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商標制度の在り方について
2006年1月27日 特許庁 制度改正審議室 御中 「商標制度の在り方について」に関する意見 私はティーンエイジャーからミセスまでの女性向け(一部男性向け)の衣料品、服飾雑 貨、インテリアやキッチン周りなどの住関連全般に関する雑貨などを取り扱う、複数のブ ランドを持つ専門小売業者で商標関係の仕事をしております。 百貨店等の大規模小売業者やコンビニエンスストアなどとは状況が多少異なるかと思い ますので、その立場からコメントさせていただきたいと思います。 「Ⅰ 小売業等の商標の保護の在り方」について ・ 1∼2(現状分析) 内容については同意します。専門小売業者の立場から補足しますと、現状小売業の みが役務商標と商品商標をごっちゃにされた状態になっており、一般のメーカーやサ ービス業者と比べ、不当に重い負担を強いられていますが、思うにこれは、小売業で 守るべき商標を持っているのが老舗の海苔専門店や和菓子屋など、限定された範囲の 商品を暖簾で販売する、いわばメーカーと小売が実質的にほぼ一体であるような老舗 企業がほとんどであったような時代の考え方が旧態依然として続いてきたもので、多 種多様な商品を主に仕入れて売るような小売業者の出現により、実態と合わない制度 になったのだと考えます。 ・ 「3 対応の方向」について 内容については概ね同意します。 小売業者の立場から補足しますと、新ブランド(ショップ)を立ち上げようとした場 合、扱い商品のうちのいずれかですでに類似商標が取られているために、多数の候補を 挙げても取得できる見込みのない、可能性が低いとされるものが多く、ネーミングに苦 慮することが多くあります。 小売業者が店舗等で販売している商品は、大きく分けて3通りあります。 a.ショップ名等、オリジナルブランドを付けている商品 b.ブランドネームは付けないが、仕様等を指定して製造委託した独自の商品 c.メーカーや卸売業者から仕入れてそのまま販売する商品 このうち a は(1)で述べられているように、商品商標として必要な類は取得すべきで す。b は状況によりますが、c については商品商標の取得は不要であると考えます。 主に衣料品を扱う専門小売業者の立場から言えば、置いている服は自社のブランドで も、一緒に販売するベルトや靴まで全て同一ブランドで製造・販売するのは高級ブラ ンド業者などごく一部であり、販売のためだけに商品商標を取得することによって、 第三者が本当に必要な商品商標を取得することを妨げることにもなります。 ・ 「3(3)審査上の取扱い」について 概ね言われている通りだと思います。 小売業者の立場からいうと、商標がサービスマークとして従来の商品商標のような 審査基準(称呼類似など)であまり厳格に審査されると、小売業者も個人商店からチ ェーン店、また取扱商品もさまざまですから、店名の選択の幅を逆に狭める結果にな り兼ねないため熟慮が必要だと思います。小売を役務商標と考えれば、店の看板から 外装内装、陳列方法、接客等のサービス内容、包装資材までが一体として需要者に認 識されるのが本来ですから、商標の「識別力」を重視し、「看板」「ロゴデザイン」な どの視認性重視など、独自の基準を考慮する必要性もあるのではないでしょうか(中 国では登録されているデザインのまま使用する必要があると聞きますが、それに近い ような形など)。ただ、新しいショップ名であれば、出願段階でデザインが未定の場合 も多く難しいところで、またロゴデザイン等も適宜変更する場合がありますので、そ のあたりの対応も必要だと考えます。 一時、役務商標の登録は総合小売業者から始めるといった話も耳にしました。本報 告書にはそのような記載はされていませんでしたが、始めるのであれば一斉にすべき と考えます。また、一見衣料品のみ販売しているように見える衣料専門店でも、最近 では扱い商品は多岐に渡っておりますので、十分ご注意いただくことを望みます。 「Ⅱ.権利侵害行為への「輸出」の追加」について ・ 各国商標法との整合性が保てる形で検討すればよいと考えます。 ・ 自社において該当するケースとしては、オリジナル商品を海外のショップに卸す等の 行為が考えられますが、その場合、悪意を持って輸出先国で自社商標と同一のものが 取得されていた際の救済措置が気になるところです。 「Ⅲ.刑事罰の強化」について ・ 他法との整合性の面からみても、特に異論はありません。 「Ⅳ.著名商標の保護の在り方」について ・ 「著名」の「需要者」の範囲について判断基準の問題があると思いますが、特に異論 はありません。 「Ⅴ.審査の在り方について」 ・ 「1(4)対応の方向」ですが、外観が全く類似せず、需要者が間違うはずもない商 標が称呼類似で登録を拒絶されるなど、取引の実情には合わない判断が普通に出てお ります。ブランド名は確かに商品購買の重要な決定要素になりますが、視力に特に障 害がない一般の需要者であれば称呼のみで判断をすることはなく、もっと言えば読み 方がわからずロゴで覚えていることすら多くあります。特に日常の消耗品ではなく嗜 好品やブランド衣料、いわゆるぜいたく品などにはこの傾向が強いものです。 最近の判断では多少外観類似も見られているようで、前回意見書まで提出し、最終的 に称呼類似で拒絶査定とされた商標を数年後再度出願したところ、前回の拒絶査定の 原因となった引用商標が拒絶理由通知書で全く言及されなかったなど(それはそれで 前回の査定は何だったのかと思いますが)変化もあるようですが、外観が全く異なる 称呼類似などは、コンセント制度も含め是非基準を見直していただくよう望みます。 ・ ②の類似商品・役務審査基準についても、購買者が混同することがあり得ないものに 関しては短冊を細分化するなど、何かしら実態に即した見直しを希望します。現在書 換をしている商標の次回更新時を考えると頭が痛いです。 ・ 審査そのものに関してですが、商標の一部分がある英和大辞典に業界用語と記載され ているとして、商標法第3条第1項第6号により拒絶査定を受けたことがあります。 ここで是非ご注意いただきたいのは、英和辞典は業界用語辞典ではないということで す。また、一般人が英和大辞典をひく機会は、大学教育を現在受けている人であって も、専攻が英語関係であるか、辞書学でも学んでいない限りめったにないものです。 私の十余年の業界経験中、そのような業界用語は一度も聞いたことがなく、念のため 専門教育機関や、そのつてを通じてまさに今業界用語集を作成中の専門家にも確認し ましたが、やはり通常使われるような用語ではないという回答であり、また米英の著 名な米語辞典、英語辞典にも一切掲載はなく、国内のその他の英和辞典にも一切掲載 がありませんでした。また、英語圏の人の物事の考え方からしてもあり得ない訳であ り、最終的に直接出版社には確認していませんが、限りなく誤訳の疑いが濃いと言わ ざるを得ない言葉でした。 たまたまそんな言葉に当たったとは言え、審査官といえども業界の専門家ではないわ けで、知識自体は著しく不足していることを自覚していただき、少なくとも専門用語 辞典くらいは当たる、意見を聞けるつてを作っておくなど、調査不足や不勉強による 理不尽な審査をされないよう、特に3条1項3号もしくは6号を拒絶理由とする場合 はより一層の慎重さを希望します。 実際実務家の間では、変わった拒絶理由通知をよく出される審査官の情報を話の種半 分でやり取りしていると聞き及んでおります。もっとも意見書等の仕事が増えて実務 家諸氏にとって商売的にはプラスでしょうが、依頼側は無用な出費を強いられている 場合が多いと言わざるを得ません。 ・ 「2.審査事項と∼」については特に異論はありません。 「Ⅵ.その他」について ・ 「商標の定義」については条文云々は置いても、もう少し「識別性」の概念を要素と して加えられる可能性については見当が必要と考えます。但し、「新奇性」というよ り、審査基準でも述べましたが「外観」をもっと重視して欲しい、もっと言えば「称 呼類似」を必要以上に偏重する風潮を改善していただきたいという点からです。 アルファベットを用いて普通にその国の言語で商標が表示されるのと異なり、英語を 母国語としないわが国特有の問題と思いますが、中学程度の英単語にあり得ないロー マ字読みを付されたり、BとVの読み方を同じとされたり、清音と濁音の強勢の有無 で争ったりという不毛ともいえる論議は極力解消していただきたいと強く思います。 ・ 「商標の「使用」の定義」については常識の範囲内ですれば別段問題はないと考えま す。 以上、縷々書きましたが、特に小売を役務商標として認めていただけることは悲願でも ありますので、今後の進展を期待しております。