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米国:ガス価格の低廉化を受けて強 まるLNG輸出と資産放出の動き
米国:ガス価格の低廉化を受けて強 まるLNG輸出と資産放出の動き ~一貫操業にアドバンテージ ~ 2012年3月22日 石油調査部 市原 路子 1 内容 1.ガス価格低廉化を受けて(概況) 2.価格低迷の背景 3.ガス輸出計画 4.ガス生産者側の苦悩 5.一貫操業にアドバンテージ 6.まとめ 1.概況 暖冬 シェールガス供給増 高い貯蔵水準 開発コスト減 北米:ガス価格の低迷 資源豊富、低環境資源、安価 ガス需要の拡大 ガス供給者の対応 (収益改善、財務改善) 中長期 (+巨大なインフラ投資、雇用) 内需 産業用 燃料転換 外需 発電用 燃料転換 輸送用 短期 資金調達 LNG輸出用 (計画中) 中期 投資シフト ガス⇒オイル 基地建設 LNG輸出 資産売却 市場調達 割安販売 2.ガス価格の低迷 2012年2月 平均価格2.5ドル/百万btu(15ドル/boe) (ドル/百万btu) 25 20 米国ガス価格(HH価格) 米国原油価格(WTI) 日本LNG輸入価格 15 10 5 0 データ出所:米国エネルギー省統計局、ガス年鑑、石油連盟 ガス価格低迷の背景① 過去5年間で15bcf/d(LNG換算1.1億トン/年分)の生産量増大 過去2年間、ガス生産量が年10%で増加 現在、シェールガスの生産比率は、25%~30%程度とみられる。 (bcf/d) 米国ガス生産量(1998/1~2011/12) 70 65 60 55 50 メキシコ湾ハリケーン襲来 45 40 35 30 Jan‐1998 Jan‐1999 Jan‐2000 Jan‐2001 Jan‐2002 Jan‐2003 Jan‐2004 Jan‐2005 Jan‐2006 Jan‐2007 Jan‐2008 Jan‐2009 Jan‐2010 Jan‐2011 データ出所:米国エネルギー省統計局 ガス価格低迷の背景② 暖冬も加わって、現在、過去5年平均の5割増しのガス貯蔵量 出所:米国エネルギー省統計局 (2012/3/15発表の在庫水準) 3.北米LNG輸出計画事業 各種資料よりJOGMEC作成 <米国> 基地名 LNG輸出計画(先行案件のみ) 輸出規模 主要事業者 事業段階 FTA締結国への輸出権を取得 東海岸 Cove Point Dominion 780万トン/年 ・第1フェーズ 最大900万トン/年 Sabine Pass Cheniere (450万トン×2トレイン) ・第2フェーズ (2トレイン 拡張) メキシコ 西海岸 イン) 非FTA締結国への輸出権を申請中 Lake Charles BG - Carib Energy 24 万トン/年(コンテナ) Cameron Sempra Energy 1,200万トン/年 Jordan Cove 900万トン/年 Jordan Cove 出所:各社発表情報、米国エネルギー省天然ガス規制当局等より作成 輸出開始目標:2015年 FTA締結国への輸出権を取得 ConocoPhillips Southern Union FTA締結国および非FTA締結国への 輸出権を取得(2011/5)。 BG(350万トン+200万トン)、Gas Natural(350 万トン)、Gail(350万トン)、Kogas(350万トン) の供給契約(20年間) 最終投資決定:2012年上旬 最大1,200万トン/年(3トレ Freeport 湾岸 非FTA締結国への輸出を申請中 1,500万トン/年 FTA締結国への輸出権を取得 非FTA締結国への輸出権を申請中 FTA締結国への輸出権を取得 非FTA締結国への輸出権を申請中 FTA締結国への輸出権を取得 非FTA締結国への輸出権を申請中 FTA締結国への輸出権を取得 非FTA締結国への輸出権を申請中 CheniereLNG輸出計画の進捗 現在 2010年6月 計画発表 1800万トン (450万トン×4トレイン) 2012年3月~4月 FID予定 準備段階 建設段階 建設作業 FEED作業 Cheniere社 輸出基地建設に関わる環境影響評価 FTA締結国向け輸 出権取得(2010/9) 非FTA締結国向け輸 出権取得(2011/5) BG(350万トン) +200万トン(Train 2,3,4) 第1フェーズ 45-50億ドル 2015年~ ≪Train 1,2 最大900万トン≫ Gas Natural(350万トン) LNG長期売買契約 計1600万トン/年 インドGail(350万トン) 第2フェーズ 45-50億ドル 2017年~ ≪Train 3, 4 最大900万トン≫ Kogas(350万トン) CheniereのLNG販売契約 4社 契約締結発表 合計1600万トン/年 契約量 (トン/年) A.ガス代 B.液化代 トレイン (Henry Hub:HH価格) (ドル/百万btu) 350万トン HH価格×115% 2.25ドル 第1 200万トン HH価格×115% 3.00ドル 第2~4 Gas Natural 2011年11月21日 (西) 350万トン HH価格×115% 2.49ドル 第2 Gail(印) 2011年12月11日 350万トン HH価格×115% 3.00ドル 第3 Kogas(韓) 2012年1月30日 350万トン HH価格×115% 3.00ドル 第4 BG(英) 一次:2011年10月26日 二次:2012年1月26日 合計 1600万トン LNG契約価格(FOB) = A.米ガス価格(HH価格)×115% + B.液化代(契約ごとに固定) Cheniere社ホームページ資料より作成 4.生産者の苦悩 主要な米国シェールガス開発企業 Chesapeake Devon EOG Southwestern 特徴 ・米国シェール 開発 ・米国内第2位の ガス生産者 ・2010年に北米 陸域に特化 ・シェールガス とオイルサンド ・北米シェール 開発 ・ 加 Kitimat LNG事業者 ・北米シェールガ ス開発中心 ・ エ リ ア 集 中 ( Fayatteville Shale 87%) 米国陸域での生 産量(ガス比) 企業全体の生産 量(ガス比) 2011年純利益 (前年比%) 投資額(Capital Expenditure) 54.5万boe/d (84%) 54.5万boe/d (84%) 15億ドル (-6%) - 47万boe/d (71%) 65万boe/d (66%) 47億ドル (+3%) 75 億 ド (2011) 32.9万boe/d (56%) 42.2万boe/d (63%) 10億ドル (+578%) ル 62億ドル(2011) 2011年 750 2010年 886 2009年 521 17千 2011年 857 2010年 895 2009年 553 7.9千 過去3年の掘削数 2011年 1282 (探鉱+開発) 2010年 1149 2009年 1003 2011 年 末 の 生 産 - 井(本) 22.8万boe/d (99.9%) 22.8万boe/d (99.9%) 6.3億ドル (-5%) 21億ドル(2012年 計画) 22億ドル(2011) 2011年 307 2010年 307 2009年 255 2.9千 その他大手シェールガス事業者として:XTO Energy, ExxonMobilが買収(2010) Petrohawk, BHP Billitonが買収(2011) 各社の財務諸表より作成 4.生産者の苦悩 ・フォーワード価格も低下に転じており、1年先をヘッジしても採算 割れが発生。ガス価格ヘッジ戦略も効力を失う。 米国の天然ガス価格フォーワードカーブ (以前と比較して) ドル/百万btu 10 9 8 7 6 5 4 天然ガス先物: 2012年3月初 3 天然ガス先物: 2011年3月初 2 天然ガス先物: 2009年3月初 1 0 1カ月先 1年先 2年先 NYMEX等データより作成 3年先 4年先 5年先 6年先 7年先 8年先 9年先 10年先 11年先 12年先 Southwestern社 web siteより 4.生産者の苦悩 開発事業者の対応 1)ガス生産量を絞る 限定的 共同事業者間の開発計画、鉱区リース権維持のために掘削継続 2)社債発行等により資金調達 株価下落で困難 3)資産売却により資金確保 Chesapeake 100- 120億ドル規模(2012) アジア各地でロードショー EOG 資産売却方針 最近(例)シェールオイル:Chesapeake-Total, Devon-Sinopec シェールガス:EnCana-三菱商事 4)シェールオイルに開発ターゲットを変更 中期的視野 メジャー系(Shell, ExxonMobil等) 中堅企業(Chesapeake , EOG, Talisman等) 5)ガス需要を掘り起こす 中長期的視野 例:開発事業者(BG, ConocoPhillips)がLNG輸出の事業化 ChesapeakeとGEが天然ガス自動車事業で提携(2012/3) 5.一貫操業ビジネス 上流投資とLNG調達の一貫操業ビジネス ガス需要家 ・米国市場ではガス市場の自由化やスポット取引の発達 で、企業も事業分野を選別化。 ・欧州ではCentrica(英)、GDF Suez(仏)など上流進出 ・ ガス開発に投資することで調達コスト変動を抑制。 ($/百万btu) 上流コスト トータルで調達コストセーブ たとえ赤字であっても 北米ガス価格 LNGアジア価格(原油リンク価格) 例え、ガス価格上昇しても 北米:ガス価格が上昇 ガス需要の拡大 ガス供給の対応 (巨大なインフラ投資、雇用) LNG輸出 上流開発 JV 下流 LNG輸入 上流開発 LNG価格が上昇する 上流 開発収益は上昇 国外事業者A 5.一貫操業ビジネス 一貫操業ビジネスモデルとは? ・石油産業発展とともにメジャーが確立したモデル ・需要家(下流事業者)にとり安定した収益システム ・市場価格は制御不能で、変動しやすい。 ・油田開発の参画(上流開発)で現物調達コストを安 定化させる 上流コスト 需要家側(メジャー) の調達コストセーブ 原油市場価格(調達コスト) 今日においてメジャーも、石油の一貫操業ビジネス 体制を維持。 まとめ ・北米では供給過剰でガス価格が低迷。新たな需要先と してLNG輸出を指向。 ・他方、シェールガス生産者は資金難で資産放出を急ぐ。 ・北米LNG(HHリンク価格)の調達を志向するならば、上 流投資(ガス生産)をセットに考えていくことも一つの戦 略的な調達手法。 ・需要家の上流進出は調達コスト変動の抑制効果。市場 価格は抑制不能であるが、上流コストはある程度制御 下。 ・特に、在来型に比較し、北米シェールガスは参画が容易 な上に操業リスクが低い。 埋蔵量、経験、インフラ等が 豊富。ただ玉石混淆から厳選し、確実にガス生産を行う ことも肝要。