ ス トラの 3団体 があ るO この音楽学 委 機 関 に補 助 を して い る こ とで あ る｡ た とえ ば, 校 を修 了 す れ ば,Co ns e r v a t or i e sま た は Si be l i us Mus i cSc hool( 音 楽学校 ) で は, 運営 にか か る資 9%, 市の補助 が3 4%,学習 金 の中で, 国の援助 が4 Ac a de myを受験 で きる資格 も獲 得 す る こ とが で き Mus i i k kiOpi s t o)は,全 国 に1 0 0か る｡音楽学校 ( 者の授 業料支払 いは1 7% と学習者 の負担 は非常 に少 所 あ り, 各地域 を カバ ーす る音楽学校 を 目指 してい ない｡ (3)幼 児 の音 楽教 育 が充実 して い る こ とで る｡ 以前 は. 器楽教 育 を教 える こ とが 中心 であ った あ る｡幼児の音楽経験 や音楽 的 な基礎作 りは,子 ど が,現在 は, 全体 的 な音楽教 育 を しなけれ ばな らな - 45- 虫明星砂子 くなった｡た とえば,幼稚園での音楽教育,病院で の合唱団があ り, タビオラ合唱団の生徒 たちは,最 の コンサー トな ど3 0件以上の色 々な活動 を しなけれ 初か ら楽器 も歌 も両方す るため,楽器 を弾 く子 ども ばな らないことになった｡ は,歌 うのが普通である｡ これに関 して J or da n校 2)幼児か らの音楽教育について 大切 なのは音楽遊 びで,子 どものための音楽 を大事 長は次の様 に述べ た｡ " 私たちは,音楽 を全体 堕旦 こととして考 えて,楽器 を弾いて表せ ないことがあ に しているoそ こで行 っているリ トミックは 2カ月 るが,歌 うことで異 なる表現がで き,合唱で表現, の赤 ちゃんか らで き,お父 さんお母 さんが子供 と歌 歌 うことと楽器 をす ることは融合 して両方 とも大切 うように指導 している｡共働 きの両親が増 えて きて で,音楽教育の全体的なこととして考 えている｡' ● お り,公立の学校では子 どもたちはあ ま り歌 わな く 5)教育資金について なっている｡公立の学校では,音楽授業は週に 1回 0%を提供 している｡25%は市町 教育省は予算の5 あ り,1 3歳か らは選択科 目となる｡そのため,1 3歳 か らで,そのほか2 0%は生徒が支払 う｡残 りの運営 以 降の子 どもは音楽授 業が全 くな くなる こ ともあ 費は, プロジェク トの予算 ( 病院や老人ホームでの り, これはあ ま りいいことではない｡法律改革の計 コンサー ト) をで きるだけ取 って補っている.エ ス 画 はあったが. 今の政府 は自分のプログラムを作 り, ポー音楽院では,子 どもたちは,半期で2 5 0ユーロ, 技術 を養 う科 目を増やそ うとい うことが入 っていた 1年で5 00ユ ー ロ支払 う｡音楽の活動 に毎 日来て も が,選挙が近 くて,与党は決めることがで きなかっ 5ユー ロ, 1年 で1 50ユー 構 わない｡合唱だけ半期9 た｡現在の教育 システムである『 選択す るシステム』 ロに している｡ フ ィンラン ドでは,幼稚 園に入るた は1 5年ほ ど経過 しているが,1 3歳以降の子 どもたち に影響 はあった｡幼児か ら学ぶ音楽活動の核 は,細 めのお金がかかるが,支払 えなければ,国家が支払 うため無料 となる｡家族の事情 によって,授業料は くて長い ものであ り,質の高い器楽教育が重視 され 変動す る｡同 じ幼椎 園では難民や ロマの子 ども,外 ている｡その中にはプロになる人 もいれば,人生の 務省の子 どもも一緒 に学習する｡家族の事情が どう 趣味でやる人 もいる｡ クラシック音楽の将来 を考 え であって も才能があれば,学習が保障 されている｡ る と,家庭 ではや らない し,TV で もクラシックは あま りや らない｡学校教育で聴衆 を育てる必要があ 音楽教育 は,全民族 のための教育である｡ フィンラ る｡ とを大切 に している｡ しか しその一方では,教育の 3) 音楽教育の基礎 について 質が高 くなければな らない｡そのため,モスクワの 音楽の広範囲に学ぶ ことは大切である｡ここでは. ｢ 個別指導の器楽 ｣｢ソルフェー ジュ教育｣｢ア ンサ ンの教育 は,子 ども重視であ り,皆が参加で きるこ レニ ングラー ド音楽 院な どの ように,で きるだけ音 楽 レベルを高 く置いている ｡ 6)音楽環境の変化 について ンブル活動｣の 3つの科 目を主体 として学習す る｡ フィンラン ドには制度では,基礎的な 『 段 階』が 3 現在, インター ネッ ト, コンピュー ターなどの使 つある｡一つの段 階は 2年か ら 3年 にあ り,試験で 相法は, 2か月お きにあれこれ と変わってい くよう はな くコンサー トを して次の段 階へ入 る｡ 3つの科 になって きた｡子 どもの空 き時間に対す る使い方は 目を継続 し.高校 ( オピス ト)に入 る｡ フィンラン 前 と変わって きている｡ フ ィンラン ドは,子 どもの ドの高校 には,音楽 コースがある｡大 きな町に 1校 ための教育を大切 に しているが,多 くのお母 さんた ずつあ り,そこでは合唱 ･ミュー ジカルが中心 とな ちは. 自分 に音楽がで きないか らここに来た と言っ り,器楽教育は行われていない｡ ア ンサ ンブルの中 ている｡妊娠 した女性のための教育 もある0 に合唱がある｡ ピアニス トには合唱 をす ることを勧 めている｡その理由は,全体 として音楽家 としての 発達のためであ り,合唱によって皆 で一緒 に音楽 を す る経験がで き, 音楽の成長がみ られ ることであるL, 4) 合唱 について エスポー音楽学校の創設者エル ッキ ･ボホ ヨラさ んは,同学校の設立の1 963年 と同年 にタビオラ合唱 団を設立 した｡ タビオラ合唱団は世 界中で有名にな り,ボホ ヨラさんは理事長退職後, タビオラ合唱団 に移 り,31 年指揮者 を務めた｡現在の指揮者ノ ヾシ･ ヒイオ ッキさんは,この学校の出身である｡エスポー 音楽学校 には,エモ, カメレオ ン, タビオラの 3つ 3. 音楽教育 システム エスポー音楽学校のシステムは,図 2で示 されて いるように,器楽 を中心 に した音楽教育が充実 して いる1°｡ オーケス トラは, タビオラユース室内楽団 と EMBO ジャズオーケス トラの大 きく2つのオー ケス トラが存在す る｡ さらにそれは,弦楽オーケス トラと吹奏楽 に分類することがで き,それぞれに 3 つの グループを編成 している｡ 図 2に示 された大小のオーケス トラ集団を柱 に. 表4の ようなア ンサ ンブル活動 も行われている｡ こ こでは,室内楽のグループとして, 楽器のグループ, -4 6- 日本の学校教育における合唱教育の在 り方について 唱団は,設立の歴 史 を共有 している｡今 日では, この2つ の合唱 団の コラボ レー シ ョンは, 合唱 曲を専 門的に歌 いたい と願 う学生 たちのために 幅のあ る講義 の時間割 を絹意 している｡ 5.楽器 についで 4 エ スポー音楽学校 は,楽器演奏 を重要視 している ｡ 生徒 たちは, 一般 的 に, 6歳か ら1 0歳の間で楽器 を 図2 初めて習い始 める｡方法 は,個 人 またはグループの EMOオーケ ス トラの体系図 2歳か らリズム音楽の勉 強 を始 両方ある｡学生 は,1 め,好 きな楽器 の基本的な技術 を身につ けてい く ｡ 表 4 室内楽 グループのア ンサ ンブル この学校 では,生徒 自身の才能 を発達 させ た り, よ り高い専 門的な音楽の勉 強のための技 能 を習得す る ことがで きる｡高い レベ ル まで到達 した生徒 は,普 楽大学 で勉 強 を続 けることがで きる｡ シラバ スは,週 に 1回の個人 レッス ン,一般的な ア ンサ ンブル,音楽史や音楽理論で成立 しているO EMO ア ンサ ンブル, カ メ レオ ン合 唱 団), 合唱 ( エスポー音楽学校 では,リズム トレーニ ング,作 曲, EMO カム トウ),ジャズ ( ェ リ トミック,民族楽器 ( 電子音楽,合唱 な どの選択学科 も提供 している｡能 ベ リンパ ンテ ィ トウ)が運営 されている｡ これ らの 力のある学生 は,毎年春 に生徒 自身が選択す る授業 レッス ンは毎週 または集 中的に一定の期 間,専門家 ･ に参加す るこ とがで きる｡ グループの コー スは一般 音楽家 の指導の もと行 われている｡ 的 に登録 のみで よい｡ エスポー音楽学校 は. この ように器楽 を柱 に して い るが, フ ィ ンラ ン ド国内の音楽 学校 の動 向 も類 カ リキ ュ ラムの特徴 につ い て,校 長- の イ ンタ ビューや システムの概要か ら以下の 3点 にまとめる 似 してい る｡2 00 4年 か ら2 005年の調査 に よる ｢ Top l Oi ns t mme nt s ｣ は 次 の とお りで あ る11 ｡ ピア ノ ことがで きる｡ 33. 5%,バ イオ リン1 8. 9%, フルー ト7. 3%, ギ ター 6. 3%, チ ェ ロ5. 9%, ク ラ リネ ッ ト4. 2%, ア コー 0%, トラ ンペ ッ ト2. 8%, パ ー カ ッシ ョ デ ィオ ン4. 4%,そ して第1 0位 に声 楽2. 2%が あ り,声 が楽 ン2. ①音楽 を生涯学習 として位置付 けてお り,一般的な 趣 味 としての学習 と専 門的な学習 につ いて,生徒 の希望 にそ って, さまざまなプログラムがある｡ ② オーケス トラや楽器演奏 を中心 とした器楽教育 を 音楽院の柱 としている｡ 器 として位置付 け られてい るのが興味深 い｡ 4.ア ンサ ンブル ( 合唱) について ③合唱教育 を含 むア ンサ ンブルを大切 に してお り, 合唱活動 は,表 4の ようにい くつかの ア ンサ ンブ 楽器 をす ることと歌 うことの双方 を学習す ること ル活動 の一つ として位置づ け られている｡合唱 ア ン で,音楽全体が レベ ルア ップ してい くと考 えてい る｡ サ ンブルを記載す る12｡ 1) カメ レオ ン :多様 なジャンルを扱 い.即興演奏 Ⅳ. まとめ やボデ ィパー カ ッシ ョン,身体表現 を通 した新 しい表現 を 目指 している｡ カ メレオ ンコー ラス 本稿 では, 日本 の学校教育 における合唱活動の在 では, 3つの異 なる年齢 の グループのア ンサ ン り方につ いて検討 をお こなった｡そのために.合唱 ブ ル13が あ り,演奏 会や特 別 なイベ ン トで は, 活動 の活発 さを表す指標 として NHK全国学校音楽 グループ単独で, またはカメ レオ ンコー ラスの コンクー ルへ の参加校数の割合 を採用 し,都道府県 両方で演奏 している｡ メデ ィアに も取 り上げ ら れている｡ 組み方 に,都道府県 によって大 きな差があ り,合唱 2)EMOア ンサ ンブル :音楽 を学ぶ若 い学生 とプ の活発 な地域 とそ うでない地域 が 2極化 しているこ ごとの値 を比較 した｡その結果,合唱活動- の取 り ロの音楽家の両方か ら成立 している室 内 コー ラ とが分か った｡ 岡山県の合唱活動 は,その中で も非 スである｡現代 音楽の演奏 の分野では有 名であ 常 に低調 なグルー プに属す るこ とが分かった｡その る｡指揮者パ シ ･ヒイオ ッキの もとで, フ ィン 原 因 として,学校教育 の中で,歌唱教育 に力が注が ラ ン ドの各地で,国際的な合唱団 として演奏活 れていない こと,部活動 に置いて吹奏楽部の活発 さ 動 を している｡エ スポー音楽学校 とタビオラ合 に比較 して合唱部が低調 とい うア ンバ ランスな状態 -4 7 - 虫明鼻砂子 であ る こ とが考 え られ た｡次 に, この ような状況 を 結 果, フ ィ ンラ ン ドの音 楽教育が生 涯教 育 を 目的 と 2 01 1 ,p. 1 5 7 , 3)Ti moKl emet t i nen,Mus i ceducat i oni n Fi nl a nd, FMQ,3 / 2 0 0 6, p. 6 7 . 4)Ti moKl e me t t i ne n,Ba s i cmus i ce d uc a t i oni n Fi nl a nd,FMq,3 / 2 0 0 6 , p8 9. 5)概 要の記載 にあ たって は,合唱指揮 者松 原千振 し, 国民一 人一 人が主体 的に活動 に取 り組 め る よう 〕( Fi nl a ndMus i c 氏 へ の イ ン タ ビ ュ ー,FM( 改 善す るための手掛 か りとして, フ ィンラ ン ドの音 楽 教 育 の 形 態 お よび カ リキ ュ ラム を概 観 し, エ ス ポー音楽学校 での視 察 を通 して, フ ィンラ ン ドにお ける音 楽教 育や合唱教育 の在 り方 を考察 した｡その な多様 な音楽教 育機 関 と幅広 い カ リキ ュラムが用意 されてい るこ と,演奏家 と聴衆 の両 方 を育 て るこ と を 目的 と してい るこ とがわか った｡ また, エ スポー 音楽学校 で は,器楽 の個別指 導, ソル フェー ジ ュ. ア ンサ ンブルの 3つの科 目を主体 と して学習 され て い るこ と,器楽教育 を重要視 してい る一方,合唱 を ア ンサ ンブ ル活 動 の一 つ と して大 切 に して い る こ と,音楽教育全体 の質 を高め るため に,楽器 と歌 唱 の両方 を生徒 た ちに学 習 させ るカ リキ ュ ラムであ る こ とも明 らか になった｡ 日本の学校教 育 にお ける合 唱活動 を充実 させ るた 青弓杜 i/ f Qua l i t y2 0 0 6) ,ht t p: / / www. mus i i ki nope t us . i/ f j a r J e S t e l maを参照｡ 6)Ta i t e e npe r us ope t uks e nyl ei s e noppi ma a r 畠 n t p: / / ope t us s uunni t el ma npe r us t e e t20 0 5,ht www･ oph. f i / downl oa d/ 1 2 3 01 2t ai de yl _ops . pdf , p5 ･ 7)JussiKai nul ai nen,Vocat i onalmusi c 3 / 2 0 0 6, p. 4 0. e duc a t i oni nFi nl a nd, FMq, , 8)Ma r iKo ppi ne n, Thel a ndofmus i cpl a ys c hool FMq,3 / 2 0 0 6 , pll . 9)Es poonmus i i kki o pi s t oのパ ンフ レ ッ トp. 2か ら要約 した もの を記載｡ め に, 日本の学校教育 の システムの中で必 要 と考 え られ る次 の 2点 を捷 案 したい｡ 1 0)Es poonmus i i kki opi s t oope t us s uunni t el ma (1)器楽教育 と合唱教育 のバ ラ ンスが とれた音楽 活動 を行 うこ と (2)音 楽授業 内容 につ いて,音楽教育全 体 の質 を 高 め るため に,バ ラ ンスの とれ た分 野 を学 習 させ ,発声 や読 譜力 な ど基礎 的 な力 を育 て る 1 . 1 . 2 0 1 1 ht t p: / / www. e mo. 負/ e a s yda t a / c us t ome r s / e s poo / il f e s / a r ki s t o / o ps _8 . 1 2 . . pdf , p. 1 4 . l l )Ti moKl e me t t i ne n,Ba s i cmus i ce duc a t i oni n Fi nl a ndFORALL,FMq, 3 / 2 0 0 6, p9. 1 5か 1 2 )Es poonmus i i k ki o pi s t oのパ ンフ レッ トp. ら要約 した もの を記載｡ 内容 を段 階的 に組 みいれ る こ と 注 1)斎藤忠彦,学校教育現場 の声 を もとに再考す る 教 員養成大学音楽 カ リキ ュラム, 日本音楽教育 5回大会研 究発表 資料 よ り ( 2 0 0 4年1 1 月 学 会第3 1 3 )TheCha me l e onc hoi r s ( He pul )6 8ye a r s ,The Chamel eonc hoi r s ( Vi l s ke)9 l lye a r s ,The Chamel eonchoi r s ( Se ka mel s ka-Choi r ) 1 2 ye a r sol dc hi l dr e n. 9よ 1 4)Es poonmus i i kki opi s t oのパ ンフ レ ッ トp. 1 3日)｡ 2)戸 ノ下達也 ･横 山琢哉編著, 『日本 の合 唱 史』 , -4 8- り抜粋 ｡