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宇宙線を用いた 大型構造イメージング
宇宙線を用いた 大型構造イメージング 筑波大学 原 和彦, 金 信弘, 高田義久, 高橋 優(1), 橋本就吾(2), 高橋和希(3), 伊藤史哲, 佐藤和之 高エネルギー加速器研究機構 鈴木厚人(4), 永嶺兼忠(5), 藤井啓文, 髙﨑史彦, 林 浩平, 児玉英世, 佐藤康太郎 首都大学 住吉孝行, 角野秀一,市川星磨 東京大学 山下 了 (1)JAXA、(2)NEDO、(3)(株)東芝、(4)岩手県立大学、(5)理化学研究所 国際廃炉研究開発機構 東京電力ホールディングス株式会社 第2回 TIA光・量子計測シンポジウム 2016/11/10 つくば国際会議場 光・量子が繋ぐTIA計測連携~新しい科学と産業の創成をめざして~ 2 発表内容 • 宇宙線ミュー粒子とラジオグラフィ • 測定装置 • 日本原子力発電東海第二発電所での実証試験(*1) • 東京電力福島第一原子力発電所(2号炉)の観測(*2) • 地下からの透視実験 • 岩手山(岩手県)の観測(*3) *1 日本原子力発電のご協力で実証試験が可能になりました 国際廃炉研究開発機構の事業の一環としての東京電力からの委託研究 *3 岩手県立大学、首都大学、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構間の共同研究 *2 3 宇宙線ミュー粒子とラジオグラフィ 宇宙線ミュー粒子: 大気で発生し、ほぼ一様に降り注ぐ (1Hz/手のひら) 重い物質では止まる 高エネルギー成分は貫く 小さなミュー粒子観測装置で大構造物の質量 分布が測定できる~X線撮影(radiography) 建物などは貫く 応用: アクセスできない原子炉内部の検査 遠隔にある火山の内部様子 溶鉱炉の隔壁の健全さ検査 観測装置への要求: ピラミッド内の空隙 ミュー粒子の飛来方向観測(+時間分解能) …. 設置しやすいコンパクトさ 環境放射線耐性 4 宇宙線ミュー粒子の運動量分布 BESS at sea level @0deg Jokisch et.al. @75deg muon flux /m2/s/sr 20 0deg int Flux 0 deg 0 deg 75deg 75deg 70deg int Flux 10 0 0.1 1 10 100 muon momentum GeV/c Fe (1 m) Concrete(1m) Fe (10 m) ρ~7 g/cc Concrete (10 m) ρ~2.5g/cc 5 測定装置の構成 福島原発の内部を調査する目的で開発 MPPC(667pix) 1.3x1.3mm Scintillator bar (1㎝角)+ 波長変換ファイバー(1mmφ) MPPC Multi pixel photon counter 6 測定装置 1mx1m 複数のXYユニットでミュー粒子の通過位置 と飛来方向を測定する。 XY unit 1 XY unit 2 DAQ1 DAQ box DAQ2 1.5m 1600 1900 XY 200 MPPCへの バイアス電圧供給 信号読み出し XY同時信号の判断 データ転送 電圧(バイアス、しきい値)設定 7 日本原子力発電東海第二発電所原子炉 での実証試験:1方向測定 100days 燃料プール内の燃料量の推定 燃料装填位置には水のみ 8 日本原子力発電東海第二発電所原子炉 での実証試験:3方向測定 燃料プールを1m立法で区画 吸収が多い区画を青 ln(Nobs/Nexp)>1.35,1.4,1.9 2/3の測定で青区画⇒緑 Point‐3 (208days,816kEv) Point‐1 (173days,1524kEv) Point‐2 (94days,722kEv) 9 福島第一原子力発電所2号機の観測 福島第一原子力発電所1号機用装置 福島第一原子力発電所2号機用装置 ミュオン測定装置設置 (小型装置,約1m×1m×高さ1.3m) 50㎝ 50cm 1mx1mユニット を3セット使用 XY2セット http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima‐np/roadmap/images1/images2/l160729_08‐j.pdf 東京電力ホールディングス株式会社プレスリリースより 福島第⼀原⼦⼒発電所 2号機 ミュオン測定による炉内燃料デブリ位置把握について 2016年7⽉28⽇ 東京電⼒ホールディングス株式会社 本資料の内容は、技術研究組合国際廃炉研究開発 機構(IRID)の事業の一環として、東京電力が実 施するものである。 無断複製・転載禁止 東京電力ホールディングス株式会社 2号機の観測 東京電力ホールディングス株式会社プレスリリースより 国プロ「原⼦炉内燃料デブリ検知技術の開発」にて,原⼦炉を通過する宇宙線ミュオンの 測定により,炉内燃料デブリを検知する技術を開発。 2号機において平成28年3⽉〜7⽉にミュオン透過法の測定を実施。 N 写真撮影方向 装置設置位置 (原子炉建屋西側) ミュオン測定装置設置 (小型装置,約1m×1m×高さ1.3m) 2号機原子炉 建屋 (1階断面図) 透過率 透過率大 (物質なし) 圧力容器 格納容器外周 コンクリート 使用済 燃料プール 高さOP[m] 高さOP[m] (測定結果 H28.7.22 時点) 物質量 密度長 (g/cc ・m) 圧力容器 格納容器外周 コンクリート 使用済 燃料プール 炉心域 炉心域 圧力容器下端 圧力容器下端 北 南 ミュオン透過率の評価 水平[m] 透過率小 (物質あり) 南 北 物質量分布の評価 水平[m] 11 圧⼒容器下部における物質量分布(圧⼒容器底部詳細) (測定結果 H28.7.22 時点) 圧⼒容器底部に燃料デブリと思われる⾼密度物質の影を確認。 高さOP(m) ※ 1ピクセルの⼤きさ〜原⼦炉断⾯において約25cm相当 北 水平距離(m) 南 圧力容器下部の構造 東京電力ホールディングス株式会社プレスリリースより 12 統計的⼿法による圧⼒容器内の物質量分布評価 ① ② 東 ③ ④ 炉⼼ 西 測定装置 シュラウド ①炉心上部 (高さ50cm分) 燃料ほとんど無し 密度長(g/cc・m) シミュレーションと測定されたミュオン計測数の ⽐較により,圧⼒容器内の物質量の分布 を評価。 圧力容器 北 水平(m) ②炉心下部 (高さ50cm分) (測定結果 H28.7.22 時点) ④圧力容器底部 (高さ50cm分) 北 水平(m) ③圧力容器下部 (高さ50cm分) 南 燃料有り 密度長(g/cc・m) 密度長(g/cc・m) 燃料有り (高密度) 北 燃料有り (炉心外周部) 密度長(g/cc・m) ・ シミュレーション評価(燃料無し) シミュレーション評価(燃料有り,2g/cc) シミュレーション評価(燃料有り,6g/cc) 測定値を用いた評価 南 水平(m) 南 北 水平(m) 東京電力ホールディングス株式会社プレスリリースより 南 13 圧⼒容器内の物質量の定量評価 ミュオン測定結果から圧⼒容器内の物質量を定量評価 2次元的な測定情報から,原⼦炉建屋の構造の影響などを考慮し,圧⼒容器内に存在する 物質量を評価 <定量評価結果> ③ ① ② (測定結果 H28.7.22 時点) 評価結果 [ton] (参考)事故前の物質量※ [ton] ① 炉⼼域 (シュラウド内) 約20〜50 約160(燃料集合体) 約15(制御棒) ② 圧⼒容器底部 約160 合計(①+②) 約180〜210 約210 (参考) ③ 圧⼒容器上部 約70〜100 約80(構造物) 評価結果の 不確かさ 〜数⼗トン程度 約35(構造物) ⽔の影響は⾮考慮 ※ 設計上の重量。簡便のため,⼀部考慮していない構造物あり。 また,ミュオン測定は実際には斜めに⾒上げる⽅向に測定して いるため,正確に⼀致するものではない。 定量評価の結果から,燃料デブリの⼤部分は圧⼒容器底部に存在していると推定 東京電力ホールディングス株式会社プレスリリースより 14 15 地下からの透視実験 5days L~5m 67days L~17m KEKの敷地で観測 14days 78days L~5m L~17m 2m立法の鉄ブロックを地中長Lで測定 地上構造物の密度推定の確度と測定日数 16 岩手山の観測 90年代後半から火山活動の兆候 火山噴火予知連絡会により火山 活動監視対象に指定 ガンマ補正 17 まとめ 福島第一原発の燃料デブリの状況を把握する目的で、宇宙線ミュー粒子 を用いたラジオグラフィ装置を開発建設した。 筑波大‐KEKはTIAの枠組みで協力し、首都大や東京電力、国際廃炉研究 開発機構との連携で福島第一原子力発電所一号機、二号機の観測を行 い、燃料デブリの状況に関するはじめての観測に成功した。 同技術により地下からの透視も可能との知見を得た。 岩手山の火山活動の観測など、同技術の適用をあらたな協力体制で開 始した。